【実施例1】
【0025】
図1は、実施例の天井構造1の斜視図である。かかる天井構造1は、複数本の天井下地材2a,2bを格子状に組み付けてなる天井枠体3と、該天井枠体3に設置される天井板4と、吊ボルト5の下端に連結されて、天井枠体3を吊持する吊金具6と、本発明に係る天井板浮上防止金具7を備えている。
【0026】
天井下地材2a,2bは、帯状鋼板を成形してなる長尺杆状部材であり、
図1に示すように、格子状に組み付けられて天井枠体3を構成する。天井枠体3を構成する天井下地材2a,2bは、一定間隔で平行配置される第一下地材2aと、該第一下地材2aの側面に直角に連結して、隣り合う第一下地材2aの間に架設される第二下地材2bとに大別される。第一下地材2aと第二下地材2bとは、長さと連結構造は相違するものの、その断面形状は同じである。
【0027】
図2に示すように、天井下地材2a(2b)の断面形状は、上下方向の薄幅な垂直辺部11と、該垂直辺部11の上端に形成される幅広な係止隆部12と、該垂直辺部11の下端に形成される幅広な設置縁部13とで構成され、中心線に対して左右対称となっている。天井下地材2a(2b)は、垂直辺部11と係止隆部12を形成する吊持杆14と、該吊持杆14に組み付けられて設置縁部13を形成する係止梁15との、2片の金属板片によって構成される。
【0028】
図3に示すように、第二下地材2bの端部には、平面視L字状に屈曲させた金属板片からなる連結挿入部17が接合されており、第一下地材2aの側面に形成された嵌挿溝18に連結挿入部17を挿入して係合させることにより、第一下地材2aと第二下地材2bがT字状に連結される。そして、第一下地材2aの反対側から別の第二下地材2bを連結することで、第一下地材2aに対して2本の第二下地材2bが十字状に連結される。そして、多数の天井下地材2a,2bを十字状に相互連結することで、
図1に示すように、天井下地材2a,2bによって碁盤目状の天井枠体3が形成される。なお、この天井下地材2a,2bの形状及び製造法は、公知技術であるため詳細な説明は省略する。
【0029】
矩形板状の天井板4は、ロックウール板からなるものである。
図1〜3に示すように、天井板4は、天井下地材2a,2bの設置縁部13が形成する下部開口部8に上方から嵌め込んで、その端部を設置縁部13に乗載して支持することにより、天井枠体3に設置される。具体的には、
図2に示すように、天井板4の上側部4aの端部には、下側部4bよりも外側に延出する鍔部16が全周に亘って形成されており、天井板4は、鍔部16の形成された上側部4aにおいて、天井枠体3の下部開口部8の寸法よりも一回り大きい矩形状をなし、鍔部16の形成されていない下側部4bにおいて、天井枠体3の下部開口部8の寸法よりも僅かに小さい矩形状をなしている。そして、
図2に示すように、天井板4は、幅狭な下側部4bを下部開口部8に嵌合させるとともに、幅広な上側部4aの鍔部16を、設置縁部13の上に乗載することにより、天井枠体3に支持される。なお、本発明に係る天井板は、ロックウール板に限らず、金属パネルなど公知の天井板全般を採用可能である。
【0030】
吊ボルト5は、一般的な天井構造に用いられているものであり、上端部を天井スラブ(図示省略)などに埋設されて下端部を天井近くに垂下させている。吊金具6は、
図1,2に示すように、金属板を成形加工してなる正面視縦長矩形状の金属片である。吊金具6は、下端部に設けられた挟持部21に天井下地材2aの係止隆部12を挟持するとともに、上端部に設けられた接続部20を吊ボルト5の下端部に連結することにより、天井枠体3を吊持する。かかる吊金具6は、公知技術が好適に採用され得る。
【0031】
以下に、本発明の要部に係る天井板浮上防止金具7について詳述する。
図1,3に示すように、天井板浮上防止金具7は、天井下地材2aに上方から外嵌するように取り付けられて、天井枠体3に設置された天井板4の端部が浮き上がらないように、当該端部の上面に上方から当接するものである。
図4,5に示すように、天井板浮上防止金具7は、金具本体30と、吸着手段を構成する磁石31とを備えてなる。金具本体30は、一枚の鋼製板片を正面視略伏コ字状に屈曲加工してなるものであり、水平な吸着手段保持部33と、吸着手段保持部33の両側縁から下方に延出する一対の脚部34とで構成される。磁石31は、矩形板状をなすプレートキャッチ型のネオジム磁石であり、吸着手段保持部33に形成したかしめ部(バーリングかしめ)35により吸着手段保持部33の底部に固着されている。
【0032】
図6に示すように、吸着手段保持部33の幅寸法は、天井下地材2aの係止隆部12の幅よりも大きくなっており、天井板浮上防止金具7は、左右の脚部34の間に天井下地材2aの係止隆部12と垂直辺部11を挟むように外嵌することによって、天井下地材2aに取り付けられる。
図4,5に示すように、左右の脚部34は、吸着手段保持部33の両端から垂直に垂下した後で、両者の間隔を狭めるように僅かに内側に屈曲している。そして、各脚部34の下端部には、下端の中央部で板片を内側に屈曲させることにより、内側上方に延出して、係止隆部12の幅よりも狭い間隙を形成する脱落防止部36が設けられる。また、各脚部34の下端部には、下端の前後両側で板片を外側に屈曲させることにより、外側に水平に延出する押さえ部37が設けられる。また、各脚部34の上部中央には、内側へドーム形状に膨出する位置決め突部39が相互に対向する位置に形成される。
【0033】
図6に示すように、天井板浮上防止金具7は、天井下地材2aの係止隆部12と垂直辺部11に外嵌した状態にあって昇降可能となっており、外力による支持がなければ、
図6(a)に示すように、磁石31を係止隆部12の上面に当接する下方の吸着位置Pまで自重により下降する。なお、位置決め突部39はドーム形状であるため、天井板浮上防止金具7が吸着位置Pに下降する際に、位置決め突部39が係止隆部12の上端部に引っ掛かることはない。
【0034】
吸着位置Pにおいては、磁石31が鋼製の係止隆部12の上面に吸着するため、磁石31の磁力によって、天井板浮上防止金具7が吸着位置Pから上昇困難に保持される。ここで、
図6(a)に示すように、天井板浮上防止金具7の各脚部34は、吸着位置Pにおいて、天井枠体3に設置された天井板4の上面に下端部を当接させ得る長さ寸法となっており、吸着位置Pにおいて、脚部34の下端部の押さえ部37が、設置縁部13に乗載された天井板4の鍔部16の上面に対して上方から当接することとなる。したがって、
図6(a)に示すように、吸着位置Pにおいては、装着した天井板浮上防止金具7の両側に設置された天井板4の鍔部16が、天井板浮上防止金具7によって設置縁部13から浮き上がり困難となる。また、吸着位置Pにおいては、左右の脚部34の位置決め突部39が、係止隆部12の側面に近接することにより、左右の脚部34の略中心に係止隆部12が位置するように位置決めされる。
【0035】
上述のように、天井板浮上防止金具7は磁石31の吸着力によって吸着位置Pに保持されるが、磁石31の吸着力を上回る力を加えれば、
図6(b)に示すように、磁石31が係止隆部12の上方に離間する浮上位置Qへ上昇させることができる。かかる浮上位置Qでは、脚部34の押さえ部37が上方に退避して、天井板4の鍔部16の上面から離間するため、装着した天井板浮上防止金具7の両側に設置された天井板4の鍔部16を、設置縁部13から容易に浮き上がらせることが可能となる。ここで、脚部34の下端部にあっては、内側上方に延出する脱落防止部36によって、左右の脚部34の間隔が係止隆部12の幅寸法よりも狭くなっており、
図6(b)に示すように、脱落防止部36が係止隆部12の高さになるまで天井板浮上防止金具7を上昇させると、脱落防止部36が係止隆部12の下縁に係合して、天井板浮上防止金具7をそれ以上は上昇不能となり、これにより、天井板浮上防止金具7の天井下地材2aからの脱落が防止される。なお、このように、天井板浮上防止金具7を上昇させた場合には、斜め上方に延出する脱落防止部36が反しとして機能して脱落を阻止するが、天井板浮上防止金具7を天井下地材2aの上方から外嵌する際には、脱落防止部36が係止隆部12に対して案内作用を発揮して、左右の脚部34を外側に撓ませるため、天井板浮上防止金具7を比較的容易に係止隆部12に外嵌させることができる。
【0036】
上述のように、本実施例に係る天井板浮上防止金具7を天井下地材2aに装着して、吸着位置Pに吸着させれば、当該装着部位の両側に設置された天井板4の鍔部16の浮き上がりを、当該装着部位で防止することができる。そして、本実施例の天井構造1では、
図1に示すように、天井下地材2aの各天井板4の対向する2辺を支持する部分に、天井板浮上防止金具7が1つずつ装着される。天井板浮上防止金具7をこのように装着して、天井板4の対向する2辺において鍔部16の浮き上がりを防止すれば、天井板4全体の浮き上がりを防止できる。
【0037】
このように、本実施例の天井構造1では、天井板浮上防止金具7が天井板4の浮き上がりを防止しているため、磁石31の吸着力を上回る力が加わって天井板浮上防止金具7が吸着位置Pから上昇しない限りは、天井板4の鍔部16が設置縁部13から浮き上がることがない。このため、所要の磁力で天井板浮上防止金具7を吸着位置Pに吸着させておけば、地震発生時に想定される縦揺れに対して、天井板4が浮き上がって天井枠体3から落下するのを防止できる。
【0038】
本実施例の天井構造1では、天井板4の対向する2辺に対して装着した天井板浮上防止金具7を吸着位置Pに保持した状態では、天井板4を脱着不能となるが、かかる天井板浮上防止金具7を吸着位置Pから浮上位置Qに上昇させれば天井板4を脱着できる。このため、本実施例の天井構造1では、任意の天井板4を自由に脱着して、メンテナンスや配置変更を行うことができる。
【0039】
例えば、本実施例の天井構造1では、
図7,8に示す手順によって、設置済みの天井板4を天井構造1から取り外すことができる。
図7(a)は、天井枠体3に天井板4を設置するとともに、天井板4の対向する2辺に装着した天井板浮上防止金具7を吸着位置Pに保持した状態である。かかる状態にあっては、天井板4は、下側部4bを天井枠体3の下部開口部8に嵌合させるとともに、上側部4aの端部の鍔部16を天井下地材2aの設置縁部13に乗載して支持される。そして、両側の天井板浮上防止金具7は、鍔部16の上面に上方から押さえ部37が当接して、鍔部16の設置縁部13からの浮き上がりを防止している。
【0040】
図7(a)の状態から天井板4を取り外す場合には、まず、
図7(b)に示すように、天井構造1の下方から天井板浮上防止金具7の磁石31の吸着力を上回る力で、天井板4を真上に持ち上げて、天井枠体3の下部開口部8から天井板4の下側部4bを離脱させる。これにより、天井板4の鍔部16を押さえていた両側の天井板浮上防止金具7が、天井板4とともに上昇して、吸着位置Pから浮上位置Qに変換される。
【0041】
図7(b)のように、天井枠体3の下部開口部8から天井板4の下側部4bを離脱させると、天井板4を、天井下地材2aの垂直辺部11に鍔部16が当接するまで、水平方向に移動させる余裕が生じるため、
図7(c)に示すように、天井板4を一側(図中、右側)の天井板浮上防止金具7に寄せるように水平移動させる。これにより、他側(図中、左側)の天井板浮上防止金具7の押さえ部37が、当該天井板4の鍔部16から外れ、鍔部16による支持を失った他側の天井板浮上防止金具7は、自重により落下して吸着位置Pに復帰する。
【0042】
図7(c)の時点で、天井板4の鍔部16から他側の天井板浮上防止金具7が外れたため、
図8(a)に示すように、天井板浮上防止金具7が外れていない一側を中心に、天井板4の他側を天井下地材2aの上方まで傾動させる。そして、
図8(b)に示すように、天井板4を他側にスライドさせれば、一側の天井板浮上防止金具7が当該天井板4の鍔部16から外れて吸着位置Pに落下するため、
図8(c)に示すように、両側の天井板浮上防止金具7に干渉されることなく天井板4を天井枠体3の上方に持ち上げて、天井枠体3から天井板4を取り外すことができる。
【0043】
なお、
図7,8に示す取り外し手順では、他側の天井板浮上防止金具7の押さえ部37を鍔部16から脱落させるために、天井板4を水平方向にスライドさせるが(
図7(c)参照)、鍔部16と押さえ部37の当接する幅が小さい場合には、天井板4の片側を持ち上げて天井板4を傾けるだけで、天井板浮上防止金具7の押さえ部37を鍔部16から脱落させることができるため、天井板4の水平移動は不要である。また、
図7,8に示す取り外し手順では、天井板4の取り外しに際して、両側の天井板浮上防止金具7を浮上位置Qへ上昇させているが、天井下地材や天井板、天井板浮上防止金具の寸法によっては、片側の天井板浮上防止金具を浮上位置に上昇させるだけで、天井板を取り外し可能となる場合もある。
【0044】
図9,10は、本実施例の天井構造1にあって、天井板浮上防止金具7を装着した天井枠体3に、天井板4を設置する手順の一例を示したものである。
具体的には、まず、
図9(a)に示すように、一側(図中、右側)の天井板浮上防止金具7を指や工具で浮上位置Qに一時的に押し上げて、かかる状態で、
図9(b)に示すように、天井板4の端部を、押さえ部37と設置縁部13の間に挿入し、垂直辺部11に当接させる。これにより、一側の天井板浮上防止金具7は、天井板4の鍔部16に当接して浮上位置Qに支持される。
【0045】
次に、
図9(c)に示すように、他側(図中、左側)の天井板浮上防止金具7を指や工具で浮上位置Qに一時的に押し上げて、かかる状態で、
図10(a)に示すように、天井板4の他側の端部が、他側の天井板浮上防止金具7の押さえ部37の下方に位置するまで、一側を中心に天井板4を下方傾動させる。続いて、
図10(b)に示すように、一側の天井板4の下側部4bを天井枠体3の下部開口部8に嵌合させて、一側の鍔部16を設置縁部13の上に乗載するとともに、他側の天井板浮上防止金具7を天井板4の鍔部16に当接させる。これにより、一側の天井板浮上防止金具7は、一側の鍔部16とともに下降して吸着位置Pに保持される。
【0046】
そして、
図10(c)に示すように、他側の天井板4の下側部4bを天井枠体3の下部開口部8に嵌合させて、他側の鍔部16を設置縁部13の上に乗載すれば、天井板4の全ての鍔部16が設置縁部13に乗載されて、天井板4の設置が完了する。また、他側の天井板浮上防止金具7は、他側の鍔部16とともに下降して吸着位置Pに保持されて、一側の天井板浮上防止金具7とともに、吸着位置Pにおいて天井板4の鍔部16の浮き上がりを防止することとなる。
【0047】
このように、本実施例の天井構造1にあっては、既存の天井板4を加工することなく、天井下地材2aに天井板浮上防止金具7を装着するだけで、天井板4の端部の浮き上がりを防止できるため、従来構成に比べて、地震発生時の天井板4の落下を低廉に防止できる。一方で、本実施例の天井構造1は、下方からの作業によって任意の天井板4を自由に脱着して、メンテナンスや配置変更を行うこともできる。特に、天井板4の取り外しの際には、天井板浮上防止金具7を浮上位置Qに上昇させるだけでよく、天井板浮上防止金具7を天井下地材2aから取り外す必要がないため、天井板4の取り外し作業を簡単に行うことができる。また、天井板4の設置の際には、天井板浮上防止金具7を浮上位置Qに押し上げて、天井板4を天井枠体3に設置さえすれば、天井板浮上防止金具7は自重により吸着位置Pに復帰するため、天井板4の設置後に、天井板浮上防止金具7を吸着位置Pに保持する作業は不要である。したがって、本実施例では、天井板4の設置作業も簡単に行うことができる。
【0048】
また、本実施例では、天井板浮上防止金具7の脚部34の下端部に、内側上方に延出して係止隆部12の幅よりも狭い間隙を形成する脱落防止部36が設けられているため、天井板浮上防止金具7を上昇させた時に、天井板浮上防止金具7が天井下地材2aから脱落することがない。このため、本実施例の天井構造1では、天井板4を取り外す際に、天井板浮上防止金具7が落下するおそれがない。
【0049】
また、本実施例の天井板浮上防止金具7では、磁石31が吸着手段を構成しており、天井下地材2aの係止隆部12には、天井板浮上防止金具7と吸着するための構成が不要であるから、係止隆部12に対する吸着手段を低廉に実現できるという利点がある。また、磁石31からなる吸着手段は、繰返し脱着しても吸着力が低下しないという利点もある。また、本実施例の天井板浮上防止金具7は、1つの金具で、天井下地材2aの両側に設置される2枚の天井板4の鍔部16の浮き上がりを防止できるという利点がある。また、天井板浮上防止金具7は、金具本体30が屈曲する1枚の鋼製板片で実現されるため、極めて低廉に製造できる。
【0050】
図11(a)は、実施例1の変形例の天井板浮上防止金具7aを示したものである。なお、
図11(a)中では、上記実施例1の天井板浮上防止金具7と共通する構成には同一符号を付している。かかる天井板浮上防止金具7aは、吸着手段保持部33a及び磁石31aが上記実施例1よりも幅狭となっており、両側の脚部34a,34aは、係止隆部12の幅寸法よりわずかに大きい間隔を保ったまま垂直に垂下している。かかる変形例にあっては、左右の脚部34a,34aをガイドとして、天井板浮上防止金具7aを垂直方向に安定して昇降させることができ、また、位置決め突部39の配設も不要となる。
【0051】
図11(b)は、実施例1の別の変形例の天井板浮上防止金具7bを示したものである。なお、
図11(b)中では、上記実施例1の天井板浮上防止金具7と共通する構成には同一符号を付している。かかる天井板浮上防止金具7bは、両側の脚部34b,34bを垂直に垂下させることで、吸着位置Pにおいて、それぞれの下端部が天井板4の鍔部16の上面に垂直に当接するよう構成されている。また、各脚部34b,34bの下端部を内側上方に屈曲させることで、脱落防止部36a,36aが形成される。かかる変形例のように、吸着手段保持部33から天井板4の端部に向けて脚部34b,34bを延出させれば、脚部の下端部を外側に屈曲させることは不要となる。
【実施例2】
【0052】
図12に示すように、本実施例の天井構造1aは、実施例1において、天井板浮上防止金具7に替えて、変形例の天井板浮上防止金具7cを天井枠体3の同一箇所に装着したものである。このため、以下の説明では、天井板浮上防止金具7c以外の構成については、本文および図中で同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0053】
図13,14に示すように、本実施例に係る天井板浮上防止金具7cの基本構造は、実施例1の天井板浮上防止金具7と同様である。すなわち、天井板浮上防止金具7cは、一枚の鋼製板片からなる金具本体40と、吸着手段を構成する磁石41とで構成される。金具本体40は、鋼製板片を正面視略伏コ字状に屈曲加工してなるものであり、水平な吸着手段保持部43と、吸着手段保持部43の左右両側縁から下方に延出する一対の脚部44とで構成される。金具本体40の高さ方向(上下方向)と幅方向(左右方向)の寸法は、実施例1に係る金具本体30と略同じであるが、奥行方向(前後方向)の寸法は実施例1の約2倍となっている。このように、金具本体40が、天井下地材2aの長手方向に沿う前後方向に長大であるため、本実施例では、実施例1と同形状の位置決め突部49が、各脚部44の前側と後側の二箇所に形成される。また、左右の脚部34の前側下端部には、板片を外側に屈曲させることにより、外側に水平に延出する押さえ部47が設けられる。一方、各脚部44の後側下部には、内側斜め上方に延出する一対の脱落防止部46が配設されており、脱落防止部46の配設部位においてのみ、左右の脚部44の間隔が係止隆部12の幅寸法よりも狭くなっている。かかる脱落防止部46は、金具本体40を構成する鋼製板片の端部を斜めに屈曲させることにより配設されている。このように、本実施例に係る天井板浮上防止金具7cは、前後に長大な脚部44の前側のみが外側に延出して幅広となり、脚部44の後側のみが内側に突出して、係止隆部12の幅寸法よりも狭い間隙を形成している。また、磁石41は、実施例1の磁石31と同じものであり、吸着手段保持部43の前側に形成されるかしめ部45によって吸着手段保持部43の底部に固着されている。
【0054】
図12に示すように、本実施例の天井板浮上防止金具7cは、実施例1と同様に、天井下地材2aに上方から外嵌するように取り付けられて、磁石41が係止隆部12の上面に吸着する吸着位置Pに保持されることにより、天井板4の端部の浮き上がりを防止する。ここで、天井板浮上防止金具7cは、吸着位置Pにおいて、設置縁部13に載置された天井板4の鍔部16の上面に押さえ部47を当接させず、当該上面に対して上方から1mm程度の微間隙を挟んだ位置に押さえ部47を近接させる。なお、鍔部16の上方に延出しているのは押さえ部47のみであり、吸着位置Pにおいて、押さえ部47以外の部分は、鍔部16の上面に対して上方から当接も近接してもいない。このように、天井板浮上防止金具7cが吸着位置Pにある状態では、磁石41の吸着力に抗して天井板浮上防止金具7cを吸着位置Pから上昇させない限りは、当該天井板浮上防止金具7cの装着部位において天井板4を1mm以上浮き上がらせることができず、天井板4の端部が浮き上がり困難となる。特に、磁石41は、押さえ部47と同じ前側に配置されて、吸着位置Pでは、押さえ部47の略真上で係止隆部12に吸着するため、天井板4から押さえ部47に加わる上向きの力に対して、強く抵抗することができる。そして、本実施例の天井構造1aでは、かかる天井板浮上防止金具7cを、
図12に示すように、天井下地材2aの、天井板4の対向する2辺を支持する部分に夫々装着することにより、実施例1と同様に、天井板4全体の浮き上がりを防止する。
【0055】
本実施例の天井板浮上防止金具7cも、吸着位置Pにおいて磁石41の吸着力を上回る力を加えれば、
図15,16に示すように、磁石41が係止隆部12の上方に離間する浮上位置Qへ上昇させることができる。そして、天井板浮上防止金具7cを浮上位置Qに上昇させることにより、天井板4の鍔部16を、設置縁部13から容易に浮き上がらせることが可能となる。ここで、天井板浮上防止金具7cの後側は、左右の脚部44の間隔が係止隆部12より幅狭となっているが、前側は、脚部44の間隔が係止隆部12より幅狭な部分は存在しないため、
図15(b),16(b)に示すように、浮上位置Qにおいては、前側を上方回動させるように上昇させることができる。そして、このように上方回動させることで、天井板浮上防止金具7cは、脱落防止部46が係止隆部12の下縁に係合し、かつ、吸着手段保持部43の後端が係止隆部12の上面に当接する最大浮上位置Q1まで上昇可能となっている。かかる最大浮上位置Q1では、
図15(b),16(b)に示すように、前側の押さえ部47は、天井下地材2aの上方まで上昇することとなる。なお、最大浮上位置Q1にあっても、天井板浮上防止金具7cの後側は天井下地材2aに外嵌したままであるため、最大浮上位置Q1において外力による支持を失えば、天井板浮上防止金具7cは自重によって吸着位置Pまで下降することとなる。また、最大浮上位置Q1においては、脱落防止部46が係止隆部12の下縁と係合しているため、最大浮上位置Q1へ上昇させた際に、天井板浮上防止金具7cが天井下地材2aから脱落するおそれはない。
【0056】
本実施例の天井構造1aでは、
図12に示すように、天井板4の対向する2辺に天井板浮上防止金具7cを装着して吸着位置Pに保持することで、天井板4の浮き上がりが防止される。一方で、かかる天井板浮上防止金具7cを吸着位置Pから浮上位置Qに上昇させれば、天井板4を天井枠体3に脱着可能となる。ここで、本実施例の天井板浮上防止金具7cは、天井下地材2aに外嵌させたまま、押さえ部47を天井下地材2aより高く上昇させることができるため、以下に述べるように、実施例1の天井板浮上防止金具7に比べて、下方からの天井板4の脱着作業が容易となる。
【0057】
例えば、
図12に示すように、両側の天井板浮上防止金具7cを吸着位置Pに保持して天井板4の浮上を防止した状態から、天井板4を取り外す場合には、
図17(a)に示すように、天井板4の一側(図中、右側)の鍔部16を設置縁部13に載せたまま、天井板4の他側(図中、左側)だけを、磁石41の吸着力を上回る力で押し上げて、天井板4の他側を上方傾動させる。これにより、他側の天井板浮上防止金具7cは、他側の鍔部16に押さえ部47を押し上げられて浮上位置Qへ上昇する。この時、鍔部16に押し上げられるのは、天井板浮上防止金具7cの前側の押さえ部47のみであるため、天井板浮上防止金具7cは、前側部分を上方回動させるようにして上昇する(
図16(b)参照)。そして、天井板4の他側を上方傾動させていくと、
図17(b)に示すように、天井板浮上防止金具7cが最大浮上位置Q1に上昇するまでに、天井板4の傾きの増大によって他側の鍔部16と押さえ部47の引っ掛かりがなくなって、他側の鍔部16が押さえ部47の下から離脱する。また、これに伴って、他側の天井板浮上防止金具7cは、鍔部16の支持を失い自重により吸着位置Pまで落下する。このようにして、他側の鍔部16を押さえ部47から離脱させた後は、天井板4を他側にスライドさせて、一側の鍔部16を一側の天井板浮上防止金具7cの押さえ部47の下から抜き取れば、当該天井板4を天井枠体3から取り外すことができる。
【0058】
このように、本実施例では、磁石41の吸着力に抗して天井板4を押し上げたときに、天井板浮上防止金具7cが、押さえ部47側を上方回動させるように上昇するため、天井板浮上防止金具7cを天井下地材2aに外嵌させたまま、押さえ部47を実施例1よりも高い位置まで上昇させることができる。このため、本実施例によれば、天井板4の片側を押し上げたときに、実施例1よりも天井板4を大きく傾けることができ、上述のように、天井板4の片側を押し上げて上方傾動させるだけで、片側の鍔部16を押さえ部47の下から簡単に離脱させることができる。
【0059】
一方、天井枠体3に天井板4を設置する場合には、
図18(a)に示すように、まず、天井板4の一側(図中、右側)の鍔部16を、吸着位置Pの天井板浮上防止金具7cの押さえ部47と、天井下地材2aの設置縁部13との間に挿入する。そして、他側(図中、左側)の天井板浮上防止金具7cを指や工具で最大浮上位置Q1に保持し、かかる状態で、天井板4の他側を天井下地材2aの上方から下方傾動させる。上述のように、天井板浮上防止金具7cの最大浮上位置Q1では、天井板4の鍔部16が押さえ部47に引っ掛からないため、天井板4の他側の鍔部16は、押さえ部47と干渉させることなく、押さえ部47の直下まで下方傾動させることができる。
【0060】
他側の鍔部16が押さえ部47の直下に配置されるまで天井板4を下方傾動させた後は、
図18(b)に示すように、指や工具を天井板浮上防止金具7cから離して、天井板浮上防止金具7cを最大浮上位置Q1から、鍔部16の上に押さえ部47が引っ掛かる位置まで下降させる。そして、他側の鍔部16の上に押さえ部47を載せた後は、他側の鍔部16を設置縁部13に載置すれば、他側の天井板浮上防止金具7cが吸着位置Pまで下降して、
図12に示すように、両側の天井板浮上防止金具7cが、吸着位置Pにおいて天井板4の鍔部16の浮き上がりを防止する状態となって、天井板4の設置が完了する。
【0061】
このように、本実施例に係る天井板浮上防止金具7cは、最大浮上位置Q1において実施例1よりも高い位置に押さえ部47を保持できるため、天井板4の片側の鍔部16を設置縁部13に載せた状態で、天井板4の反対側を天井下地材2aの上方から下方傾動させるだけで、天井板4を天井枠体3に容易に設置できる。
【0062】
特に、天井板の設置時には、鍔部16を押さえ部の直下へ配置するまで、天井板浮上防止金具の下端部を指や工具で押し上げておく必要があるが、実施例1では、押さえ部37が天井板浮上防止金具7の下端部に配置されているため、当該下端部を押し上げる指や工具が天井板4の鍔部16と干渉し易いという問題がある(
図10(a)参照)。これに対して、本実施例では、
図18(a)に示すように、最大浮上位置Q1で、押さえ部47が天井板浮上防止金具7cの下端部に位置していないため、当該下端部を押し上げる指や工具が天井板4の鍔部16と干渉し難いという利点がある。
【0063】
また、本実施例では、
図16に示すように、脚部44の後側下部に斜め形成された脱落防止部46が、最大浮上位置Q1においては水平となって、係止隆部12の下縁に対して、天井下地材2aの長手方向に沿って当接するよう構成されている。かかる構成によれば、係止隆部12の下縁に対して、指や工具で、脱落防止部46を下方から押し当てるようにすれば、天井板浮上防止金具7cを最大浮上位置Q1に安定に保持できる。
【0064】
なお、本発明は、上記実施例の形態に限らず本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、上記実施例では、天井板浮上防止金具7,7cを第一下地材2aに装着しているが、天井板浮上防止金具7,7cを第二下地材2bに装着するようにしてもよい。また、上記実施例では、天井板4の対向する2辺に対して天井板浮上防止金具7,7cが1つずつ装着されるが、天井板4の1辺に対して複数の天井板浮上防止金具7,7cを装着してもよいし、天井板4の全ての辺に対して天井板浮上防止金具7,7cを装着してもよい。
【0065】
また、上記実施例に係る天井板浮上防止金具7,7cは、磁石31,41を吸着手段保持部33,43の底部にかしめることにより固着しているが、磁石31,41は、ネジ、リベット、接着剤などで固着してもよい。また、磁石31,41は吸着手段保持部33,43の上部に固着してもよい。また、本発明に係る天井板浮上防止金具の吸着手段は、磁石に替えて、吸盤や粘着剤、面ファスナー等を採用することもできる。
【0066】
また、上記実施例に係る天井板浮上防止金具7,7cは、天井下地材2aの上方から装着可能に構成されているが、本発明に係る天井板浮上防止金具は、天井枠体3を組み上げる前の天井下地材に対して、長手方向から装着するものであってもよい。
【0067】
また、上記実施例に係る脱落防止部36,46は、脚部34,44の下端を内側上方に屈曲させることにより形成されているが、本発明に係る脱落防止部は、脚部34,44にコ字状の切欠を設けて、当該切欠の内側を屈曲させて形成したものであってもよいし、プレス加工により内側に膨出させた突部であってもよい。