特開2019-214928(P2019-214928A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2019-214928コンクリート部材の接合部構造及び鉄筋の継手構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-214928(P2019-214928A)
(43)【公開日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】コンクリート部材の接合部構造及び鉄筋の継手構造
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/12 20060101AFI20191122BHJP
   E04C 5/02 20060101ALI20191122BHJP
【FI】
   E04C5/12
   E04C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-28644(P2019-28644)
(22)【出願日】2019年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2018-110148(P2018-110148)
(32)【優先日】2018年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000208695
【氏名又は名称】第一高周波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】吉武 謙二
(72)【発明者】
【氏名】小川 晃
(72)【発明者】
【氏名】荒木 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】仲山 賢司
(72)【発明者】
【氏名】小倉 大季
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164AA02
2E164BA23
(57)【要約】
【課題】鉄筋間の引張力の伝達性能に優れ、継手長を小さく抑えることが可能なコンクリート部材の接合部構造及び鉄筋の継手構造を提供する。
【解決手段】隣り合う一方のプレキャストコンクリートブロック1の接合端面1aから一方向T1に沿って突出する一方の継手部材6と、他方のプレキャストコンクリートブロック2の接合端面2aから一方向T1に沿って突出する他方の継手部材7とを備え、且つ、一方の継手部材6と他方の継手部材7がそれぞれ、接合端面1a、2aから一方向T1に沿って延びる軸部6a、7aと、軸部6a、7aの先端側に一体に設けられ、一方向T1に交差する方向に突出する定着部6b、7bとを備える。そして、一方の継手部材6の定着部6bと、他方の継手部材7の定着部7bとを一方向T1に重なって対峙するように配設する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う一方の側のコンクリート部材の接合端面から一方向に沿って突出する一方の継手部材と、
他方の側のコンクリート部材の接合部構造の接合端面から前記一方向に沿って突出する他方の継手部材とを備え、
且つ、前記一方の継手部材と前記他方の継手部材がそれぞれ、前記接合端面から前記一方向に沿って延びる軸部と、前記軸部の先端側に一体に設けられ、前記一方向に交差する方向に突出する定着部とを備え、
前記一方の継手部材の定着部と、前記他方の継手部材の定着部とが前記一方向に重なって対峙するように配設されていることを特徴とするコンクリート部材の接合部構造。
【請求項2】
請求項1記載のコンクリート部材の接合部構造において、
前記一方の継手部材の定着部と、前記他方の継手部材の定着部とが前記一方向で接するように配設されていることを特徴とするコンクリート部材の接合部構造。
【請求項3】
請求項1記載のコンクリート部材の接合部構造において、
前記一方の継手部材の定着部と、前記他方の継手部材の定着部との前記一方向の間に支圧領域を設けて構成されていることを特徴とするコンクリート部材の接合部構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコンクリート部材の接合部構造において、
前記一方の継手部材の定着部と、前記他方の継手部材の定着部と、が所定の角度で交差するように配設されていることを特徴とするコンクリート部材の接合部構造。
【請求項5】
コンクリート部材の主筋同士を接合するための継手構造であって、
一方の主筋の先端側に一体に設けられ、前記一方の主筋の軸方向に交差する方向に突出する一方の定着部と、
他方の主筋の先端側に一体に設けられ、前記他方の主筋の軸方向に交差する方向に突出する他方の定着部とを備え、
前記一方の定着部と前記他方の定着部とが前記軸方向に重なって対峙するように配設されていることを特徴とする鉄筋の継手構造。
【請求項6】
請求項5記載の鉄筋の継手構造において、
前記一方の定着部と前記他方の定着部とが前記軸方向で接するように配設されていることを特徴とする鉄筋の継手構造。
【請求項7】
請求項5記載の鉄筋の継手構造において、
前記一方の定着部と前記他方の定着部との前記軸方向の間に支圧領域を設けて構成されていることを特徴とする鉄筋の継手構造。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の鉄筋の継手構造において、
前記一方の定着部と、前記他方の定着部と、が所定の角度で交差するように配設されていることを特徴とする鉄筋の継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート部材の接合部構造及び鉄筋の継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の床版を構築する手法の一つとして、鋼製桁上に複数のプレキャストコンクリート床版(プレキャストコンクリートブロック、コンクリート部材)を敷き並べ、隣り合うプレキャストコンクリート床版の端部の間の接合部にコンクリートを打設して一体形成する手法が知られている。
【0003】
また、各プレキャストコンクリート床版は、例えば、床版本体の接合端面から突出するループ状継手を設けて形成され、各プレキャストコンクリート床版の鋼製桁と重なる部分に貫通孔を設けて形成される。
【0004】
そして、橋梁の床版(コンクリート部材の接合構造体)を構築する際に、鋼製桁の上フランジに植設したスタッドを貫通孔に挿通させつつ複数のプレキャストコンクリート床版を所定位置に敷き並べる。この状態で、互いに隣り合うプレキャストコンクリート床版の接合端面から突出するループ状継手が橋軸直交方向の幅方向に重なり合い、これらループ状継手の内部に補強鉄筋(配力筋)を取り付ける。
【0005】
最後に、スタッドを挿通した貫通孔に無収縮モルタルを充填し、さらに隣り合うプレキャストコンクリート床版の間の接合部にそれぞれ間詰めコンクリートを充填することにより、隣り合うプレキャストコンクリート床版同士、複数のプレキャストコンクリート床版と鋼製桁を一体に接合してなる橋梁の床版を構築することができる(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、上記従来の橋梁の床版においては、ループ状継手と間詰めコンクリートを用いて隣り合うプレキャストコンクリート床版を接合するため、ループ状継手(継手部)によって床版厚が決まる。すなわち、ループ状継手は、重ね継手よりも継手長を短くすることができるという大きな利点を有する反面、そのループ形状に応じて床版厚を設定せざるを得ず、一般に床版厚が大きくなる。
【0007】
また、ループ状継手内への補強鉄筋の設置、間詰コンクリートの打設、養生などの現場作業が必要であり、現場作業を極力減らし、施工性のさらなる向上を図ることが強く求められていた。
【0008】
これに対し、図3に示すように、隣り合う一方のプレキャストコンクリートブロック1の接合端面1aから突出する一方の継手部材3と、他方のプレキャストコンクリートブロック2の接合端面2aから突出する他方の継手部材4とを備えるとともに、一方の継手部材3と他方の継手部材4をそれぞれ、接合端面1a、2aから外側に延びる軸部3a、4aと、軸部3a、4aの延出方向先端側に一体に設けられ、軸部3a、4aの延出方向に交差する方向に突出する定着部3b、4bとを備えて構成した継手構造(プレキャストコンクリートブロックの接合部構造)が提案、実用化されている。
【0009】
この継手構造においては、各継手部材3、4が先端側の定着部3b、4bで強固に定着され、隣り合う一方のプレキャストコンクリートブロック1と他方のプレキャストコンクリートブロック2を強固に接合することができる。また、一方の継手部材3と他方の継手部材4とが重なり、互いを結束することで、隣り合う一方のプレキャストコンクリートブロック1と他方のプレキャストコンクリートブロック2をより強固に接合することができる。さらに、ループ状継手と比較し、各継手部材3、4が棒状に形成されるため、床版厚を小さく抑えることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012−26088号公報
【特許文献2】特開2010−236258号公報
【特許文献3】特開2009−264040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の軸部と定着部からなる継手部材を用いて隣り合うプレキャストコンクリートブロック同士を接合する構造においては、互いのプレキャストコンクリートブロックの鉄筋間の引張力の伝達性能が低く、結果として継手長が大きくなるという問題がある。また、継手長が配力筋の間隔よりも大きくなると、接合部に配力筋が必要になり、施工性、経済性の低下を招くという問題もある。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、鉄筋間の引張力の伝達性能に優れ、継手長を小さく抑えることが可能なコンクリート部材の接合部構造及び鉄筋の継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0014】
本発明のコンクリート部材の接合部構造は、隣り合う一方のプレキャストコンクリートブロックの接合端面から一方向に沿って突出する一方の継手部材と、他方のプレキャストコンクリートブロックの接合端面から前記一方向に沿って突出する他方の継手部材とを備え、且つ、前記一方の継手部材と前記他方の継手部材がそれぞれ、前記接合端面から前記一方向に沿って延びる軸部と、前記軸部の先端側に一体に設けられ、前記一方向に交差する方向に突出する定着部とを備え、前記一方の継手部材の定着部と、前記他方の継手部材の定着部とが前記一方向に重なって対峙するように配設されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のコンクリート部材の接合部構造においては、前記一方の継手部材の定着部と、前記他方の継手部材の定着部とが前記一方向で接するように配設されている。
【0016】
本発明のコンクリート部材の接合部構造においては、前記一方の継手部材の定着部と、前記他方の継手部材の定着部との前記一方向の間に支圧領域を設けて構成されていてもよい。
【0017】
本発明のコンクリート部材の接合部構造においては、前記一方の継手部材の定着部と、前記他方の継手部材の定着部と、が所定の角度で交差するように配設されていてもよい。
【0018】
本発明の鉄筋の継手構造は、コンクリート部材の主筋同士を接合するための継手構造であって、一方の主筋の先端側に一体に設けられ、前記一方の主筋の軸方向に交差する方向に突出する一方の定着部と、他方の主筋の先端側に一体に設けられ、前記他方の主筋の軸方向に交差する方向に突出する他方の定着部とを備え、前記一方の定着部と前記他方の定着部とが前記軸方向に重なって対峙するように配設されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の鉄筋の継手構造においては、前記一方の定着部と前記他方の定着部とが前記軸方向で接するように配設されていることが望ましい。
【0020】
さらに、本発明の鉄筋の継手構造においては、前記一方の定着部と前記他方の定着部との前記軸方向の間に支圧領域を設けて構成されていることがより望ましい。
【0021】
そして、本発明の鉄筋の継手構造においては、前記一方の定着部と、前記他方の定着部と、が所定の角度で交差するように配設されていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のコンクリート部材の接合部構造においては、一方の継手部材と他方の継手部材の機械式の互いの定着部を一方向に重ねて正対させることにより、一方の側のコンクリート部材(他方の側のコンクリート部材)の鉄筋に作用する引張力を直接的、あるいはその間にある材料を通じて間接的に、他方の側のコンクリート部材(一方の側のコンクリート部材)の鉄筋に伝達することが可能になる。
【0023】
また、本発明の鉄筋の継手構造においては、一方の継手部材と他方の継手部材の機械式の互いの定着部を一方向に重ねて正対させることにより、接合する互いの主筋に作用する引張力を直接的、あるいはその間にある材料を通じて間接的に伝達することが可能になる。
【0024】
これにより、本発明のコンクリート部材の接合部構造及び鉄筋の継手構造によれば、機械式継手間の支圧により、引張力を好適に伝達でき、継手長を低減できる。また、配力筋の間隔よりも継手長が短い場合は、接合部に配力筋が不要となり、施工性を大幅に向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係るプレストレストコンクリート床板の接合部構造(プレキャストコンクリートブロックの接合部構造、コンクリート部材の接合部構造)を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るプレストレストコンクリート床板の接合部構造(プレキャストコンクリートブロックの接合部構造、コンクリート部材の接合部構造)を示す図である。
図3】従来のプレキャストコンクリート床版の接合部構造(プレキャストコンクリートブロックの接合部構造)を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る鉄筋の継手構造を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る鉄筋の継手構造を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る鉄筋の継手構造を示す別の態様であり、(a)は正面図、(b)は(a)のX−X線に沿う断面図、(c)は(a)のY−Y線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1から図3を参照し、本発明の一実施形態に係る、コンクリート部材の接合部構造及びこれを備えたコンクリート部材の接合部構造体について説明する。
ここで、本実施形態では、本発明に係る、コンクリート部材の接合部構造体が道路橋や鉄道橋などの橋梁の床版、本発明に係るコンクリート部材の接合部構造がプレキャストコンクリート床版の接合部構造であるものとして説明を行う。
【0027】
本実施形態の橋梁の床版(プレキャストコンクリートブロックの接合構造体)は、鋼製桁5上に複数のプレキャストコンクリート床版(プレキャストコンクリートブロック、コンクリート部材)1、2を敷き並べ、隣り合うプレキャストコンクリート床版1、2の端部同士を接合して構成される(図3参照)。
【0028】
一方、本実施形態のプレキャストコンクリート床版の接合部構造(プレキャストコンクリートブロックの接合部構造)Aは、図1(及び図3)に示すように、互いに接合するそれぞれのプレキャストコンクリート床板1、2の接合端面1a、2aから軸方向(一方向)T1外側に突出する継手部材6、7を備えて構成されている。また、各プレキャストコンクリート床板1、2には、複数の継手部材6、7が接合端面1a、2aから突出して設けられている。
【0029】
そして、本実施形態のプレキャストコンクリート床版の接合部構造Aでは、隣り合う一方のプレキャストコンクリートブロック(一方の側のコンクリート部材)1の接合端面1aから軸方向T1に沿って突出する一方の継手部材6と、他方のプレキャストコンクリートブロック(他方の側のコンクリート部材)2の接合端面2aから軸方向T1に突出する他方の継手部材7とがそれぞれ、接合端面1a、2aから軸方向T1に沿って延びる軸部6a、7aと、軸部6a、7aの先端側に一体に設けられ、軸方向T1に交差する方向に突出する定着部6b、7bとを備えて形成されている。
【0030】
さらに、一方の継手部材6の定着部6bと、他方の継手部材7の定着部7bとが軸方向T1に重なって対峙するように配設されている。
【0031】
ここで、本実施形態のプレキャストコンクリート床版の接合部構造Aにおいては、図1(a)、(b)、(c)に示すように、一方の継手部材6の定着部6bと、他方の継手部材7の定着部7bとを軸方向T1で接するように配設して構成してもよいし、図2(a)、(b)、(c)に示すように、間詰めコンクリートを充填する、あるいは、鋼製の駒材を配置するなどして、一方の継手部材6の定着部6bと、他方の継手部材7の定着部7bとの軸方向T1の間に支圧領域8を設けて構成してもよい。
【0032】
また、図1(c)、図2(c)に示すように、1本の一方の継手部材6(あるいは他方の継手部材7)の定着部6bに対し、複数の他方の継手部材7(あるいは一方の継手部材6)の定着部7bとが軸方向T1に重なって対峙するように構成してもよい。
【0033】
上記構成からなる本実施形態のプレキャストコンクリート床板の接合部構造Aにおいては、一方の継手部材6と他方の継手部材7の機械式の互いの定着部6b、7bを軸方向T1に重ねて正対(本実施形態では、互いの定着部6b、7bの平らな面同士を正対)させることにより、一方のプレキャストコンクリートブロック1(2)の鉄筋に作用する引張力Pを直接的、あるいはその間にある材料を通じて間接的に、他方のプレキャストコンクリートブロック2(1)の鉄筋に伝達することが可能になる。
【0034】
これにより、本実施形態のプレキャストコンクリート床板の接合部構造Aによれば、機械式継手間の支圧により、引張力Pを好適に伝達できるため、継手長を低減できる。また、配力筋の間隔よりも継手長が短い場合は、接合部に配力筋が不要となり、施工性を大幅に向上させることが可能になる。
【0035】
以上、本発明に係るコンクリート部材の接合部構造の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0036】
例えば、本実施形態では、本発明に係るコンクリート部材(接合構造体)が道路橋や鉄道橋などの橋梁の床版、本発明に係るコンクリート部材の接合部構造がプレキャストコンクリート床版の接合部構造であるものとして説明を行ったが、必ずしも、橋梁の床版、プレキャストコンクリート床版の接合部構造に限定しなくてもよく、あらゆるプレシャスとコンクリートブロック同士の接合、場所打ちコンクリート部材の接合に適用可能である。
【0037】
一方、本実施形態の接合部構造をコンクリート部材の主筋同士の継手構造に適用してもよい。
具体的に、例えば、図4図5に示すように、一つのコンクリート部材10に埋設される一方の主筋11の先端側に一体に設けられ、一方の主筋11の軸方向(一方向)T1に交差する方向に突出する一方の定着部13と、他方の主筋12の先端側に一体に設けられ、他方の主筋12の軸方向(一方向)T1に交差する方向に突出する他方の定着部14とを備えて鉄筋の継手構造Bを構成する。また、本実施形態と同様に、一方の定着部13と他方の定着部14とを軸方向T1で接するように配設したり、一方の定着部13と他方の定着部14との軸方向T1の間に支圧領域8を設けて構成する。
【0038】
このように構成した本発明に係る鉄筋の継手構造Bにおいては、機械式の互いの定着部13、14を軸方向(一方向)T1に重ねて正対させることにより、接合する互いの主筋11、12に作用する引張力を直接的、あるいはその間にある材料を通じて間接的に伝達することが可能になる。
【0039】
すなわち、例えば従来の重ね継手などと比較し、各主筋11、12に作用した引張力を定着部13、14を通じて好適に伝達させることができ、優れた鉄筋の継手性能を発揮させることが可能になる。
【0040】
また、コンクリート部材の主筋同士の継手構造の別の態様として図6のような構成にしてもよい。
具体的に、一つのコンクリート部材10に埋設される一方の主筋11の先端側に一体に設けられ、一方の主筋11の軸方向(一方向)T1に交差する方向に突出する一方の定着部13と、他方の主筋12の先端側に一体に設けられ、他方の主筋12の軸方向(一方向)T1に交差する方向に突出する他方の定着部14とを備えて鉄筋の継手構造Cを構成する。また、上記実施形態と同様に、一方の定着部13と他方の定着部14とを軸方向T1で接するように配設したり、一方の定着部13と他方の定着部14との軸方向T1の間に支圧領域を設けて構成する。そして、図6においては、一方の定着部13と他方の定着部14とが所定の角度(図6では90°)で交差するように配設されている。なお、交差する角度については90°でなくてもよく、一方の主筋11と他方の主筋12との間で主筋の耐力以上の引張力が伝達されるように一方の定着部13と他方の定着部14とが交差していればどのような角度でも構わない。
【0041】
図6に示すように、主筋11(12)は板状の定着部13(14)における偏芯した位置で接合されている。一方の定着部13と他方の定着部14とは、それぞれ板面が大きい面同士が対向するように配設されている。また、図6(c)に示すように、定着部13,14において主筋11,12が接合されている領域がコンクリート部材10の外側に位置し、定着部13,14が当接または対向する面(支圧を受ける面)13a,14aがコンクリート部材10の内側に位置するように配設されている。
【0042】
図6のように構成することで、正対する鉄筋同士(主筋11,12)の高さが等しくなり、有効高さの小さい方の床版(コンクリート部材)で曲げ耐力が決定されないようになる。また、支圧を受ける面13a,14aをコンクリート部材10の内側に配置することで、鉄筋(主筋11,12)に引張力が作用する場合であってもコンクリート部材10の被り部に亀裂や破壊が生じるのを抑制することができる。また、主筋11,12の延設直交方向のずれを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 一方のプレキャストコンクリート床版(一方のプレキャストコンクリートブロック、一方の側のコンクリート部材)
1a 接合端面
2 他方のプレキャストコンクリート床版(他方のプレキャストコンクリートブロック、他方の側のコンクリート部材)
2a 接合端面
3 従来の一方の継手部材
3a 軸部
3b 定着部
4 従来の他方の継手部材
4a 軸部
4b 定着部
5 鋼製桁(桁)
6 一方の継手部材
6a 軸部
6b 定着部
7 他方の継手部材
7a 軸部
7b 定着部
8 支圧領域
10 コンクリート部材
11 一方の主筋
12 他方の主筋
13 一方の定着部
14 他方の定着部
A プレキャストコンクリート床版の接合部構造(プレキャストコンクリートブロックの接合部構造、コンクリート部材の接合部構造)
B 鉄筋の継手構造
T1 軸方向(一方向)
P 引張力
図1
図2
図3
図4
図5
図6