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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-214947(P2019-214947A)
(43)【公開日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】圧縮比可変機構
(51)【国際特許分類】
   F02B 75/04 20060101AFI20191122BHJP
   F02B 75/32 20060101ALI20191122BHJP
   F02D 15/02 20060101ALI20191122BHJP
【FI】
   F02B75/04
   F02B75/32 A
   F02D15/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-111422(P2018-111422)
(22)【出願日】2018年6月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 裕
(72)【発明者】
【氏名】寺本 潤
(72)【発明者】
【氏名】小原 涼
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AA03
3G092AB03
3G092AB06
3G092AB12
3G092DD05
3G092DG05
3G092EA11
3G092FA13
(57)【要約】
【課題】連通孔に発生する応力集中を低減する。
【解決手段】圧縮比可変機構Vは、ピストンと、ピストンと連結されたピストンロッド112aと、ピストンロッド112aの内部に形成され、ピストンのストローク方向に延在する油路176と、ピストンロッド112aの外周側面に開口する第1開口172b1、および、第1開口172b1に対してピストンロッド112aの径方向に非対向であって、ストローク方向に離間した位置で油路176に接続される第2開口172b2を有する連通孔172bと、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンと、
前記ピストンと連結されたピストンロッドと、
前記ピストンロッドの内部に形成され、前記ピストンのストローク方向に延在する油路と、
前記ピストンロッドの外周側面に開口する第1開口、および、前記第1開口に対して前記ピストンロッドの径方向に非対向であって、前記ストローク方向に離間した位置で前記油路に接続される第2開口を有する連通孔と、
を備えた圧縮比可変機構。
【請求項2】
前記ピストンロッドの外周側面に配され、前記ストローク方向に離間した一対のシール部材を有し、
前記一対のシール部材のいずれか一方は、前記ストローク方向において、前記第1開口と前記第2開口との間に配される
請求項1に記載の圧縮比可変機構。
【請求項3】
前記ピストンロッドに形成され、前記第1開口が開口する大径部と、
前記ピストンロッドに形成され、前記大径部よりも小さい外径を有する小径部と、
前記第2開口と前記ストローク方向にずれた位置に設けられ、前記大径部の外周面と前記小径部の外周面とを繋ぐ曲面部と、
を備える請求項1または2に記載の圧縮比可変機構。
【請求項4】
前記連通孔は、前記ピストンロッドの周方向に複数配され、
複数の前記第1開口のうち少なくとも1つは、複数の前記第1開口のうち他の第1開口と前記ストローク方向において異なる位置に配される
請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧縮比可変機構。
【請求項5】
前記連通孔は、前記ピストンロッドの周方向に複数配され、
複数の前記第2開口のうち少なくとも1つは、複数の前記第2開口のうち他の第2開口と前記ストローク方向において異なる位置に配される
請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧縮比可変機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮比可変機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧縮比可変機構について開示がある。圧縮比可変機構は、ピストンロッドとクロスヘッドピンとの間に形成された油圧室を備えている。油圧室への作動油の供給あるいは排出を行うことで、ピストンの上死点位置が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/108182号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ピストンロッドの内部には、ピストンのストローク方向に延在する冷却油路が形成されている。冷却油路には、ピストンおよびピストンロッドを冷却する冷却油が流通する。また、ピストンロッドには、ピストンロッドの外部と冷却油路とを連通する連通孔が形成されている。連通孔には、ピストンロッドの外部から冷却油が導入される。連通孔には、燃焼圧力の作用により応力が集中し易い。
【0005】
本開示は、連通孔に発生する応力集中を低減することが可能な圧縮比可変機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の圧縮比可変機構は、ピストンと、ピストンと連結されたピストンロッドと、ピストンロッドの内部に形成され、ピストンのストローク方向に延在する油路と、ピストンロッドの外周側面に開口する第1開口、および、第1開口に対してピストンロッドの径方向に非対向であって、ストローク方向に離間した位置で油路に接続される第2開口を有する連通孔と、を備える。
【0007】
ピストンロッドの外周側面に配され、ストローク方向に離間した一対のシール部材を有し、一対のシール部材のいずれか一方は、ストローク方向において、第1開口と第2開口との間に配されてもよい。
【0008】
ピストンロッドに形成され、第1開口が開口する大径部と、ピストンロッドに形成され、大径部よりも小さい外径を有する小径部と、第2開口とストローク方向にずれた位置に設けられ、大径部の外周面と小径部の外周面とを繋ぐ曲面部と、を備えてもよい。
【0009】
連通孔は、ピストンロッドの周方向に複数配され、複数の第1開口のうち少なくとも1つは、複数の第1開口のうち他の第1開口とストローク方向において異なる位置に配されてもよい。
【0010】
連通孔は、ピストンロッドの周方向に複数配され、複数の第2開口のうち少なくとも1つは、複数の第2開口のうち他の第2開口とストローク方向において異なる位置に配されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の圧縮比可変機構によれば、連通孔に発生する応力集中を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ユニフロー掃気式2サイクルエンジンの全体構成を示す説明図である。
図2A図1の一点鎖線部分を抽出した拡大図である。
図2B図2AのIIB―IIB線断面である。
図3A】ピストンロッドが連結穴に浅く進入した状態を示す図である。
図3B】ピストンロッドが連結穴に深く進入した状態を示す図である。
図4】ピストンロッドの流通部近傍の部分拡大図である。
図5】連通孔に発生する応力と連通孔の傾斜角度との関係を表す図である。
図6】プランジャポンプ、スピル弁、および、駆動機構の配置を説明するための説明図である。
図7】油圧調整機構の構成を説明するための説明図である。
図8A】第1油圧室から作動油を排出する際の圧縮比可変機構の動作を説明する図である。
図8B】第1油圧室内の作動油の排出を停止する際の圧縮比可変機構の動作を説明する図である。
図8C】第1油圧室に作動油を供給する際の圧縮比可変機構の動作を説明する図である。
図8D】第1油圧室への作動油の供給を停止する際の圧縮比可変機構の動作を説明する図である。
図9】クランク角とプランジャポンプおよびスピル弁の動作タイミングを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
以下の実施形態では、所謂デュアルフューエル型のエンジンについて説明する。デュアルフューエル型のエンジンは、ガス運転モードとディーゼル運転モードのいずれかの運転モードを選択的に実行することができる。ガス運転モードは、気体燃料である燃料ガスを主に燃焼させる。ディーゼル運転モードは、液体燃料である燃料油を燃焼させる。また、1周期が2サイクル(ストローク)であって、シリンダ内部をガスが一方向に流れるユニフロー掃気式である場合について説明する。しかし、エンジンの種類は、デュアルフューエル型、2サイクル型、ユニフロー掃気式、クロスヘッド型に限られず、レシプロエンジンであればよい。
【0015】
図1は、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン(クロスヘッド型エンジン)100の全体構成を示す説明図である。本実施形態のユニフロー掃気式2サイクルエンジン100は、例えば、船舶等に用いられる。具体的に、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100は、シリンダ110と、ピストン112と、クロスヘッド114と、連結棒116と、クランクシャフト118と、排気ポート120と、排気弁122と、掃気ポート124と、掃気溜126と、冷却器128と、掃気室130と、燃焼室132とを含んで構成される。
【0016】
ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100では、ピストン112がシリンダ110内を往復移動する。ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100では、ピストン112の上昇行程および下降行程の2行程の間に、排気、吸気、圧縮、燃焼、膨張が行われる。ピストン112には、ピストンロッド112aの一端が連結されている。また、ピストンロッド112aの他端には、クロスヘッド114におけるクロスヘッドピン114aが連結されている。クロスヘッド114は、ピストン112と一体的に往復移動する。クロスヘッド114は、クロスヘッドシュー114bによって、ピストン112のストローク方向に垂直な方向(図1中、左右方向)の移動が規制されている。
【0017】
クロスヘッドピン114aは、連結棒116の一端に設けられた孔に挿通されている。クロスヘッドピン114aは、連結棒116の一端を支持する。また、連結棒116の他端は、クランクシャフト118に連結されている。クランクシャフト118は、連結棒116に対して回転する構造となっている。その結果、ピストン112の往復移動に伴いクロスヘッド114が往復移動する。また、クロスヘッド114の往復移動に伴いクランクシャフト118が回転する。
【0018】
排気ポート120は、ピストン112の上死点より上方のシリンダヘッド110aに設けられた開口部である。排気ポート120は、シリンダ110内で生じた燃焼後の排気ガスを排気するために開閉される。排気弁122は、不図示の排気弁駆動装置によって所定のタイミングで上下に摺動される。排気弁122は、上下に摺動されることで、排気ポート120を開閉する。排気ポート120を介して排気された排気ガスは、排気管120aに流入する。排気管120aに流入したガスは、過給機Cのタービン側に供給される。過給機Cのタービン側に供給されたガスは、外部に排気される。
【0019】
掃気ポート124は、シリンダ110の下端側の内周面(シリンダライナ110bの内周面)から外周面まで貫通する孔である。掃気ポート124は、シリンダ110の全周囲に亘って、複数設けられている。掃気ポート124は、ピストン112の摺動動作に応じてシリンダ110内に活性ガスを吸入する。かかる活性ガスは、酸素、オゾン等の酸化剤、または、その混合気(例えば空気)を含む。
【0020】
掃気溜126には、過給機Cのコンプレッサによって加圧された活性ガス(例えば空気)が封入されている。冷却器128は、加圧された活性ガスを冷却する。冷却された活性ガスは、掃気室130に圧入される。掃気室130は、シリンダジャケット110c内に形成される。冷却された活性ガスは、掃気室130とシリンダ110内の差圧をもって掃気ポート124からシリンダ110内に吸入される。
【0021】
また、シリンダヘッド110aには、不図示のパイロット噴射弁が設けられる。ガス運転モードにおいては、エンジンサイクルにおける所定のタイミングで適量の燃料油がパイロット噴射弁から噴射される。かかる燃料油は、燃焼室132の熱で気化して燃料ガスとなる。燃焼室132は、シリンダヘッド110aと、シリンダライナ110bと、ピストン112とに囲繞される。燃焼室132の熱で気化した燃料ガスは、自然着火し、僅かな時間で燃焼して、燃焼室132の温度を極めて高くする。シリンダ110に流入した燃料ガスは、所定のタイミングで確実に燃焼される。ピストン112は、主に燃料ガスの燃焼による膨張圧によって往復移動する。
【0022】
ここで、燃料ガスは、例えば、LNG(液化天然ガス)をガス化して生成されるものとする。また、燃料ガスは、LNGに限らず、例えば、LPG(液化石油ガス)、軽油、重油等をガス化したものを適用することもできる。
【0023】
一方、ディーゼル運転モードにおいては、ガス運転モードにおける燃料油の噴射量よりも多量の燃料油がパイロット噴射弁から噴射される。ピストン112は、燃料ガスではなく、燃料油の燃焼による膨張圧によって往復移動する。
【0024】
このように、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100は、ガス運転モードとディーゼル運転モードのいずれかの運転モードを選択的に実行する。また、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100には、圧縮比可変機構Vが設けられている。圧縮比可変機構Vは、選択された運転モードに応じてピストン112の圧縮比を可変とする。以下、圧縮比可変機構Vについて詳述する。
【0025】
図2Aは、図1の一点鎖線部分を抽出した拡大図であり、図2Bは、図2AのIIB―IIB線断面である。
【0026】
図2A図2Bに示すように、クロスヘッドピン114aには、ピストンロッド112aの端部が挿入される。クロスヘッドピン114aには、連結穴160が形成されている。連結穴160は、クロスヘッドピン114aの軸方向(図2B中、左右方向)と垂直する方向に延在する。連結穴160には、ピストンロッド112aの端部が挿入(進入)されている。連結穴160は、ピストンロッド112aの端部が挿入されることで後述する油圧室を形成する。連結穴160にピストンロッド112aの端部が挿入されることで、クロスヘッドピン114aと、ピストンロッド112aが連結される。
【0027】
ピストンロッド112aには、大径部162aと、第1小径部162bと、第2小径部(小径部)162cが形成されている。大径部162aは、ピストンロッド112aの一端側よりも大きい外径を有する。第1小径部162bは、大径部162aよりも他端側に位置する。第1小径部162bは、大径部162aよりも小さい外径を有する。第2小径部162cは、大径部162aよりも一端側に位置する。第2小径部162cは、大径部162aよりも小さい外径を有する。第2小径部162cは、第1小径部162bよりも大きい外径を有する。
【0028】
連結穴160は、大径穴部164aと、小径穴部164bとを有している。大径穴部164aは、連結穴160におけるピストン112側に位置する。小径穴部164bは、大径穴部164aに対して連結棒116側に連続する。小径穴部164bは、大径穴部164aよりも小さい内径を有する。
【0029】
ピストンロッド112aの第1小径部162bは、連結穴160の小径穴部164bに挿入可能な寸法となっている。ピストンロッド112aの大径部162aは、連結穴160の大径穴部164aに挿入可能な寸法関係となっている。小径穴部164bの内周面には、Oリングで構成される第1シール部材Oが配される。
【0030】
ピストンロッド112aの大径部162aよりピストンロッド112aの一端側には、固定蓋166が設けられている。固定蓋166は、連結穴160よりも大きい外径を有する。固定蓋166は、環状部材である。固定蓋166には、ピストンロッド112aの第2小径部162cが挿通されている。固定蓋166の内周面には、Oリングで構成される第2シール部材Oが配される。
【0031】
クロスヘッドピン114aの外周面には、クロスヘッドピン114aの径方向に窪んだ窪み114cが形成されている。固定蓋166は、窪み114cに当接する。
【0032】
クロスヘッドピン114aの内部には、第1油圧室(油圧室)168aおよび第2油圧室168bが形成されている。第1油圧室168aおよび第2油圧室168bは、ピストンロッド112aとクロスヘッドピン114aとの連結部分に形成される。
【0033】
第1油圧室168aは、大径部162aと第1小径部162bの外径差による段差面と、大径穴部164aの内周面と、大径穴部164aと小径穴部164bの内径差による段差面によって囲繞される。
【0034】
ピストンロッド112aの大径部162aと第1小径部162bの外径差による段差面は、クロスヘッドピン114aの大径穴部164aと小径穴部164bの内径差による段差面と対向する。以下、ピストンロッド112aの大径部162aと第1小径部162bの外径差による段差面を、単にピストンロッド112aの段差面という。また、クロスヘッドピン114aの大径穴部164aと小径穴部164bの内径差による段差面を、単にクロスヘッドピン114aの段差面という。
【0035】
ピストンロッド112aの段差面とクロスヘッドピン114aの段差面は、互いに対向する対向部を構成する。ピストンロッド112aとクロスヘッドピン114aの対向部は、第1油圧室168aを形成する。
【0036】
第2油圧室168bは、大径部162aのうち、ピストンロッド112aの一端側の端面と、大径穴部164aの内周面と、固定蓋166によって囲繞される。大径穴部164aは、ピストンロッド112aの大径部162aによって、ピストンロッド112aの一端側と他端側とに区画される。
【0037】
つまり、大径部162aよりも他端側に区画された大径穴部164aによって第1油圧室168aが形成される。また、大径部162aよりも一端側に区画された大径穴部164aによって第2油圧室168bが形成される。
【0038】
第1油圧室168aには、第1油圧室供給油路170aおよび第1油圧室排出油路170bが連通している。第1油圧室供給油路170aは、一端が大径穴部164aの内周面(第1油圧室168a)に開口し、他端が後述するプランジャポンプを介して油圧ポンプに連通している。第1油圧室排出油路170bは、一端が大径穴部164aの内周面に開口し、他端が後述するスピル弁を介してタンクに連通している。
【0039】
第2油圧室168bには、固定蓋166の壁面に開口する補助油路170cが連通している。補助油路170cは、固定蓋166とクロスヘッドピン114aとの当接部分を介してクロスヘッドピン114aの内部を通り、油圧ポンプに連通している。
【0040】
図3Aは、ピストンロッド112aが連結穴160に浅く進入した状態を示す図である。図3Bは、ピストンロッド112aが連結穴160に深く進入した状態を示す図である。
【0041】
第1油圧室168aは、ピストン112のストローク方向の長さが可変となっている。第1油圧室168aは、第1油圧室供給油路170aを介して作動油が供給可能である。
【0042】
第1油圧室168aに作動油が供給されると、図3Aに示すように、第1油圧室168aのピストン112のストローク方向の長さが長くなる。一方、第2油圧室168bは、ピストン112のストローク方向の長さが短くなる。作動油は、非圧縮性である。そのため、第1油圧室168aに作動油を供給した状態で第1油圧室168aを密閉すると、図3Aの状態を維持することができる。
【0043】
また、第1油圧室168aは、第1油圧室排出油路170bを介して作動油を排出可能である。第1油圧室168aから作動油が排出されると、図3Bに示すように、第1油圧室168aのピストン112のストローク方向の長さが短くなる。一方、第2油圧室168bは、ピストン112のストローク方向の長さが長くなる。
【0044】
このように、ピストンロッド112aおよびクロスヘッドピン114aは、ストローク方向の全長を可変とする。ピストンロッド112aおよびクロスヘッドピン114aを含むピストン112のストローク方向の全長は、ピストンロッド112aの段差面およびクロスヘッドピン114aの段差面のストローク方向の離隔距離に応じて変化する。
【0045】
第1油圧室168aおよび第2油圧室168bのピストン112のストローク方向の長さが変更された分、ピストンロッド112aがクロスヘッドピン114aの連結穴(油圧室)160に進入する進入位置(進入深さ)が変化する。このように、ピストンロッド112aとクロスヘッドピン114aの相対的な位置を変化させることで、ピストン112の上死点および下死点の位置を可変としている。
【0046】
ピストンロッド112aは、クロスヘッドピン114aに連結されている。しかし、図3Bに示す状態では、ピストンロッド112aは、第2油圧室168bの分だけ遊びが生じている。
【0047】
図3Bに示す状態でピストン112が上死点に到達したとき、ピストンロッド112aには、ピストン112側に慣性力が加わる。ピストンロッド112aは、慣性力により、ピストン112側に移動してしまう場合がある。上死点位置のずれが生じないように、第2油圧室168bには、補助油路170cを介して油圧ポンプからの油圧が供給されている。第2油圧室168bに油圧が供給されることで、ピストンロッド112aのピストン112側への移動が抑えられる。
【0048】
ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100は、比較的低速の回転数で用いられる。そのため、ピストンロッド112aに加わる慣性力も比較的小さいものとなる。したがって、第2油圧室168bに供給する油圧が低くても、ピストン112の上死点位置のずれを抑えることができる。
【0049】
ピストンロッド112aには、ピストンロッド112aの外周側面から径方向内側に向かう流通部172が設けられている。クロスヘッドピン114aには、クロスヘッドピン114aの外周面側から連結穴160まで貫通する貫通孔174が設けられている。貫通孔174は、油圧ポンプと連通している。
【0050】
図4は、ピストンロッド112aの流通部172近傍の部分拡大図である。流通部172と貫通孔174は、ピストンロッド112aの径方向に対向している。流通部172は、貫通孔174と連通している。
【0051】
図4に示すように、流通部172は、円環溝172aと、連通孔172bとを含んで構成される。円環溝172aは、ピストンロッド112aの大径部162aの外周側面に形成される。連通孔172bは、円環溝172aよりもピストンロッド112aの内周面側に配される。
【0052】
円環溝172aは、略円環形状である。円環溝172aは、ピストンロッド112aの径方向に一定の深さを有する。連通孔172bは、断面形状が円形であり、一定の内径を有する。円環溝172aのピストン112のストローク方向(図4中、上下方向)の幅は、連通孔172bのピストン112のストローク方向の幅よりも大きい。
【0053】
したがって、図3A図3Bに示すように、ピストンロッド112aとクロスヘッドピン114aの相対的な位置が変わっても、流通部172と貫通孔174の連通状態が維持される。
【0054】
ピストンロッド112aの外周面には、第3シール部材O、第4シール部材Oが配される。具体的に、ピストンロッド112aの大径部162aの外周側面には、ピストン112のストローク方向に離間した一対のシール部材(第3シール部材O、第4シール部材O)が配される。第3シール部材Oと第4シール部材Oとの間に、流通部172の円環溝172aが設けられている。
【0055】
ピストンロッド112aの内部には、ピストン112のストローク方向に延在する油路176が形成されている。油路176には、ピストン112およびピストンロッド112aを冷却する冷却油が流通する。油路176は、内部に冷却管178が配されている。油路176は、冷却管178によってピストンロッド112aの径方向外側の往路176aと内側の復路176bに分けられている。流通部172は、油路176のうちの往路176aに開口している。
【0056】
連通孔172bの一端は、円環溝172a(ピストンロッド112aの外周側面)に開口(接続)する。連通孔172bの他端は、油路176(ピストンロッド112aの内周面)に開口(接続)する。
【0057】
連通孔172bは、円環溝172aと連通する連通部において第1開口172b1を有する。連通孔172bは、油路176と連通する連通部において第2開口172b2を有する。第1開口172b1は、円環溝172aを介してピストンロッド112aの大径部162aの外周側面に開口する。第2開口172b2は、ピストンロッド112aの内周面に開口する。具体的に、第2開口172b2は、ピストンロッド112aの第2小径部162cの内周面に開口する。
【0058】
ところで、連通孔172bには、燃焼圧力の作用により、応力集中が発生し易い。ここで、連通孔172bがピストンロッド112aの径方向に延在している場合、特に、連通孔172bには、応力集中が発生しやすい。
【0059】
連通孔172bに発生する応力集中は、連通孔172bの中心軸とピストンロッド112aの径方向との間の角度(以下、単に連通孔172bの傾斜角度という)が、ピストン112のストローク方向に近づくほど、小さくすることができる。つまり、連通孔172bは、ピストンロッド112aの径方向に延在するのに比べて、ピストン112のストローク方向に傾斜するほど応力集中が緩和される。
【0060】
連通孔172bは、ピストンロッド112aの径方向に延在している場合、第1開口172b1と第2開口172b2が対向している。換言すれば、連通孔172bは、ピストンロッド112aの径方向において、第1開口172b1と第2開口172b2が対向している場合、応力集中が発生しやすい。ここで、連通孔172bは、第1開口172b1と第2開口172b2が対向する程度に傾斜している場合も応力集中が発生しやすい。そこで、本実施形態では、連通孔172bは、ピストンロッド112aの径方向において、第1開口172b1と第2開口172b2とを非対向にしている。
【0061】
つまり、第1開口172b1は、第2開口172b2に対しピストンロッド112aの径方向に重複せずに、ピストン112のストローク方向に離間した位置に形成される。換言すれば、第2開口172b2は、第1開口172b1に対しピストンロッド112aの径方向に重複せずに、ピストン112のストローク方向に離間した位置に形成される。
【0062】
第1開口172b1と第2開口172b2は、連通孔172bの傾斜角度がピストン112のストローク方向に近づくほど離間する。すなわち、連通孔172bに発生する応力集中は、第1開口172b1と第2開口172b2とがピストン112のストローク方向に離間するほど、小さくすることができる。
【0063】
これにより、連通孔172bは、第1開口172b1と第2開口172b2とがピストンロッド112aの径方向に重複している場合よりも、応力集中を低減することができる。
【0064】
また、第1開口172b1は、ピストン112のストローク方向において、第3シール部材Oと第4シール部材Oとの間の領域内に配される。第2開口172b2は、ピストン112のストローク方向において、第3シール部材Oと第4シール部材Oとの間の領域外に配される。本実施形態では、第3シール部材Oは、ピストン112のストローク方向において、第1開口172b1と第2開口172b2との間に配される。ただし、これに限定されず、第4シール部材Oが、ピストン112のストローク方向において、第1開口172b1と第2開口172b2との間に配されてもよい。つまり、一対のシール部材(第3シール部材O、第4シール部材O)のいずれか一方は、ピストン112のストローク方向において、第1開口172b1と第2開口172b2との間に配される。
【0065】
これにより、第1開口172b1は、円環溝172aを介して、クロスヘッドピン114aに設けられた貫通孔174と連通することができる。また、第2開口172b2は、ピストンロッド112aの径方向において、第1開口172b1と非対向となる。連通孔172bは、第1開口172b1と第2開口172b2とを非対向とすることで、応力集中を低減することができる。また、第1開口172b1と第2開口172b2とを非対向とすることで、冷却油の流れの抵抗を小さくすることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、第2開口172b2は、ピストン112のストローク方向において、第1開口172b1に対し、少なくとも第3シール部材Oまたは第4シール部材Oの幅だけ離間して形成される。
【0067】
ピストンロッド112aには、大径部162aと第2小径部162cの外径差による段差部が形成されている。段差部には、ピストンロッド112aの周方向の全周に曲面部162dが形成されている。曲面部162dは、大径部162aの外周面と第2小径部162cの外周面とを繋ぐ。曲面部162dは、ピストンロッド112aに燃焼圧力が加わった際に、段差部に発生する応力集中を低減させる。
【0068】
第2開口172b2は、曲面部162dとピストン112のストローク方向において異なる位置(ずれた位置)に配される。具体的に、第2開口172b2は、曲面部162dよりもピストン112側(図4中、上方向)に配される。
【0069】
第2開口172b2は、曲面部162dに対し、ピストンロッド112aの径方向に重複しない位置に配される。換言すれば、曲面部162dは、ピストン112のストローク方向において、第1開口172b1と第2開口172b2との間に配される。
【0070】
曲面部162dには、燃焼圧力の作用により応力集中が発生しやすい。そのため、第2開口172b2は、曲面部162dに近接する位置に形成されるよりも、曲面部162dから離間した位置に形成される方が応力集中が発生し難い。したがって、第2開口172b2は、ピストン112のストローク方向において曲面部162dから離間した位置に配されることが好ましい。
【0071】
連通孔172bは、ピストンロッド112aの周方向に複数配される。本実施形態では、連通孔172bは、ピストンロッド112aの周方向に離隔して8つ配される。複数の連通孔172bは、ピストンロッド112aの周方向に等間隔で配される。
【0072】
ただし、これに限定されず、連通孔172bの数は、複数でなくてもよく、例えば、1つであってもよい。また、連通孔172bの数は、8つ未満であってもよいし、8つ以上であってもよい。また、複数の連通孔172bは、ピストンロッド112aの周方向に不等間隔で配されてもよい。
【0073】
本実施形態において、複数(8つ)の連通孔172bは、ピストン112のストローク方向においてすべて同じ位置に配される。ここで、同じとは、完全に同じである場合と、許容誤差(加工精度や組付誤差等)の範囲内でずれている場合を含む。
【0074】
ただし、これに限定されず、複数(8つ)の第1開口172b1および第2開口172b2は、ピストン112のストローク方向においてすべて異なる位置に配されてもよい。また、複数(8つ)の第1開口172b1の一部は、複数(8つ)の第1開口172b1の他の一部とピストン112のストローク方向において異なる位置に配されてもよい。
【0075】
つまり、複数(8つ)の第1開口172b1のうち少なくとも1つは、複数(8つ)の第1開口172b1のうち他の第1開口172b1とピストン112のストローク方向において異なる位置に配されてもよい。
【0076】
また、複数(8つ)の第2開口172b2の一部は、複数(8つ)の第2開口172b2の他の一部とピストン112のストローク方向において異なる位置に配されてもよい。つまり、複数(8つ)の第2開口172b2のうち少なくとも1つは、複数(8つ)の第2開口172b2のうち他の第2開口172b2とピストン112のストローク方向において異なる位置に配されてもよい。
【0077】
連通孔172bには、燃焼圧力の作用により、応力集中が発生し易い。そのため、連通孔172bが複数設けられる場合、複数の連通孔172bは、互いに近接する位置に形成されるよりも、互いに離間した位置に形成される方が応力集中が発生し難い。したがって、複数の連通孔172b(第1開口172b1および第2開口172b2)は、ピストン112のストローク方向においてずれた位置に形成されることが好ましい。
【0078】
このように、連通孔172bは、第1開口172b1と第2開口172b2とがピストンロッド112aの径方向に重複せずに、ピストン112のストローク方向に離間した位置に形成される。これにより、連通孔172bに発生する応力集中を低減することができる。
【0079】
ところで、連通孔172bの内径が大きくなるほど、連通孔172bに発生する応力集中は、大きくなる。また、ピストンロッド112aの大径部162aの外径が小さくなるほど、連通孔172bに発生する応力集中は、大きくなる。また、ピストンロッド112aの材料の強度を低下させるほど、連通孔172bに発生する応力集中は、ピストンロッド112aの降伏応力を超えやすくなる。
【0080】
一方、連通孔172bに発生する応力集中は、連通孔172bの傾斜角度がピストン112のストローク方向に近づくほど、小さくすることができる。したがって、連通孔172bの傾斜角度を大きくするほど、連通孔172bの内径を大きくすることができる。また、連通孔172bの傾斜角度を大きくするほど、ピストンロッド112aの大径部162aの外径を小さくすることができる。また、連通孔172bの傾斜角度を大きくするほど、ピストンロッド112aの材料の強度を低下させることができる。
【0081】
つまり、連通孔172bの傾斜角度を大きくするほど、ピストンロッド112aの設計の自由度を高めることができる。ピストンロッド112aの設計の自由度を高めるために、連通孔172bの傾斜角度θは、40°以上に設定されることが好ましい。
【0082】
連通孔172bの傾斜角度を40°以上とすることで、ピストンロッド112aの設計の自由度を高めることができる。具体的に、連通孔172bの傾斜角度を40°以上とすることで、連通孔172bの内径の適用範囲を拡大することができる。また、ピストンロッド112aの大径部162aの外径の適用範囲を拡大することができる。また、ピストンロッド112aの材質の適用範囲を拡大することができる。
【0083】
ただし、連通孔172bの傾斜角度を所定値より大きくした場合、連通孔172bの形成が困難になる場合がある。したがって、連通孔172bの傾斜角度は、65°以下に設定することが好ましい。これにより、連通孔172bの傾斜角度は、40°以上65°以下の範囲に設定することが好ましい。
【0084】
なお、ピストンロッド112aの傾斜角度範囲は、例えば、連通孔172bの内径やピストンロッド112aの大径部162aの外径に応じて変化する。
【0085】
連通孔172bの傾斜角度範囲の下限値は、連通孔172bの内径が大きくなるほど、大きな角度に設定される。また、連通孔172bの傾斜角度範囲の下限値は、大径部162aの外径が大きくなるほど、小さな角度に設定される。
【0086】
図5は、連通孔172bに発生する応力σと連通孔172bの傾斜角度θとの関係を表す図である。実線は、ピストンロッド112aに燃焼圧力が加わった際に連通孔172bに発生する応力σを示し、破線は、ピストンロッド112aの降伏応力を示す。
【0087】
図5では、連通孔172bの内径が16mm、大径部162aの外径が370mm、ピストンロッド112aに加わる燃焼圧力が1000barである場合を例示的に示す。図5に示すように、連通孔172bの傾斜角度θが45°以上である場合、連通孔172bに発生する応力σがピストンロッド112aの降伏応力を下回る。そのため、図5に示す例では、連通孔172bの傾斜角度θは、45°以上に設定することが好ましいことがわかる。
【0088】
このように、連通孔172bの傾斜角度は、連通孔172bの内径およびピストンロッド112aの大径部162aの外径に応じた角度に設定されることで、ピストンロッド112aの設計の自由度を高めることができる。
【0089】
図3Bに戻り、油圧ポンプから供給された冷却油は、貫通孔174、流通部172を介して油路176の往路176aに流入する。往路176aと復路176bは、ピストン112の内部で連通している。往路176aを流れた冷却油は、ピストン112の内壁に到達すると復路176bを通って、第1小径部162b側に戻る。油路176の内壁およびピストン112の内壁に冷却油が接触することで、ピストン112が冷却される。
【0090】
クロスヘッドピン114aには、クロスヘッドピン114aの軸方向に延在する出口孔180が形成されている。小径穴部164bは、出口孔180に連通している。冷却油は、ピストン112を冷却した後に、油路176から小径穴部164bに流入する。小径穴部164bに流入した冷却油は、出口孔180を通って、クロスヘッドピン114a外に排出され、タンクに還流する。
【0091】
第1油圧室168aおよび第2油圧室168bに供給される作動油と、油路176に供給される冷却油は、いずれも同じタンクに還流して同じ油圧ポンプで昇圧される。そのため、油圧を作用させる作動油の供給と、冷却用の冷却油の供給を、1つの油圧ポンプで遂行でき、コストを低減することが可能となる。
【0092】
ピストン112の圧縮比を可変とする圧縮比可変機構Vは、第1油圧室168aの油圧を調整する油圧調整機構196を含んで構成される。続いて、油圧調整機構196について詳述する。油圧調整機構196は、プランジャポンプ182と、スピル弁184と、駆動機構Dとを含んで構成される。
【0093】
図6は、プランジャポンプ182、スピル弁184、および、駆動機構Dの配置を説明するための説明図である。図6は、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100のうち、クロスヘッド114近傍の外観および部分断面を示す。プランジャポンプ182およびスピル弁184は、それぞれ、図6にクロスハッチングで示すクロスヘッドピン114aに取り付けられている。
【0094】
プランジャポンプ182およびスピル弁184それぞれの下方には、機関架橋186aが配されている。機関架橋186aは、クロスヘッド114の往復移動をガイドする2つのガイド板186bに両端が取り付けられ、両ガイド板186bを支持する。
【0095】
機関架橋186aには、駆動機構Dが載置されている。駆動機構Dは、第1カム板188と、第2カム板190と、第1アクチュエータ192と、第2アクチュエータ194とを含んで構成される。第1カム板188および第2カム板190は、それぞれ、第1アクチュエータ192および第2アクチュエータ194によって、機関架橋186a上を図6中、左右の向きに可動する。
【0096】
プランジャポンプ182およびスピル弁184は、ピストン112のストローク方向にクロスヘッドピン114aと一体に往復移動する。一方、第1カム板188および第2カム板190は、機関架橋186a上にあって、機関架橋186aに対してピストン112のストローク方向には移動しない。
【0097】
図7は、油圧調整機構196の構成を説明するための説明図である。図7に示すように、油圧調整機構196は、プランジャポンプ182と、スピル弁184と、第1カム板188と、第2カム板190と、第1アクチュエータ192と、第2アクチュエータ194と、第1切換弁198と、第2切換弁200と、位置センサ202と、油圧制御部204とを含んで構成される。
【0098】
プランジャポンプ182は、ポンプシリンダ182aと、プランジャ182bとを含んで構成される。ポンプシリンダ182aは、油圧ポンプPに連通する供給油路を介して、内部に作動油が導かれる。プランジャ182bは、ポンプシリンダ182a内をストローク方向に移動するとともに一端がポンプシリンダ182aから突出する。
【0099】
第1カム板188は、ピストン112のストローク方向に対して傾斜する傾斜面188aを有する。第1カム板188は、プランジャポンプ182のストローク方向の下方に配置されている。そして、プランジャポンプ182がストローク方向に移動すると、下死点に近いクランク角において、ポンプシリンダ182aから突出したプランジャ182bの一端が、第1カム板188の傾斜面188aに接触する。
【0100】
そして、プランジャ182bは、第1カム板188の傾斜面188aから、クロスヘッド114の往復移動の力に対向する反力を受けて、ポンプシリンダ182a内に押し込まれる。このとき、プランジャポンプ182は、ポンプシリンダ182a内の作動油を第1油圧室168aに供給(圧入)する。
【0101】
第1アクチュエータ192は、第1切換弁198を介して供給される作動油の油圧によって作動する。第1アクチュエータ192は、第1カム板188をストローク方向と交差する方向(ここでは、ストローク方向に垂直な方向)に移動させる。すなわち、第1アクチュエータ192は、第1カム板188を可動し、第1カム板188のプランジャ182bに対する相対位置を変化させる。
【0102】
このように、第1カム板188がストローク方向に垂直な方向に移動すると、プランジャ182bと第1カム板188とのストローク方向における接触位置が相対変化する。例えば、図7中、左側に第1カム板188が移動すると、接触位置はストローク方向の上方に変位する。図7中、右側に第1カム板188が移動すると、接触位置はストローク方向の下方に変位する。プランジャ182bは、第1カム板188との接触位置によってポンプシリンダ182aに対する最大押し込み量が設定される。
【0103】
スピル弁184は、本体184aと、弁体184bと、ロッド184cとを含んで構成される。スピル弁184の本体184aの内部には、第1油圧室168aから排出された作動油が流通する内部流路が形成されている。弁体184bは、本体184a内の内部流路に配される。ロッド184cは、一端が本体184a内の弁体184bに対向し、他端が本体184aから突出している。
【0104】
第2カム板190は、ストローク方向に対して傾斜する傾斜面190aを有する。第2カム板190は、ロッド184cのストローク方向の下方に配置されている。そして、スピル弁184がストローク方向に移動すると、下死点に近いクランク角において、スピル弁184の本体184aから突出したロッド184cの一端が、第2カム板190の傾斜面190aに接触する。
【0105】
そして、ロッド184cは、第2カム板190の傾斜面190aから、クロスヘッド114の往復移動の力に対向する反力を受けて、本体184a内に押し込まれる。スピル弁184は、ロッド184cが本体184a内に所定量以上押し込まれることで弁体184bが移動する。スピル弁184は、弁体184bが移動すると、内部流路を作動油が流通可能となって、第1油圧室168aからタンクTに向かって作動油が排出される。
【0106】
第2アクチュエータ194は、第2切換弁200を介して供給される作動油の油圧によって作動する。第2アクチュエータ194は、第2カム板190をストローク方向と交差する方向(ここでは、ストローク方向に垂直な方向)に移動させる。すなわち、第2アクチュエータ194は、第2カム板190を可動し、第2カム板190のロッド184cに対する相対位置を変化させる。
【0107】
第2カム板190の相対位置に応じて、ロッド184cと第2カム板190とのストローク方向における接触位置が変化する。例えば、図7中、左側に第2カム板190が移動すると、接触位置はストローク方向の上方に変位する。図7中、右側に第2カム板190が移動すると、接触位置はストローク方向の下方に変位する。ロッド184cは、第2カム板190との接触位置によって本体184aに対する最大押し込み量が設定される。
【0108】
位置センサ202は、ピストンロッド112aのストローク方向の位置を検知して、ストローク方向の位置を示す信号を出力する。
【0109】
油圧制御部204は、位置センサ202からの信号を取得し、ピストンロッド112aとクロスヘッドピン114aの相対的な位置を特定する。油圧制御部204は、第1アクチュエータ192および第2アクチュエータ194を駆動させて、第1油圧室168a内の油圧(作動油の油量)を調整する。油圧制御部204は、ピストンロッド112aとクロスヘッドピン114aの相対的な位置が設定位置となるように、第1油圧室168a内の油圧(作動油の油量)を調整する。
【0110】
図8Aは、第1油圧室168aから作動油を排出する際の圧縮比可変機構Vの動作を説明する図である。図8Bは、第1油圧室168a内の作動油の排出を停止する際の圧縮比可変機構Vの動作を説明する図である。図8Cは、第1油圧室168aに作動油を供給する際の圧縮比可変機構Vの動作を説明する図である。図8Dは、第1油圧室168aへの作動油の供給を停止する際の圧縮比可変機構Vの動作を説明する図である。
【0111】
図8Aでは、ロッド184cと第2カム板190の接触位置が比較的高い位置となるように、第2カム板190の相対位置が調整されている。そのため、下死点に近いクランク角において、スピル弁184の本体184aにロッド184cが深くまで押し込まれる。ロッド184cは、弁体184bを移動させ、第1油圧室168aから作動油が排出される。このとき、第2油圧室168bには油圧ポンプPの油圧が作用していることから、ピストンロッド112aとクロスヘッドピン114aの相対的な位置が安定して保持されている。
【0112】
この状態において、ピストン112の上死点は低くなっている(クロスヘッドピン114a側に近くなっている)。すなわち、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100の圧縮比は小さくなっている。
【0113】
そして、油圧制御部204は、ECU(Engine Control Unit)などの上位の制御部からユニフロー掃気式2サイクルエンジン100の圧縮比を大きくする指示を受けると、図8Bに示すように、第2カム板190を図8B中、右側に移動させる。その結果、ロッド184cと第2カム板190の接触位置が低くなる。ロッド184cは、下死点に近いクランク角において、本体184a内に押し込まれなくなる。スピル弁184は、ピストン112のストローク位置に拘わらず、弁体184bが閉じた状態に維持される。すなわち、第1油圧室168a内の作動油が排出されなくなる。
【0114】
油圧制御部204は、図8Cに示すように、第1カム板188を図8C中、右側に移動させる。その結果、プランジャ182bと第1カム板188の接触位置が高くなる。プランジャ182bは、下死点に近いクランク角において、第1カム板188からの反力によってポンプシリンダ182a内に押し込まれる。このとき、ポンプシリンダ182a内の作動油は、第1油圧室168aに圧入される。
【0115】
ピストンロッド112aは、図8Cに示すように、油圧によって押し上げられる。ピストンロッド112aは、図8Cに示すように、クロスヘッドピン114aとの相対的な位置が変位し、ピストン112の上死点が高くなる(クロスヘッドピン114a側から遠くなる)。すなわち、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100の圧縮比は大きくなる。
【0116】
プランジャポンプ182は、ピストン112の1ストローク毎に、プランジャポンプ182内に蓄えられた作動油を、第1油圧室168aに圧入する。ここでは、プランジャポンプ182内の最大容積に対して、第1油圧室168aの最大容積が数倍あるとする。そのため、油圧制御部204は、プランジャポンプ182がピストン112のストローク何回分、動作をするかによって、第1油圧室168aに圧入される作動油の量を調整する。油圧制御部204は、第1油圧室168aに圧入される作動油の量を調整することで、ピストンロッド112aの押し上げ量を調整する。
【0117】
ピストンロッド112aとクロスヘッドピン114aの相対的な位置が所望の位置となると、油圧制御部204は、第1カム板188を図8D中、右側に移動させる。その結果、プランジャ182bと第1カム板188の接触位置を低くする。こうして、プランジャ182bは、下死点に近いクランク角において、ポンプシリンダ182a内に押し込まれることがなくなる。このとき、プランジャポンプ182は、作動を停止し、第1油圧室168aへの作動油の圧入が停止される。
【0118】
こうして、油圧調整機構196は、第1油圧室168aに対するストローク方向のピストンロッド112aの進入位置を調整する。圧縮比可変機構Vは、油圧調整機構196によって第1油圧室168aの油圧を調整し、ピストンロッド112aおよびクロスヘッド114のストローク方向の相対的な位置を変更する。これにより、圧縮比可変機構Vは、ピストン112の上死点および下死点の位置を可変とする。
【0119】
図9は、クランク角とプランジャポンプ182およびスピル弁184の動作タイミングを説明するための説明図である。図9においては、説明の便宜上、第1カム板188の傾斜面188aとの接触位置が異なる2つのプランジャポンプ182を並べて示す。しかし、実際には、プランジャポンプ182は、1つであって、第1カム板188が移動することで、プランジャポンプ182との接触位置が変位する。また、スピル弁184および第2カム板190は図示を省略する。
【0120】
図9に示すように、下死点手前から下死点までのクランク角の範囲を角aとし、下死点から角aと同じ大きさの位相角分のクランク角の範囲を角bとする。また、上死点手前から上死点までのクランク角の範囲を角cとし、上死点から角cと同じ大きさの位相角分のクランク角の範囲を角dとする。
【0121】
プランジャポンプ182と第1カム板188の相対位置が、図9中、右側に示すプランジャポンプ182で示される状態であるとき、プランジャ182bは、第1カム板188の傾斜面188aと、クランク角が角aの開始位置で接触を開始する。そして、プランジャ182bは、傾斜面188aと、クランク角が下死点を超えて角bの終了位置で接触が解除される。図9中、プランジャポンプ182のストローク幅を幅sで示す。
【0122】
また、プランジャポンプ182と第1カム板188の相対位置が、図9中、左側に示すプランジャポンプ182で示される状態であるとき、プランジャポンプ182のプランジャ182bは、クランク角が下死点で接触する。しかし、プランジャ182bはポンプシリンダ182aに押し込まれることなく、すぐに離隔する。
【0123】
このように、プランジャポンプ182は、クランク角が角aおよび角bの範囲にあるとき動作する。具体的には、クランク角が角aの範囲にあるとき、プランジャポンプ182は、作動油を第1油圧室168aに圧入する。また、クランク角が角bの範囲にあるとき、プランジャポンプ182は、作動油を吸入する。
【0124】
また、スピル弁184は、クランク角が角aおよび角bの範囲にあるとき動作する。具体的には、クランク角が角aの開始位置から角bの終了位置までの間、スピル弁184は、作動油を第1油圧室168aから排出する。
【0125】
ここでは、プランジャポンプ182およびスピル弁184は、クランク角が角aおよび角bの範囲にあるとき動作する場合について説明した。しかし、プランジャポンプ182およびスピル弁184は、クランク角が角cおよび角dの範囲にあるとき動作してもよい。この場合、クランク角が角cの範囲にあるとき、プランジャポンプ182は、作動油を第1油圧室168aに圧入する。また、クランク角が角dの範囲にあるとき、プランジャポンプ182は、作動油を吸入する。また、クランク角が角cの開始位置から角dの終了位置までの間、スピル弁184は、作動油を第1油圧室168aから排出する。
【0126】
なお、上死点や下死点以外のストローク範囲でプランジャポンプ182やスピル弁184を動作させることも可能である。その場合、駆動機構Dを、プランジャポンプ182やスピル弁184の往復移動に同期させて移動させなければならない。しかし、本実施形態のように、上死点や下死点付近で、プランジャポンプ182やスピル弁184を動作させることで、このような同期機構を設けずともよく、コストを低減することが可能となる。
【0127】
また、シリンダ110内の圧力は、クランク角が上死点を挟んだ角度範囲(角c、角d)よりも下死点を挟んだ角度範囲(角a、角b)の方が低い。このことから、プランジャポンプ182から第1油圧室168aへの作動油の圧入は、クランク角が上死点を挟んだ角度範囲よりも下死点を挟んだ角度範囲の方が容易になる。
【0128】
また、スピル弁184から排出される作動油の油圧は、上死点を挟んだ角度範囲(角c、角d)よりも下死点を挟んだ角度範囲(角a、角b)の方が低い。このことから、第1油圧室168aの作動油の排出は、クランク角が上死点を挟んだ角度範囲よりも下死点を挟んだ角度範囲の方が、キャビテーションの発生を抑え、スピル弁184を作動させる荷重を低く抑えることが可能となる。
【0129】
本実施形態の圧縮比可変機構Vによれば、連通孔172bは、第1開口172b1と第2開口172b2とがピストンロッド112aの径方向に重複せずに、ピストン112のストローク方向に離間した位置に形成される。これにより、連通孔172bに発生する応力集中を低減することができる。
【0130】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0131】
上記実施形態では、圧縮比可変機構Vは、ピストンロッド112aの段差面と、クロスヘッドピン114aの段差面との間に油圧室を形成する場合について説明した。しかし、油圧室は、ピストン112と、ピストンロッド112aとの間に油圧室を形成してもよい。
【0132】
また、連通孔172bは、第2小径部162c側(図4中、上方向)に傾斜している例について説明した。しかし、これに限定されず、連通孔172bは、第1小径部162b側(図4中、下方向)に傾斜してもよい。
【0133】
また、連通孔172bは、冷却油を供給する冷却油供給用に使用される例について説明した。しかし、これに限定されず、連通孔172bは、冷却油を排出する冷却油排出用に使用されてもよい。
【0134】
また、連通孔172bは、冷却油を流通させる冷却油流通用に使用される例について説明した。しかし、これに限定されず、連通孔172bは、作動油を流通させる作動油流通用に使用されてもよい。例えば、ピストン112とピストンロッド112aとの間に油圧室が形成される場合、連通孔172bは、作動油をピストン112とピストンロッド112aとの間の油圧室に流通させてもよい。
【0135】
また、連通孔172bは、内径が一定である場合について説明した。しかし、これに限定されず、連通孔172bは、内径が一定でなくてもよい。例えば、連通孔172bは、第1開口172b1の内径が第2開口172b2の内径より大きくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本開示は、圧縮比可変機構に利用することができる。
【符号の説明】
【0137】
第3シール部材(一対のシール部材)
第4シール部材(一対のシール部材)
V 圧縮比可変機構
112 ピストン
112a ピストンロッド
162a 大径部
162c 第2小径部(小径部)
162d 曲面部
172b 連通孔
172b1 第1開口
172b2 第2開口
176 油路
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9