【解決手段】排熱回収システム40は、排ガスが流通する流路を形成するファンネルと、流路内に設けられた第2段熱交換器43と、流路内における第2段熱交換器43よりも排ガスの流れ方向下流側に設けられた第3段熱交換器44と、第2段熱交換器43と第3段熱交換器44とに接続可能とされ、所定の流量が定常的に流通する低圧ライン52と、第3段熱交換器44に接続可能とされた給水ライン53と、低圧ライン52が第2段熱交換器43に接続されるとともに給水ライン53が第3段熱交換器44に接続された第1状態と、低圧ライン52を第2段熱交換器43と第3段熱交換器44とに接続した第2状態との間で低圧ライン52及び給水ライン53の接続状態を切り替える切替部60と、を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排ガスの流路となる煙道では、例えば、排ガスに含まれる燃料の未燃分やスス等に着火し、いわゆるバックファイヤが生じる場合がある。通常時においては、節炭器は、蒸気を生成するために供給されている水によって冷却されるため、バックファイヤによる焼損は抑えられている。しかし、何らかの原因で、節炭器に供給される水の量が少ないときにバックファイヤが生じると焼損してしまう可能性がある。
【0005】
また、例えば、排ガスに硫黄分が含まれる場合、排ガス温度が低下すると硫黄分が析出し、硫酸が生成される。この硫酸により、節炭器や煙道が腐食してしまう可能性がある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、バックファイヤや硫黄分の析出による損傷を抑えることができる排熱回収システム、船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
この発明の第1態様によれば、排熱回収システムは、排ガスが流通する流路を形成する流路形成部と、前記流路内に設けられた一次熱交換器と、前記流路内における前記一次熱交換器よりも前記排ガスの流れ方向下流側に設けられた二次熱交換器と、前記一次熱交換器と前記二次熱交換器とに接続可能とされ、所定の流量が定常的に流通する第1ラインと、前記二次熱交換器に接続可能とされた第2ラインと、前記第1ラインが前記一次熱交換器に接続されるとともに前記第2ラインが前記二次熱交換器に接続された第1状態と、前記第1ラインを前記一次熱交換器と前記二次熱交換器とに接続した第2状態との間で前記第1ライン及び前記第2ラインの接続状態を切り替える切替部と、を備える。
【0007】
このように構成することで、通常状態においては、第1ラインが一次熱交換器に接続されるとともに第2ラインが二次熱交換器に接続された第1状態とする。一次熱交換器よりも排ガスの流れ方向下流側に設けられた二次熱交換器において、バックファイヤや硫黄分の析出による損傷が生じそうな場合には、切替部で第1ライン及び第2ラインの接続状態を第2状態に切り替える。
例えば、第1状態で二次熱交換器を流れる水の流量が少なくなった場合、第2状態に切り替えることで、所定の流量が定常的に流通する第1ラインから二次熱交換器に水が送り込まれる。これにより、二次熱交換器でバックファイヤによる焼損が生じにくくなる。
また、排ガスは、一次熱交換器、二次熱交換器で順次熱交換を行う結果、上流側から下流側に向かって排ガスの温度が低くなる。このため、第1状態では、一次熱交換器よりも排ガスの流れ方向下流側に設けられた二次熱交換器を流れる水の温度は、一次熱交換器を流れる水の温度よりも低くなる。これに対し、第2状態において、第1ラインから一次熱交換器と二次熱交換器とに、第1ラインよりも高い温度の水を送り込めば、二次熱交換器を流れる水の温度が高くなる。すると、二次熱交換器の周囲の排ガス温度の低下が抑えられ、硫黄分の析出を抑えることができる。
このようにして、バックファイヤや硫黄分の析出による損傷を抑えることができる。
【0008】
この発明の第二態様によれば、第1態様に係る前記切替部は、前記第2状態において、前記第2ラインを前記二次熱交換器から切り離すようにしてもよい。
このように構成することで、第2状態では、二次熱交換器に、第1ラインからのみ水が供給される。これにより、二次熱交換器に送り込まれる水の量を、より多くすることができる。
【0009】
この発明の第三態様によれば、第一又は第二態様に係る前記切替部は、前記第2状態において、前記二次熱交換器を経た水を前記一次熱交換器に供給するようにしてもよい。
このように構成することで、第2状態では、二次熱交換器で排ガスと熱交換することで、温度が上昇した水が一次熱交換器に供給される。これにより、一次熱交換器において、水を効率良く加熱することができ、熱エネルギーの有効利用が図られる。
【0010】
この発明の第四態様によれば、第一から第三態様の何れか一つの態様に係る前記第2ラインは、前記第2ラインに接続された負荷装置における負荷量に応じて流量が変動するようにしてもよい。
このように構成することで、負荷装置における負荷量によって、第2ラインにおける水の流量が減少した場合、切替部で第2状態に切り替えて第1ラインから二次熱交換器に水を供給することができる。これにより、二次熱交換器に供給される流量を増やすことができる。その結果、二次熱交換器の焼損を抑えることができる。
【0011】
この発明の第五態様によれば、第四態様に係る排熱回収システムは、前記第2ラインにおける水の流量を検出する流量検出部をさらに備え、前記切替部は、前記第1状態であるときに、前記流量検出部で検出される前記第2ラインにおける水の流量が予め定めた閾値を下回った場合、前記第2状態に切り替えるようにしてもよい。
このように構成することで、第1状態において、流量検出部で検出される第2ラインにおける水の流量が予め定めた閾値を下回った場合、第2状態に切り替えることで、二次熱交換器に供給される流量を増やすことができる。その結果、二次熱交換器の焼損を、より確実に抑えることができる。
【0012】
この発明の第六態様によれば、第一から第五態様の何れか一つの態様に係る前記切替部は、前記排ガスを生成する排ガス生成部で使用する燃料の種類に応じて、前記第1状態及び前記第2状態の何れか一方を選択的に切り替えるようにしてもよい。
このように構成することで、例えば、硫黄分の含有量が少ない燃料を用いる場合、第1状態を選択し、硫黄分の含有量が多い燃料を用いる場合には、第2状態を選択することができる。硫黄分の含有量が多い燃料を用いる場合、排ガスに含まれる硫黄分が多くなる。このような場合に第2状態を選択することで、二次熱交換器には、第1ラインを通して、一次熱交換器を流れる、より高温の水が流れる。これにより、二次熱交換器の周囲の排ガス温度の低下が抑えられ、硫黄分の析出を抑えることができる。
【0013】
この発明の第七態様によれば、第六態様に係る前記切替部は、前記燃料に含まれる硫黄分が予め定めた基準値を上回る場合、前記第2状態を選択するようにしてもよい。
このように構成することで、燃料に含まれる硫黄分が予め定めた基準値を上回る場合、第2状態を選択することで、二次熱交換器の周囲における排ガス温度の低下が確実に抑えられる。これにより、硫黄分の析出を、より確実に抑えることができる。
【0014】
この発明の第八態様によれば、第一から第七態様の何れか一つの態様に係る排熱回収システムは、前記切替部の動作を制御する制御部をさらに備えるようにしてもよい。
このように構成することで、第2ラインにおける水の流量や、燃料の種類等に応じて、切替部で第1状態と第2状態とを自動的に切り替えることができる。これにより、バックファイヤや硫黄分の析出による損傷を、より確実に抑えることができる。
【0015】
この発明の第九態様によれば、船舶は、第一から第八態様の何れか一つの態様に係る排熱回収システムを備える。
このように構成することで、バックファイヤや硫黄分の析出による損傷を抑えることができる排熱回収システムを備えた船舶を提供できる。
【0016】
この発明の第十態様によれば、第九態様に係る船舶は、燃料を燃焼させることで発生した駆動力によって駆動される発電機と、前記発電機で発生した電力によって駆動される電動機と、前記電動機の駆動力によって推進力を発生する第1推進力発生部と、前記第2ラインを介して送り込まれた水を加熱して蒸気を生成するボイラーと、前記ボイラーで生成された蒸気によって駆動される蒸気タービンと、前記蒸気タービンの駆動力によって推進力を発生する際に第2推進力発生部と、を備えるようにしてもよい。
このように構成することで、第1推進力発生部の駆動源となる発電機で駆動力を発生するために、燃料を燃焼させると、排ガスが発生する。この発生した排ガスの熱エネルギーを利用し、排熱回収システムの一次熱交換器、二次熱交換器で水を加熱する。加熱された水を、第2推進力発生部側のボイラーに送り込むことで、蒸気を効率良く生成することができる。これにより、第1推進力発生部及び第2推進力発生部を備えた船舶において、熱エネルギーを有効に利用しつつ、バックファイヤや硫黄分の析出による損傷を抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
上記排熱回収システム、船舶によれば、バックファイヤや硫黄分の析出による損傷を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の一実施形態における排熱回収システム、船舶を、図面に基づき説明する。
図1は、この実施形態における排熱回収システムを備えた船舶の船尾部の概略構成を示す図である。
図2は、
図1のA−A矢視断面図である。
図1に示すように、この実施形態の船舶10は、船体11と、第1推進機構(第1推進力発生部)20と、第2推進機構(第2推進力発生部)30(
図2参照)と、排熱回収システム40と、を備えている。なお、この実施形態の説明においては、二つのスケグを有したツインスケグ船を一例にして説明するが、ツインスケグ船に限られるものでは無い。
【0020】
船体11は、その船尾部11bの船底12に、傾斜面12sを有している。傾斜面12sは、船首(図示無し)側から船尾部11b側に向かうにしたがって、漸次上方に傾斜している。
図1、
図2に示すように、船底12の傾斜面12sには、船幅方向に間隔をあけて、左右一対のスケグ13A、13Bが設けられている。左右一対のスケグ13A、13Bは、それぞれ、傾斜面12sから後方に向けて突出するよう設けられている。
【0021】
第1推進機構20は、エンジン(排ガス生成部)21と、発電機22と、電動機23と、プロペラ軸24と、プロペラ25と、を備えている。
【0022】
エンジン21は、燃料を燃焼させることで出力軸(図示無し)を回転駆動させる。エンジン21の出力軸は、発電機22に連結されている。エンジン21は、燃料として、LNG(Liquefied Natural Gas)、燃料油(Fuel oil)等を選択して用いることができる。この実施形態では、エンジン21は、燃料油のうち、HFO(Heavy Fuel Oil: 重質燃料油)を燃料として用いることができる。
発電機22は、エンジン21の出力軸の回転が伝達されることによって駆動され、電力を発生する。
電動機23は、発電機22で発生した電力により、プロペラ軸24を、その中心軸回りに回転駆動させる。
【0023】
プロペラ軸24は、スケグ13Aに設けられている。プロペラ軸24は、その一端24aが船体11内で電動機23に接続され、他端24bが、船体11内からスケグ13Aの後方に突出している。
プロペラ25は、プロペラ軸24の他端24bに一体に固定され、プロペラ軸24と一体に回転する。
【0024】
図2に示すように、第2推進機構30は、メインボイラー(ボイラー)31と、蒸気タービン(負荷装置)32と、プロペラ軸34と、プロペラ35と、を備えている。
【0025】
メインボイラー31は、水を加熱することで、蒸気を発生させる。
蒸気タービン32は、メインボイラー31で生成された蒸気により、プロペラ軸34を、その中心軸回りに回転駆動させる。
【0026】
プロペラ軸34は、スケグ13Bに設けられている。プロペラ軸34は、その一端34aが船体11内で蒸気タービン32に接続され、他端34bが、船体11内からスケグ13Bの後方に突出している。
プロペラ35は、プロペラ軸34の他端34bに一体に固定され、プロペラ軸34と一体に回転する。
【0027】
このような第1推進機構20、及び第2推進機構30は、電動機23及び蒸気タービン32により、プロペラ軸24,34がその中心軸周りに回転駆動されることで、プロペラ25,35が所定方向に回転し、船舶10の推進力を発揮する。
【0028】
図1に示すように、船舶10は、船体11の船尾部11bの上部に、ファンネル(流路形成部)18を備えている。ファンネル18は、筒状で、上下方向に延びている。ファンネル18は、エンジン21で燃料を燃焼させることによって発生する排ガスの流路18rを形成する。
【0029】
図3は、この実施形態における排熱回収システムの構成を示す図である。
図3に示すように、排熱回収システム40は、節炭器41と、高圧ライン51と、低圧ライン(第1ライン)52と、給水ライン(第2ライン)53と、切替部60と、制御部70と、を備える。
【0030】
図1に示すように、節炭器41は、例えば、ファンネル18内に設けられている。節炭器41は、ファンネル18の流路18rを流れる排ガスの熱を回収して、蒸気を生成するための水を加熱する。
図3に示すように、この実施形態において、節炭器41は、排ガスの流れ方向上流側から下流側に向かって三段の第1段熱交換器42、第2段熱交換器(一次熱交換器)43、第3段熱交換器(二次熱交換器)44を備えている。
【0031】
第1段熱交換器42、第2段熱交換器43、第3段熱交換器44は、それぞれ、入口ヘッダー管45、出口ヘッダー管46、枝管47を備えている。入口ヘッダー管45と出口ヘッダー管46とは、水の流れ方向に間隔をあけて配置されている。枝管47は、入口ヘッダー管45と出口ヘッダー管46とを連通する。枝管47は、複数本が並設されている。これにより、入口ヘッダー管45に流入した水は、複数本の枝管47に分岐して流れる。複数の枝管47を経た水は、出口ヘッダー管46に流入する。
【0032】
第1段熱交換器42、第2段熱交換器43、第3段熱交換器44は、それぞれ、ファンネル18の流路18rを流れる排ガスの熱エネルギーにより、入口ヘッダー管45から複数の枝管47を経て出口ヘッダー管46へと流れる水を加熱する。ここで、第1段熱交換器42、第2段熱交換器43、第3段熱交換器44のそれぞれで水との熱交換を行うことにより、ファンネル18の流路18r内の排ガスは、その温度が徐々に低下する。すなわち、第1段熱交換器42、第2段熱交換器43、第3段熱交換器44は、排ガスの流れ方向最上流側の第1段熱交換器42が高温側、流れ方向最下流側の第3段熱交換器44が低温側となる。
【0033】
高圧ライン51は、高圧入口側ライン51Aと、高圧出口側ライン51Bとを備えている。高圧入口側ライン51Aは、セパレータ19で蒸気と分離された水を、ポンプ19pを介して第1段熱交換器42の入口ヘッダー管45に供給する。
高圧出口側ライン51Bは、第1段熱交換器42で排ガスと熱交換することで加熱されて蒸気と水とが混在した水を、出口ヘッダー管46からセパレータ19に供給する。セパレータ19は、第1段熱交換器42で加熱された水と蒸気とを分離する。セパレータ19で分離された蒸気は、船内蒸気として供給される。このように、第1段熱交換器42で加熱された水をセパレータ19に供給することによって、セパレータ19で蒸気を生成するのに必要なエネルギー量が抑えられる。なお、上記セパレータ19に代えて、補助ボイラーを用いるようにしてもよい。
【0034】
低圧ライン52は、低圧入口側ライン52Aと、低圧出口側ライン52Bとを備えている。
低圧入口側ライン52Aは、セパレータ55で蒸気と分離された水を、ポンプ56を介して第2段熱交換器43の入口ヘッダー管45に供給する。
低圧出口側ライン52Bは、第2段熱交換器43で加熱されることで蒸気と水とが混在した水を、出口ヘッダー管46からセパレータ55に供給する。セパレータ55は、第2段熱交換器43で加熱された水と蒸気とを分離する。このようにして、セパレータ55で分離された蒸気は、蒸気タービン32や船内蒸気として供給される。また、蒸気の生成にともなって減少した分の水は、外部からの給水により補給される。
【0035】
給水ライン53は、給水入口側ライン53Aと、給水出口側ライン53Bとを備える。
給水入口側ライン53Aは、蒸気タービン32から排出され、復水器33、ヒーター(図示無し)を経た水を第3段熱交換器44の入口ヘッダー管45に送り込む。ヒーター(図示無し)は、例えば、第2段熱交換器43で加熱された水(蒸気)を熱源として、給水入口側ライン53Aの水を加熱する。
給水出口側ライン53Bは、第3段熱交換器44で排ガスと熱交換することによって加熱された水を、脱気器36に供給する。脱気器36では、第3段熱交換器44で加熱された水から酸素を除去する。脱気器36を経た水は、ポンプ38、ヒーター39を経て、メインボイラー31に供給される。ヒーター39は、第1段熱交換器42で加熱された水(蒸気)を熱源として、給水出口側ライン53Bの水を加熱する。このように、第3段熱交換器44で加熱された水をメインボイラー31に供給することによって、メインボイラー31で蒸気を生成するのに必要なエネルギー量が抑えられる。
【0036】
切替部60は、低圧ライン52と、給水ライン53との接続状態を切り替える。切替部60は、第1三方弁61と、第2三方弁62と、第3三方弁63と、第1バイパスライン64と、第2バイパスライン65と、第3バイパスライン66と、を備えている。
【0037】
第1三方弁61は、低圧入口側ライン52Aに設けられている。第2三方弁62は、給水入口側ライン53Aに設けられている。第3三方弁63は、給水出口側ライン53Bに設けられている。
【0038】
第1バイパスライン64は、第1三方弁61と第2段熱交換器43の入口ヘッダー管45との間の低圧入口側ライン52Aと、給水入口側ライン53Aに設けられた第2三方弁62とを接続している。
第2バイパスライン65は、第3三方弁63と第3段熱交換器44の出口ヘッダー管46との間の給水出口側ライン53Bと、低圧入口側ライン52Aに設けられた第1三方弁61とを接続している。
第3バイパスライン66は、第2三方弁62よりも蒸気タービン32側に位置する給水入口側ライン53Aと、給水出口側ライン53Bに設けられた第3三方弁63とを接続している。
【0039】
切替部60は、第1三方弁61、第2三方弁62、及び第3三方弁63を切り替えることで、低圧ライン52と、給水ライン53との接続状態を、第1状態と第2状態と切り替える。
【0040】
図4は、上記実施形態の排熱回収システムの切替部を、第1状態としたときの水の流れを示す図である。
図5は、上記切替部を、第2状態としたときの水の流れを示す図である。
図4に示すように、第1状態では、第1三方弁61、第2三方弁62、第3三方弁63は、低圧入口側ライン52A、給水入口側ライン53A、給水出口側ライン53Bを連通させて通水可能な状態とする。すなわち、第1三方弁61、第2三方弁62、第3三方弁63は、第1バイパスライン64、第2バイパスライン65を、低圧入口側ライン52A、給水入口側ライン53A、給水出口側ライン53Bから遮断する。これにより、低圧ライン52においては、ポンプ56によって所定の流量が定常的に、セパレータ55から低圧入口側ライン52Aを経て第2段熱交換器43に供給される。第2段熱交換器43で加熱された水(蒸気)は、低圧出口側ライン52Bを経てセパレータ55に供給される。また、給水ライン53においては、給水入口側ライン53Aから第3段熱交換器44に送り込まれて加熱された水は、給水出口側ライン53Bを経て脱気器36に供給される。
【0041】
図5に示すように、第2状態では、第1三方弁61、第2三方弁62、第3三方弁63は、第1バイパスライン64を、低圧入口側ライン52Aと給水入口側ライン53Aに連通させ、第2バイパスライン65を、給水出口側ライン53Bと低圧入口側ライン52Aとに連通させる。これにより、ポンプ56によってセパレータ55から所定の流量で送り出される水は、低圧入口側ライン52A、第1三方弁61、第2バイパスライン65、給水出口側ライン53Bを経て、第3段熱交換器44の出口ヘッダー管46に送り込まれる。第3段熱交換器44で排ガスと熱交換することで加熱された水は、第3段熱交換器44の入口ヘッダー管45から、給水入口側ライン53A、第2三方弁62、第1バイパスライン64、低圧入口側ライン52Aを経て、第2段熱交換器43の入口ヘッダー管45に送り込まれる。第2段熱交換器43で排ガスと熱交換することで加熱された水は、第2段熱交換器43の出口ヘッダー管46から低圧出口側ライン52Bを経てセパレータ55に供給される。また、この第2状態において、蒸気タービン32から復水器33を経て給水入口側ライン53Aに送り込まれた水は、第3段熱交換器44を通ることなく、第3バイパスライン66から給水出口側ライン53Bに送り込まれ、そのまま脱気器36に供給される。
【0042】
制御部70は、第1三方弁61、第2三方弁62、及び第3三方弁63の切替動作を制御することで、低圧ライン52と給水ライン53との接続状態を切り替える。この実施形態において、制御部70は、例えば、給水出口側ライン53Bに設けられた流量センサ(流量検出部)71で検出される、給水出口側ライン53Bの流量に基づいて、第1状態又は第2状態を選択する。制御部70は、通常時には、低圧ライン52と給水ライン53との接続状態が上記第1状態となるように、第1三方弁61、第2三方弁62、及び第3三方弁63の切替動作を制御する。流量センサ71で検出される給水出口側ライン53Bの流量が、予め定めた閾値を下回った場合、制御部70は、第1三方弁61、第2三方弁62、及び第3三方弁63の切替動作を制御し、低圧ライン52と給水ライン53との接続状態が第2状態となるようにする。この第2状態において、第3段熱交換器44には、ポンプ56によって所定の流量の水が供給される。このため、第3段熱交換器44において、水の流量が不足することを抑制できる。
なお、給水出口側ライン53Bの流量は、上記のように流量センサ71で検出してもよいが、メインボイラー31の給水量、蒸気発生量のデータに基づいて取得してもよい。
【0043】
制御部70は、例えば、エンジン21で燃焼させる燃料の種類に応じて、第1状態又は第2状態を選択する。具体的には、エンジン21で燃焼させる燃料に含まれる硫黄分の量(濃度)に応じて、制御部70は、第1状態又は第2状態を選択する。そのため、制御部70では、エンジン21で燃焼させる燃料の種類を、予め外部から登録された燃料情報等から取得する。制御部70は、通常時(硫黄分の少ない燃料を用いる場合)には、低圧ライン52と給水ライン53との接続状態が上記第1状態となるように、第1三方弁61、第2三方弁62、及び第3三方弁63の切替動作を制御する。また、HFO等、硫黄分が予め定められた基準値以上である燃料を用いる場合、制御部70は、第1三方弁61、第2三方弁62、及び第3三方弁63の切替動作を制御し、低圧ライン52と給水ライン53との接続状態が第2状態となるようにする。この第2状態において、第3段熱交換器44には、セパレータ55から水が供給される。セパレータ55からは、第2段熱交換器43で加熱された高温の水が供給される。したがって、第3段熱交換器44の温度が過度に下がるのを抑え、第3段熱交換器44の周囲で、排ガスの温度低下による硫黄分の析出を抑制できる。
【0044】
次に、上記制御部70における切替部60の切り替え制御の流れについて説明する。
図6は、上記切替部の切替制御の流れを示すフローチャートである。
この
図6に示すように、まず、制御部70は、エンジン21で燃焼させる燃料の種類を示す情報を、予め外部から登録された燃料情報等から取得する(ステップS1)。取得した情報に基づき、使用される燃料が、硫黄分の予め定めた基準値以上の材料であるか否かを判定する(ステップS2)。その結果、硫黄分が予め定めた基準値以上ではなければ、制御部70は、低圧ライン52と給水ライン53との接続状態を、第1状態とする(ステップS3)。
【0045】
一方、ステップS2において、使用される燃料の硫黄分の量が、予め定められた基準値以上のものである場合、制御部70は、低圧ライン52と給水ライン53との接続状態を、第2状態に切り替える(ステップS4)。これにより、第2段熱交換器43で加熱されることで生成された蒸気とともに混在する高温の水がセパレータ55から第3段熱交換器44に供給される。したがって、硫黄分が多い燃料を燃焼させた場合であっても、第3段熱交換器44の温度が過度に下がるのが抑えられ、第3段熱交換器44の周囲で、排ガスの温度低下により硫黄分が析出することを抑制できる。
【0046】
ステップS2、S3によって、低圧ライン52と給水ライン53との接続状態が第1状態とされた場合、制御部70は、流量センサ71によって給水出口側ライン53Bの水の流量を監視する(ステップS5)。
【0047】
ここで、給水出口側ライン53Bの流量は、給水出口側ライン53Bから供給される水を利用して蒸気を生成するメインボイラー31の負荷に応じて変動する。例えば、船舶10の航行速度を低下させるべく第2推進機構30で発生する推進力を低くする際、プロペラ軸34の回転数を低下させる。プロペラ軸34の回転数が低下すれば、これに伴って、蒸気タービン32の負荷が低下し、メインボイラー31の負荷も低下する。
【0048】
制御部70は、流量センサ71による検出した給水出口側ライン53Bの流量が、予め定めた閾値を下回ったか否かを判定する(ステップS6)。この判定の結果、給水出口側ライン53Bの流量が、予め定めた閾値を下回らなければ(ステップS6でNo)、ステップS5に戻り、流量の監視を一定時間毎に繰り返す。
【0049】
一方、ステップS6において、給水出口側ライン53Bの流量が、予め定めた閾値を下回った場合(ステップS6でYes)、制御部70は、低圧ライン52と給水ライン53との接続状態を、第2状態に切り替える(ステップS7)。これにより、第3段熱交換器44には、ポンプ56によって所定の流量の水が供給される。その結果、第3段熱交換器44において、水の流量が不足することが抑えられる。
【0050】
上述した実施形態の排熱回収システム40では、低圧ライン52が第2段熱交換器43に接続されるとともに給水ライン53が第3段熱交換器44に接続された第1状態と、低圧ライン52を第2段熱交換器43と第3段熱交換器44とに接続した第2状態との間で低圧ライン52及び給水ライン53の接続状態を切り替える切替部60を備えている。
このように構成することで、通常状態においては、低圧ライン52が第2段熱交換器43に接続されるとともに給水ライン53が第3段熱交換器44に接続された第1状態とすることができる。
【0051】
一方で、第2段熱交換器43よりも排ガスの流れ方向下流側に設けられた第3段熱交換器44において、バックファイヤや硫黄分の析出による損傷が生じそうな場合には、切替部60で低圧ライン52及び給水ライン53の接続状態を第2状態に切り替えることができる。そのため、例えば、第1状態で第3段熱交換器44を流れる水の流量が少なくなった場合、第2状態に切り替えることで、所定の流量が定常的に流通する低圧ライン52から第3段熱交換器44に水が送り込まれる。これにより、第3段熱交換器44でバックファイヤによる焼損が生じ難くなる。
【0052】
また、排ガスは、第2段熱交換器43、第3段熱交換器44で順次熱交換を行う結果、上流側から下流側に向かって排ガスの温度が低くなる。そのため、第1状態では、第2段熱交換器43よりも排ガスの流れ方向下流側に設けられた第3段熱交換器44を流れる水の温度が、第2段熱交換器43を流れる水の温度よりも低くなる。これにより、排ガスに含まれる硫黄分の濃度が高い場合、低温側の第3段熱交換器44で硫黄分が析出して硫酸腐食が生じやすくなる。この実施形態では、このような状況で、切替部60で低圧ライン52及び給水ライン53の接続状態を第2状態に切り替える。そのため、第3段熱交換器44には、給水ライン53を通して、セパレータ55から供給される高温(例えば、150℃程度)の水を流すことができる。したがって、第3段熱交換器44の周囲の排ガス温度の低下が抑えられ、硫黄分の析出を抑えることができる。
その結果、バックファイヤや硫黄分の析出による損傷を抑えることができる。
【0053】
上述した実施形態の切替部60は、第2状態において、給水ライン53を第3段熱交換器44から切り離す。このように構成することで、第2状態では、第3段熱交換器44に、低圧ライン52からのみ水が供給される。これにより、第3段熱交換器44には、より高温の水が流れることとなる。したがって、特に、排ガスに含まれる硫黄分の濃度が高い場合、第2状態に切り替えることで、低温側の第3段熱交換器44の温度を、より有効に高めることができ、硫黄分の析出を抑えることができる。
【0054】
切替部60は、更に、第2状態において、第3段熱交換器44を経た水を第2段熱交換器43に供給する。このように構成することで、第2状態では、第3段熱交換器44で排ガスと熱交換することで温度が上昇した水が第2段熱交換器43に供給される。これにより、第2段熱交換器43において、水を効率良く加熱することができ、熱エネルギーの有効利用が図られる。
【0055】
上述した実施形態の給水ライン53は、給水ライン53に接続された蒸気タービン32における負荷量に応じて流量が変動する。このように構成することで、蒸気タービン32における負荷量によって、給水ライン53の流量が減少した場合、切替部60で第2状態に切り替えて低圧ライン52から第3段熱交換器44に水を供給することができる。これにより、第3段熱交換器44に供給される流量を増やすことができる。その結果、特に、第3段熱交換器44の焼損を抑えることができる。
【0056】
上述した実施形態の排熱回収システム40は、給水ライン53の流量を検出する流量センサ71をさらに備え、切替部60は、第1状態であるときに、流量センサ71で検出される給水ライン53の流量が予め定めた閾値を下回った場合、第2状態に切り替える。
このように構成することで、第1状態において、流量センサ71で検出される給水ライン53の流量が予め定めた閾値を下回った場合に、第2状態に切り替えることで、第3段熱交換器44に供給される流量を増やすことができる。その結果、第3段熱交換器44の焼損を、より確実に抑えることができる。
【0057】
上述した実施形態の切替部60は、更に、排ガスを生成するエンジン21で使用する燃料の種類に応じて、第1状態及び第2状態の何れか一方を選択的に切り替える。
このように構成することで、例えば、硫黄分の含有量が少ない燃料を用いる場合、第1状態を選択し、硫黄分の含有量が多い燃料を用いる場合には、第2状態を選択することができる。硫黄分の含有量が多い燃料を用いる場合、排ガスに含まれる硫黄分が多くなる。このような場合に第2状態を選択することで、第3段熱交換器44には、給水ライン53を通して、より高温の水が流れる。これにより、第3段熱交換器44の周囲の排ガス温度の低下が抑えられ、硫黄分の析出を抑えることができる。
【0058】
切替部60は、更に、燃料に含まれる硫黄分が予め定めた基準値を上回る場合、第2状態を選択する。このように構成することで、燃料に含まれる硫黄分が予め定めた基準値を上回る場合、第2状態を選択することで、第3段熱交換器44の周囲の排ガス温度の低下を確実に抑えられ、硫黄分の析出を、より確実に抑えることができる。
【0059】
上述した実施形態の排熱回収システム40は、切替部60の動作を制御する制御部70をさらに備えている。このように構成することで、給水ライン53の流量や、燃料の種類等に応じて、切替部60で第1状態と第2状態とを適切に切り替えることができる。これにより、バックファイヤや硫黄分の析出による損傷を、より確実に抑えることができる。
【0060】
上述した実施形態の船舶10は、第1推進機構20の駆動源となるエンジン21で燃料を燃焼させることによって発生した排ガスの熱エネルギーを利用し、排熱回収システム40の第2段熱交換器43、第3段熱交換器44で水を加熱する。加熱された水を、第2推進機構30側のメインボイラー31に送り込むことで、蒸気を効率良く生成することができる。これにより、第1推進機構20及び第2推進機構30を備えた船舶において、熱エネルギーを有効に利用しつつ、バックファイヤや硫黄分の析出による損傷を抑えることができる。
【0061】
(その他の変形例)
この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、第2状態において、低圧ライン52に、第2段熱交換器43、第3段熱交換器44を直接に接続するようにしたが、第2段熱交換器43、第3段熱交換器44を並列に接続してもよい。
【0062】
上述した実施形態では、第2状態において、給水ライン53を第3段熱交換器44から切り離すようにしたが、これに限らない。第2状態において、給水ライン53を第3段熱交換器44に接続したままとし、給水ライン53における水の流量の不足分を、低圧ライン52から供給するようにしてもよい。
【0063】
上述した実施形態では、第1状態から第2状態への切り替えは、制御部70の制御によって自動的に行うようにしたが、手動で切り替え作業を行ってもよい。
【0064】
上述した実施形態では、排熱回収システム40を、船舶10の節炭器41を対象として備えるようにしたが、船舶10に限らず、この発明は、他のプラント等の排熱回収システムに適用することもできる。