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特開2019-215152香り調整システム及び香料カートリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-215152(P2019-215152A)
(43)【公開日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】香り調整システム及び香料カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/008 20190101AFI20191122BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20191122BHJP
   A45D 34/02 20060101ALI20191122BHJP
   C11B 9/00 20060101ALN20191122BHJP
【FI】
   F24F1/008
   B05B12/00 Z
   A45D34/02 510D
   A45D34/02 510C
   C11B9/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-107963(P2019-107963)
(22)【出願日】2019年6月10日
(31)【優先権主張番号】特願2018-112268(P2018-112268)
(32)【優先日】2018年6月12日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木 早苗
【テーマコード(参考)】
3L051
4F035
4H059
【Fターム(参考)】
3L051BC06
4F035AA04
4F035BA22
4F035BB21
4F035BB35
4F035BC05
4F035BC06
4H059BC10
4H059BC23
4H059DA09
4H059EA36
(57)【要約】
【課題】香料の種類に合わせて、人が感じるにおいの強さに応じた最適な濃度の香料を供給できる香り調整システムを提供する。
【解決手段】香り調整システム(10)には、香料を対象空間(S)へ供給する香り発生装置(30)と、香料における人が感じるにおいの強さと濃度とが関連付けられた感覚情報が記憶される記憶部(51)と、記憶部(51)に記憶された感覚情報に基づき、香り発生装置(30)から供給する香料の濃度を調整する制御装置(40)とが設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料を対象空間(S)へ供給する香り発生装置(30)と、
前記香料における人が感じるにおいの強さと濃度とが関連付けられた感覚情報が記憶される記憶部(51)と、
前記記憶部(51)に記憶された前記感覚情報に基づき、前記香り発生装置(30)から供給する香料の濃度を調整する制御装置(40)とを備えた香り調整システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記記憶部(51)には、複数種の香料毎の前記感覚情報が記憶されることを特徴とする香り調整システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記香り発生装置(30)で用いられる香料の種類を特定する特定部(52)を備え、
前記制御装置(40)は、前記記憶部(51)に記憶された複数種の前記感覚情報のうち、前記特定部(52)で特定された香料に対応する前記感覚情報に基づき前記香り発生装置(30)から供給する香料の濃度を調整することを特徴とする香り調整システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記香り発生装置(30)には、前記香料が貯留される貯留部(32)を含む香料カートリッジ(31)が装着され、
前記香料カートリッジ(31)には、該貯留部(32)に貯留される香料の種類を示す識別情報が記憶される識別情報記憶部(33)が設けられ、
前記特定部(52)は、前記識別情報記憶部(33)に記憶された識別情報に基づいて前記香り発生装置(30)で用いられる香料を特定することを特徴とする香り調整システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記香り発生装置(30)には、香料が貯留される貯留部(32)を含む香料カートリッジ(31)が装着され、
前記記憶部(51)は、前記香料カートリッジ(31)に設けられるとともに、該香料カートリッジ(31)の貯留部(32)に貯留される香料に対応する前記感覚情報が少なくとも記憶されることを特徴とする香り調整システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記記憶部(51)には、該香料カートリッジ(31)の貯留部(32)に貯留される香料に対応する1種類の前記感覚情報が記憶されることを特徴とする香り調整システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つにおいて、
前記感覚情報は、前記香料の検知閾値及び前記香料の不快濃度、前記香料の順応パターンの中の少なくとも1つを含んでいることを特徴とする香り調整システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つにおいて、
前記記憶部(51)には、香料の機能と濃度とを関連付けられた機能情報が更に記憶され、
前記制御装置(40)は、前記記憶部(51)に記憶された前記感覚情報及び前記機能情報に基づき前記香り発生装置(30)を制御することを特徴とする香り調整システム。
【請求項9】
請求項7において、
前記対象空間(S)に供給される香料の濃度を検出する濃度センサ(35)を備え、
前記感覚情報は、前記香料の不快濃度を含み、
前記制御装置(40)は、前記香り発生装置(30)により前記香料を対象空間(S)へ供給する供給動作中に、前記濃度センサ(35)で検出した濃度が前記不快濃度以上になると、前記香り発生装置(30)の供給動作を停止させることを特徴とする香り調整システム。
【請求項10】
請求項4に記載の香り調整システム(10)の香り発生装置(30)に装着される香料カートリッジであって、
前記香料を貯留する貯留部(32)と、
前記貯留部(32)に貯留される香料の種類を示す識別情報が記憶される識別情報記憶部(33)とを備えることを特徴とする香料カートリッジ。
【請求項11】
請求項5に記載の香り調整システム(10)の香り発生装置(30)に装着される香料カートリッジであって、
前記該香料カートリッジ(31)の貯留部(32)に貯留される香料に対応する前記感覚情報が少なくとも記憶される記憶部(51)を備えることを特徴とする香料カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、香り調整システム及び香料カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の運転者に対して、香料を供給する装置が開示されている。この装置は、環境や運転者の身体の状態に応じて、所定の濃度に調整した香料を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−278048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
香料の種類は多岐にわたり、香料に対して人が感じるにおいの強さは、香料の種類によって変化する。従来は、香料の種類によって変化するにおいの強さの特性について、十分考慮されておらず、人に対して最適な濃度の香料を供給することが困難であった。
【0005】
本開示の目的は、香料の種類に合わせて、人が感じるにおいの強さに応じた最適な濃度の香料を供給できる香り調整システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、香料を対象空間(S)へ供給する香り発生装置(30)と、
前記香料における人が感じるにおいの強さと濃度とが関連付けられた感覚情報が記憶される記憶部(51)と、
前記記憶部(51)に記憶された前記感覚情報に基づき、前記香り発生装置(30)から供給する香料の濃度を調整する制御装置(40)とを備えた香り調整システムである。
【0007】
ここで、人が感じる強さとは、においの感じやすさの程度であり、例えば臭気強度や臭気指数等のにおいの程度を数値化した指標や、嗅覚受容体の活性度合も含まれる。
【0008】
第1の態様では、記憶部(51)に、香料における人が感じるにおいの強さと濃度とが関連付けられた感覚情報が記憶される。この感覚情報を用いることで、この香料に合わせて、人が感じるにおいの強さに応じた最適な濃度の香料を対象空間(S)へ供給できる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において、
前記記憶部(51)には、複数種の香料毎の前記感覚情報が記憶されることを特徴とする香り調整システムである。
【0010】
第2の態様では、対象空間(S)へ供給する香料が複数種あったとしても、各香料に対応した感覚情報を用いることができる。
【0011】
第3の態様は、第2の態様において、
前記香り発生装置(30)で用いられる香料の種類を特定する特定部(52)を備え、
前記制御装置(40)は、前記記憶部(51)に記憶された複数種の前記感覚情報のうち、前記特定部(52)で特定された香料に対応する前記感覚情報に基づき前記香り発生装置(30)から供給する香料の濃度を調整することを特徴とする香り調整システムである。
【0012】
第3の態様では、複数種の香料の感覚情報うち、香り発生装置(30)で用いられる香料の感覚情報だけを選び、これを香料の濃度調整に利用できる。
【0013】
第4の態様は、第3の態様において、
前記香り発生装置(30)には、前記香料が貯留される貯留部(32)を含む香料カートリッジ(31)が装着され、
前記香料カートリッジ(31)には、該貯留部(32)に貯留される香料の種類を示す識別情報が記憶される識別情報記憶部(33)が設けられ、
前記特定部(52)は、前記識別情報記憶部(33)に記憶された識別情報に基づいて前記香り発生装置(30)で用いられる香料を特定することを特徴とする香り調整システムである。
【0014】
第4の態様では、香料カートリッジ(31)の識別情報記憶部(33)に、香料の種類を示す識別情報が記憶される。この識別情報に対応する感覚情報が、香料の濃度調整に利用される。このため、香り発生装置(30)で用いられる香料と、濃度調整に利用される感覚情報に対応する香料とが不一致となることを抑制できる。
【0015】
第5の態様は、第1の態様において、
前記香り発生装置(30)には、香料が貯留される貯留部(32)を含む香料カートリッジ(31)が装着され、
前記記憶部(51)は、前記香料カートリッジ(31)に設けられるとともに、該香料カートリッジ(31)の貯留部(32)に貯留される香料に対応する前記感覚情報が少なくとも記憶されることを特徴とする香り調整システムである。
【0016】
第5の態様では、香料カートリッジ(31)そのものに、貯留部(32)に貯留される香料に対応する感覚情報が記憶される。このため、香り発生装置(30)で用いられる香料と、濃度調整に利用される感覚情報に対応する香料とが不一致となることを抑制できる。記憶部(51)に、数多くの香料に対応する感覚情報を記憶される必要もない。
【0017】
第6の態様は、第5の態様において、
前記記憶部(51)には、該香料カートリッジ(31)の貯留部(32)に貯留される香料に対応する1種類の前記感覚情報が記憶されることを特徴とする香り調整システムである。
【0018】
第6の態様では、記憶部(51)に1種類の香料の感覚情報だけを記憶させるため、記憶部(51)のメモリ容量を最小限に抑えることができる。
【0019】
第7の態様は、第1乃至6の態様のいずれか1つにおいて、
前記感覚情報は、前記香料の検知閾値及び前記香料の不快濃度、前記香料の順応パターンの中の少なくとも1つを含んでいることを特徴とする香り調整システムである。
【0020】
第7の態様では、香料に対応する感覚情報として、香料の検知閾値、香料の不快濃度、香料の順応パターンの少なくとも1つが用いられる。
【0021】
第8の態様は、第1乃至7の態様のいずれか1つにおいて、
前記記憶部(51)には、香料の機能と濃度とを関連付けられた機能情報が更に記憶され、
前記制御装置(40)は、前記記憶部(51)に記憶された前記感覚情報及び前記機能情報に基づき前記香り発生装置(30)を制御することを特徴とする香り調整システムである。
【0022】
第8の態様では、香料の感覚情報だけでなく香料の機能を考慮しながら、香料の濃度を調整できる。このため、このように調整した香料を供給することで、対象者に所定の機能(効能)を付与できる。
【0023】
第9の態様は、第7の態様において、
前記対象空間(S)に供給される香料の濃度を検出する濃度センサ(35)を備え、前記感覚情報は、前記香料の不快濃度を含み、前記制御装置(40)は、前記香り発生装置(30)により前記香料を対象空間(S)へ供給する供給動作中に、前記濃度センサ(35)で検出した濃度が前記不快濃度以上になると、前記香り発生装置(30)の供給動作を停止させることを特徴とする香り調整システムである。
【0024】
第9の態様では、対象空間(S)の在室者が香料を不快に感じることを抑制できる。
【0025】
第10の態様は、第4の態様に記載の香り調整システム(10)の香り発生装置(30)に装着される香料カートリッジであって、
前記香料を貯留する貯留部(32)と、
前記貯留部(32)に貯留される香料の種類を示す識別情報が記憶される識別情報記憶部(33)とを備えることを特徴とする香料カートリッジである。
【0026】
第11の態様は、第5の態様に記載の香り調整システム(10)の香り発生装置(30)に装着される香料カートリッジであって、
前記該香料カートリッジ(31)の貯留部(32)に貯留される香料に対応する前記感覚情報が少なくとも記憶される記憶部(51)を備えることを特徴とする香料カートリッジである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施形態に係る香り調整システムの全体構成図である。
図2図2は、実施形態に係る空気調和機の概略構成図である。
図3図3は、変形例1に係る香り調整システムの図1に相当する図である。
図4図4は、変形例2に係る香り調整システムの図1に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本開示、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0029】
《実施形態》
実施形態に係る香り調整システム(10)は、対象空間(S)に香料を含む空気を供給する。対象空間(S)は、例えば家屋やオフィスなどの室内空間である。図1に示すように、本実施形態の香り調整システム(10)は、空気供給装置である空気調和機(20)と、濃度センサ(35)と、データベース(50)とを備える。
【0030】
〈空気調和機の概略構成〉
図2に示す空気調和機(20)は、天井面に設置される天井設置式(厳密には、天井埋込式)である。空気調和機(20)は、天井吊り式、壁掛け式、床置き式等の他の方式であってもよい。空気調和機(20)は、ケーシング(21)と、ファン(22)と、熱交換器(23)とを備える。
【0031】
ケーシング(21)の下面の中央には、吸込口(21a)(吸込グリル)が形成される。ケーシング(21)の下面の吸込口(21a)の周囲には、複数の吹出口(21b)が形成される。ケーシング(21)の内部には、吸込口(21a)から吹出口(21b)に亘るまでの間に空気通路(24)が形成される。
【0032】
空気通路(24)には、空気の流れ方向の上流側から下流側に向かって、ファン(22)及び熱交換器(23)が設けられる。熱交換器(23)は、冷媒が循環する冷媒回路(図示省略)に接続する。熱交換器(23)は、冷媒の循環方向に応じて蒸発器及び凝縮器(放熱器)として機能する。空気調和機(20)の冷房運転では、蒸発器となる熱交換器(23)によって冷媒が冷却される。空気調和機(20)の暖房運転では、凝縮器となる熱交換器(23)によって冷媒が過熱される。
【0033】
〈香料発生ユニット〉
空気調和機(20)は、供給空気中に香料を付与するための香り発生ユニット(30)(香料発生装置)を備えている。図2に示すように、香り発生ユニット(30)は、空気通路(24)における熱交換器(23)の下流側に配置される。香り発生ユニット(30)を吹出口(21b)の流出側に配置してもよい。
【0034】
図1に示すように、香り発生ユニット(30)は、タンク(32)(貯留部)に貯留された香料をノズルから空気中に噴霧する。香り発生ユニット(30)の噴霧方式は、例えば静電噴霧式、超音波式、蒸気式、遠心力式、圧電式、二流体ノズル式など種々の方式を採用できる。
【0035】
香料カートリッジ(31)は、香料が貯留されるタンク(32)と、識別情報記憶部(33)とを備える。タンク(32)は、香り発生ユニット(30)の着脱部(34)に着脱可能に取り付けられる。例えば香料は、香料成分を含む液体であるが、香料でない他の成分(例えばエタノール等)を含んで希釈されていてもよい。
【0036】
識別情報記憶部(33)は、メモリディバイス(例えば半導体メモリ)で構成される。識別情報記憶部(33)には、タンク(32)に貯留される香料の種類を特定するための識別情報が記憶される。つまり、識別情報記憶部(33)に記憶された識別情報により、タンク(32)に貯留される香料の種類が何であるかを特定できる。識別情報記憶部(33)の識別情報は、詳細は後述するデータベース(50)の特定部(52)へ送られる。
【0037】
〈制御装置〉
制御装置(40)は、香り発生ユニット(30)から空気中へ供給される香料の濃度を調節する。制御装置(40)は、香り発生ユニット(30)を制御するための制御信号を香り発生ユニット(30)に出力する。制御装置(40)は、例えば香り発生ユニット(30)から空気通路(24)へ供給される香料の噴霧量や噴霧時間を制御することで、該香料の濃度を調節する。制御装置(40)は、例えば制御基板と、制御基板に搭載されたプロセッサ(例えばマイクロコントローラ)と、該プロセッサを動作させるためのソフトウェアを格納するメモリディバイス(例えば半導体メモリ)とを有する。
【0038】
制御装置(40)には、対象空間(S)へ供給する香料の最適濃度を求めるための濃度導出部(41)が設けられる。濃度導出部(41)は、データベース(50)から送信される香料に関する情報(感覚情報/機能情報)に基づいて、対象空間(S)へ供給する香料の最適濃度を求める(詳細は後述する)。
【0039】
入力部(42)には、香り発生ユニット(30)の制御に用いる補完的な情報が入力される。これらの情報を出力する手段は、例えばリモコン、外部通信機器(スマートフォン、パーソナルコンピュータ等)や、必要な情報をリアルタイムで検出して出力する検出部などを含む。入力部(42)に入力される情報としては、対象者の情報、対象空間の環境情報、香料の機能に関する情報などが挙げられる。対象者の情報は、例えば年齢・性別・女性の生理周期などが挙げられる。対象空間の環境情報は、例えば対象空間の容積、在室者の人数などが挙げられる。香料の機能に関する情報は、例えば“安眠効果を得る運転を行いたい”などユーザが求める香料発生ユニットの機能(使用目的)に関する情報といえる。
【0040】
空気調和機(20)には、通信部(43)が設けられる。通信部(43)は、例えば無線LANアダプタで構成され、制御装置(40)に接続される。通信部(43)は、例えばルータ及びインターネット回線(I)を介してサーバ上のデータベース(50)と接続する。これにより、制御装置(40)とデータベース(50)との間で、信号の授受が可能となる。
【0041】
制御装置(40)とデータベース(50)とを繋ぐ通信回線の一部又は全部を有線にしてもよい。データベース(50)は、例えば香り発生ユニット(30)ないし香料カートリッジ(31)に設けられてもよい。
【0042】
〈濃度センサ〉
濃度センサ(35)は、対象空間(S)に供給される香料の濃度を検出する。濃度センサ(35)は、例えば対象空間(S)に配置されてもよいし、空気通路(24)における香り発生ユニット(30)の下流側に配置されてもよい。
【0043】
〈データベース〉
データベース(50)には、記憶部(51)と特定部(52)とが設けられる。
【0044】
記憶部(51)は、メモリディバイス(例えば半導体メモリ)で構成される。記憶部(51)には、複数ないし多数の種類の香料に対応する情報が記憶される。具体的に、香料に対応する情報は、少なくとも香料における人が感じるにおいの強さと濃度とが関連付けられた感覚情報が含まれる。香料に対応する情報は、香料の濃度と機能とが関連付けられた機能情報も含まれる。
【0045】
上記「感覚情報」は、人の嗅覚の感度(即ち、人が感じるにおいの強さ)を考慮したデータであり、香料毎に予め実験的に求められる。感覚情報は、香料の検知閾値に関する情報、香料の不快濃度に関する情報、香料の順応パターンに関する情報の中の少なくとも1つ含む。検知閾値は、何かにおいを感知できる最小濃度といえる。不快濃度は、どの濃度であれば対象者が香料を不快に感じるかを示す濃度といえる。香料の順応パターンは、対象者が曝される時間とともに変化する嗅覚の感度といえる。
【0046】
さらに感覚情報は、年齢に応じた嗅覚の感度の傾向に関する情報、性別に応じた嗅覚の感度の傾向に関する情報、女性の生理周期に応じた嗅覚の感度の傾向に関する情報の中の少なくとも1つを含むのが好ましい。人の嗅覚の感度は、年齢、性別、女性の生理周期に応じて変化するからである。
【0047】
以上のような感覚情報は、香料の種類によって異なる特性を有する。従って、記憶部(51)には、複数の香料毎に、該香料に対応する種々の感覚情報が記憶される。記憶部(51)には、香料の感覚情報が適宜蓄積されていく。このため、記憶部(51)には、数千種類の香料に対応する感覚情報が記憶可能なメモリ容量が確保される。
【0048】
上記「機能情報」は、対象者に所定の機能を及ぼす影響を考慮したデータであり、香料毎に予め実験的に求められる。機能情報は、所定の機能を発現するための濃度に関する情報と、安全暴露量に関する情報の中の少なくとも1つを含む。所定の機能を発現するための濃度とは、香料に曝される対象者が求める機能(効能)を十分に得るための濃度といえる。ある1つの香料が複数の機能を有する場合、記憶部(51)には、これらの複数の機能毎に、該機能を発現するための濃度がそれぞれ記憶される。安全暴露量は、香料に曝される対象者に害を及ぼさないための上限の濃度といえる。
【0049】
機能情報は、吸収経路が機能に及ぼす影響に関する情報を含んでいてもよい。香料を人が摂取する経路は、例えば肺からの経路、皮膚からの経路等があり、これらの経路に応じて、機能を発現するための最適な濃度も変化する。そこで、これらの吸収経路を考慮すると、対象者に機能を発現させるより最適な濃度を得ることができる。
【0050】
以上のような機能情報は、香料の種類によって異なる特性を有する。従って、記憶部(51)には、複数の香料毎に、該香料に対応する種々の機能情報が記憶される。記憶部(51)には、香料の機能情報が適宜蓄積されていく。このため、記憶部(51)には、数千種類の香料に対応する機能情報が記憶可能なメモリ容量が確保される。
【0051】
特定部(52)は、香り発生ユニット(30)で用いられる香料の種類を特定する。特定部(52)は、識別情報記憶部(33)に記憶された識別情報に基づいて香り発生ユニット(30)で用いられる香料を特定する。より具体的には、香料カートリッジ(31)の識別情報記憶部(33)には、タンク(32)に貯留される香料(例えば香料A)に対応する識別情報が記憶される。この識別情報は、通信部(43)及びインターネット回線(I)を介してデータベース(50)に入力される。特定部(52)は、この識別情報よりタンク(32)に貯留される香料が、例えば香料Aであることを特定する。特定部(52)は、この香料(香料A)に対応する情報(上述した感覚情報及び機能情報)を記憶部(51)から抽出する。データベース(50)は、このようして抽出された香料の情報を制御装置(40)側へ出力する。
【0052】
−運転動作−
空気調和機(20)は、通常の冷房運転や暖房運転に加えて、香料が付与された空気を対象空間(S)へ供給する香料供給運転を実行可能に構成される。
【0053】
〈香料供給運転の概要〉
香料供給運転が開始されると、ファン(22)及び香り発生ユニット(30)が運転状態になる。空気調和機(20)では、対象空間(S)の空気が空気通路(24)に吸い込まれ、熱交換器(23)及び香り発生ユニット(30)を順に通過する。香り発生ユニット(30)では、タンク(32)内の香料が空気通路(24)を流れる空気中へ噴霧される。空気通路(24)で香料が付与された後の空気は、対象空間(S)へ供給される。
【0054】
〈香料の濃度調整の制御〉
香料供給運転が開始されると、識別情報記憶部(33)に記憶された識別情報が、通信部(43)及びインターネット回線(I)を経由してデータベース(50)に入力される。データベース(50)では、特定部(52)が、この識別情報に対応する香料の情報(感覚情報/機能情報)を抽出する。抽出された香料の情報は、インターネット回線(I)及び通信部(43)を介して制御装置(40)に入力される。制御装置(40)は、入力された香料に感覚情報/機能情報に基づき、香料の最適濃度(目標濃度(C*))を求める。制御装置(40)には、濃度センサ(35)で検出した香料の濃度(検出濃度(C))が入力される。制御装置(40)は、検出濃度(C)が目標濃度(C*)に収束するように、香り発生ユニット(30)を制御する。この結果、香り発生ユニット(30)から空気へ噴霧される香料の濃度が調節され、対象空間(S)に目標濃度(C*)の香料を付与することができる。
【0055】
−具体的な制御例−
制御装置(40)は、データベース(50)から種々の感覚情報/機能情報を取得できるため、その用途に応じて種々の制御を行うことができる。その一例について以下に詳述する。
【0056】
〈快適性を考慮した制御〉
対象空間(S)の快適性を重視するのであれば、香料に対応する感覚情報のうち検知閾値や不快濃度を用いて最適濃度を求める。これにより、対象者は確実に香料を感じ取ることできるとともに、香料の濃度が過剰となり不快に感じることを抑制できる。なお、このような快適性を考慮した制御において、他の感覚情報や機能情報を考慮して最適濃度を求めてもよい。
【0057】
〈香料の順応パターンを考慮した制御〉
対象者の香料の順応パターンを考慮した制御を行うこともできる。例えば香料供給運転の連続的な運転時間をカウントし、この運転時間に応じた香料の順応パターンを考慮する。例えばある香料においては、運転時間(厳密には、対象者が香料に曝される時間)が長くなるとともに、この香料に対する嗅覚の感度が低下していく。このような順応パターンを考慮し、最適な濃度を求める。この例では、運転時間の経過とともに最適な濃度を徐々に増大させていく。この結果、対象者の快適性を継続して確保できる。
【0058】
〈対象者の特性を考慮した制御〉
対象者の年齢、性別、女性の生理周期などは、香料の感度に影響する。例えば対象者は、これらの対象者の情報を入力部(42)に入力する。制御装置(40)は、入力部(42)に入力された対象者の情報と、記憶部(51)に記憶された感覚情報とを用いて、対象者に応じた最適濃度を求める。
【0059】
〈環境情報を考慮した制御〉
対象空間(S)の容積、対象空間(S)の人数などによって、対象空間(S)の空気中の香料の濃度は変化する。例えば対象者は、このような環境情報を入力部(42)に入力する。制御装置(40)は、入力部(42)に入力された環境情報を用いて最適な濃度を補正する。
【0060】
〈対象者に所定の機能を発揮させる制御〉
対象者が求める機能(使用目的)を入力部(42)に入力する。制御装置(40)は、入力された機能(例えば安眠効果)を発現させるための最適な濃度を、上記機能情報を用いて求める。この際、上述した安全暴露量も考慮する。この結果、対象者が求める機能を確実に発現できるとともに、香料の濃度が過剰となることに起因して対象者に害が及ぶことを抑制できる。
【0061】
〈吸収経路を考慮した制御〉
対象者に所定の機能を発現させる場合、その香料の吸収経路によっても最適な濃度が異なる。例えばある香料を肺を介して摂取させる場合と、ある香料を皮膚から摂取させる場合とで、その最適な濃度が変化する。このため、このような吸収経路を考慮し最適な濃度を求める。
【0062】
−実施形態の効果−
実施形態では、データベース(50)の記憶部(51)に記憶された香料の感覚情報を用いることで、人が感じるにおいの強さに応じた最適な濃度の香料を対象空間(S)へ供給できる。
【0063】
記憶部(51)には、複数種の香料に対応する感覚情報が記憶される。このため、香り発生装置(30)で用いる香料を変更したとしても、この香料に対応した感覚情報を得ることができる。従って、数多くの香料に対応しながら、人が感じるにおいの強さに応じた最適な濃度の香料を対象空間(S)へ供給できる。
【0064】
実施形態では、データベース(50)の特定部(52)が、香り発生ユニット(30)で用いる香料を特定する。つまり、複数種の香料の情報(感覚情報/機能情報)のうち、実際に用いる香料に対応する情報だけを自動的に抽出できる。特に、特定部(52)は、香料カートリッジ(31)の識別情報記憶部(33)に記憶された識別情報を用いるため、実際に噴霧される香料の種類と、最適な濃度を求めるために用いられる香料の種類とが不一致となることを確実に抑制できる。
【0065】
〈変形例1〉
図3に示す変形例1の香り調整システム(10)は、上記実施形態と構成が異なる。変形例1の香り調整システム(10)は、上記実施形態の識別情報記憶部(33)、通信部(43)、及びデータベース(50)を有していない。一方、変形例1の香り調整システム(10)では、香料カートリッジ(31)に記憶部(51)が設けられる。
【0066】
記憶部(51)には、タンク(32)に貯留される香料に対応する感覚情報が少なくとも記憶される。具体的には、例えばタンク(32)に貯留される香料がAである場合、記憶部(51)には、香料Aに対応する感覚情報が少なくとも記憶される。上記実施形態と同様、記憶部(51)に香料Aに対応する機能情報を記憶してもよい。変形例1の記憶部(51)に、他の香料に対応する情報を記憶されることもできる。しかしながら、記憶部(51)には、タンク(32)に貯留される香料に対応する1つの情報(感覚情報/機能情報)を記憶されるのが好ましい。こうすると、記憶部(51)のメモリ容量を最小限に抑えることができる。
【0067】
変形例1の香料供給運転では、香料カートリッジ(31)の記憶部(51)に記憶された感覚情報及び機能情報が、制御装置(40)に記憶される。制御装置(40)は、これらの情報に基づき、上記実施形態と同様にして、香料の最適な濃度を求める。
【0068】
変形例1では、香り発生ユニット(30)を制御するための信号の授受が、空気調和機(20)の内部だけで行われる。このため、実施形態の通信部(43)や、ルータ等の機器が不要となり、香り調整システム(10)の簡素化・低コスト化を図ることができる。
【0069】
記憶部(51)には、香料カートリッジ(31)に対応する情報が記憶されるため、実際に使用される香料と、最適濃度を求めるための情報に対応する香料とが、互いに不一致となることを確実に回避できる。
【0070】
変形例1に係るそれ以外の作用・効果は、基本的には上記実施形態と同様である。
【0071】
〈変形例2〉
図4に示す香り調整システム(10)は、香り発生ユニット(30)の目標濃度(C*)を調節するための操作部(44)を有する。操作部(44)は、ユーザによって操作されるリモートコントローラで構成される。ユーザが操作部(44)を操作することにより、香り発生ユニット(30)から対象空間(S)へ供給される香料の濃度を適宜変更できる。
【0072】
具体的には、記憶部(51)には、香料の種類に応じた、人が感じるにおいの強さと、香料の濃度とが関連付けられた感覚情報が記憶されている。より詳細には、記憶部(51)には、例えば複数の段階のにおいの強さと、この複数の段階のにおいの強さに対応する複数の段階の香料の濃度とが関連付けられて記憶される。この段階は、2段階以上であればよく、2段階〜7段階の間であるのが好ましく、5段階であるのが更に好ましい。
【0073】
操作部(44)では、例えばにおいの強さを1〜5段階のレベルの間で変更できる。操作部(44)によりにおいの強さが「1」に設定されると、入力部(42)にこの信号が入力される。濃度導出部(41)は、記憶部(51)に記憶された感覚情報に基づき、においの強さ「1」に対応する濃度を導出し、この濃度を目標濃度(C*)とする。制御装置(40)は、濃度センサ(35)で検出した検出濃度(C)が目標濃度(C*)に収束するように、香り発生ユニット(30)を制御する。これにより、香り発生装置(30)から空気へ噴霧されるおいの強さは、最も低いレベルとなる。
【0074】
操作部(44)によりにおいの強さが「5」に設定されると、入力部(42)にこの信号が入力される。濃度導出部(41)は、記憶部(51)に記憶された感覚情報に基づき、においの強さ「5」に対応する濃度を導出し、この濃度を目標濃度(C*)とする。制御装置(40)は、濃度センサ(35)で検出した検出濃度(C)が目標濃度(C*)に収束するように、香り発生ユニット(30)を制御する。これにより、香り発生装置(30)から空気へ噴霧されるおいの強さは、最も高いレベルとなる。
【0075】
操作部(44)によりにおいの強さが「3」に設定されると、入力部(42)にこの信号が入力される。濃度導出部(41)は、記憶部(51)に記憶された感覚情報に基づき、においの強さ「3」に対応する濃度を導出し、この濃度を目標濃度(C*)とする。制御装置(40)は、濃度センサ(35)で検出した検出濃度(C)が目標濃度(C*)に収束するように、香り発生ユニット(30)を制御する。これにより、香り発生装置(30)から空気へ噴霧されるおいの強さは、中間レベルとなる。
【0076】
以上のように、変形例2では、操作部(44)に設定されたにおいの強さ、及び記憶部(51)に記憶された感覚情報に基づき目標濃度(C*)を適宜変更できる。このため、ユーザが希望とするにおいの強さの香料を、対象空間(S)へ付与できる。
【0077】
なお、変形例2の操作部(44)により、上述したように、対象者()が求める機能(使用目的)を設定できるようにしてもよい。この場合、操作部(44)に設定された機能に関する信号が入力部(42)に入力される。制御装置(40)は、入力された機能(例えば安眠効果)を発現させるための最適な濃度(目標濃度(C*))を、上記機能情報を用いて求める。制御装置(40)は、濃度センサ(35)で検出した検出濃度(C)が目標濃度(C*)に収束するように、香り発生ユニット(30)を制御する。これにより、ユーザが希望とする機能を発現させるための最適な濃度の香料を、対象空間(S)へ付与できる。
【0078】
〈変形例3〉
変形例3は、変形例2の香り調整システム(10)において、濃度センサ(35)で検出された検出濃度(C)が、上述した不快濃度以上になると、香料を対象空間(S)へ供給する供給動作を停止するように構成される。
【0079】
具体的には、例えば操作部(44)によりにおいの強さを設定し、香り発生ユニット(30)をONさせる操作を行うと、所定のにおいの強さの香料が対象空間(S)へ供給される。この動作を供給動作という。供給動作中には、濃度センサ(35)により対象空間(S)の空気中の香料の濃度が適宜検出される。
【0080】
一方、変形例3の記憶部(51)には、香料に対応する感覚情報として不快濃度が記憶されている。制御装置(40)は、濃度センサ(35)で検出した検出濃度(C)が記憶部(51)に記憶された不快濃度以下になると、供給動作を停止する。これにより、香り発生ユニット(30)から対象空間(S)への香料の供給が速やかに終了する。従って、対象空間(S)の在室者が、香料を不快に感じることを回避でき、在室者の快適性が損なわれることを回避できる。
【0081】
なお、変形例3の供給動作は、変形例2のように香料のにおいの強さを多段階に変更できなくてもよく、香料のにおいの強さが常に一定であってもよい。
【0082】
《その他の実施形態》
上記実施形態及び変形例は、以下のような構成としてもよい。
【0083】
上記実施形態に係る空気供給装置(20)は、空気調和機である。しかし、空気供給装置は、空気清浄機、換気装置、加湿器、除湿器など、空気を対象空間(S)へ供給するものであれば如何なる構成であってもよい。
【0084】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本開示は、香り供給システム及び香りカートリッジについて有用である。
【符号の説明】
【0086】
10 香り調整システム
30 香り発生ユニット(香り発生装置)
31 香料カートリッジ
32 タンク(貯留部)
33 識別情報記憶部
40 制御装置
51 記憶部
52 特定部
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2019年9月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、香り調整システム及び香料カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の運転者に対して、香料を供給する装置が開示されている。この装置は、環境や運転者の身体の状態に応じて、所定の濃度に調整した香料を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−278048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
香料の種類は多岐にわたり、香料に対して人が感じるにおいの強さは、香料の種類によって変化する。従来は、香料の種類によって変化するにおいの強さの特性について、十分考慮されておらず、人に対して最適な濃度の香料を供給することが困難であった。
【0005】
本開示の目的は、香料の種類に合わせて、人が感じるにおいの強さに応じた最適な濃度の香料を供給できる香り調整システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、香料を対象空間(S)へ供給する香り発生装置(30)と、
前記香料における人が感じるにおいの強さと濃度とが関連付けられた感覚情報が記憶される記憶部(51)と、
前記記憶部(51)に記憶された前記感覚情報に基づき、前記香り発生装置(30)から供給する香料の濃度を調整する制御装置(40)とを備え
前記香り発生装置(30)には、香料が貯留される貯留部(32)を含む香料カートリッジ(31)が装着され、
前記記憶部(51)は、前記香料カートリッジ(31)に設けられるとともに、該香料カートリッジ(31)の貯留部(32)に貯留される香料に対応する1種類のみの前記感覚情報が記憶されることを特徴とする香り調整システムである。
【0007】
ここで、人が感じる強さとは、においの感じやすさの程度であり、例えば臭気強度や臭気指数等のにおいの程度を数値化した指標や、嗅覚受容体の活性度合も含まれる。
【0008】
第1の態様では、記憶部(51)に、香料における人が感じるにおいの強さと濃度とが関連付けられた感覚情報が記憶される。この感覚情報を用いることで、この香料に合わせて、人が感じるにおいの強さに応じた最適な濃度の香料を対象空間(S)へ供給できる。
【0009】
の態様では、香料カートリッジ(31)そのものに、貯留部(32)に貯留される香料に対応する感覚情報が記憶される。このため、香り発生装置(30)で用いられる香料と、濃度調整に利用される感覚情報に対応する香料とが不一致となることを抑制できる。記憶部(51)に、数多くの香料に対応する感覚情報を記憶される必要もない。
【0010】
の態様では、記憶部(51)に1種類の香料の感覚情報だけを記憶させるため、記憶部(51)のメモリ容量を最小限に抑えることができる。
【0011】
の態様は、第1の態様のいずれか1つにおいて、
前記感覚情報は、前記香料の検知閾値及び前記香料の不快濃度、前記香料の順応パターンの中の少なくとも1つを含んでいることを特徴とする香り調整システムである。
【0012】
の態様では、香料に対応する感覚情報として、香料の検知閾値、香料の不快濃度、香料の順応パターンの少なくとも1つが用いられる。
【0013】
の態様は、第1又は第2の態様のいずれか1つにおいて、
前記記憶部(51)には、香料の機能と濃度とを関連付けられた機能情報が更に記憶され、
前記制御装置(40)は、前記記憶部(51)に記憶された前記感覚情報及び前記機能情報に基づき前記香り発生装置(30)を制御することを特徴とする香り調整システムである。
【0014】
の態様では、香料の感覚情報だけでなく香料の機能を考慮しながら、香料の濃度を調整できる。このため、このように調整した香料を供給することで、対象者に所定の機能(効能)を付与できる。
【0015】
の態様は、第の態様において、
前記対象空間(S)に供給される香料の濃度を検出する濃度センサ(35)を備え、前記感覚情報は、前記香料の不快濃度を含み、前記制御装置(40)は、前記香り発生装置(30)により前記香料を対象空間(S)へ供給する供給動作中に、前記濃度センサ(35)で検出した濃度が前記不快濃度以上になると、前記香り発生装置(30)の供給動作を停止させることを特徴とする香り調整システムである。
【0016】
の態様では、対象空間(S)の在室者が香料を不快に感じることを抑制できる。
【0017】
の態様は、第の態様に記載の香り調整システム(10)の香り発生装置(30)に装着される香料カートリッジであって、
前記該香料カートリッジ(31)の貯留部(32)に貯留される香料に対応する1種類のみの前記感覚情報が記憶される記憶部(51)を備えることを特徴とする香料カートリッジである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、参考形態に係る香り調整システムの全体構成図である。
図2図2は、参考形態に係る空気調和機の概略構成図である。
図3図3は、実施形態に係る香り調整システムの図1に相当する図である。
図4図4は、変形例に係る香り調整システムの図1に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本開示、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0020】
参考形態》
本開示の前提となる参考形態に係る香り調整システム(10)は、対象空間(S)に香料を含む空気を供給する。対象空間(S)は、例えば家屋やオフィスなどの室内空間である。図1に示すように、本参考形態の香り調整システム(10)は、空気供給装置である空気調和機(20)と、濃度センサ(35)と、データベース(50)とを備える。
【0021】
〈空気調和機の概略構成〉
図2に示す空気調和機(20)は、天井面に設置される天井設置式(厳密には、天井埋込式)である。空気調和機(20)は、天井吊り式、壁掛け式、床置き式等の他の方式であってもよい。空気調和機(20)は、ケーシング(21)と、ファン(22)と、熱交換器(23)とを備える。
【0022】
ケーシング(21)の下面の中央には、吸込口(21a)(吸込グリル)が形成される。ケーシング(21)の下面の吸込口(21a)の周囲には、複数の吹出口(21b)が形成される。ケーシング(21)の内部には、吸込口(21a)から吹出口(21b)に亘るまでの間に空気通路(24)が形成される。
【0023】
空気通路(24)には、空気の流れ方向の上流側から下流側に向かって、ファン(22)及び熱交換器(23)が設けられる。熱交換器(23)は、冷媒が循環する冷媒回路(図示省略)に接続する。熱交換器(23)は、冷媒の循環方向に応じて蒸発器及び凝縮器(放熱器)として機能する。空気調和機(20)の冷房運転では、蒸発器となる熱交換器(23)によって冷媒が冷却される。空気調和機(20)の暖房運転では、凝縮器となる熱交換器(23)によって冷媒が過熱される。
【0024】
〈香料発生ユニット〉
空気調和機(20)は、供給空気中に香料を付与するための香り発生ユニット(30)(香料発生装置)を備えている。図2に示すように、香り発生ユニット(30)は、空気通路(24)における熱交換器(23)の下流側に配置される。香り発生ユニット(30)を吹出口(21b)の流出側に配置してもよい。
【0025】
図1に示すように、香り発生ユニット(30)は、タンク(32)(貯留部)に貯留された香料をノズルから空気中に噴霧する。香り発生ユニット(30)の噴霧方式は、例えば静電噴霧式、超音波式、蒸気式、遠心力式、圧電式、二流体ノズル式など種々の方式を採用できる。
【0026】
香料カートリッジ(31)は、香料が貯留されるタンク(32)と、識別情報記憶部(33)とを備える。タンク(32)は、香り発生ユニット(30)の着脱部(34)に着脱可能に取り付けられる。例えば香料は、香料成分を含む液体であるが、香料でない他の成分(例えばエタノール等)を含んで希釈されていてもよい。
【0027】
識別情報記憶部(33)は、メモリディバイス(例えば半導体メモリ)で構成される。識別情報記憶部(33)には、タンク(32)に貯留される香料の種類を特定するための識別情報が記憶される。つまり、識別情報記憶部(33)に記憶された識別情報により、タンク(32)に貯留される香料の種類が何であるかを特定できる。識別情報記憶部(33)の識別情報は、詳細は後述するデータベース(50)の特定部(52)へ送られる。
【0028】
〈制御装置〉
制御装置(40)は、香り発生ユニット(30)から空気中へ供給される香料の濃度を調節する。制御装置(40)は、香り発生ユニット(30)を制御するための制御信号を香り発生ユニット(30)に出力する。制御装置(40)は、例えば香り発生ユニット(30)から空気通路(24)へ供給される香料の噴霧量や噴霧時間を制御することで、該香料の濃度を調節する。制御装置(40)は、例えば制御基板と、制御基板に搭載されたプロセッサ(例えばマイクロコントローラ)と、該プロセッサを動作させるためのソフトウェアを格納するメモリディバイス(例えば半導体メモリ)とを有する。
【0029】
制御装置(40)には、対象空間(S)へ供給する香料の最適濃度を求めるための濃度導出部(41)が設けられる。濃度導出部(41)は、データベース(50)から送信される香料に関する情報(感覚情報/機能情報)に基づいて、対象空間(S)へ供給する香料の最適濃度を求める(詳細は後述する)。
【0030】
入力部(42)には、香り発生ユニット(30)の制御に用いる補完的な情報が入力される。これらの情報を出力する手段は、例えばリモコン、外部通信機器(スマートフォン、パーソナルコンピュータ等)や、必要な情報をリアルタイムで検出して出力する検出部などを含む。入力部(42)に入力される情報としては、対象者の情報、対象空間の環境情報、香料の機能に関する情報などが挙げられる。対象者の情報は、例えば年齢・性別・女性の生理周期などが挙げられる。対象空間の環境情報は、例えば対象空間の容積、在室者の人数などが挙げられる。香料の機能に関する情報は、例えば“安眠効果を得る運転を行いたい”などユーザが求める香料発生ユニットの機能(使用目的)に関する情報といえる。
【0031】
空気調和機(20)には、通信部(43)が設けられる。通信部(43)は、例えば無線LANアダプタで構成され、制御装置(40)に接続される。通信部(43)は、例えばルータ及びインターネット回線(I)を介してサーバ上のデータベース(50)と接続する。これにより、制御装置(40)とデータベース(50)との間で、信号の授受が可能となる。
【0032】
制御装置(40)とデータベース(50)とを繋ぐ通信回線の一部又は全部を有線にしてもよい。データベース(50)は、例えば香り発生ユニット(30)ないし香料カートリッジ(31)に設けられてもよい。
【0033】
〈濃度センサ〉
濃度センサ(35)は、対象空間(S)に供給される香料の濃度を検出する。濃度センサ(35)は、例えば対象空間(S)に配置されてもよいし、空気通路(24)における香り発生ユニット(30)の下流側に配置されてもよい。
【0034】
〈データベース〉
データベース(50)には、記憶部(51)と特定部(52)とが設けられる。
【0035】
記憶部(51)は、メモリディバイス(例えば半導体メモリ)で構成される。記憶部(51)には、複数ないし多数の種類の香料に対応する情報が記憶される。具体的に、香料に対応する情報は、少なくとも香料における人が感じるにおいの強さと濃度とが関連付けられた感覚情報が含まれる。香料に対応する情報は、香料の濃度と機能とが関連付けられた機能情報も含まれる。
【0036】
上記「感覚情報」は、人の嗅覚の感度(即ち、人が感じるにおいの強さ)を考慮したデータであり、香料毎に予め実験的に求められる。感覚情報は、香料の検知閾値に関する情報、香料の不快濃度に関する情報、香料の順応パターンに関する情報の中の少なくとも1つ含む。検知閾値は、何かにおいを感知できる最小濃度といえる。不快濃度は、どの濃度であれば対象者が香料を不快に感じるかを示す濃度といえる。香料の順応パターンは、対象者が曝される時間とともに変化する嗅覚の感度といえる。
【0037】
さらに感覚情報は、年齢に応じた嗅覚の感度の傾向に関する情報、性別に応じた嗅覚の感度の傾向に関する情報、女性の生理周期に応じた嗅覚の感度の傾向に関する情報の中の少なくとも1つを含むのが好ましい。人の嗅覚の感度は、年齢、性別、女性の生理周期に応じて変化するからである。
【0038】
以上のような感覚情報は、香料の種類によって異なる特性を有する。従って、記憶部(51)には、複数の香料毎に、該香料に対応する種々の感覚情報が記憶される。記憶部(51)には、香料の感覚情報が適宜蓄積されていく。このため、記憶部(51)には、数千種類の香料に対応する感覚情報が記憶可能なメモリ容量が確保される。
【0039】
上記「機能情報」は、対象者に所定の機能を及ぼす影響を考慮したデータであり、香料毎に予め実験的に求められる。機能情報は、所定の機能を発現するための濃度に関する情報と、安全暴露量に関する情報の中の少なくとも1つを含む。所定の機能を発現するための濃度とは、香料に曝される対象者が求める機能(効能)を十分に得るための濃度といえる。ある1つの香料が複数の機能を有する場合、記憶部(51)には、これらの複数の機能毎に、該機能を発現するための濃度がそれぞれ記憶される。安全暴露量は、香料に曝される対象者に害を及ぼさないための上限の濃度といえる。
【0040】
機能情報は、吸収経路が機能に及ぼす影響に関する情報を含んでいてもよい。香料を人が摂取する経路は、例えば肺からの経路、皮膚からの経路等があり、これらの経路に応じて、機能を発現するための最適な濃度も変化する。そこで、これらの吸収経路を考慮すると、対象者に機能を発現させるより最適な濃度を得ることができる。
【0041】
以上のような機能情報は、香料の種類によって異なる特性を有する。従って、記憶部(51)には、複数の香料毎に、該香料に対応する種々の機能情報が記憶される。記憶部(51)には、香料の機能情報が適宜蓄積されていく。このため、記憶部(51)には、数千種類の香料に対応する機能情報が記憶可能なメモリ容量が確保される。
【0042】
特定部(52)は、香り発生ユニット(30)で用いられる香料の種類を特定する。特定部(52)は、識別情報記憶部(33)に記憶された識別情報に基づいて香り発生ユニット(30)で用いられる香料を特定する。より具体的には、香料カートリッジ(31)の識別情報記憶部(33)には、タンク(32)に貯留される香料(例えば香料A)に対応する識別情報が記憶される。この識別情報は、通信部(43)及びインターネット回線(I)を介してデータベース(50)に入力される。特定部(52)は、この識別情報よりタンク(32)に貯留される香料が、例えば香料Aであることを特定する。特定部(52)は、この香料(香料A)に対応する情報(上述した感覚情報及び機能情報)を記憶部(51)から抽出する。データベース(50)は、このようして抽出された香料の情報を制御装置(40)側へ出力する。
【0043】
−運転動作−
空気調和機(20)は、通常の冷房運転や暖房運転に加えて、香料が付与された空気を対象空間(S)へ供給する香料供給運転を実行可能に構成される。
【0044】
〈香料供給運転の概要〉
香料供給運転が開始されると、ファン(22)及び香り発生ユニット(30)が運転状態になる。空気調和機(20)では、対象空間(S)の空気が空気通路(24)に吸い込まれ、熱交換器(23)及び香り発生ユニット(30)を順に通過する。香り発生ユニット(30)では、タンク(32)内の香料が空気通路(24)を流れる空気中へ噴霧される。空気通路(24)で香料が付与された後の空気は、対象空間(S)へ供給される。
【0045】
〈香料の濃度調整の制御〉
香料供給運転が開始されると、識別情報記憶部(33)に記憶された識別情報が、通信部(43)及びインターネット回線(I)を経由してデータベース(50)に入力される。データベース(50)では、特定部(52)が、この識別情報に対応する香料の情報(感覚情報/機能情報)を抽出する。抽出された香料の情報は、インターネット回線(I)及び通信部(43)を介して制御装置(40)に入力される。制御装置(40)は、入力された香料に感覚情報/機能情報に基づき、香料の最適濃度(目標濃度(C*))を求める。制御装置(40)には、濃度センサ(35)で検出した香料の濃度(検出濃度(C))が入力される。制御装置(40)は、検出濃度(C)が目標濃度(C*)に収束するように、香り発生ユニット(30)を制御する。この結果、香り発生ユニット(30)から空気へ噴霧される香料の濃度が調節され、対象空間(S)に目標濃度(C*)の香料を付与することができる。
【0046】
−具体的な制御例−
制御装置(40)は、データベース(50)から種々の感覚情報/機能情報を取得できるため、その用途に応じて種々の制御を行うことができる。その一例について以下に詳述する。
【0047】
〈快適性を考慮した制御〉
対象空間(S)の快適性を重視するのであれば、香料に対応する感覚情報のうち検知閾値や不快濃度を用いて最適濃度を求める。これにより、対象者は確実に香料を感じ取ることできるとともに、香料の濃度が過剰となり不快に感じることを抑制できる。なお、このような快適性を考慮した制御において、他の感覚情報や機能情報を考慮して最適濃度を求めてもよい。
【0048】
〈香料の順応パターンを考慮した制御〉
対象者の香料の順応パターンを考慮した制御を行うこともできる。例えば香料供給運転の連続的な運転時間をカウントし、この運転時間に応じた香料の順応パターンを考慮する。例えばある香料においては、運転時間(厳密には、対象者が香料に曝される時間)が長くなるとともに、この香料に対する嗅覚の感度が低下していく。このような順応パターンを考慮し、最適な濃度を求める。この例では、運転時間の経過とともに最適な濃度を徐々に増大させていく。この結果、対象者の快適性を継続して確保できる。
【0049】
〈対象者の特性を考慮した制御〉
対象者の年齢、性別、女性の生理周期などは、香料の感度に影響する。例えば対象者は、これらの対象者の情報を入力部(42)に入力する。制御装置(40)は、入力部(42)に入力された対象者の情報と、記憶部(51)に記憶された感覚情報とを用いて、対象者に応じた最適濃度を求める。
【0050】
〈環境情報を考慮した制御〉
対象空間(S)の容積、対象空間(S)の人数などによって、対象空間(S)の空気中の香料の濃度は変化する。例えば対象者は、このような環境情報を入力部(42)に入力する。制御装置(40)は、入力部(42)に入力された環境情報を用いて最適な濃度を補正する。
【0051】
〈対象者に所定の機能を発揮させる制御〉
対象者が求める機能(使用目的)を入力部(42)に入力する。制御装置(40)は、入力された機能(例えば安眠効果)を発現させるための最適な濃度を、上記機能情報を用いて求める。この際、上述した安全暴露量も考慮する。この結果、対象者が求める機能を確実に発現できるとともに、香料の濃度が過剰となることに起因して対象者に害が及ぶことを抑制できる。
【0052】
〈吸収経路を考慮した制御〉
対象者に所定の機能を発現させる場合、その香料の吸収経路によっても最適な濃度が異なる。例えばある香料を肺を介して摂取させる場合と、ある香料を皮膚から摂取させる場合とで、その最適な濃度が変化する。このため、このような吸収経路を考慮し最適な濃度を求める。
【0053】
参考形態の効果−
参考形態では、データベース(50)の記憶部(51)に記憶された香料の感覚情報を用いることで、人が感じるにおいの強さに応じた最適な濃度の香料を対象空間(S)へ供給できる。
【0054】
記憶部(51)には、複数種の香料に対応する感覚情報が記憶される。このため、香り発生装置(30)で用いる香料を変更したとしても、この香料に対応した感覚情報を得ることができる。従って、数多くの香料に対応しながら、人が感じるにおいの強さに応じた最適な濃度の香料を対象空間(S)へ供給できる。
【0055】
参考形態では、データベース(50)の特定部(52)が、香り発生ユニット(30)で用いる香料を特定する。つまり、複数種の香料の情報(感覚情報/機能情報)のうち、実際に用いる香料に対応する情報だけを自動的に抽出できる。特に、特定部(52)は、香料カートリッジ(31)の識別情報記憶部(33)に記憶された識別情報を用いるため、実際に噴霧される香料の種類と、最適な濃度を求めるために用いられる香料の種類とが不一致となることを確実に抑制できる。
【0056】
〈1〉
図3に示す実施形態の香り調整システム(10)は、上記実施形態と構成が異なる。実施形態の香り調整システム(10)は、上記参考形態の識別情報記憶部(33)、通信部(43)、及びデータベース(50)を有していない。一方、実施形態の香り調整システム(10)では、香料カートリッジ(31)に記憶部(51)が設けられる。
【0057】
記憶部(51)には、タンク(32)に貯留される香料に対応する感覚情報が少なくとも記憶される。具体的には、例えばタンク(32)に貯留される香料がAである場合、記憶部(51)には、香料Aに対応する感覚情報が少なくとも記憶される。上記参考形態と同様、記憶部(51)に香料Aに対応する機能情報を記憶してもよい。実施形態の記憶部(51)に、他の香料に対応する情報を記憶されることもできる。しかしながら、記憶部(51)には、タンク(32)に貯留される香料に対応する1つの情報(感覚情報/機能情報)を記憶されるのが好ましい。こうすると、記憶部(51)のメモリ容量を最小限に抑えることができる。
【0058】
実施形態の香料供給運転では、香料カートリッジ(31)の記憶部(51)に記憶された感覚情報及び機能情報が、制御装置(40)に記憶される。制御装置(40)は、これらの情報に基づき、上記参考形態と同様にして、香料の最適な濃度を求める。
【0059】
実施形態では、香り発生ユニット(30)を制御するための信号の授受が、空気調和機(20)の内部だけで行われる。このため、参考形態の通信部(43)や、ルータ等の機器が不要となり、香り調整システム(10)の簡素化・低コスト化を図ることができる。
【0060】
記憶部(51)には、香料カートリッジ(31)に対応する情報が記憶されるため、実際に使用される香料と、最適濃度を求めるための情報に対応する香料とが、互いに不一致となることを確実に回避できる。
【0061】
実施形態に係るそれ以外の作用・効果は、基本的には上記参考形態と同様である。
【0062】
〈変形例
図4に示す香り調整システム(10)は、香り発生ユニット(30)の目標濃度(C*)を調節するための操作部(44)を有する。操作部(44)は、ユーザによって操作されるリモートコントローラで構成される。ユーザが操作部(44)を操作することにより、香り発生ユニット(30)から対象空間(S)へ供給される香料の濃度を適宜変更できる。
【0063】
具体的には、記憶部(51)には、香料の種類に応じた、人が感じるにおいの強さと、香料の濃度とが関連付けられた感覚情報が記憶されている。より詳細には、記憶部(51)には、例えば複数の段階のにおいの強さと、この複数の段階のにおいの強さに対応する複数の段階の香料の濃度とが関連付けられて記憶される。この段階は、2段階以上であればよく、2段階〜7段階の間であるのが好ましく、5段階であるのが更に好ましい。
【0064】
操作部(44)では、例えばにおいの強さを1〜5段階のレベルの間で変更できる。操作部(44)によりにおいの強さが「1」に設定されると、入力部(42)にこの信号が入力される。濃度導出部(41)は、記憶部(51)に記憶された感覚情報に基づき、においの強さ「1」に対応する濃度を導出し、この濃度を目標濃度(C*)とする。制御装置(40)は、濃度センサ(35)で検出した検出濃度(C)が目標濃度(C*)に収束するように、香り発生ユニット(30)を制御する。これにより、香り発生装置(30)から空気へ噴霧されるおいの強さは、最も低いレベルとなる。
【0065】
操作部(44)によりにおいの強さが「5」に設定されると、入力部(42)にこの信号が入力される。濃度導出部(41)は、記憶部(51)に記憶された感覚情報に基づき、においの強さ「5」に対応する濃度を導出し、この濃度を目標濃度(C*)とする。制御装置(40)は、濃度センサ(35)で検出した検出濃度(C)が目標濃度(C*)に収束するように、香り発生ユニット(30)を制御する。これにより、香り発生装置(30)から空気へ噴霧されるおいの強さは、最も高いレベルとなる。
【0066】
操作部(44)によりにおいの強さが「3」に設定されると、入力部(42)にこの信号が入力される。濃度導出部(41)は、記憶部(51)に記憶された感覚情報に基づき、においの強さ「3」に対応する濃度を導出し、この濃度を目標濃度(C*)とする。制御装置(40)は、濃度センサ(35)で検出した検出濃度(C)が目標濃度(C*)に収束するように、香り発生ユニット(30)を制御する。これにより、香り発生装置(30)から空気へ噴霧されるおいの強さは、中間レベルとなる。
【0067】
以上のように、変形例では、操作部(44)に設定されたにおいの強さ、及び記憶部(51)に記憶された感覚情報に基づき目標濃度(C*)を適宜変更できる。このため、ユーザが希望とするにおいの強さの香料を、対象空間(S)へ付与できる。
【0068】
なお、変形例の操作部(44)により、上述したように、対象者()が求める機能(使用目的)を設定できるようにしてもよい。この場合、操作部(44)に設定された機能に関する信号が入力部(42)に入力される。制御装置(40)は、入力された機能(例えば安眠効果)を発現させるための最適な濃度(目標濃度(C*))を、上記機能情報を用いて求める。制御装置(40)は、濃度センサ(35)で検出した検出濃度(C)が目標濃度(C*)に収束するように、香り発生ユニット(30)を制御する。これにより、ユーザが希望とする機能を発現させるための最適な濃度の香料を、対象空間(S)へ付与できる。
【0069】
〈変形例
変形例は、変形例の香り調整システム(10)において、濃度センサ(35)で検出された検出濃度(C)が、上述した不快濃度以上になると、香料を対象空間(S)へ供給する供給動作を停止するように構成される。
【0070】
具体的には、例えば操作部(44)によりにおいの強さを設定し、香り発生ユニット(30)をONさせる操作を行うと、所定のにおいの強さの香料が対象空間(S)へ供給される。この動作を供給動作という。供給動作中には、濃度センサ(35)により対象空間(S)の空気中の香料の濃度が適宜検出される。
【0071】
一方、変形例の記憶部(51)には、香料に対応する感覚情報として不快濃度が記憶されている。制御装置(40)は、濃度センサ(35)で検出した検出濃度(C)が記憶部(51)に記憶された不快濃度以下になると、供給動作を停止する。これにより、香り発生ユニット(30)から対象空間(S)への香料の供給が速やかに終了する。従って、対象空間(S)の在室者が、香料を不快に感じることを回避でき、在室者の快適性が損なわれることを回避できる。
【0072】
なお、変形例の供給動作は、変形例のように香料のにおいの強さを多段階に変更できなくてもよく、香料のにおいの強さが常に一定であってもよい。
【0073】
《その他の実施形態》
上記実施形態及び変形例は、以下のような構成としてもよい。
【0074】
上記実施形態に係る空気供給装置(20)は、空気調和機である。しかし、空気供給装置は、空気清浄機、換気装置、加湿器、除湿器など、空気を対象空間(S)へ供給するものであれば如何なる構成であってもよい。
【0075】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本開示は、香り供給システム及び香りカートリッジについて有用である。
【符号の説明】
【0077】
10 香り調整システム
30 香り発生ユニット(香り発生装置)
31 香料カートリッジ
32 タンク(貯留部)
33 識別情報記憶部
40 制御装置
51 記憶部
52 特定部
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料を対象空間(S)へ供給する香り発生装置(30)と、
前記香料における人が感じるにおいの強さと濃度とが関連付けられた感覚情報が記憶される記憶部(51)と、
前記記憶部(51)に記憶された前記感覚情報に基づき、前記香り発生装置(30)から供給する香料の濃度を調整する制御装置(40)とを備え
前記香り発生装置(30)には、香料が貯留される貯留部(32)を含む香料カートリッジ(31)が装着され、
前記記憶部(51)は、前記香料カートリッジ(31)に設けられるとともに、該香料カートリッジ(31)の貯留部(32)に貯留される香料に対応する1種類のみの前記感覚情報が記憶されることを特徴とする香り調整システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記感覚情報は、前記香料の検知閾値及び前記香料の不快濃度、前記香料の順応パターンの中の少なくとも1つを含んでいることを特徴とする香り調整システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記記憶部(51)には、香料の機能と濃度とを関連付けられた機能情報が更に記憶され、
前記制御装置(40)は、前記記憶部(51)に記憶された前記感覚情報及び前記機能情報に基づき前記香り発生装置(30)を制御することを特徴とする香り調整システム。
【請求項4】
請求項において、
前記対象空間(S)に供給される香料の濃度を検出する濃度センサ(35)を備え、
前記感覚情報は、前記香料の不快濃度を含み、
前記制御装置(40)は、前記香り発生装置(30)により前記香料を対象空間(S)へ供給する供給動作中に、前記濃度センサ(35)で検出した濃度が前記不快濃度以上になると、前記香り発生装置(30)の供給動作を停止させることを特徴とする香り調整システム。
【請求項5】
請求項に記載の香り調整システム(10)の香り発生装置(30)に装着される香料カートリッジであって、
前記該香料カートリッジ(31)の貯留部(32)に貯留される香料に対応する1種類のみの前記感覚情報が記憶される記憶部(51)を備えることを特徴とする香料カートリッジ。