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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-215290(P2019-215290A)
(43)【公開日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】鋼構造物の腐食検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20191122BHJP
   E02D 31/06 20060101ALI20191122BHJP
   G01N 17/02 20060101ALI20191122BHJP
【FI】
   G01N27/26 351J
   E02D31/06
   G01N17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-113394(P2018-113394)
(22)【出願日】2018年6月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000211891
【氏名又は名称】株式会社ナカボーテック
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 雅彦
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA01
2G050AA04
2G050BA03
2G050EB03
(57)【要約】
【課題】防食材で被覆された鋼構造物の腐食状態を、該防食材を破壊せずに容易に検知し得る、鋼構造物の腐食検知装置を提供すること。
【解決手段】本発明の腐食検知装置は、鋼構造物10に固定された金属片11と、金属片11が腐食することによって流れる電流を測定する電流測定部18と、制御部19とを備える。制御部19は演算部を備え、該演算部は、電流測定部18において得られる電流の経時データに基づいて、所定期間に金属片11と鋼構造物10との間に流れた電流から積算電気量(実積算電気量)を算出し、予め求めておいた積算電気量と鋼構造物10の腐食速度との相関関係に基づいて、該実積算電気量から鋼構造物10の腐食速度を求める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防食材で被覆された鋼構造物の腐食状態を検知する鋼構造物の腐食検知装置において、
前記鋼構造物の表面に該鋼構造物と電気的に絶縁した状態で固定され、且つ前記防食材で被覆されているとともに、前記鋼構造物に対して電気化学的序列が卑となる金属材料で構成される金属片と、
前記金属片に水が直接接して該金属片が腐食することによって、該金属片と前記鋼構造物との間に流れる電流を測定する電流測定部と、
前記電流測定部において得られる電流の経時データに基づいて、所定期間に前記金属片と前記鋼構造物との間に流れた電流から積算電気量を算出し、予め求めておいた積算電気量と前記鋼構造物の腐食速度との相関関係に基づいて、前記算出された前記積算電気量から前記鋼構造物の腐食速度を求める演算部とを備える鋼構造物の腐食検知装置。
【請求項2】
更に、前記演算部によって得られる前記鋼構造物の腐食速度に基づいて、前記鋼構造物の腐食状態を判定する判定部を備える請求項1に記載の鋼構造物の腐食検知装置。
【請求項3】
更に、前記判定部の判定結果を報知する報知部を備える請求項2に記載の鋼構造物の腐食検知装置。
【請求項4】
前記金属片が、磁力によって前記鋼構造物の表面に固定されている請求項1〜3の何れか1項に記載の鋼構造物の腐食検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋や河川等に曝露されている防食材で被覆される鋼管杭、鋼矢板、鋼管矢板等の鋼構造物の腐食状態を検知する、鋼構造物の腐食検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
防波堤、岸壁、桟橋、橋脚などの港湾や河川に設置される構造物では、海水や河川水に曝された環境下で長期間使用するため、何らかの防食処理を施すのが一般的である。例えば、海洋環境に設置される海洋・港湾構造物に用いられる鋼材を対象とした防食方法には、主として海中部及び海底土中部を対象とした電気防食と、主として海上大気部、飛沫帯、干満帯及び海中部を対象とした被覆防食とがある。被覆防食としては、鋼材の表面をペトロラタムなどの防食材で被覆し、さらに該防食材の表面を保護カバーで被覆する方法が知られている。
【0003】
被覆防食には、鋼材表面を被覆する防食材の経年劣化などが原因で、鋼材と防食材との密着性が低下して両者間に隙間が生じ、その隙間に海水などが侵入して鋼材を腐食させるという課題がある。一般に、防食材は非透明であるため、防食材で被覆された鋼材表面に錆などの腐食が生じた場合、その腐食を、防食材を介して外部から目視で確認することは不可能である。そのため従来は、防食材の施工後に定期的に、防食材の一部を取り外すなどして破壊して内部の鋼材の腐食状況を検査していた。しかしながら例えば、被防食体である鋼材が港湾や河川に設置される構造物である場合には、その構造物の検査用の船や構造物周辺の水中に潜って作業を行う潜水士が必要になる場合があり、検査に多大な費用と労力を要していた。また、この種の検査は従来、全数検査ではなく抜き取りで行っており、調査結果に対する信頼性の点でも改善の余地があった。
【0004】
このような被覆防食の課題に鑑みて、防食材を破壊せずに被防食体の腐食状態を確認し得る技術が提案されている。例えば特許文献1には、金属製被防食体とこれを被覆する防食材とを備える防食構造物において、該被防食体と該防食材との間に、導電性を有するリード線付き電極を配置し、該電極と該被防食体との間で計測される電流値などの電気的特性を測定することで、該被防食体の防食状態を確認できるようにした技術が提案されている。また特許文献2には、基礎材に設けられた被覆防食体の内部に、水中で電位の異なる一対の電極を埋め込み、該被覆防食体の内部に水が浸入したとき該電極間に流れる電流を検出して、該被覆防食体内部の腐食状態を検知する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−120284号公報
【特許文献2】特開2007−132010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載された技術は、被防食体とこれを被覆する防食材との間に水が浸入した際に流れる電流の電流値に基づいて、防食材の電気絶縁性を評価する方法であるため、被防食体の防食状態を詳細に評価できないという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、防食材で被覆された鋼構造物の腐食状態を、該防食材を破壊せずに容易に検知し得る、鋼構造物の腐食検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、防食材で被覆された鋼構造物の腐食状態を検知する鋼構造物の腐食検知装置において、前記鋼構造物の表面に該鋼構造物と電気的に絶縁した状態で固定され、且つ前記防食材で被覆されているとともに、前記鋼構造物に対して電気化学的序列が卑となる金属材料で構成される金属片と、前記金属片に水が直接接して該金属片が腐食することによって、該金属片と前記鋼構造物との間に流れる電流を測定する電流測定部と、前記電流測定部において得られる電流の経時データに基づいて、所定期間に前記金属片と前記鋼構造物との間に流れた電流から積算電気量を算出し、予め求めておいた積算電気量と前記鋼構造物の腐食速度との相関関係に基づいて、前記算出された前記積算電気量から前記鋼構造物の腐食速度を求める演算部とを備える鋼構造物の腐食検知装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の鋼構造物の腐食検知装置によれば、防食材で被覆された鋼構造物の腐食状態を、該防食材を破壊せずに容易に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の鋼構造物の腐食検知装置の一実施形態の構成を示す概略図である。
図2図2は、図1のII−II線断面を模式的に示す断面図である。
図3図3は、図1の要部を拡大して示す概略斜視図である。
図4図4は、積算電気量と鋼構造物の腐食速度との相関関係を示す検量線を作成するのに使用する腐食試験体の模式図である。
図5図5は、図4に示す腐食試験体を用いた腐食試験(浸漬試験)の説明図である。
図6図6は、腐食試験結果を示すグラフであり、本発明に係る金属片と鋼構造物との間の積算電気量と該鋼構造物の腐食速度との相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。図1には、本発明の腐食検知装置の一実施形態が示されている。本実施形態の腐食検知装置は、鋼管杭を始めとする各種の鋼構造物10の防食状態を監視するためのものである。本実施形態の腐食検知装置においては、図1及び図2に示すとおり、鋼構造物10の表面に、金属片11を該鋼構造物10と電気的に絶縁した状態で固定し、且つ該金属片11を防食材12で被覆している。
【0012】
鋼構造物10は図1に示すとおり、海水、河川水などの水に浸漬されている。鋼構造物10は、その下端側が水中に埋没しており且つ上端側が水面上に露出している。鋼構造物10はその側面が防食材12で覆われている。防食材12は、鋼構造物10のうち、水没している水中部位から水面W上に露出している水上部位までにわたって、該鋼構造物10の側面の全域を連続して被覆している。
【0013】
防食材12は、例えばペトロラタム被覆防食材又は水中硬化形樹脂で構成することができる。防食材12としてペトロラタム系防食材を使用するときは、図2に示すとおり、防食材12をプラスチック製又は耐食金属製の保護カバー13で保護することが好ましい。保護カバー13の内面には緩衝材14を配置することができる。保護カバー13と緩衝材14とは接着剤で固定してもよい。緩衝材14としては、例えばポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、合成ゴム等の発泡体が挙げられる。
【0014】
水中硬化形樹脂としては、この種の樹脂として従来用いられてきたもと同様のものを特に制限なく用いることができる。例えばエポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリサルファイド系樹脂、ポリエステル系樹脂等を用いることができる。
【0015】
鋼構造物10の表面に固定されている金属片11は、該鋼構造物10に対して電気化学的序列が卑となる金属材料で構成されることが好ましい。そのような金属材料としては、例えば亜鉛、マグネシウム、アルミニウムなどが挙げられる。
【0016】
上述のとおり金属片11は、鋼構造物10と電気的に絶縁した状態で該鋼構造物10に固定されている。金属片11の固定は、着脱可能な態様でもよく、あるいは着脱不能な態様でもよい。鋼構造物10が磁性体である場合には、磁力を利用して金属片11を鋼構造物10に着脱可能に固定することができる。この目的のために、図3の一部破断斜視図に示すとおり、金属片11における鋼構造物10との対向面に磁性層15を形成することができる。磁性層15は、例えばマグネットシートから構成することができるが、これに限られない。マグネットシートは柔軟性を有することから、磁性層15としてマグネットシートを用いることで、金属片11を鋼構造物10の側面や下面に固定することができる。また、金属片11を鋼構造物10の形状に追随するように変形させることによって、鋼構造物10が曲面形状であっても金属片11を固定することができる。さらに、マグネットシートを用いることで、鋼構造物10に対する金属片11の着脱作業が容易且つ迅速にでき、作業能率の向上を図ることができる。しかも、金属片11を防食材12で被覆した後、外側から磁気探知器を用いて金属片11の位置を探知することができるので、金属片11の交換が容易となる。金属片11と鋼構造物10との固定を確実にする目的で、磁性層15と鋼構造物10とを接着剤によって接合してもよい。
【0017】
金属片11は、鋼構造物10の表面に該鋼構造物10と電気的に絶縁した状態で固定されることが必要とされる。この目的のために、図3の一部破断斜視図に示すとおり、金属片11と磁性層15との間に電気絶縁層16を設けることが有利である。電気絶縁層16は、例えば絶縁塗料や絶縁テープから構成することができるが、これらに限られない。
【0018】
図3に示すとおり、金属片11にはケーブル17の一端が接続されている。ケーブル17は防食材12の内部に配置されている。ケーブル17は上方に向かって水上まで延びており、その他端は図1に示す電流測定部18に接続されている。ケーブル17は金属片11と電流測定部18とを電気的に接続している。
【0019】
電流測定部18は、金属片11に水が直接に接して金属片11が腐食することによって、金属片11と鋼構造物10との間に流れる電流を測定するためのものである。したがって、電流測定部18における2つの入力のうちの一方は、上述したケーブル17に接続されている。もう一方の入力は鋼構造物10に接続されている。電流測定部18としては、微弱な電流を感度よく測定し得る観点から、例えば2極式の無抵抗電流計を用いることができる。
【0020】
図1においては、鋼構造物10に1個の金属片11が取り付けられている状態が示されているが、金属片11の取り付け個数はこれに限られず、例えば、2個以上の金属片11を鋼構造物10の各所に取り付けてもよい。その場合、電流測定部18は、各金属片11と電気的に接続可能な複数の入力端子を有するマルチチャンネルのものを用いればよい。
【0021】
図1においては、1個の鋼構造物10に対して1個の電流測定部18が用いられているが、両者の関係はこれに限られず、1個の鋼構造物10に対して複数個の電流測定部18を用いてもよい。また、検知対象となる鋼構造物10が複数個ある場合には、例えば、鋼構造物10の個数に応じた個数の電流測定部18を用いることができる。
【0022】
本実施形態の腐食検知装置における腐食状態の検知の原理は、次のとおりである。金属片11が防食材12で完全に被覆されており、該金属片11の表面が全く露出していないときには、防食材12により金属片11と鋼構造物10が絶縁された状態になっている。したがって金属片11と鋼構造物10との間に電流は流れず、電流測定部18は電流を検知しない。この状態では腐食は発生していないと判断される。一方、防食材12が劣化して防食材12内に水が浸入すると、鋼構造物10の表面にまで水が到達する。このことに起因して金属片11と鋼構造物10との間に生じた電位差によってガルバニック電流が生じる。この場合、金属片11が、鋼構造物10に対して電気化学的序列が卑となる金属材料で構成されているので、金属片11がアノードとなり、鋼構造物10がカソードとなる。金属片11と鋼構造物10との間に生じるガルバニック電流は、金属材料の腐食量と正の相関があるので、ガルバニック電流を測定することで、鋼構造物10の腐食速度を定量的に評価できる。なお、金属片11を、鋼構造物10に対して電気化学的序列が貴となる金属材料で構成した場合には、鋼構造物10がアノードとなり、金属片11がカソードとなることから、鋼構造物10の腐食が進行してしまうので好ましくない。
【0023】
本実施形態の腐食検知装置は、図1に示すように、該装置の各部の動作を制御する制御部19を具備する。制御部19は、ケーブル22を介して電流測定部18と電気的に接続されている。制御部19は、演算部(図示せず)及び保存部(図示せず)を含んで構成されている。前記演算部はCPU,MPU等のマイクロプロセッサを具備する。前記保存部はROM及びRAMを具備し、該ROM及び該RAMに、前記演算部に所定の処理を行わせるためのプログラムや各種データ(例えば、後述する検量線のデータ)が格納されている。また、前記保存部は、電流測定部18による測定値及び/又は後述する判定部による判定結果を書き込み可能な記憶媒体に格納されていてもよく、該記憶媒体としては、例えば、メモリーカード、ハードディスクを用いることができる。
【0024】
制御部19の前記演算部は、電流測定部18において得られる電流の経時データに基づいて、所定期間に金属片11と鋼構造物10との間に流れた電流から積算電気量(以下「実積算電気量」ともいう。)を算出し、予め求めておいた積算電気量と鋼構造物10の腐食速度との相関関係に基づいて、実積算電気量から鋼構造物10の腐食速度を求める。より具体的には、制御部19の前記保存部に、積算電気量と鋼構造物10の腐食速度との相関関係を示す検量線が保存されており、本実施形態の腐食検知装置は、制御部19の制御下、電流測定部18によって随時測定される実積算電気量を、前記保存部に保存された前記検量線に当てはめることで、鋼構造物10の腐食速度を求める。
【0025】
前記検量線は、腐食試験体を用いた腐食試験によって得られる。図4には、腐食試験体の一例である腐食試験体24が示されている。腐食試験体24は、鋼構造物10と同一材料の鋼板25Aに、金属片11と同一材料の基準金属片26を固定するとともに、鋼構造物10を被覆する防食材12と同一材料の防食材27によって鋼板25Aの一面を被覆し、さらに鋼板25Aと反対側の防食材27の他面を緩衝材25Bで被覆することで構成されている。防食材27は、鋼板25Aのうち、基準金属片26が固定されている面の全域を被覆する。鋼板25A及び基準金属片26にはそれぞれケーブル28a,28bが電気的に接続されている。基準金属片26に接続されているケーブル28bは防食材27中に埋め込まれている。各ケーブル28a,28bの末端は腐食試験体24の外部に引き出されている。鋼板25Aの各面にはプラスチック等の絶縁体からなる保護カバー29が配置されている。鋼板25A及び基準金属片26は、一対の保護カバー29によって挟持された状態になっている。これらの部材は、ボルト及びナットからなる締結手段30によって一体的に固定されている。
【0026】
図5には、腐食試験体24を用いた腐食試験の一例である浸漬試験の様子が示されている。腐食試験は、腐食試験体24を、鋼構造物10及び防食材12が実際に暴露されている腐食環境(実環境)を模したモデル環境に所定期間置いて、腐食試験体24における鋼板25Aの腐食速度を測定するものである。実環境が例えば、大気中に露出したり水中に没したりを繰り返す干満帯である場合には、モデル環境を干満帯に近い環境とするために、水槽35に実環境で採取した水(例えば海水)を入れると共に、水槽35内の水量を一定時間ごとに変化させて、水槽35内に干満を繰り返す乾湿環境を擬似的に構築する。図5に示す浸漬試験では、鋼構造物10と実際に接する水を採取し、腐食試験体24の一部をその水に自然浸漬させる。鋼板25A及び基準金属片26にはそれぞれケーブル28a,28bの一端を接続し、それらのケーブル28a,28bの他端は電流測定部31に接続する。電流測定部31としては、図1に示す電流測定部18と同様に、無抵抗電流計などを用いることができる。この浸漬試験によって、積算電気量及び腐食試験体の腐食速度を基準データとして取得する。この基準データ取得において積算電気量(以下「基準積算電気量」ともいう。)は、電流測定部31で測定された電流値を経過時間(鋼構造物10と金属片11との間にガルバニック電流が流れた時間)で積算することで算出される。腐食速度(以下「基準腐食速度」ともいう。)は、腐食試験体24を浸漬させてから所定時間が経過した後に、基準金属片26に付着した腐食生成物を除去して該基準金属片26の質量減少量を求め、その値から算出する。ここでいう、「基準金属片26の質量減少量」は、「基準金属片26の浸食深さ」、すなわち基準金属片26における腐食生成物の除去によって欠損した部分の深さ(該部分の厚み方向の長さ)と正の相関があるので、基準腐食速度の算出にはこの浸食深さを用いることができる。したがって、基準腐食速度は〔基準金属片26の浸食深さ/時間〕で定義される。なお、基準金属片26の浸食深さが部分的に異なる場合は、該浸食深さの最大値を基準腐食速度の算出に用いる。浸漬試験によって得た基準データ、すなわち基準積算電気量及び基準腐食速度は、制御部19の前記保存部に保存される。
【0027】
図6には、図5に示す腐食試験結果の一例が示されている。図6の縦軸の腐食速度は、鋼構造物10の1年当たりの腐食速度であり、単位は「mm/y」である。図6に示すとおり、金属片11と鋼構造物10(被防食体)との間の電流(ガルバニック電流)の値に基づく積算電気量(実積算電気量)と、鋼構造物10の腐食速度とには、強い正の相関があり、該積算電気量と該腐食速度とは直線的な比例関係にあることがわかる。したがって、ガルバニック電流又は積算電気量を測定することで、鋼構造物10の腐食速度を定量的に評価できる。
【0028】
本実施形態の腐食検知装置においては、鋼構造物10と金属片11との間に流れる電流が電流測定部18で測定され、その電流の経時データが制御部19の前記保存部に保存される。そして、制御部19の前記演算部は、この保存された経時データに基づいて、金属片11と鋼構造物10との間に流れた電流から実積算電気量を算出する。実積算電気量は、電流測定部18によって測定された電流値を経過時間で積算することで算出される。算出された実積算電気量のデータは前記保存部に保存される。また、前記演算部においては、統計処理によって基準電気量と基準腐食速度との間の回帰式、すなわち相関関係を推定する。統計処理としては、例えば、座標系での座標の分布を近似する処理などが挙げられる。この相関関係に基づいて、前記演算部において実積算電気量から鋼構造物10の腐食速度を求める。このようにして求められた鋼構造物10の腐食速度、及び時間−腐食速度の関係は、前記保存部に保存される。保存されたデータは、制御部19と電気的に接続されたモニタなどの表示手段(図示せず)で表示することができ、鋼構造物10の防食状態を監視することができる。
【0029】
本実施形態の腐食検知装置は、制御部19の前記演算部によって得られる鋼構造物10の腐食速度に基づいて、鋼構造物10の腐食状態を判定する判定部を備える。判定のために、前記判定部に腐食速度の閾値を前もって設定しておき、該閾値と腐食速度との比較を行う。本実施形態では、主として、制御部3の前記演算部及び前記保存部が前記判定部として機能し、電流測定部18の測定値が前記演算部及び前記保存部に送られて処理される。前記閾値は、前記保存部に予め保存され、制御部19によって参照可能になされている。判定結果は、前記表示手段で表示することができ、防食状態を監視することができる。
【0030】
また、本実施形態の腐食検知装置は、図1に示すように、前記判定部の判定結果を報知する報知部20を備える。報知部20は、ケーブル23を介して制御部19と電気的に接続されている。本実施形態では、制御部19の制御下、前記演算部によって得られた鋼構造物10の腐食速度と前記保存部に保存された閾値との比較に基づいて、鋼構造物10の腐食状態を判定し、その判定結果を報知部20で報知可能になされている。
【0031】
報知部20による報知方法は特に制限されず、例えば、視覚的に報知する方法でもよく、音声によって報知する方法でもよい。本実施形態においては前者の方法が採用されており、報知部20は図1に示すように、鋼構造物10の腐食状態を視覚的に報知可能な表示部として、LEDランプ21を備える。LEDランプ21は、制御部19の制御下、鋼構造物10の腐食状態に応じて点灯又は消灯される。例えば、制御部19の前記演算部によって得られる鋼構造物10の腐食速度が所定の閾値以下である場合、すなわち、鋼構造物10が実質的に腐食していないと推定される場合は、LEDランプ21は消灯した状態であるが、該測定値が所定の閾値を超える場合、すなわち、鋼構造物10が腐食していると推定される場合は、LEDランプ21が点灯し、これにより鋼構造物10の腐食が報知される。
【0032】
本実施形態の腐食検知装置は、駆動源(図示せず)を具備しており、腐食検知装置の各部は、該駆動源による電力を利用して動作する。前記駆動源の種類は特に制限されず、公知の駆動源を利用できる。前記駆動源の一例として、ソーラーパネル及び蓄電池を含んで構成され、太陽光を利用して発電し、蓄電し得るものが挙げられる。腐食検知装置の駆動源が斯かる構成を有していると、鋼構造物10(被防食体)が電源確保の困難な地域に設置されている場合でも、腐食検知装置を用いた鋼構造物10の腐食検知が可能となり、鋼構造物10の立地によらずに幅広い範囲で鋼構造物10の腐食検知を行うことが可能となる。
【0033】
以上のとおりの腐食検知装置によれば、被防食体である鋼構造物10が設置されている水中などに近づかなくても、地上で、金属片11と鋼構造物10との間に流れた電流に基づく積算電気量の算出及び鋼構造物10の腐食速度の測定が可能であり、しかも、鋼構造物10の腐食状態を、防食材12を破壊せずに検知することができるため、作業の簡略化、作業時間の短縮化が図られ、作業環境の安全性が向上する。また、複数の金属片11を鋼構造物10の各所に取り付けることによって腐食検知範囲が拡大し、これにより、鋼構造物10の防食状態の確認をより詳細に行うことができる。
【0034】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば金属片11を鋼構造物10に着脱可能に取り付ける手段は磁力に限られない。また、図1においては、鋼構造物10における水面下に位置する部位に金属片11が取り付けられているが、これらの取り付け位置はこれに限られず、例えば鋼構造物10における水上に位置する部位に、金属片11を取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 鋼構造物
11 金属片
12 防食材
15 磁性層
16 電気絶縁層
18 電流測定部
19 制御部(演算部、保存部)
20 報知部
21 LEDランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6