【解決手段】回路基板10の主面11に搭載されたセンサチップ20及び集磁部材30を備える。センサチップ20は、感磁素子R1,R2が形成された素子形成面25と、回路基板10の主面11に対して垂直な側面21〜24とを有し、集磁部材30は、センサチップの側面21,22をそれぞれ覆う第1及び第2の部分31,32と、第1の部分31と第2の部分32を接続する第3の部分33とを有する。本発明によれば、集磁部材30がセンサチップ20の素子形成面25と接しない構造を有していることから、仮に集磁部材30に外力が加わったとしても、これがセンサチップ20の素子形成面25に伝わることがない。
前記集磁部材の前記第3の部分は、前記センサチップの前記第1及び第2の側面に対して垂直な方向における長さよりも、前記センサチップの前記第1及び第2の側面と平行な方向における長さの方が長いことを特徴とする請求項3に記載の磁気センサ。
前記集磁部材の前記第3の部分は、前記センサチップの前記第1及び第2の側面と平行な方向における長さよりも、前記センサチップの前記第1及び第2の側面に対して垂直な方向における長さの方が長いことを特徴とする請求項3に記載の磁気センサ。
前記回路基板の前記主面を基準とした前記集磁部材の厚さは、前記回路基板の前記主面を基準とした前記センサチップの厚さよりも厚いことを特徴とする請求項6に記載の磁気センサ。
前記センサチップは、前記素子形成面が前記回路基板の前記主面と向かい合うように搭載されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の磁気センサ。
前記回路基板の前記主面を基準とした前記集磁部材の厚さは、前記回路基板の前記主面を基準とした前記センサチップの厚さよりも薄いことを特徴とする請求項9に記載の磁気センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された磁気センサは、集磁部材がセンサチップの素子形成面上に配置されていることから、集磁部材に外力が加わると、センサチップの素子形成面にストレスがかかる可能性があった。
【0005】
したがって、集磁部材に加わる外力がセンサチップの素子形成面に伝わりにくい構造を有する磁気センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による磁気センサは、回路基板と、回路基板の主面に搭載されたセンサチップ及び集磁部材とを備え、センサチップは、感磁素子が形成され、回路基板の主面と平行な素子形成面を有し、集磁部材は、センサチップの素子形成面と接することなく回路基板の主面に搭載されているとともに、回路基板の主面に対して垂直な方向から見て、センサチップを基準として互いに反対側に位置する第1及び第2の部分と、第1の部分と第2の部分を接続する第3の部分とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、集磁部材がセンサチップの素子形成面と接しない構造を有していることから、仮に集磁部材に外力が加わったとしても、これがセンサチップの素子形成面に伝わることがない。しかも、集磁部材は、第1の部分と第2の部分を接続する第3の部分を有していることから、所定の方向の磁束を集め、これをセンサチップ上の感磁素子に印加することが可能となる。
【0008】
本発明において、センサチップは、回路基板の主面に対して垂直であり、互いに平行な第1及び第2の側面をさらに有し、集磁部材の第1及び第2の部分は、センサチップの第1及び第2の側面をそれぞれ覆っても構わない。これによれば、素子形成面のうち第1の側面に近い部分と第2の側面に近い部分に対し、互いに逆方向の磁界成分を与えることが可能となる。
【0009】
本発明において、センサチップは、回路基板の主面に対して垂直であり、第1及び第2の側面に対して垂直な第3の側面をさらに有し、集磁部材の第3の部分は、センサチップの第3の側面を覆っても構わない。これによれば、回路基板の主面に平行な方向の磁束を集め、これをセンサチップ上の感磁素子に印加することが可能となる。
【0010】
本発明において、集磁部材の第3の部分は、センサチップの第1及び第2の側面に対して垂直な方向における長さよりも、センサチップの第1及び第2の側面と平行な方向における長さの方が長くても構わない。これによれば、センサチップの第1及び第2の側面と平行な方向の磁束に対する検出感度を高めることが可能となる。
【0011】
本発明において、集磁部材の第3の部分は、センサチップの第1及び第2の側面と平行な方向における長さよりも、センサチップの第1及び第2の側面に対して垂直な方向における長さの方が長くても構わない。これによれば、集磁部材による磁束の集磁範囲を拡大することが可能となる。
【0012】
本発明において、センサチップの素子形成面上には、感磁素子に隣接する磁性体層が設けられていても構わない。これによれば、感磁素子に印加される磁束の密度が高まることから、より高い検出感度を得ることが可能となる。
【0013】
本発明において、集磁部材は、単一の磁性材料からなるものであっても構わない。これによれば、集磁部材の製造コストを削減することが可能となる。この場合、回路基板の主面を基準とした集磁部材の厚さは、回路基板の主面を基準としたセンサチップの厚さよりも厚くても構わない。これによれば、集磁部材によって集めた磁束を効率よく感磁素子に印加することが可能となる。
【0014】
本発明において、集磁部材は、磁性材料からなる磁性部と非磁性材料からなる非磁性部とを含み、非磁性部は、回路基板の主面と磁性部の間に位置し、回路基板の主面を基準とした感磁素子の高さは、回路基板の主面を基準とした磁性部の下面の高さと上面の高さの間に位置するものであっても構わない。これによれば、金属磁性体など薄型の磁性部を用いることが可能となる。
【0015】
本発明において、センサチップは、素子形成面が回路基板の主面と向かい合うように搭載されていても構わない。これによれば、センサチップの素子形成面が露出しないことから、感磁素子を保護することが可能となる。この場合、回路基板の主面を基準とした集磁部材の厚さは、回路基板の主面を基準としたセンサチップの厚さよりも薄くても構わない。これによれば、集磁部材によって集めた磁束を効率よく感磁素子に印加することが可能となる。
【0016】
本発明において、集磁部材の第3の部分は、センサチップの素子形成面を覆っても構わない。これによれば、回路基板の主面に対して垂直な方向の磁束を集め、これをセンサチップ上の感磁素子に印加することが可能となる。
【0017】
本発明において、センサチップは、回路基板の主面に対して垂直であり、互いに平行な第1及び第2の側面をさらに有し、集磁部材の第1及び第2の部分は、センサチップの第1及び第2の側面をそれぞれ覆い、集磁部材の第1及び第2の部分の間隔は、第3の部分に近い根元部分において狭くなる段差形状を有するものであっても構わない。これによれば、集磁部材を単一の磁性材料を用いて作製することが可能となる。
【0018】
本発明において、センサチップは、回路基板の主面に対して垂直であり、互いに平行な第1及び第2の側面をさらに有し、集磁部材は、磁性材料からなる磁性部と非磁性材料からなる第1及び第2の非磁性部とを含み、集磁部材の第1及び第2の非磁性部は、センサチップの第1及び第2の側面をそれぞれ覆うものであっても構わない。これによれば、高さの異なるセンサチップを用いる場合であっても、磁性部の形状を設計変更する必要がなくなる。
【0019】
本発明において、集磁部材は単一の磁性材料からなり、センサチップは、素子形成面が回路基板の主面と向かい合うように搭載されていても構わない。これによれば、センサチップの素子形成面が露出しないことから、感磁素子を保護することが可能となる。
【0020】
本発明による磁気センサは、集磁部材の第3の部分に巻回された補償コイルをさらに備えるものであっても構わない。これによれば、集磁部材に取り込まれた磁束を補償コイルによって打ち消すことができることから、集磁部材の磁気飽和を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
このように、本発明によれば、回路基板の主面に平行な方向の磁束を検出する磁気センサにおいて、集磁部材に加わる外力がセンサチップの素子形成面に伝わりにくい構造とすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0024】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態による磁気センサ1の構造を説明するための模式的な斜視図である。
【0025】
図1に示すように、第1の実施形態による磁気センサ1は、xy面を主面11とする回路基板10と、回路基板10の主面11に搭載されたセンサチップ20及び集磁部材30とを備える。センサチップ20は、yz面を構成する側面21,22と、xz面を構成する側面23,24と、xy面を構成する素子形成面25及び裏面26とを有しており、裏面26が回路基板10の主面11と向かい合うよう、回路基板10に搭載されている。センサチップ20の固定は、回路基板10とセンサチップ20の裏面26の間に接着剤を塗布することにより行うことができる。また、センサチップ20と回路基板10の電気的接続は、図示しないボンディングワイヤなどを用いて行うことができる。
【0026】
素子形成面25には、2つの感磁素子R1,R2が形成されている。感磁素子R1,R2としては、磁界の向き及び強さに応じて抵抗値が変化する磁気抵抗素子を用いることができる。このうち、感磁素子R1は側面21の近傍に配置され、感磁素子R2は側面22の近傍に配置されている。
【0027】
集磁部材30は、フェライトなどの単一の磁性材料からなるブロックであり、センサチップ20の側面21,22をそれぞれ覆う第1及び第2の部分31,32と、第1の部分31と第2の部分32を接続する第3の部分33を有している。集磁部材30の第1及び第2の部分31,32は、y方向から見て、センサチップ20を基準として互いに反対側に位置する。
図1に示す例では、集磁部材30の第1及び第2の部分31,32がセンサチップ20の側面21,22の一部をそれぞれ覆っているが、センサチップ20の側面21,22を完全に覆う形状であっても構わない。また、センサチップ20の側面23は、集磁部材30の第3の部分33によって完全に覆われている。
【0028】
集磁部材30は、第3の部分33によってy方向の磁束を集め、これを第1及び第2の部分31,32に分配する役割を果たす。y方向から見た略側面図である
図2に示すように、集磁部材30のz方向における厚さH1は、センサチップ20のz方向における厚さH2よりも厚く、これにより、y方向から見て感磁素子R1,R2と集磁部材30が重なりを有している。
【0029】
図3は、磁束φの流れを説明するための模式図である。
【0030】
図3に示すように、y方向の磁束は第3の部分33から集磁部材30に吸い込まれ、これが第1及び第2の部分31,32によってx方向に曲げられる。そして、集磁部材30の第1及び第2の部分31,32のx方向における近傍には、感磁素子R1,R2が配置されていることから、集磁部材30を通過する磁束φは、感磁素子R1,R2の近傍においてy方向成分だけでなく、x方向成分を持つことになる。
【0031】
ここで、感磁素子R1,R2の固定磁化方向は、
図3に示す矢印Pが示す方向(x方向)に揃えられている。これに対し、集磁部材30に吸い込まれた磁束φのx方向成分は、感磁素子R1と感磁素子R2で互いに逆となることから、磁束φの密度によって感磁素子R1,R2の抵抗値に差が生じることになる。かかる抵抗値の差は、
図4に示す直列回路から出力信号Voutとして取り出され、これにより磁束φを検出することが可能となる。
【0032】
そして、本実施形態による磁気センサ1は、センサチップ20の側面21〜23を覆うように集磁部材30が設けられており、センサチップ20の素子形成面25が集磁部材30によって覆われない構造を有していることから、仮に集磁部材30に外力が加わったとしても、この外力がセンサチップ20の素子形成面25に直接伝わることがない。このため、センサチップ20の素子形成面25にストレスが加わりにくく、結果的に磁気センサ1の信頼性を向上させることが可能となる。但し、センサチップ20の素子形成面25が集磁部材30によって部分的に覆われていても構わない。この場合であっても、センサチップ20の素子形成面25と集磁部材30が直接的に、或いは、接着剤などを介して間接的に接していない限り、磁部材30に外力が加わったとしても、この外力がセンサチップ20の素子形成面25に直接伝わることがない。
【0033】
図5は、本実施形態による磁気センサ1を紙幣センサ40に応用した例を示す模式的な透視斜視図である。
【0034】
図5に示す紙幣センサ40は、検出ヘッド41がxz面を構成しており、検出ヘッド41上を図示しない紙幣が
図5に示す矢印A方向(z方向)にスキャンされる。そして、紙幣をスキャンしながら、紙幣に埋め込まれた磁気パターンが磁気センサ1によって検出される。このような構造を有する紙幣センサ40において検出感度を高めるためには、被測定対象物である紙幣と集磁部材30のy方向におけるギャップをできる限り狭くすることが望ましいが、紙幣と集磁部材30のy方向におけるギャップが狭くなると、紙幣または異物が検出ヘッド41と接触することにより、集磁部材30にy方向の外力が加わりやすくなる。
【0035】
このような場合であっても、本実施形態による磁気センサ1においては、集磁部材30に加わるy方向の外力がセンサチップ20の素子形成面25に直接伝わらないことから、磁気センサ1を長期間使用しても、素子形成面25がダメージを受けにくい。これにより、本実施形態による磁気センサ1を用いた応用製品(例えば紙幣センサ)の信頼性を高めることが可能となる。
【0036】
図6は、第1の変形例によるセンサチップ20Aの素子形成面25の構造を示す略平面図である。第1の変形例によるセンサチップ20Aは、素子形成面25上に磁性体層51,52が形成されている点において、上述したセンサチップ20と相違している。磁性体層51,52は、樹脂材料に磁性フィラーが分散された複合磁性材料からなる膜であっても構わないし、ニッケル又はパーマロイなどの軟磁性材料からなる薄膜もしくは箔であっても構わないし、フェライトなどからなる薄膜又はバルクシートであっても構わない。また、磁性体層51,52は、感磁素子R1,R2よりも上層に位置していても構わないし、下層に位置していても構わないし、同層に位置していても構わない。
【0037】
そして、第1の変形例においては、磁性体層51が感磁素子R1に隣接して側面21の近傍に配置され、磁性体層52が感磁素子R2に隣接して側面22の近傍に配置されている。これにより、感磁素子R1,R2の近傍における磁気抵抗が低くなることから、より多くの磁束を感磁素子R1,R2に印加することが可能となる。
【0038】
図7は、第2の変形例によるセンサチップ20Bの素子形成面25の構造を示す略平面図である。第2の変形例によるセンサチップ20Bは、素子形成面25上に磁性体層53がさらに追加されている点において、第1の変形例によるセンサチップ20Aと相違している。磁性体層53は、磁性体層51,52と同じ磁性材料からなるものであっても構わない。磁性体層53についても、感磁素子R1,R2よりも上層に位置していても構わないし、下層に位置していても構わないし、同層に位置していても構わない。
【0039】
そして、第2の変形例においては、磁性体層53が感磁素子R1と感磁素子R2によってx方向から挟まれるように配置されていることから、磁性体層51,52と磁性体層53の間で磁束が流れやすくなる。これにより、感磁素子R1,R2に印加される磁束のx方向成分が高められることから、より高い検出感度を得ることが可能となる。
【0040】
図8は、第1の変形例による集磁部材30Aの形状を示す平面図である。第1の変形例による集磁部材30Aは、第1及び第2の部分31,32のx方向における幅が先端に向かうほど細くなるよう、両側面がテーパー状にカットされている点において、上述した集磁部材30と相違している。これによれば、第3の部分33から取り込まれた磁束φがテーパー状である第1及び第2の部分31,32によって感磁素子R1,R2に集められることから、感磁素子R1,R2にx方向成分の磁束φを印加することが可能となる。
【0041】
図9は、第2の変形例による集磁部材30Bの形状を示す平面図である。第2の変形例による集磁部材30Bは、平面視で略C字型であり、第3の部分33がセンサチップ20の側面23と大きく離れている点において、上述した集磁部材30と相違している。このように、本発明において、センサチップ20の側面21〜23と集磁部材30の第1〜第3の部分31〜33がそれぞれ近接している点は必須でなく、少なくとも、所定の方向から見て、集磁部材30の第1及び第2の部分31,32がセンサチップ20を基準として互いに反対側に位置していれば足り、センサチップ20の側面23と集磁部材30Bの第3の部分33が離間していても構わない。このような構造においても、第3の部分33から取り込まれた磁束φが第1及び第2の部分31,32を介して感磁素子R1,R2に印加されるとともに、感磁素子R1,R2に印加される磁束φのx方向成分を高めることが可能となる。
【0042】
<第2の実施形態>
図10は、本発明の第2の実施形態による磁気センサ2の構造を説明するための模式的な斜視図である。
【0043】
図10に示すように、第2の実施形態による磁気センサ2は、集磁部材30のy方向における長さL2がx方向における幅W2よりも十分に長い点において、第1の実施形態による磁気センサ1と相違している。その他の基本的な構成は、第1の実施形態による磁気センサ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0044】
第2の実施形態による磁気センサ2は、集磁部材30のy方向における長さL2がx方向における幅W2よりも長いことから、y方向の磁束に対する検出感度が向上するという特徴を有している。特に、集磁部材30のy方向における長さL2をx方向における幅W2の2倍以上、例えば、3倍程度に設定すれば、検出感度の向上効果を顕著に得ることが可能となる。
【0045】
<第3の実施形態>
図11は、本発明の第3の実施形態による磁気センサ3の構造を説明するための模式的な斜視図である。
【0046】
図11に示すように、第3の実施形態による磁気センサ3は、集磁部材30のx方向における幅W3がy方向における長さL3よりも十分に長い点において、第1の実施形態による磁気センサ1と相違している。その他の基本的な構成は、第1の実施形態による磁気センサ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0047】
第3の実施形態による磁気センサ3は、集磁部材30のx方向における幅W3がy方向における長さL3よりも長いことから、集磁部材30による磁束のx方向における集磁範囲を拡大することが可能となる。
【0048】
<第4の実施形態>
図12は、本発明の第4の実施形態による磁気センサ4の構造を説明するための模式的な斜視図である。
【0049】
図12に示すように、第4の実施形態による磁気センサ4は、集磁部材30が磁性材料からなる磁性部30Mと非磁性材料からなる非磁性部30Nからなる点において、第1の実施形態による磁気センサ1と相違している。その他の基本的な構成は、第1の実施形態による磁気センサ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0050】
集磁部材30の磁性部30Mは、y方向の磁束を集め、これをセンサチップ20の感磁素子R1,R2に印加する役割を果たす部分である。これに対し、集磁部材30の非磁性部30Nは、回路基板10の主面11と磁性部30Mの間に位置し、磁性部30Mのz方向における高さを感磁素子R1,R2の高さまで嵩上げする役割を果たす部分である。つまり、y方向から見た略側面図である
図13に示すように、磁性部30Mの下部に存在する非磁性部30Nによって、回路基板10の主面11を基準とした磁性部30Mの下面の高さH3と上面の高さH4の間に感磁素子R1,R2が位置するよう、磁性部30Mの高さが維持される。好ましくは、感磁素子R1,R2の高さ位置が下面の高さH3と上面の高さH4のほぼ中間となるよう、非磁性部30Nの高さを設定すれば良い。
【0051】
これにより、磁束が磁性部30Mにより集中することから、感磁素子R1,R2に与えられる磁束の密度をより高めることが可能となる。一例として、磁性部30Mをパーマロイなどの金属磁性材料によって構成し、非磁性部30Nを非磁性の樹脂によって構成することができる。この場合、パーマロイなどからなる金属磁性板を打ち抜き工法によって所定の形状に加工し、これを樹脂に貼り付けることによって
図12に示す集磁部材30を作製することができる。パーマロイなどの金属磁性板を打ち抜くことによって磁性部30Mを作製する場合、磁性部30Mの厚さについては一定となるのに対し、センサチップ20の厚みについては、製品によって異なる場合がある。このような場合であっても、非磁性部30Nの厚みを変えることにより、磁性部30Mの高さを所望の高さに維持することが可能となる。
【0052】
<第5の実施形態>
図14は、本発明の第5の実施形態による磁気センサ5の構造を説明するための模式的な斜視図である。
【0053】
図14に示すように、第5の実施形態による磁気センサ5は、集磁部材30が磁性材料からなる磁性部30Mと非磁性材料からなる非磁性部30Nからなる点において、
図10に示した第2の実施形態による磁気センサ2と相違している。その他の基本的な構成は、第2の実施形態による磁気センサ2と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0054】
このように、集磁部材30が縦長形状を有している場合においても、集磁部材30を磁性部30Mと非磁性部30Nの組み合わせによって構成することが可能である。
【0055】
<第6の実施形態>
図15は、本発明の第6の実施形態による磁気センサ6の構造を説明するための模式的な斜視図である。
【0056】
図15に示すように、第6の実施形態による磁気センサ6は、集磁部材30が磁性材料からなる磁性部30Mと非磁性材料からなる非磁性部30Nからなる点において、
図11に示した第3の実施形態による磁気センサ3と相違している。その他の基本的な構成は、第3の実施形態による磁気センサ3と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0057】
このように、集磁部材30が横長形状を有している場合においても、集磁部材30を磁性部30Mと非磁性部30Nの組み合わせによって構成することが可能である。
【0058】
<第7の実施形態>
図16は、本発明の第7の実施形態による磁気センサ7の構造を説明するための模式的な斜視図である。
【0059】
図16に示すように、第7の実施形態による磁気センサ7は、センサチップ20が回路基板10に上下反転して搭載されているとともに、集磁部材30の厚みがセンサチップ20よりも薄い点において、第1の実施形態による磁気センサ1と相違している。その他の基本的な構成は、第1の実施形態による磁気センサ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0060】
本実施形態においては、センサチップ20の素子形成面25が回路基板10の主面11と向かい合うよう、上下反転して搭載されている。その結果、回路基板10の主面11を基準とした感磁素子R1,R2の高さは、第1の実施形態よりも低く、回路基板10の主面11の直上に位置している。これに合わせ、本実施形態では集磁部材30の厚さを十分に薄くしている。つまり、y方向から見た略側面図である
図17に示すように、回路基板10の主面11と集磁部材30上面の高さH5の間に感磁素子R1,R2が位置するよう、集磁部材30の厚さが設定される。好ましくは、感磁素子R1,R2の高さ位置が回路基板10の主面11と集磁部材30上面の高さH5のほぼ中間となるよう、集磁部材30の厚さを設定すれば良い。
【0061】
これにより、第4の実施形態と同様、パーマロイなどからなる金属磁性板を打ち抜き工法によって所定の形状に加工することにより、集磁部材30を作製することが可能となる。また、本実施形態においては、センサチップ20の素子形成面25が回路基板10の主面11で覆われる構造となることから、センサチップ20の素子形成面25が物理的に保護されるという利点も得られる。
【0062】
<第8の実施形態>
図18は、本発明の第8の実施形態による磁気センサ68の構造を説明するための模式的な斜視図である。また、
図19は、磁気センサ68をy方向から見た略側面図である。
【0063】
図18及び
図19に示すように、第8の実施形態による磁気センサ68においては、集磁部材30の第3の部分33がセンサチップ20の素子形成面25を覆うよう、集磁部材30が立てて回路基板10の主面11に搭載されているとともに、集磁部材30が磁性材料からなる磁性部30Mと非磁性材料からなる非磁性部30N
1,30N
2によって構成されている点において、
図1に示した第1の実施形態による磁気センサ1と相違している。その他の基本的な構成は、第1の実施形態による磁気センサ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0064】
集磁部材30の非磁性部30N
1は、回路基板10の主面11と集磁部材30の第1の部分31の間に位置し、集磁部材30の非磁性部30N
2は、回路基板10の主面11と集磁部材30の第2の部分32の間に位置する。これにより、集磁部材30の第1及び第2の部分31,32は、z方向から見て、センサチップ20を基準として互いに反対側に位置する。集磁部材30の非磁性部30N
1,30N
2のz方向における高さは、センサチップ20のz方向における高さとほぼ同じか、センサチップ20のz方向における高さよりもやや高い。これにより、集磁部材30の第1及び第2の部分のz方向における先端は、センサチップ20の素子形成面25とほぼ同じ平面位置か、或いは、センサチップ20の素子形成面25よりもやや高い平面位置に保持される。
【0065】
本実施形態においては、センサチップ20の素子形成面25が集磁部材30の第3の部分33によって覆われているが、両者は接触しておらず、両者は空間を介して向かい合っている。このため、仮に集磁部材30に外力が加わったとしても、センサチップ20の素子形成面25に外力が加わることがない。
【0066】
このような構成により、本実施形態による磁気センサ68は、z方向の磁束を検出することが可能となる。つまり、z方向の磁束が第3の部分33から集磁部材30に取り込まれると、これが第1及び第2の部分31,32によってx方向に曲げられる。そして、集磁部材30の第1及び第2の部分31,32のx方向における近傍には、感磁素子R1,R2が配置されていることから、集磁部材30を通過する磁束φは、感磁素子R1,R2の近傍においてz方向成分だけでなく、x方向成分を持つことになる。
【0067】
これにより、本実施形態による磁気センサ68は、z方向の磁束を選択的に検出することが可能となる。本実施形態においては、集磁部材30が非磁性部30N
1,30N
2を有していることから、高さの異なるセンサチップ20を用いる場合、磁性部30Mの形状を変えることなく、非磁性部30N
1,30N
2の高さを変えることによって、適切な特性を得ることが可能となる。
【0068】
<第9の実施形態>
図20は、本発明の第9の実施形態による磁気センサ69の構造を説明するための模式的な斜視図である。また、
図21は、磁気センサ69をy方向から見た略側面図である。
【0069】
図20及び
図21に示すように、第9の実施形態による磁気センサ69は、集磁部材30に非磁性部30N
1,30N
2が設けられていないとともに、第1及び第2の部分31,32のx方向における幅が一定ではなく、第3の部分33に近い根元部分において第1及び第2の部分31,32のx方向における幅が拡大されている点において、
図18及び
図19に示した第8の実施形態による磁気センサ68と相違している。その他の基本的な構成は、第8の実施形態による磁気センサ68と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0070】
集磁部材30の第1の部分31は、根元部分31aと先端部分31bを有しており、根元部分31aの方が先端部分31bよりもx方向における幅が太い。同様に、集磁部材30の第2の部分32は、根元部分32aと先端部分32bを有しており、根元部分32aの方が先端部分32bよりもx方向における幅が太い。これにより、第1の部分31と第2の部分32のx方向における間隔は、第3の部分33に近い根元部分において狭くなる段差形状となる。つまり、根元部分31aと根元部分32aのx方向における間隔Saは、先端部分31bと先端部分32bのx方向における間隔Sbよりも狭い。根元部分31a,32aと先端部分31b,32bのz方向における境界位置は、センサチップ20のz方向における高さとほぼ同じか、センサチップ20のz方向における高さよりもやや高い位置に設計することが好ましい。
【0071】
このような構成により、本実施形態による磁気センサ69は、z方向の磁束を検出することが可能となる。つまり、z方向の磁束が第3の部分33から集磁部材30に吸い込まれると、これが第1及び第2の部分31,32によってx方向に曲げられ、その一部が根元部分31a,32aと先端部分31b,32bの境界に位置する段差部分から放出される。そして、段差部分のx方向における近傍には、感磁素子R1,R2が配置されていることから、集磁部材30を通過する磁束φは、感磁素子R1,R2の近傍においてz方向成分だけでなく、x方向成分を持つことになる。
【0072】
これにより、本実施形態による磁気センサ69は、z方向の磁束を選択的に検出することが可能となる。本実施形態においては、集磁部材30が非磁性部30N
1,30N
2を有していないことから、単一の磁性材料によって集磁部材30を作製することが可能である。
【0073】
<第10の実施形態>
図22は、本発明の第10の実施形態による磁気センサ70の構造を説明するための模式的な斜視図である。また、
図23は、磁気センサ70をy方向から見た略側面図である。
【0074】
図22及び
図23に示すように、第10の実施形態による磁気センサ70は、センサチップ20が回路基板10に上下反転して搭載されているとともに、集磁部材30の第1及び第2の部分31,32が段差形状を有していない点において、第9の実施形態による磁気センサ69と相違している。その他の基本的な構成は、第9の実施形態による磁気センサ69と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0075】
本実施形態においては、センサチップ20の素子形成面25が回路基板10の主面11と向かい合うよう、上下反転して搭載されているため、回路基板10の主面11を基準とした感磁素子R1,R2の高さは、第9の実施形態よりも低く、回路基板10の主面11の直上に位置している。これにより、集磁部材30の第1及び第2の部分のz方向における先端は、センサチップ20の素子形成面25とほぼ同じ平面位置に保持される。
【0076】
このような構成を有する磁気センサ70も、z方向の磁束を選択的に検出することが可能となる。本実施形態においては、センサチップ20の素子形成面25が回路基板10の主面11と向かい合うことから、両者をフリップチップ接続することができ、ボンディングワイヤを省略することが可能となる。
【0077】
<第11の実施形態>
図24は、本発明の第11の実施形態による磁気センサ71の構造を説明するための模式的な斜視図である。
【0078】
図24に示すように、第11の実施形態による磁気センサ71は、集磁部材30の第3の部分33に補償コイルCが巻回されている点において、第1の実施形態による磁気センサ1と相違している。その他の基本的な構成は、第1の実施形態による磁気センサ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0079】
補償コイルCは、y方向が軸方向となるよう集磁部材30の第3の部分33に巻回されたワイヤ(被服導電)からなる。補償コイルCは、集磁部材30に直接巻回しても構わないし、樹脂などからなるボビンを介して集磁部材30に巻回しても構わない。また、巻崩れを防止するために、集磁部材30に巻回した補償コイルCを接着剤で固めても構わない。本実施形態において用いる集磁部材30は、第3の部分33がボビン形状を有している。これにより、補償コイルCを構成するワイヤの巻回作業が容易となるだけでなく、集磁部材30に巻回された補償コイルCの脱落が防止される。尚、
図24に示す例では、第3の部分33のy方向における両端に鍔部を設けているが、いずれか一方の端部にのみ鍔部を設けても構わない。
【0080】
補償コイルCを構成するワイヤのターン数については特に限定されず、目的とするキャンセル磁界の発生に必要なターン数とすれば良い。本実施形態においては、補償コイルCを集磁部材30に巻回していることから、センサチップ20に補償コイルを集積する方式と比べて、ターン数を大幅に増やすことが可能であるとともに、より大きな電流を流すことが可能である。また、回路基板10の主面11上に補償コイルを別途配置する方式のように、磁気センサ全体のサイズが大型化することもない。
【0081】
特に限定されるものではないが、本実施形態においては、センサチップ20の素子形成面25に4つの感磁素子R1〜R4が形成されている。このうち、感磁素子R1,R4は側面21側にオフセットして配置され、感磁素子R2,R3は側面22側にオフセットして配置されている。感磁素子R1〜R4は、全て同一の磁化固定方向を有している。
【0082】
図25は、感磁素子R1〜R4と補償コイルCの接続関係を説明するための回路図である。
【0083】
図25に示すように、感磁素子R1は端子電極81,83間に接続され、感磁素子R2は端子電極82,83間に接続され、感磁素子R3は端子電極81,84間に接続され、感磁素子R4は端子電極82,84間に接続されている。端子電極81には電源電位Vccが与えられ、端子電極82には接地電位GNDが与えられる。そして、感磁素子R1〜R4は全て同一の磁化固定方向を有していることから、集磁部材30の第1の部分31に近い感磁素子R1,R4の抵抗変化量と、集磁部材30の第2の部分32に近い感磁素子R2,R3の抵抗変化量との間には差が生じる。これにより、感磁素子R1〜R4は差動ブリッジ回路を構成し、磁束密度に応じた感磁素子R1〜R4の電気抵抗の変化が端子電極83,84に現れることになる。
【0084】
端子電極83,84から出力される差動信号は、回路基板10又はセンサチップ20に設けられた差動アンプ91に入力される。差動アンプ91の出力信号は、端子電極85にフィードバックされる。
図25に示すように、端子電極85と端子電極86との間には補償コイルCが接続されており、これにより、補償コイルCは差動アンプ91の出力信号に応じたキャンセル磁界を発生させる。かかる構成により、外部磁束の磁束密度に応じた感磁素子R1〜R4の電気抵抗の変化が端子電極83,84に現れると、これに応じた電流が補償コイルCに流れ、逆方向のキャンセル磁界を発生させる。これにより、外部磁束が打ち消される。そして、差動アンプ91から出力される電流を検出回路92によって電流電圧変換すれば、外部磁束の強さを検出することが可能となる。
【0085】
そして、本実施形態においては、補償コイルCが集磁部材30に巻回されていることから、十分なターン数を確保することができるとともに、より大きな電流を流すことが可能である。これにより、強いキャンセル磁界を発生させることができるため、測定対象となる磁界が比較的強い場合であっても、感磁素子R1〜R4に印加される磁界を正しくキャンセルすることができるだけでなく、集磁部材30の磁気飽和を防止することが可能となる。
【0086】
<第12の実施形態>
図26は、本発明の第12の実施形態による磁気センサ72の構造を説明するための模式的な斜視図である。また、
図27は、磁気センサ72をy方向から見た略側面図である。
【0087】
図26及び
図27に示すように、第12の実施形態による磁気センサ72は、集磁部材30の第3の部分33に補償コイルCが巻回されているとともに、センサチップ20の素子形成面25に4つの感磁素子R1〜R4が形成されている点において、第8の実施形態による磁気センサ68と相違している。その他の基本的な構成は、第8の実施形態による磁気センサ68と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0088】
本実施形態においては、集磁部材30の第3の部分33がセンサチップ20の素子形成面25を覆うよう、集磁部材30が立てて回路基板10の主面11に搭載されていることから、補償コイルCは、z方向が軸方向となるよう集磁部材30の第3の部分33に巻回されている。これにより、集磁部材30の第3の部分33に取り込まれるz方向の磁束を打ち消すことができる。これにより、第11の実施形態による磁気センサ71と同様、測定対象となる磁界が比較的強い場合であっても、感磁素子R1〜R4に印加される磁界を正しくキャンセルすることができるだけでなく、集磁部材30の磁気飽和を防止することが可能となる。
【0089】
<第13の実施形態>
図28は、本発明の第13の実施形態による磁気センサ73の構造を説明するための模式的な斜視図である。また、
図29は、磁気センサ73をy方向から見た略側面図である。
【0090】
図28及び
図29に示すように、第13の実施形態による磁気センサ73は、集磁部材30の第3の部分33に補償コイルCが巻回されているとともに、センサチップ20の素子形成面25に4つの感磁素子R1〜R4が形成されている点において、第10の実施形態による磁気センサ70と相違している。その他の基本的な構成は、第10の実施形態による磁気センサ70と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0091】
本実施形態においても、集磁部材30の第3の部分33に取り込まれるz方向の磁束を補償コイルCによって打ち消すことができる。これにより、第11及び
図12の実施形態による磁気センサ71,72と同様、測定対象となる磁界が比較的強い場合であっても、感磁素子R1〜R4に印加される磁界を正しくキャンセルすることができるだけでなく、集磁部材30の磁気飽和を防止することが可能となる。
【0092】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。