【解決手段】水底観測システム1は、潜水艇2と、潜水艇に搭載された水中ビデオカメラ3と、海底面で反射されたレーザビームから海底面までの距離を測定するレーザ測距装置4と、水中ビデオカメラ3およびレーザ測距装置4の三次元的な位置および姿勢を検出するGNSS/ジャイロ装置5と、撮影された撮影画像データと、水中ビデオカメラ3の位置データおよび姿勢データを同期記録するビデオレコーダを備え、複数の撮影画像の重複範囲について、それぞれの位置データおよび姿勢データに基づく画像処理によって地理座標を付与されたDSMデータと、正射投影写真図を作成可能で、計測された水深データとその姿勢データとに基づいてDSMデータを補完する補完用DSMデータを作成可能に構成されている。
前記レーザ測距装置が、レーザビームを拡散させて、n×nのマトリックス状に海底面に照射する拡散部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の水底観測システム。
前記複数の水中カメラがシャッター制御可能なビデオカメラにより構成され、前記複数のビデオカメラが左右に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の水底観測システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここに、ビデオカメラによって得られる水中映像は、水中における動的観測により光学的性状を把握することが可能になるが、一過性の映像情報で、地理座標を持たないため、水底の態様に関する光学的性状全般に及ぶ定量解析の基礎となり得ないという問題があった。
【0006】
さらに、特許文献2においては、ビデオカメラによって水底画像を撮像するように構成されているので、太陽光線の陰りや夜明け/薄暮時に水底領域を撮像する場合や、水深が深く、太陽光線が届かない水底領域を撮像する場合、水質が汚濁している水底領域を撮像する場合、撮像すべき水底領域が陰になっている場合などには、精度よく、水底表面データを作成することができないという問題があった。
【0007】
したがって、本発明は、太陽光線の陰りや夜明け/薄暮時に水底領域を撮像する場合や、水深が深く、太陽光線が届かない水底領域を撮像する場合、水質が汚濁している水底領域を撮像する場合、撮像すべき水底領域が陰になっている場合などにおいても、精度よく、地理座標位置とともに、水底表面データを作成することができる水底観測システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のかかる目的は、
水中移動可能な潜水艇と、
前記潜水艇に搭載された可視光を連続的に検出する複数の水中カメラと、
レーザビームを放出し、海底面により反射されたレーザビームを受光して、海底面までの距離を前記複数の水中カメラと同期して連続的に計測可能なレーザ測距装置と、
前記複数の水中カメラおよび前記レーザ測距装置の姿勢を検出する姿勢センサと、
前記複数の水中カメラの撮影位置および前記レーザ測距装置の計測位置を検出するGNSSセンサと、
前記複数の水中カメラによって撮影された撮影画像データと前記姿勢センサによって検出された前記複数の水中カメラの姿勢データおよび前記GNSSセンサによって検出された前記複数の水中カメラの撮影位置データとを同期記録する収録手段と、
前記収録手段の記録画像を処理する画像処理手段を備え、
前記画像処理手段が、前記水中カメラによって撮影された複数の撮影画像の重複範囲について、それぞれの姿勢データおよび撮影位置データに基づく画像処理によって地理座標を付与されたDSMデータと、正射投影写真図を作成可能に構成され、前記レーザ測距装置によって計測された水底までの距離を示す水深データと前記姿勢センサによって検出された前記レーザ測距装置の姿勢データとに基づいて、前記DSMデータを補完する補完用DSMデータを作成可能に構成され、
前記レーザ測距装置が、放出するレーザビームの放出時間と強度を記憶する記憶手段を備え、前記海底面によって反射されたレーザビームの検出時間を検出するフォトセンサと、前記海底面によって反射された前記レーザビームの強度を検出するエリアセンサを備えた受光センサを有していることを特徴とする水底観測システム
によって達成される。
【0009】
本明細書において、DSMはDigital Surface Modelの略語であり、数値表層モデルをいう。
【0010】
本発明によれば、水底観測システムにおいては、可視光を検出する複数の水中カメラが潜水艇に搭載されているから、複数の水中カメラによって水底の画像を撮影し、水底の状況を視覚的に分りやすく示すことができる。
【0011】
また、本発明によれば、水底観測システムは、可視光を検出する複数の水中カメラに加えて、水底までの距離を計測可能なレーザ測距装置を備えているから、水深が深いために、太陽光線が届かず、明るさ不足しているため、可視光を検出する複数の水中カメラよっては、精度よく、水底表面データを作成することができず、複数の水中カメラによって得られる水底表面データの一部が欠損している場合や、水質が汚濁しているために、可視光を検出する複数の水中カメラによっては、精度よく、水底表面データを作成することができず、複数の水中カメラによって得られる水底表面データの一部が欠損している場合、可視光を検出する複数の水中カメラによって水底を撮影するときに、陰になってしまい、精度よく、水底表面データを作成することができず、複数の水中カメラによって得られる水底表面データの一部が欠損している場合、太陽光線の陰りや夜明け/薄暮時、あるいは、コントラストがきわめて高く、そのために明るさが不足して十分な露光が得られない部分ができ、複数の水中カメラによって得られる水底表面データの一部が欠損している場合、複数の水中カメラによって得られる水底表面画像の結合処理(画像マッチング処理)がうまく出来ずに、水底表面データの一部が欠損している場合にも、レーザ測距装置によって水深までの距離を測定し、可視光を検出する複数の水中カメラによって得られる水底表面データの欠損を補完することが可能になる。
【0012】
本発明の好ましい実施態様においては、前記レーザ測距装置が、レーザビームを拡散させて、n×nのマトリックス状に海底面に照射する拡散部材を備えている。
【0013】
本発明の好ましい実施態様においては、前記水中カメラがシャッター制御可能なビデオカメラであり、前記複数のビデオカメラは左右に配置されている。
【0014】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、ビデオカメラが左右に配置されているから、水底画像について80%の重複範囲を確保して,効率よく撮影することができ、また、シャッター制御により、波浪による急激な視点変動があっても、明瞭な水底画像を撮影することができるので、画像処理精度の向上を図ることができる。
【0015】
本発明の好ましい実施態様においては、前記姿勢センサと前記GNSSセンサが、GNSS/ジャイロ装置によって構成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、太陽光線の陰りや夜明け/薄暮時に水底領域を撮像する場合や、水深が深く、太陽光線が届かない水底領域を撮像する場合、水質が汚濁している水底領域を撮像する場合、撮像すべき水底領域が陰になっている場合などにおいても、精度よく、地理座標位置とともに、水底表面データを作成することができる水底観測システムを提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる水底観測システムの機能構成図であり、
図2は、
図1に示された本発明の好ましい実施態様にかかる水底観測システムの構成要素を示すブロックダイアグラムである。
【0019】
図1および
図2に示されるように、本発明の好ましい実施態様にかかる水底観測システム1は、水中を移動可能な潜水艇2と、潜水艇2に搭載された一対の水中ビデオカメラ3、3(
図1においては、一方のみが図示されている)と、潜水艇2に搭載されたレーザ測距装置4と、一対の水中ビデオカメラ3、3の撮影位置およびレーザ測距装置4の測距位置を検出し、一対の水中ビデオカメラ3、3の撮影時の姿勢およびレーザ測距装置4の測距時の姿勢を検出するGNSS/ジャイロ装置5と、一対の水中ビデオカメラ3、3によって撮影された水底画像のデータ、GNSS/ジャイロ装置5によって検出された当該水底画像を撮影したときの一対の水中ビデオカメラ3、3の撮影位置データおよび一対の水中ビデオカメラ3、3の姿勢データを同期して記録するビデオレコーダ7、7と、ビデオレコーダ7、7に記録された水底画像データ、撮影位置データおよび姿勢データに基づいて、潜水艇2上でリアルタイムに水底画像を画像処理し、あるいは、撮影作業終了後に水底画像の画像処理をする画像処理部8を備えたパーソナルコンピュータ9を備えている。
【0020】
各ビデオカメラ3としては、ハウジング内に収納され、電子制御可能な高速シャッターを備えた水中撮影可能なビデオカメラが用いられている。ビデオカメラ3としては、それぞれ、水底画像の80%を重ねた撮影を可能とし、波浪による揺れを受けた場合でも、高速シャッターによって鮮明画像を収録可能なものが用いられている。
【0021】
図1には一方しか図示されていないが、一対の水中ビデオカメラ3、3は、潜水艇2の左右両側に配置されている。
【0022】
GNSS/ジャイロ装置5は、一対の水中ビデオカメラ3、3の三次元的な撮影位置とレーザ測距装置4の三次元的な測距位置を検出し、高精度のDGNSSを適用可能に構成され、GNSS/ジャイロ装置5は、さらに、一対の水中ビデオカメラ3、3の光軸方向の姿勢データおよびレーザ測距装置4の測距時の姿勢、すなわち、レーザ測距装置4からのレーザビームの放出方向を検出するように構成されている。
【0023】
ビデオレコーダ7、7は、各ビデオカメラ3、3によって撮影された水底画像と、GNSS/ジャイロ装置5によって検出された各ビデオカメラ3、3の撮影位置データおよび各ビデオカメラ3、3の姿勢データを同期して記録メディアに収録し、これを潜水艇2に搭載されたパーソナルコンピュータ9の画像処理部8に入力するように構成されている。あるいは、各ビデオカメラ3、3によって撮影された水底画像と、GNSS/ジャイロ装置5によって検出された各ビデオカメラ3、3の撮影位置データおよび各ビデオカメラ3、3の姿勢データが同期して記録された可搬メディアまたはこれらのデータを無線伝送によって、地上に位置したパーソナルコンピュータ(図示せず)の画像処理部(図示せず)に入力可能に構成することもできる。
【0024】
画像処理部8には、一対のビデオカメラ3、3によって生成された水底の映像データ、GNSS/ジャイロ装置5によって検出された一対のビデオカメラ3、3の姿勢データおよび一対のビデオカメラ3、3の三次元的な位置データが入力され、パーソナルコンピュータの画像処理部8は、これらのデータに基づいて、ステレオマッチングにより、地理座標上で表現される数値地表モデルであるDSMデータを作成するように構成されている。
【0025】
図2に示されるように、水底観測システム1は、さらに、ビデオ編集機12、12と、同期信号を発生する同期信号発生装置14と、DSMデータを生成するDSMデータ生成部15と、DSMデータに基づいて、正射写真を生成する正射写真図生成部16を備えている。
【0026】
図3は、レーザ測距装置4のレーザビーム放出部の略斜視図である。
【0027】
図3に示されるように、レーザ測距装置4は、レーザビーム20をパルス状に放出するLEDレーザ光源21を備え、LEDレーザ光源21から放出されたレーザビーム20は、コリメータレンズ22に入射して、平行なビームに変換される。コリメータレンズ22によって平行なビームに変換されたレーザビーム20は拡散部材23に入射し、レーザビーム20は、拡散部材23によって、多数のレーザビーム25に分割されて、n×nのマトリックス状に、たとえば、128×128のマトリックス状に海底面に照射される。
【0028】
拡散部材23としては、たとえば、Advanced Scientific Concepts, Inc.によって製造販売されている「3D Flash Lidar」(登録商標)に使われている拡散部材が好ましく使用される。
【0029】
図4は、レーザ測距装置4のレーザビーム受光部の略斜視図である。
【0030】
図4に示されるように、拡散部材23によって分割され、海底面によって反射されたレーザビーム45は、集光レンズ26によって集光されて、受光センサ27によって、光電的に検出される。
【0031】
図5は、受光センサ27の略縦断面図であり、
図5に示されるように、LEDレーザ光源21から放出されたレーザビーム20が海底面によって反射されて生成されたレーザビーム45を検出するまでの検出時間を感知するフォトセンサ28と海底面によって反射されたレーザビーム45の強度を検出するCCDセンサ29を備えている。
【0032】
図6は、レーザ測距装置4の制御系および検出系のブロックダイアグラムである。
【0033】
図6に示されるように、レーザ測距装置4は、レーザ光源21からパルス状にレーザビーム20を放出した時間と、そのレーザビーム20が海底面によって反射されて生成されたレーザビーム45が、フォトセンサ28によって受光された時間を記憶する第一のメモリ領域30Aと、レーザ光源21から放出されたレーザビーム20の強度とCCDセンサ29が検出したレーザビーム45の強度を記憶する第二のメモリ領域30Bを備えたRAM30を有している。
【0034】
さらに、レーザ測距装置4は、RAM30の第一のメモリ領域30Aに記憶されたレーザ光源21からレーザビーム20が放出された時間および海底面によって反射されたレーザビーム45をフォトセンサ28が受光した時間ならびにレーザ光源21から放出されたレーザビーム20の強度およびCCDセンサ29が検出したレーザビーム45の強度に基づいて、海底面までの距離を算出するコントローラ31を備えている。
【0035】
また、
図6に示されるように、レーザ測距装置4は、レーザビーム20の照射によって得られたデータを処理するレーザデータ処理部10を備えている。
【0036】
レーザビーム20が拡散部材23によって分割されて、n×nのマトリックス状に海底面に照射された場合には、n×nのマトリックスの要素によって反射されたレーザビーム25をフォトセンサ28およびCCDセンサ29により光電検出することによって、その要素とレーザ光源21との距離を正確に算出することができ、したがって、n×nのマトリックスのすべての要素とレーザ光源21との距離を正確に算出することが可能になる。
【0037】
図7は、
図1ないし
図6に示された本発明の好ましい実施態様にかかる水底観測システム1によって、海底を観測する処理を示すフローチャートである。
【0038】
オペレータによって、スタート信号がパーソナルコンピュータ9に入力されると、パーソナルコンピュータ9から同期信号発生装置14に駆動信号が出力されて、同期信号発生装置14から、一対のビデオカメラ3、3と、レーザ測距装置4と、GNSS/ジャイロ装置5と、コンバートソフトウエア35に同期信号が出力される。このとき、パーソナルコンピュータ9はレーザ光源21からレーザビーム20が放出された時間をレーザ測距装置4のRAM30内の第一のメモリ領域30A内に格納するとともに、レーザ光源21から放出されたレーザビーム20の強度をレーザ測距装置7のRAM30内の第二のメモリ領域30B内に格納する。
【0039】
同期信号を受けると、一対のビデオカメラ3、3は、撮影を開始し、海底面の撮影領域32、32のカラー画像が撮影される。
【0040】
一方、レーザ測距装置4は、レーザ光源21からパルス状にレーザビーム20を放出させ、コリメータレンズ22によって平行なビームに変換した後に、拡散部材23に入射させる。拡散部材23を通過させることによって、レーザビーム20は多数のレーザビーム25に、n×nのレーザビーム25、たとえば、128×128のレーザビーム25に分割されて、一対のビデオカメラ3、3の海底面の撮影領域32、32が重複している重複撮影領域33に照射され、重複撮影領域33内にn×nのマトリックス状照射部33Aが形成される。
【0041】
海底面のn×nのマトリックス状照射部33Aの各々によって反射されたレーザビーム45は、集光レンズ26によって集光されて、受光センサ27によって、光電的に検出される。
【0042】
上述のように、受光センサ27は、海底面によって反射されたレーザビーム25の検出時間を検出するフォトセンサ28と海底面によって反射されたレーザビーム25の強度を検出するCCDセンサ29とによって構成されている。
【0043】
フォトセンサ28は、海底面のn×nのマトリックス状照射部33Aの各々によって反射されたレーザビーム45を検出したときに、レーザビーム45を検出した時間をRAM30内の第一のメモリ領域30A内に格納する。ここに、第一のメモリ領域30A内はn×nのマトリックス状照射部33Aに対応して、n×nのマトリックス状メモリ領域に分割されており、フォトセンサ28は、海底面のn×nのマトリックス状照射部33Aの各々によって反射されたレーザビーム45の検出時間を、第一のメモリ領域30A内の対応するマトリックス状メモリ領域内に格納する。
【0044】
一方、CCDセンサ29は、海底面のn×nのマトリックス状照射部33Aの各々によって反射されたレーザビーム45の強度を検出し、海底面のn×nのマトリックス状照射部33Aの各々によって反射されたレーザビーム45の強度を、第二のメモリ領域30B内の対応するマトリックス状メモリ領域内に格納する。
【0045】
次いで、コントローラ31がRAM30にアクセスして、第一のメモリ領域30A内のマトリックス状メモリ領域の各々に記憶されたレーザ光源21からレーザビーム20が放出された時間およびフォトセンサ28によってレーザビーム45が検出された時間、ならびに、第二のメモリ領域30B内のマトリックス状メモリ領域の各々に記憶されたレーザ光源42から放出されたレーザビーム20の強度およびCCDセンサ29が検出したレーザビーム45の強度に基づいて、海底面のn×nのマトリックス状照射部33Aの各々の水深データを算出する。
【0046】
同期信号に応答して、GNSS/ジャイロ装置5は、一対のビデオカメラ3、3の姿勢データと位置データを生成し、コンバートソフトウエア35を起動して、変換済み姿勢データおよび変換済み位置データを算出させる。
【0047】
同期信号に応答して、一対のビデオカメラ3、3によって撮影された海底面の画像に対応する画像データはビデオレコーダ7、7に出力され、さらに、ビデオ編集機12、12によって、連番画像が生成される。次いで、別途、観測したカメラパラメータを用いて、焦点距離・レンズ歪みの補正が行われ、補正済みの左右連番画像(1/30秒毎のペア画像)が生成される。
【0048】
ここに、カメラパラメータは、別途水槽内に設置したターゲットを水中ビデオカメラ3で撮影し、写真測量式を用いて、焦点距離・レンズ歪みを求めることによって、観測される。
【0049】
次いで、補正済みの左右連番画像に対し、たとえば、テンプレートマッチングを実行して、横視差を算出する。
【0050】
こうして算出された横視差と、GNSS/ジャイロ装置5によって測定された位置データおよび姿勢データがコンバートソフトウェア35によって変換された一対のビデオカメラ3、3の変換済み位置データおよび変換済み姿勢データと、レンズの焦点距離とを用いて、標高値が算出され、第一の水深データが算出される。
【0051】
次いで、補正済みの左右連番画像のうち、左画像または右画像の時間差を持つ補正済み連番画像(N−1)に、ビデオカメラ3、3の補正済み位置データおよび補正済み姿勢データを用いて、補正済み連番画像Nと同一座標上に幾何補正を行い、幾何補正済み連番画像(N−1)が作成される。
【0052】
こうして得られた幾何補正済み連番画像(N−1)と補正済み連番画像Nに対して、たとえば、テンプレートマッチングを実行して、縦視差が算出される。
【0053】
次いで、こうして算出された縦視差と、GNSS/ジャイロ装置5によって測定された位置データおよび姿勢データがコンバートソフトウェア35によって変換された一対のビデオカメラ3、3の変換済み位置データおよび変換済み姿勢データと、レンズの焦点距離とを用いて、標高値が算出され、第二の水深データが算出される。
【0054】
一方、レーザ測距装置4によって生成された距離データと、レーザ距離装置4の位置データおよび姿勢データと、レンズの焦点距離を用いて、第三の水深データが算出される。
【0055】
こうして、第一の水深データ、第二の水深データおよび第三の水深データが算出されると、DSMデータ作成部15によって、DSMデータが作成される。
【0056】
すなわち、一対の水中ビデオカメラ3、3によって撮影した画像データに基づいて算出された第一の水深データおよび第二の水深データを主として用い、その補完用データとして、レーザ測距装置4によって生成された距離データに基づいて算出された第三の水深データを用いて、内挿・外挿計算により、DSMデータが作成される。
【0057】
DSMデータ作成部15によって作成されたDSMデータは、オルソ画像作成ソフトウエア40により、レンズ歪み補正済み連番画像を、レンズの焦点距離、変換済み位置データおよび変換済み姿勢データを用いて、正射投影され、水中におけるオルソフォトが作成される。
【0058】
ここに、レーザ測距装置4によって生成された第三の水深データは、たとえば、n×nのマトリックス状の領域33Aの水深データで、さらに、重複撮影領域33を分割して、2n×2nのマトリックス状の領域33Aを生成し、それぞれの水深データを求めても、各領域33Aの大きさは、一対の水中ビデオカメラ3、3が撮影した画像の画素に比べて、はるかに大きいので、一対のビデオカメラ3、3が撮影した画像に基づいた計測精度に比して、精度が低く、したがって、本実施態様においては、レーザ測距装置4によって生成したマトリックス状の領域33Aの第三の水深データに基づいて、一対の水中ビデオカメラ3、3によって撮影した画像によって生成されるDSMデータを補完するための補完用DSMデータを生成するように構成されている。
【0059】
こうして、一対の水中ビデオカメラ3、3が撮影した画像に基づいて生成されたDSMデータおよびレーザ測距装置4により生成された補完用DSMデータによって、撮影対象となる海底領域のDSMデータが生成される。本実施態様においては、一対の水中ビデオカメラ3、3によって、深海領域においても、視覚的に水底領域を観測することができる。しかし、水深がきわめて深い深海領域では、太陽光線が届かず、一対の水中ビデオカメラ3、3によって鮮明な水底画像を生成することが困難な場合が多々あるが、本実施態様においては、このように、レーザ測距装置4により、補完用DSMデータを生成しているから、一対の水中ビデオカメラ3、3によっては、鮮明な水底画像を生成することが困難な水深がきわめて深い深海領域においても、所望のように、水底の深さを求め、水底領域を測量し、水底を観測することが可能になる。
【0060】
ここに、一対の水中ビデオカメラ3、3によって撮影された画像から正しく生成されたDSMデータがある海底領域に対しては、レーザ測距装置4によって生成した補完用DSMデータは適用されない。
【0061】
一方で、補正済み連番画像がDSMデータ上に重畳して投影される。
【0062】
次いで、正射投影写真図作成部16は、オルソ画像作成ソフトウエア40を起動させ、こうして得られた画像を、コンバートソフトウエア40によって生成された変換済み位置データおよび変換済み姿勢データを用いて、正射投影をし、正射投影写真画像データが作成される。
【0063】
観測は、潜水艇2を観測計画線に沿って移動させつつ、以上のように、一対の水中ビデオカメラ3、3によって水底画像を撮影し、レーザ測距装置4によって水底との距離を測定するとともに、GNSS/ジャイロ装置5によって一対の水中ビデオカメラ3、3の撮影条件である視点位置と光軸方向を検出し、ビデオレコーダ7、7によって、両者を同期記録することによって実行される。
【0064】
観測の終了後に、正射投影写真画像データは、潜水艇2に搭載されたパーソナルコンピュータ9の画像処理部8に入力され、あるいは、可搬メディアまたは無線伝送によって、地上に位置したパーソナルコンピュータ(図示せず)の画像処理部(図示せず)に入力されて、正射投影画像処理が実行される。
【0065】
この画像処理出力は、水深が浅い浅海域の場合には、浅海域の珊瑚礁や浅瀬をカラーで視覚的に表すことによって、浅海域の珊瑚礁や浅瀬の状況を視覚的に分りやすく示すことができ、したがって、本実施態様によれば、浅海域の珊瑚礁や浅瀬の水中環境をカラーで面的に捉えることができるから、色の違いによる珊瑚礁や浅瀬の植生(藻)の成育状況を把握することが可能となる。
【0066】
また、本実施態様によれば、水底観測システム1は、可視光を検出する一対の水中ビデオカメラ3、3に加えて、水底までの距離を計測可能なレーザ測距装置4を備えているから、水深が深いために、太陽光線が届かず、明るさ不足しているため、可視光を検出する水中ビデオカメラ3、3によっては、精度よく、水底表面データを作成することができず、水中ビデオカメラ3、3によって得られる水底表面データの一部が欠損している場合や、水質が汚濁しているために、可視光を検出する水中ビデオカメラ3、3よっては、精度よく、水底表面データを作成することができず、水中ビデオカメラ3、3によって得られる水底表面データの一部が欠損している場合、可視光を検出する水中ビデオカメラ3、3によって水底を撮影するときに、陰になってしまい、精度よく、水底表面データを作成することができず、水中ビデオカメラ3、3によって得られる水底表面データの一部が欠損している場合、太陽光線の陰りや夜明け/薄暮時、あるいは、コントラストがきわめて高く、そのために明るさが不足して十分な露光が得られない部分ができ、水中ビデオカメラ3、3によって得られる水底表面データの一部が欠損している場合、左右に配置された一対の水中ビデオカメラ3、3によって得られる水底表面画像の結合処理(画像マッチング処理)がうまく出来ずに、水底表面データの一部が欠損している場合にも、レーザ測距装置4によって水深までの距離を測定し、可視光を検出する水中ビデオカメラ3、3によって得られる水底表面データの欠損を補完することが可能になる。
【0067】
さらに、本実施態様によれば、一対の水中ビデオカメラ3、3、レーザ測距装置4、GNSS/ジャイロ装置5が潜水艇2に搭載されているから、きわめて水深が深い深海の水底領域においても、一対のビデオカメラ3、3によって、水底画像を生成することができ、したがって、視覚的に水底領域を観測することが可能になる。
【0068】
加えて、きわめて水深が深い深海においては、太陽光線が届かず、明るさ不足しているため、一対の水中ビデオカメラ3、3によっては、鮮明な水底画像を生成することが困難である場合が多いが、本実施態様によれば、レーザ測距装置4によって、補完用のDSMデータが生成されるから、一対の水中ビデオカメラ3、3によっては、鮮明な水底画像を生成することが困難な深海領域においても、所望のように、水底の深さを求め、水底領域を測量し、水底を観測することが可能になる。
【0069】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0070】
たとえば、前記実施態様においては、一対の水中ビデオカメラが設けられているが、水中ビデオカメラの数は複数であればよく、2つに限定されるものではない。
【0071】
また、前記実施態様においては、水底までの距離を計測するレーザ測距装置4は、レーザビーム20を多数のレーザビーム25に分割する拡散部材23、好ましくは、Advanced Scientific Concepts, Inc.によって製造販売されている「3D Flash Lidar」(登録商標)に用いられている拡散部材を備えているが、この種の拡散部材23を備えたレーザ測距装置4を用いることは必ずしも必要ではなく、ファイバー式のレーザ測距装置や走査型のレーザ測距装置などを用いることもできる。
【0072】
また、前記実施態様においては、海底が観測されているが、本発明は海底の観測に限定されるものではなく、湖沼などの水底の観測に広く用いることができる。