【解決手段】第1の電極21を有する第1の部品20と第2の電極31を有する第2の部品30との間に、個々に独立したフィラー12がバインダー樹脂層11に配列されたフィラー配列層13を有するフィラー含有フィルム10を配置する配置工程と、第1の部品20又は第2の部品30を押圧し、第1の電極20及び第2の電極30との間にフィラー配列層13を挟持する仮固定工程と、仮固定工程から、さらに第1の部品20又は第2の部品30を押圧し、第1の電極20及び第2の電極30とを電気的に接続する本圧着工程とを備える。
第1の接続部を有する第1の部品と第2の接続部を有する第2の部品との間に、個々に独立したフィラーがバインダー樹脂層に配列されたフィラー配列層を有するフィラー含有フィルムを配置する配置工程と、
上記第1の部品又は上記第2の部品を押圧し、上記第1の接続部及び上記第2の接続部との間に上記フィラー配列層を挟持する仮固定工程と、
上記仮固定工程から、さらに上記第1の部品又は上記第2の部品を押圧し、上記第1の接続部及び上記第2の接続部とで上記フィラーを挟持する本圧着工程とを備える接続体の製造方法。
第1の接続部を有する第1の部品と第2の接続部を有する第2の部品との間に、個々に独立したフィラーがバインダー樹脂層に配列されたフィラー配列層を有するフィラー含有フィルムを配置する配置工程と、
上記第1の部品又は上記第2の部品を押圧し、上記第1の接続部及び上記第2の接続部との間に上記フィラー配列層を挟持する仮固定工程と、
上記仮固定工程から、さらに上記第1の部品又は上記第2の部品を押圧し、上記第1の接続部及び上記第2の接続部とで上記フィラーを挟持する本圧着工程とを備える部品の接続方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術が適用された接続体の製造方法、接続方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
本発明が適用された接続体は、第1の電極を有する第1の部品と第2の電極を有する第2の部品とが、個々に独立したフィラーがバインダー樹脂層に配列されたフィラー配列層を有するフィラー含有フィルムを介して接続されている。
【0016】
図1は、本発明が適用されたフィラー含有フィルム1のフィラー配列構成を示す平面図である。フィラー含有フィルム1は、樹脂層にフィラー2が配列されたフィラー配列層3を有し、フィラー2として導電粒子を用いた異方性導電フィルムや、異方性接続を目的としない導電フィルムとして構成することができる。また、フィラーの材質によっては、導通・導電以外の用途にも使用できる。以下では、フィラー含有フィルム1の好適な適用例である異方性導電フィルムを例に説明する。
【0017】
図2に示すように、異方性導電フィルム10は、第1の部品の一例であるICチップ等の第1の電子部品20と、第2部品の一例である第1の電子部品20が実装される基板等の第2の電子部品30とを異方性接続するために使用することができる。
【0018】
異方性導電フィルム10は、バインダー樹脂層11に導電粒子12が個々に独立して配列された導電粒子配列層13を有する。また、異方性導電フィルム10は、平面視において、個々に独立した導電粒子12がバインダー樹脂層11に規則的に配列されていることが好ましい。なお、導電粒子12が意図的に接触もしくは近似することでユニットを構成している場合は、ユニットが個々に独立している状態をもって導電粒子12が個々に独立していると見なすことができる。この場合、ユニットを構成している個々の導電粒子12により粒子の個数をカウントする。
【0019】
異方性導電フィルム10の硬化型(接続に際して、硬化もしくは重合反応させる方式)としては、熱硬化型、光硬化型、光熱併用硬化型などが挙げられ、用途に応じて適宜選択することができる。以下では、熱硬化型の異方性導電フィルム10を例に挙げて説明する。また、熱硬化型としては、例えば、カチオン硬化型、アニオン硬化型、ラジカル硬化型(ラジカル重合反応を便宜的にこのように表記する)、又はこれらを併用することができる。また、熱可塑性樹脂を用いて、硬化反応(重合反応)を利用しないホットメルト型もある。この場合、接続に熱を利用するため熱硬化型と同様に使用することができる。
【0020】
上記何れの硬化型に限らず、異方性導電フィルムは、バインダー樹脂として、膜形成樹脂と、硬化性樹脂もしくは重合性樹脂(エポキシ樹脂やラジカル重合性樹脂)と、硬化反応開始剤(重合反応開始剤)とを含有する。更に、異方性導電フィルムは、必要に応じてエラストマー(ゴム)を含有させてもよい。ホットメルト型の場合は、膜形成樹脂と熱可塑性樹脂、更に必要に応じてエラストマー(ゴム)を含有させてもよい。これは公知のものを使用でき、一例として、特開2014−060025号公報に記載のものが挙げられる。
【0021】
[バインダー]
膜形成樹脂は、例えば平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000〜80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂等の種々の樹脂が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂を好適に用いることが好ましい。市場で入手可能な具体例としては、新日鉄住金化学(株)の商品名「YP−50」などを挙げることができる。
【0022】
エポキシ樹脂は、3次元網目構造を形成し、良好な耐熱性、接着性を付与するものであり、固形エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂とを併用することが好ましい。ここで、固形エポキシ樹脂とは、常温で固体であるエポキシ樹脂を意味する。また、液状エポキシ樹脂とは、常温で液状であるエポキシ樹脂を意味する。また、常温とは、JIS Z 8703で規定される5〜35℃の温度範囲を意味する。
【0023】
固形エポキシ樹脂としては、液状エポキシ樹脂と相溶し、常温で固体状であれば特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
液状エポキシ樹脂としては、常温で液状であれば特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、フィルムのタック性、柔軟性などの観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。市場で入手可能な具体例としては、三菱化学(株)の商品名「EP828」などを挙げることができる。
【0025】
アニオン重合開始剤としては、通常用いられる公知の硬化剤を使用することができる。例えば、有機酸ジヒドラジド、ジシアンジアミド、アミン化合物、ポリアミドアミン化合物、シアナートエステル化合物、フェノール樹脂、酸無水物、カルボン酸、三級アミン化合物、イミダゾール、ルイス酸、ブレンステッド酸塩、ポリメルカプタン系硬化剤、ユリア樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物などが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、イミダゾール変性体を核としその表面をポリウレタンで被覆してなるマイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。市場で入手可能な具体例としては、旭化成イーマテリアルズ(株)の商品名「ノバキュア3941」などを挙げることができる。
【0026】
また、バインダーとして、必要に応じて、シランカップリング剤、応力緩和剤、微小フィラー等を配合してもよい。シランカップリング剤としては、エポキシ系、メタクリロキシ系、アミノ系、ビニル系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系等を挙げることができる。また、応力緩和剤としては、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水添スチレン−イソプレンブロック共重合体等を挙げることができる。
【0027】
微小フィラーは、配列されている導電粒子12(フィラー2)とは別に、バインダー樹脂層11の粘度調整等、導電粒子12(フィラー2)と異なる機能を付与する目的で混在させるものであり、導電粒子12(フィラー2)と形成素材の異なる種々の微小固形物を用いることができる。例えば、フィラー2が導電粒子12である場合に、微小フィラーとして、粘度調整剤、チキソトロピック剤、重合開始剤、カップリング剤、難燃化剤等を含有することができる。このようなフィラーの一例としては、無機フィラーや有機フィラーが例示できる。無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を挙げることができる。有機フィラーとしては、ゴム粒子や樹脂粒子等を挙げることができる。
【0028】
微小フィラーの大きさは、配列されている導電粒子12(フィラー2)よりも小さいことが好ましく、粒子径で配列に影響を及ぼさないためには80%以下が好ましく、50%以下であることがより好ましく、10%以下が更により好ましい。粘度調整剤として含有させる微小フィラーは、平均粒子径を好ましくは1μm未満、より好ましくは5nm〜0.3μmとすることができる。この粒子径は、金属顕微鏡や電子顕微鏡などによる観察による計測や、公知の画像型粒度分布装置(例えば、FPIA−3000、マルバーン社)などから求めることができる。
【0029】
微小フィラーの含有量に関しては、上述の特許文献2に記載されているように絶縁性樹脂層に微小フィラーを混練りし、導電粒子を絶縁性樹脂層に押し込むことにより異方性導電フィルムを製造する場合に、導電粒子の押し込みが阻害されない限り特に制限はないが、導電粒子の配置の精密性を確保する点からは、微小フィラーを3質量%以上とすることが好ましく、5質量%以上とすることがより好ましく、異方性導電接続における押し込みを2段階で行うことが必要とされるほどに微小フィラーを高濃度でバインダー樹脂層に含有させることができる。一方、電子部品の接続のためにフィルムに必要な流動性を確保する点からは、微小フィラーの含有量はバインダー樹脂層に対して50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。
【0030】
また、異方性導電フィルム10の最低溶融粘度は、導電粒子12(フィラー)をバインダー樹脂層に押し込めれば特に制限はないが、異方性導電フィルム10を電子部品(物品)に熱圧着するときの導電粒子12の不用な流動を抑制するため、好ましくは1500Pa・s以上、より好ましくは2000Pa・s以上、さらに好ましくは3000〜15000Pa・s、特に3000〜10000Pa・sである。最低溶融粘度の適性化は、導電粒子12の圧縮変形特性にも依存するが、最低溶融粘度が高すぎると、熱圧着時に導電粒子12と電極との間のバインダーが十分に排除できないため、接続抵抗が上昇する傾向にある。特に、突起を有する導電粒子12は、熱圧着時に導電粒子と電極との間のバインダーを十分に排除するのが困難となる。一方、最低溶融粘度が低すぎると、熱圧着時の加重による異方性導電フィルム10の変形が大きくなるため、加圧解放時に異方性導電フィルム10の復元力が接続部界面等に剥離方向の力として加わる。このため、熱圧着直後に接続抵抗が上昇したり、接続部に気泡が発生したりすることがある。
【0031】
この最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA instrument社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用し求めることができ、より具体的には、温度範囲30〜200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。なお、最低溶融粘度の調整は、溶融粘度調整剤として含有させる微小固形物の種類や配合量、樹脂組成物の調整条件の変更などにより行うことができる。
【0032】
[導電粒子]
導電粒子12としては、従来、異方性導電フィルムに用いられている公知の導電粒子を用いることができ、例えば、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、パラジウムなどの金属粒子やハンダ粒子、金属被覆樹脂粒子、導電粒子の表面に絶縁性微粒子を付着させたもの、導電粒子の表面を絶縁処理したもの等を用いることができ、あるいはこれらを併用してもよい。金属被覆樹脂粒子は、公知の手法で、導通特性に支障を来さない絶縁処理が施されていてもよい。
【0033】
導電粒子12の平均粒子径は、電子部品のバンプ高さのばらつきへの対応、導通抵抗の上昇の抑制、隣接するバンプ間ショー卜の発生の抑制等の観点から適宜決めることができ、例えば、下限は小さすぎるとバンプや電極による挟持の均一性が困難になることから1μm以上、好ましくは2.5μm以上である。上限は特に限定されないが、大きすぎると粒子径のバラツキが大きくなることから好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、更により好ましくは20μm以下である。なお、導電粒子の表面に絶縁性微粒子を付着させたものにおける平均粒子径は、表面に付着させた絶縁性微粒子を含めない粒子径をいう。また、フィラー含有フィルム1におけるフィラー2も同様であり、フィラー表面を被覆している微粒子が存在する場合、その微粒子の大きさは含めない粒子径をいう。
【0034】
なかでも、近年の電子部品のバンプ面積の極小化の進行に伴い、バンプ上における粒子捕捉性を維持、向上させる観点から、平均粒子径は、バンプの導電粒子12を挟持する面の最小長(円形の場合は直径)の90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましく、安定性の観点から50%以下であることが更により好ましい。例えば、導電粒子12を挟持する面が矩形状で端子幅3.6μmのバンプに対しては、導電粒子12は、平均粒子径が3.2μm(端子幅の88%)以下とすることが好ましく、平均粒子径が3.0μm(端子幅の83%)以下とすることがさらに好ましい。
【0035】
異方性導電フィルム10は、導電粒子12の粒子間距離を、異方性導電フィルム10で接続する端子の大きさ、形状、端子ピッチに応じて適宜定めることができる。例えば、異方性導電フィルム10をファインピッチのCOG(Chip On Glass)に対応させる場合、ショー卜の発生を防止する点から最近接粒子間距離を導電粒子径Dの0.5倍以上にすることが好ましく、0.7倍より大きくすることがより好ましい。一方、最近接粒子間距離の上限は異方性導電フィルム10の目的によって決めることができ、例えば、異方性導電フィルム10の製造上の難易度の点からは、最近接粒子間距離を導電粒子径Dの好ましくは100倍以下、より好ましくは50倍以下とすることができる。また、異方性導電接続時の端子における導電粒子12の捕捉性の点からは、最近接粒子間距離を導電粒子径Dの4倍以下とすることが好ましく、3倍以下とすることがより好ましい。なお、フィラー含有フィルム1は、異方性導電フィルム10以外の用途においても、フィラー間の距離を接続する物品に応じて適宜定めることができる。
【0036】
また、フィラー含有フィルム1を異方性導電フィルム10とする場合に、導電粒子12の個数密度は30個/mm
2以上であればよく、150個/mm
2以上70000個/mm
2以下が好ましい。特にファインピッチ用途の場合には好ましくは6000個/mm
2以上42000個/mm
2以下、より好ましくは10000個/mm
2以上40000個/mm
2以下、更により好ましくは15000個/mm
2以上35000個/mm
2以下である。また、導電粒子の粒子径が10μm以上の場合、導電粒子の個数密度は30個/mm
2以上6000個/mm
2以下が好ましい。フィラー含有フィルムの用途が異方性導電フィルム以外であっても、個数密度は概ね同様の範囲を取ることができ、下限は10個/mm
2以上、好ましくは30個/mm
2以上とすることができ、上限は100000個/mm
2以下とすることができ、好ましくは70000個/mm
2以下とすることができる。
【0037】
また、本発明の異方性導電フィルム10(フィラー含有フィルム1)では、次式で算出される導電粒子12(フィラー2)の面積占有率を、導電粒子12の含有効果を発現させる点から0.3%以上とすることが好ましい。一方、異方性導電フィルム10を物品に圧着するために押圧治具に必要とされる推力を抑制する点から導電粒子12の面積占有率を35%以下とすることが好ましく、30%以下とすることがより好ましい。
面積占有率(%)=[平面視における導電粒子12(フィラー2)の個数密度]×[導電粒子12(フィラー2)1個の平面視面積の平均]×100
【0038】
ここで、導電粒子12の個数密度の測定領域としては、1辺が100μm以上の矩形領域を任意に複数箇所(好ましくは5箇所以上、より好ましくは10箇所以上)設定し、測定領域の合計面積を2mm
2以上とすることが好ましい。個々の領域の大きさや数は、個数密度の状態によって適宜調整すればよい。例えば、ファインピッチ用途の異方性導電フィルムの比較的個数密度が大きい場合の一例として、異方性導電フィルム10から任意に選択した面積100μm×100μmの領域の200箇所(2mm
2)について、金属顕微鏡などによる観測画像を用いて個数密度を測定し、それを平均することにより上述の式中の「平面視における導電粒子12の個数密度」を得ることができる。面積100μm×100μmの領域は、バンプ間スペース50μm以下の接続対象物において、1個以上のバンプが存在する領域になる。尚、本発明は最小補足数が少なくともよく(導電粒子12の捕捉数が最小1個と予想している)、導電粒子12の平面視個数密度や面積占有率は、必ずしも高くある必要はない。この場合、異方性導電フィルム10そのものを移動するなどして、導電粒子12の存在する位置を、適宜調整するなどすればよい。
【0039】
導電粒子12の個数密度や粒子間距離等は、上述のように金属顕微鏡を用いて観察して求める他、画像解析ソフト(例えば、WinROOF、三谷商事株式会社や、A像くん(登録商標)(旭化成エンジニアリング株式会社)等)により観察画像を計測して求めてもよい。観察方法や計測手法は、上記に限定されるものではない。
【0040】
また、1個の導電粒子12の平面視面積の平均は、フィルム面の金属顕微鏡やSEMなどの電子顕微鏡などによる観測画像の計測により求められる。画像解析ソフトを用いてもよい。観察方法や計測手法は、上記に限定されるものではない。
【0041】
面積占有率は、異方性導電フィルム10(フィラー含有フィルム1)を電子部品(物品)に圧着するために押圧治具に必要とされる推力の指標となり、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、下限は0.3%以上である。これは以下の理由による。即ち、従来、異方性導電フィルムではファインピッチに対応させるために、ショー卜を発生させない限りで導電粒子の粒子間距離を狭め、個数密度が高められてきた。しかしながら、そのように個数密度を高めると、電子部品の端子個数が増え、電子部品1個当りの接続総面積が大きくなるのに伴い、異方性導電フィルムを電子部品に圧着するために押圧治具に必要とされる推力が大きくなり、従前の押圧治具では押圧が不十分になるという問題が起こることが懸念される。このような押圧治具に必要とされる推力の問題は、異方性導電フィルムに限らずフィラー含有フィルム全般に共通し、また、押圧対象物であるフィラーや、フィラーの挟持のされ方にも関係する。これに対し、面積占有率を上述のように好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下とすることによりフィラー含有フィルムを物品に圧着するために押圧治具に必要とされる推力を低く抑えることが可能となる。
【0042】
[粒子規則配列]
導電粒子12は、フィルムの平面視にて所定配列を繰り返す規則的な配置をしていることが好ましい。導電粒子12の配列は、例えば、フィルムの平面視にて
図1に示したように正方格子配列とすることができる。この他、導電粒子12の規則的な配列の態様としては、長方格子、斜方格子、6方格子、3角格子等の格子配列をあげることができる。導電粒子12の配列は、異なる形状の格子が、複数組み合わさったものでもよい。導電粒子12の配列の態様としては、導電粒子12が所定間隔で直線状に並んだ粒子列を所定の間隔で並列させてもよい。導電粒子12が所定間隔で直線状に並んだ粒子列を所定の間隔で並列させてもよい。導電粒子12が密に配置されている領域と疎に配置されている領域が規則的に繰り返されていても良い。導電粒子12は個々に独立して離間していることが端子における捕捉安定性とショート抑制の両立のために好ましい。また、導電粒子が複数個連結もしくは近接してユニットとなり、このユニットが規則配列している態様も本発明は含む。導電粒子12が規則的な配列をしているか否かは、例えばフィルムの長手方向(巻装体にした場合の巻取り方向)に導電粒子12の所定の配置が繰り返されているか否かを観察することで判別することができる。
【0043】
導電粒子12を規則的に配列させる場合に、その配列の格子軸又は配列軸は、異方性導電フィルム10の長手方向及び長手方向と直行する方向の少なくとも一方に対して平行でもよく、交叉していてもよく、異方性導電フィルム10を圧着する電子部品(物品)に応じて定めることができる。
【0044】
なお、ユニットとなっていても、粒子捕捉数は、捕捉されている粒子個数を計測して求める。また、捕捉は、平面視において、導電粒子(フィラー)1個の面積の半分以上が端子部(接続部)に重畳している、もしくは扁平化しているなど捕捉されているとみなされるものは、捕捉数1個とカウントしてもよい。また、端子部(接続部)と重畳している面積の割合が60%であったと仮定して0.6個捕捉している、とカウントしてもよい。これは目的によって選択できる。異方性導電フィルム10の場合は、端子部の通電が目的であるため、通電している粒子数を捕捉数とカウントする方が適切であると考えられるので、前者でカウントする。
【0045】
また、導電粒子12の抜けがフィルムの所定の方向に規則的に存在する態様であってもよい。導電粒子12の抜けをフィルムの長手方向に繰り返し存在させること、あるいは導電粒子12の抜けている箇所をフィルムの長手方向に漸次増加または減少させることにより、ロット管理が可能となり、異方性導電フィルム10及びそれを用いた接続体40にトレーサビリティ(追跡を可能とする性質)を付与することも可能となる。これは、異方性導電フィルム10やそれを用いた接続構造体の偽造防止、真贋判定、不正利用防止等にも有効となる。これは異方性導電フィルム以外の用途であっても同様のことが言える。
【0046】
導電粒子12を格子状等の規則的な配列にすることにより、異方性導電フィルム10を圧着するときに各導電粒子12に圧力を均等に加え、接続状態のばらつきを低減させることができる。
【0047】
したがって、異方性導電フィルム10は、平面視にて導電粒子12を規則配列することにより、電子部品を接続した場合に導通抵抗のばらつきを低減させることができ、また、捕捉安定性の向上及び端子間ショー卜の抑制を図ることができる。
【0048】
異方性導電フィルム10は、規則的に配列された導電粒子12の配列の格子軸又は配列軸は、フィルムの長手方向や長手方向と直行する方向に対して平行でもよく、フィルムの長手方向と交叉してもよく、接続対象となる電子部品の端子幅、端子ピッチなどに応じて定めることができる。
【0049】
[絶縁性樹脂層]
図3に示すように、異方性導電フィルム10は、導電粒子12を規則配列させた導電粒子配列層13上に絶縁性接着剤層14が積層されていてもよい。絶縁性接着剤層14の積層により、異方性導電フィルムを用いて電子部品を異方性導電接続するときに、電子部品の電極やバンプによって形成される空間を充填し、接着性を向上させることができる。
【0050】
絶縁性接着剤層14としては、異方性導電フィルムにおいて絶縁性樹脂バインダーとして従来用いられている公知の材料を使用することができる。また、絶縁性接着剤層14は、上述した導電粒子配列層13のバインダー樹脂層11と同様の樹脂を用いて粘度をより低く調整したものとしてもよい。
【0051】
導電粒子配列層13と絶縁性接着剤層14とが積層された異方性導電フィルム10は、絶縁性接着剤層14がICチップ等の圧着ツールにより加熱押圧される第1の電子部品側とされ、導電粒子配列層13が基板等の第2の電子部品側とされるように貼着されることが好ましい。これにより、圧着ツールによる加熱押圧時において、バンプ21の押し込みによる導電粒子12の流動及び粒子配列への影響を抑制し、電子部品の端子上における粒子捕捉性を向上させることができる。
【0052】
[フィルム厚]
なお、本発明のフィラー含有フィルム1において、バインダー樹脂を含有する層の厚さは、フィラー含有フィルム1を物品に熱圧着するときのフィラー2の不用な流動を抑制する点、ならびにフィラー含有フィルム1を巻装体とした場合の樹脂層のはみ出しやブロッキングの抑制及び単位重量あたりのフィルム長を長くする点、フィラー含有フィルム1の取り扱い性、フィラー含有フィルム1を物品に熱圧着する際に必要な粘着性や接着力の観点から適宜設定することができる。
【0053】
フィラー含有フィルム1は単層であってもよく、2層構成の異方性導電フィルム10のように低粘度のバインダー樹脂層がフィラー2を含有した高粘度のバインダー樹脂層に積層されていてもよい。
【0054】
何れの場合であっても、フィラー含有フィルム1(フィラーが含有された層)の厚みはフィラー2の粒子径に対して、フィラー2の押し込みを安定して行う上で、好ましくは0.3倍以上、より好ましくは0.6倍以上、さらに好ましくは0.8倍以上、特に好ましくは1倍以上である。また、バインダー樹脂層の層厚の上限については特に制限はなく、バインダー樹脂層の層厚はフィラー含有フィルム1を熱圧着する物品に応じて適宜調整すればよいが、バインダー樹脂層の層厚が厚くなりすぎるとフィラー含有フィルム1を物品に熱圧着するときにフィラー2が樹脂流動の影響を不用に受け易くなり、また、バインダー樹脂層に含まれている微小固形物の絶対量が多くなることにより物品の熱圧着が阻害される虞がある。そのため、バインダー樹脂層の層厚は、フィラー2の粒子径の好ましくは20倍以下、より好ましくは15倍以下である。
【0055】
一方、フィラー含有フィルム1を、フィラー2が配列されたバインダー樹脂層とフィラー2が含有されていない低粘度樹脂層(絶縁性接着剤層)との積層体とする場合、低粘度樹脂層の層厚は、フィラー含有フィルム1の用途に応じて適宜調整すればよいが、薄くなりすぎると層厚のバラツキが相対的に大きくなることから、フィラー2の粒子径の好ましくは0.2倍以上、より好ましくは1倍以上である。また、低粘度樹脂層の層厚の上限については、厚くなりすぎるとフィラー2が配列されたバインダー樹脂層との積層の困難性が増すことから、好ましくは50倍以下、より好ましくは15倍以下、さらにより好ましくは8倍以下である。
【0056】
また、フィラー含有フィルム1を、フィラー2が埋め込まれたバインダー樹脂層とフィラー2が含有されていない低粘度樹脂層(絶縁性接着剤層)との積層体とする場合に、これら樹脂層の総厚は、フィラー含有フィルム1を物品に熱圧着するときのフィラー2の不用な流動の抑制の点、フィラー含有フィルム1を巻装体とした場合の樹脂のはみ出しやブロッキングの抑制の点、フィラー含有フィルム1の単位重量あたりのフィルム長を長くする点等から、フィラー含有フィルム1における樹脂層の総厚は薄い方が好ましい。しかし、薄くなりすぎるとフィラー含有フィルム1の取り扱い性が劣る。また、フィラー含有フィルム1を物品に貼着し難くなる場合があり、したがってフィラー含有フィルム1を物品に熱圧着する際の仮圧着において必要な粘着力を得られない虞があり、本圧着においても樹脂量の不足により必要な接着力を得られない虞がある。そのため、フィラー含有フィルム1における樹脂層の総厚は、フィラー2の粒子径に対して好ましくは0.6倍以上、より好ましくは0.8倍以上、さらに好ましくは1倍以上、特に好ましくは1.2倍以上である。
【0057】
一方、フィラー含有フィルム1を、フィラーが埋め込まれたバインダー樹脂層とフィラー2が含有されていない低粘度樹脂層(絶縁性接着剤層)との積層体とする場合の、これら樹脂層の総厚の上限については特に制限はなく、フィラー含有フィルム1を熱圧着する物品に応じて適宜調整すればよいが、樹脂層の総厚が厚くなりすぎるとフィラー含有フィルム1を物品に熱圧着するときにフィラー2が樹脂流動の影響を不用に受け易くなり、また、樹脂層に含まれている微小固形物の絶対量が多くなることにより物品の熱圧着が阻害される虞があることから、樹脂層の総厚は、フィラー2の粒子径の好ましくは50倍以下、より好ましくは15倍以下、さらにより好ましくは8倍以下であり、さらに4倍以下、好ましくは3倍以下にすることで、樹脂流動がフィラー2の配置へ与える影響を最小限にできると考えられる。
【0058】
フィラー含有フィルム1を異方性導電フィルム10として構成し、樹脂層としてバインダー樹脂層11と低粘度樹脂層(絶縁性接着剤層14)を設ける場合にも、樹脂層の総厚は上述の範囲とすることができる。導電粒子12はバインダー樹脂層11に埋め込まれていてもよく、露出していてもよい。特に、接続する電子部品においてバンプを低背化させる点からは、樹脂層の層厚を上述よりも薄くすることが好ましい。バインダー樹脂層11と低粘度樹脂層(絶縁性接着剤層14)の総厚の下限については、導電粒子径の好ましくは0.6倍以上、より好ましくは0.8倍以上、さらにより好ましくは1倍以上である。薄くなることで、導電粒子12と通電箇所の接触が容易になる。総厚の上限については高すぎると押し込みの推力が高くなりすぎるため4倍以下とすることができ、好ましくは3倍以下、より好ましくは2倍以下、さらにより好ましくは1.8倍以下、特により好ましくは1.5倍以下とすることができる。バインダー樹脂層11と低粘度樹脂層(絶縁性接着剤層14)の厚みの比率については、導電粒子径とバンプ高さや求められる接着力などの関係から適宜調整すればよい。
【0059】
なお、フィラー含有フィルム1は、異方性導電フィルム10や導電フィルム以外の用途においては、フィラー2として、フィラー含有フィルム1の用途に応じて、公知の無機系フィラー(金属粒子、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子など)、有機系フィラー(樹脂粒子、ゴム粒子など)、有機系材料と無機系材料が混在したフィラー(導電粒子における、例えば、コアが樹脂材料で形成され、表面が金属メッキされている粒子(金属被覆樹脂粒子)、導電粒子の表面に絶縁性微粒子を付着させたもの、導電粒子の表面を絶縁処理したもの等に相当するもの)から、硬さ、光学的性能などの用途に求められる性能に応じて適宜選択される。例えば、光学フィルムや艶消しフィルムでは、シリカフィラー、酸化チタンフィラー、スチレンフィラー、アクリルフィラー、メラミンフィラーや種々のチタン酸塩等を使用することができる。コンデンサー用フィルムでは、酸化チタン、チタン酸マグネシウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ビスマス、酸化ランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛及びこれらの混合物等を使用することができる。接着フィルムではポリマー系のゴム粒子、シリコーンゴム粒子等を含有させることができる。
【0060】
[異方性導電フィルムの製造方法]
このような異方性導電フィルム10の製造方法は、例えば、導電粒子12の配列パターンに応じた凹部が形成された型を用意し、当該型の凹部に導電粒子12を充填し、その上に、剥離フィルム上に形成したバインダー樹脂層11を貼り合わせて導電粒子12を押し込む。これによりバインダー樹脂層11に導電粒子12を所定のパターンで転着させることにより導電粒子配列層13が設けられた異方性導電フィルム10を形成することができる。異方性導電フィルム10は、必要に応じて、導電粒子配列層13に剥離フィルムに支持された絶縁性接着剤層14を貼り合わせ、2層構造を有する異方性導電フィルムとしてもよい。また、異方性導電フィルム10は、導電粒子配列層13と絶縁性接着剤層14とを組み合わせて3層以上としてもよい。
【0061】
また、導電粒子を所定の配列に配置する方法としては、転写型を用いる方法に代えて、二軸延伸フィルムを用いる方法等を使用してもよい。
【0062】
[巻装体]
異方性導電フィルムは、リールに巻かれたフィルム巻装体とすることが好ましい。フィルム巻装体として異方性導電フィルム10を供給することにより、異方性導電フィルム10の取り扱い性に優れ、また、電子部品の異方性導電接続を連続的に行うことができ、接続体のコスト削減に寄与することができる。
【0063】
フィルム巻装体の長さは、特に制限はないが、出荷物の取り扱い性の点から、5000m以下であることが好ましく、1000m以下であることがより好ましく、500m以下であることがさらに好ましい。また、下限についても特に制限はないが、接続について量産検討を行う上では、5m以上あることが好ましい。
【0064】
フィルム巻装体は、全長より短い異方性導電フィルムを繋ぎテープで連結したものでもよい。連結箇所は複数個所存在してもよく、規則的に存在してもよく、ランダムに存在してもよい。また、フィルムの幅は特に制限はないが、一例として0.3mm以上400mm以下、実用上0.5mm以上5mm以下である。0.3mm以上が現時点でのフィルムのスリット幅の限界とされている数値であり、スリット幅の実用上の実績は0.5mm以上である。また、一般的な異方性導電フィルムにおけるスリット幅より広い、例えば比較的大きな電子部品(電極配線と実装部が一面に設けられた基板や切削前のウェーハーなど)にそのまま貼り付けて使用される場合には、400mm程度のフィルム幅が必要とされることがある。
【0065】
[第1の電子部品、第2の電子部品]
本発明のフィラー含有フィルムは、従前のフィラー含有フィルムと同様に物品に貼り合わせて使用することができ、貼り合わせる物品に特に制限はない。例えば、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルム10として構成し、異方性導電フィルム10によって第1の電子部品20及び第2の電子部品30を互いに異方性接続する場合、第1、第2の電子部品20,30は、特に制限はなく、接続体に応じて適宜選択することができる。第1の電子部品20は、例えばPN接合を利用した半導体素子(太陽電池等の発電素子、CCD等の撮像素子、発光素子、ペルチェ素子)、その他各種半導体素子、ICチップ、ICモジュール、FPCなどを例示でき、また形状も特に限定されない。その他にも、第1の電子部品20としては、テープキャリアパッケージ基板等を例示できる。また、第2の電子部品30は、FPC、ガラス基板、プラスチック基板、リジッド基板、セラミック基板等を挙げることができる。なお、本発明のフィラー含有フィルム1は、異方性導電接続用途以外の電子部品にも用いることができる。
【0066】
また、本発明のフィラー含有フィルム1が使用される物品は電子部品にのみ限定されるものではない。また。フィラー含有フィルム1(異方性導電フィルム10)を貼り合せる面は、平滑でもよく、段部や凸形状を有していてもよい。フィラーの挟持状態を精密にすることが本発明の趣旨であり、本発明の用途は、異方性導電接続に必ずしも限定されるものではない。
【0067】
第1の電子部品20には突起電極となるバンプ21が形成され、第2の電子部品30には端子電極31が形成され、これらバンプ21及び端子電極31は、異方性導電フィルム10の導電粒子12を介して導通が図られる。
【0068】
[接続体]
異方性導電フィルム10は、上述した第1の電子部品20と第2の電子部品30とを熱又は光により異方性導電接続することにより製造される接続体40の製造に好適に用いられる。
【0069】
なお、本発明の異方性導電フィルムを用いてICチップやウェーハーをスタックして多層化してもよい。なお、本発明の異方性導電フィルム10で接続する電子部品は、上述の電子部品の例示に限定されるものではない。近年、多様化している種々の電子部品に使用することができる。本発明は種々の物品に特に本発明のフィラー含有フィルム1を貼り合わせたフィルム貼着体を包含し、特に、第1の電子部品20と第2の電子部品30を、異方性導電フィルム10を介して接続した接続体を包含する。
【0070】
フィラー含有フィルム1を物品に貼り合わせる方法は、フィラー含有フィルム1の用途に応じて圧着、好ましくは熱圧着とすることができ、貼り合わせ時に光照射を利用してもよい。
【0071】
[接続体の製造方法]
次いで、本発明が適用された接続体の製造方法について説明する。本発明が適用された接続体の製造方法は、第1の電極を有する第1の部品と第2の電極を有する第2の部品との間に、個々に独立したフィラーが樹脂層に配列されたフィラー配列層を有するフィラー含有フィルムを配置(貼着)する配置工程(貼着工程)と、第1の部品又は第2の部品を押圧し、第1の電極及び第2の電極との間にフィラー配列層を挟持する仮固定工程と、仮固定工程から、さらに第1の部品又は上記第2の部品を押圧し、第1の電極と上記第2の電極とを電気的に接続する本圧着工程とを備える。
【0072】
なお、一般的な第1の電子部品と第2の電子部品との異方性導電接続では、第1の電子部品が圧着ツール側、第2の電子部品が圧着ツールと対向するステージに載置される側となる。また、第2の電子部品に予め異方性導電フィルムを貼着させることが一般的であるが、第1の電子部品に予め貼着させてもよい。これは、接続の仕方によって適宜調整できる。また、第1の電子部品と第2の電子部品の個数は1対1に限定されるものではない。1つの第2の電子部品に第1の電子部品が複数個搭載されていてもよく、また1つの第1の電子部品を複数個の第2の電子部品上に搭載していてもよい。
【0073】
以下では、フィラー含有フィルムとして上述した異方性導電フィルム10を用いるとともに、第1の部品として上述した第1の電子部品20を、第2の部品として上述した第2の電子部品30を用いて接続体40を製造する方法について説明する。
【0074】
接続体40の製造方法は、バンプ21を有する第1の電子部品と端子電極31を有する第2の電子部品との間に、個々に独立した導電粒子12がバインダー樹脂層11に配列された導電粒子配列層13を有する異方性導電フィルム10を配置する配置工程と、第1の電子部品又は第2の電子部品を押圧し、バンプ21及び端子電極31との間に導電粒子配列層13を挟持する仮固定工程と、仮固定工程から、さらに第1の電子部品又は第2の電子部品を押圧し、バンプ21と端子電極31とを電気的に接続する本圧着工程とを備える。
【0075】
配置工程では、
図2に示すように、異方性導電フィルム10の導電粒子配列層13を第2の電子部品30の端子電極31が形成された面上に配置する。なお、導電粒子12をバインダー樹脂層11の一面側に偏在させて配列した場合は、当該導電粒子12が偏在するバインダー樹脂層11の一面を第2の電子部品30の端子電極31が形成された面上に配置する。また、異方性導電フィルム10として、導電粒子配列層13と絶縁性接着剤層14を有する2層型のものを使用する場合も、導電粒子配列層13を第2の電子部品30の端子電極31が形成された面上に配置する。
【0076】
次いで、仮固定工程では、
図4に示すように、加熱すると共に第1の電子部品20と第2の電子部品30との対向方向(
図4の矢印方向)に加圧することにより、第1の電子部品20のバンプ21を導電粒子配列層13に押し込んでいく。このときの加熱温度及び圧力は、異方性導電フィルム10の接着剤成分を流動させる一方で、導電粒子12をバンプ21と端子電極31との間から流出させずに保持できるような加熱温度及び圧力であることが好ましく、それぞれ後続の本圧着工程における加熱温度及び圧力以下である。即ち、仮固定工程とは、少なくとも導電粒子近傍までバンプ21を押し込むことを指す。これは電子部品を搭載した後に行う、所謂「仮圧着」よりも押し込んでいる状態になる。例えば、異方性導電フィルム10の導電粒子12もしくは導電粒子配列層13にバンプが接触している状態になる。これは以下の理由による。
【0077】
仮固定工程は、バンプ21及び端子電極31との間に導電粒子配列層13を挟持していればよく、必ずしもバンプ21及び端子電極31との間に導電粒子12を挟持している必要はない。もちろん、仮固定工程において、バンプ21及び端子電極31との間に導電粒子12を挟持するまで加圧してもよい。第1の電子部品20と第2の電子部品30との接続を連続して行う場合、毎回に亘って精密に制御することは困難なため、実用上、圧着ツールが導電粒子配列層13もしくは導電粒子12と接触する程度の状態になるからである。
【0078】
本発明が適用された接続体の製造方法では、仮固定工程に続いて本圧着工程が行われる。すなわち、仮固定工程において印加された圧力が解放されることなく、さらに圧着ツールの圧力を上げていき、第1の電子部品20と第2の電子部品30との対向方向に加圧し、バンプ21と端子電極31とで導電粒子12を挟持する。また、第1の電子部品20側から圧着ツールを用いて熱圧着する。
【0079】
なお、このような仮固定工程及び本圧着工程は、例えばパルスヒータ式ボンダーによって行うことができる。また、異方性導電フィルム10を光硬化型、あるいは熱・光併用型として構成した場合は、第1、第2の電子部品20,30の接続を、光硬化あるいは熱及び光を利用して行う。
【0080】
これにより、
図5に示す例においては、第1の電子部品20と第2の電子部品30とが電気的に接続され、この状態で圧着ツールによって加熱されたバインダー樹脂層11が硬化することにより、第1の電子部品20が第2の電子部品30上に実装された接続体40が形成される。接続体40は、バンプ21と端子電極31との間にない導電性粒子12が電気的に絶縁した状態を維持するように存在している。これにより、バンプ21と端子電極31との間のみで電気的導通が図られる。
【0081】
なお、配線基板等の第2の電子部品30の接続領域のサイズ等により異方性導電フィルム10を第2の電子部品30に仮貼りすることが難しい場合には、異方性導電フィルム10を、ICチップやFPC等の第1の電子部品20のバンプ形成面に仮貼りし、その後、第1の電子部品20と第2の電子部品30を接続してもよい。
【0082】
ここで、近年の各種電子機器の小型化に伴い、第1、第2の電子部品20のバンプサイズ及び端子電極サイズも極小化され、例えばバンプ面積が数十μm
2〜数千μm
2まで極小化された電子部品も提案されている。また、バンプ面積の極小化に伴い、電子部品自体の小型化も進行することになる。一方、電子部品の実装時には比較的大型化も進行することもある。これは、複数の電子部品に分割可能な比較的外形サイズの大きな電子部品として実装を一括に行うことができる。また、ウェーハーのように比較的大きい実装体として接続し、その後に小片化することもできる。即ち、本発明の接続に用いる部品としては、比較的小型のものにも適用できるが、比較的大型のものであっても適用可能である。例えば大型TVなどに用いる場合は、異方性導電フィルム10(フィラー含有フィルム1)を1辺に1m以上、例えば4.5m以上貼着することもある。この場合、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして使用する以外に、フィラーをスペーサーとしたスペーサーフィルム等として使用してもよい。
【0083】
何れにしても、このような極小化されたバンプ面積においても導電粒子12を確実に捕捉し、導通性を確保することが必要となる。この点、本発明が適用された異方性導電フィルム10を用いた接続体40の製造方法においては、平面視にて個々に独立した導電粒子12が配列され、好ましくは規則的に配列されているため、バンプ面積が極小化された場合にも確実に導電粒子がバンプ上に位置される。
【0084】
加えて、本発明が適用された接続体40の製造方法においては、導電粒子配列層13をバンプ21と端子電極31との間に挟持する仮固定工程と、この仮固定工程からさらに第1の電子部品20と第2の電子部品30とで導電粒子配列層13を挟持して導電粒子12を介してバンプ21と端子電極31とを電気的に接続した状態で硬化させる本圧着工程を有する。
【0085】
仮固定工程では、加熱によりバインダー樹脂層11のバインダー樹脂が流動し、第1の電子部品20と第2の電子部品30との間に広がる。仮固定工程における加熱温度及び加圧圧力は本圧着工程の加熱温度及び加圧圧力よりも低く、バインダー樹脂の流動も相対的に大きくはない。したがって、導電粒子12の流動を抑えつつ、バンプ21及び端子電極31の間からバインダー樹脂を排除することができる。
【0086】
異方性導電フィルム10として導電粒子配列層13と絶縁性接着剤層14とが積層された2層型のものを使用した場合は、仮固定工程において絶縁性接着剤層14のバインダー樹脂が流動し、導電粒子配列層13のバインダー樹脂の流動は絶縁性接着剤層14に比して小さい。したがって、導電粒子12の流動を抑えつつ、バンプ21及び端子電極31の間からバインダー樹脂を排除することができる。
【0087】
その後、仮固定工程における加圧圧力を解放することなく、引き続き本圧着工程を行うことにより、導電粒子12の流動を最小限に抑えながらバンプ21及び端子電極31によって挟持することができる。これにより、導電粒子12は、初期の配置に近い配置パターンを維持した状態でバンプ21に捕捉される。したがって、本発明が適用された接続体の製造方法によれば、バンプ面積が極小化された場合においても、バンプ21及び端子電極31間の導通性を確保することができる。
【0088】
なお、上述したように仮固定工程においては、バンプ21及び端子電極31によって導電粒子配列層13を挟持していればよいが、バンプ21が導電粒子12に当接することを妨げるものではない。仮固定工程においてバンプ21が導電粒子12に当接することにより、本圧着工程において導電粒子12の流動をより確実に抑えることができる。
【0089】
なお、第1の電子部品20は、バンプ面積の極小化や大型の部品に一括実装することを鑑みると、電子部品の搭載に必要なアライメントの精度は従来よりも高い水準が求められることが予想され、且つ、異方性導電フィルム10上に搭載した際や圧着ツールに押圧される際に加わる外力による僅かな位置ズレも接続体の製品品質や再現度、歩留まりに影響を及ぼす恐れが高い。そこで、異方性導電フィルム10(フィラー含有フィルム1)を熱圧着する物品に対して、熱圧着前の仮圧着を可能とする粘着力を有していることが好ましい。異方性導電フィルム10の粘着力は、JIS Z 0237に準じて測定することができ、また、JIS Z 3284−3又はASTM D 2979―01に準じてプローブ法によりタック力として測定することもできる。異方性導電フィルム10が樹脂層として絶縁性樹脂層と低粘度樹脂層を有する場合も、絶縁性樹脂層のみを有する場合も、異方性導電フィルム10の表裏各面のプローブ法によるタック力は、例えば、プローブの押し付け速度を30mm/min、加圧力を196.25gf、加圧時間を1.0sec、引き剥がし速度を120mm/min、測定温度23℃±5℃で計測したときに、表裏の面の少なくとも一方を1.0kPa(0.1N/cm
2)以上とすることができ、1.5kPa(0.15N/cm
2)以上とすることが好ましく、3kPa(0.3N/cm
2)より高いことがより好ましい。測定は、異方性導電フィルム10の一方の面を素ガラス(例えば厚さ0.3mm)に貼り付けることで他方の面のタック力を測定することができる。なお、測定は、異方性導電フィルム10を、素ガラスではなく、柔軟性のある熱可塑性樹脂フィルム(20μm以下の離形処理していないPETフィルム、シリコンラバーなど)に貼り付けて測定してもよい。異方性導電フィルム10の貼り付ける面を反転させることで、異方性導電フィルム10の表裏の面のタック力を同一条件で測定することができる。
【0090】
特に、異方性導電フィルム10が表裏両面に剥離基材を有するときには、先に電子部品に貼り付けた面と反対側の面が上述のタック力を示すように異方性導電フィルム10の表裏を使用することが好ましく、巻装体にした異方性導電フィルム10のように、異方性導電フィルム10がその片面に剥離基材を有するときには、剥離基材側の面が上述のタック力を示すことが好ましい。また、異方性導電フィルム10が絶縁性樹脂層と低粘度樹脂層を有するときには、低粘度樹脂層の表面が上述のタック力を有することが好ましい。一方、異方性導電フィルム10が表裏両面に剥離基材を有するときの先に電子部品に貼り付けた面や、異方性導電フィルム10がその片面に剥離基材を有するときの剥離基材の無い側の面や、異方性導電フィルム10が絶縁性樹脂層と低粘度樹脂層を有するときの絶縁性樹脂層側の面は、必ずしも上述のタック力を有さなくともよいが、有することが望ましい。このように異方性導電フィルム10の表裏の面で好ましいタック力が異なるのは次の理由による。即ち、一般に、異方性導電フィルムは、その使用時に剥離基材と反対側の面を基板等の第2の電子部品に貼り付け、次いで剥離基材を剥離し、剥離基材を剥離した面(即ち、剥離基材側の面)にICチップ等の第1の電子部品を搭載し、ステージ上に載置された第2の電子部品に対して第1の電子部品を熱圧着ツールにより加熱押圧することが行われる。この第1の電子部品の搭載時に搭載部品を精確に固定できる粘着性能を確保する必要があるためである。
【0091】
なお、搭載部品が小さいとき、搭載時には軽微なずれも許容できないが、搭載に必要な粘着力はより大きな搭載部品に対して相対的に低下しても許容できると推察される。そのため、必要な粘着力は搭載部品に応じて定めても良い。
【0092】
異方性導電フィルム10(フィラー含有フィルム1)の粘着力は、特開2017−48358号公報に記載の接着強度試験に準じて求めることもできる。この接着強度試験において、例えば、2枚のガラス板で異方性導電フィルム10を挟み、一方のガラス板を固定し、他方のガラス板を引き剥がし速度10mm/min、試験温度50℃で引き剥がしていく場合に、固定するガラス板と異方性導電フィルム10との接着状態を強めておくことで、引き剥がしていくガラス板と、そのガラス板と貼り合わさっている異方性導電フィルム10の面との粘着力を測定することが可能となる。こうして測定される接着強度(粘着力)を、好ましくは1N/cm
2(10kPa)以上、より好ましくは10N/cm
2(100kPa)以上とすることができる。これは、異方性導電フィルム10の引き剥がされる方向に存在する面と、引き剥がす物品間の粘着力になる。
【0093】
この他、異方性導電フィルム10の粘着力は、試験片の一端を揃えて接着し(貼り合せ)、他端を引き上げることにより試験片を剥離させる試験により求めることもできる。この試験方法により計測される粘着力が、上記の接着強度試験と同等(1N/cm
2(10kPa)以上)の結果となってもよい。上述の接着強度試験による粘着力が十分に大きければ(例えば10N/cm
2(100kPa)以上)、この試験方法での粘着力は上述の接着強度試験による粘着力の10%以上であればよい。
【0094】
異方性導電フィルム10が上述の粘着力を有することにより、熱圧着する物品が、例えば、一般的なICチップより小さい最大寸法0.8mm未満の電子部品であっても仮圧着における位置ずれの問題をなくし、大型TVと同程度の最大寸法450cmくらいの電子部品であっても貼着を安定させることができる。
【0095】
このような粘着性は、バインダー樹脂層や低粘度樹脂層を構成する樹脂組成を適宜調整する等により、付与することができる。
【実施例】
【0096】
次いで、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。ここでは、本発明の2段階接続の効果を検証するため異方性導電接続用の部材を用いている。本実施例では、導電粒子12が平面視において規則的に配列された異方性導電フィルム及び導電粒子12がバインダー樹脂層に分散された異方性導電フィルムを形成し、これらを用いて評価用ICチップと評価用ガラス基板を接続した。このとき、仮固定工程及び本圧着工程を経て評価用ICチップと評価用ガラス基板を接続させた接続体と、本圧着工程のみで評価用ICチップと評価用ガラス基板を接続させた接続体を作成し、各評価用ICチップのバンプにおける導電粒子の捕捉数を求めた。バンプに捕捉された導電粒子の数は、ガラス基板の裏面に現れるバンプに押し潰された導電粒子の数をカウントすることにより求めた。これにより、接続前の導電粒子の個数密度とバンプ面積から粒子(フィラー)捕捉効率を求めて評価を行った。ここで粒子捕捉効率とは、接続前の異方性導電性フィルムの導電粒子の個数密度に対して、バンプ(端子)上に捕捉された導電粒子のバンプ面積当りの個数との割合をいい、以下の式により算出される。
粒子捕捉効率(%)=[{端子1個に捕捉されている導電粒子の個数(個)/{端子1個の有効接続面積(μm
2×10
-6)}/接続前の異方性導電フィルムの個数密度(個/mm
2)]×100(%)
【0097】
[異方性導電フィルム]
本実施例に用いた異方性導電フィルムは、表1に示す配合で導電粒子配列層13を調製した。そして、導電粒子配列層13を形成する樹脂組成物をバーコーターでフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上にバインダー樹脂層11を形成した。同様にして、絶縁性接着剤層14を、以下に示す配合で調製し、PETフィルム上に形成した。
【0098】
【表1】
【0099】
また、導電粒子12が平面視で
図1に示す6方格子配列で粒子間距離が導電粒子の粒子径(3μm)と等しくなり、導電粒子12の個数密度が28000個/mm
2となるように、金型を作製した。
【0100】
導電粒子として、金属被覆樹脂粒子(積水化学工業(株)、AUL703、平均粒子径3μm)を用意し、この導電粒子を樹脂型の凹みに充填し、その上に上述のバインダー樹脂層11を被せ、60℃、0.5MPaで押圧することで貼着させた。そして、型からバインダー樹脂層11を剥離し、バインダー樹脂層11上の導電粒子を、加圧(押圧条件:60〜70℃、0.5MPa)することでバインダー樹脂層11に押し込み、導電粒子配列層13を作製した。
【0101】
また、導電粒子配列層13に、絶縁性接着剤層14を積層することにより2層タイプの異方性導電フィルムを作製した。
【0102】
[フィルム表面の粘着性]
(1)仮貼り試験
後述する実施例1及び比較例1−4で作製した各異方性導電フィルムの導電粒子の押込側表面又はその反対側の表面を評価用ノンアルカリガラスに貼り付け、50μm厚の緩衝材(ポリテトラフルオロエチレン)を用い、異方性導電フィルム幅1.5mm、長さ50mm、圧着温度70℃、圧着圧力1MPa、圧着時間1秒で仮貼りした。そして、貼着面と反対側に設けたPETフィルムをピンセットで剥がす際に、PETフィルムと共に異方性導電フィルムがガラス基板から剥がれるか否かを観察した。これを100回行い、次の基準で評価し、評価結果を表2に示した。
【0103】
評価基準
OK:100回の全てにおいて異方性導電フィルムがガラス基板から剥がれない
NG:100回のうち1回以上異方性導電フィルムがガラス基板から剥がれた
【0104】
なお、実施例1及び比較例1−4に係る異方性導電フィルムは、平面に載置して指で感触を確認したところ、絶縁性接着剤層14側の粘着力が導電粒子配列層13側の粘着力に比して大きかった。
【0105】
(2)接着強度(粘着力1)
特開2017−48358号公報に記載の接着強度試験に準じ、
図6に示すように、2枚のスライドグラス(26mm×76mm×1mm)(松波硝子工業株式会社)50、51を互い違いに重ね、その間に実施例1及び比較例1−4で作製した各異方性導電フィルム10を挟んだ。この場合、
図3に図示したフィルム構成において、各異方性導電フィルム10は円形(直径10mm)に打ち抜いたものを使用し、導電粒子配列層13側の面を下側のスライドグラス50と重ね合わせた。そして下側のスライドグラス50を実装時の仮貼りの一般的なステージ温度である40〜50℃に加温したホットプレートに載置し、指で押さえて30秒間加熱し貼り合せ、下側のスライドグラス50と異方性導電フィルム10の下側の面とを所謂、仮貼り状態とした。その後、各異方性導電フィルム10の絶縁性樹脂層14側の面に上側のスライドグラス51を載置し貼り合せた。異方性導電フィルム10は下側のスライドグラス50に貼着されている状態で測定しているので、該異方性導電フィルム10の絶縁性樹脂層14側の面と上側のスライドグラス51間の粘着力を測定することになる。
【0106】
島津製作所製AGS−Xシリーズを用いて、下側のスライドグラス50を治具で固定し、温度50℃で、
図7に示すように上側のスライドグラス51の両端部を治具で鉛直方向に10mm/minで引き上げ、下側のスライドグラス50と上側のスライドグラス51とが分離したときの力を測定し、その値を異方性導電フィルム10の面積で除し、絶縁性接着層14側の面の接着強度(粘着力1)とした。また、実施例1及び比較例1−4において、接着強度(粘着力1)を2回ずつ求め、その最低値を表2に示した。
【0107】
(3)プローブ法によるタック力(接着力2)
タック試験機(TACII、株式会社レスカ)を用いて次のようにタック力を22℃の雰囲気下で測定した。まず、実施例1及び比較例1−4で作製した各異方性導電フィルム10(1cm×1cm)を素ガラス(厚さ0.3mm)と貼り合わせた。この場合、
図3に図示したフィルム構成において、下側の面を素ガラスと貼り合わせ、上側の面をタック力の測定面とし、素ガラスを試料台のシリコンラバーの受け台上においた。次にタック試験機の円柱状の直径5mmのプローブ(ステンレス製鏡面仕上げ)を測定面の上方にセットし、押し付け速度30mm/minでプローブを測定面に接触させ、加圧力196.25gf、加圧時間1.0secで加圧し、引き剥がし速度120mm/minで測定面から2mm引き剥がしたときにプローブが測定面の粘着力によって受ける抵抗を荷重値として測定し、プローブを測定面から引き剥がすときの最大荷重をタック力とした。各実施例及び比較例においてタック力を2回ずつ測定し、その最低値を表2に示した。
【0108】
【表2】
【0109】
[評価用ICチップ/評価用ガラス基板]
本実施例に使用した評価用ICチップの構成は以下の通りである。ペリフェラル型ICチップ、外形;6×6mm、バンプ仕様;φ36μm(円形バンプ)、バンプピッチ:300μm。バンプ高さ;20μm。バンプ及び端子間に導電粒子が挟持され得る接続面積は約1000μm
2であった。
【0110】
本実施例に使用した評価用ガラス基板として、素ガラス、外形15×15mm、厚み150μm、を用いた。
【0111】
評価用ICチップとガラス基板を接続する際には、異方性導電フィルムの長手方向とバンプの配列方向を合わせた。接続に使用したボンダーは、パナソニック社製フリップチップボンダー(FCB3、パルヒーター付、仮圧着・本圧着いずれにおいても昇温0.5秒、昇圧0.5秒)を用いた。
【0112】
[実施例1]
実施例1では、上述した配合で調製した導電粒子配列層(厚さ:4μm)及び絶縁性接着剤層(厚さ:14μm)からなる2層型の異方性導電フィルムを用いた。また、実施例1に係る導電粒子配列層の最低溶融粘度(回転式レオメータ(TA instrument社製)、測定圧力5g、温度範囲30〜200℃、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、測定プレート直径8mm、測定プレートに対する荷重変動5g)は、絶縁性接着剤層の最低溶融粘度の3倍以上であった。また実施例1では、導電粒子として、金属被覆樹脂粒子(積水化学工業(株)、AUL703、平均粒子径:3μm、粒子面積S1:7.065μm
2)をバインダー樹脂層に6方格子配列で規則配列した整列型の異方性導電フィルムを用いた。粒子個数密度は28000個/mm
2とした。
【0113】
実施例1では、仮固定工程及び、仮固定工程に引き続き行う本圧着工程を経て接続体を製造した。仮固定工程の押圧条件は、80℃、77MPa、3secである。本圧着工程は仮固定工程における押圧力を解放することなく、180℃、144MPa、10secの条件で行った。
【0114】
粒子捕捉効率は、バンプ及び素ガラスに挟持されている(潰れている)導電粒子の個数を計測し、以下の式で求めた。粒子の観察は素ガラス側から金属顕微鏡を用いて観察し、計測した。
粒子捕捉効率(%)=[{端子1個に捕捉されている導電粒子の個数(個)/{端子1個の有効接続面積(μm
2×10
-6)}/接続前の異方性導電フィルムの個数密度(個/mm
2)]×100(%)
【0115】
実施例1に係る接続体において、粒子捕捉効率は52.1%であった。
【0116】
[比較例1]
比較例1では、上述した配合で調製した導電粒子含有層(厚さ:6μm)及び絶縁性接着剤層(厚さ:12μm)からなる2層型の異方性導電フィルムを用いた。また比較例1では、導電粒子として、金属被覆樹脂粒子(積水化学工業(株)、AUL703、平均粒子径:3μm、粒子面積S1:7.065μm
2)をバインダー樹脂層に分散させた分散型の異方性導電フィルムを用いた。粒子個数密度は60000個/mm
2とした。
【0117】
比較例1では、仮固定工程及び、仮固定工程に引き続き行う本圧着工程を経て接続体を製造した。仮固定工程及び本圧着工程の押圧条件は、実施例1と同じである。
【0118】
比較例1に係る接続体において、粒子捕捉効率は21.7%であった。
【0119】
[比較例2]
比較例2では、実施例1と同じ整列型の異方性導電フィルムを用いた。
【0120】
比較例2では、仮固定工程を行わず、本圧着工程のみを経て接続体を製造した。本圧着工程の押圧条件は、実施例1と同じである。
【0121】
比較例2に係る接続体において、粒子捕捉効率は、潰れている導電粒子が観察されなかったため、接続そのものがなされていない、と判断した。
【0122】
[比較例3]
比較例3では、実施例1と同じ整列型の異方性導電フィルムを用いた。
【0123】
比較例3では、仮固定工程を行わず、本圧着工程のみを経て接続体を製造した。本圧着工程は、実施例1の本圧着工程の圧力を50倍にした以外は同様の条件で行った。
【0124】
比較例3に係る接続体において、粒子捕捉効率は45.4%であった。
【0125】
[比較例4]
比較例4では、比較例1と同じ分散型の異方性導電フィルムを用いた。
【0126】
比較例4では、仮固定工程を行わず、本圧着工程のみを経て接続体を製造した。本圧着工程の押圧条件は、実施例1と同じである。
【0127】
比較例4に係る接続体において、粒子捕捉効率は28.2%であった。
【0128】
なお、実施例1及び比較例1〜4では、平面に載置して指で感触を確認したところ、低粘度樹脂層側の粘着力が高粘度樹脂層側の粘着力に比して大きかった。
【0129】
【表3】
【0130】
表3に示すように、整列型の異方性導電フィルムを用いて、仮固定工程及び本圧着工程を経て接続した接続体が最もよく粒子を捕捉することができた。一方、分散型の異方性導電フィルムを用いた比較例1は、実施例1と同じ条件で仮固定工程及び本圧着工程を経て接続したが粒子の捕捉効率が実施例1よりも劣る結果となった。これより、整列型の異方性導電フィルムを用いることで、より粒子の捕捉性が高まることが分かる。
【0131】
仮固定工程を経ていない比較例2は、整列型の異方性導電フィルムを用いているものの、本圧着工程のみで接続しているため、実施例1と同じ本圧着条件で押し込んだが、粒子の潰れが確認できず、粒子の捕捉がされていない(挟持されていない)ことから、接続がなされていない結果と判定した。これは、本圧着工程のみで接続しようとすると、圧着ツールの熱が高く、導電粒子を十分に押しつぶすより先にバインダー樹脂が加熱されてしまったため、流動が促進されず、粒子の押し込みが不十分な状態で硬化したためと推察される。
【0132】
また、比較例3は、比較例2と同様に本圧着工程のみで接続する際に、押圧力を比較例2(実施例1)の50倍に設定することで、粒子の潰れが確認できた。これは樹脂の流動が発生するより前に、樹脂が硬化したため、粒子を潰すのに多大な加圧力が必要になったと推察される。尚、このように加圧圧力を大きくしたことは、電子部品への熱や圧力による影響が大きく、ダメージが懸念される。
【0133】
今回、分散型と整列型では、高粘度の導電粒子配列層・導電粒子含有層と低粘度の絶縁性樹脂層の厚みの比率が異なっている(整列型4μmに対して分散型6μm)。また、フィルムの総厚みはバンプ高さよりも薄い。従って、バンプ間への樹脂の充填が十分ではない状態で評価していることになる。仮固定工程を行わない比較例2、3、4はこの影響が見受けられる。比較例2に対して比較例3では圧力を著しく高くせざるを得ない理由であると推察する。高粘度の導電粒子含有層の厚みは導電粒子配列層の厚みの1.5倍であるため、フィルム全体において、押圧時のバンプ間への樹脂充填がされにくいことが推察される。これは比較例1よりも比較例4の方が捕捉効率が高いことからも伺える。それにも関わらず、実施例1は比較例1や4よりも捕捉効率が高いことから、粒子の仮固定工程は粒子配列型においてより効果を発揮していると考えることができる。
【0134】
分散型の異方性導電フィルムを用いるとともに本圧着工程のみで接続している比較例4は、仮固定工程を行っている比較例1よりも粒子捕捉効率が勝っている。これは、接続前の状態で端子に捕捉されうる粒子の個数が、分散型は整列型よりもバラツキが大きいために生じた結果だと推察される。即ち、仮固定工程を行い、粒子の捕捉効率を安定させようとしても、分散型よりも整列型の方が効果を発揮し易いことが推察される。
【0135】
以上より、バンプ面積が極小化された電子部品の接続においては、整列型の異方性導電フィルムを用いるとともに、仮固定工程及び本圧着工程を経て接続することにより導電粒子を確実に挟持できることが分かる。これは、仮固定工程における加圧圧力を解放することなく、引き続き本圧着工程を行うことにより、導電粒子の流動を最小限に抑えながらバンプ及び端子電極によって挟持することができるためであり、これにより、導電粒子が、初期の配置に近い配置パターンを維持した状態でバンプに捕捉されるためである。また、仮固定工程を設けることで、本圧着工程のみで接続する場合に比して圧着圧力を極端に上げる必要もなく、電子部品へのダメージを抑えつつ、良好な粒子捕捉性を確保することができる。したがって、本発明が適用された接続体の製造方法によれば、バンプ面積が極小化された場合においても、適切な導電粒子の捕捉状態を確保することができる。
【0136】
本実施例は、異方性導電フィルム及びそれに適した部材や装置を用いて、粒子整列型の接続フィルム(フィラー含有フィルム)は、仮固定工程によってより高い捕捉性(配列維持性)を得られることを検証したものであるが、本実施例により初期の配置に近い配置パターンを維持した状態で捕捉されるとの効果は得られたものと推察する。
【0137】
本実施例においては異方性導電接続方法および接続体で説明したが、樹脂中にフィラーを配置したフィラー含有フィルムを、その配置状態を損なわずに精密な挟持状態を得るためには、上述のように仮固定工程を設けることが有効であることが分かる。特にフィラーが配置されていることの、配置維持性(配列維持性)を得ることは、フィラーが分散しているものとは異なる産業上の利便性が得られると推測できる。接続前後の状態を把握するだけでも観察や計測などといった手間が入るが、フィラーが分散されているものと、フィラーが配置されているものとでは、この観察や計測がより簡便になることは容易に類推できるからである。
【0138】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。