【課題】被検眼に対する測定光学系の位置合わせの様子や被検眼の状態を明確に確認でき、位置合わせを迅速かつ高精度に行って、被検眼の特性を適切に測定できる眼科装置を提供する。
【解決手段】眼科装置10を、被検眼Eの情報を取得する測定光学系24、被検眼Eの前眼部像E′を取得する撮像素子31g、前眼部像E′が表示される表示部30、被検眼Eの前眼部を異なる方向から撮影するカメラ40,41、記測定光学系24を鉛直方向及び水平方向に移動させる駆動機構22及び制御部26から構成する。制御部26は、カメラ40,41で撮影した撮影画像に基づいて取得した被検眼Eの3次元の位置情報に基づいて、測定光学系24XYZ方向への移動量を算出し、駆動機構を制御してアライメントを行っているときに、表示部30に前眼部像E′を表示する。
前記測定光学系が、前記被検者の左眼及び右眼に対応して一対設けられ、この一対の前記測定光学系の各々が、前記画像取得部と、2以上の前記撮影部を備え、前記制御部は、前記表示部に前記左眼及び前記右眼の前記前眼部像を表示する構成であることを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
前記表示部は、前記前眼部像が表示される表示面の上に重畳して配置されたタッチパネル式の入力部を備え、前記制御部は、前記入力部を介して入力される指示に従って、前記位置合わせを行っているときに、前記表示面に前記前眼部像を逐次表示する構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼科装置。
前記制御部は、2以上の前記撮影部で取得された前記撮影画像に基づいて、前記被検眼の特徴部位を抽出するとともに前記特徴部位と2以上の前記撮影部との距離を算出し、当該距離と予め決められた2以上の前記撮影部の互いの距離とに基づいて、前記被検眼の前記3次元の位置情報を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の眼科装置。
前記測定光学系を支持する支持部を備え、前記駆動機構は、前記支持部に吊り下げられ、前記測定光学系は、前記駆動機構に吊り下げられた構成であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の眼科装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の眼科装置を実施するための形態を説明する。まず、本実施の形態に係る眼科装置10の全体構成を、
図1〜
図3を参照して説明する。本実施の形態の眼科装置10は、被検者が左右の両眼を開放した状態で、被検眼の特性測定を両眼同時に実行可能な両眼開放タイプの眼科装置である。なお、両眼開放タイプに限定されるものではなく、片眼ずつ特性測定する眼科装置にも本発明を適用することができる。
【0012】
[眼科装置の全体構成]
本実施の形態の眼科装置10は、
図1に示すように、床面に設置された基台11と、検眼用テーブル12と、支柱13と、支持部としてのアーム14と、測定ユニット20とを備えている。この眼科装置10では、検眼用テーブル12と正対する被検者が、測定ユニット20に設けられた額当部15に額を当てた状態で被検眼の特性の測定を行う。なお、本明細書を通じて
図1に記すようにX軸、Y軸及びZ軸を取り、被検者から見て、左右方向をX方向とし、上下方向(鉛直方向)をY方向とし、X方向及びY方向と直交する方向(測定ユニット20の奥行き方向)をZ方向とする。
【0013】
検眼用テーブル12は、後述する検者用コントローラ27や被検者用コントローラ28を置いたり検眼に用いるものを置いたりするための机であり、基台11により支持されている。検眼用テーブル12は、Y方向での位置(高さ位置)を調節可能に基台11に支持されていてもよい。
【0014】
支柱13は、検眼用テーブル12の後端部からY方向に起立しており、上部にアーム14が設けられている。アーム14は、支柱13に取り付けられ、検眼用テーブル12の上方で一対の駆動機構22を介して一対の測定ヘッド23を吊り下げ支持するものである。アーム14は、支柱13に対してY方向に移動可能となっている。なお、アーム14は、支柱13に対してX方向及びZ方向に移動可能となっていてもよい。このアーム14の先端に、駆動機構22を介して一対の測定ヘッド23を有する測定ユニット20が設けられている。
【0015】
基台11には、眼科装置10の各部を統括的に制御する制御部26が、制御ボックス26bに収納されて設けられている。なお、制御部26には、電源ケーブル17aを介して商用電源から電力供給がなされる。
【0016】
[測定ユニット]
測定ユニット20は、任意の自覚検査及び任意の他覚測定の少なくとも一方を行う。なお、自覚検査では、被検者に視標等を提示し、この視標等に対する被検者の応答に基づいて検査結果を取得する。この自覚検査には、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、視野検査等がある。また、他覚測定では、被検眼に光を照射し、その戻り光の検出結果に基づいて被検眼に関する情報(特性)を測定する。この他覚測定には、被検眼の特性を取得するための測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれる。さらに、他覚測定には、他覚屈折測定(レフ測定)、角膜形状測定(ケラト測定)、眼圧測定、眼底撮影、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:以下、「OCT」という)を用いた断層像撮影(OCT撮影)、OCTを用いた計測等がある。
【0017】
また、この測定ユニット20は、制御/電源ケーブル17b(
図2参照)を介して制御部26に接続されており、この制御部26を経由して電力供給がなされる。また、測定ユニット20と制御部26との間の情報の送受信も、この制御/電源ケーブル17bを介して行われる。
【0018】
測定ユニット20は、
図2に示すように、取付ベース部21と、この取付ベース部21に設けられた左眼用駆動機構22L及び右眼用駆動機構22Rと、左眼用駆動機構22Lに支持された左眼測定ヘッド23Lと、右眼用駆動機構22Rに支持された右眼測定ヘッド23Rと、を備えている。
【0019】
左眼測定ヘッド23Lと右眼測定ヘッド23Rとは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされている。また、左眼測定ヘッド23Lに対応する左眼用駆動機構22Lの各駆動部の構成と、右眼測定ヘッド23Rに対応する右眼用駆動機構22Rの各駆動部の構成とは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされている。以下、個別に述べる時を除くと、単に測定ヘッド23、駆動機構22ということがある。左右に対称に設けられる他の構成部品についても同様である。
【0020】
取付ベース部21は、アーム14の先端に固定され、X方向に延在されると共に、一方の端部に左眼用駆動機構22Lが吊り下げられ、他方の端部に右眼用駆動機構22Rが吊り下げられている。また、この取付ベース部21の中央部には、額当部15が吊り下げられている。
【0021】
左眼用駆動機構22Lは、制御部26からの制御指令に基づいて、左眼測定ヘッド23LのX方向、Y方向、Z方向の位置、及び左眼ELの眼球回旋軸OL(
図2参照)を中心にした向きを変更する。この左眼用駆動機構22Lは、
図2に示すように、左鉛直駆動部22aと、左水平駆動部22bと、左回旋駆動部22cと、を有している。これらの各駆動部22a〜22cは、取付ベース部21と左眼測定ヘッド23Lとの間に、上方側から左鉛直駆動部22a、左水平駆動部22b、左回旋駆動部22cの順に配置されている。
【0022】
左鉛直駆動部22aは、取付ベース部21に対して左水平駆動部22bをY方向に移動させる。左水平駆動部22bは、左鉛直駆動部22aに対して左回旋駆動部22cをX方向及びZ方向に移動させる。左回旋駆動部22cは、左水平駆動部22bに対して左眼測定ヘッド23Lを左眼ELの眼球回旋軸OLを中心に回転させる。
【0023】
右眼用駆動機構22Rは、制御部26からの制御指令に基づいて、右眼測定ヘッド23RのX方向、Y方向、Z方向の位置、及び右眼ERの眼球回旋軸OR(
図2参照)を中心にした向きを変更する。この右眼用駆動機構22Rは、
図2に示すように、右鉛直駆動部22dと、右水平駆動部22eと、右回旋駆動部22fと、を有している。これらの各駆動部22d〜22fは、取付ベース部21と右眼測定ヘッド23Rとの間に、上方側から右鉛直駆動部22d、右水平駆動部22e、右回旋駆動部22fの順に配置されている。
【0024】
右鉛直駆動部22dは、取付ベース部21に対して右水平駆動部22eをY方向に移動させる。右水平駆動部22eは、右鉛直駆動部22dに対して右回旋駆動部22fをX方向及びZ方向に移動させる。右回旋駆動部22fは、右水平駆動部22eに対して右眼測定ヘッド23Rを右眼ERの眼球回旋軸ORを中心に回転させる。
【0025】
ここで、左鉛直駆動部22a、左水平駆動部22b、右鉛直駆動部22d、右水平駆動部22eは、いずれもパルスモータ等の駆動力を発生するアクチュエータと、複数の歯車組やラック・アンド・ピニオン等の駆動力を伝達する伝達機構と、を有している。なお、左水平駆動部22b及び右水平駆動部22eは、X方向とZ方向とで個別にアクチュエータ及び伝達機構の組み合わせを設けてもよく、構成を簡易にできるとともに水平方向の移動の制御を容易なものとすることができる。
【0026】
また、左回旋駆動部22c及び右回旋駆動部22fも、パルスモータ等の駆動力を発生するアクチュエータと、複数の歯車組やラック・アンド・ピニオン等の駆動力を伝達する伝達機構と、を有している。ここで、左回旋駆動部22c及び右回旋駆動部22fは、アクチュエータからの駆動力を受けた伝達機構を、眼球回旋軸OL,ORを中心位置とする円弧状の案内溝に沿って移動させることで、左眼ELの眼球回旋軸OL,右眼ERの眼球回旋軸ORを中心にそれぞれ左眼測定ヘッド23L、右眼測定ヘッド23Rを回転させることができる。
【0027】
なお、左回旋駆動部22c及び右回旋駆動部22fは、自らが有する回転軸線回りに左眼測定ヘッド23L、右眼測定ヘッド23Rを回転可能に取り付けるものでもよい。
【0028】
左回旋駆動部22c及び右回旋駆動部22fによって、左眼測定ヘッド23Lと右眼測定ヘッド23Rとを所望の方向に回旋させることで、被検眼を開散(開散運動)させたり輻輳(輻輳運動)させたりすることができる。これにより、眼科装置10では、開散運動及び輻輳運動のテストを行うことや、両眼視の状態で遠用検査や近用検査を行って両被検眼の各種特性を測定することができる。
【0029】
左眼測定ヘッド23Lは、
図2、
図3に示すように、左回旋駆動部22cに固定された左ハウジング23aに内蔵された左眼用測定光学系24Lと、左ハウジング23aの外側面に設けられた左眼用偏向部材25Lとを有している。さらに、この左眼用偏向部材25Lに近接して、左ハウジング23a内には、左眼用測定光学系24Lの光軸を挟んで前後(Z方向)に、撮影部としての2台のカメラ(ステレオカメラ)40L,41Lが設けられている。この左眼測定ヘッド23Lでは、左眼用測定光学系24Lからの出射光を、左眼用偏向部材25Lを介して屈曲して被検者の左眼ELに照射し、左眼特性を測定する(
図3参照)。また、各カメラ40L,41Lは、左眼用偏向部材25Lを介して屈曲して入射する被検者の左眼ELの前眼部像(より具体的には、視軸に交差する斜め横方向から撮影された前眼部像)を取得する。
【0030】
また、右眼測定ヘッド23Rは、
図2、
図3に示すように、右回旋駆動部22fに固定された右ハウジング23bに内蔵された右眼用測定光学系24Rと、右ハウジング23bの外側面に設けられた右眼用偏向部材25Rと、を有している。さらに、この右眼用偏向部材25Rに近接して、右ハウジング23b内には、右眼用測定光学系24Rの光軸を挟んで前後(Z方向)に、2台のカメラ(撮影部)40R,41Rが設けられている。この右眼測定ヘッド23Rでは、右眼用測定光学系24Rからの出射光を、右眼用偏向部材25Rを介して屈曲して被検者の右眼ERに照射し、右眼特性を測定する(
図3参照)。また、各カメラ40R,41Rは、右眼用偏向部材25Rを介して屈曲して入射する被検者の右眼ERの前眼部像を取得する。
【0031】
本実施の形態では、それぞれのカメラ40,41で異なる方向から、実質的に同時に被検眼E(EL,ER)を撮影することで、2つの異なる前眼部像を取得することができる。なお、左右それぞれに設けるカメラの位置が、前後に限定されるものではなく、光軸を挟んで上下に配置してもよい。また、カメラの台数が2台に限定されるものではなく、例えば、前後及び上下に4台設けるなど、カメラを3台以上設けてもよく、より多くの前眼部像を取得することができる。また、カメラ40,41を、ハウジング23a,23bの外に設けてもよく、各部のサイズやデザイン等に応じて所望の位置に配置することができる。
【0032】
ここで、「実質的に同時」とは、2以上のカメラ40,41による撮影において、眼球運動を無視できる程度の撮影タイミングのズレを許容することを意味する。2以上のカメラ40,41により被検眼Eの前眼部を異なる方向から実質的に同時に撮影することで、被検眼Eが同じ位置(向き)にあるときの2以上の撮影画像を取得することが可能になる。
【0033】
左眼用測定光学系24L及び右眼用測定光学系24Rは、それぞれ提示する視標を切り替えながら視力検査を行う視力検査装置、矯正用レンズを切換え配置しつつ被検眼の適切な矯正屈折力を取得するフォロプタ、屈折力を測定するレフラクトメータや波面センサ、眼底の画像を撮影する眼底カメラ、網膜の断層画像を撮影する断層撮影装置、角膜内皮画像を撮影するスペキュラマイクロスコープ、角膜形状を測定するケラトメータ、眼圧を測定するトノメータ等が、単独又は複数組み合わされて構成されている。
【0034】
[測定光学系]
左眼用測定光学系24L及び右眼用測定光学系24Rの構成の一例を、
図3、
図5を参照して説明する。
図3は本実施の形態の眼科装置10の左眼用測定光学系24L及び右眼用測定光学系24Rの概略構成を示す図であり、
図5は右眼用測定光学系24Rの詳細構成を示す図である。
図5では、右眼用偏向部材25Rを省略している。なお、左眼用測定光学系24Lの構成は右眼用測定光学系24Rと同一であるので、その説明は省略することとし、以下では右眼用測定光学系24Rについてのみ説明する。
【0035】
右眼用測定光学系24Rは、
図5に示すように、観察系31と視標投影系32と眼屈折力測定系33と自覚式検査系34とアライメント光学系35とアライメント光学系36とケラト系37とを有する。観察系31は、被検眼Eの前眼部を観察し、視標投影系32は、被検眼Eに視標を呈示し、眼屈折力測定系33は、眼屈折力の測定を行い、自覚式検査系34は、自覚検査を行う。
【0036】
眼屈折力測定系33は、本実施の形態では、被検眼Eの眼底Efに所定の測定パターンを投影する機能と、眼底Efに投影した測定パターンの像を検出する機能と、を有する。このため、眼屈折力測定系33は、被検眼Eの眼底Efに光束を投光しかつその眼底Efからの反射光を受光する第1測定系として機能する。
【0037】
自覚式検査系34は、本実施の形態では、被検眼Eに視標を呈示する機能を有し、光学系を構成する光学素子を視標投影系32と共用する。アライメント光学系35及びアライメント光学系36は、被検眼Eに対する光学系の位置合わせ(アライメント)を行うためのものである。制御部26は、アライメント光学系35によって観察系31の光軸に沿う前後方向(Z方向)のアライメント情報を取得し、アライメント光学系36によって当該光軸に直交する上下左右方向(Y方向、X方向)のアライメント情報を取得する。
【0038】
観察系31は、対物レンズ31aとダイクロイックフィルタ31bとハーフミラー31cとリレーレンズ31dとダイクロイックフィルタ31eと結像レンズ31fと撮像素子(CCD)31gとを有する。観察系31では、被検眼E(前眼部)で反射された光束を、対物レンズ31aを経て結像レンズ31fにより撮像素子31g上に結像する。このため、撮像素子31g上には、後述するケラトリング光束やアライメント光源35aの光束やアライメント光源36aの光束(輝点像Br)が投光(投影)された前眼部像E′が形成される。制御部26は、撮像素子31gから出力される画像信号に基づく前眼部像E′等を表示部30の表示面30aに表示させる。この対物レンズ31aの前方に、ケラト系37を設ける。
【0039】
ケラト系37は、ケラト板37aとケラトリング光源37bとを有する。ケラト板37aは、観察系31の光軸に関して同心状のスリットが設けられた板状を呈し、対物レンズ31aの近傍に設けられる。ケラトリング光源37bは、ケラト板37aのスリットに合わせて設けられる。このケラト系37では、点灯したケラトリング光源37bからの光束がケラト板37aのスリットを経ることで、被検眼E(角膜Ec)に角膜形状の測定のためのケラトリング光束(角膜曲率測定用リング状視標)を投光(投影)する。このケラトリング光束は、被検眼Eの角膜Ecで反射されることで、観察系31により撮像素子31g上に結像される。これにより、撮像素子31gがリング状のケラトリング光束の像(画像)を検出(受像)し、制御部26が、その測定パターンの像を表示面30aに表示させ、かつ当該画像(撮像素子31g)からの画像信号に基づき角膜形状(曲率半径)を周知の手法により測定する。このため、ケラト系37は、被検眼Eの前眼部(角膜Ec)に光束を投光しかつその前眼部(角膜Ec)からの反射光から当該前眼部(角膜Ec)の特性を測定する第2測定系であって被検眼Eの角膜形状を測定する角膜形状測定系として機能する。なお、本実施の形態では、角膜形状測定系として、リングスリットが1重から3重程度で角膜の中心付近の曲率測定を行うケラト板37aを用いる例(ケラト系37)を示しているが、角膜形状を測定するものであれば、多重のリングを有し角膜全面の形状を測定可能なプラチド板を用いるものでもよく、他の構成でもよく、本実施例の構成に限定されない。このケラト系37(ケラト板37a)の後方に、アライメント光学系35を設ける。
【0040】
アライメント光学系35は、一対のアライメント光源35aと投影レンズ35bとを有し、各アライメント光源35aからの光束を各投影レンズ35bで平行光束とし、ケラト板37aに設けたアライメント用孔を通して被検眼Eの角膜Ecに当該平行光束を投光(投影)する。これにより、アライメントのための指標が被検眼Eの角膜に投影される。この指標は、角膜表面反射による虚像(プルキンエ像)として検出される。指標を用いたアライメントは、測定光学系24Rの光軸方向におけるアライメントを少なくとも含む。指標を用いたアライメントは、X方向及びY方向へのアライメントを含んでもよい。
【0041】
なお、本実施形態では、測定光学系24Rの光軸は、右眼用偏向部材25Rによって折り曲げられており、測定光学系24Rの右眼用偏向部材25Rに対する鏡像の位置では、測定光学系24Rの光軸がZ軸と略一致するように構成されている。このため、測定光学系24Rの光軸方向におけるアライメントは、Z方向へのアライメントに相当する。
【0042】
Z方向へのアライメント情報(Z方向への移動量)は、2台のカメラ40,41により実質的に同時に得られる2以上の撮影画像を解析することによって取得される。XY方向へのアライメント情報(XY方向の移動量)は、撮像素子31gで撮影された前眼部像上の角膜Ecに投光(投影)された輝点(輝点像Br)に基づいて取得される。
【0043】
制御部26は、このアライメント情報に基づいて右水平駆動部22eを駆動して右眼測定ヘッド23Rを前後方向(Z方向)に移動させることで、観察系31の光軸に沿う前後方向(Z方向)のアライメントを行う。また、この前後方向のアライメントは、撮像素子31g上のアライメント光源35aによる2個の輝点像Brの間隔とケラトリング像の直径の比を所定範囲内とするよう右眼測定ヘッド23Rの位置を調整して行う。
【0044】
ここで、制御部26は、当該比率からアライメントのずれ量を求めて、このアライメントのずれ量を表示面30aに表示させてもよい。なお、前後方向のアライメントは、後述するアライメント光源36aによる輝点像Brのピントが合うように右眼測定ヘッド23Rの位置を調整することで行ってもよい。
【0045】
また、観察系31にアライメント光学系36を設けている。このアライメント光学系36は、アライメント光源36aと投影レンズ36bとを有し、ハーフミラー31c、ダイクロイックフィルタ31b及び対物レンズ31aを観察系31と共用する。アライメント光学系36は、アライメント光源36aからの光束を、対物レンズ31aを経て平行光束として角膜Ecに投光(投影)する。制御部26は、前眼部像E′上の角膜Ecに投光(投影)された輝点(輝点像)に基づき、アライメント情報(例えば、Y方向及びX方向の移動量)を取得する。制御部26は、このアライメント情報に基づいて右水平駆動部22e及び右鉛直駆動部22dを駆動して、右眼測定ヘッド23Rを左右方向(X方向)、上下方向(Y方向)に移動させることで、左右方向(X方向)、上下方向(Y方向)のアライメントを行う。このとき、制御部26は、輝点像Brが形成された前眼部像E′に加えて、アライメントマークの目安となるアライメントマークALを表示面30aに表示させる。また、制御部26は、アライメントが完了すると測定を開始するように制御する構成としてもよい。
【0046】
視標投影系32(自覚式検査系34)は、ディスプレイ32aとハーフミラー32bとリレーレンズ32cと反射ミラー32dと合焦レンズ32eとリレーレンズ32fとフィールドレンズ32gとバリアブルクロスシリンダレンズ(VCC)32hと反射ミラー32iとダイクロイックフィルタ32jとを有し、ダイクロイックフィルタ31b及び対物レンズ31aを観察系31と共用する。
【0047】
また、自覚式検査系34は、ディスプレイ32a等に至る光路とは別の光路で光軸を取り巻く位置に、被検眼Eにグレア光を照射する少なくとも2つのグレア光源32kを有する。ディスプレイ32aは、被検眼Eの視線を固定すべく視標としての固視標や点状視標を呈示したり、被検眼Eの特性(視力値や矯正度数(遠用度数、近用度数)等)を自覚的に検査するための自覚検査視標を呈示したりする。ディスプレイ32aは、EL(エレクトロルミネッセンス)や液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display(LCD))を用いることができ、制御部26の制御下で任意の画像を表示する。ディスプレイ32aは、視標投影系32(自覚式検査系34)の光路上において被検眼Eの眼底Efと共役となる位置に光軸に沿って移動可能に設けられる。
【0048】
また、視標投影系32(自覚式検査系34)では、光路上において被検眼Eの瞳孔と略共役となる位置にピンホール板32pを設ける。このピンホール板32pは、板部材に貫通孔を設けて形成し、視標投影系32(自覚式検査系34)の光路への挿入と当該光路からの離脱とを可能とし、光路に挿入されると貫通孔を光軸上に位置させる。ピンホール板32pは、自覚検査モードにおいて光路に挿入されることで、被検眼Eの眼鏡による矯正が可能であるか否かを判別するピンホールテストを行うことを可能とする。このピンホール板32pは、本実施の形態では、フィールドレンズ32gとVCC32hとの間に設け、制御部26の制御下で挿入及び離脱される。なお、ピンホール板32pを設ける位置は、光路上において被検眼Eの瞳孔と略共役となる位置に設ければよく、本実施の形態に限定されない。
【0049】
眼屈折力測定系33は、被検眼Eの眼底Efにリング状の測定パターンを投影するリング状光束投影系33Aと、眼底Efからのリング状の測定パターンの反射光を検出(受像)するリング状光束受光系33Bと、を有する。リング状光束投影系33Aは、レフ光源ユニット部33aとリレーレンズ33bと瞳リング絞り33cとフィールドレンズ33dと穴開きプリズム33eとロータリープリズム33fとを有し、ダイクロイックフィルタ32jを視標投影系32(自覚式検査系34)と共用し、ダイクロイックフィルタ31b及び対物レンズ31aを観察系31と共用する。レフ光源ユニット部33aは、例えばLEDを用いたレフ測定用のレフ測定光源33gとコリメータレンズ33hと円錐プリズム33iとリングパターン形成板33jとを有し、それらが制御部26の制御下で眼屈折力測定系33の光軸上を一体的に移動可能となっている。
【0050】
リング状光束受光系33Bは、穴開きプリズム33eの穴部33pとフィールドレンズ33qと反射ミラー33rとリレーレンズ33sと合焦レンズ33tと反射ミラー33uとを有し、対物レンズ31a、ダイクロイックフィルタ31b、ダイクロイックフィルタ31e、結像レンズ31f及び撮像素子31gを観察系31と共用し、ダイクロイックフィルタ32jを視標投影系32(自覚式検査系34)と共用し、ロータリープリズム33f及び穴開きプリズム33eをリング状光束投影系33Aと共用する。
【0051】
上記のような右眼用測定光学系24R及び左眼用測定光学系24Lを用いた眼屈折力の測定や自覚検査については、例えば、特開2017−63978号公報などに記載されている動作と同様の動作で行うことができる。
【0052】
[制御部]
制御部26は、眼科装置10の各部を統括的に制御する。制御部26には、
図6に示すように、上記した左眼用測定光学系24Lと、右眼用測定光学系24Rと、左眼用駆動機構22Lの左鉛直駆動部22a、左水平駆動部22b及び左回旋駆動部22cと、右眼用駆動機構22Rの右鉛直駆動部22d、右水平駆動部22e及び右回旋駆動部22fと、アーム駆動機構16と、に加えて、カメラ40L,41Lと、カメラ40R,41Lと、表示部30を有する検者用コントローラ(第一の入力部)27と、被検者用コントローラ(第二の入力部)28と、記憶部29と、が接続されている。
【0053】
検者用コントローラ27は、検者が眼科装置10を操作するために用いられる。検者用コントローラ27と制御部26とは、近距離無線通信によって、互いに通信可能に接続されているが、有線によって接続されていてもよい。
【0054】
本実施の形態では、検者用コントローラ27として、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末(情報処理装置)を用いている。これにより、検者が手に持って操作することができ、被検者や眼科装置10に対して、いずれの位置からでも操作することができるため、測定時の検者の自由度を高めることができる。なお、検者用コントローラ27を検眼用テーブル12に置いて操作することもできる。また、検者用コントローラ27が携帯端末に限定されることもなく、ノート型パーソナルコンピュータ、デスクトップ型パーソナルコンピュータ等であってもよい。
【0055】
検者用コントローラ27は、液晶モニタからなる表示部30を備えている。この表示部30は、画像等が表示される表示面30a(
図4、
図7等参照)上に重畳して配置されたタッチパネル式の入力部30bを備えている。検者は、被検眼の特性を測定する際に、この入力部30bからアライメントの指示や測定の指示を入力する。表示面30aには、観察系31に設けられた撮像素子(CCD)31gから出力される画像信号に基づく前眼部像E′や、入力部30bとしての操作画面50(
図8等参照)等が表示される。
【0056】
被検者用コントローラ28は、被検眼Eの各種の眼情報の取得の際に、被検者が応答するために用いられる。被検者用コントローラ28は、例えばキーボード、マウス、ジョイスティック等の入力装置を備えている。被検者用コントローラ28は、近距離無線通信又は有線の通信を介して制御部26と接続されている。
【0057】
制御部26は、接続された記憶部29又は内蔵する内部メモリ26aに記憶したプログラムを例えばRAM上に展開することにより、適宜検者用コントローラ27や被検者用コントローラ28に対する操作に応じて、眼科装置10の動作を統括的に制御する。本実施の形態では、内部メモリ26aはRAM等で構成され、記憶部29は、ROMやEEPROM等で構成される。
【0058】
上述のような構成の本実施の形態の眼科装置10を用いて、測定ヘッド23のXYZ方向のアライメントを行って、被検眼の特性として、眼屈折力(レフラクト)を測定(レフ測定)するとき動作の一例を、
図7のフローチャート及び
図8〜
図11の画面例を参照しながら説明する。
【0059】
本実施の形態の眼科装置10は、制御部26の制御下で、2台のカメラ40,41で撮影した被検眼Eの異なる2つの前眼部像を解析し、解析結果に基づいて駆動機構22を制御して測定ヘッド23のアライメントを自動で行うものである。また、このアライメントの様子や被検眼Eの状態を、検者が検者用コントローラ27の表示部30に表示された前眼部の前眼部像E′(正面像)で確認できるようになっている。これにより、アライメントを迅速かつ高精度に行って、被検眼Eの特性の測定も迅速かつ高精度に行うことを可能とするものである。
【0060】
すなわち、被検眼Eの状態によっては、アライメントがうまくできない場合があるが、その原因として、例えば、固視ができていない、両眼視ができていない、斜位・眼瞼下垂・抑制がある、瞳孔の縮瞳がある、頭部が傾いている、などが挙げられる。しかし、従来アライメント等の際に表示部に表示される画像は、2以上の撮影部で被検眼Eの前眼部の斜め方向から撮影した画像又は合成画像であるため、これらの原因を把握し難かった。
【0061】
これに対して、本実施の形態では、アライメントの実行中に、被検眼Eの前眼部像E′(正面像)を操作画面50上で視認することができる。そのため、検者はアライメントができない原因を明確に把握することが可能となる。そのため、頭部の位置を修正したり、被検者に注意を促したりして、迅速に対策を講じることができ、再度のアライメントの成功率を向上させることができる。
【0062】
被検眼Eの特性を測定するに際して、まず、眼科装置10を電源オンして起動させるとともに、検者用コントローラ27のブラウザ又はアプリを立ち上げ、眼科装置10の操作画面50を表示面30aに表示させる(
図8等参照)。この操作画面50が、眼科装置10を操作するための入力部30bとして機能する。
【0063】
次いで、被検者を椅子等に座らせて、眼科装置10と対峙させ、測定ユニット20の額当部15に額を当てさせる。すると、左右の測定光学系24に設けられた観察系31によって、左眼EL及び右眼ERの前眼部の撮影が開始される。制御部26は、
図8に示すように、撮像素子31gから出力される画像信号に基づく左眼EL及び右眼ERの前眼部像(正面像)EL′,ER′を、操作画面50の前眼部像表示領域51L,51Rに表示する(ステップS1)。
【0064】
この前眼部像EL′,ER′の撮影及び表示タイミングは、眼科装置10を起動したタイミングで実行するように構成してもよいし、被検者が額当部15に額を当てたことをセンサ等によって検知したタイミングで実行するように構成してもよい。または、検者が操作画面50から撮影指示を与えたタイミングで実行するように構成してもよい。
【0065】
なお、前眼部像表示領域51L,51Rを観察して、前眼部像EL′,ER′の位置が大きくずれていたり、写っていなかったりした場合には、操作画面50の上下動ボタン54を操作して、アーム14を上下動し、被検眼Eに対する測定ヘッド23の高さを概略調整する。概略調整とは、厳密ではなく大まかに調整することをいう。
【0066】
この高さの概略調整を行った後に、より厳密な位置合わせをすべく、オートアライメント(自動による位置合わせ)を実行する(ステップS2)。
図8には、オートアライメントの実行前であって、右眼ERの前眼部像ER′の上部が欠けた状態で表示され、右眼ERが適切な位置からずれている様子が示されている。なお、このずれが、被検者の頭部の傾きによるものであれば、被検者に注意喚起したり、検者が手助けしたりしながら、操作画面50を確認して頭部の位置を適切な位置に戻すことができる。
【0067】
以下、ステップS2のオートアライメントの処理の詳細を説明する。このオートアライメントの処理は、検者が操作画面50の計測開始ボタン52をタッチすることで開始される。この開始指示を受付けた制御部26は、アライメント光学系35を制御して、ケラト板37aに設けたアライメント用孔を通して被検眼Eの角膜Ecに当該平行光束を投光(投影)する。これにより、アライメントのための指標が被検眼Eの角膜に投影される。この指標は、角膜表面反射による虚像(プルキンエ像)として検出される。
【0068】
そして、制御部26は、前眼部像E′上に形成された輝点像Brに基づいて、XY方向へのアライメント情報(XY方向への各移動量)を取得する。
【0069】
一方、制御部26の制御の下、カメラ40,41が被検眼Eの前眼部像を異なる方向から実質的に同時に撮影する。この撮影は、被検眼Eの前眼部を撮影対象とする動画撮影である。各カメラ40,41は、所定のフレームレートで、被検眼Eの動画撮影を行う。各カメラ40,41は、取得されたフレームをリアルタイムで順次に制御部26に送る。制御部26は、各カメラ40,41により得られたフレームを、撮影タイミングに応じて対応付ける。
【0070】
また、制御部26は、各フレームの歪みを、記憶部29に記憶されている収差情報に基づいて補正する。この補正処理は、例えば歪曲収差を補正するための補正係数に基づく公知の画像処理技術を用いて行われる。
【0071】
制御部26は、歪みが補正された各フレームを解析することで、特徴位置、例えば前眼部の瞳孔中心に相当する位置を特定する。制御部26は、撮影画像(前眼部像)の画素値(輝度値など)の分布に基づいて、被検眼Eの瞳孔に相当する画像領域(瞳孔領域)を特定する。一般に瞳孔は他の部位よりも低い輝度で描画されるので、低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔領域を特定することができる。このとき、瞳孔の形状を考慮して瞳孔領域を特定するようにしてもよい。つまり、略円形かつ低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔領域を特定するように構成することができる。
【0072】
次に、制御部26は、特定された瞳孔領域の中心位置を特定する。上記のように瞳孔は略円形であるので、瞳孔領域の輪郭を特定し、この輪郭(輪郭の近似円又は近似楕円)の中心位置を特定し、これを瞳孔中心とすることができる。また、瞳孔領域の重心を求め、この重心位置を瞳孔中心としてもよい。
【0073】
なお、他の特徴部位に対応する特徴位置を特定する場合であっても、上記と同様に撮影画像の画素値の分布に基づいて当該特徴位置を特定することが可能である。
【0074】
次に、取得した特徴位置(瞳孔中心)に基づいて、被検眼Eの3次元的な位置情報を取得する手順を、
図6を参照して説明する。
図6は、2台のカメラ40,41と被検眼Eとの間の位置関係を模式的に表した図である。
【0075】
図6では、2台のカメラ40,41間の距離(基線長)を「B」で表す。2台のカメラ40,41の基線と、被検眼Eの特徴部位Pとの間の距離(撮影距離)を「H」で表す。各カメラ40,41と、その画面平面との間の距離(画面距離)を「f」で表す。
【0076】
このような配置状態において、2台のカメラ40,41による撮影画像の分解能は次式で表される。ここで、Δpは画素分解能を表す。
【0077】
xy方向の分解能(平面分解能):Δxy=H×Δp/f
z方向の分解能(奥行き分解能):Δz=H×H×Δp/(B×f)
【0078】
制御部26は、2台のカメラ40,41の位置(既知である)と、2つの撮影画像において特徴部位Pに相当する特徴位置とに対して、
図6に示す配置関係を考慮した公知の三角法を適用することにより、特徴部位Pの3次元位置、つまり被検眼Eの3次元位置を算出する。
【0079】
制御部26は、算出した被検眼Eの3次元位置に基づいて、測定光学系24の光軸を被検眼Eの軸に合わせるように、かつ、被検眼Eに対する測定光学系24の距離が所定の作動距離になるように駆動機構22を制御するためのZ方向におけるアライメント情報を算出する。ここで、作動距離とは、ワーキングディスタンスとも呼ばれる既定値であり、測定光学系24を用いた特性の測定時における被検眼Eと測定光学系24との間の距離を意味する。
【0080】
以上のようにして取得したアライメント情報に基づいて、駆動機構22を駆動して、測定ヘッド23をXYZ方向に移動し、XYZ方向のアライメントを行う。このアライメントは、左眼測定ヘッド23L及び右眼測定ヘッド23Rの双方でそれぞれ行われるため、左眼ELと右眼ERとの位置に、XYZ方向で多少のずれがあった場合でも、この左眼ELと右眼ERの位置に応じて、適切にアライメントを行うことができる。
【0081】
また、カメラ40,41が前眼部を異なる方向から並行して動画撮影する場合、例えば、次のような処理(1)及び(2)を行うことにより、被検眼Eの動きに対する測定光学系24のトラッキングを実行することが可能である。これにより、被検眼Eが動いた場合でも、被検眼Eのアライメントや特性の測定を適切に行うことができる。
【0082】
(1)制御部26が、カメラ40,41による動画撮影において実質的に同時に得られた2以上のフレームを逐次に解析することで、被検眼Eの3次元位置を逐次に求める。
(2)制御部26が、逐次に求められる被検眼Eの3次元位置に基づき駆動機構22を逐次に制御することにより、測定光学系24の位置を被検眼Eの動きに追従させる。
【0083】
図9に、適切にアライメントが行われて、左右の前眼部像EL′,ER′が、前眼部像表示領域51L,51R適切な位置に表示された様子を示している。このように、操作画面50上に前眼部像EL′,ER′がリアルタイムに逐次表示されることで、検者は測定のための操作を行いつつ、アライメントが適切に行われたか否かを明確に把握することができる。
【0084】
アライメントを完了すると、ステップS3に進み、眼屈折力の測定の前測定として、ラフ測定を行う。ラフ測定とは、被検眼Eの概略の眼屈折力を把握し、合焦レンズ32eの移動量を決定するために、予備的に測定することをいう。まず、合焦レンズ32eを0D(ディオプタ)位置に配置し、固視標を固視させ、眼屈折力測定系33を用いて眼屈折力を測定(ラフ測定)する。
【0085】
次に、本測定を行うための、再アライメントを実行する(ステップS4)。再アライメントは、上記ステップS2のオートアライメントと同じ手順で行われる。
【0086】
その後、ステップS5に進み、ピントが合わない位置に合焦レンズ32eを移動させ、被検眼Eを雲霧状態とする。この雲霧後の状態では、弱乱視眼の被験者はすべての経線方向においてボケた像を視認することとなり、被検眼Eを調節休止状態(水晶体の調整除去状態)とすることができる。この調節休止状態で、次のステップS6の眼屈折力の本測定を行うことができる。
【0087】
ステップS6では、被検眼Eの本測定(レフ測定)を実行する。このレフ測定では、制御部26が、ラフ測定によって得られた球面度数S、円柱度数C(乱視度数)、軸角度Ax(乱視軸角度)に基づいて眼屈折力測定系33を駆動制御する。
図10に、レフ測定が実行されているときの操作画面50を示す。この
図10の前眼部像表示領域51L,51Rには、左眼EL及び右眼ERのそれぞれの眼底Efに形成されたリング状の測定パターン像Krが表示されている。
【0088】
レフ測定は、公知の手順で実行され、リング状光束受光系33Bによって、被検眼Eの眼底Efにリング状の測定パターンを投影することで、眼底Efにリング状の測定パターン像Kr(
図10参照)が形成される。この測定パターン像Krが形成された眼底Efの像は、対物レンズ31aにより集光され、観察系31と共有される光学系を経由して、撮像素子31gに結像される。撮像素子31gは、リング状の測定パターン像Krを検出し、取得した画像に基づく画像信号を制御部26に出力する。
【0089】
制御部26は、画像信号に基づいて、前眼部像表示領域51L,51Rに、左眼EL及び右眼ERの測定パターン像Krを表示するとともに、この測定パターン像Krを解析することで、被検眼Eの眼屈折力としての球面度数S、円柱度数C(乱視度数)、軸角度Ax(乱視軸角度)を算出する。
【0090】
次いで、ステップS7で、制御部26は、
図11に示すように、左眼EL,右眼ERについてそれぞれ算出した球面度数S、円柱度数C、軸角度Axの値を、操作画面50の測定結果表示領域53L,53Rに表示する。また、制御部26は、左眼EL及び右眼ERの前眼部像EL′,ER′を、前眼部像表示領域51L,51Rに表示する。以上により、被検眼Eの屈折力測定(レフ測定)が終了する。
【0091】
以下、本実施の形態の眼科装置10の作用効果を説明する。本実施の形態の眼科装置10は、上述したように、測定光学系24と、撮像素子(画像取得部)31gと、表示部30と、2つのカメラ40,41と、駆動機構22と、制御部26とを備えている。制御部26は、カメラ40,41で撮影した2つの撮影画像に基づいて、被検眼Eの3次元の位置情報を取得し、位置情報に基づいて、測定光学系24の鉛直方向への移動量及び水平方向への移動量を算出し、各移動量に基づいて駆動機構22を制御し、被検眼Eに対する測定光学系24の位置合わせを行う。この位置合わせのときに、制御部26は表示部30に撮像素子31gから出力される画像信号に基づく測定光学系24の光軸上の前眼部像E′を表示する。
【0092】
この構成により、カメラ40,41により取得された撮影画像に基づいて、被検眼Eと測定光学系24との位置関係を3次元的に精度よく取得することができる。そのため、高精度で広範囲のアライメントが可能となる。これにより、被検眼が白内障眼で瞳孔中心を特定できない場合などでも、被検眼に対する測定光学系の位置合わせを好適に行うことができる。したがって、アライメントの様子や被検眼Eの状態を明確に確認でき、位置合わせを迅速かつ高精度に行って、被検眼Eの特性を適切に測定することができる。
【0093】
また、このようなアライメントが適切に行われているか否かを、カメラ40,41によって光軸に対して斜めに傾いた方向から撮影した撮影画像ではなく、撮像素子31gから出力される画像信号に基づいて表示部30に表示された、測定光学系24の光軸上での正確な前眼部像(正面像)E′(ライブ画像)によって確認することができる。
【0094】
したがって、アライメント中の被検眼Eの状態を明確に観察することができき、例えば、下記(1)〜(4)のような状態を適切に把握することができるという、極めて有利な効果を得ることができる。
【0095】
(1)固視ができていない。
(2)斜位がある。
(3)眼瞼下垂がある。
(4)瞳孔の縮瞳がある。
【0096】
被検眼Eが上記のような状態であると、アライメントがうまくできなくなる場合がある。そのため、これらの状態を的確に把握できることで、アライメントが失敗したときなど、その原因を迅速かつ明確に把握することができる。そして、被検者に固視を促すなど注意喚起をしたり、瞼を手で開いたり、緊張しないように声掛けしたりすることで、これらの不具合を是正し、アライメントを適切に行うことができる。その結果、被検眼Eの特性の測定を、より迅速かつ高精度に行うことができる。
【0097】
また、被検眼Eの特性の測定時にも前眼部像E′(正面像)で操作画面50に表示することで、測定中にも被検眼Eの状態を確認することができ、測定精度を高めたり、測定失敗時の原因を把握したりすることができる。
【0098】
また、本実施の形態では、測定光学系24が、被検者の左眼EL及び右眼ERに対応して一対設けられ、両眼視での測定が可能となっている。また、この一対の測定光学系24の各々が、撮像素子31gと、カメラ40,41を備え、制御部26は、表示部30に左眼EL及び右眼ERの前眼部像EL′,ER′を表示する構成である。この構成により、上記(1)〜(4)に加え、両眼視での測定に特有な以下の(5)〜(7)のような被検眼Eの状態を把握することができる。そのため、両眼視での同時測定におけるアライメント及び測定精度をより向上させることができる。特に、両眼視での測定に重要な固視ができているかの確認ができることで、両眼視での測定精度を、極めて向上させることができる。
【0099】
(5)両眼視ができていない。
(6)抑制がある。
(7)頭部の位置に傾きがある。
【0100】
また、本実施の形態では、表示部30は、前眼部像E′が表示される表示面30aの上に重畳して配置されたタッチパネル式の入力部30bを備えている。制御部26は、入力部30bを介して入力される指示に従って、位置合わせを行っているときに、表示面30aに前眼部像E′を逐次表示する。この構成により、検者はアライメントの操作を行いつつ、アライメントの様子を確認することができる。その結果、検者による操作性が大きく向上するとともに、アライメントが成功したか否かを迅速に確認したり、失敗時の原因を適切に把握したりすることができる。
【0101】
また、本実施の形態では、制御部26は、カメラ40,41で取得された撮影画像に基づいて、被検眼Eの特徴部位を抽出するとともに特徴部位とカメラ40,41との距離を算出し、当該距離と予め決められたカメラ40,41の互いの距離とに基づいて、被検眼Eの3次元の位置情報を算出している。この構成により、被検眼Eの3次元の位置情報をより高精度に取得することができ、アライメント精度を向上させることができる。
【0102】
また、本実施の形態では、測定光学系24を支持するアーム14を備え、駆動機構22は、アーム14に吊り下げられ、測定光学系24は、駆動機構22に吊り下げられている。この構成により、被検者の前方に駆動機構22を位置させる必要がなく、XYZ方向での駆動機構22による測定光学系24のアライメントを可能としつつ、被検者の前方に空間を設けることができ、被検者に圧迫感を与えることのない眼科装置10を提供することができる。
【0103】
以上、本発明の眼科装置を実施の形態に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0104】
例えば、本実施の形態では、眼屈折力を測定するときの動作の一例と、その測定時に表示面30aに表示される操作画面50の例を説明したが、この例に限定されるものではない。角膜形状測定(ケラト測定)、眼圧測定、眼底撮影、OCT撮影などにも適用することができる。また、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、視野検査等の自覚検査にも適用することができる。これらの測定に対応する操作画面がそれぞれ表示部30に表示され、この操作画面に、被検眼Eの前眼部像(正面像)E′が表示されることで、検者は測定のための操作をしながら、アライメントの様子や、被検眼Eの状態を適切に観察することができる。
【0105】
また、本実施の形態では、左眼用測定光学系24Lと右眼用測定光学系24Rを備え、両眼視で被検眼Eの特性を測定しているが、これに限定されるものではない。片眼視の状態で被検眼Eの特性を測定する場合にも適用することができる。よって、表示部30に表示される片眼の前眼部像(正面像)E′を観察しながら、アライメントや特性の測定を、迅速かつ高精度に行うことができる。なお、片眼視の場合であって測定光学系24が1つのみ設けられている場合は、偏向部材25が設けられていない測定光学系24を用いることができる(
図5参照)。