特開2019-216847(P2019-216847A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2019-216847薬剤捕集機構、ジャケット、薬剤捕集方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-216847(P2019-216847A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】薬剤捕集機構、ジャケット、薬剤捕集方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20191129BHJP
【FI】
   A61J1/20 314C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-114744(P2018-114744)
(22)【出願日】2018年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】593129342
【氏名又は名称】株式会社タカゾノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】森下 広
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047AA05
4C047AA27
4C047CC04
4C047DD02
4C047HH03
4C047HH10
(57)【要約】
【課題】薬剤調製者が薬剤に曝露する可能性を減らすことのできる、薬剤捕集機構を提供する。
【解決手段】注射器Sの注射針S1が挿通可能な挿通部B1を有する薬剤容器Bに対して、前記薬剤容器Bの外部から前記挿通部B1を密に覆うように装着可能であり、かつ、前記注射器Sの一部が前記注射針S1の先端側から密に挿通可能であるジャケット本体21と、前記ジャケット本体21を貫通し、前記ジャケット本体21の内部に流体を導入する導入部24と、前記ジャケット本体21を貫通し、前記ジャケット本体21の内部から流体を導出する導出部25と、前記導入部24を介して前記ジャケット本体21の内部に流体を供給する流体供給部3と、前記流体供給部3によって前記ジャケット本体21の内部に供給された流体を、前記導出部25を介して回収する流体回収部4と、を備える薬剤捕集機構1である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器の注射針が挿通可能な挿通部を有する薬剤容器に対して、前記薬剤容器の外部から前記挿通部を密に覆うように装着可能であり、かつ、前記注射器の一部が前記注射針の先端側から密に挿通可能であるジャケット本体と、
前記ジャケット本体を貫通し、前記ジャケット本体の内部に流体を導入する導入部と、
前記ジャケット本体を貫通し、前記ジャケット本体の内部から流体を導出する導出部と、
前記導入部を介して前記ジャケット本体の内部に流体を供給する流体供給部と、
前記流体供給部によって前記ジャケット本体の内部に供給された流体を、前記導出部を介して回収する流体回収部と、を備える薬剤捕集機構。
【請求項2】
注射器の注射針が挿通可能な挿通部を有する薬剤容器に対して、前記薬剤容器の外部から前記挿通部を密に覆うように装着可能であり、かつ、前記注射器の一部が前記注射針の先端側から密に挿通可能であるジャケット本体と、
前記ジャケット本体を貫通し、前記ジャケット本体の内部に流体を導入する導入部と、
前記ジャケット本体を貫通し、前記ジャケット本体の内部から流体を導出する導出部と、
前記導出部を介して前記ジャケット本体の内部の流体を吸引する吸引部と、を備える薬剤捕集機構。
【請求項3】
注射器の注射針が挿通可能な挿通部を有する薬剤容器に対して、前記薬剤容器の外部から前記挿通部を密に覆うように装着可能であり、かつ、前記注射器の一部が前記注射針の先端側から密に挿通可能であるジャケット本体と、
前記ジャケット本体を貫通し、前記ジャケット本体の内部に流体を導入する導入部と、
前記ジャケット本体を貫通し、前記ジャケット本体の内部から流体を導出する導出部と、を備えるジャケット。
【請求項4】
注射器の注射針が挿通可能な挿通部を有する薬剤容器に対して、前記薬剤容器の外部から前記挿通部を密に覆うようにジャケットを装着するとともに、前記ジャケットに対して、前記注射器の一部を前記注射針の先端側から密に挿通する工程と、
前記注射器の前記注射針を、前記薬剤容器の外部から前記挿通部に挿通し、前記薬剤容器と前記注射器との間で薬剤を移動させる工程と、
前記注射器の前記注射針を、前記薬剤容器の前記挿通部から抜くとともに、前記ジャケットの内部に流体を供給しながら、前記ジャケット内部から流体を回収する工程と、を備える薬剤捕集方法。
【請求項5】
注射器の注射針が挿通可能な挿通部を有する薬剤容器に対して、前記薬剤容器の外部から前記挿通部を密に覆うようにジャケットを装着するとともに、前記ジャケットに対して、前記注射器の一部を前記注射針の先端側から密に挿通する工程と、
前記注射器の前記注射針を、前記薬剤容器の外部から前記挿通部に挿通し、前記薬剤容器と前記注射器との間で薬剤を移動させる工程と、
前記注射器の前記注射針を、前記薬剤容器の前記挿通部から抜くとともに、前記ジャケットの内部に流体を導入しながら、前記ジャケット内部から流体を吸引する工程と、を備える薬剤捕集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤調製者が曝露する可能性のある薬剤を捕集するための薬剤捕集機構、薬剤捕集に用いるジャケット、薬剤捕集方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毒性があり、微量であっても長期間に亘り摂取すると人体に悪影響を及ぼす薬剤(一例として抗がん剤)が存在する。このような薬剤が収容された薬剤容器から、注射器を用いて薬剤を取り出す際に、薬剤を含む微粒子であるエアロゾルが発生したり、薬剤容器から注射器を分離した後に薬剤容器の蓋や注射針の外面に薬剤が付着したままの状態となっていたりすることにより、薬剤師等の薬剤調製者が薬剤に曝露する可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−174865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エアロゾルを捕集することに関しては特許文献1に記載がある。しかし、特許文献1には薬剤へのその他対策については記載がされておらず、薬剤調製者が薬剤容器から薬剤を取り出す際における、幅広い曝露対策については改善の余地があった。
【0005】
そこで本発明は、薬剤調製者が薬剤に曝露する可能性を減らすことのできる、薬剤捕集機構、ジャケット、薬剤捕集方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、注射器の注射針が挿通可能な挿通部を有する薬剤容器に対して、前記薬剤容器の外部から前記挿通部を密に覆うように装着可能であり、かつ、前記注射器の一部が前記注射針の先端側から密に挿通可能であるジャケット本体と、前記ジャケット本体を貫通し、前記ジャケット本体の内部に流体を導入する導入部と、前記ジャケット本体を貫通し、前記ジャケット本体の内部から流体を導出する導出部と、前記導入部を介して前記ジャケット本体の内部に流体を供給する流体供給部と、前記流体供給部によって前記ジャケット本体の内部に供給された流体を、前記導出部を介して回収する流体回収部と、を備える薬剤捕集機構である。
【0007】
これによると、薬剤容器の挿通部及び注射針がジャケット本体の内部に配置される。このため、もしエアロゾルが発生しても、エアロゾルをジャケット本体の内部空間にとどめておくことで、ジャケット本体の外部への薬剤の飛散や流出を防止できる。そして、ジャケット本体の内部に存在しており薬剤調製者が曝露する可能性のある薬剤は、ジャケット本体の内部に流体を供給しながら、ジャケット本体の内部から流体を回収することにより、薬剤容器の挿通部や注射針やジャケット本体の内部空間から除去できる。
【0008】
また本発明は、注射器の注射針が挿通可能な挿通部を有する薬剤容器に対して、前記薬剤容器の外部から前記挿通部を密に覆うように装着可能であり、かつ、前記注射器の一部が前記注射針の先端側から密に挿通可能であるジャケット本体と、前記ジャケット本体を貫通し、前記ジャケット本体の内部に流体を導入する導入部と、前記ジャケット本体を貫通し、前記ジャケット本体の内部から流体を導出する導出部と、前記導出部を介して前記ジャケット本体の内部の流体を吸引する吸引部と、を備える薬剤捕集機構である。
【0009】
これによると、薬剤容器の挿通部及び注射針がジャケット本体の内部に配置される。このため、もしエアロゾルが発生しても、エアロゾルをジャケット本体の内部空間にとどめておくことで、ジャケット本体の外部への薬剤の飛散や流出を防止できる。そして、ジャケット本体の内部に存在しており薬剤調製者が曝露する可能性のある薬剤は、ジャケット本体の内部に流体を導入しながら、ジャケット本体の内部の流体を吸引することにより、薬剤容器の挿通部や注射針やジャケット本体の内部空間から除去できる。
【0010】
また、本発明は、注射器の注射針が挿通可能な挿通部を有する薬剤容器に対して、前記薬剤容器の外部から前記挿通部を密に覆うように装着可能であり、かつ、前記注射器の一部が前記注射針の先端側から密に挿通可能であるジャケット本体と、前記ジャケット本体を貫通し、前記ジャケット本体の内部に流体を導入する導入部と、前記ジャケット本体を貫通し、前記ジャケット本体の内部から流体を導出する導出部と、を備えるジャケットである。
【0011】
これによると、薬剤容器の挿通部及び注射針がジャケットの内部に配置される。このため、もしエアロゾルが発生しても、エアロゾルをジャケットの内部空間にとどめておくことで、ジャケットの外部への薬剤の飛散や流出を防止できる。そして、ジャケットの内部に存在しており薬剤調製者が曝露する可能性のある薬剤は、流体を導入、導出することにより、薬剤容器の挿通部や注射針やジャケット本体の内部空間から除去できる。
【0012】
また、本発明は、注射器の注射針が挿通可能な挿通部を有する薬剤容器に対して、前記薬剤容器の外部から前記挿通部を密に覆うようにジャケットを装着するとともに、前記ジャケットに対して、前記注射器の一部を前記注射針の先端側から密に挿通する工程と、前記注射器の前記注射針を、前記薬剤容器の外部から前記挿通部に挿通し、前記薬剤容器と前記注射器との間で薬剤を移動させる工程と、前記注射器の前記注射針を、前記薬剤容器の前記挿通部から抜くとともに、前記ジャケットの内部に流体を供給しながら、前記ジャケット内部から流体を回収する工程と、を備える薬剤捕集方法である。
【0013】
これによると、薬剤容器の挿通部及び注射針がジャケットの内部に配置される。このため、もしエアロゾルが発生しても、エアロゾルをジャケットの内部空間にとどめておくことで、ジャケットの外部への薬剤の飛散や流出を防止できる。そして、ジャケットの内部に存在しており薬剤調製者が曝露する可能性のある薬剤は、ジャケットの内部に流体を供給しながら、ジャケットの内部から流体を回収することにより、薬剤容器の挿通部や注射針やジャケット本体の内部空間から除去できる。
【0014】
また、本発明は、注射器の注射針が挿通可能な挿通部を有する薬剤容器に対して、前記薬剤容器の外部から前記挿通部を密に覆うようにジャケットを装着するとともに、前記ジャケットに対して、前記注射器の一部を前記注射針の先端側から密に挿通する工程と、前記注射器の前記注射針を、前記薬剤容器の外部から前記挿通部に挿通し、前記薬剤容器と前記注射器との間で薬剤を移動させる工程と、前記注射器の前記注射針を、前記薬剤容器の前記挿通部から抜くとともに、前記ジャケットの内部に流体を導入しながら、前記ジャケット内部から流体を吸引する工程と、を備える薬剤捕集方法である。
【0015】
これによると、薬剤容器の挿通部及び注射針がジャケットの内部に配置される。このため、もしエアロゾルが発生しても、エアロゾルをジャケットの内部空間にとどめておくことで、ジャケットの外部への薬剤の飛散や流出を防止できる。そして、ジャケットの内部に存在しており薬剤調製者が曝露する可能性のある薬剤は、ジャケットの内部に流体を導入しながら、ジャケットの内部を吸引することにより、薬剤容器の挿通部や注射針やジャケット本体の内部空間から除去できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、エアロゾルをジャケット本体(ジャケット)の内部空間にとどめておくことで、ジャケット本体(ジャケット)の外部への薬剤の飛散や流出を防止できる。そして、ジャケット本体(ジャケット)の内部空間に存在しており薬剤調製者が曝露する可能性のある薬剤を薬剤容器の挿通部や注射針やジャケット本体(ジャケット)の内部空間から除去できる。よって、薬剤調製者が薬剤に曝露する可能性を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る薬剤捕集機構の構成を示す、部分断面視の概略図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る薬剤捕集機構の構成を示す、部分断面視の概略図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る薬剤捕集機構を一部変更した構成を示し、(a)は要部の部分断面視の概略図であり、(b)は(a)のX−X矢視の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
−第1実施形態−
次に、本発明につき、二つの実施形態を取り上げて説明を行う。まず、第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態の薬剤捕集機構1を示す概略図である。
【0019】
本実施形態の薬剤捕集機構1は、注射器Sの注射針S1が挿通可能な挿通部B1を有する薬剤容器Bに対し、注射針S1を、薬剤容器Bの外部から挿通部B1に挿通し、薬剤容器Bと注射器Sとの間で薬剤を移動させる(つまり、薬剤を薬剤容器Bから注射器Sに注射針S1を介して吸い出す、または、薬剤を注射器Sから薬剤容器Bに注射針S1を介して吐出する)際に用いられる。薬剤容器Bは例えばバイアル瓶である。挿通部B1は、薬剤容器Bがバイアル瓶である場合、例えば薬剤容器Bに液密かつ気密に取り付けられたゴム等の樹脂製の蓋である。この蓋は、例えば、薬剤容器Bの本体がガラス製や樹脂製であるのに対し、外周部が金属板や樹脂板のかしめにより取り付けられている。
【0020】
ここで、本実施形態の対象となる薬剤としては種々の薬剤が該当する。特に、毒性があり、微量であっても長期間に亘り摂取すると人体に悪影響を及ぼす薬剤に対して本実施形態の薬剤捕集機構1は有効である。このような薬剤の一例として抗がん剤が挙げられる。抗がん剤の場合、発がん性があると報告されているものが多く存在する。
【0021】
注射器Sによって薬剤を移動させることから、薬剤容器Bに収容されている薬剤は、少なくとも注射器Sに移動させる時点において液状である必要がある。薬剤は当初から液状とされていてもよいし、固体状(例えば粉末状や顆粒状、繊維状)の薬剤が収容された薬剤容器Bに精製水等の溶媒を注射器Sによって注入することで溶解して液状の溶液としてもよい。
【0022】
本実施形態の薬剤捕集機構1は、主に、ジャケット2、流体供給部3、流体回収部4を備える。ジャケット2は、薬剤容器Bと注射器Sとを共に装着できるもの(アダプター)であって、ジャケット本体21、導入部24、導出部25を備える。
【0023】
ジャケット本体21は、筒状(例えば円筒状)の部分であって内部に空間を有している。このジャケット本体21は、薬剤容器Bに対して、薬剤容器Bの外部から挿通部B1を密(少なくとも液密であって、本実施形態では液密かつ気密)に覆うように装着可能である。ジャケット本体21は、薬剤容器Bに接合される薬剤容器接合部22を備える。本実施形態の薬剤容器接合部22は、ジャケット本体21の図示下端部に設けられており、内周にパッキンが突出している。このパッキンを挿通部B1の外方にて薬剤容器Bに密着させることで、ジャケット本体21に薬剤容器Bを装着する。
【0024】
また、ジャケット本体21は、注射器Sの一部が注射針S1の先端側から密に挿通可能である。ジャケット本体21は、注射器Sに接合される注射器接合部23を備える。本実施形態の注射器接合部23は、ジャケット本体21の図示上端部に設けられており、内周にパッキンが突出している。このパッキンを注射器Sの筒状部分の外周面に密着させることで、ジャケット本体21に注射器Sを装着する。ジャケット本体21への装着状態において、注射器Sは薬剤容器Bに接近離反する方向に相対移動可能とされている。本実施形態では、注射器Sは軸方向(矢印で図示した上下方向)に移動可能とされている。このため、薬剤容器接合部22を薬剤容器Bに密着させ、ジャケット本体21に注射器Sを装着した状態のまま、注射針S1を、薬剤容器Bの外部から内部に挿通部B1を介して挿通し、薬剤を薬剤容器Bから注射器Sに吸い出す作業を行うことができる。なお、ジャケット本体21は、注射器Sの移動方向に伸縮自在な蛇腹形状などに形成されていてもよい。これにより、注射器Sを軸方向に移動させたとしても、注射器接合部23と注射器Sとが密着した状態を維持できる。
【0025】
このように構成されたジャケット本体21により、薬剤容器Bの挿通部B1及び注射針S1がジャケット本体21の内部空間に配置される。この配置はジャケット本体21の外部に対して密(少なくとも液密であって、本実施形態では液密かつ気密)な状態でなされる。このため、もしエアロゾルが発生しても、エアロゾルをジャケット2の内部空間にとどめられ、ジャケット本体21の外部への薬剤の飛散や流出を防止できる。また、薬剤容器Bから注射器Sを分離した後に薬剤容器Bの蓋や注射針S1の外面に薬剤が付着したままの状態となっていても、この薬剤はジャケット2の内部空間にとどめられ、後述する流体供給部3による流体の供給前において、ジャケット本体21の外部に流出することが防止されている。
【0026】
導入部24は、ジャケット本体21に貫通する部分である。本実施形態の導入部24は、ジャケット本体21を径方向に貫通し、ジャケット本体21の内部空間に連通する短いパイプである。ただし、形態は限定されるものではない。この導入部24を介してジャケット本体21の内部に流体を導入することができる。本実施形態では、ジャケット本体21の下部に1箇所の導入部24が設けられている。ただし、これに限定されるものではない。
【0027】
導出部25もまた、ジャケット本体21を貫通する部分である。本実施形態の導出部25は、ジャケット本体21を径方向に貫通し、ジャケット本体21の内部空間に連通する短いパイプである。ただし、形態は限定されるものではない。この導出部25を介してジャケット本体21の内部から流体を導出することができる。本実施形態では、図示上下に2箇所の導出部25,25が設けられている。ただし、これに限定されるものではない。
【0028】
流体供給部3は、ジャケット本体21の内部に流体を供給するために設けられており、導入部24に接続されている。図示していないが、流体供給部3は流体を保持するタンクと、タンクの流体F1(図1参照)をジャケット本体21に移動させるポンプ等の流体移動手段を有している。本実施形態で用いる流体は精製水である。流体は、ジャケット2の内部に位置する薬剤容器B及び注射器Sのうち流体に接する部分から、例えば洗浄により、薬剤を除去できるものであれば特に限定されない。例えば、流体として空気等の気体を用い、流体供給部3から供給された流体でジャケット2の内部に存在する薬剤を吹き飛ばして導出部25から導出することもできる。
【0029】
流体回収部4は、流体供給部3によってジャケット本体21の内部に供給された流体(ジャケット本体21の内部にとどまる薬剤を含む)を回収するために設けられており、導出部25に接続されている。本実施形態の流体回収部4は、流体を貯留するタンクを有している。このタンクは、流体供給部3による流体の供給量に対して余裕を持った容量を有している。
【0030】
ジャケット本体21と流体回収部4との間には回収パイプ6が設けられている。本実施形態では導出部25が2箇所設けられているので、各導出部25に回収パイプ6が設けられている。薬剤容器B側(図示下方)の導出部25に接続される回収パイプ6Aと、注射器S側(図示上方)の導出部25に接続される回収パイプ6Bとが設けられる。また本実施形態では、回収パイプ6Aに開閉弁7が設けられており、必要によりこの開閉弁7を閉鎖することができる。流体供給部3により流体を供給するときには開閉弁7を閉鎖することで、ジャケット本体21の内部が供給された流体で充満される。これとともに、流体は回収パイプ6Bを経由して流体回収部4に回収される。また、ジャケット本体21の図示下部に設けられた導入部24から導入された流体を、ジャケット本体21の内部で下方から上方に流動させた上でジャケット本体21の図示下部に設けられた導出部25から導出することができる。このように、ジャケット本体21の内部を供給された流体で充満させることにより、薬剤が付着した薬剤容器Bの蓋や注射器Sの外面に流体に接触させることができるので、薬剤の除去を効果的に行うことができる。ジャケット本体21の内部で下方から上方に流動するような流体の流れを形成することにより、薬剤の除去を効果的に行うことができる。なお、開閉弁7は図示上方に位置する回収パイプ6に設けることもできる。
【0031】
−第2実施形態−
次に、第2実施形態について説明する。図2は、第2実施形態の薬剤捕集機構1を示す概略図である。なお、第1実施形態と共通する部分については重複する説明は行わず、図2に示す符号についても共通の符号を用いている。
【0032】
本実施形態の薬剤捕集機構1は、第1実施形態のような流体供給部3は備えないが、吸引部5を備えている。吸引部5は、導出部25を介してジャケット本体21の内部の流体を吸引する部分である。吸引部5は、吸引力を生じさせるブロワーやポンプを備えることができる。
【0033】
吸引部5により吸引される流体F2は、本実施形態では、ジャケット本体21の内部に存在する空気のことであるが、場合によっては精製水等の液体であってもよい。流体として液体を用いる場合は、吸引に先立って、ジャケット本体21の内部に流体を満たしておく必要がある。
【0034】
吸引部5により空気が吸引される場合、導入部24は、外気を取り入れることができるように構成される。この場合、外気中の塵等の混入を避けるため、導入部24をフィルター26に接続しておくことが好ましい。
【0035】
吸引後の流体は、流体が空気である場合は、タンクや袋等の貯留部8に一時的に貯留したり、フィルターを通して薬剤を回収処理するか、薬剤の種類に応じた無害化処理を行った後、処理後の空気を外部へ放出したりできる。なお、流体が液体である場合は、第1実施形態の流体回収部4と同様のものを備えることができる。
【0036】
−薬剤捕集方法−
次に、薬剤捕集方法について説明する。以下では、第1実施形態または第2実施形態の薬剤捕集機構1を用いた例で説明する。しかしこの方法は、必ずしも第1実施形態または第2実施形態の薬剤捕集機構1を用いなくても実施可能である。以下の工程の実施主体は、薬剤師等の薬剤調製者である。
【0037】
まず、薬剤容器Bに対して、薬剤容器Bの外部から挿通部B1を密に覆うようにジャケット2を装着する。このとき、薬剤容器接合部22を薬剤容器Bに密着させる。これとともに、ジャケット2に対して、注射器Sの一部(例えば筒状部分)を注射針S1の先端側から密に挿通する工程を実施する。このとき、注射器接合部23を注射針S1に密着させる。なお、薬剤容器Bに対するジャケット2の装着と、ジャケット2に対する注射器Sの一部の挿通とにつき、実施の前後は問わない。
【0038】
次に、注射器Sの注射針S1を、薬剤容器Bの外部から挿通部B1に挿通し、薬剤容器Bと注射器Sとの間で薬剤を移動させる(吸い出す)工程を実施する。
【0039】
次に、例えば第1実施形態の薬剤捕集機構1を用いた際には、注射針S1を薬剤容器Bの挿通部B1から抜く。これとともに、ジャケット2の内部に流体を供給しながら、ジャケット2の内部から流体を回収する工程を実施する。なお、ジャケット2の内部に流体を供給することと、ジャケット2の内部から流体を回収することは、同時に行ってもよいし、前後して行ってもよい。さらに、注射針S1を抜くことと、ジャケット2の内部に流体を供給しながらジャケット2の内部から流体を回収することは、同時に行ってもよいし、前後して行ってもよい。
【0040】
また、例えば第2実施形態の薬剤捕集機構1を用いた際には、注射針S1を、前記薬剤容器Bの前記挿通部B1から抜く。これとともに、ジャケットの内部に流体を導入しながら、ジャケット2の内部から流体を吸引する工程を実施する。なお、ジャケット2の内部に流体を導入することと、ジャケット2の内部から流体を吸引することは、同時に行ってもよいし、前後して行ってもよい。さらに、注射針S1を抜くことと、ジャケット2の内部から流体を吸引することは、同時に行ってもよいし、前後して行ってもよい。
【0041】
−実施形態の変更可能性−
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0042】
例えば、前記各実施形態で対象とした薬剤は、毒性があり、微量であっても長期間に亘り摂取すると人体に悪影響を及ぼす薬剤(危険薬剤)であった。しかし、このような危険薬剤ではない薬剤に対して本発明を適用することもできる。
【0043】
また、前記各実施形態で対象とした薬剤容器Bはバイアル瓶であったが、例えば、頭部がカットされて開封状態とされたアンプル瓶であってもよく、薬剤容器Bの種類は限定されない。アンプル瓶の場合、頭部がカットされてできた開口が挿通部に該当する。
【0044】
また、前記各実施形態のジャケット本体21は、注射器Sの筒状部分の外周面に密着するように構成されていた。しかしこれに限られず、注射針S1の外周面に密着するよう構成されていてもよい。
【0045】
また、第1実施形態を一部変更した構成を図3(a)(b)に示す。このように、薬剤容器接合部22におけるパッキンを上方に露出させた上で、パッキンの上端を導出部25と一致させた状態とすることもできる。薬剤容器接合部22におけるパッキンは、図3(b)に示すように、ジャケット2の内周面から間欠的に突出した複数のストッパー27によって押さえられ、薬剤容器Bの蓋の上面は導出部25の内側下面の高さと一致するようになっている。これによると、薬剤容器Bの蓋の上面と導出部25の内側下面の高さが一致しているので、導出部25にジャケット本体21の内部空間から流体を導出する場合に、ジャケット本体21の内部空間に流体が残留することを抑制できる。また、複数のストッパー27が導出部25のジャケット本体21への開口を塞がない位置にあるため、この点でも流体の残留を抑制できる。なお、図示した例では導入部24に対して導出部25が低い位置に設けられているが、両者の高さを一致させてもよい。
【0046】
また、薬剤容器接合部22または注射器接合部23につき、径寸法を可変とすることもできる。
【0047】
また、ジャケット2に薬剤を検知するセンサを設けておき、流体によるジャケット2からの薬剤除去が確実に行われたか否かを判断するよう構成することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 薬剤捕集機構
2 ジャケット
21 ジャケット本体
24 導入部
25 導出部
3 流体供給部
4 流体回収部
5 吸引部
B 薬剤容器
B1 挿通部
S 注射器
S1 注射針
図1
図2
図3