【解決手段】MRI装置において被検者の頭部を撮像するために用いられる傾斜磁場コイル装置400は、MRI装置の撮像領域に傾斜磁場を形成する複数のコイルと、円筒形状を有し複数のコイルを保持する誘電体とを備える。誘電体における円筒形状の長手方向の少なくとも一方の端部には、長手方向の中央部に比べて半径方向の厚みが薄くされた薄肉部450が形成される。複数のコイルの少なくとも一部は薄肉部に保持される。
前記中央部における円筒断面中心を原点とし、第1の半径方向をX軸、前記X軸に直交する第2の半径方向をY軸、前記X軸および前記Y軸に直交する前記長手方向をZ軸とした場合、
前記X軸、前記Y軸、前記Z軸の各方向において、前記傾斜磁場の強度は、前記原点に対して点対称となるように形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の傾斜磁場コイル装置。
前記傾斜磁場コイル装置は、撮像時に前記MRI装置に追加的に配置される挿入型傾斜磁場コイル装置であり、前記傾斜磁場コイル装置が前記MRI装置に適用された状態において、前記長手方向が水平方向となるように配置され、
前記誘電体の円筒断面における水平方向の半径方向をX軸、鉛直方向をY軸、前記長手方向をZ軸とすると、前記溝部は前記X軸の方向に形成される、請求項2に記載の傾斜磁場コイル装置。
前記中央部における円筒断面中心に前記被検者の頭部が配置された場合に、前記誘電体の一方の端部の前記薄肉部は、前記被検者の肩部を収容可能な位置に形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の傾斜磁場コイル装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
傾斜磁場の直線性(線形性)が低い場合、得られた画像の歪みが大きくなる。そのため、撮像対象空間においては、十分に高い傾斜磁場の直線性が必要となる。傾斜磁場コイルは、一般的に円筒形状をしているが、円筒形状の軸方向の傾斜磁場については、円筒の長さが長いほど線形性が向上することが知られている。
【0008】
しかしながら、頭部撮像のために、頭部が入るくらいの直径を有する傾斜磁場コイルを用いた場合には、被検者の肩と傾斜磁場コイルとが干渉してしまうため、円筒の長さが制限されることになる。
【0009】
特開平8−56934号公報(特許文献1)には、このような課題に対して、円筒形状の傾斜磁場コイルの一方端における被検者の肩に対応する部分に切欠きを形成することで、傾斜磁場コイル全体の長さを確保しつつ、被検者の肩との干渉を回避する構成が開示されている。
【0010】
しかしながら、このような切欠部を形成すると、当該切欠部分での磁場が不均一となりやすくなる。さらには、当該切欠部分を避けるように内部のコイルを配置することが必要であるため、切欠部分近傍の特定の箇所にコイルの配線が集中してしまい、局部的な発熱が生じやすくなる。そのため、コイルに供給する電流を制限したり、追加的な冷却機構を設けることが必要となる可能性がある。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、MRI装置における頭部撮像用に用いられる傾斜磁場コイル装置について、空間分解能と線形性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による傾斜磁場コイル装置は、磁気共鳴撮像(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置において被検者の頭部の撮像に用いられる。傾斜磁場コイル装置は、MRI装置の撮像領域に傾斜磁場を形成する複数のコイルと、円筒形状を有し、上記の複数のコイルを保持する誘電体とを備える。誘電体における円筒形状の長手方向の少なくとも一方の端部には、長手方向の中央部に比べて半径方向の厚みが薄くされた薄肉部が形成される。複数のコイルの少なくとも一部は薄肉部に保持されている。
【0013】
好ましくは、薄肉部は、誘電体の円筒断面の中心に対して対称な溝部により形成される。
【0014】
好ましくは、薄肉部は、誘電体の両端部に、円筒形状の長手方向の中央部に対して対称に形成される。
【0015】
好ましくは、円筒形状の長手方向の中央部における円筒断面中心を原点とし、第1の半径方向をX軸、X軸に直交する第2の半径方向をY軸、X軸およびY軸に直交する長手方向をZ軸とした場合、傾斜磁場の強度は、X軸、Y軸、Z軸の各方向において、原点に対して点対称となるように形成される。
【0016】
好ましくは、傾斜磁場コイル装置は、撮像時にMRI装置に追加的に配置される挿入型傾斜磁場コイル装置であり、傾斜磁場コイル装置がMRI装置に適用された状態において、長手方向が水平方向となるように配置される。誘電体の円筒断面における水平方向の半径方向をX軸、鉛直方向をY軸、長手方向をZ軸とすると、溝部はX軸の方向に形成される。
【0017】
好ましくは、円筒形状の長手方向の中央部における円筒断面中心に被検者の頭部が配置された場合に、誘電体の一方の端部の薄肉部は、被検者の肩部を収容可能な位置に形成される。
【0018】
好ましくは、円筒形状の長手方向の中央部における誘電体の内面の直径は、被検者の頭部の幅よりも大きく、かつ、被検者の肩幅よりも小さい。薄肉部における誘電体の内面の直径は、被検者の肩幅よりも大きい。
【0019】
好ましくは、円筒形状の長手方向の中央部における誘電体の内面の直径は、350mm〜400mmである。薄肉部における誘電体の内面の直径は、500mm〜600mmである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、円筒形状の傾斜磁場コイル装置の端部に薄肉部を設けることによって、傾斜磁場コイル装置内に頭部が挿入された場合に、傾斜磁場コイル装置が人体の肩部分と干渉することを回避しつつ、円筒形状の長さを長くすることができる。また、傾斜磁場を形成する複数のコイルの少なくとも一部のコイルが当該薄肉部に保持されるため、発生する磁場の線形性が確保できるとともに、コイルの線密度が高くなることによる発熱を抑制することができる。これにより、磁場強度を高めることによる空間分解能を向上させるとともに、傾斜磁場の線形性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0023】
(MRI装置の全体構成)
図1は、磁気共鳴イメージング(MRI)装置10の本体装置100の全体概略図である。
図1を参照して、MRI装置10は、いわゆるトンネル型のMRI装置である。本体装置100は、超電導マグネット110と、傾斜磁場コイル120と、RF(Radio Frequency)コイル130とを含む。超電導マグネット110、傾斜磁場コイル120、RFコイル130は、概略的には円筒型の形状を有している。
【0024】
被検者170は、検査用テーブル160上に横たえられた状態で、円筒型の本体装置100の空洞部(トンネル)内に挿入される。トンネル内に発生する磁場を用いて、被検者170の検査対象部位の断面画像が撮像される。
【0025】
図2は、MRI装置10の構成をより詳細に説明するためのブロック図である。
図2を参照して、MRI装置10は、本体装置100に加えて、制御装置300と、表示部310と、入力部320とを備える。
【0026】
本体装置100は、上述した超電導マグネット110、傾斜磁場コイル120、RFコイル130に加えて、シムコイル150をさらに含む。また、超電導マグネット110は、超電導材料(たとえば、ニオブ系金属超電導材料など)で形成された超電導コイル115を含む。超電導コイル115、傾斜磁場コイル120、およびシムコイル150が励磁されると、トンネル内に磁場が発生する。なお、
図2には示されていないが、超電導状態を形成するために、超電導コイル115を冷却するための冷却装置が設けられる。
【0027】
超電導コイル115は、トンネル内に空間的および時間的に均一な静磁場を生成するためのコイルである。超電導コイル115で生じる静磁場によって、被検者170の検査対象部位の水素原子核の持つ核スピンを一定方向に整列させることができる。
【0028】
シムコイル150は、超電導コイル115によって生成される静磁場を補正するための磁場を生成するためのコイルである。シムコイル150は、たとえば常電導材料あるいは超電導材料で形成される。
【0029】
MRI装置10における静磁場の磁場均一性は、標準的には撮像領域内で10ppm以下に抑える必要がある。しかしながら、超電導コイル115により生成される静磁場は、MRI装置10に含まれる各機器や、当該装置が設置される建物の鉄筋等の構造物の影響等により少なからず歪みが生じてしまうため、一般的には、超電導コイル115のみでは均一した静磁場を得ることは困難である。そのため、たとえばシムコイル150を用いて、これらの影響を相殺するような磁場を形成することによって、トンネル内に発生する静磁場を均一化する。
【0030】
傾斜磁場コイル120(または勾配磁場コイル)は、空間的に線形に変化する傾斜磁場を形成するためのコイルである。この傾斜磁場によって、検査対象部位の水素原子核が出す信号の周波数を空間的に線形に変化させることができる。したがって、RFコイル130によって受信される受信信号に対して位置情報を付加することができる。なお、本実施の形態においては、被検者170の頭部を撮像する場合には、挿入型の傾斜磁場コイル装置400が用いられる。傾斜磁場コイル装置400の詳細については後述する。
【0031】
RFコイル130は、被検者170に対して所定の周波数のRFパルス信号を送信する。検査対象部位に対してRFパルス信号が照射されると、RFパルスにより与えられるエネルギによって検査対象部位の水素原子核が励起される。そして、RFパルス信号が停止されると水素原子核が励起状態から復帰する。RFコイル130は、この励起状態から復帰する間に観測される磁気共鳴信号を受信する。なお、
図2においては、RFコイル130により、RFパルス信号の送信、および、磁気共鳴信号の受信を行なわれるものとしているが、送信用コイルと受信用コイルとが分離された構成としてもよい。
【0032】
上記の傾斜磁場コイル120によって生成される傾斜磁場によって、RFコイル130で受信される各位置からの受信信号はその位相が異なったものとなる。そのため、印加する傾斜磁場とRFパルス信号の周波数とを適切に調整することで、得られた受信信号から当該信号を放出した水素原子核の位置を特定することができる。この受信信号を平面的あるいは三次元的に配列することによって、検査対象部位を画像化することができる。
【0033】
制御装置300は、入力部320から入力されるユーザからの情報を受ける。ユーザからの情報には、たとえば使用する磁場強度の情報、被検者170に関する情報などが含まれる。
【0034】
制御装置300は、傾斜磁場コイル120およびシムコイル150についての励磁電流を調整する。また、制御装置300は、RFコイル130に対してRFパルス信号を出力するとともに、当該RFパルス信号に対してRFコイル130で受信された受信信号を受ける。制御装置300は、この受信信号に基づいて、検査対象部位の断面を画像化し、表示部310に表示する。
【0035】
(傾斜磁場コイルの説明)
図3は、全身撮像に用いられる傾斜磁場コイル120の一例を示す図である。
図3に示されるように、被検者170がMRI装置10のトンネル内に水平に位置された状態において、円筒形状のトンネルにおける水平方向の半径方向をX軸とし、鉛直方向の半径方向をY軸とし、円筒の長手方向をZ軸とする。言い換えれば、トンネルの軸方向がZ軸、被検者の正面側がY軸、被検者の側面側がX軸とされる。傾斜磁場コイル120は、X軸方向に傾斜磁場を形成するX軸コイル122と、Y軸方向に傾斜磁場を形成するY軸コイル124と、Z軸方向に傾斜磁場を形成するZ軸コイル126とで構成される。
【0036】
なお、MRI装置10の円筒形状のトンネルの軸方向が水平方向でない場合(たとえば、軸方向が鉛直方向または斜めの方向)においても、トンネルの軸方向がZ軸、被検者の正面側がY軸、被検者の側面側がX軸とされる。
【0037】
X軸コイル122は、被検者170を挟んでX軸方向に対向する二対の鞍型コイルを含む。これらのコイルに供給する電流を調整することによって、
図4(A)に示すような、X軸方向に線形に強度が変化する傾斜磁場を形成することができる。ここで、
図4における矢印の大きさは、発生する磁場強度の大きさを示している。たとえば、
図5に示されるように、トンネルの長手方向の中央部における円筒断面中心を原点とした場合、
図5における被検者170の左側(X軸の正方向)のコイルと、被検者170の右側(X軸の負方向)のコイルとに、互いに逆極性の磁場が生じるような電流をそれぞれ供給することによって、原点を中心としてX軸方向に点対称(YZ平面に面対称)となる強度を有する傾斜磁場を形成することができる。
【0038】
Y軸コイル124は、被検者170を挟んでY軸方向(鉛直方向)に対向する二対の鞍型コイルを含む。これらのコイルに供給する電流を調整することによって、
図4(B)に示すような、Y軸方向に線形に強度が変化する傾斜磁場を形成することができる。たとえば、Y軸コイル124についても、
図6に示されるように、被検者170正面側(Y軸の正方向)のコイルと、背面側(Y軸の負方向)のコイルとに、互いに逆極性の磁場が生じるような電流をそれぞれ供給することによって、原点を中心としてY軸方向に点対称(ZX平面に面対称)となる強度を有する傾斜磁場を形成することができる。
【0039】
Z軸コイル126は、Z軸方向に間隔を隔てて配置された一対の円形コイルを含む。これらのコイルに供給する電流を調整することによって、
図4(C)に示すような、Z軸方向に線形に強度が変化する傾斜磁場を形成することができる。たとえば、
図7に示されるように、各コイルに互いに逆極性の磁場が生じるような電流をそれぞれ供給することによって、原点を中心としてZ軸方向に点対称(XY平面に面対称)となる強度を有する傾斜磁場を形成することができる。
【0040】
一般的に、コイルの中心に形成される傾斜磁場の強度は、コイルに供給する電流の大きさ、および、コイル中心までの距離(すなわち、コイルの半径)に依存することが知られている。
図3に示したような全身撮像用の傾斜磁場コイル120においては、円筒内部に全身が入るように、比較的大きなコイル径に設計される。
【0041】
頭部の撮像の場合には、撮像領域が狭いため、鮮明な画像を得るためにはより高強度でかつ線形性が確保された傾斜磁場の方が有利になる。これを実現するために、
図2に示したような、全身撮像用の傾斜磁場コイル120よりもコイル径が小さい、挿入型の傾斜磁場コイル装置400が用いられる。
【0042】
(頭部用傾斜磁場コイルの説明)
図8は、本実施の形態に用いられる頭部撮像用の傾斜磁場コイル装置400の概略構造を説明するための図である。
図8を参照して、傾斜磁場コイル装置400は、円筒型の形状を有しており、シールドコイル420と、プライマリコイル430と、これらのコイルを支持する誘電体410とを含む。
【0043】
プライマリコイル430は、基本的には、
図3等で説明した全身撮像用の傾斜磁場コイル120と同様に、X軸,Y軸,Z軸の各々に傾斜磁場を形成するためのコイルを有している。
【0044】
シールドコイル420は、プライマリコイル430よりも円筒の外周側に配置されており、プライマリコイル430で発生した磁場の外部への漏洩を防止する。
【0045】
上述のように、発生する磁場の強度を高めるためには、傾斜磁場コイル装置400の内径をできるだけ小さくすることが望ましい。また、傾斜磁場の線形性を得るためには、円筒の長さをある程度長くする必要がある。
【0046】
しかしながら、磁場強度を高めるために、コイル径を頭部の大きさに適した寸法とすると、被検者の肩部にコイルが干渉してしまうことになる。ここで、傾斜磁場コイル装置により発生する磁場は、磁場によって生じるローレンツ力に起因する装置の歪みの影響や、発生する磁場の状態確認の容易さなどから、傾斜磁場コイル装置について対称となることが必要とされる。そのため、コイルの対称性を確保した場合、被検者の肩部との干渉のために円筒の長さが制限されることになる。
【0047】
このように、頭部用傾斜磁場コイルにおいては、傾斜磁場の強度、線形性、および対称性の特性を調和させる必要がある。
【0048】
図9は、傾斜磁場コイル装置のいくつかの例を説明するための図である。
図9(A)は、
図2で示したような全身撮像用の傾斜磁場コイル120である。この全身撮像用の傾斜磁場コイル120は、円筒長さが比較的長いため傾斜磁場の線形性は優れており、また、傾斜磁場コイル120の中心に被検者170の頭部を配置した場合のコイルの対称性も確保できる。ただし、コイル内径が大きいため、発生する磁場の強度を大きくできないという欠点を有している。
【0049】
図9(B)の傾斜磁場コイル装置400Aは、コイル内径を頭部に適応した大きさに縮小したタイプ(短縮型)である。傾斜磁場コイル装置400Aは、発生する磁場の強度は大きくできる。一方で、磁場の対称性を確保するために、円筒の長さが制限されてしまうため、傾斜磁場の線形性が十分に確保できない。
【0050】
図9(C)の傾斜磁場コイル装置400Bは、傾斜磁場の線形性を高めるために、円筒の長さを上方側に延長したものである(非対称型)。しかしながら、この場合には、撮像対象である頭部が、傾斜磁場コイル装置400Bの中心に配置できないため、コイルの対称性が確保できない。
【0051】
図9(D)は、特開平8−56934号公報(特許文献1)で開示されたタイプの傾斜磁場コイル装置400Cであり、コイルの内径を小さくし、傾斜磁場の線形性を高めるために円筒の長さを延長し、さらに、肩部と干渉する部分を切除した構成を有している(切欠型)。
【0052】
図10は、
図9(D)の傾斜磁場コイル装置400Cを別の角度から示した概略図である。傾斜磁場コイル装置400Cは、円筒形状の一方の端部に、肩部との干渉を回避するための切欠部450Cが形成されている。この切欠部450Cにより、肩部との干渉は回避されるが、一方の端部のみに切欠部450Cが形成されているため、円筒の長さ方向の磁場の対称性が確保されにくくなる。
【0053】
また、
図11には、傾斜磁場コイル装置400Cにおけるプライマリコイル430Cのコイルパターンの例を示しているが、切欠部450Cを迂回するために、切欠部450C付近においてコイルの線密度が高くなる部分が生じる。このような局所的に線密度が高くなる部分においては、他の部分に比べて発熱が大きくなるため、傾斜磁場コイル装置400Cの供給する電流を制限したり、あるいは、冷却機構を設けたりする必要が生じ得る。
【0054】
本実施の形態に係る傾斜磁場コイル装置400においては、
図9(E)および
図12に示すように、被検者の肩部と干渉する部分を完全に除去するのではなく、円筒内側の誘電体の一部を溝状に除去して薄肉化した薄肉部450を形成するとともに、当該薄肉部450に傾斜磁場コイルの少なくとも一部が保持されるような構成とする(部分切欠型)。
【0055】
なお、傾斜磁場コイル装置400において、薄肉部450における内径をd1とし、薄肉部450以外の部分(たとえば、円筒形状の長手方向の中央部)の内径をd2とすると、d1=350mm〜400mm、d2=500mm〜600mmとすることが好ましい。また、対称性を確保するために、傾斜磁場コイル装置の双方の端部に薄肉部を形成することが好ましい。
【0056】
図13は、傾斜磁場コイル装置400の薄肉部450のある位置における、円筒断面を示す図である。
図13に示すように、薄肉部450は、誘電体の内面に、断面中心に対して対称な位置に溝部を形成することによって形成される。そして、その薄くなった誘電体の部分に傾斜磁場コイルのX軸コイル430Xが配置される。このような構成とすることによって、肩部との干渉を抑制しつつ、コイルの対称性および円筒の長さを確保することができる。これにより、傾斜磁場の強度および線形性を確保するとともに、コイルパターンの局所的な集中を防止することができる。
【0057】
図14は、
図9で示した傾斜磁場コイル装置の例について、頭部撮像に使用する場合の「最大傾斜磁場強度」,「線形性」,「発熱性」の観点でその特性を比較した図である。
図14中において、「A」は「優れている」、「B」は「普通」、「C」は「不適」を意味している。
【0058】
最大傾斜磁場強度については、全身用のものを除けば、いずれも小径コイルを使用しているために十分な強度を得ることができる。線形性については、円筒長さが短い短縮型は適しておらず、非対称型および切欠型については、発生する傾斜磁場の対称性の観点において、全身用または部分切欠型よりも劣っている。発熱性については、円筒長さの短い短縮型、非対称型の中心から片方向の部分および切欠型では、コイルの線密度が高くなる部分が生じ得るため、発熱が生じる可能性が高くなる。
【0059】
以上より、本実施の形態に従う部分切欠型の傾斜磁場コイル装置では、使用時の発熱を抑制しつつ、発生する傾斜磁場の強度および線形性を確保することが可能となる。
【0060】
なお、上記で説明した傾斜磁場コイル装置400においては、被検者の肩部に干渉する部分のみに薄肉部を形成するものとして説明したが、
図15の傾斜磁場コイル装置400Dに示すように、円筒形状の端部の全周にわたって薄肉部を形成するようにしてもよい。
【0061】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。