(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-216964(P2019-216964A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】枕及び前記枕に充填される詰め物材
(51)【国際特許分類】
A47G 9/10 20060101AFI20191129BHJP
【FI】
A47G9/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-116526(P2018-116526)
(22)【出願日】2018年6月19日
(71)【出願人】
【識別番号】715007864
【氏名又は名称】株式会社Kitamura Japan
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】北村 圭介
【テーマコード(参考)】
3B102
【Fターム(参考)】
3B102AB07
(57)【要約】
【課題】使用感に優れた枕を提供する。
【解決手段】枕60の中央部には、小室部61と、小室部61の左右両側に配された首部を側方から支持するための小室部62とが設けられ、さらに小室部62の左右両側には、寝返りをうった際の側頭部を支持する側部としての小室部64が設けられ、小室部64の外縁部には、使用者の肩部が当接する凹状の肩部当接部65が形成されており、
小室部64からさらに先端側には、先端部として、左右一対の延出部66と、延出部66からさらに先端側に形成された着接部67と、が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の頭部に装着する枕であって、
中央部と、
前記中央部の左右両側にそれぞれ配置された、前記中央部から延出されてなる側部と、
前記側部からさらに先端方向に延出された左右一対の先端部と
を備え、
前記左右一対の先端部のうち少なくとも何れか一方には、左右一対の先端部同士を着接する着接手段が設けられており、
枕が使用者の頭部に装着された使用状態で、前記先端部同士が着接手段を介して着接されていると共に、前記使用者の前頭部は開放されており、前記中央部が前記使用者の後頭部に当接し、前記側部が前記使用者の側頭部に当接し、かつ前記先端部が前記使用者の胸部に当接している
ことを特徴とする枕。
【請求項2】
前記側部の外周縁には、当該外周縁から内側に凹んだ凹形状の、前記使用者の肩部に当接する肩部当接部が形成されている
請求項1に記載の枕。
【請求項3】
枕が使用者の頭部に装着された使用状態で、互いに着接された前記先端部同士部分の最大厚み寸法X、各側部の最大厚み寸法Y、及び前記中央部の最大厚み寸法Zが、
Z<Y<X
となっている
請求項1又は請求項2に記載の枕。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の枕内に充填される詰め物材であって、
複数の主体部材と、前記複数の主体部材同士を連結する線状部材とを備え、
所定数の主体部材が、前記線状部材の長手方向に沿って配列されて一つの構成体とされており、
前記主体部材には貫通孔が設けられており、
該貫通孔に前記線状部材が挿通されることで該主体部材同士が連結してなり、
前記線状部材は、両端が結束されて環状とされている
ことを特徴とする詰め物材。
【請求項5】
前記線状部材が、前記主体部材の連結方向に沿って伸縮可能な伸縮材料で構成されている
請求項4に記載の詰め物材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枕及び前記枕に充填される詰め物材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば人体の全部や一部を支えるための枕は、既に広く使用されている。また、うつぶせ寝を考慮した枕も既に提案されている。
【0003】
例えば特許文献1では、鉢巻きの様に頭に装着する枕で、上向き下向き左右どの方向に転がってもほどよい高さを保持する枕が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−268871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来構成は、使用者の前頭部を覆う部分があるため、使用感に劣るという問題があった。
【0006】
また、詰め物材の量は枕の高さに影響するところ、これまでの構成は、詰め物材の量を調整することが煩雑で面倒な作業となることがあった。
【0007】
そこで本発明は、使用感に優れた枕を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、前記枕に充填される詰め物材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、使用者の頭部に装着する枕であって、中央部と、前記中央部の左右両側にそれぞれ配置された、前記中央部から延出されてなる側部と、前記側部からさらに先端方向に延出された左右一対の先端部とを備え、前記左右一対の先端部のうち少なくとも何れか一方には、左右一対の先端部同士を着接する着接手段が設けられており、枕が使用者の頭部に装着された使用状態で、前記先端部同士が着接手段を介して着接されていると共に、前記使用者の前頭部は開放されており、前記中央部が前記使用者の後頭部に当接し、前記側部が前記使用者の側頭部に当接し、かつ前記先端部が前記使用者の胸部に当接していることを特徴とする枕である。
【0010】
かかる構成とすることにより、使用者は、寝返りをして仰向け状態から横向き寝の状態となる際に、体の姿勢や位置を枕の形状にその都度合わせる必要が無い。また、着接手段が設けられた左右一対の先端部を具備しており、先端部同士が脱着自在となっているため、頭部への装着作業が簡易に行える利点がある。また枕が前頭部に鉢巻き状に装着されることがないため、睡眠時に煩わしさがなく快適である。
【0011】
また、前記側部の外周縁には、当該外周縁から内側に凹んだ凹形状の、前記使用者の肩部に当接する肩部当接部が形成されている構成が提案される。
【0012】
かかる構成とすることにより、装着状態で枕本体が使用者の両肩によって位置決めされることとなり、使用時(特に寝返り時)において枕が頭部を中心に遊転してしまうことを防止することができる。
【0013】
また、枕が使用者の頭部に装着された使用状態で、互いに着接された前記先端部同士部分の最大厚み寸法X、各側部の最大厚み寸法Y、及び前記中央部の最大厚み寸法Zが、Z<Y<Xとなっている構成が提案される。
【0014】
かかる構成とすることにより、より一層寝返り動作が容易となり、より一層心地良い睡眠を確保することができる。具体的には、上記のように各厚み寸法に大小関係を定めることにより、前記使用状態において仰向け状態から横向き寝の状態への移行は容易とし、横向きの寝の状態からうつぶせ寝の状態への移行はあえて困難なものとしている。したがって、かかる構成は、横向きの寝の状態から無意識に寝返りをする場合は、仰向けの状態へ案内する機能を有している。
【0015】
また、本発明は、上述の枕内に充填される詰め物材であって、複数の主体部材と、前記複数の主体部材同士を連結する線状部材とを備え、所定数の主体部材が、前記線状部材の長手方向に沿って配列されて一つの構成体とされており、前記主体部材には貫通孔が設けられており、該貫通孔に前記線状部材が挿通されることで該主体部材同士が連結してなり、前記線状部材は、両端が結束されて環状とされていることを特徴とする詰め物材である。
【0016】
かかる構成の詰め物材は、当該詰め物材の流動性を一定範囲で許容しており、寝返りを想定している上述の枕の詰め物材として特に好適である。また、換言すれば、前記流動性が一定範囲で制限されるため、該主体部材が袋体内において脇の方に過剰に流れてしまうことがなくなり、いわゆる底付きが好適に防止できる。特に、上記枕にあっては、快適な横向き寝の姿勢を確保することが重要となるため、前記側部の厚み寸法を十分に確保することができる点で有用性が発揮される。
【0017】
また、主体部材同士がいわば数珠つなぎとなっているため、主体部材の充填量を増減させる際に、複数の主体部材をまとめた状態で取り扱うことができ、充填量を増やしたりあるいは減らしたりする作業において作業性が飛躍的に向上する。このように、複数の主体部材が単一の線状部材によって連結されていると、例えば粒状の主体部材が外に一気にこぼれ出てしまうことが抑制される。また、単一の線状部材に対してあらかじめ主体部材の配列数が定められている場合には、例えば、詰め物材の個数と枕の厚みとのおよその相関関係が特定されることにより、枕に充填すべき詰め物材の個数が容易に把握可能となる利点がある。さらに、上記構成とすることにより、前記枕内における主体部材の流動性を線状部材によって制限することが可能となり、該詰め物材を、多数の主体部材のみを使用していた従来構成に比していわば嵩高な塊とすることができる。このため、従来に比して少量の主体部材を充填するだけで枕に対して十分な厚みを与えることが可能となり、前記枕の厚みが確保しやすくなるという利点がある。さらに、本発明にかかる詰め物材は、上述のように嵩高な構造体であるため、頭部を支持した状態でも枕内において十分な空隙を確保することができ、枕内の通気性を良好とすることができる。また、主体部材を簡素な構造としつつ、容易に主体部材同士を線状部材によって連結することができ、全体として製造コストを低減できる利点がある。また、環状構造を採用することにより、複数の主体部材を有する詰め物材が全体としてまとまりが良くなり、取り扱い性が向上する利点がある。
【0018】
また、前記線状部材が、前記主体部材の連結方向に沿って伸縮可能な伸縮材料で構成されていることが望ましい。
【0019】
かかる構成においては、前記線状部材が長手方向に伸縮性を有していることで、前記枕内における前記主体部材の流動性を適度に高めて袋体に柔軟性を付与することが可能となり、より一層微細に袋体の使用感を調整することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の枕は、使用感に優れた有利な効果を奏する。
【0021】
また、本発明の詰め物材は、寝返りを想定した枕に最適な流動性を確保することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】先端部同士を着接した状態の枕を示す外観斜視図である。
【
図6】他の実施例にかかる詰め物材の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の枕を具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0024】
図1に示すように、枕60は、可撓性で袋状をなし、床面に置かれた状態で平面視左右対称形状とされている。また、表側面(頭部側面)には、通気性を確保したポリエステル繊維が用いられている。一方、床面に接触する裏側面には、綿が用いられている。なお、枕60に採用される素材は、これらに限定されることはない。
【0025】
また、枕60の中央部には、本発明の中央部として、使用者の後頭部を支持するための小室部61と、首部を支持するための小室部63とが設けられている。さらに、小室部61の左右両側には、首部を側方から支持するための小室部62が設けられている。
【0026】
さらに小室部62の左右両側には、寝返りをうった際の側頭部を支持する側部としての小室部64が設けられている。なお、小室部64の外縁部には、使用者の肩部が当接する凹状の肩部当接部65が形成されている。
【0027】
ここで、枕60の内部空間にあっては、各小室部61〜64が各々独立した空間となるように間仕切りされている。
【0028】
また、小室部64からさらに先端側には、先端部として、左右一対の延出部66と、延出部66からさらに先端側に形成された着接部67と、が設けられている。
【0029】
なお、各着接部67の内部には、マグネットで構成された着接手段S1,S2が取り付けられている。かかる構成により、着接部67,67同士を重ね合わせた状態で互いを磁着させることが可能となっている(
図2参照)。
【0030】
かかる構成にあって、
図3に示すように、枕60が使用者の頭部に装着された使用状態では、中央部としての小室部61が使用者の後頭部に当接し、側部となる小室部64が使用者の側頭部に当接し、かつ、着接部67が使用者の胸部に当接する。
【0031】
ここで、枕60が使用者の頭部に装着された使用状態で、互いに着接された着接部67部分の最大厚み寸法Xと、各小室部64の最大厚み寸法Yと、小室部61の最大厚み寸法Zとが、
Z<Y<X
となるような関係式が成立している。
【0032】
また、枕60の裏側面には、詰め物材1Aの出し入れを行うため、各小室部61〜64ごとにそれぞれ調節口が設けられている。さらに詳述すると、各調節口は、それぞれ線ファスナーによって構成されており、通常時は閉塞され、適時に開閉可能となっている。
【0033】
次に、枕60内に充填する詰め物材1Aについて詳述する。
【0034】
図4に示すように、詰め物材1Aは、弾性を有する円筒形状の主体部材10を具備し、主体部材10の内空部を貫通孔10aとしている。さらに、貫通孔10aには、伸縮性のあるポリウレタン製で構成された紐からなる線状部材20が挿通され、線状部材20の長手方向に沿って主体部材10が複数配列されて互いに連結されている。そして、線状部材20の両端は、互いに結びつけられることで、詰め物材1Aがいわゆる数珠のように環状とされている。
【0035】
主体部材10としては、一例として、外径が約4mm、内径が約3mm、及び長さが約6mmの円筒部材が採用可能である。また、例えば、線状部材20としては、外径が約1mm、及び長さが約1〜3mの紐が採用可能である。
【0036】
主体部材10としては弾性を有する材料が用いられることが好ましく、エラストマーや、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリウレタン、ABS樹脂等の合成ゴム材料、天然ゴム等が例示される。またそれらに繊維材料が混合されていても構わない。
【0037】
線状部材20の材料としては使用中に切断されない程度の剛性を有していれば特に限定されないが、生産性、強度の点から綿糸、麻糸、ナイロン繊維、ウレタン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維等が採用可能である。
【0038】
次に、枕60の各小室部61〜64に、詰め物材1Aを充填する作業工程について説明する。なお、各小室部61〜64には、上記詰め物材1Aを画一的に各々充填してもよいし、後述するような他の形状からなる詰め物材1B,1Cを適所に合わせて充填するようにしてもよい。
【0039】
例えば、
図5に示すように、小室部64に設けられている調節口を開いて、詰め物材1Aを所定個数だけ充填していく。ここで、作業中に、小さな粒状体の主体部材10が前記調節口からはみ出ても、線状部材20によって他の主体部材10と連結しているため、主体部材10が単体で粒状に外部にこぼれ出てしまうことがない。また、詰め物材1Aは、環状であるため、全体としてコンパクトにまとめられていることで取り扱い性に優れている。また、単一の線状部材20に対してあらかじめ主体部材10の配列数を定めておくことにより、例えば、詰め物材1Aの個数と充填適正量とのおよその相関関係が概略的に特定されることにより、充填すべき詰め物材1Aの個数を容易に把握することも可能となる。なお、詰め物材1Aを製造するに際し、主体部材10を、貫通孔10aが中央を貫く部材形状とすることにより、複数の主体部材10に対して容易に線状部材20を順次挿通していくことが可能となる。
【0040】
さらに、詰め物材1Aは、枕60内における主体部材10の流動性を線状部材20によって所定範囲で制限することが可能となり、詰め物材1A全体を、嵩高な塊とすることができるため、従来に比して少量の主体部材10を充填するだけで枕60の厚み(床面からの枕高さ)を十分に確保することが可能となる。また、支持対象の頭部を支持した際にも、主体部材10の流動性が制限されることで主体部材10が枕60内において脇の方に過剰に流れてしまうことがなくなるため、いわゆる底付きが好適に防止できる。また、詰め物材1Aは、上述のように嵩高な構造体であるため、頭部を支持した状態でも枕60内において十分な空隙を確保することができ、枕60内の通気性を良好とすることができる。また、枕60を傾けても、内容物である主体部材10に偏りが生じにくい。
【0041】
また、線状部材20を、その長手方向に伸縮性を有する紐体で構成することにより、主体部材10の枕60内での流動性を適度に高めることが可能となり、小室部64内での主体部材10のなじみが良くなり、小室部64に適度な柔軟性を与えることが可能となる。したがって、従来と変わらぬ良好な枕60の使用感(安心感、安定感、好適な寝心地)を確保することができる。
【0042】
なお、これまでに述べたような構成とすると、例えば、枕を販売するメーカは、詰め物材1Aのみを販売し、そして、使用者であるユーザー自身で詰め物材1Aの増減作業を容易に行わせることが可能となる。
【0043】
また、他の形態の主体部材15,16が提案される。
例えば、
図6aに示すように、中実な球体部材に貫通孔15aを設けて主体部材15とし、貫通孔15aに線状部材20を挿通させて詰め物材1Bとしてもよい。
【0044】
また、
図6bに示すように、中空な球体部材に貫通孔16aを設けて主体部材16とし、貫通孔16aに線状部材20を挿通させて詰め物材1Cとしてもよい。
【0045】
また、これまでに述べた構成に代えて、例えば、主体部材10,15,16の側壁に貫通孔が設けられていてもよい。また、線状部材20は環状とする必要はなく、紐状体とされていてもよい。また、線状部材20の端部と主体部材10,15,16とを熱溶着して相互を固結するようにしてもよい。また、接着剤によって線状部材20の端部と主体部材10,15,16とを固結するようにしてもよい。また、複数の詰め物材1A,1B,1C同士が適宜連結され、二以上の線状部材20を具備する構成体であってもよい。また、単一の線状部材20に形状の異なる主体部材10,15,16同士が配列された構成としてもよい。なお、単一の詰め物材1A,1B,1Cに配列される主体部材10,15,16の数は適宜変更可能である。また、本発明は、非伸縮性の線状部材を用いることを積極的に排除するものではない。
【0046】
これまでに述べた枕60は、側頭部を常時サポートしつつ、左右の寝返りを円滑に行わせることが可能となる。また、着接手段S1,S2が設けられた左右一対の先端部67を具備しているため、頭部への装着作業が簡易に行える利点がある。また、小室部64の外周縁には肩部当接部65が形成されているため、枕60が使用者の両肩によって位置決めされることとなり、使用時において枕60が頭部を中心に遊転してしまうことを防止することができる。また、小室部64の厚みを上述のような関係式に沿って適正化することにより、横向きの寝の状態から無意識に寝返りをする場合は、仰向けの状態へ案内することができる。
【符号の説明】
【0047】
1A〜1C 詰め物材
10,15,16 主体部材
10a,15a,16a 貫通孔
20 線状部材
60 枕
61 小室部(中央部)
62 小室部(中央部)
63 小室部(中央部)
64 小室部(側部)
66 延出部(先端部)
67 着接部(先端部)