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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-217082(P2019-217082A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】超音波探触子および超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20191129BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   A61B8/14
   H04R17/00 330J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-117858(P2018-117858)
(22)【出願日】2018年6月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【弁理士】
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】内藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】峯本 尚
【テーマコード(参考)】
4C601
5D019
【Fターム(参考)】
4C601EE04
4C601GB24
4C601GB25
4C601GB26
5D019GG02
(57)【要約】
【課題】より高画質化できる超音波探触子および当該超音波探触子を有する超音波診断装置を提供すること。
【解決手段】超音波を送受信するための圧電素子と、前記圧電素子の被検体側に配置された1層または複数層の音響整合層と、前記圧電素子に電圧を印加するための導体層と、が積層された積層体を有する超音波探触子であって、前記導体層は、前記圧電素子と前記音響整合層との間、または複数層の前記音響整合層の間に配置され、かつ、前記導体層の音響インピーダンスの大きさは、前記導体層の上面側に配置された層の音響インピーダンスの大きさと、前記導体層の背面側に配置された層の音響インピーダンスの大きさの間の大きさであり、前記導体層のビッカース硬度(Hv)は、50以上600以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信するための圧電素子と、
前記圧電素子の被検体側に配置された1層または複数層の音響整合層と、
前記圧電素子に電圧を印加するための導体層と、を有する超音波探触子であって、
前記導体層は、前記圧電素子と前記音響整合層との間、または複数層の前記音響整合層の間に配置され、かつ、
前記導体層の音響インピーダンスの大きさは、前記導体層の一方の面側に配置された層の音響インピーダンスの大きさと、前記導体層の他方の面側に配置された層の音響インピーダンスの大きさの間の大きさであり、
前記導体層のビッカース硬度(Hv)は、50以上600以下である、超音波探触子。
【請求項2】
前記導体層の音響インピーダンスの大きさは、前記導体層の一方の面と接触して配置された層の音響インピーダンスの大きさと、前記導体層の他方の面と接触して配置された層の音響インピーダンスの大きさの間の大きさであることを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項3】
前記導体層は、接地電極として作用する、請求項1または2に記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記導体層中の音速をv、前記圧電素子が送信する超音波の中心周波数をf、λ=v/fとしたとき、前記導体層の厚さは、λ/30以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項5】
前記導体層は、音響整合層としての機能を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項6】
前記導体層は、前記一方の面および前記他方の面の少なくとも一つの面が表面処理されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項7】
前記導体層は、チタンまたはチタン合金を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項8】
前記導体層は、チタン又はチタン合金からなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の超音波探触子を有する超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探触子および当該超音波探触子を有する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、当該超音波診断装置に接続され、または超音波診断装置と通信可能に構成された超音波探触子を、ヒトやその他の動物などを含む被検体の体表に当てるかまたは体内へ挿入することで、組織の形状および動きなどを超音波診断画像として得ることを可能とする。超音波診断装置は、安全性が高いため繰り返して検査を行うことができるという利点を有する。
【0003】
超音波探触子は、超音波を送受信する圧電素子などを内蔵する。圧電素子は、超音波診断装置からの電気信号(送信信号)を受信し、受信した送信信号を超音波信号に変換して送波し、生体内で反射された超音波を受信して電気信号(受信信号)に変換し、電気信号に変換された受信信号を超音波診断装置に送信する。
【0004】
また、超音波探触子は、通常、圧電素子の音響インピーダンスと生体の音響インピーダンスとの間の大きさの音響インピーダンスを有する音響整合層を、圧電素子の生体側に有する。音響整合層は、圧電素子と被検体(生体)との間で音響インピーダンスを整合させる役割を果たし、得られる超音波診断画像をより高解像度化させることができる。
【0005】
特許文献1には、圧電素子に電圧を印加するための導体層を、圧電素子と音響整合層との間に配置した超音波探触子が記載されている。特許文献1によれば、圧電素子と音響整合層との間に導体層を配置することで、音響整合層として使用できる材料の選択の幅を広げ、より高解像度化された超音波診断画像が得られるような音響インピーダンスを有する音響整合層を作製することができるとされている。また、特許文献1には、上記導体層は、銅、ニッケル、アルミニウム、金、銀などの電気抵抗の小さい材料であればよいと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−285995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のように、圧電素子と音響整合層との間に導体層を配置して、音響整合層の材料を適宜選択すれば、解像度がより高い超音波診断画像が得られると期待される。しかし、超音波診断画像の解像度をより高めることへの要求は依然として存在するため、より高画質化された超音波診断画像を得られるような超音波探触子の開発が求められている。
【0008】
本発明の目的は、診断画像をより高画質化することができる超音波探触子および当該超音波探触子を有する超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る超音波探触子は、超音波を送受信するための圧電素子と、前記圧電素子の被検体側に配置された1層または複数層の音響整合層と、前記圧電素子に電圧を印加するための導体層と、を有する超音波探触子であって、前記導体層は、前記圧電素子と前記音響整合層との間、または複数層の前記音響整合層の間に配置され、かつ、前記導体層の音響インピーダンスの大きさは、前記導体層の上面側に配置された層の音響インピーダンスの大きさと、前記導体層の背面側に配置された層の音響インピーダンスの大きさの間の大きさであり、前記導体層のビッカース硬度(Hv)は、50以上600以下である。
【0010】
本発明の一実施形態に係る超音波診断装置は、上記超音波探触子を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より高画質化できる超音波探触子および当該超音波探触子を有する超音波診断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る超音波探触子の全体構造の一例を示す断面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態2に係る超音波探触子の全体構造の一例を示す断面図である。
図3図3は、図1のように圧電素子−第1の音響整合層間に導体層を設けた時の導体層の厚みと周波数の比帯域の関係を示すグラフである。
図4図4は、図2のように第1の音響整合層−第2の音響整合層間に導体層を設けた時の導体層の厚みと感度(dB)の関係を示すグラフである。
図5図5は、本発明の実施形態に係る超音波探触子を備える超音波診断装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
[実施の形態1]
(超音波探触子の構成)
図1は、本発明の実施の形態1に関する超音波探触子100の全体構造の一例を示す断面図である。
【0015】
図1に示されるように、実施の形態1に係る超音波探触子100は、圧電素子110と、圧電素子110に電圧を印加するための導体層120および信号電極130a、130bと、音響整合層140と、音響レンズ150と、フレキシブルプリント基板(FPC)160と、背面負荷材170と、を有する。超音波探触子100は、圧電素子110から被検体に向けて、導体層120、音響整合層140および音響レンズ150がこの順に積層され、圧電素子110から被検体とは反対側に向けて、信号電極130a、130b、FPC160および背面負荷材170がこの順に積層された構成を有する。
【0016】
なお、本明細書において、超音波探触子100を構成する各部材に対して、診断される被検体により近づく方向を「上面側」といい、診断される被検体からより遠ざかる方向を「背面側」ともいう。
【0017】
また、実施の形態1に係る超音波探触子100は、圧電素子110、導体層120、音響整合層140、音響レンズ150、被検体(生体)の順に、音響インピーダンスの大きさが、段階的に変化する。このようにすることで、各部材間での超音波の反射が起きにくくなり、診断画像の解像度を向上させることができる。各部材の音響インピーダンスについては後述する。
【0018】
(圧電素子)
圧電素子110は、電圧の印加により超音波を送波する複数個の圧電体(不図示)が図1中X方向に1次元に配列されて形成される。圧電素子110の厚さは、例えば、0.05mm以上0.4mm以下とすることができる。それぞれの圧電体は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系などの圧電セラミック、マグネシウム酸ニオブ酸鉛・チタン酸鉛固溶体(PMN−PT)および亜鉛酸ニオブ酸鉛・チタン酸鉛固溶体(PZN−PT)などの圧電単結晶、ならびにこれらの材料と高分子材料を複合した複合圧電体、などにより形成される。
【0019】
圧電素子110の音響インピーダンスの大きさは、通常、10〜30MRaylsである。
【0020】
(導体層)
導体層120は、圧電素子110の上面側(図1のZ方向であり、被検体側)に配置されて、信号電極130bとともに圧電素子110に電圧を印加するための電極である。圧電素子110の信号電極130bの表面上には導体層120が電気的に接続するように接着されている。例えば、エポキシ樹脂などの接着剤を極めて薄くして接着することにより導体層120と電気的に接続したり、導電性接着剤で接着することにより導体層120と電気的に接続したりする方法があるが、何れの方法でも電気的に接続できればよい。実施の形態1において、導体層120の横幅(Y方向)は、圧電素子110の横幅(Y方向であり、圧電素子の配列方向)よりも大きくなるように形成されて、アース接続される。導体層120については、別途詳細に説明する。
【0021】
(信号電極)
信号電極130a、130bは、圧電素子110の上面側および背面側(導体層が設けられている面とは反対側の面)に配置されて、導体層120とともに圧電素子110に電圧を印加するための電極である。信号電極130a、130bは、金および銀などを、蒸着、スパッタリングおよび銀の焼き付けなどの方法で形成したり、銅などの導体を絶縁性の基板に貼り付けてパターニングしたりして、形成することができる。
【0022】
(音響整合層)
音響整合層140は、圧電素子110と音響レンズ150との間の音響特性を整合させるための層であり、一般に、圧電素子110と音響レンズ150との概ね中間の音響インピーダンスを有する材料により構成される。音響整合層140は、一般に、複数層から構成される。
【0023】
図1に示されるように、実施の形態1において、音響整合層140は、第1の音響整合層140a、第2の音響整合層140bおよび第3の音響整合層140cから構成される。圧電素子110、第1の音響整合層140a、第2の音響整合層140bおよび第3の音響整合層140cの各音響インピーダンスの大きさは、この順に、小さくなることが好ましく、最も圧電素子110の音響インピーダンスの大きさに近い第1の音響整合層140aから、順に、被検体(生体)の音響インピーダンスに近づくように小さくすることが好ましい。ここで、第1の音響整合層140aの音響インピーダンスの大きさは、8〜20MRaylsであることが好ましく、10〜15MRaylsであることがより好ましい。上記音響インピーダンスを満たす第1の音響整合層140aの材料の例には、シリコン、水晶、快削性セラミックス、金属粉を充填したグラファイト、および金属または酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂などが含まれる。
【0024】
第2の音響整合層140bは、第1の音響整合層140aの上面側に積層されている。第2の音響整合層140bの音響インピーダンスの大きさは、3〜12MRaylsであることが好ましい。上記音響インピーダンスを満たす第2の音響整合層140bの材料の例には、シリコン、水晶、快削性セラミックス、金属粉を充填したグラファイト、および金属または酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂が含まれる。
【0025】
第3の音響整合層140cは、第2の音響整合層140bの上面側に積層されている。第3の音響整合層140bの音響インピーダンスの大きさは、1.9〜8MRaylsであることが好ましい。上記音響インピーダンスを満たす第3の音響整合層140cは、ゴム材料を混合したプラスチック材、およびシリコーンゴム粉を充填した樹脂などから形成される。
【0026】
音響整合層140の各層は、エポキシ系接着剤などの、当該技術分野で通常使用される接着剤で接着されてもよい。
【0027】
(音響レンズ)
音響レンズ150は、被検体(生体)と音響レンズ150との音速差による屈折を利用して圧電素子110から送波された超音波を集束して、分解能を向上させる。図1に示されるように、実施の形態1では、音響レンズ150は、図中Y方向に沿って延び、Z方向に凸状となる、シリンドリカル型の音響レンズであり、上記超音波をY方向に集束させて超音波探触子100の外部に出射する。また、音響レンズ150は、生体とは異なる音速を有する、例えば、軟質の高分子材料などにより構成されている。
【0028】
上記軟質の高分子材料の例には、シリコーンゴムが含まれる。
【0029】
(フレキシブルプリント基板)
フレキシブルプリント基板160は、信号電極130aの背面側に接して配置され、信号電極130aと外部の電源などとを接続する。
【0030】
(背面負荷材)
背面負荷材170は、圧電素子110を保持し、かつ、圧電素子110から背面側に送波された超音波を減衰させる層である。背面負荷材170は、通常、音響インピーダンスを調整するための材料を充填した合成ゴム、天然ゴム、エポキシ樹脂および熱可塑性樹脂などから形成される。背面負荷材170の形状は、送波された超音波を減衰することができれば、特に限定されない。
【0031】
また、圧電素子110から背面側に送波された超音波の減衰効率を高める観点からは、背面負荷材170が圧電素子110に接する面の面積は、圧電素子110よりも大きいことが好ましい。
【0032】
(導体層について)
図1に示されるように、実施の形態1において、導体層120は、圧電素子110と第1の音響整合層140aとの間に配置されている。また、導体層120の音響インピーダンスの大きさは、第1の音響整合層140aの音響インピーダンスの大きさと、圧電素子110の音響インピーダンスとの大きさの間の大きさである。そのため、導体層120の材料は、音響インピーダンスの大きさが、10〜30MRaylsである材料から選択されることが好ましく、15〜30MRaylsである材料から選択されることがより好ましい。
【0033】
導体層120と圧電素子110との間、または第1の音響整合層140aと導体層120との間の音響インピーダンスの差を0に近づけることにより、これらの界面で超音波の反射を起きにくくして、診断画像の解像度をより向上させることができる。
【0034】
音響インピーダンスが10〜30MRaylsである材料の一例を表1に示す。
【0035】
音響インピーダンスは、以下の式(1)で算出することができる。
式(1):音響インピーダンス(MRayls)=密度(kg/m)×音速(m/sec)
【0036】
【表1】
【0037】
これらの材料の中で、入手のしやすさ、価格などの観点から、アルミニウム、インジウム、チタン、チタン合金が好ましく、チタン、チタン合金がより好ましい。なお、チタン合金の例には、α+β型チタン合金(Ti−6Al−4V、Ti−3Al−2.5V、Ti−6Al−4V−2Sn等)、β型チタン合金(Ti−15V−3Cr−3Sn−3Al、Ti−15Mo−5Zr−3Al、Ti−13V−11Cr−3Al、Ti−3Al−8V−6Cr−4Mo−4Zr等)、α型チタン合金(Ti−5Al−1 Mo+1V、Ti−5Al−2.5Sn、Ti−8Al−1Mo−1V等)、near α型合金(Ti−8Al−1Mo−1V等)、near β型合金(Ti−10V−2Fe−3Al等)などが含まれる。
【0038】
また、実施の形態1において、導体層120の材料は、圧電素子110と第1の音響整合層140aの間に積層する前に上記材料の表面処理などを行う際の、しわなどの発生を抑制するため、ある程度高い硬度を有する材料とする。また、導体層120の材料は、導体層120を接地電極として作用させるときに折り曲げても破損しにくくするため、さほど高すぎない硬度を有する材料とする。上記観点から、導体層120として用いる材料は、ビッカース硬度(Hv)は50以上600以下である材料であり、ビッカース硬度(Hv)が100以上400以下の材料であることが好ましい。導体層120のビッカース硬度(Hv)を50以上600以下とすることで、しわの発生を抑制し、高画質を得ることができ、耐久性を向上させることができる。
【0039】
ここで、ビッカース硬度(Hv)とは、日本工業規格で規定されている、JIS Z 2244に準拠して算出されるものである。
【0040】
ビッカース硬度(Hv)が50以上600以下である材料の一例を表2および表3に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
これらの材料の中で、表面処理などの加工のしやすさ、入手のしやすさおよび価格などの観点から、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、チタン合金が好ましく、チタン、チタン合金がより好ましい。
【0044】
実施の形態1において、導体層120は、接地電極として作用してもよい。このとき、導体層120は、アース接続することができる大きさとするため、圧電素子110の横幅(Y方向)よりも大きく形成される。
【0045】
また、このとき、導体層120の材料は、電気抵抗が小さい材料であることが好ましい。具体的には、導体層120に用いる材料は、固有電気抵抗は200×10−6(Ω・cm)以下の材料であることが好ましく、170×10−6(Ω・cm)以下の材料であることがより好ましい。ここで、電気抵抗の測定方法としては、例えば、4端子測定法を用いることができる。なお、電気抵抗については、導体層の表面を金メッキ等で処理することで、電気抵抗を下げることもできる。
【0046】
固有電気抵抗が200×10−6(Ω・cm)以下である材料の一例を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
これらの材料の中で、入手のしやすさ、価格などから、アルミニウム、銅、金、モリブデン、ニッケル、銀、タングステン、チタン、チタン合金が好ましく、チタン、チタン合金がより好ましい。
【0049】
導体層120の材料は、上述した音響インピーダンス、ビッカース硬度(Hv)および固有電気抵抗の条件をすべて満たすことから、チタンおよびチタン合金であることが好ましい。
【0050】
(導体層の洗浄方法)
超音波探触子100は、繰り返し検査などで使用されることから耐久性が要求される。また、超音波探触子100は異なる複数の材料から構成されるため、それぞれの材料が製造時の加工に耐えられる程度に接着力を有することが求められる。ここで、耐久性および接着力を高めるため導体層120の表面を洗浄することが好ましい。洗浄方法の例には、洗浄液として、炭化水素系(ノルマルパラフィン系,イソパラフィン系,ナフテン系,芳香族系等)、溶剤系(アセトン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、ベンゼン、ジクロロメタン、ヘキサン等)、水系(無機・有機ビルダー、界面活性剤、キレート剤、防錆剤から構成される、酸性洗浄剤や中性洗浄剤やアルカリ洗浄剤等)、塩素系(トリクロロエチレン、ジクロロメタン、パークロールエチレン等)、フッ素系(パーフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、環状のフッ素系溶剤、ハイドロフルオロエーテル等)、臭素系(1−ブロモプロパン等)などを用いて、真空洗浄、脱気洗浄、ふき取り洗浄、超音波洗浄、浸漬洗浄、ジェット洗浄、スプレー洗浄、シャワー洗浄などが含まれる。その他、プラズマ洗浄(O、アルゴン等)等を行ってもよい。また、洗浄後には、熱風乾燥、輻射加熱乾燥、回転(スピン)乾燥、エアブロー乾燥、減圧乾燥(真空乾燥)、自然乾燥、ふき取り乾燥等を行う。
【0051】
(導体層の表面処理)
また、導体層120は、接着性を向上させるために、プライマー処理等を行ってもよい。また、導体層120は、接着性を向上させるだけでなく、電気伝導性を向上させるために、導体層120の上面側および/または背面側の積層面が表面処理されていることが好ましい。表面処理の例には、金および銀などを、蒸着、スパッタリングおよび銀の焼き付けなどの方法で形成する方法が含まれる。
【0052】
(導体層の厚みと周波数の比帯域の関係について)
以下の説明では、導体層120中の音速をv、送信周波数(中心周波数)をf、λ=v/fとして説明する。なお、送信周波数(中心周波数)は、送信超音波の強度ピークから−6dBである帯域幅の中心周波数である。
【0053】
導体層120は、音響整合層としての機能を持たせてもよい。音響整合層としての機能を持たせる場合には、音響整合層の厚さは、λ/4とすることが好ましい。ただし、要望される特性により、λ/4から多少のずれがあってもよい。
【0054】
図3は、図1の構成にて、導体層120を圧電素子110−第1の音響整合層140a間に配置し、中心周波数7MHzとして、時間領域有限要素法を用いて計算を行い、導体層120の厚みと最大感度に対して−6dBとなる周波数の比帯域との関係を示すグラフである。ここで、図3の縦軸は、最大感度に対して−6dBとなる周波数の比帯域(%)を示し、横軸は導体層120の厚み(μm)を示す。
【0055】
図3には、導体層120として銅箔(音響インピーダンスが41.8MRaylsである)とチタン箔(音響インピーダンスが27.6MRaylsである)を選択し、それぞれの厚みを5、10、15、20、30、40、50μmにした場合の−6dBとなる周波数の比帯域(%)を示している。
【0056】
図3に示されるように、導体層120として使用する材料がチタン箔の場合には、厚みがλ/30(約29μm)であっても、厚みがλ/90(約9.6μm) での−6dBとなる周波数の比帯域の値と大きな差は生じていない。それに対して、銅箔の場合、厚みがλ/22(約30μm)以上になると、−6dBとなる周波数の比帯域の値が急激に下がり始めている。つまり、チタン箔では、導体層120の厚みを厚くした場合であっても、超音波探触子100の周波数帯域を広帯域化することができる。これにより、導体層120としてチタン箔を使用する場合には、導体層120の厚みの選択幅が広くなることがわかる。
【0057】
一方で、銅箔は、λ/90(約7.5μm)〜λ/22(約30μm)の比帯域の値は、図3に示されるように、銅箔の厚みが増すにつれて下がっている。したがって、銅箔の場合には、薄い導体層120を作製する必要がある。しかしながら、銅箔は、硬度が小さく、しわが生じやすいこともあり、λ/90(約7.5μm)以下の厚さの導体層120の作製には不向きである。それに対して、チタン箔においては、厚みがλ/90(約9.6μm)〜λ/30(約29μm)の比帯域の値が大きく変化せず、導体層120の厚みの選択幅が広いことから、銅箔よりも薄いまたは厚い導体層120を容易に作製することもできる。
【0058】
ここで、超音波探触子100を構成する全部材の総厚さは薄いことが好ましい。したがって、チタン箔を使用する場合、導体層120は、λ/300〜λ/30であることが好ましく、λ/300〜λ/40であることがより好ましい。これにより、しわの発生や比帯域の大きな変化を伴うことを抑制しつつ、超音波探触子の性能を向上させることができる。
【0059】
導体層120の厚みの換算方法は、次のとおりである。まず、銅箔(音速:4700m/s)について、送受信する超音波の中心周波数を7MHzのとした場合の銅箔の超音波の波長は約670μmとなる。λ/90としたときの銅箔の厚みを算出すると約7.5μmである。同様にして、チタン箔(音速:6070m/s)を求めると、λ/90では約9.6μmである。ここで、銅箔の厚みをλ/90(約9.6μm)とした場合の−6dBとなる周波数の比帯域を基準にすると、チタン箔ではλ/30(約30μm)まで厚くした場合であっても銅箔と同じ比帯域が得られることがわかる。
【0060】
以上のように、導体層120の材料としてチタン箔またはチタン合金を用いることで、圧電素子110から被検体(生体)までの音響インピーダンスの差を段階的に小さくすることができる。また、導体層120の材料としてチタン箔またはチタン合金を用いることで、導体層120の使用できる厚みがλ/300〜λ/30の範囲で選択することができる。また、チタンおよびチタン合金の硬度は銅箔の硬度よりも高いため、導体層120の厚みを薄くした場合であっても、表面処理工程時、例えば、蒸着、スパッタリングもしくは、部材の接着時などによりしわが生じることを抑制することもできる。
【0061】
[実施の形態2]
(超音波探触子の構成)
実施の形態2に係る超音波探触子200は、導体層120が積層される位置が実施の形態1に係る超音波探触子100と異なる。そこで、実施の形態1に係る超音波探触子100と同一の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0062】
図2は、超音波探触子200の全体構造の一例を示す断面図である。
【0063】
図2に示されるように、超音波探触子200は、導体層120が、第1の音響整合層140aと第2の音響整合層140bとの間に配置されている点で、実施の形態1に係る超音波探触子100と異なる。
【0064】
(導体層)
図2に示されるように、実施の形態2において、導体層120は、第1の音響整合層140aと第2の音響整合層140bとの間に積層されている。
【0065】
導体層120の音響インピーダンスの大きさは、第1の音響整合層140aの音響インピーダンスの大きさと、第2の音響整合層140bの音響インピーダンスの大きさとの間の大きさであることが好ましい。したがって、導体層120の音響インピーダンスの大きさは、10〜20MRaylsであることが好ましい。表1に示すように音響インピーダンスとしては、アルミやインジウムが望ましいが、本発明の特徴の一つである、硬さは不十分であり、実用的ではない。しかし、例えば、表1、2に記載のジュラルミンは音響インピーダンス17.6で10〜20MRaylsの範囲内で、かつ、ビッカース硬度(Hv)も50以上600以下の範囲内の115〜128であり、両方の特性を満足するので好ましい。ただし、導体層として20MRayls以上あっても、図4に示されるように、チタン箔の厚みがλ/40(約20μm)以下であれば、感度劣化が1dB程度であり、音響特性に影響はないので問題ない。なお、本検証は、図2の構成に導体層120を第1の音響整合層140a−第2の音響整合層140b間に配置し、中心周波数7MHzとして、時間領域有限要素法を用いて、計算を行った。
【0066】
図4に示されるように、縦軸は最大感度(dB)を示し、横軸は導体層120の厚み(μm)を示す。また、図4には、導体層120として銅箔(音響インピーダンスが41.8MRaylsである)とチタン箔(音響インピーダンスが27.6MRaylsである)を選択し、それぞれの厚みを5、10、15、20、30、40、50μmにした場合の最大感度(dB)を示している。なお、導体層のビッカース硬度(Hv)は、50以上600以下である。
【0067】
なお、実施の形態2においても、導体層120は、接地電極として作用してもよい。このとき、導体層120は、アース接続することができる大きさとするため、圧電素子110の横幅(Y方向)よりも大きく形成される。
【0068】
実施の形態2において、第1の音響整合層140aを非導電性材料とした場合には、第1の音響整合層140aの材料の周囲に電極処理をしたり、第1の音響整合層140aにスルーホールなどを設ける加工をしたりしてもよい。
【0069】
また、実施の形態2において、導体層120は、第2の音響整合層140bと第3の音響整合層140cとの間に積層されてもよい。
【0070】
(超音波診断装置)
図5は、超音波探触子100または超音波探触子200を備える超音波診断装置10の一例を示す模式図である。超音波診断装置10は、超音波探触子100または200、本体部11、コネクタ部12およびディスプレイ13を備える。
【0071】
超音波探触子100または200は、コネクタ部12に接続されたケーブル14を介して超音波診断装置10と接続される。
【0072】
超音波診断装置10からの電気信号(送信信号)は、ケーブル14を通じて超音波探触子100または200の圧電素子110に送信される。この送信信号は、圧電素子110において超音波に変換され、生体内に送波される。送波された超音波は生体内の組織などで反射され、当該反射波の一部がまた圧電素子110に受波され電気信号(受信信号)に変換され、超音波診断装置10の本体部11に送信される。受信信号は、超音波診断装置10の本体部11において画像データに変換されディスプレイ13に表示される。
【0073】
上記の実施の形態の超音波診断装置は、圧電材から被検体(生体)までの音響インピーダンスの差を段階的に小さくした本発明の超音波探触子を有することからより高画質化された超音波画像を生成することができる。
【0074】
なお、上述の各実施形態では、背面負荷材を有する超音波探触子について説明したが、超音波探触子は、背面負荷材を有さなくてもよい。また、PZTと背面負荷材の間には、PZT同等以上の音響インピーダンスの材料を設けて、背面側に向かう超音波を反射させ、上面側に向かう超音波とを重ね合わせるような構成にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、プローブ周波数帯域を広帯域化できるため感度に優れて画質のよい超音波画像を得ることを目的とする超音波装置の超音波探触子として有用である。
【符号の説明】
【0076】
10 超音波診断装置
11 本体部
12 コネクタ部
13 ディスプレイ
14 ケーブル
100、200 超音波探触子
110 圧電素子
120 導体層
130a、130b 信号電極
140 音響整合層
140a 第1の音響整合層
140b 第2の音響整合層
140c 第3の音響整合層
150 音響レンズ
160 フレキシブルプリント基板
170 背面負荷材
図1
図2
図3
図4
図5