特開2019-217447(P2019-217447A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-217447(P2019-217447A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】超音波洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/12 20060101AFI20191129BHJP
【FI】
   B08B3/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-116209(P2018-116209)
(22)【出願日】2018年6月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萱嶋 浩一
(72)【発明者】
【氏名】林 博明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 勇太
【テーマコード(参考)】
3B201
【Fターム(参考)】
3B201AA01
3B201AB03
3B201AB37
3B201AB44
3B201AB45
3B201BB02
3B201BB83
3B201BB92
(57)【要約】
【課題】被洗浄物が、厚さ数μm〜100μm程度の超音波が透過してしまう薄物であっても、その表裏両面を、洗浄ムラが生じないように、綺麗に洗浄できるようにした超音波洗浄装置を提供する。
【解決手段】浸漬槽20内に配置した被洗浄物(基材50)に対して超音波を当てることで被洗浄物の表面の洗浄を行う超音波洗浄装置10は、水平方向に複数の振動素子31が並べられてなる超音波振動子30と、被洗浄物(基材50)を支持する支持機構40とを備える。支持機構40は、超音波振動子30の直上であって、キャビテーションが多く発生する領域内において、被洗浄物(基材50)を支持した状態で被洗浄物(基材50)を水平に往復移動させることが可能となっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸漬槽内に配置した被洗浄物に対して超音波を当てることで前記被洗浄物の表面の洗浄を行う超音波洗浄装置であって、
水平方向に複数の振動素子が並べられてなる超音波振動子と、前記被洗浄物を支持する支持機構と、を備え、
前記支持機構は、前記超音波振動子の上方において、前記被洗浄物を支持した状態で前記被洗浄物を水平に移動させることが可能なものである、
ことを特徴とする超音波洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浸漬槽内において、被洗浄物に対して超音波を当てることで被洗浄物の表面の洗浄を行う超音波洗浄装置は知られている。その一例が、特許文献1に記載されている。そこでは、浸漬槽の底部に周波数10kHZ〜100MHZで作動する超音波振動子を配置し、その上を、搬送手段によって、被洗浄物を通過させるようにしている。超音波振動子についての具体的な説明はなされていない。
【0003】
超音波振動子は、1つの振動素子からなるものもあるが、水平面内に複数の振動素子を並べてなる超音波振動子も、例えば特許文献2に記載のように、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−166789号公報
【特許文献2】特開平10−52669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、超音波洗浄装置を用いて被洗浄物表面を洗浄する作業を継続して行ってきているが、その過程において、被洗浄物が薄物である場合、例えば、被洗浄物が、燃料電池単セルに使用するセパレータのように、厚さが数μm〜100μm程度の薄物であるである場合に、洗浄が不十分であったり、洗浄ムラが生じたりするのを経験した。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、厚さ数μm〜100μm程度の薄物であっても、その表裏両面を、洗浄ムラが生じないように、綺麗に洗浄できるようにした超音波洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決すべく、本発明者らはさらに実験と研究を継続して行うことにより、被洗浄物が厚さ数μm〜100μm程度の薄物の場合、超音波が被洗浄物を透過してしまい、被洗浄物の表面にキャビテーションが起こり難くなり、このことが、洗浄を不十分にする一因であることを知見した。本発明は、前記知見を基礎としてなされたものである。
【0008】
本発明による超音波洗浄装置は、浸漬槽内に配置した被洗浄物に対して超音波を当てることで前記被洗浄物の表面の洗浄を行う超音波洗浄装置であって、水平方向に複数の振動素子が並べられてなる超音波振動子と、前記被洗浄物を支持する支持機構と、を備え、前記支持機構は、前記超音波振動子の上方において、前記被洗浄物を支持した状態で前記被洗浄物を水平に移動させることが可能なものである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による超音波洗浄装置では、超音波振動子として、水平方向に複数の振動素子が並べられてなる超音波振動子を用いている。この形態の超音波振動子では、隣り合う振動素子から発振する超音波同士は互いに干渉しあうようになり、その干渉により、単一の振動素子からなる超音波振動子と比較して、キャビテーションが多く発生する。
【0010】
多くのキャビテーションが発生することで、被洗浄物が薄手のものであっても、良好な洗浄結果が得られる。また、被洗浄物は、支持機構によって、超音波振動子の上方において水平に移動するようになっており、その移動によって、被洗浄物の表面におけるキャビテーション発生位置を相対的に移動させることができる。それにより、被洗浄物の表裏面において洗浄ムラが生じるのも解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による超音波洗浄装置の一実施の形態を模式的に示す斜視図。
図2】複数の振動素子が並べられてなる超音波振動子の一例を上から見て示す図。
図3】超音波振動子が発振した超音波の浸漬槽内での伝播状態を示す概略図。
図4】本発明による超音波洗浄装置の他の実施の形態を模式的に示す斜視図。
図5図4に示す超音波洗浄装置でのチャックハンド部を説明する図。
図6図4に示す超音波洗浄装置での浸漬槽内に配置された超音波振動子と洗浄カゴの状態の一例を上から見て示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による超音波洗浄装置を実施するための形態を、図面を参照しながら、説明する。
【0013】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態である超音波洗浄装置10の模式的な斜視図である。超音波洗浄装置10は、洗浄槽である浸漬槽20を備える。浸漬槽20内には適宜の洗浄液が充填される。浸漬槽20の底部には、超音波の発振源として、水平方向に複数の振動素子31が並べられてなる超音波振動子30が配置されている。発振素子31としては、電磁コイルを例示できるが、ピエゾ素子に代表される圧電素子であってもよい。前記複数の振動素子31の上端面側は、同一の水平面内にほぼ位置しており、発振面32(図2参照)が形成される。超音波振動子30の各振動素子31は、駆動源としての発振器34に接続している。
【0014】
図2は、複数の振動素子31が並べられてなる超音波振動子30を上から示している。超音波振動子30は、ケーシング33を有し、ケーシング33内に、適数個の振動素子31が互いに等間隔を保つようにして配置されている。前記のように適数個の振動素子31の上端面側は一つの水平面を形成するようになっており、その上面は、発振面32として機能する蓋材によって閉鎖されている。
【0015】
超音波洗浄装置10は、さらに、被洗浄物である基板50を支持するための支持機構40を備える。支持機構40は、浸漬槽20の上縁部21に配置された一対のガイド部材41、41と、ガイド部材41、41の上面に沿って移動できるようにされた、基材支持ハンガー42を備える。基材支持ハンガー42は、超音波振動子30の振動素子31の上端面側が形成する水平な発振面32と平行に位置する基材支持部43と、基材支持部43の両側部から立ち上がる支持脚44と、各支持脚44の上端部に取り付けた車輪45とを備える。基材支持ハンガー42は、車輪45が一対のガイド部材41、41の上面を転動移動することで、振動素子31の上端面が形成する発振面32と平行な姿勢を維持しながら、図で矢印方向に往復移動することができる。
【0016】
ガイド部材41、41のいずれか一方には、適宜のアクチュエータ46が取り付けてあり、アクチュエータ46の可動部材(例えば、ピストン棒)47は、支持脚44の一部に接続している。アクチュエータ46が作動することで、基材支持ハンガー40を構成する基材支持ハンガー42は、前記のように、図で矢印方向に往復移動する。
【0017】
基材支持部43は、図示の例では、所定の間隔で配置された細い棒部材の組み合わせで構成されている。そして、被洗浄物である板状の基材50は、基材支持部43によって水平姿勢が保持された状態で、超音波洗浄に供される。
【0018】
[第1の実施の形態である音波洗浄装置10の作動]
上記超音波洗浄装置10の作動を説明する。最初に、浸漬槽20内に洗浄液を入れない状態で、被洗浄物である板状の基材50を、基材支持ハンガー42の基材支持部43によって背面から支持されるようにして配置する。基材50が薄物の場合、部分的に垂れ下がった姿勢となることが起こり得る。その場合には、基材支持部43に支持棒部材(不図示)を追加するか、もしくは多孔材からなる支持板(不図示)を配置し、該支持棒部材もしくは支持板の上に基材50を配置するようにしてもよい。
【0019】
なお、支持された基材50と、超音波振動子30の複数の振動素子31の上端面側である発振面32が形成する水平面とが、ほぼ平行となるように、支持脚44の長さ等は予め設定されている。支持された基材50と前記した超音波振動子30の発振面32が形成する水平面との間の距離は、好ましくは、後記する領域b内に基材50が位置する距離とされる。基材50を配置した後、浸漬槽20内に洗浄液を充填する。充填量は、浸漬槽20の上縁部21にほぼ達する量とすることが望ましい。洗浄液を充填した後、発振器34を作動して、超音波振動子30を駆動する。
【0020】
超音波振動子30が作動している状態で、アクチュエータ46を作動させ、基材支持ハンガー42を図1で矢印方向に必要な回数だけ往復移動させる。十分な洗浄が行われたと判断した時点で、アクチュエータ46の作動を停止し、浸漬槽20内から、洗浄後の基材50を取り出すことで、超音波による洗浄処理は終了する。
【0021】
[超音波洗浄の原理と第1の実施の形態である音波洗浄装置10]
超音波洗浄においては、音波の反射によって生じる音波の干渉により、液中に加圧および減圧される領域が作られる。このとき、減圧下では、溶けきれていないガス(溶存酸素)が気泡を形成する。この気泡は、周囲との圧力差により、短時間で圧潰する。これが、一般にキャビテーションと言われるものであり、このキャビテーションが超音波洗浄での汚れを剥がす力に大きく影響する。
【0022】
このキャビテーションは、液中に音波を通さない被洗浄物があると、その被洗浄物に音波が当たったときに生じる音の反射により、被洗浄物の表面近傍でもキャビテーションが発生し、汚れ、バリ等を効果的に洗うことができる。しかし、被洗浄物が薄物の場合、音波は被洗浄物を透過してしまい、音波の反射はほとんど起こらず、被洗浄物の表面で発生するキャビテーションはわずかとなり、有効な洗浄を行うことができない。また、洗浄ムラが発生する。
【0023】
図3は、水平方向に複数の振動素子31が並べられてなる超音波振動子30を、その振動素子31の上端面が形成する水平面(発振面32)が、洗浄液を充填した浸漬槽20の水面23と平行となるようにして、浸漬槽20内に設置し、超音波振動子30を発振させたときでの、浸漬槽20内の状態を模式的に説明している。
【0024】
図において、領域aは、水面23からの反射で定在波が発生する領域であり、領域bは、複数個の振動素子31の影響を受けて音波が安定しない(干渉する)ため、キャビテーションが多く発生している領域である。被洗浄物である基材50が、音波が透過してしまうような薄物である場合、定在波が形成される領域aでは、キャビテーションが少なく、効率的な洗浄は行われない。超音波洗浄装置10において、キャビテーションが多く発生している領域b内に、被洗浄物である基材50を配置して洗浄を行うことにより、良好な超音波洗浄を行うことができる。
【0025】
一方、領域bでは、振動素子31の位置の影響を受けて、被洗浄物である基材50の全表面に音波を均一にあてることができず、音圧のばらつきによる洗浄ムラが発生する恐れがある。本実施の形態での超音波洗浄装置10では、基材支持ハンガー40を作動させることで、被洗浄物である基材50を超音波振動子30の上で反復して往復移動させることが可能であり、その結果、振動素子31の位置の影響を解消し、洗浄ムラなく洗浄を終えることができる。また、領域bは、振動素子31にごく近い箇所であり、振動素子31と被洗浄物である基材50の間が短いため、洗浄溶液中の溶存ガスによる音波の減衰が少なく、したがって、音波も強く、より強く洗浄できる利点もある。さらに、基材50を浸漬槽20内で水平方向に往復移動させることで、基材50の上面側に剥がれた汚れが再付着するのを防止することもできる。
【0026】
[第2の実施の形態である音波洗浄装置10A]
図4図6は、超音波洗浄装置の他の実施の形態を示す。この超音波洗浄装置10Aは、被洗浄物を支持する支持機構40Aの構成が、図1に示した超音波洗浄装置10と相違する。浸漬槽20および超音波振動子30の構成は、超音波洗浄装置10と同じであってよい。
【0027】
被洗浄物を支持する支持機構40Aは、3軸方向に移動自在なロボットアーム60を備える。ロボットアーム60の先端にはモータ61が揺動自在に取り付けられている。図5に示すように、モータ61の回転軸には図示しない減速装置を介して適宜の把持用シリンダ62が備えられており、把持用シリンダ62には、チャックハンド63が着脱自在に把持されている。
【0028】
被洗浄物を支持する支持機構40Aは、さらに、網目状の材料からなる洗浄カゴ64を備える。洗浄時に、洗浄カゴ64内には、その底面に沿うようにして、被洗浄物である板状の基材50が配置される。チャックハンド63は、洗浄カゴ64の周囲壁の適所を把持して吊り下げることが可能であり、洗浄カゴ64は、チャックハンド63によって吊り下げられた状態で、ロボットアーム60の作動によって、上下方向に移動可能であり、また、モータ61の回転駆動によって、水平面内で回動移動することもできる。
【0029】
[第2の実施の形態である音波洗浄装置10Aの作動]
超音波洗浄装置10Aの作動に当たっては、図4に示すように、洗浄カゴ64内に、その底面に沿うようにして、被洗浄物である板状の基材50を配置する。そして、ロボットアーム60を操作して、洗浄カゴ64を、洗浄液が充填されている浸漬槽20内の、前記した領域b内である適所まで落とし込む。洗浄カゴ64は、ロボットアーム60に対して揺動自在であり、自重により洗浄カゴ64の底面は、複数の振動素子31の上端面側が形成する水平面(発振面32)とほぼ平行な位置を取ることができる。
【0030】
図6は、超音波洗浄装置10Aにおいて、浸漬槽20内に配置された超音波振動子30と洗浄カゴ64の状態の一例を上から見て示している。ここでは、洗浄カゴ64の底面面積は、その全体が、超音波振動子30の範囲内に位置することができる大きさとなっている。この場合、洗浄カゴ64内に配置された基材50は、その全体が前記したキャビテーションが多く発生している領域b内に位置することができる。さらに、洗浄カゴ64の底面全体は、超音波振動子30の振動素子31の上端面が形成する水平面(発振面32)に平行な平面内で回転運動をすることができるので、音波は、洗浄カゴ64内に配置された基材50の表面に均一に照射され、洗浄効率は高くなる。回転中心では、基材50の移動は少ないが、その直下に振動素子31aが位置するようにすることで、洗浄ムラを回避できる。また、洗浄カゴ64と基材50とが回転することで、基材50の表裏面に水流が発生し、汚れが滞留するのも回避できる。
【0031】
[その他の実施の形態]
上記のように、本実施の形態の係る超音波洗浄装置10、10Aは、被洗浄物が超音波が透過してしまうような薄手(数μm〜100μm程度)のものである場合に、被洗浄物と超音波振動子30の距離を所要の範囲内(前記領域b内)とすることで、良好な洗浄結果が得られるが、より厚みの厚いものを被洗浄物とすることも当然可能である。
【0032】
また、図示の超音波洗浄装置10、10Aでは、超音波振動子30を浸漬槽20の内部に配置するようにしたが、浸漬槽20の外部に、その発振面32が浸漬槽20の底面に接するようにして配置しても、同様な作用効果が達成される。
【符号の説明】
【0033】
10、10A…超音波洗浄装置、
20…洗浄槽である浸漬槽、
30…超音波振動子、
31…振動素子(電磁コイル、圧電素子)、
32…振動素子の上端面側に形成される発振面、
33…ケーシング、
34…発振器、
40、40A…被洗浄物である基板を支持する支持機構、
41…ガイド部材、
42…基材支持ハンガー、
43…基材支持部、
44…支持脚、
45…車輪、
46…アクチュエータ、
50…被洗浄物である板状の基材、
60…ロボットアーム、
61…モータ、
62…把持用シリンダ、
63…チャックハンド、
64…網目状の材料からなる洗浄カゴ、
領域a…水面からの反射で定在波が発生する領域、
領域b…キャビテーションが多く発生している領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6