【課題】鶏ガラの煮汁を調製するか又は前記煮汁を用いて調理をする飲食店または食品工場で生じる前記鶏ガラに由来する廃棄物の全般を、簡便かつ低コストで再資源化させることが可能な方法およびシステム、並びに前記方法により得られるハイドロキシアパタイト(HAP)を含んで成る組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】鶏ガラを準備する工程と、鶏ガラを煮込み、鶏ガラから抽出された油脂を含有する煮汁、及び油脂を抽出された鶏骨の残渣を得る工程と、鶏ガラから抽出された油脂を収集して油脂の収集物を得る工程と、収集物を43℃以上に加熱してバーナに供給して燃焼させて、600℃以上の雰囲気下で鶏骨の残渣が白色になるまで焼成させる工程と、を含み、鶏骨に由来するHAPを含んで成る組成物を得る、鶏ガラに由来する廃棄物を再資源化させる方法である。前記煮汁を調理や食用に供して、生じる食品廃棄物から前記油脂を収集し得る。
前記収集物を得る工程では、前記煮汁そのものを食用に供するか、当該煮汁を用いて調理をするか、又は前記調理により得られる食品を食用に供するかにより、生じる食品廃棄物から前記油脂を収集することを含む請求項1に記載の再資源化させる方法。
前記焼成させる工程では、前記収集物が一時的に溜められる燃料タンク、前記燃料タンクに溜められた当該収集物を43℃以上に加熱する第1ヒーター、前記第1ヒーターにより加熱された当該収集物を当該燃料タンクから導出して前記バーナに供給する燃料導出管、及び前記燃料導出管により当該バーナに供給される当該収集物を43℃以上に加熱する第2ヒーターを用いる請求項1又は請求項2に記載の再資源化させる方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<再資源化させる方法>
本発明に係る再資源化させる方法の第1実施態様(以下「本法1」という。)は、鶏骨を含んで成る鶏ガラに由来する廃棄物を再資源化させる方法である。
図1に示すように、本法1は、準備工程S1、煮込工程S2、収集工程S3、破砕工程S4、焼成工程S5a、及び粉砕工程S7aを含み、本発明に係る鶏骨に由来するHAPを含んで成る組成物(以下「本HAP組成物」という。)を得ることができる。
【0022】
準備工程S1では、鶏ガラを準備する。鶏ガラは、鶏から食肉が取り除かれた、主に鶏骨を含んで成る部分である。鶏骨は、その内部に骨髄を含有している。鶏骨の表面には、鶏の肉片などが幾らか付着している場合が多い。次の煮込工程S2で鶏ガラ風味を感じやすい煮汁を調製する観点から、鶏ガラは、新鮮な生の状態のもの、又は新鮮なまま冷凍された状態のものが好ましい。例えば、食肉処理場で鶏から食肉を得る際に副産物として生じてから24時間を経過していない、新鮮な生の状態である鶏ガラが好ましい。
【0023】
準備工程S1での鶏ガラは、容易に大量に入手可能である観点から、実質的に鶏の大腿骨から成る鶏ガラが好ましい。ここでの「実質的に」とは、本発明の目的に反しない限り、大腿骨以外の鶏骨、肉片、及び軟骨などが鶏ガラに少量含まれても問題ないことを意味する。大腿骨はほぼ直線状であるため、かさ張らず、容器にほとんど隙間なく大量に詰め込むことができる。このため、実質的に大腿骨から成る鶏ガラは、大量にまとめて冷凍したり、食肉処理場から飲食店または食品工場へ迅速に大量にまとめて運送したりするのが容易である観点からも好ましい。肩甲骨や胸骨などの様々な部位の鶏骨を含んで成る鶏ガラを準備する場合よりも、実質的に大腿骨から成る鶏ガラを準備する場合の方が、各工程での細かな加工条件が安定して、得られる本HAP組成物の品質が安定する観点からも好ましい。
【0024】
煮込工程S2では、鶏ガラを煮込み、この鶏ガラから抽出された油脂を含有する煮汁、及びこの油脂が抽出された鶏骨の残渣を得る。煮込工程S2で得られる鶏骨の残渣は、煮込まれて脆くなり砕けた骨片の集積物になっている。この骨片で、骨膜や緻密質に由来する部分は白色であるが、海綿質に由来する部分は黄色または茶色である。煮込工程S2は、例えば、鶏ガラの煮汁そのもの又はこの煮汁を用いて調理された料理(例えばラーメン)を客に提供する飲食店で行われても良いし、この飲食店に鶏ガラの煮汁を供給する食品工場で行われても良い。
【0025】
煮込工程S2では、鶏ガラから油脂に限らず呈味成分などの各種成分が抽出された煮汁を得る観点から、鶏ガラを80℃以上である熱湯に漬けて5時間以上かけて煮込むのが好ましい。同様の観点に加えて、鶏骨を構成するI型コラーゲンを加熱により分解させて鶏骨の残渣を更に脆く破砕しやすくする観点、及び鶏骨から肉片を剥離させて煮汁に分散させたり、I型コラーゲンが分解されて生成するゼラチンを煮汁に分散させたりして、こってりした鶏ガラ風味を感じやすい煮汁を得る観点から、鶏ガラを95℃以上である熱湯に漬けて5時間以上かけて煮込むのがさらに好ましく、約100℃の熱湯に漬けて5時間以上かけて煮込むのがさらにより好ましい。同様の観点から、鶏ガラに含まれる鶏骨を折って骨片を煮込むのも好ましく、鍋釜内で鶏骨を撹拌しながら煮込むのも好ましい。鶏ガラ風味を損なう過度の熱変性を避ける観点から、鶏ガラを煮込む時間の長さは、20時間以下であるのが好ましく、15時間以下であるのがさらに好ましい。
【0026】
収集工程S3では、先の煮込工程S2で鶏ガラから抽出された油脂を収集して、この油脂の収集物を得る。例えば、煮込工程S2で得られた鶏ガラの煮汁そのものを飲食店で食用に供して、食べ残された残汁から水分を大まかに除いて油脂を収集する。または、この煮汁を用いて調理をして、この調理により生じた含油廃液から水分を大まかに除いて油脂を収集する。あるいは、この調理により得られた料理(ラーメン等)を飲食店で食用に供して、食べ残された残汁から水分や食品屑(麺の断片、具材の断片、等)を大まかに除いて油脂を収集する。もとの食品廃棄物(残汁、含油廃液、等)と比べて、水分や食品屑が大まかに除かれたため、油脂の収集物では油脂の含有率が相対的に高められている。しかし、本発明の趣旨に反して高価なフィルターを用いる等して十分に精製しない限り、油脂の収集物には、油脂以外の不純物(例えば、水、細かな食品屑)が幾らか残存する。
【0027】
後の焼成工程S5aで効率よく燃焼させやすい観点から、収集工程S3で得られる油脂の収集物では、エーテル抽出法により測定される脂質の含有量が、70質量%以上であるのが好ましく、75質量%以上であるのがさらに好ましく、80質量%以上であるのがさらにより好ましい。油脂を精製するコストを削減する観点から、油脂の収集物でこの脂質の含有量は、95質量%以下であるのが好ましく、90質量%以下であるのがさらに好ましく、85質量%以下であるのがさらにより好ましい。
【0028】
収集工程S3では、例えば、先の煮込工程S2が行われた飲食店や食品工場で、食器等の洗浄槽(シンク)の排水溝から下水管へ至る途中にグリーストラップを設けておき、このグリーストラップで阻集された含油廃液の液面に浮遊する油脂の層を大まかに回収して、回収物を乾燥させたものを油脂の収集物として扱っても良い。あるいは、先の煮込工程S2が行われた飲食店や食品工場で水槽を設けて含油廃液を溜めておき、この含油廃液にヘキサンを混和して形成される油脂の抽出層(ヘキサンを含んで成る層)を大まかに回収して、回収物を約80℃に加熱してヘキサンを蒸発させて残った物質を油脂の収集物として扱っても良い。食品工場で煮込工程S2が行われた場合には、後の焼成工程S5aで燃料代を安価に抑える観点から、この食品工場で収集工程S3を行う他にも、この食品工場から煮汁を提供された飲食店でも併せて収集工程S3を行い、油脂をなるべく多く収集するのが好ましい。
【0029】
破砕工程S4では、次の焼成工程S5aで鶏骨の残渣を効率よく焼成させるために、この残渣を破砕して、破砕された鶏骨の残渣(以下「破砕残渣」という。)を得る。例えば、作業者が鶏骨の残渣を踏んで破砕しても良いが、短時間で効率よく破砕させる観点から、後述する破砕機により破砕するのが好ましい。破砕残渣は、白色の部分と黄色または茶色の部分が混ざり合って、全体的に薄黄色または薄茶色になっている。
【0030】
次の焼成工程S5aで満遍なく焼成させやすい観点から、破砕残渣は、JIS Z 8801−1に規定された公称目開きが5.6mmである篩を通過するサイズに砕けたものが好ましい。飛散を避ける観点から、破砕残渣は、この目開きが20μmである篩を通過しないサイズであるのが好ましい。工程を簡略化させる観点から、先の煮込工程S2でこの目開きが5.6mmである篩を通過するサイズに砕けた鶏骨の残渣を得た場合には、そのまま破砕残渣として扱い、破砕工程S4を省略するのが好ましい。
【0031】
焼成工程S5aでは、破砕残渣を焼成させる。焼成に要する燃料代を安価に抑えるために、油脂の収集物を燃料としてバーナに供給して燃焼させて、この燃焼により熱せられる高温の雰囲気下で破砕残渣を焼成させる。油脂の収集物を効率よく空気と混合させて燃焼させるために、43℃以上になるように加熱され液状に保たれた油脂の収集物(以下「油脂加熱物」という。)をバーナに供給して燃焼させる。例えば、油脂の収集物が溜められた燃料タンクごとヒーターで温めて、油脂の収集物が43℃以上である液状になっているときに、燃料タンク内からバーナの給油口へ流し込んで燃焼させても良い。ヒーターは、熱を発生させる装置であり、例えば電熱ヒーター又は暖房器具が挙げられ、油脂やその収集物を低コストで安全に効率よく加熱する観点から電熱ヒーターが好ましい。燃料タンクは、その内部に油脂の収集物を一時的に溜めることが可能な容器であり、例えば、ポリタンク、屋外タンク貯蔵所、等が挙げられる。油脂の収集物を効率よく加熱して燃焼させる方法や、そのための装置の構成について、詳しくは後述する。
【0032】
なお、鶏ガラに由来する油脂の融点は30℃前後であるため、寒冷地または冬季の屋外で、この油脂の収集物は固体状になる。30℃以下の固体状である場合の油脂の収集物では、バーナの給油口に流し込むことができないため、燃焼させにくく、破砕残渣を上手く焼成させるのは非常に困難である。また、油脂以外の不純物が幾らか残存しているため、30℃よりも高温かつ43℃未満である場合の油脂の収集物は、流動しにくく、バーナの給油口へ流し込みにくく、流れ込んだとしてもバーナ内部で冷えて固化しやすく、バーナ内部の管路が詰まって断火を招きやすい。これに対して、焼成工程S5aでは、油脂加熱物が十分な流動性を有するから、バーナの給油口へ円滑に供給することができ、バーナ内部で固化しにくいために断火を招きにくい。
【0033】
焼成工程S5aで、更に油脂加熱物の流動性を増して断火を避ける観点から、バーナに供給されるときの油脂の収集物の温度は、45℃以上であるのが好ましく、48℃以上であるのがさらに好ましい。油脂加熱物が自然発火するのを避ける観点から、バーナに供給されるときの油脂の収集物の温度は、250℃以下であるのが好ましく、200℃以下であるのがさらに好ましい。
【0034】
なお、一般的に用いられるバーナには、燃料と空気の混合気を形成させる混合室がバーナ内部に設けられた構造のものが多い。しかし、寒冷地または冬季の屋外で焼成工程S5aを行うと、油脂加熱物がバーナ内部で冷えて流動しにくくなり、混合室の近くの狭い管路が詰まって断火になる場合がある。このような断火を避ける観点から、焼成工程S5aで用いるバーナは、その火口部が設けられたノズル先端部で油脂加熱物を噴霧させて空気との混合気を形成させる構造のもの(つまり、外部混合形のバーナ)であるが好ましい。火口部とは、燃料(混合気)に点火する部分である。この外部混合形のバーナは、効率よく混合気を形成させやすい観点から、ブロワ又は送風機により全ての燃焼用空気を供給する構造のもの(つまり、外部混合形の強制通風式バーナ)であるのがさらに好ましい。ブロワとは、羽根車もしくはロータの回転運動またはピストンの往復運動によって気体を圧送する機械(圧縮機)であって、有効吐出し圧力が200kPa以下であるものである(JIS B 0132:2005を参照)。
【0035】
例えばブンゼンバーナにガス調節ネジが備えられているように、一般的に用いられるバーナには、その内部にある燃料の管路の幅を調節することにより、連続運転中のバーナで単位時間に消費する燃料の質量流量を調節するための機構が、バーナ自体に設けられた構造のものが多い。しかし、作業者が焼成工程S5aを始めるためにバーナに点火した直後に、この質量流量を調整しようとして誤ってバーナ内部の管路の幅を狭く調節し過ぎてしまうと、この管路が詰まってしまうから更に管路の幅を調節するのが難しくなり、断火になってしまう場合がある。この問題を避ける観点から、焼成工程S5aでは、バーナとは別に、バーナの給油口への単位時間あたりの油脂加熱物の供給量を調節する機構(以下「給油量調節機構」という。)を設けて、この機構により給油量を調整するのが好ましい。給油量調節機構として、例えば、油脂加熱物が溜められた燃料タンク内からバーナの給油口へ至る配管の途中に設けられた送液ポンプが挙げられる。この送液ポンプは、高所に設けられた燃料タンク内から油脂加熱物が配管を介してバーナの給油口へ流下する流量を調整するように機能するものであっても良いし、低所に設けられた燃料タンク内から配管を介して油脂加熱物を汲み上げて一定の流量でバーナの給油口へ供給するように機能するものであっても良い。
【0036】
焼成工程S5aで上記した給油量調節機構を用いる場合に、バーナ内部の管路が詰まるのを更に避ける観点から、この管路の幅をあらかじめ適度に広めに調整しておき、連続運転中のバーナで油脂加熱物の質量流量を調節する操作を行わないのが好ましい。つまり、バーナとは別に給油量調節機構を設けると、バーナ内部の管路の幅を狭く調節しなくて済むためにこの管路が詰まりにくくなり、更にバーナへの油脂加熱物の給油量を調節することができる。給油量調節機構(例えば送液ポンプ)内で油脂加熱物が冷えて流動しにくくなるのを避ける観点から、焼成工程S5aでは、給油量調節機構に流入する油脂加熱物を加熱して43℃以上である液状に保つのがさらに好ましい。
【0037】
焼成工程S5aで破砕残渣を十分に焼成できるように油脂加熱物を燃焼させる観点から、内容積が0.1m
3以上かつ20m
3以下である窯炉内で破砕残渣を焼成させる場合に、連続運転中のバーナで単位時間に消費する油脂加熱物の質量流量は、破砕残渣10kgあたり、5.0L/時間以上であるのが好ましく、10L/時間以上であるのがさらに好ましく、13L/時間以上であるのがさらにより好ましい。これらの場合には、バーナ内部の管路で油脂加熱物が流動しにくくなっても、連続的に供給される油脂加熱物により押し流されるため、この管路が詰まりにくく断火になりにくい観点からも好ましい。燃料代をなるべく安価に抑える観点から、この質量流量は、破砕残渣10kgあたり、25L/時間以下であるのが好ましく、20L/時間以下であるのがさらに好ましく、17L/時間以下であるのがさらにより好ましい。バーナは、これらの質量流量で燃焼させることが可能な規格のバーナであるのが好ましく、例えば、液体燃料(灯油、ガソリン、等)を13L/時間以上かつ17L/時間以下の量で供給されても燃焼可能に設計された液体燃料バーナであるのがさらに好ましい。
【0038】
焼成工程S5aでは、バーナの火炎により熱される600℃以上の雰囲気下で、破砕残渣を白色になるまで焼成させて、焼成された破砕残渣(以下「焼成物」という。)を得る。破砕残渣は湿っているが、焼成されると同時に乾燥される。焼成に要する時間の長さは、焼成温度により幾らか異なるものの、破砕残渣を十分に焼成させる観点から、4時間以上であるのが好ましく、8時間以上であるのがさらに好ましい。また、この時間の長さは、燃料代をなるべく安価に抑える観点から、15時間以下であるのが好ましく、12時間以下であるのがさらに好ましい。
【0039】
仮に、破砕残渣を600℃未満の雰囲気下で焼成させる場合には、例えば10時間かけても破砕残渣を十分に焼成させるのは難しく、有機物(鶏骨を構成するI型コラーゲン、プロテオグリカン等)に由来する炭素が残存しやすいため、焼成された破砕残渣は黒色または褐色になってしまう。このように炭素が残存しやすいことは、
図2での実線で描かれた曲線(熱重量測定の結果)が示すように、焼成温度が600℃未満である場合に、焼成前の破砕残渣の質量に対して焼成されている破砕残渣の質量が減少した割合が、焼成温度に応じて大きく変化していることからも明らかである。つまり、焼成温度600℃未満では、破砕残渣を更に焼いて質量を減少させる余地が残されている。一方、
図2で焼成温度が600℃以上である場合に、炭素がほとんど残存しないように焼成されるため、この減少した割合が焼成温度に応じて変化する程度は小さい。
【0040】
図2での破線で描かれた曲線(示差熱分析の結果)が示すように、焼成温度が800℃以上である場合に、示差熱量計に設けられた熱電対の起電力が約0μV以下であるから、焼成されている破砕残渣で発熱反応が認められない。このため、焼成温度が800℃以上であると、更に炭素がほとんど残らないように破砕残渣を十分に焼成させることができる。このように、
図1に示す焼成工程S5aでは、更にHAPの含有率が高い焼成物を得る観点から、800℃以上の雰囲気下で焼成させるのがさらに好ましく、1,000℃以上の雰囲気下で焼成させるのがさらにより好ましい。更に燃料代を節約して低コストで焼成物を得る観点から、1,200℃以下の雰囲気下で焼成させるのが好ましく、1,100℃以下の雰囲気下で焼成させるのがさらに好ましい。
【0041】
粉砕工程S7aでは、焼成物を取扱いやすく加工するために、焼成物を粉砕して、粉末状になった焼成物(本HAP組成物)を得る。このためには、例えば、作業者が焼成物を踏んで粉砕しても良いが、効率よく粉砕する観点から、後述する粉砕機により焼成物を粉砕するのが好ましい。焼成物を他の素材と混合させやすい粉末状に加工する観点から、JIS Z 8801−1に規定された公称目開きが850μmである篩を通過するサイズまで粉砕するのが好ましく、この目開きが500μmである篩を通過するサイズまで粉砕するのがさらに好ましい。本HAP組成物が飛散するのを避ける観点から、この目開きが20μmである篩を通過しないサイズに粉砕するのが好ましい。工程を簡略化させる観点から、先の焼成工程S5aでこの目開きが850μmである篩を通過するサイズにまで粉末状になった焼成物を得た場合や、粉末状でなくても問題ない用途で本HAP組成物を用いる場合(例えば、肥料として用いる場合)には、焼成物そのものを本HAP組成物として扱い、粉砕工程S7aを省略するのが好ましい。
【0042】
以上に説明した本法1によれば、鶏ガラの煮汁を調製する飲食店または食品工場で煮込工程S2及び収集工程S3を行うことにより、鶏ガラから抽出されたものの従来は廃棄されていた油脂を燃料として再資源化させることが可能であるため、油脂を含有する廃棄物の排出量が低減されやすい。本法1によれば、焼成工程S5aで油脂の収集物を43℃以上である液状でバーナに供給して燃焼させることにより、断火を避けつつ燃焼させ続けることができる。油脂の収集物を十分に精製しなくても燃料として再資源化させることができるため、燃料代を削減でき、油脂を精製するコストも削減することができ、作業者は断火の度に再点火する作業に煩わされずに済む。本法1によれば、焼成工程S5aで破砕された鶏骨の残渣を600℃以上の雰囲気下で焼成させて、本HAP組成物を得ることができる。
【0043】
本発明に係る再資源化させる方法の第2実施態様(以下「本法2」という。)は、前述した本法1と概ね同様である。本法2について本法1と異なる部分を主に説明する。
図3に示すように、本法2は、準備工程S1、煮込工程S2、収集工程S3、乾燥工程S6、粉砕工程S7b、及び焼成工程S5bを含む。本法2での準備工程S1、煮込工程S2、及び収集工程S3は、前述した本法1と同様である。
【0044】
乾燥工程S6では、先の煮込み工程S2で得られた鶏骨の残渣を一時的に溜めておいたり食品工場等から別の処理場へ運搬したりする場合にこの残渣が腐敗して悪臭を発するのを避ける観点、及びこの残渣を後の焼成工程S5bで焼成させやすくする観点から、この残渣を乾燥させる。例えば、鶏骨の残渣を日干し又は陰干しにより乾燥させても良いし、凍結乾燥させても良い。短時間で効率よく十分に乾燥させる観点から、鶏骨の残渣を乾燥機により加熱して乾燥させるのが好ましく、電子レンジにより鶏骨の残渣をマイクロ波加熱して乾燥させるのも好ましい。同様の観点から、バーナの火炎により鶏骨の残渣を少し焼いて乾燥させるのがさらに好ましく、このための燃料代を安く抑える観点から、本法1の焼成工程S5aの説明で前述したバーナや油脂加熱物などを用いて鶏骨の残渣を少し焼いて乾燥させるのがさらに好ましい。夏季でも鶏骨の残渣が腐敗するのを避ける観点から、乾燥工程S6では鶏骨の残渣における水分の含有量が、10質量%以下になるまで乾燥させるのが好ましく、5.0質量%以下になるまで乾燥させるのがさらに好ましい。
【0045】
本法2での粉砕工程S7b(
図3)では、乾燥された鶏骨の残渣を粉砕して、粉砕された残渣(以下「粉砕残渣」という。)を得て、この粉砕残渣を次の焼成工程S5bに供する。この点を除けば、粉砕工程S7bは前述した本法1での粉砕工程S7a(
図1)と同様である。工程を簡略化させる観点から、鶏骨の残渣を乾燥させて粉砕させることが可能な機器により、
図3に示す乾燥工程S6と粉砕工程S7bをまとめて行うのが好ましい。このような機器としては、例えば、セントリドライミル(株式会社ミクロパウテック株式会社製)が挙げられる。
【0046】
本法2での焼成工程S5b(
図3)は、粉砕残渣を白色になるまで焼成させて、得られる粉末状の焼成物をそのまま本HAP組成物として扱う。この点を除けば、焼成工程S5bは前述した本法1での焼成工程S5a(
図1)と同様である。
【0047】
以上に説明した
図3に示す本法2によれば、鶏骨の残渣を乾燥させて腐敗を避けるから、焼成工程S5b前に、乾燥された鶏骨の残渣または粉砕残渣を容易に長期保管することができる。例えば、飲食店や食品工場で営業日に粉砕残渣を少しずつ溜めておき、休業日に焼成工程S5bを行って溜まった粉砕残渣をまとめて焼成させることができる。あるいは、多数の飲食店や食品工場でそれぞれ調製された粉砕残渣を収集して、一つの処理場でまとめて焼成工程S5bを行うのが容易になる。このように、本法1と比べて本法2は、作業者にとって都合の良い時期や場所で焼成工程S5bを行いやすい点で作業者の負担を軽減できるため、工程の一部または全部を飲食店や食品工場で更に長期にわたり継続して実施しやすくなっている。
【0048】
本法2で粉砕工程S7bを行ってから乾燥工程S6を行うように工程の順番を入れ替えても良いが、粉砕残渣よりも粉砕されていない鶏骨の残渣の方が乾燥させやすい観点から、
図3に示すように乾燥工程S6後に粉砕工程S7bを行うのが好ましい。本法1及び本法2の各々は、本HAP組成物を更に粉砕する工程を含んでも良いし、本HAP組成物にバインダーを混合して造粒して600℃以上で焼成することによりHAPを含んで成る粒状物を得る工程を含んでも良い。バインダーは、個々の粒子を結合して凝集粒子を形成させるための組成物であり、セラミックス成形に用いられているバインダーが好ましい。バインダーとして、例えば、コロイド状アルミナ、コロイド状シリカなどが挙げられる。飲食店または食品工場で効率良く行う観点から、本法1及び本法2の各々は、以下に説明するシステムの一部または全部を用いて行われるのが好ましい。
【0049】
<再資源化させるシステム>
本発明に係る再資源化させるシステム(以下「本システム」という。)は、鶏骨を含んで成る鶏ガラに由来する廃棄物を再資源化させるためのシステムであり、例えば、
図1に示す準備工程S1で用いられる輸送機器、煮込工程S2で用いられる調理機器、収集工程S3で用いられる油脂の収集機器、破砕工程S4で用いられる破砕機、焼成工程S5aで用いられる焼成機器、及び粉砕工程S7aで用いられる粉砕機を備える。
【0050】
準備工程S1で用いられる輸送機器は、食肉処理場で鶏から食肉を得る際に副産物として生じる鶏ガラを、飲食店または食品工場へ運送する機器である。例えば、複数の鶏ガラが収容される容器や、食肉処理場から飲食店または食品工場へ前記容器ごと複数の鶏ガラを運送するために用いられる、車両、船舶、及び輸送機からなる群より選ばれた1種以上の機器が挙げられる。輸送機器は、鶏ガラの煮汁を調製する飲食店または食品工場で、鶏骨を含んで成る鶏ガラを準備する準備手段として機能させることができる。
【0051】
食肉処理場から遠方に飲食店または食品工場がある場合には、新鮮な鶏ガラを準備する観点から、本システムでの準備手段は、複数の鶏ガラが収容される容器、並びに、この容器ごと複数の鶏ガラを冷凍しつつ飲食店または食品工場へ輸送する車両、船舶、及び輸送機からなる群から選ばれた1種以上の機器であるのが好ましい。あるいは、食肉処理場の近くに飲食店または食品工場がある場合に、本システムでの準備手段は、食肉処理場から鶏ガラを飲食店もしくは食品工場へ輸送するベルトコンベア、又は食肉処理場から鶏ガラを飲食店もしくは食品工場へ持ち運ぶ作業者であっても良い。
【0052】
煮込工程S2で用いられる調理機器としては、鶏ガラを収容して煮込むための鍋釜、並びに、この鍋釜に収容された鶏ガラ及び水を加熱するための加熱調理器具(例えば、ボイラー等の熱交換器、コンロ、又はIHヒーター、等)が挙げられる。これらの調理機器は、煮込工程S2が実施される飲食店または食品工場に設けられる。こってりした鶏ガラ風味を感じやすい煮汁を大量に効率よく得やすい観点から、この調理機器には蒸気釜が含まれるのが好ましい。調理機器は、鶏ガラが煮込まれて、この鶏ガラから抽出された油脂を含有する煮汁、及びこの油脂を抽出された鶏骨の残渣を得られる煮込手段として機能させることができる。
【0053】
収集工程S3で用いられる油脂の収集機器としては、収集工程S3の説明で前述したグリーストラップが挙げられる。このグリーストラップは、鶏ガラから抽出された油脂が収集されて油脂の収集物が得られる油脂収集手段として機能させることができる。あるいは、油脂収集手段は、鶏ガラの煮汁に由来する含油廃液を溜める水槽、この含油廃液に混合されるヘキサン、及びヘキサンが含油廃液に混合されて油脂がヘキサンに抽出されて形成される抽出層を大まかに回収する機器、及び回収物を約80℃で加熱して回収物からヘキサンを蒸発させるヒーターの組み合わせであっても良い。
【0054】
鶏ガラから抽出された油脂の融点は30℃前後であるから、この油脂を含有する鶏ガラの煮汁そのもの、この煮汁を用いて調理する過程で生じた含油廃液、又は調理により得られた料理(例えばラーメン)の残汁を排水溝に流すと、この排水溝からグリーストラップに至る配管内で油脂が冷えて固形化するために配管が詰まる問題が生じやすい。この問題は、飲食店または食品工場が寒冷地にある場合や、冬季に鶏ガラの煮汁を調製する場合に頻発する。この問題をも解決する観点から、本システムでの油脂の収集機器(油脂収集手段)は、鶏ガラの煮汁を調製する飲食店または食品工場で、食器等の洗浄槽(シンク)の排水溝からグリーストラップに至る途中に設けられた、ヒーターにより43℃以上に保たれた油脂分離槽であるのが好ましい。同様の観点から、本法1又は本法2での収集工程S3では、この油脂分離槽内に阻集された含油廃液の液面に浮遊する油脂を回収するのが好ましい。油脂の固形化を避けて更に効率良く油脂を収集する観点から、この油脂分離槽の温度は、45℃以上に保たれるのがさらに好ましく、48℃以上に保たれるのがさらにより好ましい。また、含油廃液が酸化して悪臭を発するのを抑える観点から、この油脂分離槽の温度は、60℃以下に保たれるのが好ましく、55℃以下に保たれるのがさらにより好ましい。
【0055】
腐敗した含油廃液は汚く悪臭を発するため、作業者には、含油廃液を回収して乾燥させる作業に心理的な負担が大きいという問題がある。この問題をも解決する観点から、本システムでの油脂の収集機器(油脂収集手段)は、上記した油脂分離槽、及びこの油脂分離槽内に阻集された含油廃液から油脂を汲み上げるオイルスキマーの組み合わせであるのがさらに好ましい。同様の観点から、本法1又は本法2での収集工程S3では、この油脂分離槽およびオイルスキマーの組み合わせにより、油脂を収集して収集物を得るのがさらに好ましい。
【0056】
図1に示す本法1の破砕工程S4で用いられる破砕機として、例えば、一軸破砕機、二軸破砕機、ハンマーで打撃を加える方式の破砕機、等が挙げられる。破砕機は、鶏骨の残渣を破砕させる破砕手段として機能させることができる。本HAP組成物の製造コストをなるべく安く抑える観点から、本法1又は本法2の煮込工程S2で得られた鶏骨の残渣が、JIS Z 8801−1に規定された公称目開きが5.6mmである篩を通過するサイズに砕けている場合には、本システムが破砕機(破砕手段)を備えていなくても良い。
【0057】
鶏骨の残渣を低コストで簡便に破砕する観点、及び破砕残渣が飛散するのを避けつつ収集して次の焼成工程S5aに供するのを容易にする観点から、本システムでの破砕手段は、破砕残渣を焼成するための窯炉の内部に連通しており、鶏骨の残渣が供給されるとこの残渣を破砕しつつ窯炉(窯炉の一例として焼成炉)内へ移送する二軸破砕機であるのが好ましい。例えば、
図4に示すスクリューコンベア11aが挙げられる。
【0058】
スクリューコンベア11aは、ホッパ12aと、このホッパ12aの下部から略水平方向へ伸びるパイプ13aと、このパイプ13a内でパイプ13aの長さ方向に沿って伸びるシャフト14aと、このシャフト14aに接続されたモーター15aと、を備える。パイプ13aの一端部16aは、ホッパ12aの下部と連通している。パイプ13aの他端部17aは、焼成炉21aの側壁部22aを貫通して焼成炉21aの内部23aと連通している。シャフト14aは、パイプ13a内に二軸設けられており、
図4に描かれた一軸(14a)の背後に他の一軸(不図示)が配されている。二軸のシャフト14aの各々には、その長さ方向に沿ってその外周に螺旋状の羽根(スクリュー羽根)18aが設けられている。モーター15aは、パイプ13aの一端部16a側に設けられており、駆動させるとパイプ13a内で二軸のシャフト14a各々が互いのスクリュー羽根18aに接触しないように周方向に回転するように二軸のシャフト14a各々に接続されている。
【0059】
スクリューコンベア11aのホッパ12a内に鶏骨の残渣を供給すると、この残渣はホッパ12a内を流下してパイプ13aの一端部16a内に至り、パイプ13a内でその周方向に回転する二軸のシャフト14a及びスクリュー羽根18aにより攪拌されて破砕されながら焼成炉21aの内部23aへ移送される。焼成炉21aの内部23aに至った破砕残渣(破砕された鶏骨の残渣)3は、焼成炉21aの側壁部22aに設けられた整流板19上を流下して、焼成炉21aの内底部24に載置された焼成釜25に収容される。この焼成釜25は、焼成炉21aの側壁部22aの下部に設けられた扉26が開閉されることにより、焼成炉21aの内底部24に載置されたり、焼成炉21a外へ取り出されたりすることができる。
【0060】
焼成工程(S5a又はS5b)で用いられる焼成機器として、例えば、破砕残渣または粉砕残渣が収容される焼成釜と、油脂の収集物を供給されて一時的に溜める燃料タンクと、このタンク内に溜められた油脂の収集物を43℃以上に加熱するヒーターと、ヒーターにより加熱された油脂の収集物(油脂加熱物)を容器内から導出する配管と、配管を通じて油脂加熱物を供給されて燃焼させる液体燃料バーナと、を備える燃焼機器が挙げられる。破砕残渣または粉砕残渣を焼成釜ごと液体燃料バーナの火炎で熱して、600℃以上の雰囲気下で焼成させることが可能である。この場合の焼成機器は、油脂の収集物が43℃以上に加熱されてバーナに供給されて燃焼されて、鶏骨の残渣が600℃以上の雰囲気下で白色になるまで焼成される焼成手段として機能させることができる。
【0061】
本システムでの焼成手段として、
図5に示すように、焼成炉21aと、金属製の燃料タンク31と、電熱ヒーター41(以下「第1ヒーター41」という。)と、燃料導出管51と、電熱ヒーター42(以下「第2ヒーター42」という。)と、送液ポンプ54と、液体燃料バーナ61と、ブロワ66(以下「第1ブロワ66」という。)と、を備える燃焼機器1aが挙げられる。
【0062】
燃焼機器1aでの焼成炉21aは、
図4及び
図5に示すように、破砕残渣3を収容する焼成釜25が載置される内底部24と、この内底部24の周縁から立設する側壁部22aと、この側壁部22aの上端部を塞ぐ天井部に設けられた煙突29aと、側壁部22aの下側に設けられた扉26(
図5に不図示)と、側壁部22aから突出する断面方形の管状である保炎部28aと、側壁部22aの上側に設けられたブロワ27(以下「第2ブロワ27」という。
図4に不図示。)を備える。内底部24、側壁部22a、及び天井部に囲まれて、焼成炉21aの内部23aの空間が形成されている。この空間は、保炎部28aの管内の空間と連通している。なお、保炎部28aは
図4の紙面よりも奥側に設けられており、第2ブロワ27は
図4の紙面よりも手前側に設けられている。
【0063】
図5に示すように、焼成炉21aの内部23aから保炎部28aの管が伸びる方向で、保炎部28aの先端部から幾らか離れて燃料タンク31が配される。燃料タンク31の天井部には、開閉自在の蓋32が設けられている。燃料タンク31の側部34及び底部35には、第1ヒーター41が取り付けられている。燃料タンク31の底部35を貫通して、燃料導出管51の一端部52が燃料タンク31の内部33に連通している。この燃料供給管51の他端部53は、液体燃料バーナ61の給油口62に連通している。燃料供給管51の一端部52から他端部53へ至る途中の部分は、第2ヒーター42に覆われており、送液ポンプ54が設けられている。液体燃料バーナ61には、給油口62、給気口63、及び保炎部28aの管内へ向けられたノズル先端部に火口部64が設けられている。液体燃料バーナ61の給気口63は、送風管65を介して第1ブロワ66に接続される。
【0064】
燃焼機器1aでは、燃料タンク31の蓋32が上げられて、油脂の収集物5aが燃料タンク31の内部33に供給されて一時的に溜められる。第1ヒーター41が発熱して燃料タンク31の側部34及び底部35が温められるため、燃料タンク31の内部33に溜められた油脂の収集物5aも温められて43℃以上である液状に保たれる。この液状である油脂の収集物5a(油脂加熱物5a)は、十分な流動性を有するため、燃料タンク31の内部33から流下して燃料導出管51の一端部52内へ導出される。第2ヒーター42が発熱して燃料導出管51が温められるため、燃料導出管51内に導出された油脂の収集物5b(油脂加熱物5b)も温められて、43℃以上である液状に保たれる。送液ポンプ54を稼働させると、この油脂加熱物5bは、燃料導出管51内から一定量ずつ液体燃料バーナ61の給油口62に供給される。このため、送液ポンプ54は、給油量調節機構57(液体燃料バーナ61とは別に、43℃以上の液状である油脂の収集物5bを液体燃料バーナ61の給油口62に単位時間あたりに供給する量を調節する機構57)として機能させることができる。
【0065】
さらに、燃焼機器1aで第1ブロワ66を稼働させて、送風管65を通じて液体燃料バーナ61の給気口63に空気を圧送すると、液体燃料バーナ61のノズル先端部(火口部64)で油脂加熱物と空気の混合気が形成されて、この混合気が保炎部28aの管内へ噴出される。火口部64によりこの混合気は点火されて燃焼して、生じる火炎が保炎部28aの管内を介して焼成炉21aの内底部24を熱する。この熱により、内底部24に載置された焼成釜25に収容された破砕残渣3は、600℃以上の雰囲気下で焼成される。破砕残渣3が焼成されて生じる二酸化炭素や水蒸気は、焼成炉21aの内部23aの空間を上昇して、煙突29aを介して大気中に放出される。この際、第2ブロワ27が焼成炉21aの内底部24の上方から内底部24へ向けて空気を圧送することにより、破砕残渣3が水蒸気等と共に大気中に飛散するのは避けられる。破砕残渣3が600℃以上の雰囲気下で焼成されて生成する焼成物(不図示)は、
図4に示す扉26が開かれたときに、焼成釜25ごと焼成炉21a外に取り出される。
【0066】
上記した燃焼機器1aは、
図4に示すスクリューコンベア11aと連結されているから、
図1に示す破砕工程S4及び焼成工程S5aを一時にまとめて実施できるため、工程を簡略化できる点で好ましい。また、
図5に示す燃焼機器1aでは、燃料タンク31から液体燃料バーナ61に至る途中の油脂加熱物5bが、第2ヒーター42に温められて流動性を保つ。このため、油脂加熱物5bが液体燃料バーナ61に更に円滑に供給されやすい観点、送液ポンプ54(給油量調節機構57)により液体燃料バーナ61への油脂加熱物5bの給油量を調整しやすい観点、及び断火を更に避けやすい観点から、焼成手段20として燃焼機器1aは好ましい。この燃焼機器1aでは窯炉の一種である焼成炉21aの内底部24で破砕残渣3を焼成させるため、窯炉を用いることなく焼成させる場合と比べて、油脂の収集物5bの燃焼量を少なく抑えても破砕残渣3を600℃以上の雰囲気下に保ちやすい観点からも、焼成手段20として燃焼機器1aは好ましい。
【0067】
本システムは、更に効率よく鶏ガラの残渣を一時に破砕して焼成して作業者への負担を軽減する観点から、
図4に示すスクリューコンベア11a及び
図5に示す焼成機器1aの組み合わせに代えて、
図6に示すスクリューコンベア11b及び焼成機器1bの組み合わせを備えるのがさらに好ましい。
【0068】
スクリューコンベア11bは、
図4で前述したスクリューコンベア11aと概ね同じ構造である。ただし、スクリューコンベア11aではパイプ13aの他端部17aが焼成炉21aの側壁部22aを貫通していることに対して、
図6に示すスクリューコンベア11bではパイプ13bの他端部17bがロータリーキルン21bの固定された側壁部22bを貫通している点で、構造が若干異なる。
【0069】
図5で前述した焼成装置1aと同様に、
図6に示す焼成装置1bは、燃料タンク31、第1ヒーター41、燃料導出管51、第2ヒーター42、送液ポンプ54(給油量調節機構57)、液体燃料バーナ61、及び第1ブロワ66を備える。ただし、
図5で前述した焼成装置1aが焼成炉21aを備えることに対して、
図6に示す焼成装置1bは窯炉の一種であるロータリーキルン21bを備える点で異なる。このロータリーキルン21bは、横倒しにされた筒状である胴部71と、この胴部71の一端部72を塞ぐように一端部72に接する固定された側壁部22bと、この側壁部22bの上側に設けられた煙突29bと、胴部71の一端部72側の外周面および胴部71の他端部73側の外周面にそれぞれ設けられた金属製のタイヤ部74と、このタイヤ部74を介して胴部71をその周方向に回転させる駆動ギア(不図示)と、筒状である胴部71の内周面75に接しないように胴部71の内方に横倒しに設けられた筒状である保炎部28bと、を備える。焼成装置1bでの液体燃料バーナ61のノズル先端部(火口部64)は、保炎部28bの管内に向けられている。火口部64から保炎部28bの管内へ噴出される火炎の熱がロータリーキルン1bの内部23bの広範囲にわたり伝わりやすいように、保炎部28bの管の所々に貫通孔が多数設けられている(不図示)。
【0070】
スクリューコンベア11bのホッパ12b内に鶏骨の残渣を供給すると、この残渣はホッパ12bからパイプ13bの一端部16b内に流下して、周方向に回転する二軸のシャフト14b及びスクリュー羽根18bにより攪拌されて破砕されながらパイプ13bの他端部17b内に移送されて、この他端部17bに設けられた孔からロータリーキルン21bの内部23bへ流下する。このため、スクリューコンベア11bは、破砕手段10として機能させることができる。
【0071】
図5で前述した液体燃料バーナ61と同様に、
図6に示す液体燃料バーナ61のノズル先端部(火口部64)で油脂加熱物5bと空気の混合気が形成されて、この混合気は火口部64から保炎部28bの管内へ噴出されつつ点火されて、保炎部28bの管内で燃焼する。この燃焼によりロータリーキルン1bの内部23bの空間が熱せられて、ロータリーキルン1bの内部23bに至った破砕残渣(不図示)が600℃以上の雰囲気下で焼成される。また、ロータリーキルン1bの胴部71がその周方向に回転するため、焼成されている途中の破砕残渣(不図示)は、胴部71の内周面75に薄く広げられて効率よく焼成されながら胴部71の一端部72側から他端部73側へ移送される。回転する胴部71の他端部73は開放されているため、破砕残渣が600℃以上の雰囲気下で焼成された焼成物は、この他端部73からロータリーキルン1b外へ取り出される。このように、ロータリーキルン1bを備える焼成装置1bは、焼成手段20として機能させることができる。
【0072】
図1に示す本法1の煮込工程S2で十分に砕けた鶏骨の残渣が得られた場合には、破砕しなくてもそのまま破砕残渣として扱って上手く焼成させることが可能であるため、
図4又は
図6に示すスクリューコンベア(11a又は11b)のシャフト(14a又は14b)は一軸であっても良い。本法2を行う場合には、本法1での鶏骨の残渣や破砕残渣3の代わりに粉砕残渣が
図3に示す焼成工程S5bに供されるため、同様の理由で
図4又は
図6に示すシャフト(14a又は14b)は一軸であっても良い。
図4及び
図6に示すパイプ(13a、13b)は、その一端部(16a、16b)から他端部(17a、17b)へ向けて、上昇するように傾斜が設けられていても良いし、下降するように傾斜が設けられていても良い。
【0073】
図5及び
図6に示すように給油量調節機構57と液体燃料バーナ61が併用される場合に、さらに断火を避ける観点から、液体燃料バーナ61は、その給油口62からノズル先端部(火口部64)へ至る管路の幅を調節できる機構を備えていない比較的に単純な構造のバーナであるのが好ましい。
図5及び
図6に示す燃料タンク31は、その内部33に溜められた油脂加熱物5aから自然に分離した水を必要に応じて抜き出す排水口および排水弁が底部35に設けられるのが好ましい。
図5及び
図6に示す第1ブロワ66、並びに
図5に示す第2ブロワ27に代えて、それぞれ送風機を用いても良い。油脂加熱物を低コストで更に燃焼させやすくする観点から、
図5及び
図6に示す煙突(29a、29b)から排出される高温の蒸気を第1ブロワ66へ誘導する第1蒸気誘導管を更に設けて、この蒸気と混合されるか又は混合されずに熱交換されて加熱された空気を、第1ブロワ66によりバーナ61の吸気口63へ圧送するのが好ましい。
図5に示す焼成炉21aの内部23aを低コストで高温に保ちやすくする観点により、煙突29aから排出される高温の蒸気を第2ブロワ27へ誘導する第2蒸気誘導管を更に設けて、この蒸気と混合されるか又は混合されずに熱交換されて加熱された空気を、第2ブロワ27により焼成炉21aの内部23aへ圧送するのが好ましい。
図6に示す胴部71は、その一端部72から他端部73へ向けて、上昇するように傾斜が設けられていても良いし、下降するように傾斜が設けられていても良い。
【0074】
図5及び
図6に示す第1ヒーター41及び第2ヒーター42と共に、又はこれらのヒーター(41、42)に代えて、管内に高温の蒸気が送られるスチーム管が、燃料タンク31の側部34及び底部35並びに燃料導出管51の周囲に取り付けられても良い。この場合、スチーム管内に送られる蒸気の熱により、油脂の収集物(5a、5b)は43℃以上に加熱されて液状に保たれる。油脂の収集物(5a、5b)を加熱する費用も節約する観点から、煙突(29a、29b)から排出される高温の蒸気をスチーム管内へ導く第3蒸気誘導管が更に設けられるのが好ましい。同様の観点に加えて油脂の収集物(5a、5b)を効率良く加熱し続ける観点から、ヒーター(41、42)とスチーム管と第3蒸気誘導管を併用する場合に、液体燃料バーナ61で点火してからスチーム管が高温になるまではヒーター(41、42)により油脂の収集物(5a、5b)を加熱して、スチーム管が高温になってからはヒーター(41、42)による加熱を止めるのがさらに好ましい。
【0075】
図1又は
図3に示す粉砕工程(S7a又はS7b)で用いられる粉砕機(粉砕手段)は、乳鉢または石臼のように、人力で粉砕させる粉砕機であっても良い。更に効率よく粉砕させる観点、及び細かく粉砕し過ぎて飛散するのを避ける観点から、例えば、自生粉砕ミル、スタンプミル、リングミル、ローラーミル、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、ボールミル、及びロッドミルからなる群より選ばれた1種以上の粉砕機がさらに好ましい。
図3に示す本法2を行う場合に本システムは、乾燥工程S6を行うために、鶏骨の残渣を乾燥させる乾燥手段を備えるのが好ましい。本法2の説明で前述したように、乾燥手段として、例えば、電子レンジ、凍結乾燥機、又はバーナ等が挙げられる。乾燥手段は、低コストで簡便に乾燥させる観点から
図5又は
図6に示す焼成装置(1a又は1b)が好ましく、
図3に示す乾燥工程S6及び粉砕工程S7bを一時に済ませる観点からセントリドライミルが好ましい。
【0076】
以上に説明した本システムによれば、前述した本法1と同様の理由で、鶏ガラの煮汁を調製するか又は前記煮汁を用いて調理をする飲食店または食品工場で生じる、鶏ガラに由来する廃棄物の全般を、簡便かつ低コストで再資源化させることが可能である。
【0077】
<鶏骨に由来するHAPを含んで成る組成物>
本HAP組成物は、鶏ガラに含まれる鶏骨に由来するHAPを含んで成り、この鶏ガラが煮込まれて油脂を抽出された鶏骨の残渣が600℃以上の雰囲気下で白色になるまで焼成されて成る組成物である。このように焼成されたことで、本HAP組成物に含有されるHAPは結晶性を示す。本HAP組成物は、低コストで簡便に量産可能である観点から、前述した本システムを用いて本法1又は本法2により得られたものが好ましい。
【0078】
本HAP組成物は、含水率が低く有機物をほとんど含有していないために腐敗しにくい観点から、焼成工程(S5a若しくはS5b)又は粉砕工程S7a(
図1)により得られたそのままの組成物であるのが好ましい。飛散しにくい粉体として扱いやすい観点から、本HAP組成物の平均粒子径が、30μm以上であるのが好ましく、50μm以上であるのがさらに好ましい。食品として経口摂取する場合に消化吸収されやすい観点から、本HAP組成物の平均粒子径が、200μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがさらに好ましい。平均粒子径は、JIS Z 8825−1:2001に準拠した粒子径解析・レーザー回析法にて測定される、体積基準粒子分布で累積値50%の粒子径、つまりメジアン径である。焼成工程(S5a若しくはS5b)又は粉砕工程S7aにより得られたそのままである場合の本HAP組成物は、次の表1に示すようにHAPを多量に含有している。
【0080】
本HAP組成物は、不足しがちなカルシウム摂取量を健康維持のために補う観点から、食品組成物として用いられるのが好ましい。食品組成物として、加工食品、調味料、食品添加物、サプリメント、ペットフード、及びこれらの食品に配合される原料からなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。加工食品として、例えば、漬物、乾物、練り製品、粉類、缶詰、冷凍食品、インスタント食品、乳製品、菓子類、嗜好品、飲料などが挙げられる。
【0081】
本HAP組成物は、焼成工程(S5a若しくはS5b)又は粉砕工程S7aにより得られたそのままの組成物が、必要に応じて、他の素材と混合されて成るものであっても良い。例えば、食品組成物として用いられる場合の本HAP組成物は、公知の食品素材と混合されて成るものであっても良い。食品に配合される原料、又はサプリメントとして用いられる場合の本HAP組成物は、薬理学的に許容される公知の添加剤が1種以上混合されて成るものであっても良い。公知の添加剤として、例えば、賦形剤、甘味料、抗酸化剤、粘滑剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、着香剤、着色剤などが挙げられる。賦形剤と混合される場合の本HAP組成物は、例えば、タブレット状、錠剤状、顆粒状、錠剤状、からなる群より選ばれた1種以上の形状に成形されていても良い。
【0082】
本HAP組成物は、重金属に対して優れた吸着性を有する観点から、重金属の吸着剤として用いられるのが好ましい。重金属としては、例えば、カドミウム、鉛、水銀が挙げられる。この場合の本HAP組成物は、吸着された重金属を回収しやすくする観点から、粉砕工程S7a(
図1)又は焼成工程S5b(
図3)により得られたそのままの組成物が、前述したバインダーと混合されて焼成された粒状物であるのがさらに好ましい。
【0083】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。本発明は、同一の作用または効果が生じる範囲内で、いずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【実施例】
【0084】
鶏ガラの煮汁を調製している食品工場で、この煮汁に由来する含油廃液を溜める水槽を設けた。この食品工場から提供された煮汁を用いて調理されたラーメンを日常的に客に提供するラーメン店で、シンクの排水溝からグリーストラップに至る途中に、ヒーターにより約50℃に保たれた油脂分離槽、及びこの油脂分離槽内に阻集された含油廃液から油脂を汲み上げるオイルスキマーを有する油脂の収集機器を設けた。
図4で前述したスクリューコンベア11aと比べてシャフト14aが一軸である点を除けば同様のスクリューコンベア、及び
図5に示す燃焼機器1aと同様の燃焼機器を準備した。この燃焼機器に備えられた焼成炉の内容積は、1.28m
3であった。この燃焼機器での液体燃料バーナとして、定格燃焼量が15L/時間であるオイルバーナHP−15(松田機械製作所製)を準備した。オイルバーナHP−15は、その火口部が設けられたノズル先端部で油脂加熱物を噴霧して空気との混合気を形成する構造である、外部混合形の強制通風式のバーナである。
【0085】
株式会社児湯食鳥の都城工場において、50日齢以上かつ55日齢以下であり体重約3.4kgである白色コーニッシュ種の雄性の鶏から食肉を得る過程で、鶏ガラが大量に生じた。この大量の鶏ガラのうちから実質的に鶏の大腿骨から成る鶏ガラを選別して、容器に詰め込んで冷凍したままトラックで輸送して、生じてから24時間以内に上記した食品工場に搬入した。
【0086】
食品工場に搬入された鶏ガラを蒸気釜に収容して約100℃で8時間かけて煮込み、鶏ガラから抽出された油脂を含有する煮汁、及びこの油脂を抽出された鶏骨の残渣を得た。得られた煮汁の液面部分は、油脂を必要以上に多く含有しており食用に適さないから、煮汁から取り除かれて含油廃液として水槽に溜められた。この含油廃液にヘキサンが混合されて、形成される油脂の抽出層(ヘキサンの層)を大まかに回収して、回収物を約80℃で加熱してヘキサンを蒸発させて、残った油脂を得た。煮汁の液面以外の部分は、食品工場から複数のラーメン店へ搬送された。ラーメン店では、この煮汁を用いてラーメンが調理され、このラーメンは客の食用に供された。調理の過程で生じた廃液、及び客に食べ残されたラーメンの残汁が、ラーメン店のシンクの排水溝に流された。ラーメン店に設けられた収集機器により含油廃液から油脂を収集した。食品工場で得られた油脂と、複数のラーメン店で収集した油脂を混合して、油脂の収集物を得た。この収集物は、油脂の他にも、水や麺の破片などの不純物を幾らか含有するものであった。
【0087】
約100℃で8時間煮込まれた鶏骨の残渣は、公称目開きが5.6mmである篩を通過するサイズに脆く砕けていた。この鶏骨の残渣をスクリューコンベアのホッパに投入した。投入された残渣は、シャフト及びスクリュー羽根により攪拌され更に砕けながら焼成炉の内部へ移送された。この移送の過程で更に砕けた残渣(破砕残渣)は、焼成炉の内底部に載置された焼成釜に収容された。油脂の収集物を金属製の燃料タンク内に充填して、この燃料タンクの側部および底部に設けられた電熱ヒーターにより温めて、約50℃である液状に保った。この燃料タンクの底部からオイルバーナHP−15の給油口に至る燃料導出管を、この管に沿って設けられた電熱ヒーターにより温めて、燃料タンク内から燃料導出管内へ導出された油脂の収集物(油脂加熱物)を約50℃である液状に保った。この約50℃の油脂加熱物がオイルバーナHP−15の給油口に約15L/時間のペースで供給されるように、燃料導出管の途中に設けられた送液ポンプを稼働させた。オイルバーナHP−15の給気口に送風管を介して接続されたブロワを稼働させた。
【0088】
約50℃である油脂加熱物と、ブロワにより圧送された空気とが、オイルバーナHP−15のノズル先端部で混合されて混合気を形成して、この混合気がノズル先端部から焼成炉の保炎部の管内へ噴出されつつ火口部により点火されて、保炎部の管内で燃焼された。この燃焼により生じる火炎の熱により焼成炉の内部の空間を約1,020℃の雰囲気下に保ち、この雰囲気下で10時間かけて破砕残渣が白色になるまで焼成させて、実施例1に係るHAPを含んで成る組成物を得た。
【0089】
上記した実施例1に係る組成物を得るにあたり、鶏ガラを準備して、煮込んで煮汁及び鶏骨の残渣を得て、煮汁を用いてラーメンを調理して客に提供するまでの過程は、食品工場およびラーメン店で日常的に行なわれていた。また、従来から食品工場では、下水道に排水を放流するための基準を満たすために、含油廃液にヘキサンを添加して形成される抽出層(ヘキサン及び油脂)を取り除いていた。このため、これらの過程では、本法1を実施するための追加費用は発生しなかった。その後、本発明者らが油脂の収集物を得て、鶏骨の残渣を破砕して焼成するにあたり、市販の燃料を用いなかったため、発生した費用はスクリューコンベアや電熱ヒーター等に要した電気代程度であった。また、破砕残渣を10時間かけて焼成させる間に、オイルバーナHP−15は一度も断火にならなかった。これらの理由により、実施例1に係る組成物では、その1kgあたりの製造費が30円前後となった。なお、実施例1に係る組成物を製造するために、仮にオイルバーナHP−15に燃料としてプロパンガスを供給して10時間かけて焼成する場合には、製造費が1kgあたり1,000円を超過していたことになる。
【0090】
実施例1に係る組成物について、X線回折装置(株式会社リガク製、RINT2200V/PC)を用いてX線回析法を行ったところ、
図7に示すX線回折パターンのチャート図が得られた。このチャート図では、HAPの結晶相が存在することを示すシャープなピークが認められ、非晶質の存在を示すブロードなハローパターンは小さかった。このため、実施例1に係るHAP組成物に含有されるHAPは、結晶性を示すことが明らかとなった。
【0091】
実施例1に係る組成物について、レーザー回折式粒度分布測定装置(Malvern社製、Mastersizer3000)を用いて粒度分布を計測して、
図8に示すグラフが得られた。実施例1に係る組成物の平均粒子径(メジアン径)は76.6μmであった。
【0092】
さらに、重金属に対する吸着性を有しないバインダーを準備した。実施例1に係る組成物をこのバインダーと混合して、得られる混合物を粒状に成型してから約1,000℃で焼成して、直径約3mmの粒状物を複数得た。この粒状物をクロマトカラム(内径3cm)内に厚さ10cmの層を形成するように充填した。ICP(Inductively Coupled Plasma)分析用元素標準液として、カドミウム標準液、鉛標準液、及び水銀標準液をそれぞれ準備した(和光純薬工業株式会社製、濃度1,000ppm)。これらの標準液をそれぞれ濃度2ppmになるように希釈した希釈液3種類を調製した。約25℃に保たれた室内で、この希釈液3種類をクロマトカラム内に流下させて、粒状物の層を透過してクロマトカラムの下方へ滴下された溶液を回収した。この溶液に含有されているカドミウム、鉛、及び水銀の含有量を、ICP発光分析装置(島津製作所株式会社製、ICPS−8100C1)により計測した結果、次の表2に示す結果が得られた。
【0093】
【表2】
【0094】
表2に示すように、実施例1に係る組成物を含有する粒状物は、カドミウム、鉛、及び水銀の吸着性に非常に優れていることが明らかとなった。バインダーとの混合前の実施例1に係る組成物は、その表面の一部をバインダーにより覆われていないため、この粒状物よりも更にカドミウム、鉛、水銀などの重金属の吸着性に優れているであろうと推察される。なお、特許文献1によれば、焼成工程で骨部分を焼成する温度範囲が300℃から350℃である場合に、得られるHAPが吸着能力の高いものになるため、例えば吸着材として利用できる旨が記載されている。この特許文献1の記載に反して、約1,020℃で焼成されて得られた実施例1に係る組成物が、表2に示すように予想外に優れた吸着作用を示したといえる。