特開2019-217464(P2019-217464A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2019-217464コアシェル型酸素吸放出材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒、及び排ガス浄化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-217464(P2019-217464A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】コアシェル型酸素吸放出材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒、及び排ガス浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20191129BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20191129BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20191129BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20191129BHJP
   B01J 20/06 20060101ALI20191129BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20191129BHJP
   B01J 20/32 20060101ALI20191129BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20191129BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20191129BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   B01J23/63 AZAB
   B01J35/08 B
   B01J37/04 102
   B01J37/08
   B01J20/06 B
   B01J20/28 Z
   B01J20/32 A
   B01D53/94 222
   F01N3/10 A
   F01N3/28 301A
   F01N3/28 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-117274(P2018-117274)
(22)【出願日】2018年6月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森川 彰
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真秀
(72)【発明者】
【氏名】大田 英理子
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G066
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB03
3G091BA07
3G091BA14
3G091GA09
3G091GB10W
4D148AA06
4D148AB02
4D148BA03X
4D148BA07Y
4D148BA08X
4D148BA18X
4D148BA19X
4D148BA30Y
4D148BA31Y
4D148BA33X
4D148BA42X
4D148BB01
4D148EA04
4G066AA12B
4G066AA20D
4G066AA23B
4G066BA09
4G066BA14
4G066BA20
4G066BA31
4G066CA37
4G066DA02
4G066FA03
4G066FA05
4G066FA22
4G066FA25
4G066FA34
4G066FA37
4G066FA40
4G066GA06
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA21C
4G169BA38
4G169BB04C
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC16C
4G169BC42B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC44B
4G169BC71B
4G169BD01C
4G169BD02C
4G169BD04C
4G169BE08C
4G169CA02
4G169CA03
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA06
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169EC25
4G169EC27
4G169FA01
4G169FB14
4G169FB16
4G169FB30
4G169FB44
4G169FB70
4G169FC02
4G169FC07
4G169FC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高温に曝された場合であっても、優れた酸素吸放出能を有し、かつ、優れたNOx浄化性能を発現する排ガス浄化用触媒を得ることが可能な酸素吸放出材料の提供。
【解決手段】パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと、コアの少なくとも一部の表面に配置されている、αアルミナを含有するアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えており、大気中、1100℃で5時間加熱した後の、CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンから求められる2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(14/29)値〕が2%以上であり、2θ=35.2°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(35/29)値〕が0.03〜1.2%である、コアシェル型酸素吸放出材料。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと、該コアの少なくとも一部の表面に配置されている、αアルミナを含有するアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えており、
大気中、1100℃で5時間加熱した後の、CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンから求められる2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(14/29)値〕が2%以上であり、2θ=35.2°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(35/29)値〕が0.03〜1.2%である、
ことを特徴とするコアシェル型酸素吸放出材料。
【請求項2】
前記シェルの含有量が前記コア100質量部に対して1.5〜14質量部であることを特徴とする請求項1に記載のコアシェル型酸素吸放出材料。
【請求項3】
X線光電子分光分析により測定される、前記シェルの表面から深さ3nmの領域におけるAl元素の平均濃度が74〜96at%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコアシェル型酸素吸放出材料。
【請求項4】
前記シェルの厚みが500nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のコアシェル型酸素吸放出材料。
【請求項5】
前記セリア−ジルコニア系固溶体粉末の体積基準の粒度分布における累積体積が50%となる二次粒子径D50が0.2〜8.0μmであることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のコアシェル型酸素吸放出材料。
【請求項6】
前記コアがCe以外の希土類元素を更に含有するものであることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のコアシェル型酸素吸放出材料。
【請求項7】
セリア−ジルコニア系固溶体を加圧成形して得られる成型体に1500℃以上の温度で還元処理を施した後、粉砕処理を施して、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末を得る工程と、
水酸化アルミニウムゲルにカルボン酸を添加して水酸化カルボン酸アルミニウム錯体を得る工程と、
前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末を100質量部と前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体をアルミナ換算で1.5〜14質量部とを接触せしめて、前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末の少なくとも一部の表面に、前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体を付着させる工程と、
前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体が付着しているセリア−ジルコニア系固溶体粉末を1000〜1200℃の温度に加熱して、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のコアシェル型酸素吸放出材料を得る工程と、
を含むことを特徴とするコアシェル型酸素吸放出材料の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のコアシェル型酸素吸放出材料と、該コアシェル型酸素吸放出材料に接触している貴金属とを備えることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項9】
請求項8に記載の排ガス浄化用触媒に、窒素酸化物を含有する排ガスを接触せしめることを特徴とする排ガス浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面がアルミナ系酸化物で被覆されたセリア−ジルコニア系複合酸化物を含有するコアシェル型酸素吸放出材料、それを用いた排ガス浄化用触媒、及び排ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な金属酸化物を含有する複合酸化物が排ガス浄化用触媒用の担体や助触媒等として利用されてきた。このような複合酸化物中の金属酸化物としては、雰囲気中の酸素分圧に応じて酸素の吸放出が可能である(酸素吸放出能を持つ)ことから、セリアが好適に用いられてきた。そして、近年では、セリアを含有する様々な種類の複合酸化物の研究がなされており、種々のセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法が開示されている。
【0003】
また、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物は高温(例えば、1000℃以上)では熱劣化し易いといった問題を有することから、主に耐熱性を更に向上させることを目的として、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物からなるコアと、その表面の少なくとも一部を覆うシェルとからなるコアシェル型の複合酸化物の研究もなされている。
【0004】
例えば、特開2016−168586号公報(特許文献1)には、優れた酸素吸放出能及び優れたNOx浄化性能を共に発現させることを目的とした複合酸化物として、セリア−ジルコニア系固溶体及び/又はアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなるコアと、パイロクロア構造を有する結晶粒子を含む希土類−ジルコニア系複合酸化物からなり、前記コアの外側を被覆しているシェルと、を備えるコアシェル担体が開示されており、前記希土類としては、La、Nb、Pr、及びYが挙げられている。
【0005】
また、特開2005−830号公報(特許文献2)には、貴金属の粒成長を抑制すると共に、酸素吸放出能を向上させることを目的とした排ガス浄化用触媒として、CeO−ZrO固溶体粒子と該CeO−ZrO固溶体粒子の表面の少なくとも一部を覆うAl層とからなる複合粒子と、少なくとも該Al層に担持されたPt及びPdと、を含んでなる排ガス浄化用触媒が開示されている。
【0006】
さらに、特開2017−186225号公報(特許文献3)には、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと、該コアの少なくとも一部の表面に配置されているアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えるコアシェル型酸化物材料が開示されており、前記コアシェル型酸化物材料によって、高温に曝された場合であっても、優れた酸素吸放出能が発揮され、かつ、特に優れたNOx浄化性能を発現する排ガス浄化用触媒を得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016−168586号公報
【特許文献2】特開2005−830号公報
【特許文献3】特開2017−186225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これまでのコアシェル型の複合酸化物によれば、触媒の酸素吸放出能(酸素吸蔵放出能)及び/又はNOx浄化性能が向上するものの、コアシェル構造の耐久性が必ずしも十分ではなく、高温かつ長時間での耐久試験といった過酷条件下においては、かかる酸素吸放出能やNOx浄化性能を維持することが困難な場合があることを本発明者らは見い出した。
【0009】
例えば、特許文献1に記載のコアシェル担体では、過酷条件下において、シェルに含まれるランタン等の希土類とセリア−ジルコニア固溶体との相互反応が進行する場合があり、コアシェル構造が一部維持できなくなる場合があった。さらに、特許文献3に記載のコアシェル型酸化物材料では、過酷条件下でアルミナの性状変化が起こり、セリア−ジルコニア固溶体表面からのシェルの剥離や収縮が進行してコアシェル構造を一部維持できなくなる場合があった。また、特許文献2に記載の排ガス浄化用触媒においては、CeO−ZrO固溶体粒子や助触媒粒子におけるセリアの酸素利用効率が低く、必ずしも十分に高い酸素吸放出能が得られていなかった。
【0010】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、高温に曝された場合であっても、優れた酸素吸放出能を有し、かつ、優れたNOx浄化性能を発現する排ガス浄化用触媒を得ることが可能なコアシェル型酸素吸放出材料、その製造方法、それを用いた排ガス浄化用触媒、及び排ガス浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末からなるコアの表面を、α相を有するαアルミナを含有するアルミナ系酸化物からなるシェルで被覆し、かつ、前記規則相に係る回折線の強度比〔I(14/29)値〕及び前記α相に係る回折線の強度比〔I(35/29)値〕をいずれも特定の範囲内とすることによって、これに貴金属を接触させた触媒が、高温に曝された場合であっても、特に優れた酸素吸放出能を有し、かつ、特に優れたNOx浄化性能を発現することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、
パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと、該コアの少なくとも一部の表面に配置されている、αアルミナを含有するアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えており、
大気中、1100℃で5時間加熱した後の、CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンから求められる2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(14/29)値〕が2%以上であり、2θ=35.2°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(35/29)値〕が0.03〜1.2%である、
ことを特徴とするものである。
【0013】
このような本発明のコアシェル型酸素吸放出材料においては、前記シェルの含有量が前記コア100質量部に対して1.5〜14質量部であることが好ましい。また、X線光電子分光分析により測定される、前記シェルの表面から深さ3nmの領域におけるAl元素の平均濃度が74〜96at%であることが好ましい。さらに、前記シェルの厚みが500nm以下であることが好ましい。
【0014】
また、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料においては、前記セリア−ジルコニア系固溶体粉末の体積基準の粒度分布における累積体積が50%となる二次粒子径D50が0.2〜8.0μmであることが好ましい。さらに、前記コアがCe以外の希土類元素を更に含有することが好ましい。
【0015】
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料の製造方法は、
セリア−ジルコニア系固溶体を加圧成形して得られる成型体に1500℃以上の温度で還元処理を施した後、粉砕処理を施して、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末を得る工程と、
水酸化アルミニウムゲルにカルボン酸を添加して水酸化カルボン酸アルミニウム錯体を得る工程と、
前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末を100質量部と前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体をアルミナ換算で1.5〜14質量部とを接触せしめて、前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末の少なくとも一部の表面に、前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体を付着させる工程と、
前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体が付着しているセリア−ジルコニア系固溶体粉末を1000〜1200℃の温度に加熱して、前記本発明のコアシェル型酸素吸放出材料を得る工程と、
を含むことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の排ガス浄化用触媒は、前記本発明のコアシェル型酸素吸放出材料と、該コアシェル型酸素吸放出材料に接触している貴金属とを備えることを特徴とするものである。さらに、本発明の排ガス浄化方法は、前記本発明の排ガス浄化用触媒に、窒素酸化物を含有する排ガスを接触せしめることを特徴とするものである。
【0017】
なお、本発明における回折線の強度比〔I(14/29)値〕及び〔I(35/29)値〕とは、それぞれ、測定対象のコアシェル型酸素吸放出材料を、大気中、1100℃で5時間加熱した後の、CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンから求められる、2θ=29°の回折線のピーク強度(I29)に対する2θ=14.5°の回折線のピーク強度(I14)の割合〔I(14/29)値:I14/I29×100[%]〕、及び、2θ=29°の回折線のピーク強度(I29)に対する2θ=35.2°の回折線のピーク強度(I35)の割合〔I(35/29)値:I35/I29×100[%]〕である。前記X線回折測定の方法としては、X線回折装置(例えば、(株)リガク製「UltimaIV」)を用いて、CuKα線をX線源とし、40KV、30mA、2θ=2°/分の条件で測定する方法を採用する。なお、回折線の強度(ピーク強度)を求める際には、各回折線の強度の値から、バックグラウンド値として2θ=10°〜12°の平均回折線強度を差し引いて計算する。
【0018】
ここで、2θ=14.5°の回折線は規則相(κ相)の(111)面に帰属する回折線である。また、2θ=29°の回折線は規則相の(222)面に帰属する回折線とセリア−ジルコニア系固溶体(CZ固溶体)の立方晶相(111)面に帰属する回折線とが重なったものである。したがって、両者の回折線の強度比として算出されるI(14/29)値は、規則相の維持率(存在率)を示す指標として規定される。また、完全な規則相には、酸素が完全充填されたκ相(CeZr)と、酸素が完全に抜けたパイロクロア相(CeZr)とがあり、それぞれのPDFカード(κ相はPDF2:01−070−4048、パイロクロア相はPDF2:01−075−2694)から計算したκ相のI(14/29)値は4%、パイロクロア相のI(14/29)値は5%である。
【0019】
さらに、規則相、すなわちセリウムイオンとジルコニウムイオンとにより形成される規則配列構造を有する結晶相は、CuKαを用いた前記X線回折測定により得られるX線回折パターンの2θ角が14.5°、28°、37°、44.5°及び51°の位置にそれぞれピークを有する結晶の配列構造(φ’相(κ相と同一の相)型の規則配列相:蛍石構造の中に生ずる超格子構造)である。なお、ここにいう「ピーク」とは、ベースラインからピークトップまでの高さが30cps以上のものをいう。
【0020】
また、2θ=35.2°の回折線はαアルミナ(Al)相(α相)の(104)面に帰属する回折線である。したがって、上記の2θ=29°の回折線との強度比として算出されるI(35/29)値は、測定対象のコアシェル型酸素吸放出材料におけるα相の維持率(存在率)を示す指標として規定される。さらに、α相、すなわちαアルミナの結晶相は、CuKαを用いた前記X線回折測定により得られるX線回折パターンの2θ角が35.2°、43.3°及び25.6°の位置にそれぞれピークを有する結晶の配列構造である。また、ここにいう「ピーク」とは、ベースラインからピークトップまでの高さが30cps以上のものをいう。
【0021】
なお、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料が、高温に曝された場合であっても特に優れた酸素吸放出能を有する理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料におけるコアは、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末からなるものである。このようなセリア−ジルコニア系固溶体のパイロクロア相(CeZr)は気相中の酸素分圧に応じてκ相(CeZr)との間で相変化を行い、酸素吸放出能を発現する。このようなパイロクロア相とκ相との間の相変化により発現する酸素吸放出能は、蛍石相において発現する酸素吸放出能に比べてCeOの酸素利用効率が極めて高く、ほぼ理論限界値に達するため、前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末は、非常に高い酸素吸放出速度(OCS−r)を示す。このため、前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末からなるコアの表面の少なくとも一部が下記のシェルによって被覆されたとしても、被覆による影響が少なく、優れた酸素吸放出能が発現すると推察される。また、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料におけるシェルは、α相を有する結晶であるαアルミナを含有するアルミナ系酸化物からなる。このようなαアルミナはアモルファスアルミナや遷移アルミナ(γアルミナ、δアルミナ、θアルミナ)に比べて高温で安定であるため、高温に曝されても構造変化やコアからの剥離、収縮といったコアシェル構造の状態変化が起こり難い。さらに、本発明に係るセリア−ジルコニア系固溶体は、1500℃以上の高温で還元処理されるため、通常のセリア−ジルコニア系固溶体に比べて高温安定性に優れている。そのため、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料においては、高温に曝された場合であっても特に優れた酸素吸放出能が発現すると推察される。
【0022】
また、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料に貴金属を接触させた触媒が、高温に曝された場合であっても特に優れたNOx浄化性能を発現する理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料に貴金属を接触させた触媒においては、貴金属がコアシェル型酸素吸放出材料のシェル、すなわち、前記αアルミナを含有するアルミナ系酸化物からなる被覆層に接触しているため、貴金属(特に、ロジウム)の易還元性が向上し、前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末からなるコアに貴金属を接触させた場合に比べて、NOx浄化活性が向上すると推察される。さらに、高温に曝された場合であっても貴金属の粒成長が抑制されてNOx浄化活性の低下が抑制されることや、コアシェル構造の状態変化が起こり難いことも、優れたNOx浄化性能を発現する理由であると推察される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高温に曝された場合であっても、優れた酸素吸放出能を有し、かつ、優れたNOx浄化性能を発現する排ガス浄化用触媒を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末の加熱後のX線回折パターンを示すグラフである。
図2】実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末の加熱後の表面のAl元素の平均濃度を示すグラフである。
図3】実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた触媒の高温耐久試験後の酸素吸放出速度を示すグラフである。
図4】実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた触媒の高温耐久試験後のNOx過度浄化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0026】
先ず、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料について説明する。本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと、該コアの少なくとも一部の表面に配置されている、αアルミナを含有するアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えており、
大気中、1100℃で5時間加熱した後の、CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンから求められる2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(14/29)値〕が2%以上であり、2θ=35.2°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(35/29)値〕が0.03〜1.2%である。このような本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、高温に曝された場合であっても、特に優れた酸素吸放出能(酸素吸放出速度(OSC−r))を有するものである。
【0027】
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、CeとZrとが規則的に配列しているパイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末からなるコアを備えるものである。このような規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末からなるコアを備えるコアシェル型酸素吸放出材料は、蛍石構造を有するセリア−ジルコニア系固溶体よりもバルク内の酸素拡散速度が大きいため、酸素吸放出能(酸素吸放出速度(OSC−r))に優れている。なお、本発明に係るセリア−ジルコニア系固溶体がパイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有することは、上記のCuKαを用いたX線回折測定により上記の規則相に特有のピークが認められることで確認することができる。
【0028】
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料においては、前記規則相の維持率(存在率)、すなわち前述のI(14/29)値が、2%以上であることが必要であり、3%以上であることがより好ましく、3.3%以上であることが更に好ましい。I(14/29)値が前記下限未満になると、規則相の維持率が低いため、高温に曝された場合に酸素吸蔵放出能が低下する。なお、I(14/29)値の上限として特に制限はないが、PDFカード(01−075−2694)から計算したパイロクロア相のI(14/29)値が上限となるという観点から、5%以下であることが好ましい。
【0029】
また、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料においては、大気中、1100℃で5時間加熱した後の、CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンから求められる2θ=28.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(28/29)値〕が、8%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましく、4%以下であることが更に好ましい。I(28/29)値が前記上限を超えると、高温に曝された場合に酸素吸放出能が低下する傾向にある。なお、I(28/29)値の下限としては特に制限はなく、より小さい値となることが好ましい。
【0030】
ここで、2θ=28.5°の回折線はCeO単体の(111)面に帰属する回折線であり、2θ=29°の回折線のピーク強度(I29)に対する2θ=28.5°の回折線のピーク強度(I28)の割合〔I(28/29)値:I28/I29×100[%]〕を算出することにより、これを複合酸化物からCeOが分相している程度を示す指標として規定することができる。前記X線回折測定の方法としては、上述のとおりである。
【0031】
また、このような規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末におけるCeとZrとの含有比率としては、モル比(Ce:Zr)で、35:65〜65:35であることが好ましく、45:55〜55:45であることがより好ましい。前記モル比(Ce:Zr)が前記範囲から逸脱すると、高温に曝された際、規則相が再配列によって蛍石構造に変化し、酸素吸放出能が低下する傾向にある。
【0032】
このような規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末からなるコアには、Ce以外の希土類元素やTi等の添加元素が更に含有されていてもよい。このような添加元素が含有されると、高温に曝された場合の酸素吸放出能の低下がより抑制される傾向にある。前記添加元素としては、Sc、Y、La、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Yb、Lu、及びTi等が挙げられ、中でも、高温に曝された場合の酸素吸放出能の低下が更に抑制されるという観点から、Y、La、Pr、Ndが好ましく、Prがより好ましい。なお、これらの添加元素は1種が単独で含有されていても2種以上が含有されていてもよい。また、前記添加元素が含有される場合、該元素は、通常、酸化物として前記コアに含有されており、さらに、前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末に、固溶、分散等した状態で存在していることが好ましく、前記添加元素による効果を確実に得るためには、固溶していることがより好ましい。
【0033】
本発明に係るコアにおいて、前記添加元素が含有される場合、その含有量としては、セリア元素、ジルコニア元素及び該添加元素の合計に対する該添加元素の割合(元素換算)で、20mol%以下であることが好ましく、10mol%以下であることが好ましく、5mol%以下であることが特に好ましい。前記添加元素の含有量が前記上限を超えると、規則相の耐熱性が低下し、高温に曝された場合に酸素吸放出能が低下する傾向にある。なお、前記添加元素の含有量の下限としては特に制限がないが、前記添加元素による効果を確実に得るためには、0.1mol%以上であることが好ましい。
【0034】
本発明に係るコアを形成する前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末においては、体積基準の粒度分布における累積体積が50%となる二次粒子径D50が0.2〜8.0μmであることが好ましい。前記二次粒子径D50が前記下限未満になると、パイロクロア相構造及びκ相構造が熱劣化により蛍石構造に変化してCeOの酸素利用効率が減少するため、酸素吸放出能が低下する傾向にある。他方、前記二次粒子径D50が前記上限を超えると、相対的に比表面積が低下する上に、粒子内部からの酸素の拡散距離が長くなるため、酸素吸放出能、特に、酸素吸放出速度(OSC−r)が低下する傾向にある。このような前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末の前記二次粒子径D50としては、より高い酸素吸放出能が発現するという観点から、1.0〜7.5μmであることが好ましく、3.0〜7.0μmであることがより好ましい。なお、前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末の前記二次粒子径D50は、例えば、粒度分布測定装置を用いて動的光散乱法により、前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末の体積基準の粒度分布曲線を求め、この粒度分布曲線における累積体積が50%となる粒子径として求めることができる。
【0035】
また、前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末の比表面積としては、特に制限がないが、0.1〜20m/gであることが好ましく、0.5〜10m/gであることがより好ましい。前記比表面積が前記下限未満になると、酸素吸放出能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粒子径が小さな粒子が増加し、高温耐久性が低下する傾向にある。なお、このような比表面積は吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0036】
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、このような前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末からなるコアと、このコアの表面に配置されているαアルミナを含有するアルミナ系酸化物からなるシェルとを備えるものである。なお、本発明に係るアルミナ系酸化物がαアルミナを含有することは、上記のCuKαを用いたX線回折測定によって上記のαアルミナに特有のピークが認められることで確認することができる。
【0037】
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料においては、前記α相の維持率(存在率)、すなわち前述のI(35/29)値が、0.03〜1.2%であることが必要であり、0.05〜0.8%であることがより好ましく、0.05〜0.7%であることが更に好ましい。I(35/29)値が前記下限未満になると、α相の存在率(含有率)が低いため、αアルミナによるコアの被覆度が少なくなり、コアシェル型酸素吸放出材料に貴金属が接触している触媒において、NOx浄化性能が低下する。他方、前記上限を超えると、過剰なαアルミナによって酸素吸放出能が低下する。
【0038】
本発明に係るアルミナ系酸化物としては、αアルミナ以外のアルミナを含有していてもよい。このようなアルミナとしては、アモルファスアルミナ、遷移アルミナ(γアルミナ、δアルミナ、θアルミナ)が挙げられる。これらのαアルミナ以外のアルミナが含有されることは、上記のCuKαを用いたX線回折測定によりαアルミナに由来するピーク以外のピークが認められることで確認することができるが、本発明においては、耐熱性の観点から、該ピークは認められないことが好ましい。なお、ここにいう「ピーク」とは、ベースラインからピークトップまでの高さが30cps以上のものをいう。
【0039】
また、このようなアルミナ系酸化物からなるシェルには、希土類元素(好ましくはCe以外の希土類元素)が更に含有されていてもよい。このような希土類元素がシェルに含有されると、シェルの高温耐久性がより向上する傾向にある。また、前記希土類元素としては、Sc、Y、La、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Yb、及びLu等が挙げられ、中でも、シェルの高温耐久性が更に向上するという観点から、Laが好ましい。なお、これらの希土類元素は1種が単独で含有されていても2種以上が含有されていてもよい。また、前記希土類元素が含有される場合、該元素は、通常、酸化物としてシェルに含有されている。
【0040】
本発明に係るシェルにおいて、前記希土類元素が含有される場合、その含有量としては、Al元素及び該希土類元素の合計に対する該希土類元素の割合(元素換算)で、10mol%以下であることが好ましく、5mol%以下であることが好ましく、2mol%以下であることが特に好ましい。前記希土類元素の含有量が前記上限を超えると、アルミネート相が形成され、シェルの比表面積の低下等、高温耐久性が低下する傾向にある。なお、前記希土類元素の含有量の下限としては特に制限がないが、前記希土類元素による効果を確実に得るためには、0.1mol%以上であることが好ましい。
【0041】
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料においては、前記コアの少なくとも一部の表面に前記シェルが配置されている。前記シェルは前記コアの表面の全面を覆っていてもよいが、一部を覆っていることがより好ましい。このようなシェルの前記コア表面に対する被覆率としては、前記シェルの表面から深さ3nmの領域(以下、「最表面層」という。)におけるAl元素の平均濃度で、74〜96at%であることが好ましく、80〜92at%であることがより好ましく、85〜92at%であることが更に好ましい。前記最表面層におけるAl元素の平均濃度が前記下限未満になると、コアシェル型酸素吸放出材料に貴金属が接触している触媒において、貴金属(特に、ロジウム)がコア中のセリアと接触しやすく、貴金属(特に、ロジウム)とセリアとの相互作用により貴金属の還元が進行しにくくなってNOx浄化性能が低下する傾向にある。他方、前記最表面層におけるAl元素の平均濃度が前記上限を超えると、アルミナ系酸化物が凝集しやすくなり、これによって酸素の拡散が阻害され、酸素吸放出能が低下する傾向にある。なお、本発明において、前記最表面層のAl元素の平均濃度は、コアシェル型酸素吸放出材料のX線光電子分光(XPS)スペクトルを、例えば、X線光電子分光分析装置を用い、単色化されたAlKα(1486.6eV)をX線源とし、光電子取出角:45°、分析領域:200μmφ、チャージアップ補正:Zr3d 182.2eV(ZrO)の条件で測定し、得られたXPSスペクトルに基づいて最表面層に存在する元素を定量し、全金属元素(コアシェル型酸素吸放出材料に含有されるカチオン元素(Al元素を含む))に対するAl元素の割合(Al元素量/全金属元素量×100)として求めることができる。
【0042】
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、コアシェル構造の耐久性に優れるため、高温かつ長時間での加熱後においても、前記シェルの前記コア表面に対する被覆率が維持される。このような加熱後の被覆率としては、大気中、1100℃で5時間加熱した後の、前記最表面層におけるAl元素の平均濃度で、69〜91at%であることが好ましく、80〜90at%であることがより好ましく、82〜88at%であることが更に好ましい。
【0043】
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料において、前記アルミナ系酸化物からなるシェルの含有量(好ましくはアルミナの含有量)としては、コア100質量部に対して1.5〜14質量部であることが好ましく、2.0〜8.0質量部であることがより好ましく、4.0〜8.0質量部であることが特に好ましい。前記シェルの含有量が前記下限未満になると、コアシェル型酸素吸放出材料に貴金属が接触している触媒において、貴金属(特に、ロジウム)がコア中のセリアと接触しやすく、貴金属(特に、ロジウム)とセリアとの相互作用により貴金属の還元が進行しにくくなってNOx浄化性能が低下したり、前記アルミナ系酸化物からなるシェルの耐熱性が低下したりする傾向にあり、他方、前記上限を超えると、アルミナ系酸化物が凝集しやすくなり、これによって酸素の拡散が阻害され、酸素吸放出能が低下する傾向にある。
【0044】
また、前記シェルの厚みとしては500nm以下であることが好ましく、10〜400nmであることがより好ましく、20〜200nmであることが更に好ましい。シェルの厚みが前記下限未満になると、コアシェル型酸素吸放出材料に貴金属が接触している触媒において、貴金属(特に、ロジウム)がコア中のセリアと接触しやすく、貴金属(特に、ロジウム)とセリアとの相互作用により貴金属の還元が進行しにくくなり、NOx浄化性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、シェルによって酸素の拡散が阻害され、酸素吸放出能が低下する傾向にある。なお、本発明においては、測定領域:10μmφにおいて、コアシェル型酸素吸放出材料の粉末の表面に存在するアルミナ相を走査型透過電子顕微鏡(STEM)によって観察することで求められるシェルの平均厚さを、本発明に係るシェルの厚みとする。
【0045】
また、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料の比表面積としては特に制限はないが、0.1〜20m/gであることが好ましく、0.5〜10m/gであることがより好ましい。前記比表面積が前記下限未満になると、酸素吸放出能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粒子径が小さな粒子が増加し、高温耐久性が低下する傾向にある。なお、このような比表面積は吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0046】
次いで、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料の製造方法について説明する。本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、例えば、以下の本発明のコアシェル型酸素吸放出材料の製造方法、すなわち、
セリア−ジルコニア系固溶体を加圧成形して得られる成型体に1500℃以上の温度で還元処理を施した後、粉砕処理を施して、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末を得る工程(還元処理工程)と、
水酸化アルミニウムゲルにカルボン酸を添加して水酸化カルボン酸アルミニウム錯体を得る工程(αアルミナ前駆体調製工程)と、
前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末を100質量部と前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体をアルミナ換算で1.5〜14質量部とを接触せしめて、前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末の少なくとも一部の表面に、前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体を付着させる工程(付着工程)と、
前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体が付着しているセリア−ジルコニア系固溶体粉末を1000〜1200℃の温度に加熱して、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料を得る工程(焼成工程)と、
を含む製造方法により製造することができる。
【0047】
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料を製造する際に用いられるセリア−ジルコニア系固溶体としては、CeとZrとの含有比率がモル比(Ce:Zr)で35:65〜65:35であるものが好ましく、45:55〜55:45であるものがより好ましい。モル比(Ce:Zr)が前記範囲から逸脱するセリア−ジルコニア系固溶体を用いると、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合に規則相が再配列により蛍石構造に変化し、酸素吸放出能が低下する傾向にある。
【0048】
このようなセリア−ジルコニア系固溶体には、Ce以外の希土類元素やTi等の添加元素が更に含有されていてもよい。このような添加元素が含有されると、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合の酸素吸放出能の低下がより抑制される傾向にある。また、このような添加元素としては、コアシェル型酸素吸放出材料のコアに含有されていてもよいものとして例示した前記添加元素が挙げられ、中でも、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合の酸素吸放出能の低下が更に抑制されるという観点から、Y、La、Pr、Ndが好ましく、Prがより好ましい。なお、これらの添加元素は1種が単独で含有されていても2種以上が含有されていてもよい。また、前記添加元素が含有される場合、該元素は、通常、酸化物としてコアに含有されており、さらに、前記セリア−ジルコニア系固溶体に、固溶、分散等した状態で存在していることが好ましく、前記添加元素による効果を確実に得るためには、固溶していることがより好ましい。
【0049】
前記セリア−ジルコニア系固溶体において、前記添加元素が含有される場合、その含有量としては、セリア元素、ジルコニア元素及び該添加元素の合計に対する該添加元素の割合(元素換算)で、20mol%以下が好ましく、10mol%以下が好ましく、5mol%以下が特に好ましい。前記添加元素の含有量が前記上限を超えると、規則相の耐熱性が低下し、高温に曝された場合に酸素吸放出能が低下する傾向にある。なお、前記添加元素の含有量の下限として特に制限はないが、前記添加元素による効果を確実に得るためには、0.1mol%以上が好ましい。
【0050】
このようなセリア−ジルコニア系固溶体は、例えば、以下の共沈法により製造することができる。すなわち、セリウムの塩(例えば、硝酸塩)及びジルコニウムの塩(例えば、硝酸塩)、必要に応じて前記添加元素の塩(例えば、硝酸塩)及び界面活性剤等を含有する水溶液を用い、アンモニアの存在下で共沈殿物を生成させ、得られた共沈殿物を分離回収して洗浄した後、乾燥処理、焼成処理、粉砕処理を施すことによって、粉末状のセリア−ジルコニア系固溶体を得ることができる。なお、前記水溶液中の各原料の含有量は、得られるセリア−ジルコニア系固溶体中の各成分の含有量が所定量となるように適宜調整する。
【0051】
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料を製造する場合には、先ず、このようなセリア−ジルコニア系固溶体を加圧成形する。加圧成形時の圧力としては400〜3500kgf/cm(39〜343MPa)が好ましく、500〜3000kgf/cm(49〜294MPa)がより好ましい。成形圧力が前記範囲から逸脱すると、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合に酸素吸放出能が低下する傾向にある。なお、このような加圧成形の方法としては特に制限はなく、静水圧プレス等の公知の加圧成形方法を適宜採用できる。
【0052】
次に、得られた加圧成型体に1500℃以上の温度で還元処理を施す(還元処理工程)。これにより、本発明に係るパイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体が形成される。このような規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体は、表面の熱安定性に優れており、緻密で固相反応が進行しにくい構造を有している。還元処理温度が前記下限未満になると、規則相の安定性が低く、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合に酸素吸放出能が低下する。また、規則相の安定性が向上し、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合の酸素吸放出能の低下が確実に抑制されるという観点から、還元処理温度としては1600℃以上が好ましい。また、還元処理時間としては0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。還元処理時間が前記下限未満になると、規則相の安定性が低く、得られるコアシェル型酸素吸放出材料が高温に曝された場合に酸素吸放出能が低下する傾向にある。なお、還元処理温度及び還元処理時間の上限としては特に制限はないが、エネルギー効率や副生成物の低減の観点から、それぞれ、2000℃以下(より好ましくは1900℃以下)、24時間以下(より好ましくは10時間以下)が好ましい。
【0053】
還元処理の方法としては、還元雰囲気下で前記加圧成型体に所定の温度で還元処理を施すことができる方法であれば特に制限はなく、例えば、(i)真空加熱炉内に前記加圧成型体を設置して真空引きした後に、炉内に還元性ガスを流入させて炉内の雰囲気を還元雰囲気とし、所定の温度で加熱して還元処理を施す方法、(ii)黒鉛製の炉を用いて炉内に前記加圧成型体を設置して真空引きした後、所定の温度で加熱して炉体や加熱燃料等から発生するCOやHC等の還元性ガスにより炉内の雰囲気を還元雰囲気として還元処理を施す方法や、(iii)活性炭を充填したルツボ内に前記加圧成型体を設置し、所定の温度で加熱して活性炭等から発生するCOやHC等の還元性ガスによりルツボ内の雰囲気を還元雰囲気として還元処理を施す方法等が挙げられる。
【0054】
このような還元雰囲気を達成するために用いる還元性ガスとしては特に制限はなく、CO、HC、H、その他の炭化水素ガス等の還元性ガスが挙げられる。また、このような還元性ガスの中でも、より高温で還元処理を実施した場合に炭化ジルコニウム(ZrC)等の複生成物が生成されることを防止するという観点から、炭素(C)を含まないものが好ましい。このような炭素(C)を含まない還元性ガスを用いると、ジルコニウム等の融点に近いより高い温度での還元処理が可能となるため、規則相の安定性をより十分に向上させることが可能となる。
【0055】
本発明のコアシェル型酸素吸放出材料の製造方法においては、前記還元処理の後に、前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体に酸化処理を更に施すことが好ましい。これにより、還元処理中に失われた酸素が補填され、酸化物材料としての安定性が向上する傾向にある。このような酸化処理の方法としては特に制限はなく、例えば、酸化雰囲気下(例えば、大気中)において前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体を加熱処理する方法を好適に採用することができる。また、このような酸化処理の際の加熱温度としては特に制限はないが、300〜800℃程度が好ましい。さらに、前記酸化処理の際の加熱時間も特に制限はないが、0.5〜5時間程度が好ましい。
【0056】
次に、このようにして得られた前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体に粉砕処理を施し、前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末を得る。粉砕処理の方法としては特に制限はなく、例えば、湿式粉砕法、乾式粉砕法、凍結粉砕法等が挙げられる。前記粉砕の条件としては、体積基準の粒度分布における累積体積が50%となる二次粒子径D50が所定の範囲内となるように粉砕することが好ましい。
【0057】
本発明の製造方法においては、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料のシェルを形成するためのαアルミナ前駆体として、水酸化アルミニウムゲルにカルボン酸を添加して水酸化カルボン酸アルミニウム錯体を得る(αアルミナ前駆体調製工程)。前記水酸化アルミニウムゲルとしては、特に制限されないが、例えば、アルミニウムの塩(硝酸塩、酢酸塩、塩酸塩等)又はその水和物の水溶液にアルカリ(アンモニア水、水酸化ナトリウム水等)を添加することで得ることができる。前記カルボン酸としては、メタン酸、エタン酸、及びプロピオン酸等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせてもよいが、中でも、αアルミナの生成温度を低くすることができる傾向にある観点から、メタン酸が好ましい。前記水酸化アルミニウムゲルに対する前記カルボン酸の添加量としては、水酸化アルミニウムゲルをAl換算で1molに対して、カルボン酸をカルボキシ基換算で3〜5molであることが好ましく、3.1〜3.5molであることがより好ましい。前記水酸化アルミニウムゲルに前記カルボン酸を添加することにより、好ましくは水中で撹拌することにより、水酸化アルミニウムのアルミニウムイオンAl3+にカルボン酸のカルボキシレートイオンCOO基が配位した水酸化カルボン酸アルミニウム錯体を得ることができる。
【0058】
次いで、本発明の製造方法においては、上記のようにして得られた前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末と前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体とを接触せしめ、前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末の少なくとも一部の表面に前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体を付着させる(付着工程)。
【0059】
前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末と前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体とを接触させる方法としては特に制限はなく、例えば、前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体、並びに、必要に応じて前記希土類元素の塩(例えば、硝酸塩)及び界面活性剤等を含有する水溶液に前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末を浸漬して、前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末に前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体水溶液を含浸させる方法が挙げられる。
【0060】
前記水溶液における前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末及び前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体の含有量としては、前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末100質量部に対して、前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体の量が、アルミナ(Al)換算で1.5〜14質量部となる量であることが必要である。この含有量が前記範囲内にあることにより、I(35/29)値が上記範囲を満たす本発明のコアシェル型酸素吸放出材料を得ることができる。前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末100質量部に対する前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体の量としては、アルミナ換算で2.0〜8.0質量部となる量であることがより好ましく、4.0〜8.0質量部となる量であることが特に好ましい。また、前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体の量としては、前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末100gに対して、0.03〜0.275モルであることがより好ましく、0.04〜0.275モルであることが特に好ましい。前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体の量が前記下限未満になると、得られるコアシェル型酸素吸放出材料に貴金属が接触している触媒において、前記アルミナ系酸化物からなるシェルの耐熱性が低下してNOx浄化性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られるコアシェル型酸素吸放出材料においてアルミナ系酸化物が凝集しやすくなり、これにより酸素の拡散が阻害され、酸素吸放出能が低下する傾向にある。なお、前記水溶液中において、他の各原料の含有量としては、得られるコアシェル型酸素吸放出材料中の各成分の含有量が所定量となるように適宜調整する。
【0061】
次に、前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体水溶液を含浸させたセリア−ジルコニア系固溶体粉末を蒸発乾固させた後、前記水酸化カルボン酸アルミニウム錯体が付着したセリア−ジルコニア系固溶体粉末に加熱処理を施す(焼成処理)。これにより、前記規則相を有するセリア−ジルコニア系固溶体粉末からなるコアの表面にαアルミナを含有するアルミナ系酸化物からなるシェルが形成され、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料が得られる。
【0062】
加熱処理の温度としては、1000〜1200℃であることが必要であり、1000〜1100℃であることがより好ましい。加熱処理温度が前記下限未満になると、αアルミナが形成されず、また、シェルの安定性が低下する傾向にある。他方、前記上限を超えると、得られるコアシェル型酸素吸放出材料の熱劣化によって酸素吸放出能が低下する傾向にある。また、加熱時間は特に制限はないが、2〜10時間であることが好ましい。
【0063】
次いで、本発明の排ガス浄化用触媒について説明する。本発明の排ガス浄化用触媒は、前記本発明のコアシェル型酸素吸放出材料と、このコアシェル型酸素吸放出材料に接触している貴金属とを備えるものである。このような本発明の排ガス浄化用触媒は、高温に曝された場合であっても、特に優れた酸素吸放出能(酸素吸放出速度(OSC−r))を有し、かつ、特に優れたNOx浄化性能を発現するものである。
【0064】
本発明の排ガス浄化用触媒において、前記貴金属としては、優れたNOx浄化性能が得られるという観点から、Rh、Pd、Ptが好ましく、Rh、Pdがより好ましく、Rhが特に好ましい。本発明の排ガス浄化用触媒において、このような貴金属は、前記コアシェル型酸素吸放出材料と接触していれば、その形態は特に制限されず、前記コアシェル型酸素吸放出材料の表面に直接貴金属を担持して接触させてもよいが、操作が簡便であるという観点から、前記コアシェル型酸素吸放出材料と、貴金属を担持した他の酸化物材料とを混合して接触させてもよい。
【0065】
本発明の排ガス浄化用触媒は、ペレット状のものを反応管等に充填して使用してもよいが、実用性の観点から、ハニカム基材の細孔の内壁に、本発明の排ガス浄化用触媒からなる層とアルミナを含有する触媒層とを形成したハニカム触媒として使用することが好ましい。また、このようなハニカム触媒のうち、高温や高流速ガスに曝された場合であっても優れた酸素吸放出能を有し、かつ、優れたNOx浄化性能を発現するという観点から、ハニカム基材の細孔の内壁に形成された貴金属及びアルミナを含有する触媒下層と、この触媒下層の上に形成された本発明の排ガス浄化用触媒からなる触媒上層とを備えるものが好ましく、前記触媒上層が本発明のコアシェル型酸素吸放出材料と貴金属を担持したジルコニアとの混合物からなるものがより好ましい。
【0066】
次いで、本発明の排ガス浄化方法について説明する。本発明の排ガス浄化方法は、前記本発明の排ガス浄化用触媒に、窒素酸化物を含有する排ガスを接触せしめるものである。本発明の排ガス浄化用触媒に前記排ガスを接触させる方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、内燃機関から排出されるガスが流通する排ガス管内に上記本発明の排ガス浄化用触媒を配置することにより、排ガス浄化用触媒に対して内燃機関からの排ガスを接触させる方法を採用してもよい。
【0067】
本発明の排ガス浄化方法において用いる上記本発明の排ガス浄化用触媒は、優れた酸素吸放出性能及び十分に優れたNOx浄化活性を共に有するものであるため、十分に優れた酸素吸放出能及び十分に優れたNOx浄化活性能を共に発揮させることが可能であり、例えば、前記本発明の排ガス浄化用触媒に、自動車等の内燃機関からの排ガスを接触させることで、前記排ガス中に含まれるNOx等の有害ガスを十分に浄化することが可能となる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用したセリア−ジルコニア−プラセオジム複合酸化物は以下の方法により調製した。
【0069】
(調製例1)
セリウムとジルコニウムとプラセオジムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム]:[プラセオジム])で45:54:1であるセリア−ジルコニア系複合酸化物を以下のようにして調製した。すなわち、先ず、CeO換算で28質量%の硝酸セリウム水溶液442gと、ZrO換算で18質量%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液590gと、Pr11換算で1.2gとなる量の硝酸プラセオジムを含む水溶液100gと、含有されるセリウムの1.1倍モル量の過酸化水素を含む過酸化水素水197gとを、中和当量に対して1.2倍当量のアンモニアを含有する水溶液1217gに添加して共沈物を生成させ、得られた共沈物に遠心分離を施し、イオン交換水で洗浄した。次に、得られた共沈物を110℃で10時間以上乾燥した後、大気中、400℃で5時間焼成してセリウムとジルコニウムとプラセオジムとの固溶体(CeO−ZrO−Pr11固溶体)を得た。その後、前記固溶体を、篩分けにより粒径が75μm以下となるように粉砕機(アズワン(株)製「ワンダーブレンダー」)を用いて粉砕し、前記セリア−ジルコニア−プラセオジム固溶体粉末を得た。
【0070】
次に、このセリア−ジルコニア−プラセオジム固溶体粉末20gを、ポリエチレン製のバッグ(容量:0.05L)に詰め、内部を脱気した後、前記バッグの口を加熱してシールした。続いて、静水圧プレス装置(日機装(株)製「CK4−22−60」)を用いて、前記バッグに対して2000kgf/cm(196MPa)の圧力(成型圧力)で1分間、静水圧プレス(CIP)成形を行い、セリア−ジルコニア−プラセオジム固溶体粉末の成型体を得た。成型体のサイズは、縦4cm、横4cm、平均厚み7mm、質量約20gとした。
【0071】
次いで、得られた成型体(2枚)を、活性炭70gを充填したルツボ(内容積:直径8cm、高さ7cm)内に配置し、蓋をした後、高速昇温電気炉に入れ、1000℃まで1時間かけて昇温し、さらに、1700℃まで4時間かけて昇温した後、1700℃(還元処理温度)で5時間加熱した。その後、1000℃まで4時間かけて冷却した後、自然放冷により室温まで冷却して還元焼成物を得た。
【0072】
次に、この還元焼成物を大気中、500℃の温度条件で5時間加熱して酸化し、複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとプラセオジムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム]:[プラセオジム])で45:54:1であるセリア−ジルコニア−プラセオジム複合酸化物を得た。
【0073】
(実施例1)
<酸素吸放出材料>
調製例1で得られたセリア−ジルコニア−プラセオジム複合酸化物を、体積基準の粒度分布における累積体積が50%となる二次粒子径D50が5μm以下となるように、粉砕機(アズワン(株)製「ワンダーブレンダー」)を用いて粉砕し、セリア−ジルコニア−プラセオジム複合酸化物粉末(以下、「CZP粉末」と略す。)を得た。なお、このCZP粉末の体積基準の粒度分布は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製「レーザー回折・散乱粒度分布測定装置MT3300EX」)を用いて動的光散乱法により測定した。
【0074】
次に、硝酸アルミニウム9水和物14.7gをイオン交換水100gに溶解させ、25%アンモニア水10gを加えて水酸化アルミニウムゲルを得た。得られた水酸化アルミニウムゲルに、イオン交換水50g及び88質量%濃度メタン酸水溶液7.4gを加えて撹拌し、水酸化メタン酸アルミニウム錯体(Al(HCOO)(OH))水溶液を得た。次いで、得られた水酸化メタン酸アルミニウム錯体水溶液に前記CZP粉末を50g投入して撹拌し、110℃で加熱して乾燥させ、得られた乾燥物を大気中、1000℃で5時間焼成して、前記CZP粉末の表面がアルミナ(Al)層で被覆されたコアシェル型酸素吸放出材料粉末(CZP量:アルミナ被覆量=100:4.0(質量部))を得た。
【0075】
<触媒>
上記で得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末とRh担持Al−ZrO−La−Nd複合酸化物粉末(Rh担持量:0.2質量%、Al:ZrO:La:Nd=30質量%:64質量%:4質量%:2質量%、平均粒径:20μm)とを質量比1:1で乳鉢を用いて混合し、得られた混合物を1tの静水圧で加圧成形し、得られた成型体を、粒径が0.5〜1mmとなるように粉砕・分級して、触媒(ペレット触媒)を得た。
【0076】
(実施例2)
硝酸アルミニウム9水和物の量を29.4gに、25%アンモニア水の量を20gに、88質量%濃度メタン酸水溶液の量を14.8gに、それぞれ変更したこと以外は実施例1と同様にして、前記CZP粉末の表面がアルミナ層で被覆されたコアシェル型酸素吸放出材料粉末(CZP量:アルミナ被覆量=100:8.0(質量部))を得た。また、得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして、触媒を得た。
【0077】
(実施例3)
硝酸アルミニウム9水和物の量を7.4gに、25%アンモニア水の量を5gに、88質量%濃度メタン酸水溶液の量を3.7gに、それぞれ変更したこと以外は実施例1と同様にして、前記CZP粉末の表面がアルミナ層で被覆されたコアシェル型酸素吸放出材料粉末(CZP量:アルミナ被覆量=100:2.0(質量部))を得た。また、得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして、触媒を得た。
【0078】
(比較例1)
硝酸アルミニウム9水和物の量を58.9gに、25%アンモニア水の量を40gに、88質量%濃度メタン酸水溶液の量を29.6gに、それぞれ変更したこと以外は実施例1と同様にして、前記CZP粉末の表面がアルミナ層で被覆されたコアシェル型酸素吸放出材料粉末(CZP量:アルミナ被覆量=100:16.0(質量部))を得た。また、得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして、触媒を得た。
【0079】
(比較例2)
硝酸アルミニウム9水和物の量を3.7gに、25%アンモニア水の量を3gに、88質量%濃度メタン酸水溶液の量を1.9gに、それぞれ変更したこと以外は実施例1と同様にして、前記CZP粉末の表面がアルミナ層で被覆されたコアシェル型酸素吸放出材料粉末(CZP量:アルミナ被覆量=100:1.0(質量部))を得た。また、得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして、触媒を得た。
【0080】
(比較例3)
硝酸アルミニウム9水和物14.8gとクエン酸16gとを含有する水溶液100mlに、実施例1と同様にして得られたCZP粉末を50g投入して撹拌し、マイクロ波で加熱して蒸発乾固させ、得られた乾燥物を大気中、500℃で5時間焼成して、前記CZP粉末の表面がアルミナ(Al)層で被覆されたコアシェル型酸素吸放出材料粉末(CZP量:アルミナ被覆量=100:4.0(質量部))を得た。また、得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして、触媒を得た。
【0081】
<X線回折(XRD)測定>
実施例及び比較例で得られた各コアシェル型酸素吸放出材料粉末を大気中、1100℃で5時間加熱した。加熱後のコアシェル型酸素吸放出材料粉末の規則相及びα相のX線回折パターンを、X線回折装置((株)リガク製「UltimaIV」)を用い、CuKαをX線源として上記のX線回折測定を実施して得た。その結果を図1に示す。また、得られたX線回折パターンにおいて、2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(14/29)値〕、及び2θ=35.2°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比〔I(35/29)値〕をそれぞれ求めた。結果を表1に示す。
【0082】
<X線光電子分光分析>
実施例及び比較例で得られた各コアシェル型酸素吸放出材料粉末のX線光電子分光(XPS)スペクトルを、X線光電子分光分析装置(ULVAC−PHI社製「Quantera SXM」)を用い、単色化されたAlKα(1486.6eV)をX線源とし、光電子取出角:45°、分析領域:200μmφ、チャージアップ補正:Zr3d 182.2eV(ZrO)の条件で測定した。得られたXPSスペクトルに基づいて、コアシェル型酸素吸放出材料粉末の表面(シェルの表面)から深さ3nmの領域(200μmφ)に存在する元素を定量し、Al元素の平均濃度〔=Al量/(Al量+Ce量+Zr量+Pr量)×100〕を求めた。結果(表面Al濃度(加熱前))を表1に示す。
【0083】
また、実施例及び比較例で得られた各コアシェル型酸素吸放出材料粉末を大気中、1100℃で5時間加熱した。加熱後のコアシェル型酸素吸放出材料粉末について上記と同様にX線光電子分光(XPS)スペクトルを測定して、Al元素の平均濃度を求めた。結果(表面Al濃度(加熱後))を表1及び図2に示す。
【0084】
<高温耐久試験>
実施例及び比較例で得られた各触媒1.5gを直径10mmの円筒状の反応管に充填し、この触媒に、1100℃の温度条件下、ガス流量10L/分で、リッチガス〔H(2%)+CO(10%)+N(88%)〕とリーンガス〔O(1%)+CO(10%)+N(89%)〕とを5分間ずつ交互に切り替えながら5時間流通させた。
【0085】
<酸素吸放出速度(OSC−r)の測定>
実施例及び比較例で得られた触媒に前記高温耐久試験を実施し、高温耐久試験後の触媒0.25gと石英砂0.25gとの混合物を反応管に充填した。この触媒に、触媒入りガス温度500℃、ガス流量10L/分で、リッチガス〔CO(2体積%)+N(残部)〕を3分間流通させた後、流通ガスをリーンガス〔O(1体積%)+N(残部)〕に切り替えて3分間流通させ、再度、流通ガスを前記リッチガスに切り替えた。この2回目の流通ガス切り替え後5秒間及び3分間の触媒出ガス中のCO量から、酸素吸放出速度(OSC−r、単位:μmol/(g・s))を求めた。結果を表1及び図3に示す。
【0086】
<NOx過度浄化率測定>
実施例及び比較例で得られた触媒に前記高温耐久試験を実施し、高温耐久試験後の触媒0.5gを反応管に充填した。この触媒に、ガス流量10L/分で、リーンガス〔NO(1500体積ppm)+CO(10体積%)+O(0.8体積%)+CO(0.65体積%)+C(3000体積ppmC)+HO(5体積%)+N(残部)〕を流通させながら触媒入りガス温度が600℃になるまで昇温した後、流通ガスをリッチガス〔NO(1500体積ppm)+CO(10体積%)+CO(0.65体積%)+C(3000体積ppmC)+HO(5体積%)+N(残部)〕に切り替えて5分間流通させ、さらに、流通ガスを前記リーンガスに切り替えて5分間流通させ、前処理を行なった。その後、触媒入りガス温度を500℃に降温し、ガス流量10L/分で、流通ガスとして前記リッチガスと前記リーンガスとを交互に5分間毎に切り替えながら流通させた。3サイクル目の前記リッチガス流通時(5分間)の触媒入りガス中及び触媒出ガス中の平均NO濃度を測定し、NOx過度浄化率を求めた。その結果を表1及び図4に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1及び図1〜4に示した結果から明らかなように、実施例1〜3で得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末はいずれも、CuKαをX線源とするX線回折パターンにおける回折線の強度比〔I(14/29)値〕が2%以上であり、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するものであることが確認された。また、前記回折線の強度比〔I(35/29)値〕が0.03〜1.2%の範囲内にあり、αアルミナのα相を有し、かつ、その存在率が一定の範囲内にあることが確認された。さらに、大気中で加熱する前後において表面Al濃度が十分に高く、αアルミナを含有するシェル構造が維持されていることが確認された。
【0089】
一方、比較例1〜3で得られたコアシェル型酸素吸放出材料粉末においても、I(14/29)値が2%以上であり、パイロクロア相及びκ相のうちの少なくとも一方の規則相を有するものであることが確認されたが、比較例2〜3では2θ=35.2°の回折線が観測されず(I(35/29)=0)、αアルミナが形成されていないことがわかった。また、比較例1では、2θ=35.2°の回折線が観測されたが、I(35/29)値が1.2%を大きく超えることがわかった。
【0090】
また、実施例1〜3で得られた触媒は、比較例1で得られた触媒に比べて、酸素吸放出速度(OSC−r)に優れたものであることがわかった。さらに、実施例1〜3及で得られた触媒は、比較例2〜3で得られた触媒に比べて、NOx過度浄化率が高く、流通ガスの組成変化に素早く対応できるものであることがわかった。また、例えば、比較例1で得られた触媒は、αアルミナを含有するシェル構造が加熱後においても維持されておりNOx過度浄化率には優れるものの、酸素吸放出速度(OSC−r)が著しく低く、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料においては、前記回折線の強度比〔I(35/29)値〕が特定の範囲内にあることによって特に優れた酸素吸放出能及び優れたNOx浄化性能がいずれも発現することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上説明したように、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料を用いることによって、高温に曝された場合であっても、優れた酸素吸放出能(酸素吸放出速度(OSC−r))を有し、かつ、優れたNOx浄化性能を発現する排ガス浄化用触媒を得ることが可能となる。
【0092】
したがって、本発明のコアシェル型酸素吸放出材料は、自動車の内燃機関等から排出される、窒素化合物を含有する排ガスを浄化するための排ガス浄化用触媒の担体や助触媒等として有用である。
図1
図2
図3
図4