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特開2019-217542部分的に強度が異なる車体部材の製造方法及びこれに用いる金型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-217542(P2019-217542A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】部分的に強度が異なる車体部材の製造方法及びこれに用いる金型
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/20 20060101AFI20191129BHJP
   B21D 24/00 20060101ALI20191129BHJP
   B21D 37/16 20060101ALI20191129BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20191129BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   B21D22/20 Z
   B21D24/00 M
   B21D37/16
   B21D24/00 H
   B21D24/00 F
   C21D1/18 C
   C21D9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-118249(P2018-118249)
(22)【出願日】2018年6月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 貴大
(72)【発明者】
【氏名】増渕 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】山口 大樹
【テーマコード(参考)】
4E050
4K042
【Fターム(参考)】
4E050GA01
4E050GA04
4K042AA25
4K042BA10
4K042BA13
4K042DA01
4K042DB07
4K042DC02
4K042DD01
4K042DE01
4K042DE06
4K042EA01
(57)【要約】
【課題】多段階の異強度を有する自動車構造材を短い製造リードタイムで提供する。
【解決手段】
部分的に強度が異なる車体部材1の製造方法であって、車体部材のブランク2を所定の形状にプレス成形して成形品4を得るステップS1と、前記プレスステップの後に、前記成形品をオーステナイト変態温度(AC)度以上に加熱するステップS2と、加熱された前記成形品を冷却金型6、6a、6bにより冷却するステップS3とを含み、前記冷却金型の金型面8の一部に、所定の金型面に対して凹設された凹部9が設けられ、前記凹部の開口部に沿って、前記所定の金型面に沿って延在する受熱面10を備えて、前記凹部の底部9bに対して間隔をおいて配置された部分を含み、前記受熱面下の熱貫流抵抗を前記金型面下の熱貫流抵抗よりも大きくする熱保持部材7、7a、7b、7cが配置されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的に強度が異なる車体部材の製造方法であって、
車体部材のブランクを所定の形状にプレス成形して成形品を得るステップと、
前記プレスステップの後に、前記成形品をオーステナイト変態温度(AC)以上に加熱するステップと、
加熱された前記成形品を冷却金型により冷却するステップとを含み、
前記冷却金型の金型面の一部に、所定の金型面に対して凹設された凹部が設けられ、前記凹部の開口部に沿って、前記所定の金型面に沿って延在する受熱面を備えて、前記凹部の底部に対して間隔をおいて配置された部分を含み、前記受熱面下の熱貫流抵抗を前記金型面下の熱貫流抵抗よりも大きくする熱保持部材が配置されていることを特徴とする車体部材の製造方法。
【請求項2】
前記熱保持部材が板材からなることを特徴とする請求項1に記載の車体部材の製造方法。
【請求項3】
前記熱保持部材が、厚み方向に貫通する複数の孔を有する板材からなることを特徴とする請求項2に記載の車体部材の製造方法。
【請求項4】
前記熱保持部材が、平面視蜂の巣状又は格子状をなすことを特徴とする請求項3に記載の車体部材の製造方法。
【請求項5】
前記熱保持部材が、受熱面を天井スラブの上面とし、かつ底面を床スラブの下面とし、天井スラブ及び床スラブが互いに、両スラブに直立する壁体によって支持されるスラブ構造体であることを特徴とする請求項1に記載の車体部材の製造方法。
【請求項6】
前記熱保持部材が、金属から成ることを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載の車体部材の製造方法。
【請求項7】
前記凹部が少なくとも部分的に断熱材により埋められていることを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載の車体部材の製造方法。
【請求項8】
前記受熱面が対面する部分の前記成形品の冷却速度は、前記熱保持部材の熱容量によって所定の範囲の冷却速度とされていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の車体部材の製造方法。
【請求項9】
前記冷却速度は、冷却時間30秒後に前記成形品の冷却温度を550℃より高い温度とすることを特徴とする請求項8に記載の車体部材の製造方法。
【請求項10】
前記冷却速度は、冷却時間30秒後に前記成形品の冷却温度を490℃以上、かつ550℃以下の温度とすることを特徴とする請求項8に記載の車体部材の製造方法。
【請求項11】
前記冷却速度は、冷却時間30秒後に前記成形品の冷却温度を440℃以上、かつ490℃より低い温度とすることを特徴とする請求項8に記載の車体部材の製造方法。
【請求項12】
前記熱保持部材は板材とし、冷却速度を所定の冷却速度とする条件の下に、前記熱保持部材をバルク板材とする場合の所要厚さ及び熱容量及び当該熱保持部材の充填率によって、当該熱保持部材の所要厚さが決定されることを特徴とする請求項8に記載の車体部材の製造方法。
【請求項13】
前記熱保持部材の厚さは、冷却速度を所定の冷却速度とする場合のバルク板材の所要厚さの2倍以上である請求項3又は請求項4又は請求項12に記載の車体部材の製造方法。
【請求項14】
冷却速度を所定の冷却速度とする条件の下に前記熱保持部材をバルク板材とする場合の所要厚さ及び熱容量及び前記壁体の熱抵抗によって、前記熱保持部材の所要厚さが決定されることを特徴とする請求項5に記載の車体部材の製造方法。
【請求項15】
部分的に強度が異なる車体部材の製造に用いる金型であって、
前記金型の金型面の一部に、所定の金型面に対して凹設された凹部が設けられ、前記凹部の開口部に沿って、前記所定の金型面に沿って延在する受熱面を備えた、前記凹部の底部に対して間隔をおいて配置された部分を含む熱保持部材が配置されていることを特徴とする金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、部分的に強度が異なる車体部材の製造方法及びこれに用いる金型に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車衝突時の安全性確保のため、構造部材へ高張力鋼の採用が進められている。高張力鋼は、1500MPクラスの強度を持ち安全性の向上に貢献する。反面、冷間プレス直後にスプリングバックと呼ばれる弾性変形が発生するという、寸法精度の確保に問題があった。この問題を解決するため、ホットスタンプが広く行われている。ホットスタンプは、車体部材のブランクをAC温度以上に加熱し、オーステナイト化によって軟化させプレス加工を行うと同時にプレス金型との接触によって急冷、焼入れを行い、1500MPaクラスの引張強さ(以下でTsともいう)と高い寸法精度の成形品を提供する。一方、自動車衝突時には、衝突後の部材の変形破壊を設計コントロールするために、部材に低強度部を設けることも広く行われている。
【0003】
図13(a)に示される、高強度、低強度の二段階強度化は、図13(b)に示されるように、中強度の配置を含めた多段階強度化並びに低強度部の小領域化及び分散配置へ発展し、異強度部材設計は、複雑度を増していると共に採用部材も拡大している。
【0004】
このように、異強度化対象部材が増え、異強度部材のプレス設計が多様化するとプレス品試作の数が増加するだけでなく、その再設計によるプレス金型の再製作の繰り返し数が増加する。異強度部材の試作品を量産品と同じ製造方法、低強度部に接する金型の部分の冷却速度を変えて、温度管理によってその部分の強度を低下させるという方法では、金型の冷却構造の設計変更に手間がかかり、製造にも手間取る。これが、異強度部材のない通常金型の製造に比べ、異強度部材用の金型がリードタイムを2倍以上要する原因である。他方、成形品の異強度化には、異強度部材のない通常金型によって成形品を製作し、異強度化部分をレーザー照射によって加熱し部分的な焼き鈍しによってその部分を低強度化する方法もある。しかしながら、この方法では、レーザー照射による局所加熱によって、熱ひずみが生じる難点があった。
【0005】
特許文献1には、AC温度以上に加熱後、金型内で冷却し、一部分の冷却速度を低下させて他の部位よりも低強度部を設ける異強度部材の製造方法が提案されている。特許文献2には、金型面の一部に断熱用くぼみを設け、冷却速度を他の部分よりも緩やかにし、その部分の焼入れによる硬度上昇を抑制することが提案されている。特許文献3には、成形型による成形品形状毎の焼入れ硬度を部位毎に変化させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−104527号公報
【特許文献2】特開2007−237204号公報
【特許文献3】特許第4135397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の低強度部位の目的用途は、低強度部位でその部位をせん断加工することであり、金型面に空隙を設ける、あるいは、金型面に断熱材を挟む一面的なものに過ぎず、自動車衝突時の安全性確保のため多段階の多様な異強度化を提供するものではない。特許文献2も外形抜きのためH300以下の低強度部材を提供するに止まり、H480よりも硬い中間領域の異強度部材等、多段階の多様な異強度化を提供するものではない。特許文献3は、低強度化部位に加熱された加熱媒体を付勢機構によって、加熱鋼板のプレス面に接触させるという特別の機構を必要とし、設計変更に対応する試作リードタイム短縮には問題がある。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑み、自動車衝突時の安全性確保のため、多段階の異強度を有する自動車構造材を短い製造リードタイムで提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明のある実施形態は、部分的に強度が異なる車体部材(1)の製造方法であって、車体部材のブランク(2)を所定の形状にプレス成形して成形品(4)を得るステップ(S1)と、前記プレスステップの後に、前記成形品をオーステナイト変態温度(AC)以上に加熱するステップ(S2)と、加熱された前記成形品を冷却金型(6)により冷却するステップ(S3)とを含み、前記冷却金型の金型面(8)の一部に、所定の金型面に対して凹設された凹部(9)が設けられ、前記凹部の開口部に沿って、前記所定の金型面に沿って延在する受熱面(10)を備えて、前記凹部の底部(9b)に対して間隔をおいて配置された部分を含み、前記受熱面下の熱貫流抵抗を前記金型面下の熱貫流抵抗よりも大きくする熱保持部材(7)が配置されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、成形品が冷却金型に挟まれた後、成形品の金型面に接触する部分は急速に熱を奪われ、所定の時間内にマルテンサイト変態するまで冷却されると1500MPa級の引張強度となる。他方、少なくとも一方を成形品の熱保持部材に接する部分は、熱保持部材によって受熱面下の熱貫流抵抗が金型面下の熱貫流抵抗よりも大きくされており、少なくとも金型面に接触する成形品の部分の焼入れ度には至らず、マルテンサイト変態しない。受熱面に接触する部分の成形品の硬度は、金型面に接触する部分の成形品の硬度よりも低い。すなわち、金型面に接触する成形品と受熱面に接触する成形品とは異強度である。この場合の金型は、特別の加熱機構も局部を冷却する配管も必要とせず、簡便な構成の金型であり、通常のホットスタンプ金型と同様のリードタイムで提供され得る。
【0011】
また、上記構成において、前記熱保持部材が板材からなることを特徴とするとよい。
【0012】
この構成によれば、板材は、厚み方向の熱抵抗が面内で同一であるから、受熱面下の熱貫流は、均一になる。受熱面の熱伝達も理論上板材面上均一であるから、熱貫流抵抗も受熱面下で均一となる。
【0013】
また、上記構成において、前記熱保持部材が、厚み方向に貫通する複数の孔を有する板材からなることを特徴とするとよい。
【0014】
熱保持部材の役割は、熱保持部材の蓄えるだけの熱量を成形品から受熱し、その熱量分成形品を冷却することである。この構成によれば、貫通孔有無に関わらず熱保持部材の熱容量を等しくする条件で、厚み方向に貫通する複数の孔に充填されていたとされる熱保持部材の体積分、貫通孔有りの熱保持部材は、貫通孔無しの熱保持部材に比べ厚みを増加できる。その結果、熱保持部材の面外曲げ剛性(以下で、単に「曲げ剛性」あるいは「剛性」ともいう)が高まる。熱保持部材の曲げ剛性が高まれば、温度上昇に伴う受熱面のひずみは減少する。これは、受熱面と成形品との均一な接触面の形成に有効であり、冷却後の異強度部位の性能のばらつきを抑える。また、貫通孔があることによって、熱貫流の流路が狭まるため、熱抵抗が増す。従って、厚み方向に貫通する複数の孔を有する板材は、貫通孔の無い熱保持部材に比し、断熱性能あるいは熱保持の観点からは板厚をもっと薄くできるようになる。すなわち、厚み方向に貫通する複数の孔を持たせることで、熱保持部材の厚みが減ぜられ、薄形化によって加工時間が短縮され得て、リードタイム短縮に効果がある。
【0015】
また、上記構成において、前記熱保持部材が、平面視蜂の巣状(7a)又は格子状(7b)をなすことを特徴とするとよい。
【0016】
この構成によれば、貫通孔が有る熱保持部材は、面方向に対する強度の指向性が緩くなる。平面視蜂の巣状であれば、面内四方及び斜方に均等な剛性の熱保持部材が構成される。貫通孔が有る熱保持部材の平面視形状が、正方格子状であれば、四方に均等な剛性の熱保持部材が構成される。平面視千鳥格子状であれば、面内四方に均等な剛性の熱保持部材が構成され、格子状に比しスパンが半分の壁構造であるから、更に剛性が高い四方に均等な剛性の熱保持部材が構成される。平面視三角格子状であれば、各辺方向に均等な剛性の熱保持部材が構成される。このような有孔熱保持部材の壁部配置の均等性は、不均等な配置に比べ、熱変形への耐力の指向性についても予測可能な構成であり、受熱面と成形品との接触を均等に保つことに貢献する。
【0017】
また、上記構成において、前記熱保持部材が、受熱面を天井スラブ(30)の上面とし、かつ底面を床スラブ(31)の下面とし、天井スラブ及び床スラブが、両スラブの間に直立する壁体(32)によって支持されているスラブ構造体(33)であることを特徴とするとよい。
【0018】
この構成によれば、一般に面外曲げ剛性は、曲げ方向の高さhの2乗に比例する。同じ体積の同じ熱容量として、受熱面として最も簡単な構成である単板に比べ、熱保持部材が離隔されて対向する2つの単板を含み、受熱面を天井スラブとし、底面を床スラブとし、壁体によって両スラブが支持されているスラブ構造体は、単板に比し格段に高い剛性を提供し、安定した受熱面と成形品の接触を保ち、強度品質のばらつきの小さな製品を提供する。
【0019】
また、上記構成において、前記天井スラブが厚み方向に貫通する複数の孔及び床スラブが厚み方向に貫通する複数の孔を有する板材からなることを特徴とするとよい。
【0020】
熱保持部材の役割は、熱保持部材の蓄えるだけの熱量を成形品から受熱し、その熱量分成形品を冷却することである。この構成によれば、貫通孔有と貫通孔無とで熱保持部材の熱容量を等しくするとなれば、厚み方向に貫通する複数の孔に充填されている熱保持部材体積分、貫通孔が有る熱保持部材のスラブの厚みはもっと厚くされ得る。あるいは、貫通孔が有る熱保持部材の壁部の高さをもっと高くされ得る。その結果、熱保持部材の面外曲げ剛性が高まる。熱保持部材の曲げ剛性が高まれば、温度上昇に伴う受熱面のひずみは減少する。これは、金型面と成形品の均一な接触面の形成に有効であり、冷却後の異強度部位の性能のばらつきを抑える。
【0021】
また、上記構成において、前記熱保持部材が、金属から成ることを特徴とするとよい。
【0022】
この構成によれば、熱保持部材は、高温下での熱保持にも好適である。
【0023】
また、上記構成において、前記凹部が少なくとも部分的に断熱材(11)により埋められていることを特徴とするとよい。
【0024】
この構成によれば、熱保持部材と金型凹部の底との間隙は断熱材により埋められ、熱保持部材と金型凹部の底とは熱遮断される。熱保持部材の役割は、熱保持部材の蓄えるだけの熱量を成形品から受熱し、その熱量分成形品を冷却することである。このように熱保持部材と金型凹部の底とは熱遮断されると、所望の熱保持部材の設計に有利である。加えて、熱保持部材に貫通孔が有る場合には、断熱材が貫通孔下にも埋められていれば、加熱された成形品と金型凹部の底との間の直接の熱輻射による熱貫流抵抗の変動を排し、熱保持部材による想定量内の熱保持に有利である。
【0025】
また、上記構成において、前記受熱面が対面する部分の前記成形品の冷却速度は、前記熱保持部材の熱容量によって所定の範囲の冷却速度とされていることを特徴とするとよい。
【0026】
この構成によれば、前記受熱面が対面する部分の前記成形品の冷却速度は、前記熱保持部材の熱容量によって所定の範囲の冷却速度と調整される。自動車構造体の部材試作の強度設計に変更が必要な場合、再度の凹部を含む金型製作を不要とし、熱保持部材の厚みの設計変更をするだけで、再試作を可能とする。設計変更に対応する試作リードタイム短縮に有利である。また、ブランクは同じ厚みであるから、場所によって、異なる厚みの熱保持部材を構成し、自動車衝突時の安全性確保のため、多段階の異強度を有する自動車構造材を短い試作リードタイムで提供する。
【0027】
また、上記構成において、前記冷却速度は、冷却時間30秒後に前記成形品の冷却温度を550℃より高い温度とすることを特徴とするとよい。
【0028】
この構成によれば、通常の自動車構造体に使用するブランクは、引張強度780MPa級よりも小さい、引張強度590MPa級程度にまで引張強度を低下させるブランクを製造可能であり、自動車衝突時の安全性確保のための多段階の異強度を有する自動車構造材を金型再製作回数がより少なく短い試作リードタイムで提供する。
【0029】
また、上記構成において、前記冷却速度は、冷却時間30秒後に前記成形品の冷却温度を490℃以上、かつ550℃以下の温度とすることを特徴とするとよい。
【0030】
この構成によれば、通常の自動車構造体に使用するブランクは、引張強度780MPa級以上引張強度980MPa級までの間のうち、引張強度780MPa級寄りに引張強度は構成され、自動車衝突時の安全性確保のための多段階の異強度を有する自動車構造材を試行錯誤なく短い試作リードタイムで提供する。
【0031】
また、上記構成において、前記冷却速度は、冷却時間30秒後に前記成形品の冷却温度を440℃以上、かつ490℃より低い温度とすることを特徴とするとよい。
【0032】
この構成によれば、通常の自動車構造体に使用するブランクは、引張強度780MPa級以上引張強度980MPa級までの間のうち、引張強度980MPa級寄りの引張強度に構成され、自動車衝突時の安全性確保のための多段階の異強度を有する自動車構造材を試行錯誤なく短い試作リードタイムで提供する。
【0033】
また、上記構成において、冷却速度を所定の冷却速度とする条件の下に、前記熱保持部材をバルク板材とする場合の所要厚さ及び熱容量及び熱保持部材の充填率によって、当該熱保持部材の所要厚さが決定されることを特徴とするとよい。
【0034】
この構成によれば、前記熱保持部材の所要厚さは、冷却速度を所定の冷却速度とする条件の下に、前記熱保持部材をバルク板材とする場合の所要厚さ及び熱容量及び熱保持部材の充填率によって決定され、他の設計パラメータの介在を不要とし、設計変更が簡便となり、多段階の異強度を有する自動車構造材を短い試作リードタイムで提供するに有利である。
【0035】
また、上記構成において、前記熱保持部材の厚さは、冷却速度を所定の冷却速度とする場合のバルク板材の所要厚さの2倍以上であるとよい。
【0036】
この構成によれば、有孔によって、平面視の熱保持部材の充填率を50%以下とする。充填率を50%よりも大きくしても、厚みがさほど増さないため熱保持部材の面外剛性向上は限定的となる。平面視の熱保持部材の充填率を50%とすれば、厚さをバルク板材の所要厚さの2倍とし、かつ、熱保持部材の壁部の厚みは、孔の仮想円半径の略1/4以上を確保することが可能である。従って、外殻体の曲げ剛性は、孔を中心とする仮想円半径の3乗に比例する曲げ剛性として、{1−(3/4)=0.58}とバルク板材の少なくとも半分が確保される。一方で充填率を50%とすれば、2倍の厚みが提供され、これも剛性に8倍で寄与し、都合4倍の剛性の改善が提供される。このように、充填率を50%とすることによる平面視面積の減少は、厚みの増加で補償されて、十分な剛性が提供される。そして、熱保持部材の充填率を50%以下としても、理論上曲げ剛性の減衰は、充填率の2乗に反比例する一方で、熱保持部材の厚みは、充填率に比例し増加し、かつ、熱保持部材の厚みの増加は曲げ剛性の増加にその3乗の割合で増加する。従って、熱保持部材の充填率を50%以下としても、上記有利さは変わらず、理論上むしろ、もっと有利である。
【0037】
また、上記構成において、冷却速度を所定の冷却速度とする条件の下に前記熱保持部材をバルク板材とする場合の所要厚さ及び熱容量及び前記壁体の熱抵抗によって、前記熱保持部材の所要高さが決定されることを特徴とするとよい。
【0038】
この構成によれば、前記熱保持部材の所要厚さは、冷却速度を所定の冷却速度とする条件の下に、前記熱保持部材をバルク板材とする場合の所要厚さ及び熱容量並びに前記壁体の熱抵抗によって決定され、他の設計パラメータに依らず、設計変更が簡便となり、多段階の異強度を有する自動車構造材を短いリードタイムで提供するのに有利である。
【0039】
また、上記構成において、部分的に強度が異なる車体部材(1)の製造に用いる金型(6)であって、前記金型の金型面(8)の一部に、所定の金型面に対して凹設された凹部(9)が設けられ、前記凹部の開口部に沿って、前記所定の金型面に沿って延在する受熱面(10)を備えた、前記凹部の底部(9b)に対して間隔をおいて配置された部分を含む熱保持部材(7)が配置されていることを特徴とするとよい。
【0040】
この構成によれば、本金型に挟まれた成形品は、金型面の面下では、金型面との接触面から急速に熱を奪われ、所定の時間内にマルテンサイト変態するまで冷却され1500MPa級の引張強度となる。他方、少なくとも一方を熱保持部材に接する成形品は、熱保持部材によって、受熱面下の熱貫流抵抗が金型面下の熱貫流抵抗よりも大きくされており、少なくとも金型面に接触する成形品の焼入れ度には至らず、金型面に接触する成形品の硬度よりも低い硬度の部材が提供される。すなわち、金型面に接触する成形品と受熱面に接触する成形品とは異強度である。この場合において、金型は、特別の加熱機構も局部を冷却する配管も必要とせず、簡便な構成の金型で足り、この金型の製作期間は通常のホットスタンプ金型と変わらぬリードタイムで提供可能である。
【発明の効果】
【0041】
このように本発明によれば、自動車衝突時の安全性確保のため、多段階の異強度を有する自動車構造材を短いリードタイムで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】実施形態に係る部分的に強度が異なる車体部材の製造方法のステップを示すチャートにステップの内容の説明を付す模式チャート図
図2】実施形態に係る製造方法に用いる金型の断面図に冷却時の熱貫流の説明を付す説明図。図2(a)は、熱保持部材がない場合を示す説明図、図2(b)は熱保持部材がある場合を示す説明図
図3】実施形態に係る製造方法で用いる金型の模式斜視図
図4】実施形態に係る製造方法で使用する熱保持部材の模式斜視図であり、図4(a)は、蜂の巣状の貫通孔を有する熱保持部材、図4(b)は、千鳥格子状の貫通孔を有する熱保持部材、及び図4(c)は、スラブ構成体の熱保持部材を示す模式斜視図であり、図4(d)は、貫通孔が無いバルク平板を示す模式斜視図
図5】一実施形態に係る製造方法で使用するブランク鋼材の冷却速度と金属組織との関係を連続的に示す説明図(冷却時間−温度グラフ図)
図6】実施形態に係る製造方法で引張強度980MPa級の成形品を製作する場合の構成を説明する冷却金型模式断面説明図
図7】実施形態に係る製造方法で引張強度980MPa級の成形品を製作する場合の冷却時間−温度グラフ図
図8】実施形態に係る製造方法で引張強度780MPa級の成形品を製作する場合の構成を説明する冷却金型模式断面説明図
図9】実施形態に係る製造方法で引張強度780MPa級の成形品を製作する場合の冷却時間−温度グラフ図
図10】実施形態に係る製造方法で引張強度590MPa級の成形品を製作する場合の構成を説明する冷却金型模式断面説明図
図11】実施形態に係る製造方法で引張強度590MPa級の成形品を製作する場合の冷却時間−温度グラフ図
図12】実施形態に係る製造方法で引張強度780MPa級の成形品、引張強度980MPa級の成形品が得られる場合を比較表示する冷却時間−温度グラフ図
図13】部分的に強度が異なる車体部材であるセンタピラーの模式斜視図
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0044】
まず、図1を参照して、実施形態に係る部分的に強度が異なる車体部材1の製造方法のステップS1〜S3について説明する。図1において、図中の左側に示すのは、ステップチャートS0であり、部分的に強度が異なる車体部材1の製造方法のステップS1〜S3を示す。図1において、図中の右側に示すのは、ステップS1〜S3毎に主なタスクフローを構造化して示す模式図である。
【0045】
ステップS1で用いる冷間プレス金型3は、予め製作しておく。並行して、冷却金型6を製作しておく。冷間プレス金型3は、製品を冷間プレス製造する場合と同じものであり、この製造には、通常のリードタイムで足りる。冷却金型6についても、冷間プレス金型3と並行して製造を開始できるため、特段のリードタイム増加を見込む必要はない。
【0046】
<<実施形態に係る製造方法の各ステップ>>
本実施形態に係る車体部材1の製造方法の成形工程は3段階で構成される。最初の冷間プレスステップS1では、車体部材のブランク2が冷間プレス金型3に投入され、所定の製品形状に冷間プレス成形された成形品4が得られる(ステップS1)。引き続き、加熱ステップでは、加熱炉5によって、成形品4がオーステナイト変態温度(AC)温度以上に加熱される(ステップS2)。次いで、間を置かず、冷却ステップでは、加熱された成形品4は冷却金型6に挟まれて冷却される(ステップS3)。ステップS3は、冷却金型6によって冷却速度CSを部位毎に変え、部位毎に異強度化する最終工程である。
【0047】
冷間プレスステップS1で使用される冷間成形金型は、製品形状を冷間プレス成形する冷間プレス金型3であり、従来の冷間プレスでも使用される通常の冷間プレス金型3である。冷間プレス金型3の製作のためには、別段のリードタイムは要しない。ステップS2で使用される加熱炉5は、従来の焼入れ処理でも使用される通常の加熱炉5であり、特段の追加リードタイムは要しない。
【0048】
引き続く冷却ステップS3では、冷却金型6について、図1に加え、図2も合わせて参照しつつ説明する。ステップS3で使用される冷却金型6は、冷間プレス金型3をベースとしながらも異強度化に用いる熱保持部材7を挟むため、冷却金型6の金型面形状は、所定の製品形状から決定される金型面とは異なる。図2(b)に示されているように、冷却金型6の金型面8の一部には、所定の金型面8に対して凹設された凹部9が設けられ、凹部9の開口部に沿って、所定の金型面8に沿って延在する受熱面10を備えて、凹部9の底部9bに対して間隔をおいて配置された部分を含み、受熱面10下の熱貫流抵抗を金型面8下の熱貫流抵抗よりも大きくする熱保持部材7が配置されている。従って、受熱面10下の熱貫流HLは、金型面8下の熱貫流HHよりも小さい。
【0049】
冷却ステップS3で、図1が示すように、冷却金型6a、6bには成形品4が挟まれる。金型面8に接触する部分では金型面8との接触面から急速に熱を奪われる。所定の時間内にマルテンサイト変態するまで急冷却させれば、1500MPa級の引張強度も可能である。一方、図2(b)が示すように、凹部9の底部9bに対して間隔をおいて配置された熱保持部材7の受熱面10下の熱貫流抵抗は、前記金型面8下の熱貫流抵抗よりも大きく、この部分は金型面8下に比べて冷却速度CSを低くさせれば、マルテンサイト変態が発生しない熱コントロールをし得る。このように、金型面8と受熱面10に接する車体部材1の金属組織を異にさせれば、これによって図1の最終出力で示されている車体部材1の部位1a,1bのように、各々の部位の異強度化を冷却金型6によって行うことが可能となる。
【0050】
図1に示されているように、本製造方法によれば、金型として、従来のように局所的な加熱制御を必要とする製造装置を要しないから、特別の加熱機構も、積極的な局所冷却を施さないので、特別な冷却設計もその配管の追加までも必要としない。従来同様の簡単な熱設計構成の冷間プレス金型3に、図2が示す凹部9を設け、凹部9に熱抵抗となる熱保持部材7を配置するだけで済む利点がある。冷却金型6の製作期間は通常の冷却金型と変わらぬリードタイムで提供可能である。また、冷間プレス金型3も通常のフルホットスタンプ金型、すなわち、成形品全体を同一の強度とするホットスタンプ用金型と同じリードタイムで提供される。そして、この2種の冷間プレス金型3及び冷却金型6は並行して設計製作可能であるし、熱保持部材7も同様である。従って、異強度化された車体部材1の試作品でも、車体部材1でも、製作リードタイムを従来のホットスタンプ製品と同程度の期間で提供可能である。
【0051】
<<実施形態に係る製造方法に用いる金型>>
以下で、一実施形態に係る部分的に強度が異なる車体部材1の製造方法で用いる冷却金型6について、その使用に至るまでの段取りと共に、図1及び図2に加えて図3を参照し詳説する。図3に示す冷却金型6は、図1に示す冷間プレス金型3と同形の金型に、図2に示すように、熱保持部材7を配置する凹部9を設け、その凹部9に熱保持部材7が配設されたものである。図2(b)に示されるように、熱保持部材7は、凹部9の底部9bに配置される支持体13によって支持され、凹部9の底部9bに対して間隔をおいて配置されている。図3に示されるように、熱保持部材7の配置後には、冷却金型6は、前記所定の金型面8に沿って延在する受熱面10を備え、成形品4が図3に示される上下の冷却金型6a、6bに挟まれると、図2(b)に示されるように成形品4の冷却時には受熱面10が成形品4に接触し、面接触による伝熱現象が生ずる。凹部9は、少なくとも部分的に断熱材11により埋められ、凹部9の底部9bに対面する熱保持部材7の裏面と冷却金型6の凹部9との間隙は、少なくとも部分が断熱材11により埋められている。断熱材11は、セラミックファイバーの粉体を集合体に集成させたものであり、予め熱保持部材7の裏面に仮止めされていてもよく、熱保持部材7を凹部9へ配置する時に、断熱材11が凹部9へ埋められてもよい。この形態によれば、熱保持部材7と冷却金型6の凹部9の底部9bとの間隙は断熱材11により埋められ、熱保持部材7と冷却金型6とは熱遮断される。このように熱保持部材7と冷却金型6とが熱遮断されると、より確実に、熱保持部材7の受熱面10下の熱貫流抵抗を金型面8下の熱貫流抵抗よりも大きくさせ、熱貫流抵抗の制御も簡便になるから、試行錯誤も要せず試作回数も減らせ、所望の熱保持部材7製造のリードタイム短縮に有利である。熱貫流設計条件によっては、図2(b)に示すように、熱保持部材7は成形品4の片面のみに用いてもよいし、図2(a)に示すように、断熱材11を用いず、熱保持部材7と冷却金型6との間には空隙15があってもよい。成形品4の部分の複数の異強度に対して、これらの熱貫流設計バリエーションが適用されれば、それに応じ、成形品4の複数の部分に異なる熱保持部材7及び断熱材11の配置があってもよい。
【0052】
<熱保持部材7の形態>
熱保持部材7の形態は、熱保持部材7の熱的性質及び曲げ剛性に影響を与える。本実施形態では、図3及び図4(a)に示されるように、熱保持部材7は、板厚方向に貫通孔が設けられ、熱保持部材7は、平面視蜂の巣状の熱保持部材7aであり、平面視蜂の巣状の壁体端面14は、受熱面10として所定の金型面8に沿って延在している。
【0053】
この構成によれば、熱保持部材7は、板状体であるから、厚み方向の熱抵抗が面内で同一である。従って、受熱面10下の厚さ方向への熱貫流は、面内で均一になる。受熱面10の熱伝達も理論上、板面上で均一となるから、熱貫流抵抗も受熱面10下で面内均一となるという効果を得る。この結果、受熱面10面内でムラのない冷却速度CSを確保する。
【0054】
本実施形態では、熱保持部材7は、断熱材11によって冷却金型6の凹部9の底部9bに対して熱遮断されている。従って、熱保持部材7は、その熱容量Qによって成形品4の熱の移動を促すという役割を担わされることが明瞭となる。すなわち、熱保持部材7の熱容量Qは、成形品4の冷却速度CS制御の重要なパラメータである。従って、熱保持部材7が板材される、材料を変えられない限り、熱保持部材7の形状、すなわち、厚さtは支配的なパラメータであり、逆にいえば、厚さtには、冷却速度CS要件に拘束されるという制約がある。一方で、受熱面10の剛性がある程度確保されない場合には、成形品4と受熱面10との平面接触が確保できず、面外変形によって局所的に熱伝達抵抗のムラが発生し、品質のばらつきを生ずる恐れがある。冷却速度CS要件に拘束され、熱保持部材7の板厚tが薄くされると、この問題は顕著になる。本実施形態では、板厚方向に貫通孔が設けられ、貫通孔によって、体積が減ぜられる分、板厚tを増加させ所望の熱保持部材7の熱容量Qを確保しつつ、板厚tの増加によって熱保持部材7の曲げ剛性を高められる。このように、板厚方向に貫通孔が設けられると、冷却速度CS要件に拘束されて熱保持部材7の板厚が薄くされる場合にも極めて有利である。
【0055】
本実施形態では、熱保持部材7は平面視蜂の巣状の熱保持部材7aであり、厚み方向の貫通孔を含む板状体である。平面視蜂の巣状であれば、面内四方及び斜方に垂直な面外曲げ剛性について均等な熱保持部材7が構成され、何らかの要因で熱ひずみが発生しても、曲げ変形に弱い方向は特にないから、所謂、熱ひずみに起因する反り、受熱面10の変形が生じにくい、という利益がある。また、熱保持部材7の役割は、熱保持部材7の蓄えるだけの熱量を成形品4から受熱し、その熱量分だけ成形品4を冷却することであった。ここで、蜂の巣状の熱保持部材7aは、複数の六角柱形の空洞を有する。この空洞部は貫通孔である。貫通孔が有る熱保持部材7も貫通孔が無い熱保持部材7も共に熱保持部材7の熱容量Qを等しくするとなれば、厚み方向に貫通する複数の貫通孔に充填されていた部分に相当する熱保持部材7がない体積分だけ、貫通孔が無いバルク単板の熱保持部材7の厚みに比べて貫通孔が有る熱保持部材7aはその厚みを厚くされ得る。充填率を減ずればいくらでも厚くすることは可能であるが、本実施形態では、一形態として、平面視の熱保持部材7aの充填率を50%とし、その分厚みを2倍とする。その場合、蜂の巣状の熱保持部材7aの剛性は増加する。以下に試算する。充填率を50%とする平面視蜂の巣状の熱保持部材7aは、同じ厚さの単位円に内接する中空六角柱でモデル化するとバルク板材に比し壁厚が平方根(2)の半分の厚みに相当する。六角柱の曲げ剛性を示す断面2次モーメントZは、平面視六角形一辺をRとして、式(1)
=5R/8・・・(1)
であり、六角柱の平面視六角形一辺の3乗に比例する。従って、中空六角柱の曲げ剛性は、バルク板材に比し、1−(0.71)≒0.6倍となる。一方で、厚みが2倍となれば、曲げ剛性はその3乗の8倍となる。総じて、平面視の熱保持部材7の充填率を50%とする中空六角柱の曲げ剛性は、厚みをバルク板材の所要厚さの2倍にすれば、元のバルク板材に比べ、4倍以上の高剛性を得られると見込まれる。構造体を単柱体にモデル化したケースであるから、平面視蜂の巣状の熱保持部材7aの充填率を50%とし、安全率を2とすると、略2倍の高剛性が見込まれる。すなわち、単なる平板であれば、0.5mmの板厚とするところを1mm厚の蜂の巣状の板とし、それは、同平板であれば2mm厚の板厚に相当する曲げ剛性を提供する。実際、図4(a)に掲げる蜂の巣状の板状体はバルク平板2mm(図4(d))に対し、4mm厚さの平面視蜂の巣状の熱保持部材7aであるが、両者の体積は同等の条件で2mm平板に比べて、1.8倍の剛性とする4mm厚の平面視蜂の巣状の熱保持部材7aが得られた。
【0056】
このように、熱保持部材7の面外曲げ剛性が高まれば、温度上昇に伴う受熱面10のひずみは減少する。これは、受熱面10と成形品4の均一な接触面の形成に有効であり、冷却後の異強度部位の性能のばらつきを抑え、リードタイム短縮を実現する熱保持部材7の提供を実質的に提供する。また、貫通孔が有る熱保持部材7によって、熱貫流の流路が狭まるため、熱抵抗が増す。従って、貫通孔が無い熱保持部材7に比し、板厚をもっと薄くできる。すなわち、厚み方向に貫通する複数の孔を持たせることで、熱保持部材7の厚みを減ぜられ、熱保持部材の加工時間を減ぜられ、リードタイムの短縮に貢献し得る。
【0057】
<<金型の熱貫流抵抗>>
本実施形態に係る部分的に強度が異なる車体部材1の製造方法で用いる冷却金型6の受熱面10下の構造は、熱保持部材7と断熱材11あるいは空隙15が複層をなし、熱貫流路は金型面8下の金型金属単層の熱貫流路に比して複雑な構造となっている。以下、上述のように構成された冷却金型6の熱貫流抵抗について図2(b)を用い説明する。図2(b)に示されているように、金型面8下は、成形品4と金型面8が面接触し、他に接触面はない。金型面8下の熱貫流抵抗は、以下の、式(2)で表される。
金型面下の熱貫流抵抗=(成形品から金型への熱貫流)金型面の表面熱伝達抵抗+金型内の熱伝導抵抗・・・(式2)
例えば、30秒の所定の冷却時間経過後に成形品4は冷却金型6から取り出されるまで、所定の金型冷却温度と等温に向かい冷却される。
【0058】
これに対し、受熱面10下は、熱保持部材7が成形品4と金型面8の凹部9との間に介在されており、さらに、熱保持部材7と金型面8(凹部9)との間隙に断熱材11が埋められている。受熱面10下の熱貫流抵抗は、以下に分解される。
受熱面10下の熱貫流抵抗=(成形品4の接触面から熱保持部材7の受熱面10への熱伝達、これは受熱面10の熱伝達抵抗である)+熱保持部材7内の熱伝導抵抗+(熱保持部材7の裏面から断熱材11接触面への熱伝達、これは断熱材の熱伝達抵抗である)+断熱材内の熱伝導抵抗+(断熱材11の接触面から凹部9の底部9bへの熱伝達、これは底部9bの熱伝達抵抗)+金型内の熱伝導抵抗・・・(式3)
従って、図2(b)の小さい方の熱貫流HLで示されるように、熱保持部材7の受熱面10から下方への熱貫流は、金型面8から下方への熱貫流に比して限定的となる。このように、熱保持部材7の下方の断熱材11は、熱保持部材7の温度を保持させる。更に、断熱材11と冷却金型6の凹部9との接触状態から凹部9の表面も熱抵抗として働く。式(3)のうち、{熱保持部材内の熱伝導抵抗+断熱材の熱伝達抵抗+断熱材内の熱伝導抵抗+金型凹部の熱伝達抵抗}が追加の熱貫流抵抗となり、熱保持部材によって熱が保持されているかのように見える。30秒の所定の冷却時間経過後に成形品4が冷却金型6から取り出されるまで、成形品4は熱保持部材7と熱的な一体材として等温に向かい冷却されるように見える。実質的には、受熱面10に接触する温度Tの成形品4の熱容量Qに熱保持部材7の熱容量Qを加えた一体の熱容量Q=Q+Qが重要パラメータとなる。受熱面10に接触する成形品4と熱保持部材7とが冷却温度で等温になるまで冷却されるのであれば、成形品4の型閉め時温度Tから型開け時まで断熱変化とし、熱保持部材7が常温で保有する熱量を無視すれば、型閉め時温度Tから型開け時までに、型開け時に以下の温度Tに至る。
≒T/Q=T/(Q+Q)・・・(式4)
【0059】
<熱保持部材7の板厚>
成形品4も熱保持部材7も同じ鋼板で板厚も同じ厚さtとすれば、成形品の熱容量Qは、熱保持部材7の熱容量Qに等しい。式(4)によって成形品温度は、T/2に向かい冷却される。このように、熱保持部材7の板厚tによって、受熱面10に接触する部分の成形品4の冷却目標温度は金型面8に接触する部分との対比でコントロール可能である。熱保持部材7もブランク2と同じ鋼板で板厚tをブランク板厚tの2倍の2tとすれば、Q∝t、Q∝2tであるから、Q/(Q+Q)=1/3となり、熱保持部材7による所定の冷却目標温度は、その熱容量比だけでT/3と決定される。従って、所定の時間で所定の冷却目標温度が定まれば、所定の冷却目標温度比によって、熱容量比を定め、次に板状体の充填率を誘導し、板状体の厚みを定めてもよい。目標を定め、成形品4は所定の冷却速度CSが決定される。成形品4も熱保持部材7も同じ材質の鋼板で熱保持部材7の板厚tは成形品4のブランク2の板厚tの板厚の半分t/2とすれば、略Q=2Qであり、式(4)によって成形品温度は、T(2/3)に向かい冷却される。図2(a)に示される、熱保持部材7がない部分については、熱放射によって、別の原理に依る放冷となる。あるいは、熱保持部材7があっても、貫通孔を通じ、底部9bと受熱面10が対面している場合も熱放射によって、別の原理に依る放冷が混じる。
【0060】
このように、受熱面10が対面する成形品4の部分の冷却速度CSは、板材の板厚tによって所定の範囲の冷却速度CSとされ、板材の板厚tによって、冷却速度CSが簡便に制御可能である。この制御は、必ずしも板材の板厚tの線形制御とは限らない。製造パラメータには、種々のパラメータが関与し得るが、関与の性質が判明している板材の板厚tと、冷却後の製品の引張強度等の材料特性に決定的な金属組織を支配する冷却速度CSを製造パラメータとするのが好適である。
【0061】
ここで冷却速度CSは、図5に示す冷却時間−温度グラフ図に示される領域16〜19に所定の冷却時間で入るように材料の金属属性に従って製造ゴールパラメータとして制御する。図5の領域16は、急冷によるマルテンサイト組織を多分に与える冷却時間と温度域と示し、領域17は、第1の中間冷によるベイナイト組織を幾分与える冷却時間と温度域と示し、領域18は、第2の中間冷によるベイナイト組織を多分に与える冷却時間と温度域と示し、領域19は、緩冷によるフェライト組織を多分に与える冷却時間と温度域と示している。ここで、第1の中間冷による組織に比べて、第2の中間冷による組織はベイナイトをより多分に与える組織である。これら冷却時間−温度域で定義される領域に入るようにパラメータ制御し各々の金属組織に近い部位の車体部材1(図1参照)を製作すれば、様々な異強度化が実現できる。例えば、熱保持部材がない形態で型閉めすると、図5の上側の点線のように徐冷され、緩冷によるフェライト組織を多分に与える成形品が得られる。このフェライト組織を多分に含む成形品の部分は低強度部位を提供する。図5で一番下側の点線のように金型面8にように急冷される部位は、急冷によるマルテンサイト組織を多分に与える。成形品のこの部分は最高の高強度部位を提供する。両者の中間に位置する楕円曲線内領域は、熱保持部のある形態のように、中間冷によるベイナイト組織を多分又は幾分かが与えられている場合を示し、中強度部位を提供する。中間冷によるベイナイト組織を含む領域の金属組織は冷却速度のコントロールによって、図5の下方側、すなわち高強度部位の金属組織へ偏ったり、図5の上方側、すなわち低強度部位の金属組織へ偏ったりする。以下で、本実施形態で採用する製造パラメータ制御及びそのパラメータ制御を実現する冷却金型6の構成と効果をより詳細に、説明する。
【0062】
ところで、異強度部材のうち、特に、中間強度の部材を製作する場合、ブランク2の厚みよりも薄い熱保持部材7が適当な場合も生ずる。ところが、熱保持部材7が薄くなると板の曲げ剛性が板厚tの3乗に比例して低下し、受熱面10と成形品4の密着性を確保できなくなる。その場合には、受熱面10の温度にムラが生じる問題が発生する。上記のとおり、温度は異強度化の重要なパラメータであった。本実施形態は、熱保持部材7、厚み方向に貫通する複数の孔を有する板材からなり、この問題が原理的に解決されることは、上述のとおりである。本実施形態では、図5に示される4つの領域16〜19のうち領域17〜19に対応する以下の3種類の異強度部位を持つブランク2のプレス製品が製造された。いずれも、ブランク2の厚み1mm、断面ハット形状の成形品4をターゲット製品とし、AC温度820℃以上の920℃で十分にオーステナイト化されるように時間をかけ加熱され、図1に示される各ステップS1〜S3が順次実施された。
【0063】
図6に描かれているような車体部材1が、ブランク2の厚さよりも厚い熱保持部材7を用い製作された(図2(b)も参照)。冷間プレス成形品と金型表面間にはセラミックファイバー断熱材が埋められている。この構成で、型閉め後、冷却時間20秒〜30秒で冷却後温度が略460℃に収束される冷却時間−温度グラフ図7が得られた。冷却時間30秒後に型開けされて車体部材1はベイナイトを幾分含む、図5に示される領域17の第1の中間冷領域に相当する組織に変態し、引張強度1500Mp級に比べて約3分の2の強度に低下された引張強度980MPa級の第1の低強度部材が得られた。図7中の一番下の太線破線は、参考のために引張強度1500MPa級の急冷の場合の冷却速度線を示している。このように、この実施例では、ブランク2の厚さよりも厚い熱保持部材7を使用して、ブランク2の接触する部材、具体的には熱保持部材7の熱容量を大きくし短時間でのブランク2から熱保持部材7への熱移動がブランク2の厚さがもっと薄いものに比して促進されている。
【0064】
次に、もう一つの実施例では、図8に描かれているようなブランク2の車体部材1が、ブランク2の厚さよりも薄い熱保持部材7を用い製作された(図2(b)も参照)。冷間プレス成形品と金型表面間にはセラミックファイバー断熱材が埋められている。このような構成で、型閉め後、冷却時間20秒〜30秒で冷却後温度が略520℃に収束される冷却時間−温度グラフ図9が得られた。30秒後に型開けされて車体部材1はベイナイトを多分に含む、図5に示される領域18の第2の中間冷領域に相当する金属組織に変態し、引張強度980MPa級の第1の中間冷強度部材よりも20%程度強度が低い引張強度780MPa級の第2の中間冷強度部材が得られた。図6中の一番下の破線は、参考のために引張強度1500MPa級の急冷の場合の冷却速度線を示している。このように、この実施例では、ブランク2よりも厚みが薄い熱保持部材7を使用してブランク2の接触する部材、具体的には熱保持部材7の熱容量を小さくし、ブランク2から熱保持部材7への熱移動がブランク2の厚みがもっと厚いものに比して小さい。この実施例では、保温効果は、セラミックファイバー断熱材によって、高められている。
【0065】
このように、熱保持部材7の厚み制御によって、冷却速度を上げ下げし、セラミックファイバー断熱材の使用も相まって、所望の強度を得ている。
【0066】
次に、もう一つの実施例では、さらに、図10に描かれているようなブランク2の車体部材1が、熱保持部材7を介在させず、成形品4と底部9bの間に空隙15をおいて製作された(図2(a)も参照)。成形品4と金型面8間には、ブランク2の厚さの2倍以上、例えば、2mm以上の間隔をおいてある。このような構成で、型閉め後、冷却時間20秒〜30秒で冷却後温度が略650℃に収束される冷却時間−温度グラフ図11が得られた。冷却時間30秒後に型開けされて車体部材1は、フェライトを多分に含む組織(図5に示される領域19参照)を与え、引張強度590MPa級の最も低強度部位を提供することが検証された。引張強度780MPa級第2の低強度部材を与える冷却時間20秒〜30秒において冷却後温度が520℃よりも高い温度となるような冷却速度の領域に、引張強度590MPaへ向けて徐々に低強度化を与える領域があり、これは、熱保持部材7の厚さを段々薄くし、熱保持部材7の熱容量を減ずることよってブランク2から熱保持部材7への熱移動をより小さくすることで与えられる。後述するように、所定のマージンを見込み、冷却時間20秒〜30秒において冷却後温度が550℃以上の領域を、引張強度780MPa級第2の低強度部材よりも低強度の第3低強度部材を与える冷却温度領域として図11に斜線領域で示されている。
【0067】
ところで、型閉め後、冷却時間20秒〜30秒で冷却後温度が460℃と520℃との中間の冷却速度で冷却されたブランク2は、冷却後温度460℃の冷却速度で得られた引張強度980MPa級の第1の低強度部材と、冷却後温度520℃の冷却速度で得られた引張強度780MP級の第2の低強度部材の中間の遷移強度を持つ。この遷移強度領域には特段の組織変態温度はないから、この間を460℃と520℃との中央値略490℃で2分し、この中央値490℃の上下の冷却後温度領域で属性を2分類するのが適当である。
【0068】
図7には、2分類された980級冷却温度曲線と780級冷却温度曲線に挟まれた領域のうち、980級寄りの領域として、980級冷却温度曲線の上側かつ冷却後温度490℃よりも低い冷却後温度の領域にハッチングを付してある。
【0069】
図9には、2分類された980級冷却温度曲線と780級冷却温度曲線に挟まれた領域のうち、780級寄りの領域として冷却温度曲線の下側かつ冷却後温度490℃以上の領域にハッチングを付してある。
【0070】
引張強度980MPa級領域の低温側の外縁部を確定するとき、両冷却後温度の中央値490℃から実測値460℃への差分温度幅30℃に相当する温度幅比率6.1%(30℃/490℃の百分率)で実測値460℃から低温側へ冷却後温度を拡張する。すなわち、460℃の6.1%比率の温度幅で低温側へ拡張して考えてよい。冷却後温度460℃の低温側近傍には組織変態温度はないからである。この外縁領域にもっと離れた領域より6.1%の比率の温度幅(460℃の6.1%、28℃の幅)で引張強度980MPa級寄りの領域を把握する。すなわち、引張強度980MPa級は、冷却後温度が460℃から28℃以内で10℃単位に丸められた冷却後温度440℃以上460℃までも上記ハッチング領域に加え引張強度980MPa級寄りの領域(図9で砂模様で示す)と把握する。
【0071】
引張強度780MPa級領域の高温側の外縁部を確定するとき、冷却後温度の中央値490℃と実測値520℃との温度幅30℃に相当する温度幅比率6.1%(30℃/490℃の百分率)で実測値520℃から高温側へ冷却後を拡張する。すなわち、520℃の6.1%比率の温度幅で高温側へ拡張して考えてよい。冷却後温度520℃の高温側近傍には組織変態温度はないからである。この外縁部にもっと離れた領域より6.1%の比率の温度幅(520℃の6.1%、32℃の幅)で引張強度780MPa級寄りの領域を把握する。すなわち、引張強度780MPa級は、冷却後温度が520℃の上側へ32℃以内を10℃単位に丸め冷却後温度550℃以下520℃までも上記ハッチング領域に加え引張強度780MPa級寄りの領域(図9で砂模様で示す)と把握する。
【0072】
図12には、最終的に、上記引張強度980MPa級の第1の低強度部材寄りの領域(図12で1番下の領域である第1のハッチング領域)及び780Mpa級の第2の低強度部材寄りの領域(図12で下から2番目の領域である第2のハッチング領域)と引張強度780Mpa級に及ばないもっと低強度の第3の低強度部材領域(図12で下から3番目の領域である網掛け領域)の3分類された領域を示す。
【0073】
上記、2種類の熱保持部材7及び熱保持部材7のない形態は、一の自動車構造材の異なる位置に割り当てることができる。従って、多段階の異強度を有する自動車構造材を製作可能であり、ここで用いる金型は特殊な加熱機構も冷却機構も要しない。加えて、ブランク2は同じ厚みであるから、場所によって、異なる厚みの熱保持部材7を構成し、自動車衝突時の安全性確保ため、多段階の異強度を有する自動車構造材を短いリードタイムで提供する。多段階の異強度を有する自動車構造材の例は、図13(a)及び図13(b)に示されているセンタピラー部材20の試作にも現れる。図13(a)に示されている2つのハッチング領域が熱保持部材7で熱保持されて異強度化された部位である。更に、図13(b)は、低強度部位22及び金型で焼入れされた高強度部材とは独立した島状の中強度部位23とを設け、これらを合わせて3段階の異強度化をセンタピラー21へ施したものである。このような、異強度化は低強度部位22、中強度部位23に各々対応する、異なる厚みの蜂の巣状の熱保持部材7aを用意したり、所望の強度に至るまで、充填率を変じたり、断熱材11の埋め方を変じたり等の対応もされ得て、金型面8の凹部9の深さに差異を設ける必要もない。また、図13(a)と異なり、低強度部位22、中強度部位23がセンタピラー21では島状に配設され、各島に対応する部位にその島状部位の形状に合わせた熱保持部材7を用意してもよい。
【0074】
更に、自動車構造体の部材試作の強度設計に変更が必要な場合、再度の凹部9を含む冷却金型6の再製作を不要とし、熱保持部材7の厚みの設計変更及び凹部9内の支持高さを調節するだけで、車体部材1の再試作を可能とする。強度の設計変更に対応する試作リードタイム短縮にも有利である。
【0075】
図4(a)は、本実施形態で熱保持部材7を平面視千鳥格子状の熱保持部材7(b)とする変形例を示す。熱保持部材7(b)の部分が変形している他、他の部分は上記のとおりであり、記載を省略する。このように、平面視千鳥格子状であっても、熱保持部材7は、面方向に対する強度の指向性が緩くなる。平面視千鳥格子状であれば、面内左右方向に均等な剛性の熱保持部材7が構成され、正方格子状に比しスパンが半分の壁構造であるから、更に剛性が高い左右方向に均等な剛性の熱保持部材7が構成される。熱保持部材7は、平面視三角格子状であってもよく、各辺方向に均等な剛性の熱保持部材7が構成される。このような規則的な有孔の熱保持部材7の壁部配置の均等性は、不均等な配置に対し、熱変形への耐力の指向性についても予測可能な構成であり、受熱面10と成形品4との接触を均等に保つことに貢献する。
【0076】
図4(c)は、本実施形態の熱保持部材7の変形例を示す。熱保持部材7cは、その受熱面10を天井スラブ30の上面とし、かつその底面を床スラブ31の下面とし、天井スラブ30と床スラブ31とが、両スラブの間でこれらに直立する壁体32によって支持されるスラブ構造体33である。他の条件は、上述のとおりであり、記載を省略する。このようなスラブ構造体33は、壁体32に沿う方向は、壁体32自体の断面曲げ剛性に優れ、壁体32と交わる方向は、天井スラブ30及び床スラブ31による2層構造が高曲げ剛性に貢献する。この形態によれば、以下の効果が得られる。一般に面外曲げ剛性は、曲げ方向の高さhの2乗に比例する。1枚のバルク平板と同じ熱容量として、上下に離隔して対向配置される2層のスラブ構造体33に構成すれば、スラブ構造体33の厚さhの2乗に比例して剛性を高めた熱保持部材7(c)が得られる。スラブに対してこれらに直立する壁体32が与える剛性を無視しても、天井スラブ30と床スラブ31のとの距離をhとすれば、曲げ剛性は、2枚の梁構造として式(5)が一般に与えられる。式(5)は単位長あたりの断面2次モーメントZである。
=(h−h)/(6h)・・・式(5)
所要厚さが板厚hの単板の熱保持部材7を同じ体積を有する2層のスラブ構造体33へ変ずる場合、板厚hのうち、例えば、1/3部分をh/3厚の天井スラブ30へ、1/3部分をh/3厚の床スラブ31へ、そして、1/3部分を壁体32へ割当て、天井スラブ30と床スラブ31との距離は、h=(7/3)hとして、両スラブに対して直立する壁体によって離隔されている形態である。所要厚さhを、元の板厚hの3倍のh=3hとしてスラブ構造体33が形成されている。式(5)から当該スラブ構造体33の曲げ剛性は、元の単板の剛性と比べ(3−(7/3))倍に高められている。すなわち、元の単板の曲げ剛性から略14倍へ向上する。図4に示される熱保持部材7cは、同体積の単板に比し桁違いに高い剛性を提供し、安定した受熱面10と成形品4の接触を保ち、強度品質のばらつきの小さな製品に貢献する。加えて、熱保持部材7cのうち、壁体の平面視形状面積を小さくすれば、図2(b)のように熱保持部材7cが配設されれば、受熱面10下から凹部9の底部9bへの熱貫流抵抗も増し、天井スラブ30と床スラブ31とは温度差が発生するように、熱設計可能である。そうすると、熱貫流HLは減少し熱保持部材7cの保温効果が高まるから、熱保持部材7cの所要厚さhはもっと薄く形成することも可能である。加えて、熱保持部材7cのうち、天井スラブ30を平面視蜂の巣状の熱保持部材とし、厚み方向の貫通孔を含む板状体とすれば、上記の熱保持部材7aについての説明と同様、熱保持部材7cの曲げ剛性が総じて向上し、熱保持部材7の曲げ剛性が向上することによって得られる利益がそのまま得られ、受熱面10と成形品4の均一な接触面の形成に有効であり、冷却後の異強度部位の性能のばらつきを抑え、リードタイム短縮を実現する熱保持部材7cの提供を実質的に提供する。また、より材料使用量を減ずる選択をすれば、熱保持部材7cの加工時間の低減は、試作リードタイム短縮にも有利である。
【0077】
本実施形態の熱保持部材7は、金属3Dプリンタで製作するとよい。金属粉末をレーザー光で粉末程度の層毎に融着積層する熱保持部材7の形成方法によって、部品形状をその通りに造形可能であり、平面視正方格子状、平面視千鳥格子状及び平面視蜂の巣状も造形可能である。この構成であれば、AC温度以上の加熱にされ、型閉め温度が800℃を超える成形品4へ面接触し、一時的局所的に同程度に昇温されても支障ない形態になされ得る。融着積層単位は、50マイクロメータが好ましい。このように熱保持部材7が金属材料の構成は、熱保持部材は、高温下での熱保持にも好適である。また、スラブ構造体33は、天井スラブ30と壁体32及び床スラブ31と壁体32とを別体で金属3Dプリンタによって製作し、その後締結して熱保持部材7cとしてもよい。金属3Dプリンタによる製作は、層状に壁体配置を条状に限らず製作可能である利益がある。天井スラブ30と東西方向の壁体32及び床スラブ31と南北方向の壁体32とを別体とし、これを機械加工によって製作し、その後両スラブを締結して熱保持部材7cとしてもよい。このように壁体32を平面視条状又は平面視格子状と限定し、機械加工によって熱保持部材7cを製作してもよい。
【0078】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、一例としてハット形状用として車体部材1の製造方法の説明を行ったが、センタピラーや他の自動車車体構造などにも広く適用することができる。また、プレスステップS1工程は、冷間成形でなくとも、例えば、ホットスタンプ成形で行うことも可能であり、ホットスタンプ成形ではスプリングバックがなく、冷却金型6に投入する際も、より精度よく型と接触させられ、より好適である。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、角度など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 :車体部材
2 :ブランク
3 :冷間プレス金型
4 :成形品
5 :加熱炉
6 :冷却金型(6a、6b)
7 :熱保持部材(7a、7b、7c、7d)
8 :金型面
9 :凹部
9b :底部
10 :受熱面
11 :断熱材
13 :支持体
22 :低強度部位
23 :中強度部位
30 :天井スラブ
31 :床スラブ
32 :壁体
33 :スラブ構造体
HH :熱貫流
HL :熱貫流
S0 :ステップチャート
S1 :プレスステップ
S2 :加熱ステップ
S3 :冷却ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13