特開2019-217647(P2019-217647A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2019-217647積層体、ポリイミドフィルム、ディスプレイ用表面材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置並びにポリイミドフィルムの製造方法、積層体の製造方法及びディスプレイ用表面材の製造方法
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  • 特開2019217647-積層体、ポリイミドフィルム、ディスプレイ用表面材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置並びにポリイミドフィルムの製造方法、積層体の製造方法及びディスプレイ用表面材の製造方法 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-217647(P2019-217647A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】積層体、ポリイミドフィルム、ディスプレイ用表面材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置並びにポリイミドフィルムの製造方法、積層体の製造方法及びディスプレイ用表面材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20191129BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20191129BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20191129BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   B32B27/34
   C08J5/18CFG
   C08J7/04 K
   G09F9/00 313
   G09F9/00 342
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【全頁数】61
(21)【出願番号】特願2018-114913(P2018-114913)
(22)【出願日】2018年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】坂寄 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 滉大
(72)【発明者】
【氏名】金澤 奈保美
(72)【発明者】
【氏名】小林 義弘
(72)【発明者】
【氏名】勝又 綾
(72)【発明者】
【氏名】前田 高徳
(72)【発明者】
【氏名】脇田 敬輔
【テーマコード(参考)】
4F006
4F071
4F100
5G435
【Fターム(参考)】
4F006AA39
4F006AB43
4F006AB64
4F006BA02
4F006CA05
4F006CA08
4F006DA04
4F006EA03
4F071AA60
4F071AE19
4F071AF30
4F071AH12
4F071AH16
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC02
4F071BC15
4F100AK25B
4F100AK49A
4F100AK53B
4F100BA02
4F100BA07
4F100GB41
4F100JK12B
4F100JK15A
4F100JN01
4F100JN06
4F100YY00A
5G435AA09
5G435AA14
5G435AA17
5G435BB05
5G435BB12
5G435EE13
5G435GG42
5G435HH03
5G435HH18
5G435HH20
5G435KK07
(57)【要約】
【課題】ポリイミドフィルムと機能層とが優れた密着性を有し、外観が良好であり、光学特性に優れた積層体を提供する。
【解決手段】
長尺状のポリイミドフィルムであって、当該ポリイミドフィルムの一方の面を第一の面としたときに、当該第一の面内の700μm×700μmの視野において、前記ポリイミドフィルムにおいて任意に抽出した長手方向に直交する方向に延在する第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記ポリイミドフィルムにおいて任意に抽出した長手方向に沿う方向に延在する第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)が、20nm以下であり、当該第一の面内の71μm×95μmの視野における表面粗さ(Sa)が1nm以上10nm以下であるポリイミドフィルムと、前記ポリイミドフィルムの第一の面に接して積層された機能層と、を有する積層体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のポリイミドフィルムであって、当該ポリイミドフィルムの一方の面を第一の面としたときに、当該第一の面内の700μm×700μmの視野において、前記ポリイミドフィルムの長手方向に直交する方向に延在し、且つ前記長手方向の幅が、前記長手方向に直交する方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記ポリイミドフィルムの長手方向に沿う方向に延在し、且つ前記長手方向に直交する方向の幅が、前記長手方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)が、20nm以下であり、当該第一の面内の71μm×95μmの視野における表面粗さ(Sa)が1nm以上10nm以下であるポリイミドフィルムと、
前記ポリイミドフィルムの前記第一の面に接して積層された機能層と、を有することを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記機能層は、ハードコート層である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記ハードコート層は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記ラジカル重合性化合物が(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物であり、前記カチオン重合性化合物がエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2つ以上有する化合物である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記積層体は、JIS K−7105に準拠したヘイズ値が2.0以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
長尺状であり、一方の面を第一の面としたときに、当該第一の面に機能層を形成するための機能層形成用のポリイミドフィルムであって、
前記第一の面内の700μm×700μmの視野において、前記ポリイミドフィルムの長手方向に直交する方向に延在し、且つ前記長手方向の幅が、前記長手方向に直交する方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記ポリイミドフィルムの長手方向に沿う方向に延在し、且つ前記長手方向に直交する方向の幅が、前記長手方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)が、20nm以下であり、当該第一の面内の71μm×95μmの視野における表面粗さ(Sa)が1nm以上10nm以下である、ことを特徴とするポリイミドフィルム。
【請求項7】
前記ポリイミドフィルムは、JIS K−7105に準拠したヘイズ値が2.0以下である、請求項6に記載のポリイミドフィルム。
【請求項8】
前記請求項6又は7に記載のポリイミドフィルム、又は、前記請求項1乃至5のいずれか一項に記載の積層体である、ディスプレイ用表面材。
【請求項9】
フレキシブルディスプレイ用である、請求項8に記載のディスプレイ用表面材。
【請求項10】
請求項6又は7に記載のポリイミドフィルムと、
前記ポリイミドフィルムの一面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、
前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を備えるタッチパネル部材。
【請求項11】
前記ポリイミドフィルムの前記第一の面に接して積層された機能層を有する、請求項10に記載のタッチパネル部材。
【請求項12】
対向配置された基板の間に形成された液晶層を有する液晶表示部と、
前記液晶表示部の一面側に配置された、請求項6又は7に記載のポリイミドフィルムと、を有する液晶表示装置。
【請求項13】
前記ポリイミドフィルムの前記第一の面に接して積層された機能層を有する、請求項12に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
対向配置された基板の間に形成された有機エレクトロルミネッセンス層を有する有機エレクトロルミネッセンス表示部と、
前記有機エレクトロルミネッセンス表示部の一面側に配置された、請求項6又は7に記載のポリイミドフィルムと、を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項15】
前記ポリイミドフィルムの前記第一の面に接して積層された機能層を有する、請求項14に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項16】
長尺状の支持体の表面を研磨することにより、当該支持体の表面の700μm×700μmの視野における、前記支持体の長手方向に直交する方向に延在し、且つ前記長手方向の幅が、前記長手方向に直交する方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第一領域(B1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記支持体の長手方向に沿う方向に延在し、且つ前記長手方向に直交する方向の幅が、前記長手方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第二の領域(B2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)を、20nm以下とし、且つ、当該支持体の表面の71μm×95μmの視野における表面粗さ(Sa)を1nm以上10nm以下とする工程と、
ポリイミド前駆体と有機溶媒とを含有するポリイミド前駆体組成物を前記支持体の表面に塗布してポリイミド前駆体組成物の塗膜を形成するか、又はポリイミドと有機溶媒とを含有するポリイミド組成物を前記支持体の表面に塗布してポリイミド組成物の塗膜を形成する工程と、
前記ポリイミド前駆体組成物の塗膜から前記有機溶媒を除去し且つ前記ポリイミド前駆体組成物の塗膜に含まれる前記ポリイミド前駆体をイミド化するか、又は前記ポリイミド組成物の塗膜から前記有機溶媒を除去することにより、ポリイミドフィルムを形成する工程と、
を有することを特徴とする、ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項17】
前記ポリイミドフィルムは、JIS K−7105に準拠したヘイズ値が2.0以下である、請求項16に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項18】
請求項16又は17に記載のポリイミドフィルムの製造方法により得られたポリイミドフィルムを準備する工程と、
前記ポリイミドフィルムの支持体と接していた側の面に、機能層形成用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を硬化する工程と、を含む積層体の製造方法。
【請求項19】
前記機能層形成用組成物は、ハードコート層形成用組成物である、請求項18に記載の積層体の製造方法。
【請求項20】
前記ハードコート層形成用組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有する、請求項18又は19に記載の積層体の製造方法。
【請求項21】
前記請求項16又は17に記載の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程、又は、前記請求項18乃至20のいずれか一項に記載の製造方法により積層体を製造する工程を含む、ディスプレイ用表面材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、ポリイミドフィルム、ディスプレイ用表面材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置並びにポリイミドフィルムの製造方法、積層体の製造方法及びディスプレイ用表面材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にポリイミド樹脂は、芳香族テトラカルボン酸無水物と芳香族ジアミンとの縮合反応により得られたポリアミド酸(ポリアミック酸)を脱水閉環反応(イミド化反応)させて得られる高耐熱性の樹脂である。
ポリイミド樹脂は、一般には黄色又は褐色に着色を示すことから、ディスプレイ用途や光学用途など高い透明性が要求される分野に用いることは困難であった。
【0003】
近年、透明性の高いポリイミドを得るための研究が進んでおり、透明性を向上させたポリイミドを、ディスプレイ部材へ適用することが検討されている。
ポリイミドフィルムは、一般に、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸(ポリアミック酸)溶液又はポリイミド溶液を、エンドレスベルトやドラム等の支持体上に塗布して乾燥させることにより製造されている。
例えば特許文献1には、耐熱性、透明性、表面平滑性、及び光学特性に優れるポリイミドフィルムを、歩留まり良く、効率的に製造する方法として、鏡面光沢度が所定値以上であり、かつ表面粗さ(Rz)が所定値以下である金属材料の表面に積層された溶剤可溶性樹脂A層の面に、ポリイミド系樹脂B層を積層し、得られた金属積層体Bからポリイミド系樹脂B層を剥離して、ポリイミド系フィルムを得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/186594号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにポリイミドフィルムは、他の樹脂フィルムと比較して耐熱性等が優れており、特にエレクトロニクス分野において注目されている材料である。
中でも、透明性を向上させた透明ポリイミドフィルムは、ガラスに代わる材料として液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等への応用が期待されており、樹脂フィルムの特性を活かしたフレキシブルデバイスへの適用を目指して開発が進められている。
【0006】
ポリイミドフィルムは、その表面に、例えばハードコート層等の機能層を積層して用いることが、一般に行われている。例えば、ポリイミドフィルムをディスプレイ用途や光学用途に用いる場合には、ポリイミドフィルムが表面側に配置されることが多いため、ポリイミドフィルムの表面に、上記したハードコート層等の機能層を積層した積層体として用いることが、一般に行われている。
しかしながら、ポリイミドフィルムは、機能層に対して必ずしも十分な密着性を有していないことがあり、この場合には、積層体としての品質が低下する、又は、機能層の一部がポリイミドフィルムから剥離して、安定した製造を妨げる等の問題がある。
【0007】
また、ポリイミドフィルムの積層体を、例えばディスプレイ用途や光学用途などの分野に用いる場合には、積層体としての外観の向上が求められる。しかしながら、ポリイミドフィルムの表面には、所定の方向に微細なスジが発生することがあり、このようなスジがポリイミドフィルムの表面に現れると、積層体として、外観に劣るものとなる。
また、ポリイミドフィルムの積層体を、例えばディスプレイ用途や光学用途などの分野に用いる場合には、その光学特性の向上も求められる。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、ポリイミドフィルムと機能層とが優れた密着性を有し、外観が良好であり、光学特性に優れた積層体、前記積層体に用いるポリイミドフィルム、前記積層体又は前記ポリイミドフィルムであるディスプレイ用表面材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置並びに前記ポリイミドフィルムの製造方法、前記ポリイミドフィルムの製造方法を含む積層体の製造方法及び前記ポリイミドフィルムの製造方法又は前記積層体の製造方法を含むディスプレイ用表面材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(積層体)
本発明の積層体は、長尺状のポリイミドフィルムであって、当該ポリイミドフィルムの一方の面を第一の面としたときに、当該第一の面内の700μm×700μmの視野において、前記ポリイミドフィルムの長手方向に直交する方向に延在し、且つ前記長手方向の幅が、前記長手方向に直交する方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記ポリイミドフィルムの長手方向に沿う方向に延在し、且つ前記長手方向に直交する方向の幅が、前記長手方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)が、20nm以下であり、当該第一の面内の71μm×95μmの視野における表面粗さ(Sa)が1nm以上10nm以下であるポリイミドフィルムと、前記ポリイミドフィルムの前記第一の面に接して積層された機能層と、を有する。
【0010】
本発明の積層体においては、前記機能層は、ハードコート層であってもよい。
【0011】
本発明の積層体においては、前記ハードコート層は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有することが、ポリイミドフィルムと機能層との密着性の向上の点から好ましい。
【0012】
本発明の積層体においては、前記ラジカル重合性化合物が(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物であり、前記カチオン重合性化合物がエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2つ以上有する化合物であることが、ポリイミドフィルムと機能層との密着性の向上の点から好ましい。
【0013】
本発明の積層体においては、前記積層体は、JIS K−7105に準拠したヘイズ値が2.0以下であることが、光学特性の向上の点から好ましい。
【0014】
(ポリイミドフィルム)
本発明のポリイミドフィルムは、 長尺状であり、一方の面を第一の面としたときに、当該第一の面に機能層を形成するための機能層形成用のポリイミドフィルムであって、 前記第一の面内の700μm×700μmの視野において、前記ポリイミドフィルムの長手方向に直交する方向に延在し、且つ前記長手方向の幅が、前記長手方向に直交する方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記ポリイミドフィルムの長手方向に沿う方向に延在し、且つ前記長手方向に直交する方向の幅が、前記長手方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)が、20nm以下であり、当該第一の面内の71μm×95μmの視野における表面粗さ(Sa)が1nm以上10nm以下である。
【0015】
本発明のポリイミドフィルムにおいては、JIS K−7105に準拠したヘイズ値が2.0以下であることが、光学特性の向上の点から好ましい。
【0016】
(ディスプレイ用表面材)
本発明のディスプレイ用表面材は、前記本発明のポリイミドフィルム、又は、前記本発明の積層体である。
【0017】
本発明のディスプレイ用表面材は、フレキシブルディスプレイ用であってもよい。
【0018】
(タッチパネル部材)
本発明のタッチパネル部材は、前記本発明のポリイミドフィルムと、前記ポリイミドフィルムの一面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を備える。
【0019】
本発明のタッチパネル部材は、前記ポリイミドフィルムの前記第一の面に接して積層された機能層を有していてもよい。
【0020】
(液晶表示装置)
本発明の液晶表示装置は、対向配置された基板の間に形成された液晶層を有する液晶表示部と、前記液晶表示部の一面側に配置された、前記本発明のポリイミドフィルムと、を有する。
【0021】
本発明の液晶表示装置は、前記ポリイミドフィルムの前記第一の面に接して積層された機能層を有していてもよい。
【0022】
(有機エレクトロルミネッセンス表示装置)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、対向配置された基板の間に形成された有機エレクトロルミネッセンス層を有する有機エレクトロルミネッセンス表示部と、前記有機エレクトロルミネッセンス表示部の一面側に配置された、前記本発明のポリイミドフィルムと、を有する。
【0023】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前記ポリイミドフィルムの前記第一の面に接して積層された機能層を有していてもよい。
【0024】
(ポリイミドフィルムの製造方法)
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、長尺状の支持体の表面を研磨することにより、当該支持体の表面の700μm×700μmの視野における、前記支持体の長手方向に直交する方向に延在し、且つ前記長手方向の幅が、前記長手方向に直交する方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第一領域(B1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記支持体の長手方向に沿う方向に延在し、且つ前記長手方向に直交する方向の幅が、前記長手方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第二の領域(B2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)を、20nm以下とし、且つ、当該支持体の表面の71μm×95μmの視野における表面粗さ(Sa)を1nm以上10nm以下とする工程と、
ポリイミド前駆体と有機溶媒とを含有するポリイミド前駆体組成物を前記支持体の表面に塗布してポリイミド前駆体組成物の塗膜を形成するか、又はポリイミドと有機溶媒とを含有するポリイミド組成物を前記支持体の表面に塗布してポリイミド組成物の塗膜を形成する工程と、 前記ポリイミド前駆体組成物の塗膜から前記有機溶媒を除去し且つ前記ポリイミド前駆体組成物の塗膜に含まれる前記ポリイミド前駆体をイミド化するか、又は前記ポリイミド組成物の塗膜から前記有機溶媒を除去することにより、ポリイミドフィルムを形成する工程と、を有する。
【0025】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法においては、前記ポリイミドフィルムは、JIS K−7105に準拠したヘイズ値が2.0以下であることが、光学特性の向上の点から好ましい。
【0026】
(積層体の製造方法)
本発明の積層体の製造方法は、前記本発明のポリイミドフィルムの製造方法により得られたポリイミドフィルムを準備する工程と、前記ポリイミドフィルムの支持体と接していた側の面に、機能層形成用組成物の塗膜を形成する工程と、前記塗膜を硬化する工程と、を含む。
【0027】
本発明の積層体の製造方法においては、前記機能層形成用組成物は、ハードコート層形成用組成物であってもよい。
【0028】
本発明の積層体の製造方法においては、前記ハードコート層形成用組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有することが、ポリイミドフィルムと機能層との密着性の向上の点から好ましい。
【0029】
(ディスプレイ用表面材の製造方法)
本発明のディスプレイ用表面材の製造方法は、前記本発明の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程、又は、前記本発明の製造方法により積層体を製造する工程を含む。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ポリイミドフィルムと機能層とが優れた密着性を有し、外観が良好であり、光学特性に優れた積層体、前記積層体に用いるポリイミドフィルム、前記積層体又は前記ポリイミドフィルムであるディスプレイ用表面材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置並びに前記ポリイミドフィルムの製造方法、前記ポリイミドフィルムの製造方法を含む積層体の製造方法及び前記ポリイミドフィルムの製造方法又は前記積層体の製造方法を含むディスプレイ用表面材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明に係る積層体が有するポリイミドフィルムの構成を説明するための平面図である。
図2図2は、走査型白色干渉顕微鏡により取得した、ポリイミドフィルムの干渉縞画像である。
図3図3は、図2に示す干渉縞画像を、測定対象であるポリイミドフィルムの長手方向に沿う方向に延在し、且つ前記長手方向に直交する方向の幅が、前記長手方向の長さよりも幅狭となるように抽出した画像である。
図4図4は、本発明のタッチパネル部材10の一例を示す概略平面図である。
図5図5は、図4(A)、図4(B)に示すタッチパネル部材10のA−A´線断面図である。
図6図6(A)は、第一の積層体201の概略平面図であり、図6(B)は、第二の積層体202の概略平面図である。
図7図7は、図6(A)に示す積層体201と図6(B)に示す積層体202とを貼り合わせて構成されるタッチパネル部材20の、図6(A)及び図6(B)中A−A´線で示す位置での断面図である。
図8図8は、本発明の液晶表示装置100の一例を示す概略断面図である。
図9図9は、本発明の液晶表示装置200の一例を示す概略断面図である。
図10図10は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置300の一例を示す概略断面図である。
図11】本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置400の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
I.積層体
本発明の積層体は、 長尺状のポリイミドフィルムであって、当該ポリイミドフィルムの一方の面を第一の面としたときに、当該第一の面内の700μm×700μmの視野において、前記ポリイミドフィルムの長手方向に直交する方向に延在し、且つ前記長手方向の幅が、前記長手方向に直交する方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記ポリイミドフィルムの長手方向に沿う方向に延在し、且つ前記長手方向に直交する方向の幅が、前記長手方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)が、20nm以下であり、当該第一の面内の71μm×95μmの視野における表面粗さ(Sa)が1nm以上10nm以下であるポリイミドフィルムと、 前記ポリイミドフィルムの前記第一の面に接して積層された機能層と、を有する。
【0033】
以下の説明において、前記ポリイミドフィルムの長手方向に直交する方向に延在し、且つ前記長手方向の幅が、前記長手方向に直交する方向の長さよりも幅狭である領域を、「長手方向に直交する方向に延在する第一の領域(A1)」(図1参照)という。
また、以下の説明において、前記ポリイミドフィルムの長手方向に沿う方向に延在し、且つ前記長手方向に直交する方向の幅が、前記長手方向の長さよりも幅狭である領域を、「長手方向に沿う方向に延在する第二の領域(A2)」(図1参照)という。
【0034】
本発明によれば、当該ポリイミドフィルムの一方の面を第一の面としたときに、当該第一の面内の700μm×700μmの視野において任意に抽出した、「長手方向に直交する方向に延在する第一の領域(A1)」の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記700μm×700μmの視野において任意に抽出した、「長手方向に沿う方向に延在する第二の領域(A2)」の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)が、20nm以下であり、且つ当該第一の面内の71μm×95μmの視野における表面粗さ(Sa)が1nm以上10nm以下であるポリイミドフィルムを有することで、ポリイミドフィルムの第一の面と機能層とが優れた密着性を有し、且つ、外観が良好であり、光学特性に優れた積層体を得ることができる。
【0035】
なお、図1において、ポリイミドフィルム1の、「長手方向に直交する方向に延在する第一の領域」をA1で示し、「長手方向に沿う方向に延在する第二の領域」をA2で示す。
【0036】
ポリイミドフィルムにおいては、従来より表面平滑性が求められてきた。一方、ポリイミドフィルムの表面に、例えばハードコート層等の機能層を積層する場合、ポリイミドフィルムの表面平滑性が高過ぎると、ポリイミドフィルムと機能層との密着性を十分に得ることができず、機能層の一部がポリイミドフィルムから剥離して、積層体としての品質が低下したり、安定した製造を妨げたりする等の問題がある。
ポリイミドフィルムと機能層との密着性を向上させるには、ポリイミドフィルムの機能層に対する接着面の表面平滑性を、若干低下させることが有効である。ポリイミドフィルムの表面平滑性は、その製造工程において、ポリイミド前駆体溶液であるポリアミド酸(ポリアミック酸)溶液やポリイミド溶液を塗布する支持体の研磨状態を制御して、当該支持体の表面平滑性を調整することにより、向上又は低下させることが可能である。
しかしながら、上記したようにして、表面平滑性を低下させた支持体上に、ポリアミド酸溶液やポリイミド溶液を塗布して、ポリイミドフィルムを製造すると、ポリイミドフィルムの表面には、前述したポリアミド酸溶液又はポリイミド溶液が塗布された前記支持体の流れ方向に沿う方向に延在するように、微細なスジが形成され易い。このようなスジがポリイミドフィルムの表面に顕在化した場合、ポリイミドフィルムやその積層体として、外観に劣るものとなる。
また、上記したようにして、表面平滑性を低下させた支持体上に、ポリアミド酸溶液やポリイミド溶液を塗布して、ポリイミドフィルムを製造すると、前記支持体の表面状態が反映されることで、ポリイミドフィルムのヘイズ値が上昇する等して、積層体としての光学特性が低下することがある。
【0037】
本発明に係る積層体は、当該積層体を構成するポリイミドフィルムとして、当該ポリイミドフィルムの一方の面を第一の面としたときに、当該第一の面内の700μm×700μmの視野において任意に抽出した、「長手方向に直交する方向に延在する第一の領域(A1)」の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記700μm×700μmの視野において任意に抽出した、「長手方向に沿う方向に延在する第二の領域(A2)」の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)が20nm以下であり、且つ、当該第一の面内の71μm×95μmの視野における表面粗さ(Sa)が1nm以上10nm以下であるポリイミドフィルムを有することにより、ポリイミドフィルムと機能層との間で高い密着性を得ることができ、且つ、ポリイミドフィルム表面におけるスジの顕在化が抑制され、積層体において良好な外観を得ることができ、且つ優れた光学特性を得ることができる。
【0038】
1.積層体の主構成
以下、本発明の積層体について詳細に説明する。
本発明の積層体は、前述した長尺状のポリイミドフィルムと、前記ポリイミドフィルムの第一の面に接して積層された機能層とを有する。
本発明の積層体は、前記ポリイミドフィルムの第一の面のみに前記機能層が接して積層されたものであってもよいし、前記ポリイミドフィルムの両面に、前記機能層が接して積層されたものであってもよい。
【0039】
2.ポリイミドフィルム
本発明の積層体が有するポリイミドフィルムは、長尺状のポリイミドフィルムであって、当該ポリイミドフィルムの一方の面を第一の面としたときに、当該第一の面内の700μm×700μmの視野において任意に抽出した、「長手方向に直交する方向に延在する第一の領域(A1)」の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記700μm×700μmの視野において任意に抽出した、「長手方向に沿う方向に延在する第二の領域(A2)」の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)が、20nm以下であり、且つ、当該第一の面内の71μm×95μmの視野における表面粗さ(Sa)が1nm以上10nm以下である。
【0040】
以下の説明において、「表面うねり(Wa)」及び「表面粗さ(Sa)」とは、以下のように測定して決定される値をいう。
なお、以下の「表面うねりの測定方法」及び「表面粗さの測定方法」の説明で使用する用語は、ISO 25178の規定に準じる。
【0041】
(表面うねりの測定方法)
走査型白色干渉顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製 「Vert Scan」)を使用して、測定対象物の表面について、700μm×700μmの視野領域を含む領域の干渉縞の画像を取得し(例えば、図2参照。)、取得した画像中の、700μm×700μmの視野における干渉縞画像から、測定対象物の原表面を決定する。
次いで、得られた原表面から表面フィルター(S−フィルター)処理を行い、基礎表面を求めた後、当該基礎表面に対して、所定の表面フィルター処理を行うことによって、輪郭曲面(うねり曲面)を求める。
次いで、輪郭曲面(うねり曲面)について所定の領域を定義し、定義された所定の領域の平均面をX−Y平面、高さ方向をZ軸として、輪郭曲面(うねり曲面)をZ=f1(x,y)で表わした時、下記式(1)で与えられる値をnm単位で表したものを、「表面うねり(Wa)」という。
【0042】
【数1】
【0043】
(表面粗さの測定方法)
走査型白色干渉顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製 「Vert Scan」)を使用して、測定対象物の表面について、71μm×95μmの視野領域を含む領域の干渉縞の画像を取得し、取得した画像中の、71μm×95μmの視野における干渉縞画像から、測定対象物の原表面を決定する。
次いで、得られた原表面から表面フィルター(S−フィルター)処理を行い、基礎表面を求めた後、当該基礎表面に対して、L−フィルター処理を行うことによって、輪郭曲面(粗さ曲面)であるS−L平面を求める。
次いで、S−L平面(輪郭曲面(粗さ曲面))について所定の領域を定義し、定義された所定の領域の平均面をX−Y平面、高さ方向をZ軸として、S−L平面(輪郭曲面(粗さ曲面))をZ=f2(x,y)で表わした時、下記式(2)で与えられる値をnm単位で表したものを、「表面粗さ(Sa)」という。
【0044】
【数2】
【0045】
本発明の積層体が有するポリイミドフィルムは、71μm×95μmの視野における表面粗さ(Sa)が1nm以上10nm以下である第一の面を有する。
【0046】
前記ポリイミドフィルムは、少なくとも第一の面の表面粗さ(Sa)が1nm以上であることにより、当該ポリイミドフィルムの第一の面に接触させて形成される機能層に対して、優れた密着性を有する。前記ポリイミドフィルムの機能層に対する密着性を向上する点から、第一の面の表面粗さ(Sa)は、1.1nm以上であることが好ましく、1.2nm以上であることがより好ましい。
また、前記ポリイミドフィルムは、少なくとも第一の面の表面粗さ(Sa)が10nm以下であることにより、当該ポリイミドフィルムにおける、ヘイズ値の過度な上昇が抑制されている。従って、積層体として優れた光学特性を得ることができる。前記ポリイミドフィルムのヘイズ値の上昇を抑制する点から、第一の面の表面粗さ(Sa)は、6nm以下であることが好ましく、4nm以下であることがより好ましい。
前記ポリイミドフィルムは、機能層に対する密着性を向上し、且つヘイズ値の上昇を抑制する点から、71μm×95μmの視野における第一の面の表面粗さ(Sa)が1.2nm以上4nm以下であることが好ましい。
【0047】
本発明の積層体が有するポリイミドフィルムは、前述したように、長尺状のポリイミドフィルムであって、第一の面内の700μm×700μmの視野において任意に抽出した、「長手方向に直交する方向に延在する第一の領域(A1)」の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記700μm×700μmの視野において任意に抽出した、「長手方向に沿う方向に延在する第二の領域(A2)」の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)が、20nm以下である。
【0048】
長尺状のポリイミドフィルムの表面には、一般に、その製造工程において、ポリアミド酸溶液やポリイミド溶液を塗布した支持体の流れ方向に沿う方向、即ち、長尺状のポリイミドフィルムの長手方向に沿う方向に、スジが発生する傾向にある。このようなスジは、前記した長手方向に直交する方向に延在する第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)が増大し、当該表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、長手方向に沿う方向に延在する第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)が増大するに従い、ポリイミドフィルム表面に顕在化し易くなる。
前記した表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)が増大する原因としては、成膜後のポリイミドフィルムの表面粗さを若干高めるために、ポリイミド前駆体溶液又はポリイミド溶液を塗布する支持体の研磨状態を調整して、表面平滑性を若干低下させた支持体を用いた場合に、当該支持体の全体形状が、成膜後のポリイミドフィルムに反映されることが挙げられる。
本発明の積層体が有するポリイミドフィルムは、長手方向に直交する方向に延在する第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、長手方向に沿う方向に延在する第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)が20nm以下であるため、表面粗さを前述した範囲に有しつつ、フィルム表面のスジが目立ち難いものとされている。
ポリイミドフィルムの表面におけるスジの発生を抑制する点から、前記第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)は、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが更に好ましい。
また、ポリイミドフィルムの表面の外観の低下を抑制する点から、前記第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)は、−20nm以上であることが好ましく、−10nm以上であることがより好ましい。
【0049】
なお、ポリイミドフィルムの長手方向に直交する方向に延在する第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)、及びポリイミドフィルムの長手方向に沿う方向に延在する第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)は、以下のようにして算出することができる。
まず、走査型白色干渉顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製 「Vert Scan」)を使用して、ポリイミドフィルムの表面について、700μm×700μmの視野領域を含む領域の干渉縞画像を取得する(例えば、図2参照。)。
次いで、取得した画像中の、700μm×700μmの視野における干渉縞画像において、測定対象であるポリイミドフィルムの長手方向に直交する方向に延在し、且つ前記長手方向の幅が、前記長手方向に直交する方向の長さよりも幅狭となるように、第一の領域(A1)を任意に抽出する。
次いで、任意に抽出した第一の領域(A1)の干渉縞画像から、ポリイミドフィルムの原表面を決定し、得られた原表面の基礎表面から、前述した表面うねりの測定方法において説明した手順により、輪郭曲面(うねり曲面)を求める。次いで、得られた輪郭曲面(うねり曲面)から、前述した表面うねりの測定方法において説明した手順により、第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)を算出する。
次に、前記した、700μm×700μmの視野における干渉縞画像から、第一の領域(A1)を抽出する位置を、先の抽出位置から、測定対象であるポリイミドフィルムの長手方向にずらして抽出し、抽出した第一の領域(A1)の干渉縞画像について、上記と同様の手順を繰り返して、第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)を算出する。
上記した第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)の算出工程を、第一の領域(A1)の抽出位置をずらしながら複数回繰り返し、それぞれにおいて得られた第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)の平均値を算出することにより、第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)を得る。
【0050】
また、ポリイミドフィルムの長手方向に沿う方向に延在する第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)は、上記した、第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)の算出の際に取得した、700μm×700μmの視野領域を含む領域の干渉縞画像(例えば、図2参照)中の、700μm×700μmの視野における干渉縞画像において、測定対象であるポリイミドフィルムの長手方向に沿う方向に延在し、且つ前記長手方向に直交する方向の幅が、前記長手方向の長さよりも幅狭となるように、第二の領域(A2)を任意に抽出し(例えば、図3参照)、抽出した第二の領域(A2)について、前記した第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)の算出において説明したのと同様の手順を行うことにより、算出することができる。
次に、前記した、700μm×700μmの視野における干渉縞画像から、第二の領域(A2)を抽出する位置を、先の抽出位置から、測定対象であるポリイミドフィルムの短手方向にずらして抽出し、抽出した第二の領域(A2)の干渉縞画像について、上記と同様の手順を繰り返して、第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)を算出する。
上記した第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)の算出工程を、第二の領域(A2)の抽出位置をずらしながら複数回繰り返し、それぞれにおいて得られた第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)の平均値を算出することにより、第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)を得る。
【0051】
本発明の積層体が有するポリイミドフィルムは、少なくともポリイミドを含有し、本発明の効果を損なわない範囲において、更に必要に応じて、添加剤やポリイミド以外のその他の樹脂を含有していても良い。
【0052】
(1)ポリイミド
ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られるものである。テトラカルボン酸成分とジアミン成分の重合によってポリアミド酸を得てイミド化することが好ましい。イミド化は、熱イミド化で行っても、化学イミド化で行ってもよい。また、熱イミド化と化学イミド化とを併用した方法で製造することもできる。
【0053】
テトラカルボン酸成分の具体例としては、テトラカルボン酸二無水物が好適に用いられ、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキサン-3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
【0054】
ジアミン成分の具体例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、
【0055】
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、
【0056】
trans−シクロヘキサンジアミン、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、また、上記ジアミンの芳香族環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
なお、これらのジアミンは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
【0057】
中でも、作製されるポリイミドフィルムの光透過性を向上し、且つ、耐衝撃性を向上する点から、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、(ii)脂肪族環、及び(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素原子で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造からなる群から選択される少なくとも1つを含むポリイミドを含有することが好ましい。ポリイミドが芳香族環を含むことにより、配向性が高まり、剛性が向上するため、耐衝撃性が向上するが、芳香族環の吸収波長によって透過率が低下する傾向がある。
ポリイミドに(i)フッ素原子を含むとポリイミド骨格内の電子状態を電荷移動し難くすることができる点からポリイミドフィルムの光透過性が向上する。
ポリイミドに(ii)脂肪族環を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点からポリイミドフィルムの光透過性が向上する。
ポリイミドに(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素原子で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点からポリイミドフィルムの光透過性が向上する。
【0058】
中でも、芳香族環を含み、且つフッ素原子を含むポリイミドであることが、作製されるポリイミドフィルムの光透過性を向上し、且つ、耐衝撃性を向上する点から好ましく用いられる。
フッ素原子の含有割合は、ポリイミド表面をX線光電子分光法により測定したフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上であることが好ましく、更に0.05以上であることが好ましい。一方でフッ素原子の含有割合が高すぎるとポリイミド本来の耐熱性などが低下する恐れがあることから、前記フッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が1以下であることが好ましく、更に0.8以下であることが好ましい。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による各原子の比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
【0059】
また、前記ポリイミドは、作製されるポリイミドフィルムの耐衝撃性が向上する点から、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の合計を100モル%としたときに、芳香族環を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環を有するジアミン残基の合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
【0060】
また、前記ポリイミドは、作製されるポリイミドフィルムの耐衝撃性と光透過性が向上する点から、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の少なくとも1つが、芳香族環とフッ素原子とを含むことが好ましく、更に、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の両方が、芳香族環とフッ素原子とを含むことが好ましい。
前記ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の合計を100モル%としたときに、芳香族環及びフッ素原子を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環及びフッ素原子を有するジアミン残基の合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
【0061】
また、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドであることが、作製されるポリイミドフィルムの光透過性を向上し、且つ、剛性を向上する点から好ましく用いられる。ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、更に、60%以上であることが好ましく、より更に70%以上であることが好ましい。
ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、大気中における加熱工程を経ても、例えば200℃以上で延伸を行っても、作製されるポリイミドフィルムの光学特性、特に全光線透過率や黄色度YI値の変化が少ない点から好ましい。
ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、酸素との反応性が低いため、ポリイミドの化学構造が変化し難いことが推定される。
ポリイミドフィルムはその高い耐熱性を利用し、加熱を伴う加工工程が必要なデバイスなどに用いられる場合が多いが、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、これら後工程を透明性維持のために不活性雰囲気下で実施する必要が生じないので、設備コストや雰囲気制御にかかる費用を抑制できるというメリットがある。
ここで、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、ポリイミドの分解物を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計及びNMRを用いて求めることができる。
例えば、サンプルを、アルカリ水溶液、又は、超臨界メタノールにより分解し、得られた分解物を、高速液体クロマトグラフィーで分離し、当該分離した各ピークの定性分析をガスクロマトグラフ質量分析計及びNMR等を用いて行い、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量することでポリイミドに含まれる全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合を求めることができる。
【0062】
また、耐屈曲性を向上する観点から、ケイ素原子を含むポリイミドを好ましく用いることができる。
本発明に用いられるケイ素原子を含むポリイミドとしては、中でも、ケイ素原子を有するジアミン残基を、ジアミン残基総量のうち、好ましくは1モル%以上50モル%以下、より好ましくは2.5モル%以上40モル%以下、より更に好ましくは5モル%以上30モル%以下の割合で含むポリイミドが好適に用いられる。
【0063】
ケイ素原子を有するジアミン残基としては、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基が好ましい。
主鎖にケイ素原子を1個有するジアミンとしては、例えば、下記一般式(A)で表されるジアミンが挙げられる。また、主鎖にケイ素原子を2個有するジアミンとしては、例えば、下記一般式(B)で表されるジアミンが挙げられる。
【0064】
【化1】

(一般式(A)及び一般式(B)において、Lはそれぞれ独立して、直接結合又は−O−結合であり、R10はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の1価の炭化水素基を表す。R11はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基を表す。)
【0065】
10で表される1価の炭化水素基としては、炭素数1以上20以下のアルキル基、アリール基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐状と環状の組合せであっても良い。
炭素数1以上20以下のアルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。前記環状のアルキル基としては、炭素数3〜10のシクロアルキル基であることが好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数6〜12のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。また、R10で表される1価の炭化水素基としては、アラルキル基であっても良く、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭化水素基としては、例えば後述する2価の炭化水素基と前記1価の炭化水素基とをエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(−NH−)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、本発明の効果が損なわれない範囲で特に限定されず、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。
【0066】
10で表される1価の炭化水素基としては、耐衝撃性及び屈曲耐性の点から、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数6以上10以下のアリール基であることが好ましい。炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基であることがより好ましく、前記炭素数6以上10以下のアリール基としては、フェニル基であることがより好ましい。
【0067】
11で表される2価の炭化水素基としては、炭素数1以上20以下のアルキレン基、アリーレン基、及びこれらの組み合わせの基が挙げられる。アルキレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐状と環状の組合せであっても良い。
炭素数1以上20以下のアルキレン基としては、炭素数1以上10以下のアルキレン基であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、各種プロピレン基、各種ブチレン基、シクロヘキシレン基等の直鎖状又は分岐状アルキレン基と環状アルキレン基との組合せの基などを挙げることができる。
前記アリーレン基としては、炭素数6〜12のアリーレン基であることが好ましく、アリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、更に後述する芳香族環に対する置換基を有していても良い。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い2価の炭化水素基としては、前記2価の炭化水素基同士をエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(−NH−)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
11で表される2価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、前記R10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基と同様であって良い。
【0068】
11で表される2価の炭化水素基としては、耐衝撃性及び屈曲耐性の点から、炭素数1以上6以下のアルキレン基、又は炭素数6以上10以下のアリーレン基であることが好ましく、更に、炭素数2以上4以下のアルキレン基であることがより好ましい。
【0069】
主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンとしては、中でも、ケイ素原子を2個有するジアミンが、光透過性の点、及び耐衝撃性及び屈曲耐性の点から好ましく、更に、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(5−アミノペンチル)テトラメチルジシロキサン等が、入手容易性や光透過性と耐衝撃性の両立の観点から好ましい。
【0070】
耐衝撃性及び屈曲耐性の点から、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基の分子量は、1000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、500以下であることがより更に好ましく、300以下であることが特に好ましい。
主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基は単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
【0071】
前記ポリイミドフィルムに含まれるポリイミドとしては、例えば、下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドが挙げられる。
【0072】
【化2】

(一般式(1)において、Rはテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、Rはジアミン残基である2価の基を表す。nは繰り返し単位数を表す。)
【0073】
ここで、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸から、4つのカルボキシル基を除いた残基をいい、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基と同じ構造を表す。また、ジアミン残基とは、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をいう。
【0074】
前記一般式(1)におけるRとしては、例えば、上述したテトラカルボン酸成分から4つのカルボキシル基又は酸二無水物構造を除いた残基が挙げられ、前記一般式(1)におけるRとしては、例えば、上述したジアミン成分から2つのアミノ基を除いた残基が挙げられる。
【0075】
また、前記一般式(1)のRとしては、例えば下記一般式(2)で表される2価の基が挙げられる。
【0076】
【化3】

(一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はパーフルオロアルキル基を表す。)
【0077】
前記一般式(1)で表される構造において、nは繰り返し単位数を表し、1以上である。ポリイミドにおける繰り返し単位数nは、例えばポリイミドフィルムが後述する好ましいガラス転移温度を示すように、構造に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。
平均繰り返し単位数は、通常10〜2000であり、更に15〜1000であることが好ましい。
【0078】
また、前記ポリイミドは、前記一般式(1)で表される構造が、ポリイミドの全繰り返し単位数の95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、100%であることがより更に好ましい。
前記ポリイミドは、本発明の効果が損なわれない限り、その一部に前記一般式(1)で表される構造とは異なる構造を有していても良い。前記一般式(1)で表される構造とは異なる構造としては、例えば、ポリアミド構造が挙げられる。含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。
【0079】
前記ポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルム全量に対する前記ポリイミドの含有量が、50質量%以上であることが好ましく、更に60質量%以上であることが好ましい。前記ポリイミドの含有量の上限は含有成分により適宜調整されればよい。
【0080】
前記ポリイミドフィルムに含まれるポリイミドは、耐熱性の点から、ガラス転移温度が250℃以上であることが好ましく、更に、270℃以上であることが好ましい。一方、ベーク温度低減の点から、ガラス転移温度が400℃以下であることが好ましい。
ポリイミドのガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置 RSA−G2(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))を用い、測定範囲を−150℃以上490℃以下として、変形様式として引張りを選定し、周波数1Hz、昇温速度5℃/min、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして動的粘弾性測定を行い、tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))の曲線を得て、ピークの頂点の温度を求める。動的粘弾性測定装置の測定条件は以下のように設定する。tanδ曲線のピークが複数存在する場合、ピークの極大値が最大であるピークの頂点の温度をガラス転移温度とする。ピーク及び変曲点の解析時は、目視評価せず、データを数値化して、数値から解析する。
<RSA−G2の測定条件>
(Initial value)
Axial force : 3.0 g
Sensitivity : 1.0 g
Proportional force Mode : Force Tracking
Axial Force > Dynamic Force : 1.5 %
Minimum axial force : 2.0 g
Programmed Extension Below : 0 Pa
(Auto strain)
Mode : Enabled
Strain adjust : 20.0 %
Minimum strain : 0.01 %
Maximum strain : 3.0 %
Minimum force : 1.5 g
Maximum force : 200.0 g
(Test parameters)
Sampling rate : 10pts/s
Strain % : 0.1%
周波数 : Single point
Frequency 1Hz
なお、tanδ曲線を測定するサンプルとしては、23℃±2℃ RH30〜50%の環境下に24時間静置したポリイミドフィルムを10cm角以上にサンプリングしたフィルムのさらに中央部を、剃刀またはメスにて5mm幅にスリットの入った切り出し治具を用いて、幅5mm×長さ50mmに(チャック時にサンプル長が20mmとなるように)切り出した物を用いる。幅の測定はノギスを用いて、位置を変えて3回計測した平均値を記録する。この際、幅測定の一部に平均値の3%以上の変動幅のある場合、そのサンプルは使用しない。
【0081】
(2)添加剤
前記ポリイミドフィルムは、前記ポリイミドの他に、必要に応じて更に添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、例えば、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤等が挙げられる。
【0082】
また、前記ポリイミドフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリイミド以外のその他の樹脂を含有していても良い。前記その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ガラス−エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリノルボルネン等のポリシクロオレフィン等が挙げられる。
前記ポリイミドフィルムがポリイミド以外のその他の樹脂を含有する場合、当該その他の樹脂の含有量は、ポリイミド層全量に対して、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0083】
(3)ポリイミドフィルムの特性
本発明の積層体が有するポリイミドフィルムは、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が90%以上であることが好ましく、91%以上であることが更に好ましい。このように透過率が高いことから、透明性が良好になり、ガラス代替材料とすることができる。
なお、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムは、厚み5μm以上100μm以下において、前記JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、90%以上であることが好ましく、更に91%以上であることが好ましい。
また、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムは、厚み50μm±5μmにおいて、前記JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、90%以上であることが好ましく、更に91%以上であることが好ましい。
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、例えば、ヘイズメーター(例えば村上色彩技術研究所製 HM150)により測定することができる。なお、ある厚みの全光線透過率の測定値から、異なる厚みの全光線透過率は、ランベルトベールの法則により換算値を求めることができ、それを利用することができる。
【0084】
具体的には、ランベルトベールの法則によれば、透過率Tは、
Log10(1/T)=kcb
(k=物質固有の定数、c=濃度、b=光路長)で表される。
フィルムの透過率の場合、膜厚が変化しても密度が一定であると仮定するとcも定数となるので、上記式は、定数fを用いて
Log10(1/T)=fb
(f=kc)と表すことができる。ここで、ある膜厚の時の透過率がわかれば、各物質の固有の定数fを求めることができる。従って、T=1/10f・b の式を用いて、fに固有の定数、bに目標の膜厚を代入すれば、所望の膜厚の時の透過率を求めることができる。
【0085】
また、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムは、JIS K−7105に準拠したヘイズ値が、光透過性の点から、2.0以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましく、1.0以下であることが更に好ましく、0.5以下であることがより更に好ましい。このようにヘイズ値が低いことにより、光透過性が向上し、ガラス代替材料となり得る。
当該ヘイズ値は、ポリイミドフィルムの厚みが5μm以上100μm以下において達成できることが好ましい。
また、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムは、厚み50μm±5μmにおいて、JIS K−7105に準拠したヘイズ値が、2.0以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましく、1.0以下であることが更に好ましく、0.5以下であることがより更に好ましい。
前記ヘイズ値は、JIS K−7105に準拠した方法で測定することができ、例えば村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150により測定することができる。
なお、ある厚みのヘイズ値の測定値から、異なる厚みのヘイズ値は、ある特定の膜厚のサンプルの380nm以上780nm以下の間の5nm間隔で測定された各波長におけるヘイズ値と、前記方法により測定される各波長の全光線透過率から、各波長の拡散透過率を算出し、前記全光線透過率と同様にランベルトベールの法則により異なる厚みの各波長における拡散透過率の換算値を求め、ヘイズ値を全光線透過率に対する拡散透過率の比として算出し用いることができる。
【0086】
また、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムは、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることが更に好ましい。
本発明の積層体が有するポリイミドフィルムは、このように黄色度が低いことにより、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上し、ガラス代替材料となり得る。
本発明の積層体が有するポリイミドフィルムは、厚み5μm以上100μm以下において、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることが更に好ましい。
また、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムは、厚み50μm±5μmにおいて、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることが更に好ましい。
なお、黄色度(YI値)は、JIS K7373−2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株) V−7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定した透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出することができる。
YI=100(1.2769X−1.0592Z)/Y
なお、ある厚みの黄色度の測定値から、異なる厚みの黄色度は、ある特定の膜厚のサンプルの380nm以上780nm以下の間の5nm間隔で測定された各波長における各透過率について、前記全光線透過率と同様にランベルトベールの法則により異なる厚みの各波長における各透過率の換算値を求め、それを元に算出し用いることができる。
【0087】
本発明の積層体が有するポリイミドフィルムの好ましい一形態としては、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上1以下であることが好ましく、更に0.05以上0.8以下であることが好ましい。
また、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)と窒素原子数(N)の比率(F/N)が、0.1以上20以下であることが好ましく、更に0.5以上15以下であることが好ましい。
また、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)とケイ素原子数(Si)の比率(F/Si)が、1以上50以下であることが好ましく、更に3以上30以下であることが好ましい。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定されるポリイミドフィルムの各原子の原子%の値から求めることができる。
【0088】
また、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のケイ素原子(Si)の原子%は0.1以上10以下が好ましく、0.2以上5以下がさらに好ましい。
本発明において、X線光電子分光法(XPS)により測定されるポリイミドフィルムの各原子濃度は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定することができる。
【0089】
また、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムのガラス転移温度は、耐熱性の点から150℃以上であることが好ましく、更に、200℃以上であることが好ましい。一方、ベーク温度を低減できる点から、400℃以下であることが好ましく、更に、380℃以下であることが好ましい。また、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムは、150℃以上400℃以下の温度領域に1つのガラス転移温度を有することが好ましい。
なお、前記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置 RSA−G2(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))を用い、測定範囲を−150℃以上490℃以下として、変形様式として引張りを選定し、周波数1Hz、昇温速度5℃/min、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして動的粘弾性測定を行い、tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))の曲線を得て、ピークの頂点の温度を求める。動的粘弾性測定装置の測定条件は以下のように設定する。tanδ曲線のピークが複数存在する場合、ピークの極大値が最大であるピークの頂点の温度をガラス転移温度とする。ピーク及び変曲点の解析時は、目視評価せず、データを数値化して、数値から解析する。
<RSA−G2の測定条件>
(Initial value)
Axial force : 3.0 g
Sensitivity : 1.0 g
Proportional force Mode : Force Tracking
Axial Force > Dynamic Force : 1.5 %
Minimum axial force : 2.0 g
Programmed Extension Below : 0 Pa
(Auto strain)
Mode : Enabled
Strain adjust : 20.0 %
Minimum strain : 0.01 %
Maximum strain : 3.0 %
Minimum force : 1.5 g
Maximum force : 200.0 g
(Test parameters)
Sampling rate : 10pts/s
Strain % : 0.1%
周波数 : Single point
Frequency 1Hz
なお、tanδ曲線を測定するサンプルとしては、23℃±2℃ RH30〜50%の環境下に24時間静置したポリイミドフィルムを10cm角以上にサンプリングしたフィルムのさらに中央部を、剃刀またはメスにて5mm幅にスリットの入った切り出し治具を用いて、幅5mm×長さ50mmに(チャック時にサンプル長が20mmとなるように)切り出した物を用いる。幅の測定はノギスを用いて、位置を変えて3回計測した平均値を記録する。この際、幅測定の一部に平均値の3%以上の変動幅のある場合、そのサンプルは使用しない。
【0090】
また、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムは、15mm×40mmの試験片をJIS K7127-1989に準拠し、引張り速度を10mm/分、チャック間距離を20mmとして測定する25℃における引張弾性率が、1.8GPa以上であることが好ましい。引張弾性率が高いことにより、保護フィルムとして十分な表面硬度が得られるため、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムを表面材として好適に用いることができる。前記引張弾性率は、2.0GPa以上であることが好ましく、2.4GPa以上であることが更に好ましい。
前記引張弾性率は、引張り試験機(例えば島津製作所製:オートグラフAG−X 1N、ロードセル:SBL−1KN)を用い、幅15mm×長さ40mmの試験片をポリイミドフィルムから切り出して、25℃で、引張り速度10mm/min、チャック間距離は20mmとして測定することができる。前記引張弾性率を求める際のポリイミドフィルムは厚みが50μm±5μmであることが好ましい。
【0091】
また、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムにおいては、屈曲耐性に優れる点から、下記静的屈曲試験方法に従って、静的屈曲試験を行った場合に、当該試験で測定される内角が120°以上であることが好ましく、125°以上であることがより好ましく、130°以上であることがより更に好ましい。
[静的屈曲試験方法]
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片の長辺の両端部が厚み6mmの金属片(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片の両端部と金属片との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)で挟み、当該試験片を内径6mmで屈曲した状態で固定する。その際に、金属片とガラス板の間で当該試験片がない部分には、ダミーの試験片を挟み込み、ガラス板が平行になるようにテープで固定する。このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片を、60±2℃、93±2%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片にかかる力を解放する。その後、当該試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定する。
【0092】
また、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムにおいては、耐吸湿性に優れ、高湿下での屈曲耐性に優れる点から、下記動的屈曲試験方法に従って、動的屈曲試験を行った場合に、試験片の内角が155°以上であることが好ましく、160°以上であることが更に好ましい。
[動的屈曲試験方法]
20mm×100mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、恒温恒湿器内耐久試験システム(ユアサシステム機器製、面状体無負荷U字伸縮試験治具 DMX−FS)にテープで固定する。試験片を前記静的屈曲試験と同様の屈曲した状態、すなわち、屈曲した状態の試験片の長辺の両端部間の距離が6mmとなるように設定(内径6mmで屈曲した状態で固定)した後、60±2℃、93±2%相対湿度(RH)の環境下で1分間に90回の屈曲回数で、20万回屈曲を繰り返す。
その後、試験片を取り外し、得られた試験片の一方の端部を固定し、20万回屈曲を繰り返してから30分後の試験片の内角を測定する。
【0093】
また、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムにおいては、下記密着性試験方法に従って、密着性試験を行った場合に、塗膜の剥がれが生じないことが、ポリイミドフィルムと機能層の一種であるハードコート層との密着性の点及びポリイミドフィルムに隣接して、機能層であるハードコート層を積層した積層体の表面硬度の点から好ましい。
[密着性試験方法]
ペンタエリスリトールトリアクリレートの40質量%メチルイソブチルケトン溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレート100質量部に対して10質量部の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを添加して調製した密着性評価用組成物を、10cm×10cmに切り出したポリイミドフィルムの試験片上に塗布し、紫外線を窒素気流下200mJ/cmの露光量で照射し硬化させることにより、10μm膜厚の硬化膜を形成する。当該硬化膜について、JIS K 5600−5−6に準拠したクロスカット試験を行い、テープによる剥離操作を繰り返し5回実施した後、塗膜の剥がれの有無を観察する。
【0094】
本発明の積層体が有するポリイミドフィルムにおいて、鉛筆硬度は2B以上であることが好ましく、B以上であることがより好ましく、HB以上であることがより更に好ましい。
前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行うことができる。例えば東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いることができる。
【0095】
また、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムは、前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.020以下であることが好ましい。
前記複屈折率が小さいことにより、光学的歪みが低減するため、ポリイミドフィルムをディスプレイ用表面材として用いた場合に、ディスプレイの表示品質の低下を抑制することができる。前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、より小さい方が好ましく、0.015以下であることが好ましく、更に0.010以下であることが好ましく、より更に0.008未満であることが好ましい。
なお、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムの前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、以下のように求めることができる。
まず、位相差測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA−WR」)を用いて、25℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの厚み方向位相差値(Rth)を測定する。
厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出する。前記斜め40度入射の位相差値は、位相差フィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光を位相差フィルムに入射させて測定する。
ポリイミドフィルムの厚み方向の複屈折率は、式:Rth/dに代入して求めることができる。前記dは、ポリイミドフィルムの膜厚(nm)を表す。
なお、厚み方向位相差値は、フィルムの面内方向における遅相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、フィルム面内における進相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最小となる方向)の屈折率をny、及びフィルムの厚み方向の屈折率をnzとしたときに、Rth[nm]={(nx+ny)/2−nz}×dと表すことができる。
【0096】
本発明の積層体が有するポリイミドフィルムの厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、1μm以上であることが好ましく、更に5μm以上であることが好ましく、より更に10μm以上であることが好ましい。一方、200μm以下であることが好ましく、更に150μm以下であることが好ましく、より更に100μm以下であることが好ましい。
厚みが薄いと強度が低下し破断しやすくなり、厚みが厚いと屈曲時の内径と外径の差が大きくなり、フィルムへの負荷が大きくなることから屈曲耐性が低下する恐れがある。
【0097】
なお、本発明の積層体が有するポリイミドフィルムには、例えば、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0098】
3.機能層
本発明の積層体が有する機能層は、前述したポリイミドフィルムの第一の面に接して積層される層である。
機能層としては、例えば、ポリイミドフィルムの表面硬度の向上のために積層される、ハードコート層が挙げられる。
【0099】
ハードコート層としては、例えば、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する層を用いることができる。
【0100】
(1)ラジカル重合性化合物
ラジカル重合性化合物とは、ラジカル重合性基を有する化合物である。前記ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、炭素−炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、前記ラジカル重合性化合物が2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0101】
前記ラジカル重合性化合物が1分子中に有するラジカル重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、1分子中に2〜6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートと称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーを好ましく使用できる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
【0102】
前記ラジカル重合性化合物としては、具体的には、例えば、ジビニルベンゼンなどのビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(例えば、エトキシ化(エチレンオキサイド変性)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなど)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリアクリレート類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジアクリレート等のエポキシアクリレート類、ポリイソシナネートとヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートの反応によって得られるウレタンアクリレート等を挙げることができる。
【0103】
(2)カチオン重合性化合物
カチオン重合性化合物とは、カチオン重合性基を有する化合物である。前記カチオン重合性化合物が有するカチオン重合性基としては、カチオン重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。なお、前記カチオン重合性化合物が2個以上のカチオン重合性基を有する場合、これらのカチオン重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0104】
前記カチオン重合性化合物が1分子中に有するカチオン重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
また、前記カチオン重合性化合物としては、中でも、カチオン重合性基としてエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましい。エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基は、重合反応に伴う収縮が小さいという点から好ましい。また、環状エーテル基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が入手し易く、得られたハードコート層の耐久性に悪影響を与えず、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。また、環状エーテル基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高い、低毒性であり、得られたハードコート層をエポキシ基を有する化合物と組み合わせた際に塗膜中でのカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
【0105】
エポキシ基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又は、シクロヘキセン環、シクロペンテン環含有化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化する事によって得られる脂環族エポキシ樹脂;脂肪族多価アルコール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、コポリマーなどの脂肪族エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFや水添ビスフェノールA等のビスフェノール類、又はそれらのアルキレンオキサイド付加体、カプロラクトン付加体等の誘導体と、エピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル、及びノボラックエポキシ樹脂等でありビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0106】
上記脂環族エポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(UVR−6105、UVR−6107、UVR−6110)、ビス−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアディペート(UVR−6128)(以上、カッコ内は商品名で、ダウ・ケミカル製である。)が挙げられる。
【0107】
また、上記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−611、デナコールEX−612、デナコールEX−614、デナコールEX−614B、デナコールEX−622)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−512、デナコールEX−521)、ペンタエリスリトルポリグリシジルエーテル(デナコールEX−411)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−421)、グリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−313、デナコールEX−314)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(デナコールEX−321)、レソルチノールジグリシジルエーテル(デナコールEX−201)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−211)、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(デナコールEX―212)、ヒドロジビスフェノールAジグリシジルエーテル(デナコールEX−252)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−810、デナコールEX−811)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX―850、デナコールEX―851、デナコールEX―821)、
プロピレングリコールグリシジルエーテル(デナコールEX―911)、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル(デナコールEX―941、デナコールEX−920)、アリルグリシジルエーテル(デナコールEX−111)、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(デナコールEX−121)、フェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−141)、フェノールグリシジルエーテル(デナコールEX−145)、ブチルフェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−146)、ジグリシジルフタレート(デナコールEX−721)、ヒドロキノンジグリシジルエーテル(デナコールEX−203)、ジグリシジルテレフタレート(デナコールEX−711)、グリシジルフタルイミド(デナコールEX−731)、ジブロモフェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−147)、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−221) (以上、カッコ内は商品名で、ナガセケムテックス製である。)が挙げられる。
【0108】
また、その他の市販品のエポキシ樹脂としては、商品名エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート828EL、エピコート828XA、エピコート834、エピコート801、エピコート801P、エピコート802、エピコート815、エピコート815XA、エピコート816A、エピコート819、エピコート834X90、エピコート1001B80、エピコート1001X70、エピコート1001X75、エピコート1001T75、エピコート806、エピコート806P、エピコート807、エピコート152、エピコート154、エピコート871、エピコート191P、エピコートYX310、エピコートDX255、エピコートYX8000、エピコートYX8034等(以上商品名、ジャパンエポキシレジン製)が挙げられる。
【0109】
オキセタニル基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101)、1,4−ビス−3−エチルオキセタン−3−イルメトキシメチルベンゼン(OXT−121)、ビス−1−エチル−3−オキセタニルメチルエーテル(OXT−221)、3−エチル−3−2−エチルへキシロキシメチルオキセタン(OXT−212)、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211)(以上、カッコ内は商品名で東亜合成製である。)や、商品名エタナコールEHO、エタナコールOXBP、エタナコールOXTP、エタナコールOXMA(以上商品名、宇部興産製)が挙げられる。
【0110】
(3)重合開始剤
本発明の積層体が有するハードコート層が含有する前記ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物は、例えば、前記ラジカル重合性化合物及び前記カチオン重合性化合物の少なくとも1種に、必要に応じて重合開始剤を添加して、公知の方法で重合反応させることにより得ることができる。
【0111】
前記重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等を適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカル若しくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
【0112】
ラジカル重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくともいずれかによりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。例えば、光ラジカル重合開始剤としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられ、更に具体的には、
1,3−ジ(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、チバ・ジャパン(株)製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名イルガキュア184、チバ・ジャパン(株)製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(商品名イルガキュア369、チバ・ジャパン(株)製)、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)(商品名イルガキュア784、チバ・ジャパン(株)製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
上記以外にも、市販品が使用でき、具体的には、チバ・ジャパン(株)製のイルガキュア907、イルガキュア379、イルガキュア819、イルガキュア127、イルガキュア500、イルガキュア754、イルガキュア250、イルガキュア1800、イルガキュア1870、イルガキュアOXE01、DAROCUR TPO、DAROCUR1173、日本シイベルヘグナー(株)製のSpeedcureMBB、SpeedcurePBZ、SpeedcureITX、SpeedcureCTX、SpeedcureEDB、Esacure ONE、Esacure KIP150、Esacure KTO46、日本化薬(株)製のKAYACURE DETX−S、KAYACURE CTX、KAYACURE BMS、KAYACURE DMBI等が挙げられる。
【0114】
また、カチオン重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくともいずれかによりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。カチオン重合開始剤としては、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η6−ベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示され、さらに具体的には、ベンゾイントシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
ラジカル重合開始剤としても、カチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示され、更に具体的には、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム等のスルホニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のスルホニウム塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等の2,4,6−置換−1,3,5トリアジン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0116】
(4)添加剤
本発明の積層体が有するハードコート層は、前記重合物の他に、必要に応じて、帯電防止剤、防眩剤、防汚剤、硬度を向上させるための無機又は有機微粒子、レべリング剤、各種増感剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0117】
なお、前記ハードコート層は、反射防止性、防眩性等の機能が付与されたものであってもよい。当該機能は、例えば、前記ハードコート層に公知の表面処理を施したり、無機又は有機微粒子等の添加剤を含有させること等により付与することができる。
【0118】
また、本発明の積層体は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ポリイミドフィルム及び前記ハードコート層の他に、機能層として、更にウレタンやアクリル樹脂などを含むゲル等の他の層が積層されたものであってもよい。
【0119】
また、機能層としては、ハードコート層には限定されず、例えば反射防止層、防眩層であってもよく、ポリイミドフィルムとハードコート層との密着性を向上させるためのプライマー層であってもよい。
また、機能層は、単層であってもよく、複数の層を含んでいてもよい。また、機能層としては、単一の機能を有する層であってもよく、互いに異なる機能を有する層を含んでいてもよい。
【0120】
本発明の積層体の全体厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、強度の点から、10μm以上であることが好ましく、更に40μm以上であることが好ましい。一方、屈曲耐性の点から、300μm以下であることが好ましく、更に250μm以下であることが好ましい。
また、本発明の積層体において、各機能層の厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、2μm以上80μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。また、カール防止の観点からポリイミドフィルムの両面に、例えばハードコート層等の機能層を形成しても良い。
【0121】
(5)積層体の特性
本発明の積層体は、積層体側表面の鉛筆硬度がHB以上であることが好ましく、F以上であることがより好ましく、H以上であることがより更に好ましい。
本発明の積層体の鉛筆硬度は、前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度と同様にして測定することができる。
【0122】
本発明の積層体は、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、更に88%以上であることが好ましく、より更に90%以上であることが好ましい。このように透過率が高いことから、透明性が良好になり、ガラス代替材料となり得る。
本発明の積層体の前記全光線透過率は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率と同様にして測定することができる。
【0123】
本発明の積層体は、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることがより更に好ましい。
本発明の積層体は、の前記黄色度(YI値)は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)と同様にして測定することができる。
【0124】
本発明の積層体のJIS K−7105に準拠したヘイズ値は、光透過性の点から、5.0以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、1.2以下であることがより好ましく、1.0以下であることが更に好ましく、0.5以下であることがより更に好ましい。
本発明の積層体のJIS K−7105に準拠したヘイズ値は、前記ポリイミドフィルムのヘイズ値と同様にして測定することができる。
【0125】
本発明の積層体の波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、0.020以下であることが好ましく、0.015以下であることが好ましく、更に0.010以下であることが好ましく、より更に0.008未満であることが好ましい。
本発明の積層体の前記複屈折率は、前記ポリイミドフィルムの波長590nmにおける厚み方向の複屈折率と同様にして測定することができる。
【0126】
(6)積層体の用途
本発明の積層体の用途は特に限定されるものではなく、従来薄い板ガラス等ガラス製品が用いられていた基材や表面材等の部材として用いることができる。本発明の積層体は、ポリイミドフィルムと機能層との密着性、外観及び光学特性が向上したものであるため、ディスプレイ用の基材や表面材等の部材として好適に用いることができる。
本発明の積層体は、具体的には例えば、薄くて曲げられるフレキシブルタイプの有機ELディスプレイや、スマートフォンや腕時計型端末などの携帯端末、自動車内部の表示装置、腕時計などに使用するフレキシブルパネル等に好適に用いることができる。また、本発明の積層体は、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置用部材や、タッチパネル用部材、フレキシブルプリント基板、表面保護膜や基板材料等の太陽電池パネル用部材、光導波路用部材、その他半導体関連部材等に適用することもできる。
【0127】
II.ポリイミドフィルム
本発明のポリイミドフィルムは、長尺状であり、一方の面を第一の面としたときに、当該第一の面に機能層を形成するための機能層形成用のポリイミドフィルムであって、前記第一の面内の700μm×700μmの視野において、前記ポリイミドフィルムの長手方向に直交する方向に延在し、且つ前記長手方向の幅が、前記長手方向に直交する方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記ポリイミドフィルムの長手方向に沿う方向に延在し、且つ前記長手方向に直交する方向の幅が、前記長手方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)が、20nm以下であり、当該第一の面内の71μm×95μmの視野における表面粗さ(Sa)が1nm以上10nm以下である。
本発明のポリイミドフィルムの具体的な構成は、「I.積層体」において説明したポリイミドフィルムの構成及び特性と同様であるため、詳細な説明を省略する。
本発明のポリイミドフィルムは、機能層に対して優れた密着性を示し、且つ、外観が良好であり、光学特性に優れている。
【0128】
本発明のポリイミドフィルムの用途は特に限定されるものではなく、例えば、前述した本発明の積層体の用途と同様の用途に用いることができる。
【0129】
III.ポリイミドフィルムの製造方法
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、長尺状の支持体の表面を研磨することにより、当該支持体の表面の700μm×700μmの視野における、前記支持体の長手方向に直交する方向に延在し、且つ前記長手方向の幅が、前記長手方向に直交する方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第一領域(B1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記支持体の長手方向に沿う方向に延在し、且つ前記長手方向に直交する方向の幅が、前記長手方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第二の領域(B2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)を、20nm以下とし、且つ、当該支持体の表面の71μm×95μmの視野における表面粗さ(Sa)を1nm以上10nm以下とする工程と、
ポリイミド前駆体と有機溶媒とを含有するポリイミド前駆体組成物を前記支持体の表面に塗布してポリイミド前駆体組成物の塗膜を形成するか、又はポリイミドと有機溶媒とを含有するポリイミド組成物を前記支持体の表面に塗布してポリイミド組成物の塗膜を形成する工程と、
前記ポリイミド前駆体組成物の塗膜から前記有機溶媒を除去し且つ前記ポリイミド前駆体組成物の塗膜に含まれる前記ポリイミド前駆体をイミド化するか、又は前記ポリイミド組成物の塗膜から前記有機溶媒を除去することにより、ポリイミドフィルムを形成する工程と、を有する。
【0130】
(第一の製造方法)
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、例えば、第一の製造方法として、長尺状の支持体の表面を研磨することにより、当該支持体の表面の700μm×700μmの視野における、前記支持体の長手方向に直交する方向に延在し、且つ前記長手方向の幅が、前記長手方向に直交する方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第一領域(B1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記支持体の長手方向に沿う方向に延在し、且つ前記長手方向に直交する方向の幅が、前記長手方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第二の領域(B2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)を、20nm以下とし、且つ、当該支持体の表面の71μm×95μmの視野における表面粗さ(Sa)を1nm以上10nm以下とする工程((1−1)支持体の表面研磨工程)と、
ポリイミド前駆体と有機溶媒とを含むポリイミド前駆体組成物を調製する工程((1−2)ポリイミド前駆体組成物調製工程)と、
前記ポリイミド前駆体組成物を前記支持体のの表面に塗布してポリイミド前駆体組成物の塗膜を形成する工程((1−3)ポリイミド前駆体組成物塗膜形成工程)と、
前記ポリイミド前駆体組成物の塗膜から前記有機溶媒を除去し且つ前記ポリイミド前駆体組成物の塗膜に含まれる前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程((1−4)ポリイミド前駆体組成物塗膜乾燥工程及び(1−5)イミド化工程)と、を有する製造方法が挙げられる。
【0131】
(1−1)支持体の表面研磨工程
支持体としては、表面が平滑で耐熱性及び耐溶剤性を有する材料であれば、特に制限なく用いることができる。支持体の材料としては、例えばガラス板などの無機材料、表面を鏡面処理した金属板、合成樹脂等が挙げられる。
また支持体の形状は塗布方式によって選択され、例えば板状や箔状であってもよく、またドラム状やベルト状であってもよく、ロールに巻き取り可能なシート状等であってもよい。ロールtoロール加工等の連続生産性等から、支持体の形状は、シート状、箔状等が好ましい。
【0132】
金属板を構成する金属材料は、特に限定されないが、銅、SUS、アルミ、スチール、ニッケル及びこれらを複合した複合金属などを使用することができる。また、前記した金属材料の表面を、亜鉛やクロム化合物など他の金属材料で処理したものを、支持体として用いることもできる。これらの中でも、使用し易さの点から、SUSを好適に用いることができる。
また、金属材料としては、例えば、上記したSUSを冷間圧延した後、光輝熱鈍処理を行い、更に軽い冷間圧延処理を施して得られる、ステンレス鋼BA材を用いることも可能である。
【0133】
たとえば、支持体が箔状の場合、特に限定されないが、銅箔、スチール箔、SUS箔、アルミニウム箔、ニッケル箔などを使用することができる。また、これらを複合した複合金属箔、亜鉛やクロム化合物など他の金属で処理した金属箔などについても使用することができる。これらの中でも、使用し易さの点から、SUS箔を好適に用いることができる。
【0134】
当該金属箔は、カットシート状、ロール状、又はエンドレスベルト状などの種々の形状で使用できる。当該金属箔は、好ましくロール状がよい。
【0135】
支持体が、ロール状の金属箔や、その他ロールに巻き取り可能なシート状である場合、その長さは特に限定されない。
また、支持体が、ロール状の金属箔や、その他ロールに巻き取り可能なシート状である場合、その幅も特に限定されないが、100mm以上3000mm以下がよく、好ましくは300mm以上2000mm以下であり、より好ましくは500mm以上1500mm以下であり、特に好ましくは500mm以上1300mm以下である。
【0136】
支持体の材料として、ガラス板などの無機材料や合成樹脂を用いる場合、後述する乾燥工程やイミド化工程における加熱温度よりも高いガラス転移温度を有するものを用いることが好ましい。具体的には、60℃以上、より好ましくは110℃以上のガラス転移温度を有する無機材料や合成樹脂を用いることが好ましい。
支持体として、後述する乾燥工程やイミド化工程における加熱温度よりも高いガラス転移温度を有するものを用いることで、当該乾燥工程やイミド化工程において加熱処理を行ったときに、支持体の粘性が過度に上昇して、支持体からポリイミドフィルムを剥離する際に支持体が内部で分離して、その一部がポリイミドフィルムに付着する現象を抑制することができる。
ガラス転移温度の測定は、前記ポリイミドフィルムにおいて説明した、ガラス転移温度の測定と同様にして行うことができる。
【0137】
支持体の表面研磨工程では、上記した支持体の表面を研磨することにより、当該支持体の表面の700μm×700μmの視野における、前記支持体の長手方向に直交する方向に延在し、且つ前記長手方向の幅が、前記長手方向に直交する方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第一領域(B1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記支持体の長手方向に沿う方向に延在し、且つ前記長手方向に直交する方向の幅が、前記長手方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第二の領域(B2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)を、20nm以下とし、且つ、当該支持体の表面の71μm×95μmの視野における表面粗さ(Sa)を1nm以上10nm以下とする。
【0138】
なお、支持体の第一の領域(B1)の表面うねり(Wa1)及びその平均値(Wa1ave)の算出、支持体の第二の領域(B2)の表面うねり(Wa2)及びその平均値(Wa2ave)の算出、支持体の表面粗さ(Sa)の算出は、それぞれ、前記ポリイミドフィルムにおいて説明した、ポリイミドフィルムの第一の領域(A1)の表面うねり(Wa1)及びその平均値(Wa1ave)の算出、ポリイミドフィルムの第二の領域(A2)の表面うねり(Wa2)及びその平均値(Wa2ave)の算出、ポリイミドフィルムの表面粗さ(Sa)の算出と、同様にして行うことができる。
【0139】
得られるポリイミドフィルムの表面におけるスジの発生を抑制する点から、前記第一領域(B1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記第二の領域(B2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)は、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが更に好ましい。
また、得られるポリイミドフィルムの表面の外観の低下を抑制する点から、前記第一領域(B1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、前記第二の領域(B2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)は、−20nm以上であることが好ましく、−10nm以上であることがより好ましい。
【0140】
支持体の表面を研磨する方法としては、支持体の形状に応じて適宜選択することができ、例えば、ロール研磨、バフ研磨、電解砥粒研磨等により行うことができる。
【0141】
例えば、巻取り可能な長尺状の支持体(例えば、SUS箔)をロール研磨する場合、支持体を送り出す巻出しロールと、支持体を巻き取る巻取りロールとの間に、研磨ロールを配置し、回転する研磨ロールの表面を支持体が擦過するように、研磨ロールの表面に支持体を接触させながら移動させて、巻取りロールで巻き取ることで、研磨を行うことができる。
また、研磨ロールに対向させて配置した押さえロールと研磨ロールとの間に、支持体を通過させることで、支持体の表面を研磨するようにしてもよい。
【0142】
この場合、例えば研磨ロールに対する支持体の面圧や、支持体に与える張力、支持体の移動速度を調整することにより、支持体の表面状態を、上記のように調整することができる。
支持体の面圧は、特に限定されないが、例えば0.1〜10kg/500mm、好ましくは1〜5kg/500mmの範囲で調整することが好ましい。また、支持体に与える張力としては、10〜50N/mの範囲で調整することが好ましい。また、支持体の移動速度は、5〜40m/minの範囲で調整することが好ましい。
【0143】
巻取り可能な長尺状の支持体(例えば、SUS箔やステンレス鋼BA材)をバフ研磨する場合には、例えば以下のようにして行うことができる。
まず、研磨機の支持台に、機械的チャック又は真空チャックにより支持体を固定する。次いで、バフの表面又は支持体の表面にバフ研磨剤を塗布した後、当該バフを広幅の研磨ヘッドに設置し、当該研磨ヘッドを往復動させながら、バフを高速回転させつつ支持体の表面に接触させることにより、表面研磨を行うことができる。
【0144】
また、巻取り可能な長尺状の支持体(例えば、SUS箔やステンレス鋼BA材)をバフ研磨する場合には、例えば以下のようにして行うことができる。
まず、搬送ベルト等の搬送部材の表面に支持体を載置した後、当該搬送部材により、支持体を一定方向に移動させる。次いで、バフの表面又は支持体の表面にバフ研磨剤を塗布した後、当該バフを広幅の研磨ヘッドに設置し、当該研磨ヘッドを所定の位置に固定した状態でバフを高速回転させながら、一定方向に移動する支持体の表面に当該バフを接触させることにより、表面研磨を行うことができる。
【0145】
バフとしては、例えば綿バフ、鉄バフ、サイザル麻バフ、ネルバフ、フェルトバフ等が挙げられる。
バフの種類は、繊維方向や積層構成の違いにより、ばらバフ、バイアスバフ、固バフ、縫いバフ及びひだバフ等に分類されるが、これらのいずれも使用することが可能である。
中でもバイアスバフは、厚さの調整等を行い易いため、好適に用いることができる。また、ひだバフは、ひだの折り込み具合を調整することにより研磨強度を調整できるため、好適に用いることができる。
【0146】
バフ研磨剤としては、固形バフ研磨剤(棒状バフ研磨剤)と液状バフ研磨剤とに大別され、いずれも使用することが可能である。
固形バフ研磨剤(棒状バフ研磨剤)としては、油脂性の固形バフ研磨剤又は非油脂性の固形バフ研磨剤が挙げられるが、一般には、油脂性の固形バフ研磨剤が用いられる。油脂性の固形バフ研磨剤は、例えば脂肪酸、硬化油又は松脂等の、動物性、植物性又は鉱物性等の油脂類と、研磨材とをそれぞれ適量ずつ配合し、混合して棒状等に成形したものを用いることができる。研磨材としては、例えばトリポリ、ケイ石微粉、酸化鉄、アルミナ(焼成アルミナ、溶融アルミナ微粉)、酸化クロム、珪藻土等を用いることができる。
また、研磨材の粒径は、用途に応じて適宜選択して用いることができる。
【0147】
バフ面に対する潤滑作用及び飛散防止効果と、研磨能力との両立を図る点から、棒状バフ研磨剤(固形バフ研磨剤)の全量に対する油脂類の重量比率は、20〜30%であることが好ましい。
棒状バフ研磨剤(固形バフ研磨剤)のバフ表面への塗布は、作業者が手塗りで行ってもよいし、固形バフ研磨剤自動塗布装置を用いて行ってもよい。
【0148】
例えば上記した油脂性の固形バフ研磨剤を、バフの表面に押し付けると、押し付けの際に生じる摩擦熱により、固形バフ研磨剤に含まれる油脂が溶け出し、当該固形バフ研磨剤に含まれる研磨材がバフの表面に移動する。このような状態で、支持体にバフの表面を接触させると、支持体の表面には、溶け出した油脂の油膜が形成される。このため、支持体表面への研磨材の食い込みを防止しつつ、支持体表面を平滑に研磨することが可能となる。
【0149】
液状バフ研磨剤としては、例えば、上記した固形バフ研磨剤(棒状バフ研磨剤)で用いたのと同様の研磨材及び油脂類を、水と混合してエマルジョン化させたエマルジョン型の研磨剤を好適に用いることができる。
また、液状バフ研磨剤としては、エマルジョン型以外のものとして、例えば油脂性又は非油脂性のものを用いることも可能である。
【0150】
バフ面に対する潤滑作用及び飛散防止効果と、研磨能力との両立を図る点から、液状バフ研磨剤の全量に対する油脂類の重量比率は、20〜30%であることが好ましい。
液状バフ研磨剤のバフ表面又は被加工物表面への塗布は、エアスプレ、エアレススプレ、又はスプレーガン内増圧スプレ等を用いた噴射塗布により行ってもよく、ハケ塗り又はロールコート等により行ってもよい。
【0151】
バフ研磨を行う場合、例えば、研磨ヘッドの往復動回数や、搬送部材の搬送速度を調整したり、研磨剤に配合する研磨材の種類や粒径を適宜選択することによって、支持体の表面状態を上記のように調整することができる。
研磨ヘッドの往復動回数や、搬送部材の搬送速度は、目標とする支持体の表面状態に応じて適宜調整すればよい。
【0152】
(1−2)ポリイミド前駆体組成物調製工程
前記第1の製造方法において調製するポリイミド前駆体組成物は、ポリイミド前駆体と、有機溶媒とを含有し、必要に応じて添加剤等を含有していてもよい。
ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との重合によって得られるポリアミド酸である。前記第1の製造方法において、ポリイミド前駆体に用いられるテトラカルボン酸成分及びジアミン成分は特に限定はされず、例えば、上述したテトラカルボン酸成分及びジアミン成分を挙げることができる。
【0153】
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、フィルムとした際の強度の点から、2000以上であることが好ましく、更に4000以上であることが好ましい。一方、数平均分子量が大きすぎると、高粘度となり作業性が低下の恐れがある点から、1000000以下であることが好ましく、更に500000以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、NMR(例えば、BRUKER製、AVANCEIII)により求めることができる。例えば、ポリイミド前駆体溶液をガラス板に塗布して100℃で5分乾燥後、固形分10mgをジメチルスルホキシド−d6溶媒7.5mlに溶解し、NMR測定を行い、芳香族環に結合している水素原子のピーク強度比から数平均分子量を算出することができる。
【0154】
また、ポリイミド前駆体は、フィルムとした際の強度の点から、重量平均分子量が、2000以上であることが好ましく、4000以上であることがより好ましい。一方、重量平均分子量が大きすぎると、高粘度となり、ろ過などの作業性が低下の恐れがある点から、1000000以下であることが好ましく、更に500000以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr−NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC−8120、検出器:示差屈折率(RID)検出器、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804を2本直列に接続)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、カラム温度37℃、検出器温度37℃の条件で測定を行う。ポリイミドの重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とする。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求める。
【0155】
ポリイミド前駆体溶液は、上述のテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、有機溶媒中で反応させて得ることができる。
ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)の合成に用いる有機溶媒としては、上述のテトラカルボン酸成分及びジアミン成分を溶解可能であれば特に制限はなく、例えば非プロトン性極性溶剤又は水溶性アルコール系溶剤等を用い得る。本発明においては、中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶媒;γ−ブチロラクトン等を用いることが好ましい。中でも、窒素原子を含む有機溶媒を用いることが好ましく、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン若しくはこれらの組み合わせを用いることがより好ましい。なお、有機溶媒とは、炭素原子を含む溶媒である。
なお、ポリイミド前駆体溶液は、予め合成された固体のポリイミド前駆体を有機溶媒に溶解させることにより、準備してもよい。
【0156】
また、前記ポリイミド前駆体溶液を、2種以上のジアミンを組み合わせて調製する場合、2種以上のジアミンの混合溶液に酸二無水物を添加し、ポリアミド酸を合成してもよいし、2種以上のジアミン成分を適切なモル比で段階を踏んで反応液に添加し、ある程度、各原料が高分子鎖へ組み込まれるシーケンスをコントロールしてもよい。
主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンを用いる場合は、たとえば、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンが溶解された反応液に、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンの0.5等量のモル比の酸二無水物を投入し反応させることで、酸二無水物の両端に主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンが反応したアミド酸を合成し、そこへ、残りのジアミンを全部、又は一部投入し、酸二無水物を加えてポリアミド酸を重合しても良い。
この方法で重合すると、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンが1つの酸二無水物を介して、連結した形でポリアミド酸の中に導入される。このような方法でポリアミド酸を重合することは、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するアミド酸の位置関係がある程度特定され、耐衝撃性及び屈曲耐性の優れた膜を得易い点から好ましい。
【0157】
ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を合成する際に、前述した有機溶媒中で重合させる、ジアミン成分のモル数をX、テトラカルボン酸成分のモル数をYとしたとき、Y/Xを0.9以上1.1以下とすることが好ましく、0.95以上1.05以下とすることがより好ましく、0.97以上1.03以下とすることがさらに好ましく、0.99以上1.01以下とすることが特に好ましい。このような範囲とすることにより得られるポリアミド酸の分子量(重合度)を適度に調整することができる。
重合反応の手順は、公知の方法を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
【0158】
ポリイミド前駆体組成物は、合成反応により得られたポリイミド前駆体溶液をそのまま用い、そこに必要に応じて他の成分を混合して調製しても良いし、ポリイミド前駆体溶液の有機溶媒を乾燥させ、別の有機溶媒に溶解して調製しても良い。
【0159】
前記ポリイミド前駆体組成物は、前記ポリイミド前駆体溶液に、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、前述のポリイミドフィルムにおいて説明したものと同様のものを用いることができる。
【0160】
前記ポリイミド前駆体組成物に用いられる有機溶媒は、前記ポリイミド前駆体が溶解可能であれば特に制限はない。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶媒;γ−ブチロラクトン;及びこれらの混合溶媒等を用いることができるが、中でも、窒素原子を含む有機溶媒を用いることが好ましい。
【0161】
前記ポリイミド前駆体組成物中の前記ポリイミド前駆体の含有量は、均一な塗膜及びハンドリング可能な強度を有するポリイミドフィルムを形成する点から、前記ポリイミド前駆体組成物の固形分中に50質量%以上であることが好ましく、更に60質量%以上であることが好ましく、上限は含有成分により適宜調整されればよい。
前記ポリイミド前駆体組成物中の有機溶媒は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、前記ポリイミド前駆体組成物中に40質量%以上であることが好ましく、更に50質量%以上であることが好ましく、また99質量%以下であることが好ましい。
【0162】
また、前記ポリイミド前駆体組成物は、含有水分量が1000ppm以下であることが、ポリイミド前駆体組成物の保存安定性が良好になり、生産性を向上することができる点から好ましい。ポリイミド前駆体組成物中に水分を多く含むと、ポリイミド前駆体が分解しやすくなる恐れがある。
なお、ポリイミド前駆体組成物の含有水分量は、カールフィッシャー水分計(例えば、三菱化学株式会社製、微量水分測定装置CA−200型)を用いて求めることができる。
【0163】
前記ポリイミド前駆体組成物の25℃での粘度は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、500cps以上100000cps以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体組成物の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定することができる。
【0164】
(1−3)ポリイミド前駆体組成物塗膜形成工程
前記(1−1)支持体の表面研磨工程において表面研磨した前記支持体の表面に、前記ポリイミド前駆体組成物を塗布して、前記ポリイミド前駆体組成物の塗膜を形成する。
【0165】
前記塗布手段は目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えばダイコータ、コンマコータ、ロールコータ、グラビアコータ、カーテンコータ、スプレーコータ、リップコータ等の公知のものを用いることができる。
塗布は、枚葉式の塗布装置により行ってもよく、ロールtoロール方式の塗布装置により行ってもよい。
【0166】
(1−4)ポリイミド前駆体組成物塗膜乾燥工程
ポリイミド前駆体組成物を支持体に塗布した後は、塗膜がタックフリーとなるまで、150℃以下の温度、好ましくは30℃以上120℃以下で前記塗膜中の有機溶媒を乾燥する。有機溶媒の乾燥温度を150℃以下とすることにより、ポリアミド酸のイミド化を抑制することができる。
【0167】
乾燥時間は、ポリイミド前駆体塗膜の膜厚や、有機溶媒の種類、乾燥温度等に応じて適宜調整されれば良いが、通常1分〜60分、好ましくは2分〜30分とすることが好ましい。上限値を超える場合には、ポリイミドフィルムの作製効率の面から好ましくない。一方、下限値を下回る場合には、急激な有機溶媒の乾燥によって、得られるポリイミドフィルムの外観等に影響を与える恐れがある。
【0168】
有機溶媒の乾燥方法は、上記温度で有機溶媒の乾燥が可能であれば特に制限はなく、例えばオーブンや、乾燥炉、ホットプレート、赤外線加熱等を用いることが可能である。
光学特性の高度な管理が必要な場合、有機溶媒の乾燥時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
【0169】
(1−5)イミド化工程
前記ポリイミド前駆体組成物に含まれる前記ポリイミド前駆体をイミド化する。当該製造方法において、延伸工程を有する場合、イミド化工程は、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程後の前記ポリイミド前駆体塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体塗膜中のポリイミド前駆体及び延伸工程後の膜中に存在するポリイミド前駆体の両方に対して行っても良い。
前記第一の製造方法においては、加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する。イミド化の温度は、ポリイミド前駆体の構造に合わせて適宜選択されれば良い。通常、昇温開始温度を30℃以上とすることが好ましく、100℃以上とすることがより好ましい。一方、昇温終了温度は250℃以上とすることが好ましい。
光学特性、吸湿性、寸法安定性、耐溶剤性等の点から、昇温終了温度をポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドのガラス転移温度±30℃の範囲内とすることが好ましく、ポリイミドのガラス転移温度±20℃の範囲内とすることがより好ましく、ポリイミドのガラス転移温度±15℃の範囲内とすることがより更に好ましい。イミド化の温度が高すぎると、ポリイミド乃至ポリイミド前駆体の骨格内で酸化することにより、ポリイミドフィルムが着色する場合があり、イミド化の温度が低すぎると、イミド化が十分に進行しない場合がある。
【0170】
昇温速度は、得られるポリイミド層の膜厚によって適宜選択することが好ましく、ポリイミド層の膜厚が厚い場合には、昇温速度を遅くすることが好ましい。
ポリイミドフィルムの製造効率の点から、5℃/分以上とすることが好ましく、10℃/分以上とすることが更に好ましい。一方、昇温速度の上限は、通常50℃/分とされ、好ましくは40℃/分以下、さらに好ましくは30℃/分以下である。上記昇温速度とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化をコントロールでき、光透過性が向上する点から好ましい。
【0171】
昇温は、連続的でも段階的でもよいが、連続的とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化のコントロールの面から好ましい。また、上述の全温度範囲において、昇温速度を一定としてもよく、また途中で変化させてもよい。
【0172】
イミド化の昇温時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が500ppm以下であることが好ましく、200ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
ただし、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合は、光学特性に対する酸素の影響が少なく、不活性ガス雰囲気を用いなくても光透過性の高いポリイミドが得られる。
【0173】
イミド化のための加熱方法は、上記温度で昇温が可能であれば特に制限はなく、例えばオーブンや、加熱炉、赤外線加熱、電磁誘導加熱等を用いることが可能である。
【0174】
中でも、延伸工程前に、ポリイミド前駆体のイミド化率を50%以上とすることがより好ましい。延伸工程前にイミド化率を50%以上とすることにより、当該工程後に延伸を行い、その後さらに高い温度で一定時間加熱を行い、イミド化を行った場合であっても、フィルムの外観不良や白化が抑制される。中でもポリイミドフィルムの耐衝撃性が向上する点から、延伸工程前に、当該イミド化工程において、イミド化率を80%以上とすることが好ましく、90%以上、さらには100%まで反応を進行させることが好ましい。イミド化後に延伸することにより、剛直な高分子鎖が配向しやすいことから耐衝撃性が向上すると推定される。
なお、イミド化率の測定は、赤外測定(IR)によるスペクトルの分析等により行うことができる。
【0175】
最終的なポリイミドフィルムを得るには、イミド化を90%以上、さらには95%以上、さらには100%まで反応を進行させることが好ましい。
イミド化を90%以上、さらには100%まで反応を進行させるには、昇温終了温度で一定時間保持することが好ましく、当該保持時間は、通常1分〜180分、更に、5分〜150分とすることが好ましい。
【0176】
(1−6)延伸工程
第一の製造方法は、前記ポリイミド前駆体塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する延伸工程を有していてもよい。当該延伸工程を有する場合は、中でも、イミド化後塗膜を延伸する工程を含むことが、ポリイミドフィルムの表面硬度が向上する点から好ましい。
【0177】
第一の製造方法では、延伸を実施する前の初期の寸法を100%とした時に101%以上10000%以下延伸する工程を、80℃以上で加熱しながら行うことが好ましい。
延伸時の加熱温度は、ポリイミド乃至ポリイミド前駆体のガラス転移温度±50℃の範囲内であることが好ましく、ガラス転移温度±40℃の範囲内であることが好ましい。延伸温度が低すぎるとフィルムが変形せず充分に配向を誘起できない恐れがある。一方で、延伸温度が高すぎると延伸によって得られた配向が温度で緩和し、充分な配向が得られない恐れがある。
延伸工程は、イミド化工程と同時に行っても良い。イミド化率80%以上、更に90%
以上、より更に95%以上、特に実質的に100%イミド化を行った後のイミド化後塗膜を延伸することが、ポリイミドフィルムの表面硬度を向上する点から好ましい。
【0178】
ポリイミドフィルムの延伸倍率は、好ましくは101%以上10000%以下であり、
さらに好ましくは101%以上500%以下である。上記範囲で延伸を行うことにより、
得られるポリイミドフィルムの耐衝撃性をより向上することができる。
【0179】
延伸時におけるポリイミドフィルムの固定方法は、特に制限はなく、延伸装置の種類等に合わせて選択される。また、延伸方法は特に制限はなく、例えばテンター等の搬送装置を有する延伸装置を用い、加熱炉を通しながら延伸することが可能である。ポリイミドフィルムは、一方向のみに延伸(縦延伸又は横延伸)してもよく、また同時2軸延伸、若しくは逐次2軸延伸、斜め延伸等によって、二方向に延伸処理を行ってもよい。
【0180】
(第二の製造方法)
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、例えば、第二の製造方法として、長尺状の支持体の表面を研磨することにより、当該支持体の表面の700μm×700μmの視野における、前記支持体の長手方向に直交する方向に延在し、且つ前記長手方向の幅が、前記長手方向に直交する方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第一領域(B1)の表面うねり(Wa1)の平均値(Wa1ave)と、
前記支持体の長手方向に沿う方向に延在し、且つ前記長手方向に直交する方向の幅が、前記長手方向の長さよりも幅狭となるように任意に抽出した第二の領域(B2)の表面うねり(Wa2)の平均値(Wa2ave)との差(Wa1ave−Wa2ave)を、20nm以下とし、且つ、当該支持体の表面の71μm×95μmの視野における表面粗さ(Sa)を1nm以上10nm以下とする工程((2−1)支持体の表面研磨工程)と、
ポリイミドと有機溶媒とを含むポリイミド組成物を調製する工程((2−2)ポリイミド組成物調製工程)と、
前記ポリイミド組成物を前記支持体の表面に塗布してポリイミド組成物の塗膜を形成する工程((2−3)ポリイミド組成物塗膜形成工程)と、
前記ポリイミド組成物の塗膜から前記有機溶媒を除去することにより、ポリイミドフィルムを形成する工程((2−4)ポリイミド組成物塗膜乾燥工程)と、を有する。
【0181】
第二の製造方法は、使用するポリイミドが、25℃で有機溶媒に5質量%以上溶解するような溶剤溶解性を有する場合に、好適に用いることができる。
【0182】
前記第二の製造方法において、(2−1)支持体の表面研磨工程は、前記第一の製造方法の(1−1)支持体の表面研磨工程と同様とすることができる。また、前記第二の製造方法に用いられる支持体としては、前記第一の製造方法に用いられる支持体と同様のものが挙げられる。
以下、前記第二の製造方法における、ポリイミド組成物を調製する工程(以下、(2−2)ポリイミド組成物調製工程という)と、前記ポリイミド組成物の塗膜を形成する工程(以下、(2−3)ポリイミド組成物塗膜形成工程という)と、前記ポリイミド組成物の塗膜から前記有機溶媒を除去する工程(以下、(2−4)ポリイミド組成物塗膜乾燥工程という)と、について、詳細に説明する。
【0183】
(2−2)ポリイミド組成物調製工程
前記第二の製造方法のポリイミド組成物調製工程において用いられるポリイミドは、前述したポリイミドフィルムにおいて説明したのと同様のポリイミドの中から、前述した溶剤溶解性を有するポリイミドを選択して用いることができる。イミド化する方法としては、ポリイミド前駆体の脱水閉環反応について、加熱脱水の代わりに、化学イミド化剤を用いて行う化学イミド化を用いることが好ましい。化学イミド化を行う場合は、脱水触媒としてピリジンやβ―ピコリン酸等のアミン、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカルボジイミド、無水酢酸等の酸無水物等、公知の化合物を用いても良い。
酸無水物としては無水酢酸に限らず、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等が挙げられるが特に限定されない。また、その際にピリジンやβ―ピコリン酸等の3級アミンを併用してもよい。ただし、これらアミン類は、フィルム中に残存すると光学特性、特に黄色度(YI値)を低下させるため、前駆体からポリイミドへと反応させた反応液をそのままキャストして製膜するのではなく、再沈殿などにより精製し、ポリイミド以外の成分をそれぞれ、ポリイミド全重量の100ppm以下まで除去してから製膜することが好ましい。
【0184】
なお、前記第二の製造方法のポリイミド組成物調製工程において用いられるポリイミドは、必ずしも、化学イミド化剤を用いて行う、化学イミド化によりイミド化したものに限られず、加熱脱水によりイミド化したものを用いることもできる。
【0185】
前記第二の製造方法のポリイミド組成物調製工程において用いられる有機溶媒としては、前記第一の製造方法における前記ポリイミド前駆体組成物調製工程において説明したものと同様のものを用いることができる。
【0186】
前記ポリイミド組成物は、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、前記第一の製造方法における前記ポリイミド前駆体組成物調製工程において説明したものと同様のものを用いることができる。
【0187】
前記ポリイミド組成物中の前記ポリイミドの含有量の好適な範囲は、前記ポリイミド前駆体組成物中の前記ポリイミド前駆体の含有量の好適な範囲と同様であってよく、前記ポリイミド組成物の含有水分量の好適な範囲は、前記ポリイミド前駆体組成物の含有水分量の好適な範囲と同様であってよく、前記ポリイミド組成物の25℃での粘度の好適な範囲は、前記ポリイミド前駆体組成物の25℃での粘度の好適な範囲と同様であってよい。
【0188】
(2−3)ポリイミド組成物塗膜形成工程
ポリイミド組成物塗膜形成工程においては、前記支持体の表面研磨工程において表面研磨した前記支持体の表面に、前記ポリイミド組成物を塗布して、前記ポリイミド組成物の塗膜を形成する。
前記第二の製造方法におけるポリイミド組成物塗膜形成工程において、塗布方法は、前記第一の製造方法のポリイミド前駆体組成物塗膜形成工程において説明したものと同様のものを用いることができる。
【0189】
(2−4)ポリイミド組成物塗膜乾燥工程
前記第二の製造方法におけるポリイミド組成物塗膜乾燥工程における乾燥方法は、前記第一の製造方法のポリイミド前駆体組成物塗膜乾燥工程において説明したものと同様のものを用いることができる。
前記ポリイミド組成物塗膜乾燥工程において、乾燥温度としては、常圧下では80℃以上150℃以下とすることが好ましい。減圧下では10℃以上100℃以下の範囲とすることが好ましい。
前記ポリイミド組成物塗膜乾燥工程における乾燥時間及び乾燥時の雰囲気は、前記第一の製造方法のポリイミド前駆体組成物塗膜乾燥工程において説明した乾燥時間及び乾燥時の雰囲気と同様であってよい。
【0190】
(2−5)延伸工程
また、前記第二の製造方法は、全てのポリイミド組成物塗膜を形成した後、ポリイミド組成物塗膜の積層体を延伸する延伸工程を有していてもよい。当該延伸工程は、前記第一の製造方法における延伸工程と同様にすることができる。
【0191】
また、本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、上述した工程により得られたポリイミドフィルムに、例えば、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理等の表面処理を施してもよい。
【0192】
以上説明した、本発明のポリイミドフィルムの製造方法によれば、前記ポリイミドフィルムにおいて説明したのと同様の特性を有するポリイミドフィルムを得ることができる。
【0193】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法によれば、機能層に対して優れた密着性を示し、且つ、外観が良好であり、光学特性に優れたポリイミドフィルムを得ることができる。
【0194】
IV.積層体の製造方法
本発明の積層体の製造方法は、前述した本発明のポリイミドフィルムの製造方法により得られたポリイミドフィルムを準備する工程(以下、ポリイミドフィルム準備工程という)と、前記ポリイミドフィルムの支持体と接していた側の面に、機能層形成用組成物の塗膜を形成する工程(以下、機能層用塗膜形成工程という)と、前記塗膜を硬化する工程(以下、塗膜硬化工程という)と、を含む。
【0195】
本発明の積層体の製造方法は、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムを用いるため、製造される積層体は、ポリイミドフィルムの前記支持体と接していた側の面と機能層とが優れた密着性を有し、且つ、外観が良好であり、光学特性に優れたものである。
【0196】
(1)ポリイミドフィルム準備工程
本発明の積層体の製造方法において、ポリイミドフィルムを準備する工程では、前述した本発明のポリイミドフィルムの製造方法を用いることができるので、ここでの説明を省略する。
【0197】
(2)機能層用塗膜形成工程
本発明の積層体の製造方法において、機能層用塗膜形成工程では、前述したポリイミドフィルムの前記支持体と接していた側の面に、機能層形成用組成物の塗膜を形成する。
機能層形成用組成物としては、例えば、ポリイミドフィルムの表面硬度の向上のために積層される、ハードコート層形成用組成物が挙げられる。
【0198】
前記ハードコート層形成用組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有し、必要に応じて更に重合開始剤、溶剤及び添加剤等その他の成分を含有するものを用いることができる。
【0199】
ここで、前記ハードコート層形成用組成物が含有するラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、重合開始剤及び添加剤については、前記ハードコート層において説明したものと同様のものを用いることができ、溶剤は、公知の溶剤から適宜選択して用いることができる。
【0200】
ポリイミドフィルムの少なくとも前記支持体と接していた側の面に、前記ハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する方法としては、例えば、ポリイミドフィルムの少なくとも前記支持体と接していた側の面に、前記ハードコート層形成用組成物を、公知の塗布手段により塗布する方法が挙げられる。
前記塗布手段は、目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、
前記ポリイミド前駆体組成物を支持体に塗布する手段と同様のものが挙げられる。
なお、前記ハードコート層形成用組成物の塗膜は、ポリイミドフィルムの前記支持体と接していた側の面のみに形成してもよいし、ポリイミドフィルムの両面に形成してもよい。
【0201】
前記ハードコート層用硬化性組成物の塗膜は必要に応じて乾燥することにより溶剤を除去する。乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥又は加熱乾燥、更にはこれらの乾燥を組み合わせる方法等が挙げられる。また、常圧で乾燥させる場合は、30℃以上110℃以下で乾燥させることが好ましい。
【0202】
(3)塗膜硬化工程
機能層形成用組成物として、例えば前記ハードコート層用硬化性組成物を塗布、必要に応じて乾燥させた塗膜に対し、当該硬化性組成物に含まれるラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の重合性基に応じて、光照射及び加熱の少なくともいずれかにより塗膜を硬化させることにより、ポリイミドフィルムの少なくとも前記支持体と接していた側の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を形成することができる。
【0203】
光照射には、主に、紫外線、可視光、電子線、電離放射線等が使用される。紫外線硬化の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等を使用する。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜5000mJ/cm程度である。
加熱をする場合は、通常40℃以上120℃以下の温度にて処理する。また、室温(2
5℃)で24時間以上放置することにより反応を行っても良い。
【0204】
また、本発明の積層体の製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、更にウレタンやアクリル樹脂などを含むゲル等の他の層を形成する工程、及び、公知の表面処理を施す工程等を含むものであってもよい。
【0205】
なお、前記ハードコート層は、反射防止性、防眩性等の機能を付与して形成してもよい。当該機能は、例えば、前記ハードコート層に公知の表面処理を施したり、前記ハードコート層用硬化性組成物に、無機又は有機微粒子等の添加剤を含有させること等により付与することができる。
【0206】
また、前述した積層体の製造方法では、機能層としてハードコート層を形成する場合を例に説明したが、機能層は必ずしもハードコート層には限定されない。例えば、機能層として反射防止層、防眩層を形成してもよく、ポリイミドフィルムとハードコート層との密着性を向上させるためのプライマー層を形成してもよい。
また、機能層は、単層として形成してもよく、複数の層として形成してもよい。また、機能層としては、単一の機能を有する層として形成してもよく、互いに異なる機能を有する層として形成してもよい。
【0207】
V.ディスプレイ用表面材
本発明のディスプレイ用表面材は、前述した本発明のポリイミドフィルム又は前述し本発明の積層体である。
【0208】
本発明のディスプレイ用表面材は、各種ディスプレイの表面に位置するように配置し用いられる。
本発明のディスプレイ用表面材は、前述した本発明の積層体と同様に、ポリイミドフィルムの第一の面と機能層とが優れた密着性を有し、且つ、外観が良好であり、光学特性に優れたものであるため、フレキシルディスプレイ用として特に好適に用いることができる。
また、本発明のディスプレイ用表面材は、前述した本発明のポリイミドフィルムと同様に、機能層に対して優れた密着性を示し、且つ、外観が良好であり、光学特性に優れているため、フレキシルディスプレイ用として特に好適に用いることができる。
【0209】
また、本発明のディスプレイ用表面材をディスプレイの表面に配置する方法としては、特に限定はされないが、例えば、接着層を介する方法等が挙げられる。前記接着層としては、ディスプレイ用表面材の接着に用いることができる従来公知の接着層を用いることができる。
【0210】
VI.ディスプレイ用表面材の製造方法
本発明のディスプレイ用表面材の製造方法は、前述した本発明の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程、又は、前述した本発明の製造方法により積層体を製造する工程を含む。すなわち、本発明の製造方法により得られるディスプレイ用表面材は、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルム、又は、前述した本発明の製造方法により得られる積層体である。
【0211】
本発明の製造方法により得られるディスプレイ用表面材は、各種ディスプレイの表面に位置するように配置して用いられる。
本発明の製造方法により得られるディスプレイ用表面材は、前述した本発明の製造方法により得られる積層体と同様に、ポリイミドフィルムの第一の面と機能層とが優れた密着性を有し、且つ、外観が良好であり、光学特性に優れたものであるため、フレキシブルディスプレイ用として好適に用いることができる。
また、本発明の製造方法により得られるディスプレイ用表面材は、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムと同様に、機能層に対して優れた密着性を示し、且つ、外観が良好であり、光学特性に優れているため、フレキシブルディスプレイ用として好適に用いることができる。
【0212】
また、本発明の製造方法により得られるディスプレイ用表面材をディスプレイの表面に配置する方法としては、前述したディスプレイ用表面材で説明したのと同様にして行うことができる。
【0213】
本発明のディスプレイ用表面材及び本発明の製造方法により得られるディスプレイ用表面材は、公知の各種ディスプレイに用いることができ、特に限定はされないが、例えば、前記本発明の積層体の用途で説明したディスプレイ等に用いることができる。
【0214】
なお、本発明のディスプレイ用表面材及び本発明の製造方法により得られるディスプレイ用表面材が前記本発明の積層体である場合、ディスプレイの表面に配置した後の最表面となる面は、ポリイミドフィルム側の表面であってもよいし、ハードコート層側の表面であってもよいが、ハードコート層側の表面が最表面となるように本発明のディスプレイ用表面材を配置することが好ましい。また、本発明のディスプレイ用表面材及び本発明の製造方法により得られるディスプレイ用表面材は、最表面に指紋付着防止層を有するものであっても良い。
【0215】
VII.タッチパネル部材
本発明のタッチパネル部材は、前述した本発明のポリイミドフィルムと、前記ポリイミドフィルムの一面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を備える。
【0216】
図4(A)、図4(B)は、本発明のタッチパネル部材10の概略平面図であり、図5は、図4(A)、図4(B)に示すタッチパネル部材10のA−A´線断面図である。
本発明のタッチパネル部材10は、図5に示すように、前述した本発明のポリイミドフィルム1と、ポリイミドフィルム1の第一の面11に接して積層された機能層2と、前記機能層2に接して配置された第一の透明電極4と、を有している。すなわち、第一の透明電極4は、ポリイミドフィルム1の第一の面11の上に、前記機能層2を介して配置されている。
【0217】
また、タッチパネル部材10は、さらに、ポリイミドフィルム1の第一の面11と反対側の第二の面12に接して積層されたハードコート層3と、前記ハードコート層3に接して配置された第二の透明電極5と、を有している。すなわち、第二の透明電極5は、ポリイミドフィルム1の第二の面12の上に、前記ハードコート層3を介して配置されている。
機能層2としては、前述した「I.積層体」の項で説明したのと同様のものを用いることができる。
【0218】
図4(A)は、ポリイミドフィルム1の第一の面11側の、タッチパネル部材10の概略平面図であり、図4(B)は、ポリイミドフィルム1の第二の面12側の、タッチパネル部材10の概略平面図である。
図4(A)に示すように、タッチパネル部材10は、ポリイミドフィルム1の第一の面11に接して積層された機能層2上に、ポリイミドフィルム1の長手方向に直交する方向(図4(A)中X軸方向)に伸長するように延在する複数の短冊状の電極片(以下、第一の導電部41という)が、ポリイミドフィルム1の長手方向(図4(A)中Y軸方向)に所定の間隔を空けて配設されており、当該複数の第一の導電部41により、第一の透明電極4が形成されている。即ち、第一の透明電極4は、第一の導電部41と第一の非導電部42とが、ポリイミドフィルム1の長手方向に交互に配設されて構成されている。
【0219】
第一の導電部41には、その長手方向端部のいずれか一方において、当該第一の導電部41と電気的に接続する第一の取出し線7が接続されている。第一の取り出し線7は、ポリイミドフィルム1の4辺のうち、第一の導電部41の長手方向に平行な方向に延びる二辺のうちの任意の辺(図4(A)では、ポリイミドフィルム1の端縁13)まで延設されている。即ち、第一の取出し線7は、ポリイミドフィルム1の第二の面12側に形成された、後述する複数の第二の導電部51の長手方向の端部のいずれか一方の側のポリイミドフィルム1の端縁13まで延在させた、長尺配線とすることができる。
【0220】
ポリイミドフィルム1の端縁13まで延設された第一の取出し線7の端部には、外部回路と電気的に接続するための第一の端子71を設けることがよい。
【0221】
第一の導電部41と第一の取出し線7とは、一般には、タッチパネルの使用者が視認可能なアクティブエリア14の外側に位置する、非アクティブエリア15内において接続される。
第一の導電部41と第一の取出し線7との接続は、例えば図4(A)に示すように、接続部16を介在させた接続構造を採用することができる。接続部16は、具体的には、第一の導電部41の長手方向端部から、非アクティブエリア15内の所定の位置まで導電性材料の層を延設することにより形成することができる。さらに、当該接続部16上に、第一の取出し線7の少なくとも一部を重ねることにより、第一の導電部41と第一の取出し線7との接続構造を形成することができる。このように、接続部16を有する接続構造とすることにより、第一の取出し線7と第一の導電部41とを確実に接続し、かつ第一の取出し線7が非アクティブエリア15内に入り込むことを抑制することが可能となる。
【0222】
第一導電部41と第一の取出し線7との接続は、図4(A)に示すような、接続部16を形成する構造には限定されない。例えば、図示省略するが、第一の導電部41の長手方向端部を非アクティブエリア15まで伸長させ、非アクティブエリア15内において、当該非アクティブエリア15まで伸長させた第一の導電部41の端部に、第一の取出し線7を乗り上げさせることによって、両者を電気的に接続させてもよい。
なお、図4(A)では、第一の導電部41の長手方向端部のいずれか一方と、第一の取出し線7とを接続する形態を示したが、本発明においては、一つの第一の導電部41の長手方向の両端に、それぞれ、第一の取出し線7を電気的に接続する形態としてもよい。
【0223】
図4(B)に示すように、タッチパネル部材10は、ポリイミドフィルム1の第二の面12に接して積層されたハードコート層3上に、ポリイミドフィルム1の長手方向(図4(B)中Y軸方向)に伸長するように延在する複数の短冊状の電極片(以下、第二の導電部51という)が、ポリイミドフィルム1の長手方向に直交する方向(図4(B)中X軸方向)に所定の間隔を空けて配設されており、当該複数の第二の導電部51により、第二の透明電極5が形成されている。即ち、第二の透明電極5は、第二の導電部51と第二の非導電部52とが、ポリイミドフィルム1の短手方向に交互に配設されて構成されている。
【0224】
第二の導電部51には、その長手方向端部の一方において、当該第二の導電部51と電気的に接続する第二の取出し線8が接続されている。
第二の取出し線8は、ポリイミドフィルム1の4辺のうち、前述した第一の取出し線7が延設された、ポリイミドフィル1の端縁13における、第一の端子71と重ならない位置まで延設されている。即ち、第二の取出し線8は、複数の第二の導電部51の長手方向端部のうち、前述したポリイミドフィルム1の端縁13側の端部に、当該第二の取出し線8の一方の端部を電気的に接続させるとともに、前記ポリイミドフィルム1の端縁13まで、第二の取出し線8の他方の端部を伸長させた、短尺配線とすることができる。
【0225】
ポリイミドフィルム1の端縁13まで延設された第二の取出し線8の端部には、外部回路と電気的に接続するための第二の端子81を設けることがよい。
【0226】
なお、第二の導電部51と第二の取出し線8との電気的な接続は、第一の取出し線7と第一の導電部41との電気的な接続と同様の形態を適用することができるため、ここでの説明を省略する。
【0227】
なお、図4(A)、(B)に示すような、第一取出し線7を長尺配線とし、第二取出し線8を短尺配線とするパターンは、本発明のタッチパネル部材10の一実施形態に過ぎず、例えば、第一の取出し線7を短尺配線とし、第二の取出し線8を長尺配線とするパターンとすることも可能である。
また、第一の取出し線7は、第一の導電部41の長手方向の端部のいずれの端部に接続されていてもよく、第二の取出し線8は、第二の導電部51の長手方向の端部のいずれの端部に接続されていてもよい。また、第一の取出し線7の伸長方向及び第二の取出し線8の伸長方向も、図4(A)、(B)に示す方向に限られず、任意に設計することが可能である。
【0228】
図4(A)、(B)に示す、第一の導電部41および第二の導電部51のパターンは、本発明のタッチパネル部材10の構成を限定するものではない。
また、第一の導電部41および第二の導電部51としては、ポリイミドフィルム1の表面又はポリイミドフィルム1上に形成された機能層2等の他の層の表面に形成される電極であって、タッチパネル部材10において透明電極を構成するものであれば、適宜選択して適用してよい。例えば、静電容量方式によって、指などの接触または接触に近い状態による電気容量の変化を検知可能な透明電極のパターンであれば、適宜選択して適用することができる。例えば、円形状あるいはひし形状などの電極素片を配列し、所定の方向(図4(A)、(B)では第一の導電部41はX軸方向、第二の導電部51はY軸方向)に、上記電極素片を電気的に接続するよう繋げて導電部を複数形成し、当該導電部によって、透明電極を構成してもよい。
【0229】
第一の透明電極4を構成する第一の導電部41及び第二の透明電極5を構成する第二の導電部51は、主としてタッチパネル部材10のアクティブエリア14内に設けられるため、光透過性の材料で形成される。
第一の導電部41、第二の導電部51は、一般的には、インジウム錫オキサイド(ITO)、酸化インジウム、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)等を主たる構成成分とする酸化インジウム系透明電極材料、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)等を主たる構成成分とする透明導電膜、ポリアニリン、ポリアセチレン等の導電性高分子化合物等を用いて形成することができる。但し、第一の導電部41、第二の導電部51の材料は、上記した材料には限定されない。
【0230】
なお、第一の導電部41、第二の導電部51の厚みは、特に限定されないが、例えば第一の導電部41、第二の導電部51をフォトリソグラフィ手法により形成する場合には、一般的には、10nm〜500nm程度に形成することができる。また、第一の導電部41及び第二の導電部51は、互いに同種の導電性材料を用いて形成してもよいし、異種の材料を用いて形成してもよい。特に同種の導電性材料を用いて第一の導電部41及び第二導電部51を形成すると、タッチパネル部材10の反りや歪みの発生をより効果的に抑制できる観点で、好ましい。
【0231】
第一の取出し線7、第二の取出し線8は、一般的には非アクティブエリア15に形成されるため、これらを構成する導電材料は、光透過性の有無を問わない。一般的には、第一の取出し線7、第二の取出し線8は、高い導電性を有する銀や銅などの金属材料を用いて形成することができる。
第一の取出し線7、第二の取出し線8を構成する金属材料としては、具体的には、金属単体、金属の複合体、金属と金属化合物の複合体、金属合金を挙げることができる。
金属単体としては、銀、銅、金、クロム、プラチナ、アルミニウムの単体などを例示することができる。金属の複合体としては、MAM(Mo−Al−Mo、すなわちモリブデン・アルミニウム・モリブデンの3層構造体)等を例示することができる。金属と金属化合物の複合体としては、酸化クロム/クロム積層体等を例示することができる。金属合金としては、銀合金や銅合金が汎用される。また、金属合金としては、APC(Au・Pd・Cu、即ち銀・パラジウム・銅)等を例示することができる。
【0232】
なお、第一の取出し線7、第二の取出し線8には、前述した金属材料に、適宜樹脂成分が混在していてもよい。
例えば、第一の取出し線7、第二の取出し線8を、フォトリソグラフィ手法により形成する場合には、形成材料として、銀、白金及び銅からなるAPC材料が汎用されるが、第一の取出し線7、第二の取出し線8の形成方法は、これに限定されない。
例えば、スクリーン印刷などの印刷方法によって第一の取出し線7、第二の取出し線8を形成する場合には、数十nm〜数μmの粒径を有する銀や銅などの金属粒子と、樹脂バインダとを、溶媒に配合して適度な濃度に調整した金属粒子含有ペーストが汎用されるが、これに限定されない。金属粒子含有ペーストに配合する樹脂バインダとしては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン等の樹脂材料を単体で又はこれらの樹脂材料を二種以上混合した混合物として用いることができる。
【0233】
前述したように、第一の端子71、第二の端子81は、第一の取出し線7、第二の取出し線8の端部に設けられる。このため、第一の端子71、第二の端子81は、第一の取出し線7、第二の取出し線8の形成工程において、第一の取出し線7、第二の取出し線8の形成材料と同じ材料を用いて形成することができる。なお、第一の端子71、第二の端子81は、第一の取出し線7、第二の取出し線8の形成工程とは、異なる工程において形成することも可能である。
第一の取出し線7、第二の取出し線8の厚み、及び幅寸法は、特に限定されないが、例えば第一の取出し線7、第二の取出し線8をフォトリソグラフィ手法により形成する場合には、一般的には、厚みは10nm〜1000nm程度に形成され、幅寸法は5μm〜200μm程度に形成される。
また、第一の取出し線7、第二の取出し線8の厚み、及び幅寸法は、特に限定されないが、第一の取出し線7、第二の取出し線8を、スクリーン印刷などの印刷により形成する場合には、一般的には、厚みは5μm〜20μm程度に形成され、幅寸法は20μm〜300μm程度に形成される。
【0234】
本発明のタッチパネル部材は、図4〜5に示す形態には限られず、例えば図6〜7に示すように、第一の透明電極4と、第二の透明電極5とが、それぞれ別個のポリイミドフィルムの上に積層されて構成されるものであってもよい。
図7に示すタッチパネル部材20は、前述した本発明のポリイミドフィルムである第一のポリイミドフィルム1aと、第一のポリイミドフィルム1aの第一の面11に接して積層された機能層2aと、第一のポリイミドフィルム1aの第二の面12に接して積層されたハードコート層3aと、第一のポリイミドフィルム1aの第一の面11の上に、機能層2aを介して配置された、複数の短冊状の電極片(第一の導電部41)からなる第一の透明電極4と、を有する第一の積層体201と、前述した本発明のポリイミドフィルムである第二のポリイミドフィルム1bと、第二のポリイミドフィルム1bの第一の面11に接して積層された機能層2bと、第二のポリイミドフィルム1bの第二の面12に接して積層されたハードコート層3bと、第二のポリイミドフィルム1bの第一の面11の上に、機能層2bを介して配置された、複数の短冊状の電極片(第二の導電部51)からなる第二の透明電極5と、を有する第二の積層体202と、を具備する。
機能層2a、2bとしては、前述した「I.積層体」の項で説明したのと同様のものを用いることができる。
【0235】
タッチパネル部材20は、図7に示すように、第一の積層体201のハードコート層3aと、第二の積層体202の第二の透明電極5とが、接着層6を介して貼り合わせて構成されている。接着層6としては、ハードコート層や透明電極等の各種の層の接着に用いることができる従来公知の接着層を用いることができる。
【0236】
図6(A)は、第一の積層体201の概略平面図であり、図6(B)は、第二の積層体202の概略平面図である。
図7は、図6(A)に示す積層体201と図6(B)に示す積層体202とを貼り合わせて構成されるタッチパネル部材の、図6(A)及び図6(B)中A−A´線で示す位置での断面図である。
図6(A)に示すように、第一の積層体201の第一の導電部41には、その長手方向端部のいずれか一方において、当該第一の導電部41と電気的に接続する第一の取出し線7が接続されている。第一の取出し線7の端部には、図6(A)に示すように、外部回路と電気的に接続するための第一の端子71を設けることがよい。
また、図6(B)に示すように、第二の積層体202の第二の導電部51には、その長手方向端部の一方において、当該第二の導電部51と電気的に接続する第二の取出し線8が接続されている。第二の取出し線8の端部には、図6(B)に示すように、外部回路と電気的に接続するための第二の端子81を設けることがよい。
【0237】
なお、第一の積層体201における、第一の透明電極4、第一の取出し線7及び第一の端子71の構成及び構成材料は、図4(A)に示すタッチパネル部材10における、第一の透明電極4、第一の取出し線7及び第一の端子71の構成及び構成材料と同様とすることができる。
また、第二の積層体202における、第二の透明電極5、第二の取出し線8及び第二の端子81の構成及び構成材料は、図4(B)に示すタッチパネル部材10における、第二の透明電極5、第二の取出し線8及び第二の端子81の構成及び構成材料と同様とすることができる。このため、これらの詳細な説明は省略する。
【0238】
なお、図4図7においては、第一の透明電極4、第二の透明電極5が、いずれも、前述した本発明のポリイミドフィルムの第一の面11の上に、機能層2、2a若しくは2b又はハードコート層3を介して配置されている構成を示したが、本発明のタッチパネル部材は、第一の透明電極4、第二の透明電極5が、当該ポリイミドフィルムの表面に接して配置されていてもよい。
また、図4図7においては、前述した本発明のポリイミドフィルムの第一の面11に接して積層された機能層2、2a又は2bを有する形態を示したが、本発明のタッチパネル部材は、必ずしも、当該ポリイミドフィルムの第一の面に接して積層される機能層を有していなくてもよい。
【0239】
前述した本発明のタッチパネル部材は、各種ディスプレイの表面に位置するように配置し用いられる。
本発明のタッチパネル部材は、当該タッチパネル部材に含まれる本発明のポリイミドフィルムが、機能層に対して優れた密着性を示し、且つ、外観が良好であり、光学特性に優れているため、フレキシルディスプレイ用として特に好適に用いることができる。
また、本発明のタッチパネル部材は、当該タッチパネル部材に含まれる本発明のポリイミドフィルムの第一の面に接触させて積層した機能層を有する場合には、当該ポリイミドフィルムと機能層とが優れた密着性を有し、且つ、外観が良好であり、光学特性に優れたものであるため、フレキシルディスプレイ用として特に好適に用いることができる。
【0240】
VIII.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、対向配置された基板の間に形成された液晶層を有する液晶表示部と、前記液晶表示部の一面側に配置された、前述した本発明のポリイミドフィルムと、を有する。
【0241】
図8は、本発明の液晶表示装置100の一例を示す概略断面図である。
液晶表示装置100は、液晶表示部30と、タッチパネル部材10と、接着層6と、前述した本発明のポリイミドフィルム1と、前記ポリイミドフィルム1の第一の面11に接して積層された機能層2とが、この順に積層されて構成されている。
液晶表示装置100が有するタッチパネル部材10は、図4〜5に示すタッチパネル部材10と同様の構成を有している。即ち、液晶表示装置100は、タッチパネル部材10において、本発明のポリイミドフィルム1と、前記ポリイミドフィルム1の第一の面11に接して積層された機能層2とを有している。
【0242】
液晶表示部30は、図示省略するが、対向配置された基板の間に形成された液晶層を有している。液晶表示部30としては、当該対向配置された基板の間に、さらに複数色の着色層や、画素を画定する遮光部を有していてもよい。また、液晶表示部30は、対向配置された基板の外側の、タッチパネル部材10とは反対側の位置に、発光素子や蛍光体を有するバックライト部を有していてもよい。また、対向配置された基板の外表面には、それぞれ偏光板を有していてもよい。
【0243】
本発明の液晶表示装置は、図8に示す形態には限られず、例えば図9に示すように、第一の透明電極4と、第二の透明電極5とが、それぞれ別個のポリイミドフィルムの上に配置されて構成されたタッチパネル部材20を具備するものであってもよい。
図9は、本発明の液晶表示装置200の一例を示す概略断面図である。液晶表示装置200は、液晶表示部30と、タッチパネル部材20と、接着層6と、前述した本発明のポリイミドフィルム1と、前記ポリイミドフィルム1の第一の面11に接して積層された機能層2とが、この順に積層されて構成されている。
液晶表示装置200が有するタッチパネル部材20は、図6〜7に示すタッチパネル部材20と同様の構成を有している。即ち、液晶表示装置200は、タッチパネル部材20の第一の積層体201において、本発明のポリイミドフィルムである第一のポリイミドフィルム1aと、当該第一のポリイミドフィルム1aの第一の面11に接して積層された機能層2aとを有しており、タッチパネル部材20の第二の積層体202において、本発明のポリイミドフィルムである第二のポリイミドフィルム1bと、当該第二のポリイミドフィルム1bの第一の面11に接して積層された機能層2bとを有している。
なお、液晶表示部30の構成は、図8に示す液晶表示部30と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0244】
なお、図8〜9においては、本発明のポリイミドフィルムが、液晶表示部30の上に、ハードコート層3及び第二の透明電極5、又はハードコート層3bを介して配置された構成を示したが、本発明の液晶表示装置は、本発明のポリイミドフィルムが、液晶表示部30に接して配置された構成としてもよい。
【0245】
本発明の液晶表示装置は、当該液晶表示装置に含まれる本発明のポリイミドフィルムが、機能層に対して優れた密着性を示し、且つ、外観が良好であり、光学特性に優れているため、フレキシルディスプレイとして好適である。 また、本発明の液晶表示装置は、当該液晶表示装置に含まれる本発明のポリイミドフィルムの第一の面に接触させて積層した機能層を有する場合には、当該ポリイミドフィルムと機能層とが優れた密着性を有し、且つ、外観が良好であり、光学特性に優れたものであるため、フレキシルディスプレイとして好適である。
【0246】
IX.有機エレクトロルミネッセンス表示装置
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、対向配置された基板の間に形成された有機エレクトロルミネッセンス層を有する有機エレクトロルミネッセンス表示部と、前記有機エレクトロルミネッセンス表示部の一面側に配置された、前述した本発明のポリイミドフィルムと、を有する。
【0247】
図10は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の一例を示す概略断面図である。
有機エレクトロルミネッセンス表示装置300は、有機エレクトロルミネッセンス表示部40と、タッチパネル部材10と、接着層6と、前述した本発明のポリイミドフィルム1と、前記ポリイミドフィルム1の第一の面11に接して積層された機能層2とが、この順に積層されて構成されている。
有機エレクトロルミネッセンス表示装置300が有するタッチパネル部材10は、図4〜5に示すタッチパネル部材10と同様の構成を有している。即ち、有機エレクトロルミネッセンス表示装置300は、タッチパネル部材10において、本発明のポリイミドフィルム1と、前記ポリイミドフィルム1の第一の面11に接して積層された機能層2とを有している。
【0248】
有機エレクトロルミネッセンス表示部40は、図示省略するが、対向配置された基板の間に形成された有機エレクトロルミネッセンス層を有している。有機エレクトロルミネッセンス表示部40は、さらに、支持基板と、有機EL層並びに有機EL層を挟持する陽極層及び陰極層を含む有機EL素子と、有機EL素子を封止する封止基材と、を有していてもよい。
前記有機EL層としては、少なくとも有機EL発光層を有するものであれば良いが、例えば、上記陽極層側から、正孔注入層、正孔輸送層、有機EL発光層、電子輸送層および電子注入層がこの順で積層した構造を有するものを有するものを用いることができる。
【0249】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、図10に示す形態には限られず、例えば図11に示すように、第一の透明電極4と、第二の透明電極5とが、それぞれ別個のポリイミドフィルムの上に配置されて構成されたタッチパネル部材20を具備するものであってもよい。
図11は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置400の一例を示す概略断面図である。有機エレクトロルミネッセンス表示装置400は、有機エレクトロルミネッセンス表示部40と、タッチパネル部材20と、接着層6と、前述した本発明のポリイミドフィルム1と、前記ポリイミドフィルム1の第一の面11に接して積層された機能層2とが、この順に積層されて構成されている。
有機エレクトロルミネッセンス表示装置400が有するタッチパネル部材20は、図6〜7に示すタッチパネル部材20と同様の構成を有している。即ち、有機エレクトロルミネッセンス表示装置400は、タッチパネル部材20の第一の積層体201において、本発明のポリイミドフィルムである第一のポリイミドフィルム1aと、当該第一のポリイミドフィルム1aの第一の面11に接して積層された機能層2aとを有しており、タッチパネル部材20の第二の積層体202において、本発明のポリイミドフィルムである第二のポリイミドフィルム1bと、当該第二のポリイミドフィルム1bの第一の面11に接して積層された機能層2bとを有している。
なお、有機エレクトロルミネッセンス表示部40の構成は、前述した有機エレクトロルミネッセンス表示装置300の有機エレクトロルミネッセンス表示部40と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0250】
なお、図10〜11においては、本発明のポリイミドフィルムが、有機エレクトロルミネッセンス表示部40の上に、ハードコート層3及び第二の透明電極5、又はハードコート層3bを介して配置された構成を示したが、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、本発明のポリイミドフィルムが、有機エレクトロルミネッセンス表示部40に接して配置された構成としてもよい。
【0251】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、当該有機エレクトロルミネッセンス表示装置に含まれる本発明のポリイミドフィルムが、機能層に対して優れた密着性を示し、且つ、外観が良好であり、光学特性に優れているため、フレキシルディスプレイとして好適である。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、当該有機エレクトロルミネッセンス表示装置に含まれる本発明のポリイミドフィルムの第一の面に接触させて積層した機能層を有する場合には、当該ポリイミドフィルムと機能層とが優れた密着性を有し、且つ、外観が良好であり、光学特性に優れたものであるため、フレキシルディスプレイとして好適である。
【実施例】
【0252】
[評価方法]
<表面うねり>
走査型白色干渉顕微鏡を使用して、測定対象物の表面について、以下の測定条件により、700μm×700μmの視野における干渉縞の画像を取得した。
[測定条件]
表面うねり(Wa)測定
・製品名 :VertScan(走査型白色干渉顕微鏡)、株式会社日立ハイテクサイエンス製
・対物レンズ :5倍
・CCDカメラ :製品名 HR−50 1/3、ソニー株式会社製
・波長フィルタ :530White
・視野サイズ(pixels) :640×480
・測定モード:wave
・測定範囲(z軸方向) :Start 10μm、Stop −50μm
・XYサイズ:約941μm×706μm
【0253】
(第一の領域の表面うねり(Wa1)の平均値Wa1ave
次いで、700μm×700μmの視野について得られた干渉縞画像において、測定対象物の長手方向に直交する方向に延在し、且つ前記長手方向の幅が、前記長手方向に直交する方向の長さよりも幅狭となるように、第一の領域を任意に抽出した。
具体的には、測定対象物の表面について取得した干渉縞画像(例えば、図2参照)中の、700μm×700μmの視野における干渉縞画像から、開始位置(pixels)をX1:0、 Y1:0として、X:480、Y:20でサイズ指定(pixels)を行い、第一の領域を抽出した。
次いで、任意に抽出した第一の領域の干渉縞画像から、測定対象物の原表面を決定し、得られた原表面から表面フィルター(S−フィルター)処理を行い、基礎表面を求めた後、当該基礎表面に対して、所定の表面フィルター処理(カットオフ値λ=10μm)を行うことによって、輪郭曲面(うねり曲面)を求めた。
次いで、輪郭曲面(うねり曲面)について定義された所定の領域の平均面をX−Y平面、高さ方向をZ軸として、輪郭曲面(うねり曲面)をZ=f1(x,y)で表わした時、上記式(1)で与えられる値をnm単位で表したものを、第一の領域の表面うねり(Wa1)として算出した。
次に、700μm×700μmの視野について得られた干渉縞画像から第一の領域を抽出する位置を、先の抽出位置から、前記測定対象物の長手方向(Y軸方向)に20pixels刻みで移動させて抽出し、抽出した第一の領域の干渉縞画像について、上記と同様の手順を繰り返して、第一の領域の表面うねり(Wa1)を算出した。
上記した表面うねり(Wa1)の算出工程を、24回繰り返し、それぞれにおいて得られた表面うねり(Wa1)の平均値を算出することにより、「第一の領域の表面うねり(Wa1)の平均値Wa1ave」を得た。
【0254】
(第二の領域の表面うねり(Wa2)の平均値Wa2ave
前記した第一の領域の表面うねり(Wa1)の算出において取得した干渉縞画像において、測定対象物の長手方向に沿う方向に延在し、且つ前記長手方向に直交する方向の幅が、前記長手方向に沿う方向の長さよりも幅狭となるように、第二の領域を任意に抽出した。
具体的には、測定対象物の表面について取得した干渉縞画像(例えば、図2参照)中の、700μm×700μmの視野における干渉縞画像から、開始位置(pixels)をX1:0、 Y1:0として、X:20、Y:480でサイズ指定(pixels)を行い、第二の領域を抽出した(例えば、図3参照)。
次いで、任意に抽出した第二の領域の干渉縞画像から、測定対象物の表面形状を決定し、得られた表面形状の断面曲線から、上記第一の領域の表面うねり(Wa1)の算出で説明したのと同様の手順により、輪郭曲線(うねり曲線)を求め、得られた輪郭曲線(うねり曲線)から、上記第一の領域の表面うねり(Wa1)の算出で説明したのと同様の手順により、第二の領域の表面うねり(Wa2)を算出した。
次に、700μm×700μmの視野について得られた干渉縞画像から第二の領域を抽出する位置を、先の抽出位置から、前記測定対象物の短手方向(X軸方向)に20pixels刻みで移動させて抽出し、抽出した第二の領域の干渉縞画像について、上記と同様の手順を繰り返して、第二の領域の表面うねり(Wa2)を算出した。
上記した、表面うねり(Wa2)の算出工程を32回繰り返し、それぞれにおいて得られた表面うねり(Wa2)の平均値を算出することにより、「第二の領域の表面うねり(Wa2)の平均値Wa2ave」を得た。
【0255】
<表面粗さ>
走査型白色干渉顕微鏡を使用して、測定対象物の表面について、以下の測定条件により、95μm×71μmの視野における干渉縞の画像を取得した。
[測定条件]
表面粗さ(Sa)の測定
・製品名 :VertScan(走査型白色干渉顕微鏡)、株式会社日立ハイテクサイエンス製
・対物レンズ :50倍
・CCDカメラ :製品名 HR−50 1/3、ソニー株式会社製
・波長フィルタ : 530White
・視野サイズ(pixels) :640×480
・測定モード : wave
・測定範囲(z軸方向) : Start 10μm、Stop −50μm
・XYサイズ :約95μm×71μm
【0256】
次いで、95μm×71μmの視野について得られた干渉縞画像から、測定対象物の原表面を決定し、得られた原表面から表面フィルター(S−フィルター)処理を行い、基礎表面を求めた後、当該基礎表面に対して、L−フィルター処理(カットオフ値λ=10μm)を行うことによって、輪郭曲面(粗さ曲面)であるS−L平面を求めた。
次いで、S−L平面(輪郭曲面(粗さ曲面))について定義された所定の領域の平均面をX−Y平面、高さ方向をZ軸として、S−L平面(輪郭曲面(粗さ曲面))をZ=f2(x,y)で表わした時、上記式(2)で与えられる値をnm単位で表したものを、表面粗さ(Sa)として算出した。
【0257】
<ポリイミド前駆体の重量平均分子量>
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr−NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC−8120、検出器:示差屈折率(RID)検出器、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804を2本直列に接続)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、カラム温度37℃、検出器温度37℃の条件で測定を行った。ポリイミドの重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求めた。
【0258】
<ヘイズ値>
JIS K−7105に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
【0259】
<密着性>
後述する[積層体の作製]において形成したハードコート層について、JIS K 5600−5−6に準拠したクロスカット試験を行い、テープによる剥離操作を繰り返し5回実施した後、塗膜(ハードコート層)の剥がれの有無を観察した。
○:ハードコート層の剥がれ無し
×:ハードコート層の剥がれ有り
【0260】
<外観>
[積層体の作製]において作製した積層体を、光源の前に設置し、スクリーンに映し出された投影画像を目視で観察した。そして、目視で観察される投影画像を、外観検査用フィルムと比較して、以下の評価基準に従って、外観の評価を行った。
◎:積層体の表面にスジが確認されなかった
○:積層体の表面に若干スジが確認されたものの、目視では殆ど目立たないレベルであった
×:積層体表面に目視で明確に確認できるレベルのスジが確認された
【0261】
(合成例1)
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド3081g、及び、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)322g(1.00mol)を入れ、TFMBを溶解させた溶液の液温が30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)443g(1.00mol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体1が溶解したポリイミド前駆体溶液1(固形分20重量%)を合成した。ポリイミド前駆体溶液1(固形分20重量%)の25℃における粘度は34920cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体1の重量平均分子量は408500であった。
【0262】
(実施例1)
(支持体の研磨工程)
厚み100μm、幅500mmのSUS箔(日新製鋼社製)を、以下の手順によりバフ研磨して、表面研磨を行った。
まず、研磨機の支持台に、真空チャックによりSUS箔を固定した。次いで、バイアス綿バフの表面に、固形バフ研磨剤(棒状バフ研磨剤)を塗布した後、当該バイアス綿バフを広幅の研磨ヘッドに設置し、当該研磨ヘッドを往復動させながら、バフを高速回転させつつ、支持台に固定されたSUS箔の表面に接触させて、表面研磨を行った。表面研磨は、研磨ヘッドの往復を12回行うことにより行った。固形バフ研磨剤(棒状バフ研磨剤)としては、研磨材として、焼成アルミナを配合したものを使用した。
研磨後のSUS箔について、前記評価方法で説明した方法を用いて、表面粗さ(Sa)の測定、第一の領域の表面うねり(Wa1)の平均値Wa1aveの算出、第二の領域の表面うねり(Wa2)の平均値Wa2aveの算出を行った。
研磨後のSUS箔の表面粗さ(Sa)は1.5nmであり、第一の領域の表面うねり(Wa1)の平均値Wa1aveは、4.3nmであり、第二の領域の表面うねり(Wa2)の平均値Wa2aveは、3.4nmであった。
【0263】
(ポリイミドフィルムの作製)
(1)前記支持体の研磨工程にて表面研磨したSUS箔を、支持体として用い、当該SUS箔の表面粗さの測定面上に、ポリイミド前駆体溶液1を塗布して、ポリイミド前駆体溶液1の塗膜を形成した後、120℃の循環オーブンで10分乾燥した。
(2)窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、350℃まで昇温し、1時間保持後、室温まで冷却した。
(3)SUS箔より剥離し、ポリイミドフィルム1を得た。ポリイミドフィルム1の膜厚は51μmであった。
【0264】
[積層体の作製]
ペンタエリスリトールトリアクリレートの40重量%メチルイソブチルケトン溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレート100重量部に対して10重量部の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF製、イルガキュア184)を添加して、ハードコート層形成用組成物を調製した。
実施例1で得られたポリイミドフィルム1を10cm×10cmに切り出し、切り出したポリイミドフィルム1のSUS箔と接触していた側の面に、前記ハードコート層形成用組成物を塗布し、紫外線を窒素気流下200mJ/cmの露光量で照射し硬化させ、10μm膜厚の硬化膜であるハードコート層を形成し、積層体1を作製した。積層体1の厚さは61μmであった。
【0265】
(実施例2)
研磨ヘッドの往復動回数を8回に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バフ研磨を行った。
研磨後のSUS箔の表面粗さ(Sa)は4.2nm、第一の領域の表面うねり(Wa1)の平均値Wa1aveは10.8nm、第二の領域の表面うねり(Wa2)の平均値Wa2aveは5.2nmであった。当該SUS箔を支持体として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルム2を得た。ポリイミドフィルム2の膜厚は50μmであった。
次いで、ポリイミドフィルム2のSUS箔と接触していた側の面に、実施例1と同様にして、前記ハードコート層形成用組成物を塗布し、実施例1と同様にして硬化させて、ハードコート層を形成し、積層体2を作製した。積層体2の厚さは60μmであった。
【0266】
(実施例3)
研磨ヘッドの往復動回数を4回に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バフ研磨を行った。
研磨後のSUS箔の表面粗さ(Sa)は8.8nm、第一の領域の表面うねり(Wa1)の平均値Wa1aveは38.1nm、第二の領域の表面うねり(Wa2)の平均値Wa2aveは23.5nmであった。当該SUS箔を支持体として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルム3を得た。ポリイミドフィルム3の膜厚は50μmであった。
次いで、ポリイミドフィルム3のSUS箔と接触していた側の面に、実施例1と同様にして、前記ハードコート層形成用組成物を塗布し、実施例1と同様にして硬化させて、ハードコート層を形成し、積層体3を作製した。積層体3の厚さは60μmであった。
【0267】
(比較例1)
研磨ヘッドの往復動回数を16回に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バフ研磨を行った。
研磨後のSUS箔の表面粗さ(Sa)は0.9nm、第一の領域の表面うねり(Wa1)の平均値Wa1aveは4.2nm、第二の領域の表面うねり(Wa2)の平均値Wa2aveは3.9nmであった。当該SUS箔を支持体として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルム4を得た。ポリイミドフィルム4の膜厚は50μmであった。
次いで、ポリイミドフィルム4のSUS箔と接触していた側の面に、実施例1と同様にして、前記ハードコート層形成用組成物を塗布し、実施例1と同様にして硬化させて、ハードコート層を形成し、積層体4を作製した。積層体4の厚さは60μmであった。
【0268】
(比較例2)
研磨ヘッドの往復動回数を6回に変更し、固形バフ研磨剤(棒状バフ研磨剤)として、実施例1で用いた固形バフ研磨剤(棒状バフ研磨剤)に配合されている研磨材よりも、粒径の小さい研磨材が配合されたものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、バフ研磨を行った。
研磨後のSUS箔の表面粗さ(Sa)は7.5nm、第一の領域の表面うねり(Wa1)の平均値Wa1aveは42.7nm、第二の領域の表面うねり(Wa2)の平均値Wa2aveは18.0nmであった。当該SUS箔を支持体として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルム5を得た。ポリイミドフィルム5の膜厚は51μmであった。
次いで、ポリイミドフィルム5のSUS箔と接触していた側の面に、実施例1と同様にして、前記ハードコート層形成用組成物を塗布し、実施例1と同様にして硬化させて、ハードコート層を形成し、積層体5を作製した。積層体5の厚さは61μmであった。
【0269】
(比較例3)
研磨ヘッドの往復動回数を3回に変更し、固形バフ研磨剤(棒状バフ研磨剤)として、実施例1で用いた固形バフ研磨剤(棒状バフ研磨剤)に配合されている研磨材よりも、粒径の大きい研磨材が配合されたものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、バフ研磨を行った。
研磨後のSUS箔の表面粗さ(Sa)は15.4nm、第一の領域の表面うねり(Wa1)の平均値Wa1aveは113.7nm、第二の領域の表面うねり(Wa2)の平均値Wa2aveは130.1nmであった。当該SUS箔を支持体として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルム6を得た。ポリイミドフィルム6の膜厚は50μmであった。
次いで、ポリイミドフィルム6のSUS箔と接触していた側の面に、実施例1と同様にして、前記ハードコート層形成用組成物を塗布し、実施例1と同様にして硬化させて、ハードコート層を形成し、積層体6を作製した。積層体6の厚さは60μmであった。
【0270】
実施例1〜3及び実施例1〜3で得られた、[積層体の作製]を行う前のポリイミドフィルム1〜6について、前記評価方法を用いて、ヘイズ値、SUS箔との接触面の表面粗さ(Sa)の測定、第一の領域の表面うねり(Wa1)の平均値Wa1aveの算出、第二の領域の表面うねり(Wa2)の平均値Wa2aveの算出を行った。評価結果を表1に示す。
また、実施例1〜3及び実施例1〜3で得られた積層体1〜6について、前記評価方法を用いて、密着性、外観及びヘイズ値の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0271】
【表1】
【0272】
表1より、700μm×700μmの視野における、第一の領域の表面うねり(Wa1)の平均値Wa1aveと第二の領域の表面うねり(Wa2)の平均値Wa2aveとの差(Wa1ave−Wa2ave)が、20nm以下であり、且つ、71μm×95μmの視野における第一の面の表面粗さ(Sa)が1nm以上10nm以下であるポリイミドフィルムを有する実施例1〜3のポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルムのSUS箔との接触面と機能層とが優れた密着性を有しており、且つ、積層体においてスジの発生が抑制され、外観が良好であり、また、ヘイズ値が低く光学特性に優れていた。。
一方、比較例1の積層体4は、ポリイミドフィルム4の表面粗さ(Sa)が、1nm未満であったため、ハードコート層との密着性に劣り、一部にハードコート層の剥がれが発生した。
また、比較例2の積層体5は、ポリイミドフィルム5の、第一の領域の表面うねり(Wa1)の平均値Wa1aveと第二の領域の表面うねり(Wa2)の平均値Wa2aveとの差(Wa1ave−Wa2ave)が、20nmを超えていたため、スジの発生が生じ、外観に劣るものであった。
また、比較例3の積層体6は、ポリイミドフィルム6の表面粗さ(Sa)が10nm以下を超えていたため、ヘイズ値が4.1%と高く、半透明であり、光学特性に劣るものであった。
【符号の説明】
【0273】
1 ポリイミドフィルム
1a 第一のポリイミドフィルム
1b 第二のポリイミドフィルム
A1 長手方向に直交する方向に延在する第一の領域
A2 長手方向に沿う方向に延在する第二の領域
11 第一の面
12 第二の面
2、2a、2b 機能層
3、3a3b ハードコート層
4 第一の透明電極
41 第一の導電部
5 第二の透明電極
51 第二の導電部
6 接着層
7 第一の取出し線
71 第一の端子
8 第二の取出し線
81 第二の端子
13 ポリイミドフィルム1の端縁
14 アクティブエリア
15 非アクティブエリア
16 接続部
10、20 タッチパネル部材
201 第一の積層体
202 第二の積層体
30 液晶表示部
40 有機エレクトロルミネッセンス表示部
100、200 液晶表示装置
300、400 有機エレクトロルミネッセンス表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11