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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-217651(P2019-217651A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】複合材料構造体の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/32 20060101AFI20191129BHJP
   B29C 43/20 20060101ALI20191129BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20191129BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20191129BHJP
   B29K 101/10 20060101ALN20191129BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20191129BHJP
【FI】
   B29C43/32
   B29C43/20
   B29C70/16
   B29C70/42
   B29K101:10
   B29K105:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-115181(P2018-115181)
(22)【出願日】2018年6月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】青木 照明
(72)【発明者】
【氏名】矢野 秀幸
【テーマコード(参考)】
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F204AA36
4F204AC05
4F204AD16
4F204AD17
4F204AD35
4F204AG03
4F204AJ05
4F204AM34
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4F204EB01
4F204EB11
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4F204EF05
4F204EF27
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4F204EK17
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB11
4F204FB22
4F204FF06
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4F205AA36
4F205AC05
4F205AD16
4F205AD17
4F205AD35
4F205AG03
4F205AJ05
4F205AM34
4F205HA08
4F205HA25
4F205HA33
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HB11
4F205HF05
4F205HK03
(57)【要約】
【課題】 ヒケの発生を抑止できる複合材料構造体の形成方法を提供する。
【解決手段】 芯材2、第1繊維強化樹脂層3A、及び、第2繊維強化樹脂層3Bを備えた複合材料構造体1Xを形成する。まず、スペーサ4を芯材2の第1主面21の外縁20aに沿って配置する。スペーサ4は、芯材2の弾性率よりも小さい弾性率を有し、且つ、第1繊維強化樹脂層3A及び第2繊維強化樹脂層3Bのマトリクス樹脂を吸収しない。その後、成形型100及び101内で第1繊維強化樹脂層3A及び第2繊維強化樹脂層3Bを形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と前記第1主面の反対面である第2主面と前記第1主面に対して鋭角に傾斜する前記第1主面及び前記第2主面の間の傾斜側面とを備える板状の芯材、前記第1主面に設けられた第1繊維強化樹脂層、及び、前記第2主面に設けられた第2繊維強化樹脂層を備え、前記第1繊維強化樹脂層が前記第1主面に沿って延設されると共に前記第1主面の前記傾斜側面側の外縁から外方にさらに延設され、前記第2繊維強化樹脂層が前記第2主面及び前記傾斜側面に沿って延設されると共に前記第1繊維強化樹脂層の前記外縁の外方で前記第1繊維強化樹脂層に沿ってさらに延設され、前記第1繊維強化樹脂層及び前記第2繊維強化樹脂層が前記外縁よりも外方で互いに結合された、複合材料構造体の形成方法であって、
前記芯材の弾性率よりも小さい弾性率を有し且つ前記第1繊維強化樹脂層及び前記第2繊維強化樹脂層のマトリクス樹脂を吸収しないスペーサを前記第1主面の前記外縁に沿って配置した後に、成形型内で、前記芯材の前記第1主面に前記第1繊維強化樹脂層を形成すると共に前記第2主面に前記第2繊維強化樹脂層を形成する、複合材料構造体の形成方法。
【請求項2】
前記成形型内に、前記芯材及び前記スペーサ、並びに、前記第1繊維強化樹脂層の第1プリプレグを配置すると共に前記第2繊維強化樹脂層の第2プリプレグを配置した後に、
PCM法によって、前記成形型内で前記第1プリプレグ及び前記第2プリプレグを硬化させて、前記第1繊維強化樹脂層及び前記第2繊維強化樹脂層を形成する、請求項1に記載の複合材料構造体の形成方法。
【請求項3】
前記成形型内に、前記芯材及び前記スペーサ、並びに、前記第1繊維強化樹脂層の第1プリフォームを配置すると共に前記第2繊維強化樹脂層の第2プリフォームを配置した後に、
RTM法によって、前記成形型内に前記マトリクス樹脂を充填させて前記第1プリフォーム及び前記第2プリフォームに前記マトリクス樹脂を含浸させてから硬化させて、前記第1繊維強化樹脂層及び前記第2繊維強化樹脂層を形成する、請求項1に記載の複合材料構造体の形成方法。
【請求項4】
前記スペーサが独立気泡EPDMゴムである、請求項1〜3の何れか一項に記載の複合材料構造体の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の芯材の端縁を一対の繊維強化樹脂層で挟み込んだ複合材料構造体の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、板状の芯材の端縁を一対の繊維強化樹脂層で挟み込んだ複合材料構造体が開示されている。より詳しくは、当該複合材料構造体は、板状の芯材、芯材の第1主面に設けられた第1繊維強化樹脂層、及び、芯材の第1主面の反対面である第2主面に設けられた第2繊維強化樹脂層を備えている。第1主面と第2主面との間には、第1主面に対して鋭角に傾斜する傾斜側面が形成されている。第1繊維強化樹脂層は、芯材の第1主面に沿って延設されると共に傾斜側面の外縁から外方にさらに延設されている。一方、第2繊維強化樹脂層は、第2主面及び傾斜側面に沿って延設されると共に上述した外縁から外方で第1繊維強化樹脂層に沿って延設されている。第1及び第2繊維強化樹脂層は、上述した外縁よりも外方で互いに結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−69320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような複合材料構造体では、芯材の傾斜側面に沿って第2繊維強化樹脂層が屈曲されるので、成形時に第2繊維強化樹脂層内の繊維層が第2繊維強化樹脂層内で偏ることがある。この結果、傾斜側面の先端で第1繊維強化樹脂層と第2繊維強化樹脂層とが結合する部分にマトリクス樹脂が偏って存在することになる(樹脂溜まりの形成)。この樹脂の偏りが生じている部分で、第1繊維強化樹脂層の表面に「ヒケ」が生じやすい。
【0005】
従って、本発明の目的は、上述したような構造を有する複合材料構造体におけるヒケの発生を抑止できる複合材料構造体の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る複合材料構造体の形成方法では、板状の芯材、第1繊維強化樹脂層、及び、第2繊維強化樹脂層を備える複合材料構造体を形成する。芯材は、一対の第1及び第2主面と、第1主面に対して鋭角に傾斜する傾斜側面とを有している。第1繊維強化樹脂層は、第1主面に沿って延設され、かつ、傾斜側面側の外縁から外方にさらに延設される。第2繊維強化樹脂層は、第2主面及び傾斜側面に沿って延設され、かつ、上述した外縁の外方で第1繊維強化樹脂層に沿ってさらに延設される。第1及び第2繊維強化樹脂層は、上述した外縁よりも外方で互いに結合される。本発明に係る複合材料構造体の形成方法では、まず、芯材の弾性率よりも小さい弾性率を有し且つ第1及び第2繊維強化樹脂層のマトリクス樹脂を吸収しないスペーサを第1主面の外縁に沿って配置する。その後、成形型内で、第1及び第2繊維強化樹脂層を形成する、
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る複合材料構造体の形成方法によれば、第1繊維強化樹脂層の表面にヒケが発生するのを抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る複合材料構造体の形成方法(PCM法)を示す断面図(第1段階)である。
図2図2は、第1実施形態に係る形成方法を示す断面図(第2段階)である。
図3図3は、第1実施形態に係る形成方法を示す断面図(第3段階)である。
図4図4は、第1実施形態に係る形成方法によって形成された複合材料構造体の断面図である。
図5図5は、第2実施形態に係る複合材料構造体の形成方法(RTM法)を示す断面図(第1段階)である。
図6図6は、第2実施形態に係る形成方法を示す断面図(第2段階)である。
図7図7は、第2実施形態に係る形成方法によって形成された複合材料構造体の断面図である。
図8図8は、比較例に係る複合材料構造体の形成方法(PCM法)を示す断面図(第1段階)である。
図9図9は、比較例に係る形成方法を示す断面図(第2段階)である。
図10図10は、比較例に係る形成方法によって形成された複合材料構造体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ実施形態を説明する。同一又は同等の構成部分には同一の符号を付してそれらの詳しい説明を省略する。なお、図面は模式的なものであり、寸法や比率などは実際のものとは異なる場合がある。
【0010】
第1実施形態に係る形成方法を、図1図4を参照しつつ説明する。本実施形態では、PCM(Prepreg Compression Molding)法によって複合材料構造体1X(図4参照)を形成する。まず、形成される複合材料構造体1Xについて説明する。複合材料構造体1Xは、車両のエンジンフードやトランクリッドとして用いられる。図4に示されるように、複合材料構造体1Xは、板状の芯材2、芯材2の第1主面21に設けられた第1繊維強化樹脂層3A、及び、芯材2の第2主面22に設けられた第2繊維強化樹脂層3Bを備えている。第2主面22は、第1主面21に対する芯材2の反対面である。
【0011】
芯材2は、強度や耐熱性に優れた高機能発泡樹脂材である。芯材2の第1主面21と第2主面22との間には、傾斜側面20が形成されている。傾斜側面20は、第1主面21に対して鋭角に傾斜されている。より詳しくは、傾斜側面20の表面は、第2繊維強化樹脂層3B側に向けられており、かつ、徐々に第1繊維強化樹脂層3Aに近づくように傾斜されている。このように傾斜させることで、第2繊維強化樹脂層3Bの屈曲部が許容最小曲率半径以上の曲率半径で屈曲される。繊維強化樹脂は、屈曲される曲率半径が小さいとその強度が低下するため、このように許容最小曲率半径が設定されている。また、第1主面21の傾斜側面20側の外縁(=傾斜側面20の先端縁)20aに沿って、追って詳しく説明するスペーサ4が配置されている。
【0012】
芯材2を繊維強化樹脂層3A及び3Bによってサンドイッチした構造とすることで、複合材料構造体1Xの重量増を抑止しつつ、複合材料構造体1Xの強度及び剛性を向上させることができる。また、ここでの芯材2は発泡樹脂材であり、エネルギー吸収性能を有している。従って、複合材料構造体1Xをエンジンフードやトランクリッドとして用いると、エンジンフードやトランクリッドにエネルギー吸収性能を付与することができる。複合材料構造体1Xをエンジンフードやトランクリッドとして用いる場合、芯材2は、それらの裏面に形成されるビードの内部に配置される。エンジンフードやトランクリッドの表面にヒケが生じると美観を非常に損ねてしまうが、後述するように、本実施形態によればスペーサ4を設けることでヒケを抑止できる。
【0013】
第1繊維強化樹脂層3A及び第2繊維強化樹脂層3Bは、炭素繊維強化性樹脂(CFRP)で形成されている。追って形成方法を説明することで明確となるが、第1繊維強化樹脂層3A及び第2繊維強化樹脂層3Bは、芯材2の傾斜側面20側の外縁20aよりも外方で互いに結合されて一体化されている。以下、この互いに結合された部分を結合繊維強化樹脂層3とも称する。なお、本実施形態では、外縁20aに沿ってスペーサ4が配置されているので、結合繊維強化樹脂層3はスペーサ4よりも外方に形成される。また、全ての図において、芯材2の一つの側面(傾斜側面20)しか示していないが、他の側面も同様の構成とされている。
【0014】
各繊維強化樹脂層3A及び3Bは、その内部に積層された複数枚の炭素繊維シート3Xを備えている。この炭素繊維シート3Xにマトリクス樹脂が含浸されて硬化されることで、各繊維強化樹脂層3A及び3Bが形成されている。なお、全ての図中の炭素繊維シート3Xは模式的に示されており、その枚数を正確には表していない。
【0015】
ここでは、長い炭素繊維が織られてシート状に形成された二方向性の(bidirectional)炭素繊維シート3Xが積層されて用いられている。ただし、二方向性等の多方向性の(multidirectional)炭素繊維シート3Xでなく、一方向性(unidirectional)の炭素繊維シート3Xが用いられてもよい。一方向性や多方向性等の異方性の(anisotropic)炭素繊維シート3Xを複数枚用いて、疑似等方性(quasi-isotropic)の繊維強化樹脂層3A及び3Bが形成されてもよい。
【0016】
第1繊維強化樹脂層3Aは、芯材2の第1主面21(図4中の上面)に設けられている。第1繊維強化樹脂層3Aは、芯材2の第1主面に沿って延設されると共に、上述した外縁20aから外方にさらに延設されている。一方、第2繊維強化樹脂層3Bは、芯材2の第2主面22(図4中の下面)に設けられている。第2繊維強化樹脂層3Bは、芯材2の第2主面22及び傾斜側面20に沿って延設されると共に、上述した外縁20aから外方で第1繊維強化樹脂層3Aに沿ってさらに延設されている。従って、繊維強化樹脂層3A及び3Bの外縁20a(スペーサ4)から外方に延設されている部分が、上述した結合繊維強化樹脂層3を形成している。
【0017】
上述した複合材料構造体1XをPCM法で形成するには、まず、図1に示されるように、芯材2の傾斜側面20の外縁20aにスペーサ4を配置する。スペーサ4は、外縁20aに垂直な断面(図1図4の断面図)において台形の断面形状を有しており、傾斜側面20に対応する傾斜した先端縁を有している。スペーサ4は、外縁20aに沿って芯材2に接着剤等で取り付けられる。スペーサ4は、複合材料構造体1X(第1繊維強化樹脂層3A)の表面にヒケが形成されるのを抑止するために設けられる。スペーサ4は、芯材2の弾性率よりも小さな弾性率を備えており、かつ、繊維強化樹脂層3A及び3Bのマトリクス樹脂を吸収しない素材で形成されている。
【0018】
具体的には、スペーサ4は、独立気泡EPDMゴム(エチレン・プロピレン・ジエンゴム:ethylene propylene diene monomer rubber)によって形成されている。スペーサ4は、独立気泡による発泡体であり、内部の気泡がそれぞれ独立して形成されている。従って、気泡が連続していないので、スペーサ4は繊維強化樹脂層3A及び3Bのマトリクス樹脂を吸収しない。逆に言えば、繊維強化樹脂層3A及び3Bのマトリクス樹脂はスペーサ4の内部に含浸しない。また、スペーサ4は、独立気泡発泡体という構造を持ち、かつ、EPDMゴムという素材によって形成されているので、弾性を有している。
【0019】
続いて、スペーサ4が取り付けられた芯材2、第1繊維強化樹脂層3Aを形成するための第1プリプレグ30A、及び、第2繊維強化樹脂層3Bを形成するための第2プリプレグ30Bを、一対の金型(成形型)100及び101内にセットする。プリプレグ30A及び30Bは、上述した積層された炭素繊維シート3Xにマトリクス樹脂を含浸させたものである。マトリクス樹脂は熱硬化性樹脂である。金型100及び101には加熱機構が設けられている。
【0020】
金型100及び101内では、スペーサ4はプリプレグ30A及び30Bによって挟まれて押圧される。スペーサ4は弾性を有しているために変形し、傾斜側面20に対応する傾斜面を形成する。スペーサ4は、この弾性変形によって、体積が1/2〜1/3となる。この時、スペーサ4は、第1主面21の延長線(延長面)と傾斜側面20の延長線(延長面)で囲まれる領域よりも外側にまで延在する。即ち、スペーサ4の初期形状は、金型100及び101内での成形時に弾性変形しても、この領域よりも外側に存在するような形状に設定される。
【0021】
続いて、図3に示されるように、金型100及び101内で、スペーサ4が取り付けられた芯材2、第1繊維強化樹脂層3Aを形成するための第1プリプレグ30A、及び、第2繊維強化樹脂層3Bを形成するための第2プリプレグ30Bを加熱圧縮する。金型100及び101内は、閉じられる前から予熱されており、プリプレグ30A及び30Bのマトリクス樹脂(熱硬化性樹脂)は、金型100及び101によって加熱されて一旦軟化又は液化した後に、硬化反応(架橋反応)が進んで硬化する。マトリクス樹脂が硬化すると、第1繊維強化樹脂層3A及び第2繊維強化樹脂層3Bが形成され、図4に示される複合材料構造体1Xが完成する。
【0022】
図3に示される状態で金型100及び101内でマトリクス樹脂が一旦軟化又は液化すると、第2プリプレグ30B内の炭素繊維シート3Xが平坦になろうとする。複合材料構造体1X(エンジンフードやトランクリッド)の形状に起因して炭素繊維シート3Xに張力が作用すると、炭素繊維シート3Xはさらに平坦になろうとする。この結果、第2繊維強化樹脂層3Bの内部で炭素繊維シート3Xの位置に偏りが生じ得る。特に、スペーサ4の近傍では、第2繊維強化樹脂層3Bの屈曲に起因して、スペーサ4から離れる方向に炭素繊維シート3Xの位置が偏る。
【0023】
しかし、スペーサ4が予め配置されているため、スペーサ4の部分に樹脂溜まりが形成されることがない。樹脂溜まりとは、マトリクス樹脂が偏って存在する場所であり、樹脂の体積(ボリューム)がその周囲に対して部分的に多い場所である。一般に、樹脂成形において、樹脂溜まりが形成されると、冷却時の樹脂の収縮によって、表面にヒケが生じることが知られている。本実施形態では、マトリクス樹脂を吸収しないスペーサ4を外縁20aに沿って配置することで、樹脂溜まりを形成させない。樹脂溜まりが形成させないことで、第1繊維強化樹脂層3Aの表面のヒケを抑止することができる。
【0024】
また、本実施形態のスペーサ4は、マトリクス樹脂を吸収することがないため、樹脂不足によるヒケも生じさせることがない。さらに、本実施形態のスペーサ4は、上述したように弾性を有しており、金型100及び101の内部で、軟化又は液化したマトリクス樹脂から押圧力を受けて適度に変形する。同時に、その弾性復元力で適度にマトリクス樹脂を押し返す。これらの力が適度にバランスし、このバランスが保たれた状態でマトリクス樹脂が硬化して第1繊維強化樹脂層3A及び第2繊維強化樹脂層3Bが形成される。このバランスが取れた状態も、第1繊維強化樹脂層3Aの表面のヒケを抑止するのに寄与しているものと思われる。
【0025】
また、スペーサ4は繊維強化樹脂層3A及び3Bを形成する際に熱を受けるため、スペーサ4には耐熱性も要求される。これらの上述した求められる複数の性質を考慮すると、スペーサ4として独立気泡EPDMゴムを用いるのが適していることを、発明者らは見出した。求められる複数の性質を同時に満たすものは多くなく、独立気泡EPDMゴムはスペーサ4として非常に優れている。なお、弾性に関しては、スペーサ4よりも芯材2の弾性率が小さいと、金型100及び101内での成形時にスペーサ4よりも芯材2の変形の方が大きくなり、適切な形状の複合材料構造体1Xが形成されない。従って、スペーサ4の弾性率は、芯材2の弾性率よりも小さくなくてはならない。
【0026】
ここで、スペーサ4を用いないためにヒケが生じる比較例を、図8図10を参照しつつ説明する。図8に示されるように、本比較例では、芯材2の外縁20aに沿ってスペーサ4は配設されない。このため、外縁20aの近傍には、どうしても第1プリプレグ30A及び第2プリプレグ30Bの間に微小な隙間が形成されてしまう。それ以外は、上述した第1実施形態と同様である。この状態で、第1実施形態と同様に、図9に示されるように、金型100及び101内で第1プリプレグ30A及び第2プリプレグ30Bを用いて、PCM法によって複合材料構造体1Zを形成する。
【0027】
図9に示されるように、成形中には軟化又は液化したマトリクス樹脂が上述した外縁20aの近傍の隙間を埋めるが、その分、周囲の樹脂が消費されてしまう。また、上述したように、第2繊維強化樹脂層3Bの内部で炭素繊維シート3Xの位置に偏りが生じ、スペーサ4から離れる方向に炭素繊維シート3Xの位置が偏る。この結果、外縁20aの近傍に樹脂溜まり10Aが形成されてしまう。この樹脂溜まり10Aによって、マトリクス樹脂の冷却後に、図10に示されるようなヒケ10Bが第1繊維強化樹脂層3Aの表面に形成されてしまう。
【0028】
ヒケが生じた複合材料構造体1Zは、ヒケを隠す後工程が必要になる。具体的には、ヒケの部分に目止め剤を充填した後に研磨することを数回繰り返す。その後、塗装をすればヒケは見えなくなるが後工程が必要になってしまう。また、CFRPはその炭素繊維シートの外観をデザインとして利用するために、塗装をクリア塗装とする場合もある。このような場合は、ヒケの部分に充填された目止め剤が見えてしまうことになる。スペーサ4を設けることでヒケを抑止すれば、このような後工程も不要となるし、炭素繊維シートの外観をデザインとして利用する際の美観も向上する。
【0029】
上述した第1実施形態では、スペーサ4を設けることで、樹脂溜まり10Aを形成させない。この結果、ヒケ10Bの形成を抑止できる。また、本比較例では上述した外縁20aの近傍の隙間を埋めるためにマトリクス樹脂が消費されてしまう。しかし、上述した第1実施形態では、スペーサ4は、その弾性によって形状を変えることができるので、上述したバランス状態でこの隙間の体積を相殺でき、マトリクス樹脂の消費を抑止できると考えられる。
【0030】
上述した第1実施形態では、PCM法によって繊維強化樹脂層3A及び3Bが形成された。繊維強化樹脂層3A及び3Bの形成は、PCM法に限定されず、他の方法で形成されてもよい。次に説明する第2実施形態では、RTM(Resin Transfer Molding)法によって複合材料構造体1Y(図7参照)を形成する。第2実施形態に係る形成方法を、図5図7を参照しつつ説明する。
【0031】
スペーサ4を取り付けた芯材2に関しては、上述した第1実施形態と同じであるため、その説明を省略する。図5に示されるように、スペーサ4が取り付けられた芯材2、第1繊維強化樹脂層3Aを形成するための第1プリフォーム31A、及び、第2繊維強化樹脂層3Bを形成するための第2プリフォーム31Bを一対の金型(成形型)200及び201内にセットする。プリフォーム31A及び31Bは、金型を用いたプレス等によって、形成しようとしている複合材料構造体1Yの形状に合わせた形状に予め成形された炭素繊維シート3Xである。炭素繊維シート3X自体は上述した第1実施形態の炭素繊維シート3Xと同じである。
【0032】
続いて、図6に示されるように、金型200及び201のそれぞれからマトリクス樹脂を金型200及び201の内部に充填する。本実施形態のマトリクス樹脂は、熱硬化性樹脂である。ただし、RTM法の場合、マトリクス樹脂に熱可塑性樹脂を用いることも可能である。金型200及び201には、マトリクス樹脂の種類に応じて、加熱機構(熱硬化性樹脂の硬化用)や冷却機構(熱可塑性樹脂の早期冷却用)が設けられる。マトリクス樹脂が充填されると、スペーサ4は、マトリクス樹脂の充填圧力によって、上述した第1実施形態と同じように変形する。この変形については、第1実施形態で説明したため、ここでの説明は省略する。
【0033】
充填されたマトリクス樹脂は、プリフォーム31A及び31Bに含浸し、金型200及び201によって加熱圧縮される。マトリクス樹脂(熱硬化性樹脂)は、金型200及び201によって加熱されて一旦軟化又は液化した後に、硬化反応(架橋反応)が進んで硬化する。マトリクス樹脂が硬化すると、第1繊維強化樹脂層3A及び第2繊維強化樹脂層3Bが形成され、図7に示される複合材料構造体1Yが完成する。
【0034】
本実施形態においても、図6に示される状態で金型200及び201内でマトリクス樹脂が一旦軟化又は液化する際に、第2プリフォーム31Bの炭素繊維シート3Xが平坦になろうとする。複合材料構造体1Yの形状に起因して炭素繊維シート3Xに張力が作用すると、炭素繊維シート3Xはさらに平坦になろうとする。この結果、第2繊維強化樹脂層3Bの内部で炭素繊維シート3Xの位置に偏りが生じ得る。特に、スペーサ4の近傍では、第2繊維強化樹脂層3Bの屈曲に起因して、スペーサ4から離れる方向に炭素繊維シート3Xの位置が偏る。
【0035】
しかし、予めスペーサ4が配置されているため、スペーサ4の部分に樹脂溜まりが形成されることがない。本実施形態では、マトリクス樹脂を吸収しないスペーサ4を外縁20aに沿って配置して樹脂溜まりを形成させないことで、第1繊維強化樹脂層3Aの表面のヒケを抑止することができる。また、第1実施形態で説明したスペーサ4のバランスが取れた状態は、本実施形態でも生じると思われ、第1繊維強化樹脂層3Aの表面のヒケを抑止するのに寄与しているものと思われる。なお、このバランスが取れた状態は、マトリクス樹脂が熱可塑性樹脂の場合も生じると思われる。さらに、RTM法であってもスペーサ4に耐熱性は要求される。従って、耐熱性等の求められる複数の性質を考慮すると、スペーサ4として独立気泡EPDMゴムを用いるのが適しているのは、本実施形態でも同様である。
【0036】
上記第1及び第2実施形態に係る形成方法によれば、芯材2、第1繊維強化樹脂層3A、及び、第2繊維強化樹脂層3Bを備えた複合材料構造体1X又は1Yを形成するに際して、スペーサ4を芯材2の第1主面21の外縁20aに沿って配置する。スペーサ4は、芯材2の弾性率よりも小さい弾性率を有し、且つ、第1繊維強化樹脂層3A及び第2繊維強化樹脂層3Bのマトリクス樹脂を吸収しない。その後、成形型(100及び101、又は、200及び201)内で第1繊維強化樹脂層3A及び第2繊維強化樹脂層3Bを形成する。
【0037】
このため、成形型内で第1繊維強化樹脂層3A及び第2繊維強化樹脂層3Bが形成される際にマトリクスを吸収しないスペーサ4によって樹脂溜まりの形成が抑止される。また、成形型内での第1繊維強化樹脂層3A及び第2繊維強化樹脂層3Bの形成時にスペーサ4がその体積が小さくなるように弾性変形し、スペーサ4と第1繊維強化樹脂層3A及び第2繊維強化樹脂層3Bとがバランスした状態(互いになじんだ状態)を形成する。これらの結果、第1繊維強化樹脂層3Aの表面のヒケの発生を効果的に抑止することができる。
【0038】
ここで、第1実施形態では、熱硬化性樹脂をマトリクス樹脂として含浸させたプリプレグ30A及び30Bを用いてPCM法で第1繊維強化樹脂層3A及び第2繊維強化樹脂層3Bを形成する。このようにすることで、成形型内で形成され得るプリプレグ30A及び30Bの間の隙間をスペーサ4の上述したバランスした状態によって解消でき、効果的にヒケの発生を抑止できる。一方、第2実施形態では、RTM法によって成形型内でマトリクス樹脂をプリフォーム31A及び31Bに含浸させて第1繊維強化樹脂層3A及び第2繊維強化樹脂層3Bを形成する。このようにすることで、第1繊維強化樹脂層3A及び第2繊維強化樹脂のマトリクス樹脂の成形型内への充電圧力によってスペーサ4の上述したバランスした状態を形成でき、効果的にヒケの発生を抑止できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、車両のエンジンフードやトランクリッドとして用いられる複合材料構造体の形成方法に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1X,1Y 複合材料構造体
2 芯材
20 傾斜側面
20a 外縁
21 第1主面
22 第2主面
3A 第1繊維強化樹脂層
3B 第2繊維強化樹脂層
3X 炭素繊維シート
30A 第1プリプレグ
30B 第2プリプレグ
31A 第1プリフォーム
31B 第2プリフォーム
4 スペーサ
100,101,200,201 成形型(金型)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10