【実施例1】
【0010】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0011】
例えば、自動車などの車両には、車室内に各種の内装材が設けられている。このような内装材には、例えば、インストルメントパネルや、ドアパネルや、天井パネルや、これらに取付けられるサブパネルなどの内装パネルが存在している。
【0012】
図1に示すように、この内装材を加飾部品1にする。この加飾部品1は、部品本体2の表面に加飾を施すことで加飾部3を形成したものとされる。この実施例では、わかり易いように加飾部品1を立体形状の半円筒体としている。
【0013】
なお、加飾部品1は、上記した車両の内装材に限るものではない。
【0014】
上記のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えるようにしている。
【0015】
<加飾部品1について>
(1−1)
図2に示すように、加飾部3が、立体形状部4と、立体形状部4を着色してなる着色部5とで構成される。
部品本体2は、表面に溝部6を有する。
溝部6の内部に、溝部6の底面6aよりも高い台座部7が形成されると共に、
立体形状部4は、台座部7の上に、台座部7の内側に収まる大きさで形成される。
着色部5は、溝部6の内部の、台座部7よりも上側に位置する立体形状部4に対して施される。
【0016】
ここで、立体形状部4は、立体形状をしていればどのようなものであっても良い。
【0017】
着色部5は、立体形状部4に対して施されるものであり、有色のものとすることができる。着色部5は、加飾部品1の地色と同じ色や、地色とは異なる色にすることができる。着色部5は、単層としても良いし、多層としても良い。着色部5の上には透明な保護層を施しても良い。
【0018】
溝部6は、立体形状部4が隠れる程度のもの、即ち、立体形状部4とほぼ同じ深さや幅のものとするのが好ましい。この実施例では、溝部6を逆台形状としている。溝部6の深さや幅や形状などは、これに限るものではない。
【0019】
底面6aは、立体形状部4の最大幅部分よりも幅の広い平坦な面とされる。
【0020】
台座部7は、
図3、
図4に示すように、立体形状部4の下部の輪郭を一回り大きくしたようなものとされる。台座部7は、溝部6の底面6aの幅より幅の小さな物とされる。
【0021】
(1−2)台座部7は、
図5に示すように、上面が溝部6の底面6aと平行に形成されても良い(平行部7aまたは平行面)。
【0022】
ここで、平行部7aは、表面張力によって液体を付着させるものである。よって、平行部7aは、液体が付着できる程度になっていれば、多少平行度が低くても許容できる。
【0023】
(1−3)台座部7は、
図6に示すように、上面に、外周側から立体形状部4へ向かって下り勾配となる傾斜面7bを有しても良い。
【0024】
ここで、傾斜面7bは、斜面で液体を受け止めて、表面張力によって液体を付着させつつ斜面の下側へ向けて案内するものである。傾斜面7bは、台座部7の幅中心位置へ向かって下り勾配となるように谷状に形成されている。傾斜面7bは、水平に対して45度よりも角度の小さい緩い勾配にするのが好ましい。傾斜面7bは、5度〜20度程度にするのがより好ましい。
【0025】
(1−4)台座部7の外周縁には、
図7、
図8に示すように、部品本体2の表面に向かって立上がる堰止部8が形成されても良い。
【0026】
ここで、堰止部8は、台座部7の上面に液滴を捕集できる程度の幅の部分を残して形成される。堰止部8は、
図5の平行部7aや
図6の傾斜面7bに対して設けることができる。平行部7aや傾斜面7bに対して堰止部8を設けることで、平行部7aや傾斜面7bの機能を向上することが可能になる。なお、堰止部8を有していれば、台座部7の上面は、外周側へ向かって下り勾配となる傾斜面とすることも可能となる。
【0027】
(1−5)立体形状部4は、縫製加工された縫い糸の形状を模した疑似縫製線11とされても良い。
着色部5は、縫い糸の色彩および撚糸模様の少なくとも一方を模した縫い糸柄12に着色されても良い。
【0028】
ここで、疑似縫製線11は、実際に縫製を行うことなく、縫製品の質感を出すために、加飾部品1の表面に設けられる凹凸形状である。疑似縫製線11は、例えば、縫製線が所要の間隔で規則的に裏側へ引き込まれながら波打っている状態を示すために、不連続な複数の凹凸部として形成されている。疑似縫製線11をよりリアルなものにするため、疑似縫製線11の表面には、複数本の糸を束ねた撚糸における、複数本の糸の形状を表す窪み部13を形成しても良い。
【0029】
なお、疑似縫製線11に対して着色部5を施すことは一般的に行われていないものである。疑似縫製線11に対する着色部5は、例えば、縫い糸の色としても良い。着色部5には、撚糸の複数本の糸どうしの境界を示す線(境界線)を窪み部13に沿って形成しても良い。または、窪み部13の代わりに、境界線柄の着色部5のみとしても良い。
【0030】
<加飾部品1の製造方法について>
加飾部品1の製造方法は、部品本体2の表面に加飾部3を有する加飾部品1を製造するものである。
【0031】
(1−6)そして、加飾部3を、立体形状部4を形成する成形工程(
図9)と、立体形状部4を着色して着色部5を形成する着色工程(
図10〜
図13)とによって形成する。
成形工程では、部品本体2の表面に溝部6を形成し、
溝部6の内部に、溝部6の底面6aよりも高い台座部7を形成すると共に、
立体形状部4は、台座部7の上に、台座部7の内側に収まる大きさで形成する。
着色工程では、着色部5を、溝部6の内部の、台座部7よりも上側に位置する立体形状部4に対して施すようにする。
【0032】
ここで、成形工程では、例えば、
図9に示すように、射出成形装置の上下の金型21,22内に形成された成形空間23の内部に溶融樹脂24を注入することによって、表面に立体形状部4を有する部品本体2を成形する。
【0033】
着色工程では、例えば、
図10、
図11に示すように、着色装置として直交型ロボット25と製品固定治具26とを用いて立体形状部4を着色する。また例えば、
図12、
図13に示すように、着色装置として垂直多関節ロボット27と製品固定治具28とを用いて立体形状部4を着色する。直交型ロボット25や垂直多関節ロボット27は、制御装置29によって制御される。
【0034】
図11の場合、製品固定治具26は、直交型ロボット25によって垂直上方から着色できるように、回転傾斜台となっている。回転傾斜台は、例えば、一側から他側へ向かって一方向に回動させながら着色を行わせるようにしても良い。
【0035】
また、
図13の場合、製品固定治具26は、垂直多関節ロボット27によって様々な方向から着色できるため、固定となっている。但し、
図11の製品固定治具26を固定にして使用しても良い。
【0036】
(1−7)着色工程では、ディスペンサー装置31でインク32を付着させるようにしても良い。
【0037】
ここで、ディスペンサー装置31は、液体定量吐出システムのことである。ディスペンサー装置31には、インク32を貯留して計量するための筒状をしたシリンジ31aや、インク32を滴下したり噴射したりすることで立体形状部4に付着させるためのディスペンサーノズル31bや、インク32の付着状態などを監視して制御するためのカメラ31cなどが設けられる。
【0038】
ディスペンサーノズル31bによる立体形状部4に沿ったインク32の塗布パターンは、例えば、
図14に示すようにすることができる。
図14(a)は一本線(太線)状の直線的塗布パターン、
図14(b)は複数線(細線)状の直線的塗布パターン、
図14(c)は複数線状の直線および曲線的塗布パターン(始点や終点が一致)、
図14(d)は複数線状の直線および曲線的塗布パターン(始点や終点が不一致)である。また、塗布パターンについては、上記に限るものではなく、立体形状部4に対するインク32の塗布状態を確認した上で、上記記載以外の最適なパターンを任意に設定することも可能である。
【0039】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0040】
(作用効果1−1)加飾部3を、立体形状部4と、着色部5とで構成した。これにより、立体形状部4を有すると共に、立体形状部4が着色部5で着色されたリアルな加飾部3を得ることができる。そして、立体形状部4を自動的に着色して着色部5を形成するようにできれば、品質の高い着色部5を安定して得ることが可能になる。
【0041】
この際、立体形状部4に施された着色部5が乾燥硬化するまでに時間がかかると、設備からの振動や乾燥工程での熱風などの外的要因によって、着色部5の表面張力のバランスが崩れる可能性があり、
図15〜
図17に示すような台座部7のない立体形状部4だと、着色部5が立体形状部4の表面を伝わって、溝部6の底面6aまで流下するおそれがある(流下部32a)。このように、着色部5が溝部6の底面6aにまで流下すると、見栄えが悪くなると共に、溝部6の底面6aは、奥まった微細な部位であるため、修正ができないことになる。
【0042】
そこで、部品本体2の表面に形成した溝部6に、底面6aよりも高い台座部7を設けて、台座部7の上に立体形状部4を形成し、台座部7よりも上側の立体形状部4にのみ着色部5を施すようにした。
【0043】
これにより、立体形状部4から流下した着色部5を、溝部6の底面6aよりも高く、立体形状部4よりも大きな台座部7で受けることで、着色部5が台座部7の位置で止まって、溝部6の底面6aまで到達しないようにすることができる。よって、加飾部3の品質を上げることができる。台座部7は立体形状部4よりも一回り大きい程度のもので良いので、外部から目立たないように台座部7を設けることができる。
【0044】
(作用効果1−2)台座部7の上面を溝部6の底面6aと平行にしても良い。これにより、立体形状部4から流下した着色部5を、溝部6の底面6aと平行な台座部7の上面で受けて、表面張力によって台座部7の上面に付着した状態で保持し、着色部5が溝部6の底面6aまで到達しないようにすることができる。よって、加飾部3の品質を上げることができる。
【0045】
(作用効果1−3)台座部7の上面を傾斜面7bにしても良い。これにより、立体形状部4から流下した着色部5を、外周側から立体形状部4へ向かって下り勾配となる傾斜面7bで受け止めて、表面張力によって台座部7の上面に付着した状態で保持しつつ斜面の下方へ向けて案内することで、着色部5が溝部6の底面6aまで到達しないようにすることができる。よって、加飾部3の品質を上げることができる。
【0046】
(作用効果1−4)台座部7の外周縁に堰止部8を設けても良い。これにより、立体形状部4から流下した着色部5を、外周縁の外周縁に形成した堰止部8で確実に堰止めて、着色部5が溝部6の底面6aまで到達しないようにすることができる。よって、加飾部3の品質を上げることができる。
【0047】
(作用効果1−5)立体形状部4は、縫製加工された縫い糸の形状を模した疑似縫製線11としても良い。これにより、立体形状部4を疑似縫製線11の形状にすることができる。また、着色部5は、縫い糸の色彩および撚糸模様の少なくとも一方を模した縫い糸柄12に着色しても良い。これにより、疑似縫製線11をリアルな色にすることができる。これらにより、加飾部3をリアルな疑似縫製線11に仕上げることができる。
【0048】
(作用効果1−6)
加飾部品1の製造方法によれば、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
(作用効果1−7)着色工程で、ディスペンサー装置31によってインク32を付着させるようにした。これにより、溝部6の内部に形成された立体形状部4を良好に着色することが可能になる。
【0050】
これに対し、例えば、凹版のインクをシリコンパットに転写して製品に押し付けることで印刷を行うPAD印刷によって着色部5を形成しようとした場合、印刷図柄が入った印刷版が必要となり、印刷版の作成やPADのメンテナンスを含めて管理工数を要するものとなる。また、車両用の内装材のような大型の部品の場合、設備が大掛かりとなり、コストやメンテナンスの工数がかかる、などの課題を有している。
【0051】
また、インクジェットプリンターで着色部5を形成しようとした場合、インクジェットプリンターは二次元の平面塗布が基本であるため立体形状部4の印刷には向いておらず、また、低粘度のインクしか吐出できないため、中高粘度のインクには対応できない。また、車両の内装スペックに対応する耐熱性や耐候性のインクがない、などの課題を有している。
【0052】
よって、現在のところ、PAD印刷やインクジェットプリンターでは実用化が困難であった。
【0053】
なお、ディスペンサー装置31でインク32を滴下したり噴射したりして着色部5を形成した場合、インク32が乾くまでの間に生じた僅かな振動などによってインク32が溝部6の底面6aへ流れるおそれがあるが、上記したようにしてインク32の流れを抑制することで、良好な着色部5を得ることができるようになる。
【実施例2】
【0054】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0055】
この実施例の加飾部品1は、上記実施例と同様に、部品本体2の表面に加飾部3を有している。
【0056】
<加飾部品1について>
(2−1)
図18に示すように、加飾部3が、立体形状部4と、立体形状部4を着色してなる着色部5とで構成される。
部品本体2は、表面に溝部6を有する。
溝部6の底面6aに、立体形状部4が形成される。
立体形状部4の溝部6の底面6aと接する部分を非着色部41にして、着色部5は、非着色部41よりも上側の部分に施される。
【0057】
ここで、立体形状部4は、溝部6の底面6aに直接形成される。非着色部41は、溝部6の底面6aにおける、インク32の液滴の直径よりも高い位置から溝部6の底面6aまでの範囲に形成させるようにする。その他の構成については、上記実施例と同じである。
【0058】
(2−2)立体形状部4は、縫製加工された縫い糸の形状を模した疑似縫製線11とされても良い。
縫い糸は、複数本の糸を束ねた撚糸とされても良い。
立体形状部4は、撚糸における複数本の糸の形状を表す窪み部13の端末部13aが溝部6の底部に達しない長さに形成されても良い。
着色部5は、窪み部13の端末部13aよりも上側とされ、非着色部41は、窪み部13の端末部13aよりも下側とされても良い。
【0059】
ここで、窪み部13は、表面張力によってインク32の液滴が付着し易い深さや幅などに形成するのが好ましい。窪み部13の端末部13aは、溝部6の底面6aにおける、インク32の液滴の直径よりも高い位置から溝部6の底面6aまでの範囲に形成される。その他の構成については、上記実施例と同じである。
【0060】
<加飾部品1の製造方法について>
加飾部品1の製造方法は、部品本体2の表面に加飾部3を有する加飾部品1を製造するものである。
【0061】
(2−3)そして、加飾部3を、立体形状部4を形成する成形工程と、立体形状部4を着色して着色部5を形成する着色工程とによって形成する。
成形工程では、部品本体2の表面に溝部6を形成し、
溝部6の底面6aに立体形状部4を形成すると共に、
着色工程では、 立体形状部4の溝部6の底面6aと接する部分を非着色部41にして、着色部5は、非着色部41よりも上側の部分に施すようにする。
【0062】
(2−4)着色工程では、ディスペンサー装置31でインク32を付着させるようにしても良い。
【0063】
なお、その他の構成については、実施例1と同様である。
【0064】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0065】
(作用効果2−1)立体形状部4の溝部6の底面6aと接する部分を非着色部41にして、着色部5は、非着色部41よりも上側の部分に施すようにした。これにより、溝部6の底面6aに立体形状部4を直接形成しても、着色部5が溝部6の底面6aまで到達しないようにすることができる。よって、台座部7をなくすことができ、立体形状部4をよりリアルに作ることができる。
【0066】
(作用効果2−2)撚糸における複数本の糸の形状を表す窪み部13を、端末部13aが溝部6の底部に達しない長さとし、着色部5を、窪み部13の端末部13aよりも上側とし、非着色部41は、窪み部13の端末部13aよりも下側としても良い。これにより、着色部5が表面張力によって端末部13aの位置で止まることで、着色部5が溝部6の底面6aまで到達しないようにすることができる。そして、加飾部3をリアルな疑似縫製線11にすることができる。
【0067】
(作用効果2−3)加飾部品1の製造方法によれば、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0068】
(作用効果2−4)着色工程で、ディスペンサー装置31によってインク32を付着させるようにした。これにより、溝部6の内部に形成された立体形状部4を良好に着色できる。
【0069】
なお、ディスペンサー装置31でインク32を滴下したり噴射したりして着色部5を形成した場合、インク32が乾くまでの間に生じた僅かな振動などによってインク32が溝部6の底面6aへ流れるおそれがあるが、上記したようにしてインク32の流れを抑制することで、良好な着色部5を得ることができる。その他の効果については、実施例1と同様である。