特開2019-217802(P2019-217802A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-217802(P2019-217802A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】連結車両の制動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/1755 20060101AFI20191129BHJP
   B60T 7/20 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   B60T8/1755 Z
   B60T7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-114371(P2018-114371)
(22)【出願日】2018年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 俊
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246AA12
3D246BA02
3D246DA01
3D246EA18
3D246GB08
3D246GB09
3D246GC16
3D246HA13A
3D246HA43A
3D246HA81A
3D246HA86A
3D246HA95A
3D246HC03
3D246JA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】挙動制御によって牽引車両の車輪に制動力が付加され牽引車両の旋回挙動が安定化される状況において連結車両のヒッチ角が過大になる虞を低減することができる制動制御装置を提供する。
【解決手段】互いに連結された牽引車両(100)及び被牽引車両(104)よりなる連結車両(106)の制動制御装置であって、車輪に制動力を付与する制動装置と、制動装置を制御する制御ユニットとを、有し、制御ユニットは牽引車両の旋回挙動が安定でないときには牽引車両の所定の車輪に制動力を付加することにより牽引車両の挙動を安定化させる挙動制御を行い、所定の車輪に制動力を付加しているときには、制動力の付加に起因して牽引車両(100)が連結装置(102)を介して被牽引車両(104)に作用する力(Fvfr)に応じた制動力(Fvfr/2)を被牽引車両の車輪(12L、12R)に付与する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車両と、上方から見て前記牽引車両に対し枢動可能に連結装置によって前記牽引車両に連結された被牽引車両とよりなる連結車両の制動制御装置であって、前記牽引車両の車輪及び前記被牽引車両の車輪に制動力を付与する制動装置と、前記制動装置を制御する制御ユニットとを有し、前記制御ユニットは前記牽引車両の旋回挙動が安定でないときには前記牽引車両の所定の車輪に制動力を付加することにより前記牽引車両の旋回挙動を安定化させる挙動制御を行うよう構成された、連結車両の制動制御装置において、
前記制御ユニットは、前記挙動制御により所定の車輪に制動力を付加しているときには、前記所定の車輪に制動力が付加されることに起因して前記牽引車両が前記連結装置を介して前記被牽引車両に作用する力に応じた制動力が前記被牽引車両の車輪に付加されるように、前記制動装置を制御するよう構成された、連結車両の制動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の連結車両の制動制御装置において、前記制御ユニットは、前記所定の車輪に制動力が付加されることに起因して前記連結装置を介して前記被牽引車両の前後方向に作用する力を推定し、前記被牽引車両の車輪に付加される制動力の和が前記前後方向に作用する力以下になるように、前記制動装置を制御するよう構成された、連結車両の制動制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の連結車両の制動制御装置において、前記制御ユニットは、前記連結車両のヒッチ角を演算し、前記所定の車輪に制動力が付加されることに起因して前記牽引車両の重心の周りに作用するヨーモーメントを演算し、前記ヒッチ角及び前記ヨーモーメントに基づいて前記前後方向に作用する力を演算するよう構成された、連結車両の制動制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の連結車両の制動制御装置において、前記制御ユニットは、前記所定の車輪の制動力及び前記所定の車輪に制動力が付加されているときの前記牽引車両の車輪の横力に基づいて前記ヨーモーメントを演算するよう構成された、連結車両の制動制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一つに記載の連結車両の制動制御装置において、前記被牽引車両は左右の車輪を有し、前記左右の車輪に均等に制動力が付加される、連結車両の制動制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引車両とこれに連結された被牽引車両とよりなる連結車両の制動制御装置に係る。
【背景技術】
【0002】
連結車両は、牽引車両と被牽引車両とよりなり、被牽引車両は上方から見て牽引車両に対しヒッチ点の周りに枢動可能に連結装置によって牽引車両に連結されている。被牽引車両の車輪は非操舵従動輪であり、それらの車輪の制動力は牽引車両の車輪の制動力を制御する制動制御装置によって制御される。
【0003】
連結車両において、被牽引車両の挙動が不安定になると、被牽引車両の車輪に制動力を付与することにより、被牽引車両の挙動を安定化させることが知られている。例えば、下記の特許文献1には、ヒッチ点に作用する横力が推定され、被牽引車両の挙動が不安定で横力が高いときには、横力とは逆方向の力をヒッチ点に作用させるヨーモーメントが発生するよう、被牽引車両の車輪に制動力を付与する制動制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−68248号公報
【発明の概要】
【0005】
〔発明が解決しようとする課題〕
連結車両においても、路面の摩擦係数が低い走行路にて旋回走行するような状況において、牽引車両がスピン状態又はドリフトアウト状態になることがある。そのため、連結車両においても、牽引車両の旋回挙動が悪化すると、牽引車両の旋回挙動を安定化させる挙動制御を行うことが知られている。例えば、牽引車両がスピン状態になると、旋回外側前輪に制動力を付加するスピン抑制制御を行い、牽引車両がドリフトアウト状態になると、左右後輪に制動力を付加するドリフトアウト抑制制御を行うことが知られている。
【0006】
連結車両が旋回走行する状況において、挙動制御によって牽引車両の所定の車輪に制動力が付加されると、牽引車両が減速されるため、牽引車両及び被牽引車両の減速度差に起因する作用力が牽引車両からヒッチ点を経て被牽引車両に及ぼされる。その結果、牽引車両は被牽引車両から作用力の反力を受け、反力は牽引車両の後端を斜め前方へ向けて押圧し、牽引車両のヨーレートの大きさを増大させるので、連結車両のヒッチ角が過大になることがある。なお、上述の特許文献1に記載された制動制御装置によっては、連結車両のヒッチ角が過大になることを防止することはできない。
【0007】
本発明の主要な課題は、挙動制御によって牽引車両の車輪に制動力が付加され牽引車両の旋回挙動が安定化される状況において連結車両のヒッチ角が過大になる虞を従来に比して低減することができるよう改良された連結車両の制動制御装置を提供することである。
【0008】
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
本発明によれば、牽引車両(100)と、上方から見て牽引車両に対し枢動可能に連結装置(102)によって牽引車両に連結された被牽引車両(104)とよりなる連結車両(106)の制動制御装置(10)であって、牽引車両の車輪(12FL〜12RR)及び被牽引車両の車輪(12L、12R)に制動力を付与する制動装置(14)と、制動装置を制御する制御ユニット(16)とを有し、制御ユニットは牽引車両の旋回挙動が安定でないときには牽引車両の所定の車輪に制動力を付加することにより牽引車両の旋回挙動を安定化させる挙動制御を行うよう構成された、連結車両(106)の制動制御装置(10)が提供される。
【0009】
制御ユニット(16)は、挙動制御により所定の車輪に制動力を付加しているときには、所定の車輪に制動力が付加されることに起因して牽引車両(100)が連結装置(102)を介して被牽引車両(104)に作用する力(Fvfr)に応じた制動力(Fvfr/2)が被牽引車両の車輪(12L、12R)に付加されるように、制動装置(14)を制御するよう構成される。
【0010】
連結車両の旋回走行時に、挙動制御により牽引車両の所定の車輪に制動力が付加されると、牽引車両は被牽引車両に対し減速するので、牽引車両は連結装置を介して被牽引車両に作用力を及ぼす。そのため、被牽引車両は連結装置を介して作用力の反力を牽引車両に及ぼし、反力は旋回外側へ傾斜した前方へ向けて牽引車両の後端を押圧するので、牽引車両の旋回を促進する方向のヨーモーメントを発生し、連結車両のヒッチ角が増大せしめられる。よって、被牽引車両が牽引車両の後端を斜め前方へ押圧する力を低減すれば、連結車両のヒッチ角が増大して過大になる虞を低減することができる。
【0011】
上記の構成によれば、挙動制御により所定の車輪に制動力が付加されているときには、所定の車輪に制動力が付加されることに起因して牽引車両が連結装置を介して被牽引車両に作用する力に応じた制動力が被牽引車両の車輪に付加される。よって、被牽引車両の車輪に制動力が付加されない場合に比して、牽引車両及び被牽引車両の減速度の差が小さくなり、牽引車両が連結装置を介して被牽引車両に及ぼす作用力及びその反力が小さくなる。従って、反力によって牽引車両の旋回を促進する方向に発生されるヨーモーメントも小さくなるので、連結車両のヒッチ角が増大して過大になる虞を低減することができる。
【0012】
〔発明の態様〕
本発明の一つの態様においては、制御ユニット(16)は、所定の車輪に制動力が付加されることに起因して連結装置(102)を介して被牽引車両(104)の前後方向に作用する力を推定し、被牽引車両の車輪に付加される制動力の和が前後方向に作用する力以下になるように、制動装置を制御するよう構成される。
【0013】
被牽引車両の車輪に付加される制動力の和が前後方向に作用する力を越えると、被牽引車両は連結装置を介して牽引車両を減速させる方向の力を及ぼす。よって、連結車両のヒッチ角が減少して過小になる虞があり、また牽引車両が過剰に減速されることにより、牽引車両の旋回挙動の安定化が適正に行われなくなる虞がある。
【0014】
上記態様によれば、所定の車輪に制動力が付加されることに起因して連結装置を介して被牽引車両の前後方向に作用する力が推定され、被牽引車両の車輪に付加される制動力の和が前後方向に作用する力以下になるように、制動装置が制御される。よって、牽引車両が過剰に減速されることに起因して牽引車両の旋回挙動の安定化が適正に行われなくなることを回避しつつ、連結車両のヒッチ角が過大になる虞を低減することができる。
【0015】
特に、被牽引車両の車輪に付加される制動力の和が前後方向に作用する力と同一になるように、制動装置が制御されれば、連結装置を介して牽引車両及び被牽引車両の間にその前後方向に作用する力は0になる。よって、挙動制御による牽引車両の旋回挙動の安定化を阻害することなく、連結車両のヒッチ角が増大して過大になることを防止することができる。
【0016】
本発明の他の一つの態様においては、制御ユニット(16)は、連結車両(106)のヒッチ角(φ)を演算し、所定の車輪に制動力が付加されることに起因して牽引車両(100)の重心(Og)の周りに作用するヨーモーメント(Myvsc)を演算し、ヒッチ角及びヨーモーメントに基づいて前後方向に作用する力(Fxfr)を演算するよう構成される。
【0017】
上記態様によれば、連結車両のヒッチ角が演算され、所定の車輪に制動力が付加されることに起因して牽引車両の重心の周りに作用するヨーモーメントが演算され、ヒッチ角及びヨーモーメントに基づいて被牽引車両の前後方向に作用する力が演算される。
【0018】
よって、例えば所定の車輪に付加される制動力の成分として被牽引車両の前後方向に作用する力が演算される場合に比して、被牽引車両の前後方向に作用する力を正確に演算することができる。従って、被牽引車両の車輪に付加される制動力を適正に制御し、ヒッチ角が過大になる虞を適正に低減することができる。
【0019】
本発明の他の一つの態様においては、制御ユニット(16)は、所定の車輪の制動力(Fxi)及び所定の車輪に制動力が付加されているときの牽引車両(100)の車輪の横力(Fyi)に基づいてヨーモーメント(Myvsc)を演算するよう構成される。
【0020】
上記態様によれば、所定の車輪の制動力及び所定の車輪に制動力が付加されているときの牽引車両の車輪の横力に基づいてヨーモーメントが演算される。よって、牽引車両の車輪の横力を考慮することなくヨーモーメントが演算される場合に比して、被牽引車両の前後方向に作用する力を正確に演算し、ヒッチ角が過大になる虞を適正に低減することができる。
【0021】
更に、本発明の他の一つの態様においては、被牽引車両(104)は左右の車輪(12L、12R)を有し、左右の車輪に均等に制動力が付加される。
【0022】
上記態様によれば、被牽引車両の左右の車輪に均等に制動力が付加される。よって、被牽引車両の左右の車輪に付加される制動力により被牽引車両にヨーモーメントは与えられない。従って、被牽引車両の車輪に制動力が付加されることにより、挙動制御により牽引車両に与えられるべきヨーモーメントが悪影響を受けて挙動制御が適切に行われなくなることを防止することができる。
【0023】
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いられた符号が括弧書きで添えられている。しかし、本発明の各構成要素は、括弧書きで添えられた符号に対応する実施形態の構成要素に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による制動制御装置の実施形態が適用された連結車両を直進状態にて示す解図的平面図である。
図2】実施形態における被牽引車両の車輪の制動力制御ルーチンを示すフローチャートである。
図3】実施形態における牽引車両の挙動制御ルーチンを示すフローチャートである。
図4】左旋回時に挙動制御により牽引車両の全ての車輪に制動力が付加されている状況を示す平面図である。
図5】従来の連結車両(A)及び実施形態が適用された連結車両(B)について、左旋回時に挙動制御のスピン抑制制御により牽引車両の右前輪に制動力が付加されている状況を示す平面図である。
図6】従来の連結車両(A)及び実施形態が適用された連結車両(B)について、左旋回時に挙動制御のドリフトアウト抑制制御により牽引車両の左右の後輪に制動力が付加されている状況を示す平面図である。
図7】左旋回時に挙動制御のスピン抑制制御により牽引車両の右前輪に制動力が付加された場合におけるヒッチ角φの変化を、従来の連結車両の場合(破線)及び実施形態の場合(実線)について示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0026】
図1において、実施形態にかかる制動制御装置10は、牽引車両100と、上方から見て牽引車両に対し枢動可能に連結装置102によって牽引車両に連結された被牽引車両104とよりなる連結車両106に適用されている。制動制御装置10は、制動装置14と、制動装置を制御する制御ユニットとして機能する電子制御装置16とを有している。なお、以下の説明及び図1においては、「電子制御装置」は「ECU」と表記される。
【0027】
制動装置14は、牽引車両100の左右の前輪12FL、12FR及び左右の後輪12RL及び12RRに制動力を付与すると共に、被牽引車両104の左右輪12L及び12Rに制動力を付与する。図示の実施形態においては、被牽引車両104の車輪は一組の左右輪12L及び12Rであるが、被牽引車両は複数組の左右輪を有していてもよい。なお、牽引車両100の前輪及び後輪の少なくとも一方は、駆動輪であり、被牽引車両104の左右輪12L及び12Rは、非操舵従動輪である。
【0028】
連結装置102は、牽引車両100の後端中央に設けられたヒッチ108と、被牽引車両104の前端中央に設けられたブラケット110と、ヒッチ108及びブラケット110を連結するキングピン112とを含んでいる。キングピン112は上下方向に延在する枢軸線114を有し、牽引車両100及び被牽引車両104は枢軸線114の周りに互いに他に対し枢動可能である。連結装置102は、必要に応じて牽引車両100及び被牽引車両104の連結を解除し得るよう構成されている。
【0029】
牽引車両100は、左右の前輪12FL及び12FRを転舵する操舵装置18を有している。操舵装置18は、運転者によるステアリングホイール20の操作に応答して駆動されるラックアンドピニオン装置22によりタイロッド24L及び24Rを介して左右の前輪12FL及び12FRを転舵する。図1には示されていないが、操舵装置18はパワーステアリング装置を含んでいてよい。
【0030】
図1に示されているように、操舵装置18のステアリングシャフト28には該シャフトの回転角度を操舵角θとして検出する操舵角センサ30が設けられている。操舵角センサ30は牽引車両100の直進に対応する操舵角を0とし、左旋回方向及び右旋回方向の操舵角をそれぞれ正の値及び負の値として操舵角θを検出する。
【0031】
制動装置14は、油圧回路36と、牽引車両100の車輪12FL、12FR、12RL及び12RRにそれぞれ設けられたホイールシリンダ38FL、38FR、38RL及び38RRと、マスタシリンダ42と、を含んでいる。マスタシリンダ42は、運転者によるブレーキペダル40の踏み込み操作に応答してブレーキオイルを圧送する。図1には示されていないが、油圧回路36は、リザーバ、オイルポンプ、種々の弁装置などを含み、ブレーキアクチュエータとして機能する。
【0032】
更に、制動装置14は、被牽引車両104の左右輪12L及び12Rに設けられたホイールシリンダ38L及び38Rを含んでいる。ホイールシリンダ38L及び38Rに接続された導管44L及び44Rは、それぞれコネクタ46L及び46Rにより、油圧回路36に接続された導管48L及び48Rと接続解除可能に接続されている。
【0033】
ホイールシリンダ38FL〜38RR、38L及び38R内の圧力は、通常時には運転者によるブレーキペダル40の踏み込みに応じて駆動されるマスタシリンダ42内の圧力、即ちマスタシリンダ圧力Pmに応じて制御される。更に、各ホイールシリンダ38FL〜38RR、38L及び38R内の圧力は、必要に応じて油圧回路36のオイルポンプ及び種々の弁装置がECU16によって制御されることにより、運転者によるブレーキペダル40の踏み込み量に関係なく制御される。よって、制動装置14は、牽引車両100の車輪12FL〜12RLの制動力を相互に独立に制御可能であり、車輪12FL〜12RRの制動力とは独立に被牽引車両104の左右輪12L及び12Rの制動力を制御可能である。
【0034】
マスタシリンダ42にはマスタシリンダ圧力Pmを検出する圧力センサ50が設けられており、圧力センサ50により検出されたマスタシリンダ圧力Pmを示す信号は、ECU16へ入力される。ECU16は、マスタシリンダ圧力Pmに基づいて各車輪の制動圧、即ちホイールシリンダ38FL〜38RR、38L及び38R内の圧力を制御し、これにより各車輪の制動力をブレーキペダル40の踏み込み操作量、即ち運転者の制動操作量に応じて制御する。この場合、連結装置102を介して牽引車両100と被牽引車両104との間に過大な力が作用しないよう、被牽引車両の車輪12L及び12Rの制動力は、連結装置102における牽引車両100及び被牽引車両104の減速度が実質的に同一になるよう制御される。
【0035】
ECU16には、操舵角センサ30及びヨーレートセンサ52からそれぞれ操舵角θ及び牽引車両100の実ヨーレートYRfを示す信号が入力される。更に、ECU16には、車速センサ54及び横加速度センサ56からそれぞれ牽引車両100の車速V及び横加速度Gyを示す信号が入力される。ヨーレートセンサ52及び横加速度センサ56は、操舵角センサ30と同様に、それぞれ牽引車両100の直進に対応するヨーレート及び横加速度を0とし、左旋回方向及び右旋回方向のヨーレート及び横加速度をそれぞれ正の値及び負の値として実ヨーレートYRf及び横加速度Gyを検出する。
【0036】
図示の実施形態においては、被牽引車両104にもヨーレートセンサ58が設けられている。ヨーレートセンサ58は、被牽引車両104の直進に対応するヨーレートを0とし、左旋回方向及び右旋回方向のヨーレートをそれぞれ正の値及び負の値として実ヨーレートYRrを検出する。被牽引車両104の実ヨーレートYRrを示す信号もECU16へ入力される。
【0037】
後に詳細に説明するように、ECU16は、牽引車両100の旋回挙動が悪化し、挙動制御による制動力の付加が必要であるか否かを判定する。この判定は、スピン状態(過大なオーバーステア状態)及びドリフトアウト状態(過大なアンダーステア状態)について行われる。そしてECU16は、挙動制御による制動力の付加が必要であると判定したときには、牽引車両100の所定の車輪に制動力を付加して車両の旋回挙動を安定化させる挙動制御、即ちスピン抑制制御又はドリフトアウト抑制制御を行う。
【0038】
特に、スピン抑制制御においては、少なくとも旋回外側前輪に制動力が付与され又は旋回外側前輪の制動力が増大されることにより、車両に旋回抑制方向のヨーモーメントが付与されると共に車両が減速される。また、ドリフトアウト抑制制御においては、少なくとも左右後輪に制動力が付与され又は少なくとも左右後輪の制動力が増大されることにより、車両が減速される。また、旋回内側後輪の制動力が旋回外側後輪の制動力よりも高くされることにより、車両に旋回促進方向のヨーモーメントが付与される。
【0039】
更に、ECU16は、挙動制御による制動力の付加を行っているときには、挙動制御により牽引車両100の所定の車輪に付加される制動力に応じた制動力が被牽引車両104の車輪12L及び12Rに付加されるように、制動装置14を制御する。特に、ECU16は、挙動制御により所定の車輪に付加される制動力に起因して牽引車両100が連結装置102を介して被牽引車両104にその前後方向(図1において矢印Aにて示された方向)に及ぼす作用力Fvfr(図4乃至図6参照)を推定する。更に、ECU16は、車輪12L及び12Rに付加される制動力Fla及びFraがFxfr/2になり、それらの和Fla+FraがFxfrになるように、制動装置14によって車輪12L及び12Rの制動力Fl及びFrを制御する
【0040】
なお、図1には詳細に示されていないが、ECU16は、マイクロコンピュータ及び駆動回路を含んでおり、マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM及び入出力ポート装置を有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的な構成を有している。特に、マイクロコンピュータのROMは、後述の図2に示されたフローチャートに対応する被牽引車両104の車輪12L及び12Rの制動力を制御するためのプログラム及び図3に示されたフローチャートに対応する挙動制御のプログラムを記憶している。CPUはこれらのプログラムを実行することにより、車輪12L及び12Rの制動力の制御及び挙動制御を行う。
【0041】
なお、ECU16は、相互に情報を通信する複数のマイクロコンピュータを含み、図2に示されたフローチャートに対応するプログラム及び図3に示されたフローチャートに対応するプログラムが、それぞれ対応するマイクロコンピュータにより達成されてもよい。
【0042】
<被牽引車両の制動力制御>
次に、図2に示されたフローチャート及び図4に示された左旋回時の連結車両106の平面図を参照して実施形態における被牽引車両104の車輪の制動力制御ルーチンについて説明する。なお、図2に示されたフローチャートによる制御(「制動力制御」という)は、図には示されていないイグニッションスイッチがオンであるときにECU16のマイクロコンピュータによって所定の時間毎に繰返し実行される。
【0043】
まず、ステップ10においては、牽引車両100の所定の車輪に挙動制御による制動力の付加が行われているか否かの判別が行われる。肯定判別が行われたときには、制動力制御はステップ30へ進み、否定判別が行われたときには、挙動制御はステップ20へ進む。なお、牽引車両100の車輪に制動力が付与されていても、制動力の付与が挙動制御によるものではなく、運転者の制動操作又は挙動制御以外の車両制御によるものである場合には、否定判別が行われる。
【0044】
ステップ20においては、被牽引車両104の車輪12L及び12Rに制動力を付加する必要がないので、車輪12L及び12Rの目標付加制動力Flat及びFratが0に設定され、その後制動力制御はステップ80へ進む。
【0045】
ステップ30においては、後述の図3に示されたフローチャートに従って制御される所定の車輪の制動力に基づいて、牽引車両100の車輪12FL〜12RRの制動力Fxi(i=fl、fr、rl及びrr)が演算される。また、当技術分野において公知の要領にて車輪12FL〜12RRの横力Fyi(i=fl、fr、rl及びrr)が演算される。なお、挙動制御による制動力が付加されていない車輪の制動力は、たとえその車輪が制動されていても0に演算される。また、横力Fyiは、挙動制御により所定の車輪に制動力が付加されているときの各車輪の横力である。
【0046】
ステップ40においては、下記の式(1)に従って車輪12FL〜12RRの制動力Fxi及び横力Fyiに起因して重心Ogの周りに作用するヨーモーメントMyvscが演算される。なお、図4に示されているように、下記の式(1)において、Dは牽引車両100のトレッドであり、Lf及びLrはそれぞれ牽引車両100の重心Ogと前輪及び後輪の車軸との間の距離である。
Myvsc=D(Fyfl+Fyrl−Fyfr−Fyrr)/2
+Lr(Fyrl+Fyrr)−Lf(Fyfl+Fyfr) (1)
【0047】
ステップ50においては、牽引車両100の実ヨーレートYRf及び被牽引車両104の実ヨーレートYRrに基づいて、下記の式(2)に従って連結車両106のヒッチ角φが演算される。
φ=∫(YRf−YRr)dt (2)
【0048】
なお、ヒッチ角φは、図4に示されているように、上方から見て牽引車両100の前後方向の中心線116及び被牽引車両104の前後方向の中心線118の前後方向がなす角度であり、当技術分野において公知の任意の要領にて演算されてよい。例えば、公知の要領として、米国特許公開第20140288769A1号公報、米国特許第7904222B2号公報、及び米国特許第9290204B2号公報に記載された要領がある。
【0049】
ステップ60においては、Ifを牽引車両100のヨー慣性モーメントとし、Lhを牽引車両100の重心Ogと連結装置102の枢軸線114との間の距離とし、YRfdを実ヨーレートYRfの時間微分値として、下記の式(3)に従って作用力Fvfrが演算される。
Fxfr=(If・YRfd−Myvsc)/(Lh・sinφ) (3)
【0050】
ステップ70においては、被牽引車両104の車輪12L及び12Rの目標付加制動力Flat及びFratがFxfr/2に設定される。
【0051】
ステップ80においては、被牽引車両104の車輪12L及び12Rの付加制動力Fla及びFraがステップ20又は70において設定された目標付加制動力Flat及びFratになるよう、制動装置14によって車輪12L及び12Rの制動力Fl及びFrが制御される。
【0052】
<挙動制御>
次に、図3に示されたフローチャートを参照して実施形態における挙動制御ルーチンについて説明する。なお、図3に示されたフローチャートによる制御(単に「挙動制御」という)も、図には示されていないイグニッションスイッチがオンであるときに、ECU16のマイクロコンピュータによって所定の時間毎に繰返し実行される。
【0053】
まず、ステップ110においては、図2に示されたフローチャートのステップ10と同様に、牽引車両100の所定の車輪に挙動制御による制動力の付加が行われているか否かの判別が行われる。否定判別が行われたときには、挙動制御はステップ140へ進み、肯定判別が行われたときには、挙動制御はステップ120へ進む。
【0054】
ステップ120においては、挙動制御による制動力付加の終了条件が成立しているか否かの判別が行われる。否定判別が行われたときには挙動制御はステップ150へ進み、肯定判別が行われたときには挙動制御はステップ130へ進む。なお、終了条件は、「後述のスピン状態量SSが制御終了基準値SSe(正の定数)以下になった」などのように、予め設定されてROMに格納されている。
【0055】
ステップ130においては、挙動制御による制動力の付加が行われている所定の車輪の制動圧が漸減され、これにより挙動制御による所定の車輪に対する制動力の付加が終了される。
【0056】
ステップ140においては、挙動制御による制動力付加の許可条件が成立しているか否かの判別が行われる。否定判別が行われたときには挙動制御による制動力の付加が行われることなく挙動制御は一旦終了し、肯定判別が行われたときには挙動制御はステップ150へ進む。なお、許可条件は、「車速Vが許可判定の基準値Ve(正の定数)以上である」のように、予め設定されてROMに格納されている。
【0057】
ステップ150においては、牽引車両100のスピンの程度を示すスピン状態量SSが演算される。なお、スピン状態量SSは、当技術分野において公知の任意の要領にて演算されてよい。
【0058】
ステップ160においては、例えばスピン状態量SSが制御開始基準値SSs(SSe以上の正の定数)以上であるか否かの判別により、スピン抑制制御が実行される必要があるか否かの判別が行われる。否定判別が行われたときにはスピン抑制制御が実行されることなく挙動制御はステップ180へ進み、肯定判別が行われたときには挙動制御はステップ170へ進む。
【0059】
ステップ170においては、牽引車両100のヨーレートを低減すると共に牽引車両100を減速することにより牽引車両のスピンの程度を低減するスピン抑制制御が実行される。例えば、スピン状態量SSが大きいほど大きくなるよう所定の車輪である旋回外側前輪の目標付加制動力が演算され、旋回外側前輪の付加制動力が目標付加制動力になるように旋回外側前輪の制動圧が制御される。よって、旋回外側前輪に制動力が付加されるが、他の車輪には制動力は付加されない。
【0060】
ステップ180においては、牽引車両100のドリフトアウトの程度を示すドリフトアウト状態量DSが演算される。なお、ドリフトアウト状態量DSも、当技術分野において公知の任意の要領にて演算されてよい。
【0061】
ステップ190においては、例えばドリフトアウト状態量DSが制御開始基準値DSs(正の定数)以上であるか否かの判別により、ドリフトアウト抑制制御が実行される必要があるか否かの判別が行われる。否定判別が行われたときにはドリフトアウト抑制制御が実行されることなく挙動制御は一旦終了し、肯定判別が行われたときには挙動制御はステップ200へ進む。
【0062】
ステップ200においては、牽引車両100のヨーレートを増大させるヨーモーメントを牽引車両に付与すると共に牽引車両を減速させることにより牽引車両のドリフトアウトの程度を低減するドリフトアウト抑制制御が実行される。例えば、ドリフトアウト状態量DSが大きいほど大きくなるよう所定の車輪である旋回外側後輪及び旋回内側後輪の目標付加制動力が演算される。そして旋回外側後輪及び旋回内側後輪の付加制動力がそれぞれ対応する目標付加制動力になるようにそれらの車輪の制動圧が制御される。この場合、旋回外側後輪及び旋回内側後輪に制動力が付加されるが、他の車輪には制動力は付加されない。
【0063】
なお、挙動制御によるスピン抑制制御及びドリフトアウト抑制制御及びそれらの制動力の付加は、当技術分野において公知の任意の要領にて行われてよい。例えば、挙動制御によるスピン抑制制御及びドリフトアウト抑制制御の一例が、それぞれオーバーステア制御及びアンダーステア制御として、特開2012−66659号公報に記載されている。
【0064】
<実施形態の作動>
次に、以上の通り構成された制動制御装置10の作動を、牽引車両100が左旋回時にスピン状態になった場合及びドリフトアウト状態になった場合について、それぞれ図5及び図6を参照して説明する。なお、図5及び図6においては、それぞれ牽引車両100のスピン状態及びドリフトアウト状態が解り易くなるよう、運転者の制動操作又は挙動制御以外の車両制御により付与される制動力は省略されている。また、図には示されていないが、牽引車両100が右旋回する際の制動制御装置10の作動は、左右などの方向が逆である点を除き、牽引車両100が左旋回する場合の作動と同様である。
【0065】
<スピン状態時の作動>
図5に示されているように、連結車両106の左旋回中に後輪12RL及び12RRの横力Fyrl及びFyrrが低下し、牽引車両100にスピンモーメントMspinが作用すると、ヨーレートYRfの大きさが過大になることにより、牽引車両はスピン状態になる。
【0066】
そのため、図3に示されたフローチャートのステップ110及び140においてそれぞれ否定判別及び肯定判別が行われ、その後ステップ110及び120においてそれぞれ肯定判別及び否定判別が行われる。ステップ160において肯定判別が行われ、ステップ170においてスピン抑制制御が実行される。よって、スピンモーメントMspinに対抗するスピン抑制モーメントが発生すると共に牽引車両が減速されるよう、所定の車輪である旋回外側前輪、即ち右前輪に制動力Fxfrが付加される。
【0067】
そのため、牽引車両100がスピン状態になく、右前輪に制動力が付加されない場合に比して、牽引車両100が被牽引車両104に対し減速し、牽引車両100が連結装置102を介して被牽引車両104にその前後方向に及ぼす力が増大する。この増大する力、即ち作用力Fvfrに対する反力Fvrfが、被牽引車両104から連結装置102を介して牽引車両100の後端に斜め前方へ向けて作用する。作用力Fvfr及び反力Fvrfは大きさが同一で方向が逆である。
【0068】
図5(A)に示されているように、反力Fvrfは軸線118に沿って作用するので、重心Ogの周りにスピンモーメントMspinと同一方向のヨーモーメントMrfを発生する。従って、従来の連結車両においては、反力Fvrfに起因するヨーモーメントMrfによってヒッチ角φが増大され、ヒッチ角が過大になる虞がある。
【0069】
これに対し、実施形態においては、図2に示されたフローチャートのステップ10において肯定判別が行われ、ステップ30〜60において作用力Fvfrが演算され、ステップ70及び80において、被牽引車両104の車輪12L及び12Rに付加される制動力がFxfr/2になるよう制御される。よって、図5(B)に示されているように、連結装置102には車輪12L及び12Rの制動力の和であるFxfrが軸線118に沿って後ろ向きに作用する。
【0070】
従って、牽引車両100が連結装置102を介して被牽引車両104に及ぼす作用力Fvfr及びその反力Fvrfは0になるので、重心Ogの周りにスピンモーメントMspinと同一方向に作用するヨーモーメントMrfも0になる。よって、実施形態によれば、スピン抑制制御により旋回外側前輪に制動力が付加される場合にも、旋回外側前輪に制動力が付加されることに起因してヒッチ角φが増大して過大になることを防止することができる。
【0071】
例えば、図7は連結車両106が直進状態から定常の左旋回状態へ移行する状況について、ヒッチ角φ、牽引車両100の右前輪に付加される制動力Fxfr、被牽引車両104の左右輪に付加される制動力の和Fla+Fraの変化の一例を示すタイムチャートである。
【0072】
図7に示されているように、時点t1において操舵角θが一定の増加率13.5deg/sにて増加し始め、時点t2以降は操舵角θが一定の値35degになり、時点t3においてスピン抑制制御が開始されたとする。なお、車速Vは80km/hであり、路面の摩擦係数は0.8(ドライ路面)である。
【0073】
時点t3において、スピン抑制制御により右前輪に付加される制動力Fxfrが急激に増大する。本発明の制動制御装置10が搭載されていない従来の連結車両の場合には、図7において破線にて示されているように、右前輪に制動力が付加されることにより、上述のように作用力Fvfr及び反力Fvrfが発生する。そのため、ヒッチ角φが増大してスピン状態が悪化し、スピン状態量SSが増大するので、右前輪に付加される制動力が増大し、これらの繰り返しによりヒッチ角φが過大になり易い。
【0074】
これに対し、実施形態によれば、右前輪に制動力Fxfrが付加されることにより作用力Fvfrが発生すると、図7において最下段に示されているように、被牽引車両104に作用力Fvfrと同一の制動力Fxfrが作用するよう車輪12L及び12Rに付加される制動力が制御される。図7の第二段において実線にて示されているように、ヒッチ角φは増大せず、スピン状態は治まるので、前輪に付加される制動力Fxfrは漸次減少し、ヒッチ角φは過大にはならない。
【0075】
<ドリフトアウト状態時>
図6に示されているように、連結車両106の左旋回中に前輪12FL及び12FRの横力Fyfl及びFyfr(図示せず)が不足し、牽引車両100のヨーモーメントMyが不足すると、ヨーレートYRfの大きさが過小になることにより、牽引車両はドリフトアウト状態になる。
【0076】
そのため、図3に示されたフローチャートのステップ110及び140においてそれぞれ否定判別及び肯定判別が行われ、その後ステップ110及び120においてそれぞれ肯定判別及び否定判別が行われる。ステップ160において定判別が行われ、ステップ190において肯定判別が行われ、ステップ200においてドリフトアウト抑制制御が実行される。よって、牽引車両が減速されると共に旋回補助方向のヨーモーメントMyaが発生するよう、所定の車輪である左右後輪に制動力Fxrl及びFxrrが付加される。
【0077】
そのため、牽引車両100がドリフトアウト状態になく、左右後輪に制動力が付加されない場合に比して、牽引車両100が連結装置102を介して被牽引車両104にその前後方向に及ぼす力が増大する。この増大する力、即ち作用力Fvfrに対する反力Fvrfが、被牽引車両104から連結装置102を介して牽引車両100に作用する。
【0078】
図6(A)に示されているように、反力Fvrfは軸線118に沿って作用するので、重心Ogの周りに牽引車両100のヨーレートYRfを増大させる方向のヨーモーメントMrfを発生する。従って、従来の連結車両においては、スピン状態の場合と同様に、反力Fvrfに起因するヨーモーメントMrfによって余分なヨーレートが発生され、その結果ヒッチ角φが増大して過大になる虞がある。
【0079】
これに対し、実施形態においては、図2に示されたフローチャートのステップ10において肯定判別が行われ、スピン状態の場合と同様に、ステップ30〜80において被牽引車両104の車輪12L及び12Rに付加される制動力が作用力Fvfrの2分の1になるよう制御される。よって、図6(B)に示されているように、連結装置102には車輪12L及び12Rに付加される制動力の和である制動力Fvfrが軸線118に沿って後ろ向きに作用する。
【0080】
従って、牽引車両100が連結装置102を介して被牽引車両104に及ぼす作用力Fvfrの反力Fvrfは0になるので、牽引車両100のヨーレートYRfを増大させる方向に重心Ogの周りに作用するヨーモーメントMrfも0になる。よって、実施形態によれば、ドリフトアウト抑制制御により左右後輪に制動力が付加される場合にも、左右後輪に制動力が付加されることに起因してヒッチ角φが増大して過大になることを防止することができる。
【0081】
以上の説明から解るように、実施形態によれば、スピン抑制制御又はドリフトアウト抑制制御により所定の車輪に制動力が付加されることに起因して牽引車両100が連結装置102を介して被牽引車両104に及ぼす力Fvfrと同一の制動力が被牽引車両に付加される。よって、所定の車輪に制動力が付加され被牽引車両が連結装置を介して牽引車両の後端を斜め前方へ押圧することに起因して連結車両106のヒッチ角φが過大になることを防止することができる。
【0082】
特に、実施形態によれば、被牽引車両104の車輪12L及び12Rに付加される制動力が作用力Fvfrの2分の1であり、被牽引車両104の制動力が作用力Fvfrと同一になるよう制御される。よって、被牽引車両104の車輪12L及び12Rに付加される制動力が作用力Fvfrの2分の1よりも小さい制動力に制御される場合に比して、連結車両106のヒッチ角φが増大して過大になる虞を効果的に低減することができる。
【0083】
なお、被牽引車両104の制動力が作用力Fvfrを越えると、被牽引車両は連結装置を介して牽引車両を減速させる方向の力を及ぼす。よって、連結車両106のヒッチ角φが減少して過小になる虞があり、また牽引車両100が過剰に減速されることにより、牽引車両の旋回挙動の安定化が適正に行われなくなる虞がある。
【0084】
これに対し、被牽引車両104の制動力が作用力Fvfr以下であれば、牽引車両が過剰に減速されることに起因して牽引車両の旋回挙動の安定化が適正に行われなくなることを回避しつつ、連結車両のヒッチ角が過大になる虞を低減することができる。よって、作用力Fvfrに応じて被牽引車両の車輪12L、12Rに付加される制動力はFxfr/2以下であること、換言すれば被牽引車両に付加される制動力は作用力以下であることが好ましい。
【0085】
また、実施形態によれば、連結車両106のヒッチ角φが演算され、所定の車輪に付加される制動力に起因して牽引車両100の重心Ogの周りに作用するヨーモーメントMyvscが演算され、ヒッチ角及びヨーモーメントに基づいて作用力Fvfrが演算される。よって、例えば所定の車輪に付加される制動力の軸線118に沿う成分として作用力Fvfrが演算される場合に比して、作用力Fvfrを正確に演算し、被牽引車両104の車輪に付加される制動力を適正に制御し、ヒッチ角φが過大になる虞を適正に低減することができる。
【0086】
また、実施形態によれば、作用力Fvfrの演算に供されるヨーモーメントMyvscは、所定の車輪に制動力が付加されているときの牽引車両100の車輪の横力Fyiを考慮して演算される。従って、車輪の横力Fyiを考慮することなくヨーモーメントMyvscが演算される場合に比して、作用力Fvfrを正確に演算し、ヒッチ角φが増大して過大になる虞を適正に低減することができる。
【0087】
更に、実施形態によれば、被牽引車両104の車輪12L及び12Rに付加される制動力は互いに同一である。よって、車輪12L及び12Rに付加される制動力により被牽引車両104にヨーモーメントは与えられない。従って、被牽引車両104の車輪に制動力が付加されることにより、挙動制御により牽引車両100に与えられるべきヨーモーメントが悪影響を受けて挙動制御が適切に行われなくなることを防止することができる。
【0088】
以上においては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0089】
例えば、上述の実施形態においては、挙動制御によって牽引車両100の所定の車輪に制動力が付加されるときには、被牽引車両104の車輪12L及び12Rの制動力がFvfr/2であり、被牽引車両全体の制動力が作用力Fvfrと同一の値になるよう制御される。しかし、被牽引車両104の車輪に作用力Fvfrに応じた制動力が付与される限り、制動力がFvfr/2よりも小さく、被牽引車両全体の制動力が作用力Fvfrより小さくてもよい。その場合にも、挙動制御によって牽引車両100の所定の車輪に制動力が付加される状況において、連結車両106のヒッチ角φが過大になる虞を低減することができる。
【0090】
また、上述の実施形態においては、作用力Fvfrの演算に供されるヨーモーメントMyvscは、所定の車輪に制動力が付加されているときの牽引車両の車輪の横力Fyiを考慮して演算される。しかし、ヨーモーメントMyvscは車輪の横力Fyiを考慮することなく、所定の車輪に付加される制動力のみに基づいて演算されてもよい。
【0091】
また、上述の実施形態においては、被牽引車両104の車輪12L及び12Rの制動力は、互いに同一のFvfr/2になるよう制御される。しかし、被牽引車両104の左右の車輪の制動力は、互いに異なる値になるよう制御されてもよい。その場合、左右の車輪の制動力は、それらの和が作用力Fvfrと同一の値になるよう制御されることが好ましい。
【0092】
また、上述の実施形態においては、被牽引車両104の車輪12L及び12Rの制動力は、牽引車両100の四輪の制動力を制御する制動装置14により制御される。しかし、被牽引車両104の車輪の制動力は、制動装置14とは別の制動装置により制御されてもよい。その場合、別の制動装置もECU16により制御されるが、別の制動装置は牽引車両100の排気ガスの圧力を利用する制動装置のように、油圧式以外の制動装置であってもよい。
【0093】
更に、上述の実施形態においては、挙動制御としてスピン抑制制御及びドリフトアウト抑制制御が行われるようになっているが、スピン抑制制御及びドリフトアウト抑制制御の一方が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0094】
10…制動制御装置、12FL〜12RL,12L,12R…車輪、14…制動装置、16…電子制御装置(ECU)、30…操舵角センサ、52…ヨーレートセンサ、54…車速センサ、56…横加速度センサ、100…牽引車両、102…連結装置、104…被牽引車両、106…連結車両

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7