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特開2019-217826車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-217826(P2019-217826A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/12 20060101AFI20191129BHJP
【FI】
   B60W30/12
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2018-114868(P2018-114868)
(22)【出願日】2018年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 ちひろ
(72)【発明者】
【氏名】新穂 那奈
(72)【発明者】
【氏名】八代 勝也
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA14
3D241BA15
3D241BA55
3D241BB01
3D241BB06
3D241BB16
3D241BB17
3D241BB27
3D241BC01
3D241BC02
3D241CA06
3D241CA08
3D241CA12
3D241CA14
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE03
3D241CE04
3D241CE05
3D241CE08
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DB20Z
3D241DC02Z
3D241DC03Z
3D241DC22Z
3D241DC34Z
3D241DC37Z
3D241DC43Z
3D241DC50Z
3D241DC59Z
3D241DD08Z
3D241DD13Z
(57)【要約】
【課題】安定的な車線変更を実現することができる車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムを提供すること。
【解決手段】自車両の周辺状況を認識する認識部(130)と、前記認識部の認識結果に基づいて前記自車両の加減速および操舵を制御する運転制御部(140、160)と、を備え、前記運転制御部は、前記自車両を車線変更させる場合、一以上のターゲット位置候補から選択したターゲット位置を、前記車線変更の態様に応じた開始時点から、所定条件が満たされる時点までホールドする、車両制御装置(100)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺状況を認識する認識部と、
前記認識部の認識結果に基づいて前記自車両の加減速および操舵を制御する運転制御部と、を備え、
前記運転制御部は、前記自車両を車線変更させる場合、一以上のターゲット位置候補から選択したターゲット位置を、前記車線変更の態様に応じた開始時点から、所定条件が満たされる時点までホールドする、
車両制御装置。
【請求項2】
前記所定条件は、前記ターゲット位置のスペースが基準よりも狭くなったことを含む、
請求項1記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記所定条件は、前記ターゲット位置に進入する際の制御の基準となる他車両が消失したことを含む、
請求項1または2記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記所定条件は、前記車線変更の態様に応じた開始時点から所定時間が経過したことを含む、
請求項1から3のうちいずれか1項記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記運転制御部は、前記所定時間を、車線変更の進捗度合いに応じて変更する、
請求項4記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記所定条件は、前記ターゲット位置に進入する際の制御の基準となる他車両が前方の進路を譲る動作をしたことを含む、
請求項1から5のうちいずれか1項記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記所定条件は、前記ターゲット位置が前記自車両の前方にある場合において、前記自車両の走行する車線において前記自車両の前方を走行する前走車両と前記自車両との接近程度が基準を満たすこと、および、前記ターゲット位置が前記自車両の後方にある場合において、前記自車両の走行する車線において前記自車両の後方を走行する後続車両と前記自車両との接近程度が基準を満たすことを含む、
請求項1から6のうちいずれか1項記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記運転制御部は、前記ターゲット位置に進入する際の制御の基準となる他車両がセンサの保証範囲外となった場合であっても、前記認識部により少なくとも前記基準となる他車両の一部が認識できている場合、前記ターゲット位置のホールドを解除しない、
請求項1から7のうちいずれか1項記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記運転制御部は、前記ターゲット位置をホールドしている間、他のターゲット位置の設定を禁止する、
請求項1から8のうちいずれか1項記載の車両制御装置。
【請求項10】
コンピュータが、
自車両の周辺状況を認識し、
前記認識の結果に基づいて前記自車両の加減速および操舵を制御し、
前記自車両を車線変更させる場合、一以上のターゲット位置候補から選択したターゲット位置を、前記車線変更の態様に応じた開始時点から、所定条件が満たされる時点までホールドする、
車両制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、
自車両の周辺状況を認識させ、
前記認識の結果に基づいて前記自車両の加減速および操舵を制御させ、
前記自車両を車線変更させる場合、一以上のターゲット位置候補から選択したターゲット位置を、前記車線変更の態様に応じた開始時点から、所定条件が満たされる時点までホールドさせる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両を自動的に制御することについて研究が進められている。これに関連し、自車両の周辺を走行する周辺車両の位置を認識する認識部と、前記自車両が自動的に車線変更を行う車線変更先の車線に、車線変更のターゲット位置を設定するターゲット位置設定部と、前記自車両の側方であって、前記車線変更先の車線上に設定される禁止領域内に前記周辺車両が存在しない第1の条件と、前記自車両と前記ターゲット位置の前後に存在する前記周辺車両との衝突余裕時間が閾値より大きい第2の条件との、一方または双方が満たされる場合に、車線変更が可能であると判定する車線変更可否判定部と、前記車線変更可否判定部により車線変更が可能であると判定された場合に、前記自車両を車線変更先の車線に車線変更させる制御部とを備える車両制御装置の発明が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/141788号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、安定的な車線変更を実現できない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、安定的な車線変更を実現することができる車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1):自車両の周辺状況を認識する認識部と、前記認識部の認識結果に基づいて前記自車両の加減速および操舵を制御する運転制御部と、を備え、前記運転制御部は、前記自車両を車線変更させる場合、一以上のターゲット位置候補から選択したターゲット位置を、前記車線変更の態様に応じた開始時点から、所定条件が満たされる時点までホールドする、車両制御装置。
【0007】
(2):(1)において、前記所定条件は、前記ターゲット位置のスペースが基準よりも狭くなったことを含むもの。
【0008】
(3):(1)または(2)において、前記所定条件は、前記ターゲット位置に進入する際の制御の基準となる他車両が消失したことを含むもの。
【0009】
(4):(1)から(3)のいずれかにおいて、前記所定条件は、前記車線変更の態様に応じた開始時点から所定時間が経過したことを含むもの。
【0010】
(5):(4)において、前記運転制御部は、前記所定時間を、車線変更の進捗度合いに応じて変更するもの。
【0011】
(6):(1)から(5)のいずれかにおいて、前記所定条件は、前記ターゲット位置に進入する際の制御の基準となる他車両が前方の進路を譲る動作をしたことを含むもの。
【0012】
(7):(1)から(6)のいずれかにおいて、前記所定条件は、前記ターゲット位置が前記自車両の前方にある場合において、前記自車両の走行する車線において前記自車両の前方を走行する前走車両と前記自車両との接近程度が基準を満たすこと、および、前記ターゲット位置が前記自車両の後方にある場合において、前記自車両の走行する車線において前記自車両の後方を走行する後続車両と前記自車両との接近程度が基準を満たすことを含むもの。
【0013】
(7):(1)から(7)のいずれかにおいて、前記運転制御部は、前記ターゲット位置に進入する際の制御の基準となる他車両がセンサの保証範囲外となった場合であっても、前記認識部により少なくとも前記基準となる他車両の一部が認識できている場合、前記ターゲット位置のホールドを解除しないもの。
【0014】
(9):(1)から(8)のいずれかにおいて、前記運転制御部は、前記ターゲット位置をホールドしている間、他のターゲット位置の設定を禁止するもの。
【0015】
(10):コンピュータが、自車両の周辺状況を認識し、前記認識の結果に基づいて前記自車両の加減速および操舵を制御し、前記自車両を車線変更させる場合、一以上のターゲット位置候補から選択したターゲット位置を、前記車線変更の態様に応じた開始時点から、所定条件が満たされる時点までホールドする、車両制御方法。
【0016】
(11):コンピュータに、自車両の周辺状況を認識させ、前記認識の結果に基づいて前記自車両の加減速および操舵を制御させ、前記自車両を車線変更させる場合、一以上のターゲット位置候補から選択したターゲット位置を、前記車線変更の態様に応じた開始時点から、所定条件が満たされる時点までホールドさせる、プログラム。
【発明の効果】
【0017】
(1)〜(11)によれば、安定的な車線変更を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システム1の構成図である。
図2】第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。
図3】車線変更制御部142により実行される全体的な処理の流れを示すフローチャートである。
図4】ターゲット位置候補cTAの設定について説明するための図である。
図5】自車両Mに最も近い車間領域の定義について例示するための図である。
図6】カーブ路においてターゲット位置候補設定部146により設定される探索範囲および設定範囲の一例を示す図である。
図7】車線変更種別判定部144およびターゲット位置候補設定部146により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】ターゲット位置候補評価部148による前段の処理の流れの一例を示すフローチャートの一部である。
図9】ステップS210の処理について説明するための図である。
図10】ステップS212の処理について説明するための図である。
図11】ステップS214の処理について説明するための図である。
図12】ステップS214の処理について説明するための図である。
図13】ステップS228の処理について説明するための図である。
図14】ターゲット位置候補評価部148による前段の処理の流れの一例を示すフローチャートの一部である。
図15】ターゲット位置候補評価部148による前段の処理の流れの一例を示すフローチャートの一部である。
図16】ステップS260の処理について説明するための図である。
図17】ターゲット位置候補cTA[i]が自車両Mよりも前方にある場合において、演算の指針となる基準車両m[i+1]および自車両Mの縦方向の変位の時間的変化を示す図である。
図18】前減速モードの場合において、演算の指針となる基準車両m[i]および自車両Mの縦方向の変位の時間的変化を示す図である。
図19】ターゲット位置候補cTA[i]が自車両Mよりも後方にある場合において、演算の指針となる基準車両m[i]および自車両Mの縦方向の変位の時間的変化を示す図である。
図20】ターゲット位置候補評価部148により実行される後段の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図21】ターゲット位置決定部150により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図22】残距離計算部150Aによる処理の内容の一例を示すフローチャートである。
図23】残距離計算部150Aの処理について説明するための図である。
図24】ターゲット位置決定部150により実行される総合評価値f(i)の算出処理の流れの一例を示す図である。
図25】第1目標速度VM1と第2目標速度VM2の関係を示す図である。
図26】横方向の進捗率PRyの決定手法について説明するための図である。
図27】縦方向の位置合わせが不要な場合における割合ratioの推移の第1例を示す図である。
図28】ターゲット位置TAが自車両Mの前方にある場合における縦方向の進捗率PRxの決定手法について説明するための図である。
図29】ターゲット位置TAが自車両Mの後方にある場合における縦方向の進捗率PRxの決定手法について説明するための図である。
図30】縦方向の位置合わせが必要な場合における割合ratioの推移の第1例を示す図である。
図31】縦方向の位置合わせが不要な場合における割合ratioの推移の第2例を示す図である。
図32】縦方向の位置合わせが必要な場合における割合ratioの推移の第2例を示す図である。
図33】縦方向の位置合わせが不要な場合における割合ratioの推移の第3例を示す図である。
図34】縦方向の位置合わせが必要な場合における割合ratioの推移の第3例を示す図である。
図35】車線変更の進捗を時間の経過に従って例示した図である。
図36】ホールド解除判定部152Aにより実行される処理の流れの一例を示すフローチャートの一部である。
図37】ホールド解除判定部152Aにより実行される処理の流れの一例を示すフローチャートの一部である。
図38】ホールド解除判定部152Aにより実行される処理の流れの一例を示すフローチャートの一部である。
図39】参照車両の消失およびターゲット位置TAへの割り込みと、ホールドとの関係を説明するための図である。
図40】参照車両の消失およびターゲット位置TAへの割り込みと、ホールドとの関係を説明するための図である。
図41】参照車両の消失およびターゲット位置TAへの割り込みと、ホールドとの関係を説明するための図である。
図42】実施形態の自動運転制御装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0020】
[全体構成]
図1は、実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0021】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、ファインダ14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0022】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、自車両M)の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0023】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0024】
ファインダ14は、LIDAR(Light Detection and Ranging)である。ファインダ14は、自車両Mの周辺に光を照射し、散乱光を測定する。ファインダ14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。ファインダ14は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0025】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。車両システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。
【0026】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi−Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0027】
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0028】
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0029】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0030】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0031】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0032】
運転操作子80は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール、異形ステア、ジョイスティック、ウインカレバー、マイク、各種スイッチなどを含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。
【0033】
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160とを備える。第1制御部120と第2制御部160は、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD−ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装置に装着されることで自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0034】
図2は、第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140とを備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
【0035】
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体には、他車両が含まれる。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0036】
また、認識部130は、例えば、自車両Mが走行している車線(走行車線)を認識する。例えば、認識部130は、第2地図情報62から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。なお、認識部130は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、認識部130は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識する。
【0037】
認識部130は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する自車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部130は、例えば、自車両Mの代表点の車線中央からの乖離、および自車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する自車両Mの相対位置および姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部130は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線または道路境界)に対する自車両Mの代表点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0038】
認識部130は、更に、カーブ路予測部131と、カーブ曲率取得部132と、位置関係認識部133と、認識精度導出部134と、走行台数認識部135と、車線変更成功確率認識部136とを備えてよい。
【0039】
カーブ路予測部131は、例えば、ナビゲーション装置50により導出される自車両Mの位置と第2地図情報62とを参照し、自車両Mの進行先におけるカーブ路の有無と、カーブ路が自車両Mから見て何[m]先に存在するかを予測する。
【0040】
カーブ曲率取得部132は、例えば、ナビゲーション装置50により導出される自車両Mの位置と第2地図情報62とを参照し、自車両Mが走行している道路の曲率を取得する。また、カーブ曲率取得部132は、カメラ10の撮像画像における道路区画線の位置に基づいて、自車両Mが走行している道路の曲率を取得してもよい。
【0041】
位置関係認識部133は、行動計画生成部140の車線変更制御部142からの依頼に応じて起動し、比較対象の他車両mが、自車両Mよりも前方にあるか、後方にあるかを認識する。
【0042】
認識精度導出部134は、物体の位置、道路区画線の位置などの認識処理において、その時点における認識精度を導出し、認識精度情報として行動計画生成部140に出力する。例えば、認識精度導出部134は、一定期間の制御サイクルの中で、道路区画線を認識できた頻度に基づいて、認識精度情報を生成する。また、認識精度情報は、認識処理の結果と地図との比較によって生成されてよい。例えば、第2地図情報62を参照し、カメラ10によって撮像可能な位置に一時停止位置や交差点、右左折路など(「特定の道路事象」の一例)があるにも関わらず、カメラ10の撮像画像からそれらが認識できない場合に、認識精度が低下したことを示す認識精度情報を生成してもよい。認識精度情報は、例えば、「高」、「中」、「低」の三段階で認識精度を表現した情報である。
【0043】
走行台数認識部135は、自車両Mの周辺における所定範囲を走行する他車両の台数を認識する。
【0044】
車線変更成功確率認識部136は、自車両Mが走行している道路における車線変更の成功確率を認識する。車線変更成功確率認識部136は、自車両Mが走行している際にカメラ10などで検出された他車両の車線変更に基づいて車線変更の成功率を計算してもよいし、予め車外設備によってプローブカーからの情報に基づいて計算された値を、通信装置20によって取得してもよい。
【0045】
行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0046】
行動計画生成部140は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してよい。自動運転のイベントには、定速走行イベント、所定車速(例えば60[km])以下で前走車両に追従して走行する低速追従走行イベント、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベント、テイクオーバーイベントなどがある。行動計画生成部140は、起動させたイベントに応じた目標軌道を生成する。
【0047】
行動計画生成部140は、車線変更イベントを制御する車線変更制御部142を備える。車線変更イベントは、例えば、自車両Mにおける第1運転状態においてのみ起動する。第1運転状態とは、少なくとも運転者に前方注視のタスクが課される運転状態である。また、第1運転状態において、必要に応じてステアリングホイール把持のタスクが運転者に課されてもよい。第2運転状態とは、運転者に課されるタスクが第1運転状態よりも低減される運転状態であり、例えば前述した定速追従走行イベントを含む。第2運転状態において、車線変更イベントは起動しない。これは、車線変更の際には運転者が自車両Mの周辺に注意を払い、手動運転への切り替わりに備える必要があるからである。なお、車線変更を含めたあらゆる場面で運転者に課されるタスクが低減される場合、車線変更イベントは、運転状態に拘わらず起動してもよい。
【0048】
車線変更制御部142は、例えば、車線変更種別判定部144と、ターゲット位置候補設定部146と、ターゲット位置候補評価部148と、ターゲット位置決定部150と、車線変更実行部152とを備える。ターゲット位置候補評価部148は、例えば、演算種別選択部148Aと、演算実行部148Bとを備える。ターゲット位置決定部150は、例えば、イベント残距離計算部150Aと、運転者傾向学習部150Bとを備える。車線変更実行部152は、例えば、ホールド解除判定部152Aと、速度決定部152Bと、操舵角決定部152Cとを備える。これらの機能部の機能については後述する。
【0049】
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。
【0050】
第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0051】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECUとを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0052】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0053】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0054】
[車線変更制御]
以下、車線変更制御部142により実行される車線変更制御について、より詳細に説明する。図3は、車線変更制御部142により実行される全体的な処理の流れを示すフローチャートである。
【0055】
まず、ターゲット位置候補設定部146が、ターゲット位置候補を設定する(ステップS100)。次に、ターゲット位置候補評価部148が、ターゲット位置候補のそれぞれを複数の指標で評価する(ステップS200)。次に、ターゲット位置決定部150が、ターゲット位置を決定する(ステップS300)。なお、後述する(B)および(C)の種別の車線変更が行われる場合、ステップS200の処理において、「その時点で車線変更不可」かどうか判定する処理のみが行われ、「その時点で車線変更不可」でないと判定された場合に、ステップS300の処理において、ターゲット位置候補がターゲット位置として決定される。そして、車線変更実行部152が、ターゲット位置に向けて車線変更を実行する(ステップS400)。全てのターゲット位置候補が「その時点で車線変更不可」と判定された場合、ステップS400の処理は行われない。詳細については以降で順次説明する。なお、車線変更の実行中にターゲット位置のホールド解除判定が行われ、少なくともターゲット位置(場合によってはターゲット位置候補)の再決定が行われる場合がある。
【0056】
[ターゲット位置候補の設定]
ターゲット位置候補設定部146は、車線変更種別判定部144の判定結果に基づいてターゲット位置候補を設定する。図4は、ターゲット位置候補cTAの設定について説明するための図である。図4の例において、自車両Mは、車線L1を走行しており、車線L2に車線変更しようとしている。車線L2には、車線変更の制御において監視対象となる他車両m1、m2、m3、m4が走行している。以下、自車両Mが走行している車線を自車線と称する場合がある。
【0057】
ターゲット位置候補cTA[i]は、ターゲット位置TAの候補となる位置である(i=0,1,…)。ターゲット位置TAは、車線変更先の車線を走行する他車両との関係で定められる相対的な位置である。以下の説明において、引数iは、数字が小さいほど前方を走行していることを示すものとする。
【0058】
ターゲット位置候補cTA[i]は、「他車両m[i]と他車両m[i+1]との間の位置(車間領域)」である。なお、監視対象の他車両のうち最も前方を走行している他車両m[1]よりも前方の領域を、cTA[0]で表す。また、監視対象となる他車両m[i+1]が存在しない場合、cTA[i]は、単に他車両m[i]の後方の位置という意味を持つものとする。
【0059】
車線変更種別判定部144は、車線変更イベントが起動した事由に基づいて、車線変更の種別が以下のいずれであるかを判定する。
(A):地図上経路(推奨経路)に従うための車線変更(予め定められた経路に沿って走行するための車線変更(第1種別)
(B):前走車両を追い越すための車線変更(第2種別)
(C):乗員(運転者)からの要求による車線変更(LCA;Lane Change Assist)(第3種別)
【0060】
車線変更制御部142は、地図上経路に基づいて推奨車線が切り替わったタイミングで、(A)の車線変更を行う。また、車線変更制御部142は、自車両Mの速度が、隣接車線(例えば、図4の車線L2)上の車両の平均速度に比して所定速度以上遅い場合に、(B)の車線変更を行う。この場合において、隣接車線が二つ存在する場合、車線変更制御部142は、隣接車線のうち追越車線を車線変更先の車線とする。また、車線変更制御部142は、運転車による車線変更を指示する動作に応じて(C)の車線変更を行う。運転車による車線変更を指示する動作とは、例えば、ウインカレバーを車線変更させたい方向に指示する動作、音声で「右」「左」といった車線変更させたい方向を指示する動作などである。後者の場合、車線変更制御部142は、マイクにより収音された音声を認識して運転車による車線変更を指示する動作であることを認識する。車線変更種別判定部144は、これらのいずれによって車線変更イベントが起動したのかを判定する。
【0061】
そして、ターゲット位置候補設定部146は、車線変更種別判定部144により判定された車線変更の種別に応じて、ターゲット位置候補の設定規則を可変にする。
【0062】
例えば、ターゲット位置候補設定部146は、車線変更の種別が(A)である場合、図4に示すような複数のターゲット位置候補cTAを設定可能な範囲で、ターゲット位置候補cTAを設定する。また、ターゲット位置候補設定部146は、車線変更の種別が(B)または(C)である場合、自車両Mに最も近い車間領域を、ターゲット位置候補cTAとする。車間領域とは、間に車両が存在しない状態で、同じ車線上を同じ方向に走行している二つの車両の間の領域である。
【0063】
また、ターゲット位置候補設定部146は、特に車線変更の種別が(A)である場合、複数のターゲット位置候補cTAを設定可能な範囲でターゲット位置候補cTAを設定できるように、隣接車線における探索範囲を設定する。探索範囲とは、カメラ10、レーダ装置12、ファインダ14、物体認識装置16などにより検出される物体のうち、ターゲット位置候補を設定する際に考慮する物体の空間上の範囲である。換言すると、ターゲット位置候補設定部146は、探索範囲外の物体に関しては、仮にカメラ10、レーダ装置12、ファインダ14、物体認識装置16などにより検出された物体であってもターゲット位置候補を設定する際に考慮しない。
【0064】
ここで、(B)または(C)の車線変更を行う場合の「自車両Mに最も近い車間領域」について定義する。図5は、自車両Mに最も近い車間領域の定義について例示するための図である。ターゲット位置候補設定部146は、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)RPと、自車両Mに最も近い他車両m[i]の代表点(同上)RPm[i]との関係が、道路の延在方向(図中、X方向;以下、「縦方向」と称し、道路幅方向(図中:Y方向)を横方向と称する)に関して、代表点RPが代表点RPm[i]よりも前であれば他車両m[i]の後ろにターゲット位置候補cTAを設定し、代表点RPが代表点RPm[i]よりも後ろであれば他車両m[i]の前にターゲット位置候補cTAを設定する。
【0065】
このように、ターゲット位置候補設定部146は、車線変更種別判定部144により判定された車線変更の種別に応じて、ターゲット位置候補の設定規則を可変にする。これによって、車線変更の必要度に応じた車線変更制御を実現することができる。
【0066】
(A)の地図上経路(推奨経路)に従うための車線変更を行う場合、「近い将来、その方向に進行しなければならない」という事情が存在し、隣接車線上の他車両に対して、後述するような縦方向の位置合わせを行ってでも車線変更をする必要があるのであるから、ターゲット位置候補cTAの設定範囲や探索範囲を広めに設定する。これによって、状況に応じて複数のターゲット位置候補cTAを設定できるようにすることができ、より確実に車線変更を行うことができる。
【0067】
一方、(B)または(C)の車線変更を行う場合、そのタイミングで車線変更をする機会を逃したとしても、特段の不都合な状況は発生せず、隣接車線の状況が変わったタイミングで車線変更を実行するトリガが満たされたときに、再度、車線変更を試行すればよいのであるから、ターゲット位置候補cTAの設定範囲や探索範囲を(A)の場合よりも狭く設定する。これによって、不要な位置合わせによって乗員が違和感を覚えるのを抑制することができる。また、(C)の車線変更は、法規によって「所定秒数以内に車線を跨がなければならない」旨が定められている場合があり、それに適合することもできる。
【0068】
また、ターゲット位置候補設定部146は、自車両Mがカーブ路を走行している場合において車線変更をする場合、カーブの内側に車線変更するのか、外側に車線変更するのかに応じて、少なくとも(A)の場合における探索範囲および設定範囲を異なるサイズに設定してもよい。図6は、カーブ路においてターゲット位置候補設定部146により設定される探索範囲および設定範囲の一例を示す図である。図中、自車両M(a)は、車線L3から車線L4に、すなわちカーブの内側に車線変更しようとしている。この場合、ターゲット位置候補設定部146は、直線路を走行している場合よりも探索範囲および設定範囲を小さく設定する。ターゲット位置候補設定部146は、この場合の小さくする程度(縮小率)を、カーブ路の曲率が大きくなる程、大きくしてもよい。図中、DA(a)はカーブの内側に車線変更する場合の探索範囲であり、SA(a)はカーブの内側に車線変更する場合の設定範囲である。
【0069】
また、自車両M(b)は、車線L4から車線L3に、すなわちカーブの外側に車線変更しようとしている。この場合、ターゲット位置候補設定部146は、カーブの内側に車線変更する場合よりも探索範囲および設定範囲を大きく設定する。図中、DA(b)はカーブの外側に車線変更する場合の探索範囲であり、SA(b)はカーブの内側に車線変更する場合の設定範囲である。なお、カーブの外側に車線変更する場合、直線路を走行している場合よりも探索範囲および設定範囲を小さくしてもよいし、同じ程度にしてもよい。小さくする場合、ターゲット位置候補設定部146は、この場合の小さくする程度(縮小率)を、カーブ路の曲率が大きくなる程、大きくしてもよい。
【0070】
(B)または(C)の車線変更を行う場合、カーブ路における探索範囲および設定範囲は、直線路と同等にしてもよいし、そもそもカーブ路において(B)または(C)の種別による車線変更を許容しないものとしてもよい。
【0071】
図7は、車線変更種別判定部144およびターゲット位置候補設定部146により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、車線変更イベントが起動したときに開始される。また、本フローチャートの処理は、図3のフローチャートにおけるステップS100の処理の内容を示している。
【0072】
まず、車線変更種別判定部144が、車線変更の種別を判定する(ステップS102)。車線変更の種別が(A)であると判定された場合、ターゲット位置候補設定部146は、探索範囲と設定範囲を、自車両Mの側方の領域を前後に延伸した範囲に設定する(ステップS104)。次に、ターゲット位置候補設定部146は、自車両Mがカーブ路を走行しているか否かを判定する(ステップS106)。自車両Mがカーブ路を走行していない場合、ターゲット位置候補設定部146は、ステップS104で設定した設定領域内における各車間領域をターゲット位置候補に設定する(ステップS114)。
【0073】
ステップS106で自車両Mがカーブ路を走行していると判定した場合、ターゲット位置候補設定部146は、推奨車線の切り替わりに基づいて、自車両Mがカーブ路の外側に車線変更しようとしているか否かを判定する(ステップS116)。自車両Mがカーブ路の外側に車線変更しようとしている場合、ターゲット位置候補設定部146は、探索範囲と設定範囲を第1の程度で縮小し(ステップS110)、第1の程度で縮小した設定範囲内でターゲット位置候補を設定する(ステップS114)。自車両Mがカーブ路の内側に車線変更しようとしている場合、ターゲット位置候補設定部146は、探索範囲と設定範囲を第2の程度で縮小し(ステップS112)、第2の程度で縮小した設定範囲内でターゲット位置候補を設定する(ステップS114)。前述したように、第2の程度は、第1の程度よりも縮小する度合いが大きいものである。
【0074】
ステップS102で車線変更種別が(B)または(C)であると判定した場合、ターゲット位置候補設定部146は、自車両Mに最も近い車間領域をターゲット位置候補に設定する(ステップS116)。
【0075】
以上説明した車線変更種別判定部144およびターゲット位置候補設定部146の処理によれば、車線変更の種別すなわち目的に応じて、好適な範囲で探索範囲および設定範囲を設定することができる。この結果、乗員にとって違和感の無い車線変更を実現することができる。例えば、地図上経路に従って車線変更する必要がある場合に、自車両Mの側方が空いていないからといって、いつまでも車線変更をしないのでは、乗員が違和感を覚えることが想定されるが、上記の処理によって、このような事態が生じる確率を低減することができる。
【0076】
[ターゲット位置候補の評価(評価値算出)]
以下、上記のように決定されたターゲット位置候補cTAからターゲット位置TAを選択するための処理について説明する。ターゲット位置候補評価部148は、ターゲット位置候補cTAの前方または後方(直前または直後)に存在する他車両mと自車両Mとの位置関係、および速度関係に基づいて、複数の演算種別の中から一つの演算種別を選択し、選択した演算種別で行った演算により、ターゲット位置候補cTAごとに複数の評価値を算出する。なお、複数のターゲット位置候補cTAが設定されるのは、専ら第1種別の車線変更を行う場合であるので、以降の説明は、第1種別の車線変更を行う場合についてのものである。
【0077】
本実施形態において、ターゲット位置候補評価部148は、以下の(1)、および、(2)または(3)の基準に基づいて、ターゲット位置候補cTAごとの車線変更モードを決定する。車線変更モードとは、ターゲット位置候補cTAごとに、どのような挙動でターゲット位置候補cTAに接近するかを定めるものであると共に、ターゲット位置候補評価部148が、そのターゲット位置候補cTAを評価する評価式を決定するものである。また、ターゲット位置候補評価部148は、車線変更モードを決定する処理の中で、「その時点で車線変更不可」と判定されるターゲット位置候補cTAを除外する処理を行う。
(1)ターゲット位置候補cTAが自車両Mよりも前か、真横か、後ろか
(2)(1)の結果およびターゲット位置候補cTAの前後の車両と自車両Mとの速度関係に基づいて定められる基準車両と、自車両Mとの速度関係
(3)ターゲット位置候補cTAの前後の車両と自車両Mとの接近度合いを示す指標値の大きさ
【0078】
図8、14、および15のそれぞれは、ターゲット位置候補評価部148による前段の処理の流れの一例を示すフローチャートの一部である。図8、14、および15、並びに後述する図19のフローチャートの処理は、図3のフローチャートにおけるステップS200の処理の内容を示している。
ターゲット位置候補評価部148は、以下に説明するステップS210〜S230の処理を、各ターゲット位置候補cTA[i]について実行する(i=0,…,n)。
【0079】
まず、ターゲット位置候補評価部148は、車間領域であるターゲット位置候補cTA[i]の車間距離が基準を満たすか否かを判定する(ステップS210)。図9は、ステップS210の処理について説明するための図である。ターゲット位置候補評価部148は、ターゲット位置候補cTA[i]の車間距離(他車両m[i]と他車両m[i+1]の車間距離)が、自車両Mの車長Lに、前方余裕距離gapfrontと後方余裕距離gaprearを加算した距離以上である場合に、ターゲット位置候補cTA[i]の車間距離が基準を満たすと判定する。前方余裕距離gapfrontと後方余裕距離gaprearはそれぞれ式(1)、(2)に基づいて求められる。式中、Vは自車両Mの速度であり、Tfr1、Tre1はそれぞれ所定値である。所定値Tfr1、Tre1は、「車線変更先において前後車両に対して、どれ位の車頭時間が確保できていれば車線変更を実行するか」を示す値であり、一定値であってもよいし、道路の混雑度に基づいて変更されてもよい。例えば、車両の密度が高い道路では所定値Tfr1、Tre1を小さく、車両の密度が低く全体的に高速で走行している道路では所定値Tfr1、Tre1を大きく設定してよい。
【0080】
gapfront=Tfr1×V …(1)
gaprear=Tre1×V …(2)
【0081】
ステップS210において車間距離が基準を満たさないと判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、「その時点でターゲット位置候補cTA[i]への車線変更不可」と判定する(ステップS230)。
【0082】
ステップS210において車間距離が基準を満たすと判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、ターゲット位置候補cTA[i]が、真横に車線変更可能な位置であるか否かを判定する(ステップS212)。「真横に車線変更可能な位置」とは、縦方向の位置合わせをすることなく車線変更を開始可能な位置を意味する。
【0083】
図10は、ステップS212の処理について説明するための図である。図9で説明したステップS210の処理では、自車両Mとターゲット位置候補cTA[i]の前後の他車両m[i]、m[i+1]との位置関係について特段に考慮していないが、ステップS212の処理では、これを考慮する。すなわち、ターゲット位置候補評価部148は、自車両Mの前端と後端を車線変更先の車線(図ではL2)に射影し、射影した前端から前方余裕距離gapfront前方の地点から、射影した後端から後方余裕距離gaprear後方の地点までの領域に他車両mが存在しない場合に、ターゲット位置候補cTA[i]が、真横に車線変更可能な位置であると判定する。
【0084】
図8に戻り、ターゲット位置候補cTA[i]が、真横に車線変更可能な位置であると判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、図14のステップS240に処理を進める。これについては後述する。
【0085】
ターゲット位置候補cTA[i]が、真横に車線変更可能な位置でないと判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、ターゲット位置候補cTA[i]が自車両よりも前方にあるか否かを判定する(ステップS214)。
【0086】
図11および図12は、ステップS214の処理について説明するための図である。図11は、ターゲット位置候補cTA[i]が自車両よりも前方にあると判定される二つのケース(ケース1、ケース2)を示している。ケース1は、ターゲット位置候補cTA[i]の全体が自車両Mよりも前方にあるケースである。ケース2は、ターゲット位置候補cTA[i]の一部が縦方向に関して自車両Mと重なっているが、射影した自車両Mの前端から、自車両Mの後端から後方余裕距離gaprear後方の地点までの領域に他車両m[i+1]の少なくとも一部が存在するケースである。ターゲット位置候補評価部148は、ケース1、ケース2共に、ターゲット位置候補cTA[i]が自車両よりも前方にあると判定する。
【0087】
図12は、ターゲット位置候補cTA[i]が自車両よりも後方にあると判定される二つのケース(ケース3、ケース4)を示している。ケース3は、ターゲット位置候補cTA[i]の全体が自車両Mよりも後方にあるケースである。ケース4は、ターゲット位置候補cTA[i]の一部が縦方向に関して自車両Mと重なっているが、射影した自車両Mの後端から、自車両Mの前端から前方余裕距離gapfront前方の地点までの領域に他車両m[i]の少なくとも一部が存在するケースである。ターゲット位置候補評価部148は、ケース3、ケース4共に、ターゲット位置候補cTA[i]が自車両よりも後方にあると判定する。
【0088】
図8に戻り、ターゲット位置候補cTA[i]が自車両Mよりも後方にあると判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、図15のステップS250に処理を進める。これについては後述する。
【0089】
ターゲット位置候補cTA[i]が自車両Mよりも前方にあると判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、この時点では基準車両(後述)を一つに定めず(のちに車線変更モードに応じて決定される)、他車両m[i+1]との接近度合いを計算する(ステップS216)。接近度合いとは、例えば、TTC(Time To Collision)であり、距離を相対速度で除算して求められる。TTCに代えて、接近度合いを示す任意の指標値が計算されてもよい。なお、TTCは通常、同一車線上にある車両間の関係として求められるものであるが、本実施形態では、自車両Mが車線変更先の車線にいると仮定してTTCを求めるものとする。
【0090】
基準車両とは、評価値を算出するために自車両Mとの速度関係を参照する他車両mである。本実施形態では、自車両Mが前方のターゲット位置TAに車線変更する場合、ターゲット位置TAの直後を走行する他車両mに対して十分な車間距離を維持した状態で車線変更を完了するように自車両Mの速度を制御し、自車両Mが後方のターゲット位置TAに車線変更する場合、ターゲット位置TAの直前を走行する他車両mに対して十分な車間距離を維持した状態で車線変更を完了するように自車両Mの速度を制御する。従って、ターゲット位置候補評価部148は、ターゲット位置候補cTA[i]が自車両Mよりも前方にあると判定した場合、ターゲット位置候補cTA[i]の後方を走行する他車両m[i+1]を基準車両とする。但し、後述する「前減速モード」が採用される場合、ターゲット位置候補評価部148は、ターゲット位置候補cTA[i]の前方を走行する他車両m[i]を基準車両とする。前減速モードとは、減速しながら自車両Mの前方にあるターゲット位置TAに車線変更するモードである。この場合に他車両m[i]を基準車両とするのは、減速しながら自車両Mの前方に車線変更する際に、わざわざ他車両m[i+1]の近傍を通過するような車両挙動を想定するのは不自然だからである。また、ターゲット位置候補評価部148は、ターゲット位置候補cTA[i]が自車両Mよりも後方にあると判定した場合、ターゲット位置候補cTA[i]の前方を走行する他車両m[i]を基準車両とする。なお、ターゲット位置候補cTA[i]が自車両Mよりも前方にあると判定した場合のターゲット位置候補cTA[i]の前方を走行する他車両m[i]、および、ターゲット位置候補cTA[i]が自車両Mよりも前方にあると判定した場合のターゲット位置候補cTA[i]の後方を走行する他車両m[i+1]については、速度制御の基準とするのではなく、ターゲット位置候補cTA[i]の評価の材料とする。
【0091】
次に、ターゲット位置候補評価部148は、接近度合いが基準を満たすか否かを判定する(ステップS218)。例えば、ターゲット位置候補評価部148は、自車両Mと他車両m[i+1]とのTTCが所定値以上である場合に、接近度合いが基準を満たすと判定する。接近度合いが基準を満たさないと判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、「その時点でターゲット位置候補cTA[i]への車線変更不可」と判定する(ステップS230)。
【0092】
接近度合いが基準を満たすと判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、自車両Mの速度Vが基準車両m[i+1]の速度Vm[i+1]未満であるか否かを判定する(ステップS220)。自車両Mの速度Vが基準車両m[i+1]の速度Vm[i+1]未満であると判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、車線変更モードを「加速モード」に決定する(ステップS224)。
【0093】
自車両Mの速度Vが基準車両m[i+1]の速度Vm[i+1]以上であると判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、自車両Mの速度Vが基準車両m[i+1]の速度Vm[i+1]を超えるか否かを判定する(ステップS222)。自車両Mの速度Vが基準車両m[i+1]の速度Vm[i+1]を超えない、すなわち自車両Mの速度Vが基準車両m[i+1]の速度Vm[i+1]と等しいと判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、車線変更モードを「加速モード」に決定する(ステップS224)。
【0094】
自車両Mの速度Vが基準車両m[i+1]の速度Vm[i+1]を超えると判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、車線変更モードを「加速モード」、「等速追い抜きモード」、「前減速モード」のいずれかに決定する(ステップS226)。
【0095】
車線変更モードを決定すると、ターゲット位置候補評価部148は、車線変更の際に前走車両に進路がふさがれるか否かを判定する(ステップS228)。図13は、ステップS228の処理について説明するための図である。ターゲット位置候補評価部148は、例えば、自車両Mが、基準車両m[i+1]に対して後方余裕距離gaprear分の車間距離を空けた位置にいると仮定した場合、自車両Mと同一車線上を同じ方向に走行する前走車両mAfとの車間距離が、追従車間距離gapff未満となる場合に、車線変更の際に前走車両に進路がふさがれると判定する。追従車間距離gapffは、例えば、式(3)に基づいて求められる。式中、Tfr2は、車線変更の完了までの間、同一車線上の前走車両mAfに対して、どれ位の車頭時間を確保すべきかを示す時間である。
【0096】
gapff=Tfr2×V …(3)
【0097】
図8に戻り、車線変更の際に前走車両に進路がふさがれると判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、「その時点でターゲット位置候補cTA[i]への車線変更不可」と判定する(ステップS230)。一方、車線変更の際に前走車両に進路がふさがれないと判定した場合、ターゲット位置候補cTA[i]を有効なものとして扱い、評価の対象とする。
【0098】
ステップS212において、ターゲット位置候補cTA[i]が、真横に車線変更可能な位置であると判定した場合ターゲット位置候補評価部148は、図14のフローチャートに処理を進め、ターゲット位置候補cTA[i]の後方にいる他車両m[i+1]との接近度合いが基準を満たすか否かを判定する(ステップS240)。例えば、ターゲット位置候補評価部148は、自車両Mと他車両m[i+1]とのTTCが所定値以上である場合に、他車両m[i+1]との接近度合いが基準を満たすと判定する。他車両m[i+1]との接近度合いが基準を満たさないと判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、「その時点でターゲット位置候補cTA[i]への車線変更不可」と判定する(ステップS230;図8)。
【0099】
他車両m[i+1]との接近度合いが基準を満たすと判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、ターゲット位置候補cTA[i]の前方にいる他車両m[i]との接近度合いが基準を満たすか否かを判定する(ステップS242)。例えば、ターゲット位置候補評価部148は、自車両Mと他車両m[i]とのTTCが所定値以上である場合に、他車両m[i]との接近度合いが基準を満たすと判定する。
【0100】
他車両m[i]との接近度合いが基準を満たすと判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、車線変更モードを「真横モード」に決定する(ステップS244)。一方、他車両m[i]との接近度合いが基準を満たさないと判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、車線変更モードを「横減速モード」に決定する(ステップS244)。いずれの場合も図8のフローチャートの処理に戻される。
【0101】
ステップS214において、ターゲット位置候補cTA[i]が自車両よりも後方にある(前方にない)と判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、図15のフローチャートに処理を進め、ターゲット位置候補cTA[i]の前方を走行する他車両m[i]を基準車両と定め、他車両m[i+1]との接近度合いを計算する(ステップS250)。
【0102】
次に、ターゲット位置候補評価部148は、接近度合いが基準を満たすか否かを判定する(ステップS252)。例えば、ターゲット位置候補評価部148は、自車両Mと他車両m[i+1]とのTTCが所定値以上である場合に、接近度合いが基準を満たすと判定する。接近度合いが基準を満たさないと判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、「その時点でターゲット位置候補cTA[i]への車線変更不可」と判定する(ステップS230;図8)。係る処理は、自車両Mの車線変更によって、ターゲット位置TAの後方を走行する他車両m[i+1]に余計な減速を強いることが無いように配慮したものである。逆に、ターゲット位置TAの後方を走行する他車両m[i]との接近度合いを考慮しないのは、自車両Mの減速によって車間距離の調整が可能だからである。
【0103】
接近度合いが基準を満たすと判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、自車両Mの速度Vが基準車両m[i]の速度Vm[i]未満であるか否かを判定する(ステップS254)。自車両Mの速度Vが基準車両m[i]の速度Vm[i]未満であると判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、車線変更モードを「等速後退モード」または「後減速モード」に決定する(ステップS256)。
【0104】
自車両Mの速度Vが基準車両m[i]の速度Vm[i]以上であると判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、ターゲット位置候補評価部148は、車線変更モードを「後減速モード」に決定する(ステップS258)。
【0105】
車線変更モードを決定すると、ターゲット位置候補評価部148は、車線変更の際に後続車両に進路がふさがれるか否かを判定する(ステップS260)。図16は、ステップS260の処理について説明するための図である。ターゲット位置候補評価部148は、例えば、自車両Mが、基準車両m[i]に対して前方余裕距離gapfront分の車間距離を空けた位置にいると仮定した場合、自車両Mと同一車線上を同じ方向に走行する後続車両mArとの車間距離が、被追従車間距離gapfr未満となる場合に、車線変更の際に前走車両に進路がふさがれると判定する。被追従車間距離gapfrは、例えば、式(4)に基づいて求められる。式中、Tre2は、車線変更の完了までの間、同一車線上の後続車両mArが自車両Mに対して、どれ位の車頭時間を確保すべきかを示す時間である。ここで、仮に、後続車両mArとの車間距離が短くなることで後続車両mArに制動動作をさせることになった場合に、後続車両mArの乗員に与える心理的な影響は、前走車両mAfとの車間距離が短くなることで前走車両mAfの乗員に与える心理的な影響よりも大きいと考えられる。従って、Tfr2>Tre2となるように、Tfr2およびTre2を定めると好適である。
【0106】
gapfr=Tre2×V …(4)
【0107】
図8に戻り、車線変更の際に後続車両に進路がふさがれると判定した場合、ターゲット位置候補評価部148は、「その時点でターゲット位置候補cTA[i]への車線変更不可」と判定する(ステップS230)。一方、車線変更の際に後続車両に進路がふさがれないと判定した場合、ターゲット位置候補cTA[i]を有効なものとして扱い、評価の対象とする。
【0108】
各ターゲット位置候補cTA[i]について車線変更モードを決定し、或いは「その時点で車線変更不可」と判定し終えると、演算種別選択部148Aが、各ターゲット位置候補cTA[i]について、車線変更モードに応じた演算種別を選択し、演算実行部148Bが、選択された演算を実行する。これによって、車線変更の態様に応じて適切な演算を行うことができると共に、不要な演算の試行を行う必要が無くなるため、プロセッサの処理負荷を軽減することができる。
【0109】
以下、上記の各車線変更モードのそれぞれについて、演算種別選択部148Aおよび演算実行部148Bの処理に関して説明する。演算実行部148Bは、評価値として車線変更所要時間tLCまたは車線変更時走行距離xLCと、被評価車間距離gapLCと、加速度(減速度)gとを算出する。車線変更所要時間tLCは、そのターゲット位置候補cTAをターゲット位置TAとして車線変更をする場合に(以下同様)、車線変更を開始してから完了するまでの時間である。車線変更時走行距離xLCは、車線変更を開始してから完了するまでに自車両Mが走行する縦方向の距離である。以下の説明では、車線変更所要時間tLCではなく車線変更時走行距離xLCを評価値とするものとする。被評価車間距離gapLCは、ターゲット位置候補cTA[i]への車線変更における横方向の移動が開始した時点(縦方向の位置合わせが不要であれば車線変更の開始時点、必要であれば縦方向の位置合わせが完了した時点)における他車両m[i]と他車両m[i+1]との変位差である。車線変更が完了したとは、例えば、自車両Mの車体の全部が車線変更先の車線に収まったこと、或いは自車両Mの中心位置が車線変更先の車線の中央線上に到達したことをいう。以下の説明において、これらを単にtLC、xLC、gapLCと記載する場合がある。
【0110】
(基本的な考え方)
図17は、ターゲット位置候補cTA[i]が自車両Mよりも前方にある場合において(前減速モードの場合を除く)、演算の指針となる基準車両m[i+1]および自車両Mの縦方向の変位の時間的変化を示す図である。図中、xm[i+1]は基準車両m[i+1]の縦方向の変位の初期値であり、xは自車両Mの縦方向の変位の初期値であり、これらから延出する直線または曲線が、縦方向の変位の時間的変化を示している。なお、縦方向の変位は自車両Mおよび基準車両m[i+1]の代表点を基準としている。図17に示すように、演算種別選択部148Aは、自車両Mと基準車両m[i+1]の相対速度差によって自車両Mが基準車両m[i+1]よりも前方になり、車線変更所要時間tLCが経過したとき(すなわち車線変更が完了したとき)に、自車両Mと基準車両基準車両m[i+1]の変位差が後方余裕距離gaprearにαとβを加えた距離となる状態に漸近するように、自車両Mの速度が制御される、という前提に従う演算種別を選択し、演算実行部148Bに演算を行わせる。αは自車両Mの後端部から代表点までの距離であり、βは基準車両m[i+1]の前端部から代表点までの距離である。以降の説明では、gaprear+α+βを「gaprear*」と表記する。
【0111】
図18は、前減速モードの場合における、演算の指針となる基準車両m[i]および自車両Mの縦方向の変位の時間的変化を示す図である。図中、xm[i]は基準車両m[i]の縦方向の変位の初期値であり、xは自車両Mの縦方向の変位の初期値であり、これらから延出する直線または曲線が、縦方向の変位の時間的変化を示している。なお、縦方向の変位は自車両Mおよび基準車両m[i]の代表点を基準としている。図18に示すように、演算種別選択部148Aは、自車両Mと基準車両m[i]の相対速度差によって自車両Mが基準車両m[i]の後方に近づき、車線変更所要時間tLCが経過したとき(すなわち車線変更が完了したとき)に、自車両Mと基準車両m[i]の変位差が前方余裕距離gapfrontにβとαを加えた距離となる状態に漸近するように、自車両Mの速度が制御される、という前提に従う演算種別を選択し、演算実行部148Bに演算を行わせる。βは自車両Mの前端部から代表点までの距離であり、αは基準車両m[i]の後端部から代表点までの距離である。以降の説明では、gapfront+β+αを「gapfront*」と表記する。
【0112】
図19は、ターゲット位置候補cTA[i]が自車両Mよりも後方にある場合において、演算の指針となる基準車両m[i]および自車両Mの縦方向の変位の時間的変化を示す図である。図中、xm[i]は基準車両m[i]の縦方向の変位の初期値であり、xは自車両Mの縦方向の変位の初期値であり、これらから延出する直線または曲線が、縦方向の変位の時間的変化を示している。なお、縦方向の変位は自車両Mおよび基準車両m[i]の代表点を基準としている。図19に示すように、演算種別選択部148Aは、自車両Mと基準車両m[i]の相対速度差によって自車両Mが基準車両m[i]よりも後方になり、車線変更所要時間tLCが経過したとき(すなわち車線変更が完了したとき)に、自車両Mと基準車両基準車両m[i]の変位差が前方余裕距離gapfrontにβとαを加えた距離となる状態に漸近するように、自車両Mの速度が制御される、という前提に従う演算種別を選択し、演算実行部148Bに演算を行わせる。
【0113】
なお、係る制御に用いられる前方余裕距離gapfrontと後方余裕距離gaprearは、自車両Mの速度に依存する値であることを例示したが、以下に説明する演算の中では、評価時点の自車両Mの速度を用いて計算してもよいし、自車両Mの速度変化を加味した将来の速度に基づいて計算するようにしてもよい。
【0114】
(加速モード)
加速モードが採用される場合、演算種別選択部148Aは、例えば、基準車両m[i+1]が等速度運動、自車両Mが等加速度運動をすると仮定して演算実行部148Bに演算を行わせる。自車両Mと基準車両m[i+1]の運動方程式は、式(5)で表される。式中、gは等加速度運動における加速度(すなわち自車両Mに作用する想定加速度)を重力加速度の形式で表したものである。以下、これを加速度gと称する。また、xm[i+1]およびvm[i+1]は、それぞれ、基準車両m[i+1]の縦方向の変位の初期値および速度である。式(5)をtLCについて整理すると式(6)が導出され、式(6)を解くことで式(7)に示すようにtLCが得られる。演算実行部148Bは、xLCとgapLCをそれぞれ式(8)、(9)に基づいて求める。加速モードにおいて、加速度gは一定値(例えば、0.1g〜0.2程度)に設定される。
【0115】
【数1】
【0116】
(等速追い抜きモード)
等速追い抜きモードが採用される場合、演算種別選択部148Aは、基準車両m[i+1]、自車両Mともにが等速度運動をすると仮定し、加速度g=0、車線変更所要時間tLCが経過したとき(すなわち車線変更が完了したとき)に、基準車両m[i+1]との変位差がgaprear*になるという前提に従う演算種別を選択し、演算実行部148Bに演算を行わせる。演算実行部148Bは、式(10)から得られる式(11)〜(13)に基づいて、tLC、xLC、およびgapLCを算出する。式中、tsetは、法規によって定まる下限値であり、例えば3[sec]程度の値である。
【0117】
【数2】
【0118】
(前減速モード)
前減速モードが採用される場合、演算種別選択部148Aは、例えば、基準車両m[i]が等速度運動、自車両Mが等加速度運動をすると仮定して演算実行部148Bに演算を行わせる。自車両Mと基準車両m[i]の運動方程式は、式(14)で表される。式(14)をtLCについて整理すると式(15)となる。基準車両m[i]とのの変位差がgapfront*になったときに車線変更が完了するためには、式(15)の判別式がゼロとなる必要がある。判別式をゼロとするための加速度gは、式(16)で表される。演算実行部148Bは、式(16)で求められるgを用いて式(17)〜(19)に基づいて、tLC、xLC、およびgapLCを算出する。
【0119】
【数3】
【0120】
(真横モード)
真横モードが採用される場合、演算種別選択部148Aは、例えば、自車両Mがtset経過後に車線変更を完了できるという前提の下、式(20)〜(22)に基づいて、tLC、xLC、およびgapLCを演算実行部148Bに算出させる。
【0121】
【数4】
【0122】
(横減速モード)
横減速モードが採用される場合、演算種別選択部148Aは、例えば、自車両Mが等加速度gで減速しながらtset経過後に車線変更を完了できるという前提の下、式(23)〜(25)に基づいて、tLC、xLC、およびgapLCを演算実行部148Bに算出させる。この場合、加速度gは一定値(例えば、マイナス0.1g〜マイナス0.2g程度)に設定される。
【0123】
【数5】
【0124】
(等速後退モード)
等速後退モードが採用される場合、演算種別選択部148Aは、基準車両m[i]、自車両Mともにが等速度運動をすると仮定し、加速度g=0、車線変更所要時間tLCが経過したとき(すなわち車線変更が完了したとき)に、基準車両m[i]との変位差がgapfront*になるという前提に従う演算種別を選択し、演算実行部148Bに演算を行わせる。演算実行部148Bは、式(26)から得られる式(27)〜(28)に基づいて、tLC、xLC、およびgapLCを算出する。
【0125】
【数6】
【0126】
(後減速モード)
後減速モードが採用される場合、演算種別選択部148Aは、例えば、自車両Mが等加速度gで減速しながら車線変更所要時間tLCが経過したとき(すなわち車線変更が完了したとき)に、基準車両m[i]との変位差がgapfront*になるという前提に従う演算種別を選択し、演算実行部148Bに演算を行わせる。演算実行部148Bは、式(30)から得られる式(31)〜(33)に基づいて、tLC、xLC、およびgapLCを算出する。この場合、加速度gは一定値(例えば、マイナス0.1g〜マイナス0.2g程度)に設定される。
【0127】
【数7】
【0128】
図20は、ターゲット位置候補評価部148により実行される後段の処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、図8、14、および15のフローチャートの処理の後に実行される。
【0129】
まず、ターゲット位置候補評価部148は、全てのターゲット位置候補cTA[i](i=0,1,…)について、ステップS270〜S274の処理を行う。演算種別選択部148Aは、図8、14、および15のフローチャートにおけるステップS230において「その時点で車線変更不可」と判定されていたか否かを判定する(ステップS270)。「その時点で車線変更不可」と判定されていた場合、演算種別選択部148Aは、ターゲット位置候補cTA[i]を評価対象から除外する(ステップS272)。演算実行部148Bは、評価対象から除外されなかったターゲット位置候補cTA[i]について、図8、14、および15のフローチャートにおいて当てはめられた車線変更モードパターンに応じた演算を行う(ステップS274)。なお、演算実行部148Bは、例えば図8のステップS226のように複数の車線変更モードが候補に挙がっている場合、複数の車線変更モードのそれぞれに応じた演算を並行して、または順次行う。
【0130】
そして、ターゲット位置候補評価部148は、評価値をターゲット位置決定部150に出力する(ステップS276)。ターゲット位置決定部150は、入力された評価値に基づいて、ターゲット位置TAを決定する。係る処理については以降で説明する。
【0131】
以上説明したターゲット位置候補評価部148の処理によれば、車線変更モードごとに異なる演算を行うことで、場合によっては簡易な演算で済ませることができるため、全てのパターンを同じ演算手法で演算する場合に比して、処理負荷を軽減することができる。また、除外パターンを評価対象から除外することによっても、処理負荷を軽減することができる。処理負荷を軽減することで、周辺状況の変化に対して迅速な応答をすることも可能となり、制御を安定化することができる。
【0132】
[ターゲット位置候補の評価(総合評価)−ターゲット位置の決定]
以下、ターゲット位置候補評価部148により算出された評価値に基づくターゲット位置候補TAの決定手法について説明する。ターゲット位置決定部150は、複数の評価値(車線変更時走行距離xLC、被評価車間距離gapLC、および加速度g)を総合的に評価し、評価結果の良好なターゲット位置候補cTAを、ターゲット位置TAとして決定する。
【0133】
図21は、ターゲット位置決定部150により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、図3のフローチャートにおけるステップS300の処理の内容を示している。
【0134】
まず、ターゲット位置決定部150の残距離計算部150Aが、イベント残距離xlimitを計算する(ステップS310)。イベント残距離xlimitとは、自車両Mの位置から、自車両Mが車線変更を完了すべき地点までの距離である。本ステップの処理については、図22のフローチャートを用いて説明する。図22は、残距離計算部150Aによる処理の内容の一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、図20のフローチャートにおけるステップS310の処理の内容を示している。
【0135】
まず、残距離計算部150Aは、車線変更限界位置と自車両Mの位置とを取得する(ステップS312)。図23は、残距離計算部150Aの処理について説明するための図である。図示する例において、自車両Mは車線L1を走行しており、分岐路の先の目的地に向けて進行するために、車線L2に車線変更する必要がある。この場合において、イベント残距離xlimitは、車線変更限界位置P1と、自車両Mの位置xとの距離となる。車線変更限界位置P1は、分岐地点の所定距離手前の位置である。また、自車両Mが分岐路に進行するのではなく交差点を右左折する場合、車線変更限界位置P1は、交差点の所定距離手前の位置である。残距離計算部150Aは、これらの情報を、例えばMPU60から取得する。また、図示する例において、車線変更限界位置P1の手前で車線L1上に事故が発生している。この場合、残距離計算部150Aは、イベント残距離xlimitを、事故の所定距離手前の位置P2と、自車両Mの位置xとの距離とする。
【0136】
図21に戻り、残距離計算部150Aは、車線変更限界位置までの途中に所定シーンが存在するか否かを判定する(ステップS314)。所定シーンとは、前述した事故の他、車線変更禁止を示す道路標示、渋滞、水たまり、路面凍結などが含まれてよい。車線変更限界位置までの途中に所定シーンが存在しない場合、残距離計算部150Aは、車線変更限界位置P1と、自車両Mの位置xとに基づいて、イベント残距離xlimitを計算する(ステップS316)。
【0137】
一方、車線変更限界位置までの途中に所定シーンが存在する場合、残距離計算部150Aは、所定シーンの開始位置と、自車両Mの位置xとに基づいて、イベント残距離xlimitを計算する(ステップS318)。所定シーンの開始位置とは、図23の例であれば事故の手前に置かれる三角停止表示板の位置であり、その他、道路標示のうち最も手前側の位置、渋滞末尾の車両の後端部などであってもよい。「所定シーンの開始位置と、自車両Mの位置xとに基づいて、イベント残距離xlimitを計算する」とは、例えば、所定シーンの開始位置の所定距離手前の位置と、自車両Mの位置xとの距離をイベント残距離xlimitとすることを意味する。
【0138】
図21に戻り、ターゲット位置決定部150は、図20のフローチャートにおけるステップS272で除外されなかった全てのターゲット位置候補cTA[i]について、ステップS330〜S372の処理を行う。
【0139】
まず、ターゲット位置決定部150は、ターゲット位置候補cTA[i]の位置x[i]がセンサ精度が信頼できる区間xseosorよりも手前であるか否かを判定する(ステップS330)。ターゲット位置候補cTA[i]の位置がセンサ精度が信頼できる区間xseosorよりも手前でない場合、ターゲット位置決定部150は、ターゲット位置候補cTA[i]を評価対象から除外する(ステップS372)。
【0140】
ターゲット位置候補cTA[i]の位置がセンサ精度が信頼できる区間xseosorよりも手前である場合、ターゲット位置決定部150は、車線変更時走行距離xLCがステップS310で計算したイベント残距離xlimitよりも短いか否かを判定する(ステップS332)。車線変更時走行距離xLCがイベント残距離xlimit以上である場合、ターゲット位置決定部150は、ターゲット位置候補cTA[i]を評価対象から除外する(ステップS372)。これによって、ターゲット位置決定部150は、イベント残距離xlimitが短くなるほど、車線変更時走行距離xLCが短い、すなわち自車両との距離が小さいと考えられるターゲット位置候補cTAが、ターゲット位置として選択されやすくなるようにすることができる。
【0141】
車線変更時走行距離xLCがイベント残距離xlimitよりも短い場合、ターゲット位置決定部150は、加速度gの絶対値が上限加速度glimitよりも小さいか否かを判定する(ステップS334)。加速度gの絶対値が上限加速度glimit以上である場合、ターゲット位置決定部150は、ターゲット位置候補cTA[i]を評価対象から除外する(ステップS372)。
【0142】
加速度gの絶対値が上限加速度glimitよりも小さい場合、ターゲット位置決定部150は、被評価車間距離gapLCが目標車間距離gaplimitよりも大きいか否かを判定する(ステップS336)。被評価車間距離gapLCが目標車間距離gaplimit以下である場合、ターゲット位置決定部150は、ターゲット位置候補cTA[i]を評価対象から除外する(ステップS372)。
【0143】
また、ターゲット位置決定部150は、車線変更成功確率認識部136により認識された車線変更の成功率が高い場合、目標車間距離gaplimitを、より小さい値に変更してもよい。
【0144】
ステップS330〜S336の全てにおいて肯定的な判定を得た場合、ターゲット位置決定部150は、総合評価値f(i)を算出する(ステップS340)。この処理の内容の詳細については後述する。ターゲット位置決定部150は、総合評価値f(i)が正の値をもつか否かを判定する(ステップS370)。総合評価値f(i)がゼロ以下である場合、ターゲット位置決定部150は、ターゲット位置候補cTA[i]を評価対象から除外する(ステップS372)。なお、ターゲット位置候補cTA[i]が負の値をもつのは被評価車間距離gapLCがマイナスの値を持つ場合であり、そのケースはステップS336で除外されているため、ステップS370の判定は再確認の意味合いである。
【0145】
以下、総合評価値f(I)について説明する。ターゲット位置決定部150は、例えば、式(21)に基づいて、i番目のターゲット位置候補cTA[i]を評価した総合評価値f(i)を算出する。総合評価値f(i)は、値が小さいほどターゲット位置TAとして良好であることを示す指標値である。式中、ax、agap、agは、係数である。また、|g|は加速度gの絶対値である。
【0146】
f(i)=ax×xLC[i]+agap×(1/gapLC)+ag×|g| …(34)
【0147】
更に、ターゲット位置決定部150は、運転者の運転傾向、他車両の台数、カーブの曲率・路面情報、認識部130の認識精度などに基づいて、総合評価値f(i)の算出手法(算出傾向)を異ならせてもよい。図24は、ターゲット位置決定部150により実行される総合評価値f(i)の算出処理の流れの一例を示す図である。本フローチャートの処理は、図21のフローチャートにおけるステップS340の処理の内容を示している。
【0148】
まず、ターゲット位置決定部150は、運転者傾向学習部150Bにより学習された運転者の運転傾向が、加減速が大きい傾向にあるか否かを判定する(ステップS342)。
【0149】
ここで、運転者傾向学習部150Bについて説明する。運転者傾向学習部150Bは、手動運転が行われている場合の自車両Mの速度履歴或いは加減速度の履歴を取得しておき、統計処理を施して基準値と比較することで、運転者を、加減速度が大きい運転をする傾向の運転者と、加減速度が小さい運転をする傾向の運転者とに分類する。運転者傾向学習部150Bは、車内カメラなどで運転者を判別して個人ごとに運転者の傾向を学習してもよいし、自車両Mを運転する運転者は一人であると仮定して車両単位で運転者の傾向を学習してもよい。運転者の運転傾向が、加減速が大きい傾向にある場合、ターゲット位置決定部150は、係数agを小さくし(ステップS344)、加速度gが大きい場合のペナルティを小さくする。これによって、運転者が手動で運転をしている場合に近い挙動で自車両Mに車線変更を行わせることができ、運転者が違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0150】
次に、ターゲット位置決定部150は、走行台数認識部135の認識結果を参照し、自車両Mの周辺における所定範囲を走行する他車両の台数が基準台数よりも多いか否かを判定する(ステップS346)。他車両の台数が基準台数よりも多い場合、ターゲット位置決定部150は、係数axを大きくする(ステップS348)。これは、他車両の台数が多い場合(混雑時)には、すぐに車線変更しなければ機を逃すという心理が働くので、車線変更の成功率を上げるために、自車両Mに相対的に近い位置に車線変更しやすくするための処理である。
【0151】
次に、ターゲット位置決定部150は、自車両Mがカーブ路を走行しているか否かを判定する(ステップS350)。また、ターゲット位置決定部150は、自車両Mが走行している路面の状態が悪いか否かを判定する(ステップS352)。自車両Mがカーブ路を走行している、または自車両Mが走行している路面の状態が悪い場合、ターゲット位置決定部150は、係数agapを大きくする(ステップS354)。これらの処理は、急な加減速をするのが好ましくないため、加速度gを小さくするための処理である。
【0152】
なお、ターゲット位置決定部150は、上記の処理に加えて、イベント残距離xlimitが短いほど、係数axを大きくしてもよいし、イベント残距離xlimitが所定距離以下である場合に係数axを大きくしてもよい。これによって、ターゲット位置決定部150は、イベント残距離xlimitが短くなるほど、車線変更時走行距離xLCが短い、すなわち自車両との距離が小さいと考えられるターゲット位置候補cTAが、ターゲット位置として更に選択されやすくなるようにすることができる。
【0153】
そして、ターゲット位置決定部150は、式(34)に基づいて総合評価値f(i)を計算する(ステップS356)。
【0154】
更に、ターゲット位置決定部150は、認識精度導出部134により導出されている認識精度が「中」以下であるか否かを判定する(ステップS358)。認識精度が「中」以下である場合、ターゲット位置決定部150は、|x[i]|の大きい(すなわち自車両Mから遠い)ターゲット位置候補cTA[i]について、係数ax’を乗算する(ステップS360)。係数ax’は、1以上の値であり、|x[i]|が大きくなるほど大きくなるように設定される。これによって、認識精度が低い場合には、なるべく自車両Mに近いターゲット位置候補cTAを選択するようにすることができる。
【0155】
図21に戻り、ターゲット位置決定部150は、ステップS372で除外されなかったターゲット位置候補cTA[i]のうち、総合評価値f(i)が最も小さいターゲット位置候補cTA[i]をターゲット位置TAとして選択する(ステップS380)。
【0156】
このようにして、ターゲット位置決定部150は、自車両Mの置かれた環境に応じて評価規則を変更する。
【0157】
以上説明したターゲット位置決定部150の処理によれば、複数の評価値に基づいてターゲット位置cTAを評価する際に、自車両の置かれた環境に応じて評価規則を変更することで、より効率的かつ違和感の少ない車線変更を実現することができる。
【0158】
[車線変更実行]
以下、車線変更実行部152による各種処理について説明する。車線変更実行部152は、ホールド解除判定部152Aによりターゲット位置TAのホールドが解除されるまで、ターゲット位置TAを固定して制御を行う。ホールドの解除については後述する。
【0159】
速度決定部152Bは、車線変更の際の速度を決定し、速度調整を行う。操舵角決定部152Cは、速度決定部152Bにより決定された速度に合わせて、車線変更の際の横方向速度が一定になるように自車両Mの操舵角を決定する。
【0160】
[速度調整(第1例)]
速度決定部152Bは、例えば、第1車線(以下、自車線)から第2車線(以下、車線変更先車線)に車線変更する場合において、自車線において自車両Mの前方を走行する第1車両(以下、前走車両mf)と自車両Mとの関係に基づく第1目標速度VM1と、車線変更先車線においてターゲット位置TAの前方を走行する第2車両(他車両m[i])と自車両Mとの関係に基づく第2目標速度VM2とを所定の割合ratioで反映させて(例えば、加重和を求めることで)自車両Mの速度Vを決定する。この関係は、式(35)で表される。図25は、第1目標速度VM1と第2目標速度VM2の関係を示す図である。
【0161】
=(1−ratio)×VM1+ratio×VM2 …(35)
【0162】
速度決定部152Bは、第1目標速度VM1を、式(36)に基づいて算出する。また、速度決定部152Bは、第2目標速度VM2を、式(37)に基づいて算出する。式中、Vsetは、予め設定されている上限速度である。VFB(xmf→xset1)は、前走車両mfの自車両Mに対する縦方向の相対位置xmfの大きさを第1目標車間距離xset1に近づけるためのフィードバック制御によって求められる速度である。VFB(xm[i]→xset2)は、他車両m[i]の自車両Mに対する縦方向の相対位置xm[i]の大きさを第2目標車間距離xset2に近づけるためのフィードバック制御によって求められる速度である。第1目標車間距離xset1と第2目標車間距離xset2は同じ値であってもよいし、第2目標車間距離xset2の方が第1目標車間距離xset1よりも小さい値であってもよい。前走車両mfまたは他車両m[i]が自車両Mに対して十分に遠い場合(適正な範囲内に存在しない場合)、フィードバック制御によって求められる速度は不適切に大きくなる場合があるが、上限速度Vsetでガードすることで、速度を適切な範囲に収めることができる。
【0163】
M1=MAX{Vset,VFB(xmf→xset1)} …(36)
M2=MAX{Vset,VFB(xm[i]→xset2)} …(37)
【0164】
なお、車線変更モードが加速モードである場合、速度決定部152Bは、更に、ターゲット位置TAの後方を走行する他車両m[i+1]の速度に基づいて目標速度を決定する。
【0165】
また、車線変更モードが等速追い抜きモードまたは等速後退モードである場合、速度決定部152Bは、他車両mとの関係に基づいて自車両Mの速度を変更せず、等速に維持する。
【0166】
そして、速度決定部152Bは、割合ratioを、車線変更の進捗に応じて例えばゼロから1の間で動的に変更する。車線変更の進捗には、以下に説明するように、縦方向の進捗と、横方向の進捗が含まれる。以下、ターゲット位置TAに進行するために、縦方向の位置合わせが不要な場合と、必要な場合とで分けて説明する。
【0167】
(縦方向の位置合わせが不要な場合)
縦方向の位置合わせが不要な場合(第1の場合)とは、ターゲット位置TAが自車両Mの側方にあり、そのまま旋回すれば車線変更できる場合である。例えば、図4におけるターゲット位置候補cTA[2]をターゲット位置TAとして選択した場合が該当する。この場合、速度決定部152Bは、車線変更の横方向の進捗率PRyに基づいて割合ratioを決定する。図26は、横方向の進捗率PRyの決定手法について説明するための図である。速度決定部152Bは、自車線の中心線CLから車線変更する側の道路区画線までの距離、すなわち車線幅LWの半分(1/2LW)を分母とし、自車線の中心線CLから自車両Mの代表点までの距離を分子とした値を、進捗率PRyとして算出する。この関係は、例えば、式(38)で表される。
【0168】
PRy=MIN[MAX{(2×y/LW),0},1] …(38)
【0169】
速度決定部152Bは、割合ratio=横方向の進捗率PRyとし、例えば、車線変更開始当初は第1目標速度VM1の割合を1、第2目標速度VM2の割合をゼロとし、割合ratioが1に近づくに連れて第1目標速度VM1の割合をゼロ、第2目標速度VM2の割合を1に近づける。図27は、縦方向の位置合わせが不要な場合における割合ratioの推移の第1例を示す図である。
【0170】
(縦方向の位置合わせが必要な場合)
縦方向の位置合わせが必要な場合(第2の場合)とは、ターゲット位置TAが自車両Mの側方にはなく、車線変更先の他車両Mとの相対位置を調整する必要がある場合である。例えば、図4におけるターゲット位置候補cTA[2]以外のターゲット位置候補cTAをターゲット位置TAとして選択した場合が該当する。この場合、速度決定部152Bは、まず、縦方向の進捗率PRxに基づいて割合ratioを決定し、縦方向の進捗率PRxが1になった後に、車線変更の横方向の進捗率PRyを加味して割合ratioを決定する。縦方向の進捗率PRxの決定手法は、基準車両が自車両Mの前方にある場合と、後方にある場合とで異なるものとなる。
【0171】
図28は、基準車両がターゲット位置の後方にある場合における縦方向の進捗率PRxの決定手法について説明するための図である。この場合、自車両Mに対する基準車両m[i+1]の相対位置xm[i+1]が、マイナスgaprear*になれば縦方向の位置合わせが完了するのであるから、速度決定部152Bは、式(39)に基づいて進捗率PRxを算出する。式中、xm[i+1]initialは基準車両m[i+1]の初期位置(車線変更開始時の位置)である。
【0172】
【数8】
【0173】
図29は、基準車両がターゲット位置の前方にある場合(前減速モードの場合を含む)における縦方向の進捗率PRxの決定手法について説明するための図である。この場合、自車両Mに対する基準車両m[i]の相対位置xm[i]が、プラスgapfront*になれば縦方向の位置合わせが完了するのであるから、速度決定部152Bは、式(40)に基づいて進捗率PRxを算出する。式中、xm[i]initialは基準車両m[i]の初期位置である。
【0174】
【数9】
【0175】
速度決定部152Bは、割合ratioの初期値としてプラスの値r1を設定することで、車線変更の開始直後から他車両m[i+1]の前方、または他車両m[i]の後方に向けて相対位置を合わせるようにし、縦方向の位置合わせを開始する。速度決定部152Bは、縦方向の位置合わせが完了するまでの期間(第1期間)における割合ratioの進捗率PRxに対する傾きGR1を、縦方向の位置合わせが完了した後の期間(第2期間)における割合ratioの進捗率PRyに対する傾きGR2よりも大きくする。図30は、縦方向の位置合わせが必要な場合における割合ratioの推移の第1例を示す図である。速度決定部152Bは、例えば、式(41)に基づいて割合ratioを決定する。傾きGR1、GR2は式(42)、(43)に基づいて決定される。r1およびr2は予め任意に設定される値である。
【0176】
ratio=(GR1×PRx+r1)+(GR2×PRy) …(41)
GR1=r2−r1 …(42)
GR2=1−r2 …(43)
【0177】
以上説明した速度決定部152Bの処理によれば、違和感の小さい自然な車線変更を実現することができる。
【0178】
[速度調整(第2例、第3例)]
速度決定部152Bは、割合ratioを決定する場合において、横方向の進捗率PRyに対する割合ratioの増加程度を、上記とは異なる手法で調整してもよい。図31は、縦方向の位置合わせが不要な場合における割合ratioの推移の第2例を示す図である。図32は、縦方向の位置合わせが必要な場合における割合ratioの推移の第2例を示す図である。図示するように、速度決定部152Bは、横方向の進捗率PRyに応じて割合ratioを増加させる際に、横方向の進捗率PRyが0から第1変化点PRy_1までの区間Aにおける割合ratioの増加率を、横方向の進捗率PRyが第1変化点PRy_1から第2変化点PRy_2までの区間Bにおける割合ratioの増加率よりも小さくする。また、速度決定部152Bは、横方向の進捗率PRyに応じて割合ratioを増加させる際に、区間Bにおける割合ratioの増加率を、横方向の進捗率PRyが第2変化点PRy_2から1までの区間Cにおける割合ratioの増加率よりも大きくする。なお、図31の場合における第1変化点PRy_1と図32の場合における第1変化点PRy_1は、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。図31の場合における第2変化点PRy_2と図32の場合における第2変化点PRy_2も、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0179】
これによって、自車両Mが横方向への移動を開始した直後においては、車線変更先の車線の他車両の影響を抑制しながら横方向への移動を行い、第1変化点PRy_1を過ぎると車線変更先の車線の他車両の影響を徐々に大きくしながら横方向への移動を行うことになる。換言すると、車線変更のうち横方向への移動を開始してから余り時間が経過していない場合、車線変更先のスペースが若干狭くても横方向への移動を優先し、ある程度、車線変更先への移動が進行した段階で車間距離を適正にするように自車両Mの挙動が制御される。この結果、車線変更の成功率を高めることができる。
【0180】
同様の効果は、以下に示す第3例でも実現することができる。図33は、縦方向の位置合わせが不要な場合における割合ratioの推移の第3例を示す図である。図34は、縦方向の位置合わせが必要な場合における割合ratioの推移の第3例を示す図である。図示するように、速度決定部152Bは、横方向の進捗率PRyに応じて割合ratioを増加させる際に、横方向の進捗率PRyが0から第1変化点PRy_1までの区間Aにおける割合ratioの増加率を、横方向の進捗率PRyが第1変化点PRy_1から第2変化点PRy_2までの区間Bにおける割合ratioの増加率よりも小さくする。
【0181】
以上説明した速度決定部152Bの処理によれば、違和感の小さい自然な車線変更を実現することができる。
【0182】
[ターゲット位置のホールド]
以下、ホールド解除判定部152Aの処理について説明する。ホールド解除判定部152Aは、ターゲット位置決定部150によりターゲット位置TAが決定されたタイミングで、決定されたターゲット位置TAをホールドし、所定条件が満たされるまで、ホールド中のターゲット位置TAに向けて制御を行うように速度決定部152Bおよび操舵角決定部152Cに指示する。「ターゲット位置TAをホールドする」とは、ターゲット位置TAを保持ないし維持することである。また、「ターゲット位置TAをホールドする」とは、ターゲット位置TAの前後の車両のうち少なくとも一方をホールドすることを意味してもよい。
【0183】
図35は、車線変更の進捗を時間の経過に従って例示した図である。まず、車線変更実行部152は、(1)縦方向の位置合わせを開始する。縦方向の位置合わせが完了すると、車線変更実行部152は、(2)ウインカ(方向指示器)を作動させる。次に、車線変更実行部152は、(3)所定時間(例えば1[sec])待ち、側方領域への進入可否を判定する。この段階において、車線変更実行部152は、ターゲット位置TAの前後の車両(他車両m[i]および他車両m[i+1];以下、前方参照車両m[i]、後方参照車両m[i+1]と称する)に対する縦方向のTTC(Time To Collision)、スペースが2gaplimit以上あるか、などを確認し、進入可否を判定する。また、車線変更実行部152は、後述する所定時間をカウントするためのタイマーの作動を開始させる。進入可能と判定すると、車線変更実行部152は、(4)自車両Mを横方向に移動させる。そして、(5)車線変更が完了する。ターゲット位置のホールドは、(1)から(5)の間、行われる。なお。縦方向の位置合わせが不要な場合は、(2)から場面がスタートするため、ターゲット位置のホールドは、(2)から(5)の間、行われる。
【0184】
ホールド解除判定部152Aは、ホールドを行っている間、各種解除パターンに該当する(所定条件が満たされる)か否かを判定し、解除パターンのいずれかに該当する場合はホールドの解除などを行う。
【0185】
図36〜38は、それぞれ、ホールド解除判定部152Aにより実行される処理の流れの一例を示すフローチャートの一部である。これらのフローチャートの処理は、図3のフローチャートにおけるステップS400の処理の内容の一部を示している。まずは処理の手順について説明し、具体的な場面についてはフローチャートの後に説明する。
【0186】
まず、ホールド解除判定部152Aは、参照車両が消失したか否かを判定する(ステップS402)。参照車両とは、前方参照車両m[i]または後方参照車両m[i+1]である。また、「消失した」とは、その他車両の車線変更によって自車両Mの車線変更先の車線上にいなくなったこと、或いはセンサの検出可能範囲から逸脱した(ロストした)ことなどをいう。
【0187】
参照車両が消失した場合、ホールド解除判定部152Aは、前方参照車両m[i]が消失したのか否かを判定する(ステップS404)。前方参照車両m[i]が消失した場合、ホールド解除判定部152Aは、ホールド解除し、ターゲット位置TAを決定し直すように、ターゲット位置候補設定部146、ターゲット位置候補評価部148、およびターゲット位置決定部150に指示する(ステップS420)。
【0188】
前方参照車両m[i]が消失したのではなく、後方参照車両m[i+1]が消失した場合、図37に進み、ホールド解除判定部152Aは、後方参照車両m[i+1]が基準車両であるか否かを判定する(ステップS430)。後方参照車両m[i+1]が基準車両である場合、ホールド解除判定部152Aは、ホールド解除し、ターゲット位置TAを決定し直すように、ターゲット位置候補設定部146、ターゲット位置候補評価部148、およびターゲット位置決定部150に指示する(ステップS420)。後方参照車両m[i+1]が基準車両でない場合、ホールド解除判定部152Aは、消失した後方参照車両m[i+1]に代えて、その後方にある他車両m[i+2]を後方参照車両m[i+1]として扱い(後方基準車両を更新し)(ステップS432)、ホールドを維持する(ステップS418)。
【0189】
ステップS402において否定的な判定を得た場合、ホールド解除判定部152Aは、前方参照車両m[i]および/または後方参照車両m[i+1]の挙動によって、ターゲット位置TAのスペースが基準(2gaplimit)よりも狭くなったか否かを判定する(ステップS410)。ターゲット位置TAのスペースが基準よりも狭くなった場合、ホールド解除判定部152Aは、そのターゲット位置TAにペナルティを設定し(ステップS411)、ステップS420に処理を進める。ペナルティは、再度ターゲット位置TAを決定し直す際に参照され、そのペナルティの設定されたターゲット位置TAは選択されにくくなる。
【0190】
ステップS410において否定的な判定を得た場合、ホールド解除判定部152Aは、ターゲット位置TAのスペースに割り込みがあったか否かを判定する(ステップS412)。ターゲット位置TAのスペースに割り込みがあった場合の処理については図38を用いて説明する。
【0191】
図38に進み、ホールド解除判定部152Aは、前方参照車両m[i]が基準車両であるか否かを判定する(ステップS450)。前方参照車両m[i]が基準車両である場と判定した合、ホールド解除判定部152Aは、前方参照車両m[i]の代表点から後方に向けてgapfront*+gaprear*の区間に割り込みがあったか否かを判定する(ステップS452)。前方参照車両m[i]の代表点から後方に向けてgapfront*+gaprear*の区間に割り込みがあったと判定した場合、ホールド解除判定部152Aは、ホールド解除し、ターゲット位置TAを決定し直すように、ターゲット位置候補設定部146、ターゲット位置候補評価部148、およびターゲット位置決定部150に指示する(ステップS420)。
【0192】
ステップS452において、前方参照車両m[i]の代表点から後方に向けてgapfront*+gaprear*の区間外に割り込みがあったと判定した場合、ホールド解除判定部152Aは、割り込んだ車両を後方参照車両m[i+1]とみなして後方参照車両m[i+1]を更新し(ステップS454)、ホールドを維持する(ステップS418)。
【0193】
ステップS450において、前方参照車両m[i]が基準車両でないと判定した場合、ホールド解除判定部152Aは、後方参照車両m[i]が基準車両であるか否かを判定する(ステップS456)。後方参照車両m[i]が基準車両であると判定した場合、ホールド解除判定部152Aは、前方参照車両m[i]と後方参照車両m[i+1]の間に割り込みがあったか否かを判定する(ステップS458)。前方参照車両m[i]と後方参照車両m[i+1]の間に割り込みがあったと判定した場合、ホールド解除判定部152Aは、ホールド解除し、ターゲット位置TAを決定し直すように、ターゲット位置候補設定部146、ターゲット位置候補評価部148、およびターゲット位置決定部150に指示する(ステップS420)。前方参照車両m[i]と後方参照車両m[i+1]の間に割り込みがなかったと判定した場合、ホールド解除判定部152Aは、ホールドを維持する(ステップS418)。
【0194】
ステップS456において、後方参照車両m[i]が基準車両でないと判定した場合(前方参照車両m[i]も後方参照車両m[i+1]も基準車両でない、すなわち車線変更モードが真横モードまたは横減速モードである場合)、ホールド解除判定部152Aは、自車両Mの代表点から前方に向けてgapfront*、後方に向けてgaprear*までの区間に割り込みがあったか否かを判定する(ステップS460)。自車両Mの代表点から前方に向けてgapfront*、後方に向けてgaprear*までの区間に割り込みがあったと判定した場合、ホールド解除判定部152Aは、ホールド解除し、ターゲット位置TAを決定し直すように、ターゲット位置候補設定部146、ターゲット位置候補評価部148、およびターゲット位置決定部150に指示する(ステップS420)。
【0195】
自車両Mの代表点から前方に向けてgapfront*、後方に向けてgaprear*までの区間外に割り込みがあったと判定した場合、ホールド解除判定部152Aは、自車両Mの代表点からgapfront*よりも前に割り込みがあったか否かを判定する(ステップS462)。自車両Mの代表点からgapfront*よりも前に割り込みがあったと判定した場合、ホールド解除判定部152Aは、前方参照車両m[i]を更新し、ホールドを維持する(ステップS418)。自車両Mの代表点からgapfront*よりも前に割り込みがあったのではないと判定した場合(自車両Mの代表点からgaprear*よりも後ろに割り込みがあったと判定した場合)、ホールド解除判定部152Aは、後方参照車両m[i+1]を更新し、ホールドを維持する(ステップS418)。
【0196】
図39〜41は、参照車両の消失およびターゲット位置TAへの割り込みと、ホールドとの関係を説明するための図である。
【0197】
図39は、自車両Mが前方側に向けて位置合わせをしている場面、すなわち後方参照車両m[i+1]が基準車両である場面の一例を示す図である。この場面において、前方参照車両m[i]が消失した場合、速度制御の基準が消失するため、ホールド解除判定部152Aはホールドを解除する(図36のステップS404、S420)。また、後方参照車両m[i+1]が消失した場合も、基準車両に対する割合ratioが設定できなくなるため、ホールド解除判定部152Aはホールドを解除する(図37のステップS430、図36のS420)。また、割り込み車両が発生した場合、速度制御の基準が変わるため、ホールド解除判定部152Aはホールドを解除する(図38のステップS456、S458、図36のS420)。
【0198】
図40は、自車両Mが後方側に向けて位置合わせをしている場面、すなわち前方参照車両m[i]が基準車両である場面の一例を示す図である。この場面において、前方参照車両m[i]が消失した場合、速度制御の基準が消失するため、ホールド解除判定部152Aはホールドを解除する(図36のステップS404、S420)。また、後方参照車両m[i+1]が消失した場合、ホールド解除判定部152Aは、後方参照車両m[i+1]の後方を走行していた他車両m[i+2]を新たな後方参照車両m[i+1]とみなして後方参照車両m[i+1]を更新し、ホールドを維持する(図37のステップS430、S432、図36のS418)。また、割り込み車両が発生した場合、割り込み車両が、前方参照車両m[i]の代表点から後方に向けてgapfront*+gaprear*の区間内に割り込んだ場合、前方参照車両m[i]の後のスペースに車線変更できなくなるため、ホールド解除判定部152Aはホールドを解除する。(図38のステップS450、S452、図36のS420)。一方、割り込み車両が、前方参照車両m[i]の代表点から後方に向けてgapfront*+gaprear*の区間外に割り込んだ場合、前方参照車両m[i]と割り込んだ車両との間に車線変更可能であるため、ホールド解除判定部152Aは、割り込んだ車両を新たな後方参照車両m[i+1]とみなして後方参照車両m[i+1]を更新し、ホールドを維持する(図38のステップS450、S452、S454、図36のS418)。
【0199】
図41は、自車両Mが真横に車線変更をしようとしている場面、すなわち基準車両が存在しない場面の一例を示す図である。この場合において、割り込み車両が発生した場合、ホールド解除判定部152Aは、自車両Mの代表点から前方に向けてgapfront*、後方に向けてgaprear*までの区間に割り込みがあった場合にはホールドを解除する。また、ホールド解除判定部152Aは、その区間の前に割り込みがあった場合、前方参照車両m[i]を更新し、その区間の後ろに割り込みがあった場合、後方参照車両m[i+1]を更新する。
【0200】
図36に戻り、ステップS412において否定的な判定を得た場合、ホールド解除判定部152Aは、前方基準車両m[i]が譲る動作を見せたか否かを判定する(ステップS414)。具体的に、ホールド解除判定部152Aは、前方基準車両m[i]の減速によってターゲット位置TAのスペースが所定距離以上狭くなった場合、前方基準車両m[i]が譲る動作を見せたと判定する。前方基準車両m[i]が譲る動作を見せた場合、ホールド解除判定部152Aは、ステップS420に処理を進める。この場合、ホールド解除判定部152Aは、ターゲット位置候補cTAの設定や評価をスキップして、前方基準車両m[i]の前方を新たなターゲット位置TAとするように、ターゲット位置決定部150に指示してもよい。
【0201】
ステップS414において否定的な判定を得た場合、ホールド解除判定部152Aは、タイマーを作動させてから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS416)。所定時間が経過した場合、ホールド解除判定部152Aは、ステップS420に処理を進める。
【0202】
ホールド解除判定部152Aは、車線変更の進捗度合いに応じて、ステップS416の判定の基準となる所定時間を変更してもよい。車線変更の進捗度合いとは、例えば、縦方向の進捗率PRx、車線変更の横方向の進捗率PRy、または割合ratio、或いはこれらの組み合わせによって導出される値である。ホールド解除判定部152Aは、車線変更の進捗度合いが低い場合、所定時間を長くし、車線変更の進捗度合いが高い場合、所定時間を短くしてよい。
【0203】
所定時間が経過していない場合、ホールド解除判定部152Aは、車線変更の際に前走車両または後続車両に進路がふさがれるか否かを判定する(ステップS417)。本ステップの処理は、図8のステップS228、および図15のステップS260の処理をOR結合した処理である。すなわち、ホールド解除判定部152Aは、ターゲット位置TAが自車両Mよりも前方にある場合において、自車両Mが、基準車両m[i+1]に対して後方余裕距離gaprear分の車間距離を空けた位置にいると仮定した場合、自車両Mと同一車線上を同じ方向に走行する前走車両mAfとの車間距離が、追従車間距離gapff(式(3)参照)未満となる場合に、車線変更の際に前走車両に進路がふさがれると判定する(図13)。また、ホールド解除判定部152Aは、ターゲット位置TAが自車両Mよりも後方にある場合において、自車両Mが、基準車両m[i]に対して前方余裕距離gapfront分の車間距離を空けた位置にいると仮定した場合、自車両Mと同一車線上を同じ方向に走行する後続車両mArとの車間距離が、被追従車間距離gapfr(式(4)参照)未満となる場合に、車線変更の際に前走車両に進路がふさがれると判定する(図16)。
【0204】
車線変更の際に前走車両または後続車両に進路がふさがれないと判定した場合、ホールド解除判定部152Aは、ホールドを維持する(ステップS418)。その後、ホールド解除判定部152Aは、車線変更が完了したか否かを判定する(ステップS422)。ホールド解除判定部152Aは、車線変更が完了していない場合、ステップS402に処理を戻し、車線変更が完了した場合、本フローチャートの処理を終了する。
【0205】
なお、ホールド解除判定部152Aは、前方参照車両や後方参照車両が、センサの保証範囲外となった場合であっても、認識部130により少なくとも車両の一部が認識できている場合、ホールドを解除しない。
【0206】
以上説明したホールド解除判定部152Aの処理によれば、制御においてハンチングが生じるのを防止し、安定的な車線変更を実現することができる。
【0207】
[ハードウェア構成]
図42は、実施形態の自動運転制御装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。図示するように、自動運転制御装置100は、通信コントローラ100−1、CPU100−2、ワーキングメモリとして使用されるRAM(Random Access Memory)100−3、ブートプログラムなどを格納するROM(Read Only Memory)100−4、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置100−5、ドライブ装置100−6などが、内部バスあるいは専用通信線によって相互に接続された構成となっている。通信コントローラ100−1は、自動運転制御装置100以外の構成要素との通信を行う。記憶装置100−5には、CPU100−2が実行するプログラム100−5aが格納されている。このプログラムは、DMA(Direct Memory Access)コントローラ(不図示)などによってRAM100−3に展開されて、CPU100−2によって実行される。これによって、認識部130、行動計画生成部140、および第2制御部160のうち一部または全部が実現される。
【0208】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサは、前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
自車両の周辺状況を認識し、
前記認識の結果に基づいて前記自車両の加減速および操舵を制御し、
前記自車両を車線変更させる場合、一以上のターゲット位置候補から選択したターゲット位置を、前記車線変更の態様に応じた開始時点から、所定条件が満たされる時点までホールドする、
ように構成されている、車両制御装置。
【0209】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0210】
10 カメラ
12 レーダ装置
14 ファインダ
16 物体認識装置
20 通信装置
50 ナビゲーション装置
60 MPU
100 自動運転
120 第1制御部
130 認識部
131 カーブ路予測部
132 カーブ曲率取得部
133 位置関係認識部
134 認識精度導出部
135 走行台数認識部
136 車線変更成功確率認識部
140 行動計画生成部
142 車線変更制御部
144 車線変更種別判定部
146 ターゲット位置候補設定部
148 ターゲット位置候補評価部
148A 演算種別選択部
148B 演算実行部
150 ターゲット位置決定部
150A イベント残距離計算部
150B 運転者傾向学習部
152 車線変更実行部
152A ホールド解除判定部
152B 速度決定部
152C 操舵角決定部
160 第2制御部
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