【解決手段】ラダーフレーム2よりも車幅方向Yの幅が大きいバッテリパック8を懸架する支持装置9であって、ラダーフレーム2のフレーム側面2Sに設けられるフレーム側ブラケット9aと、バッテリパック8のバッテリ側面8Sに設けられるバッテリ側ブラケット10と、フレーム側ブラケット9aとバッテリ側ブラケット10とを弾性的に連結する弾性連結部9cと、を備え、バッテリ側ブラケット10は矩形板11から分岐して延びる複数のサイドフランジ13を含み、矩形板11はバッテリ側面8Sに垂直に接合され、複数のサイドフランジ13は矩形板11の端部11Eから延在する先端部15まで連続的にバッテリ側面8Sに接合される。
前記複数のサイドフランジの前記先端部は、いずれも車高方向に対して前記矩形板と異なる高さに配置される、請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用バッテリパック支持装置。
前記複数のサイドフランジの分岐部は、それぞれのサイドフランジの厚みよりも車両長手方向に対して大きい幅を有する、請求項1乃至6のいずれかに記載の車両用バッテリパック支持装置。
前記複数のサイドフランジは、前記矩形板の前記端部から前記先端部にかけて車幅方向の長さが短くなる形状を有する、請求項1乃至8のいずれかに記載の車両用バッテリパック支持装置。
前記複数のサイドフランジは、前記先端部のうち車高方向の最下方に配置された最下方先端部が、前記バッテリ側面の下端領域に配置される、請求項1乃至9のいずれかに記載の車両用バッテリパック支持装置。
前記バッテリ側ブラケットは、車両長手方向に離間して配置される一対の前記最下方先端部を連結しつつ前記バッテリ側面に接合されるボトムフランジを含む、請求項10に記載の車両用バッテリパック支持装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような電動トラックは、荷物を積載するための構造、又は車両自体の大型化に伴い、乗用車と比較して車両重量が大きくなる。このため、乗用車に比べて車両重量が大きい電動トラックは、十分な航続距離を確保するために、大型で大容量のバッテリパックを搭載する必要がある。
【0006】
しかしながら、大型のバッテリパックが搭載される車両は、重量化したバッテリパックを十分安全に支持することが要求される。また、大型のバッテリパックが搭載される車両は、ラダーフレームに懸架されるバッテリパックがラダーフレームよりも車幅方向に長い場合には、側突事故の発生時にバッテリパックが損傷しやすくなる虞が生じる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バッテリパックの大型化に対応しながら、バッテリパックの側突安全性を向上させることができる車両用バッテリパック支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様に係る車両用バッテリパック支持装置は、バッテリパックを車両のラダーフレームに懸架する車両用バッテリパック支持装置であって、前記ラダーフレームの車幅方向外側におけるフレーム側面に設けられるフレーム側ブラケットと、前記バッテリパックの車幅方向外側におけるバッテリ側面に設けられるバッテリ側ブラケットと、前記フレーム側ブラケットと前記バッテリ側ブラケットとを弾性的に連結する弾性連結部と、を備え、前記バッテリ側ブラケットは、前記弾性連結部に連結される矩形板と、前記矩形板の車両長手方向の端部から分岐して延びる複数のサイドフランジと、を含み、前記矩形板は、前記弾性連結部に連結される座面が前記バッテリ側面に垂直となるように前記バッテリ側面に接合され、前記複数のサイドフランジは、前記矩形板の前記端部から延在する先端部まで連続的に前記バッテリ側面に接合される。
【0009】
本態様に係る車両用バッテリパック支持装置は、フレーム側ブラケット、弾性連結部、及びバッテリ側ブラケットを介してバッテリパックを車両のラダーフレームに弾性的に懸架する。このとき、バッテリ側ブラケットは、弾性連結部に連結される矩形板がバッテリパックのバッテリ側面に対して座面を垂直とするようにバッテリ側面に接合されると共に、矩形板の車両長手方向における端部から分岐して延びる複数のサイドフランジが形成されている。そして、矩形板から分岐した複数のサイドフランジは、先端部に至るまで連続的にバッテリ側面に接合されている。
【0010】
これにより、本態様に係る車両用バッテリパック支持装置は、バッテリ側ブラケットがバッテリパックの重量に伴って応力を受ける場合や、車両に対する側突の発生時においてバッテリ側ブラケットが応力を受ける場合に、矩形板から複数のサイドフランジへ当該応力を分散して吸収することができる。これにより、本態様に係る車両用バッテリパック支持装置によれば、バッテリパックの大型化に対応しながら、バッテリパックの側突安全性を向上させることができる。
【0011】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様に係る車両用バッテリパック支持装置においては、上記した本発明の第1の態様において、前記複数のサイドフランジの前記先端部は、車高方向に対して互いに等間隔に配置されてもよい。
【0012】
本発明の第2の態様に係る車両用バッテリパック支持装置によれば、複数のサイドフランジの先端部が車高方向に対して互いに等間隔に配置されていることから、バッテリ側ブラケットが受ける応力を車高方向に均等に分散することができ、バッテリ側ブラケットの頑健性を向上させることができる。
【0013】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様に係る車両用バッテリパック支持装置によれば、上記した本発明の第1又は2の態様において、前記複数のサイドフランジの前記先端部は、車両長手方向を向くように配置されてもよい。
【0014】
本発明の第3の態様に係る車両用バッテリパック支持装置によれば、複数のサイドフランジの先端部が車両長手方向を向くように配置されていることから、バッテリ側ブラケットに加わる応力を複数のサイドフランジにより車高方向に分散しつつも、バッテリ側ブラケットの車高方向の長さを抑制することができる。
【0015】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様に係る車両用バッテリパック支持装置においては、上記した本発明の第1乃至3のいずれかの態様において、前記複数のサイドフランジの前記先端部は、いずれも車高方向に対して前記矩形板と異なる高さに配置されてもよい。
【0016】
本発明の第4の態様に係る車両用バッテリパック支持装置によれば、複数のサイドフランジのそれぞれの先端部が、車高方向に対していずれも矩形板と異なる高さになるよう配置され、いずれのサイドフランジも矩形板からダイレクトに応力を受けないことから、バッテリ側ブラケットの頑健性を向上させることができる。
【0017】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様に係る車両用バッテリパック支持装置においては、上記した本発明の第1乃至4のいずれかの態様において、前記複数のサイドフランジは、前記矩形板を境として車高方向に対称に配置されてもよい。
【0018】
本発明の第5の態様に係る車両用バッテリパック支持装置によれば、複数のサイドフランジが車高方向に対して対称に配置されていることから、バッテリ側ブラケットが受ける応力を車高方向に均等に分散することができ、バッテリ側ブラケットの頑健性を向上させることができる。
【0019】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様に係る車両用バッテリパック支持装置においては、上記した本発明の第1乃至5のいずれかの態様において、前記バッテリ側ブラケットは、車幅方向に貫通する貫通孔を有してもよい。
【0020】
本発明の第6の態様に係る車両用バッテリパック支持装置によれば、バッテリ側ブラケットに加わる応力に対する頑健性を維持できる限りにおいて、バッテリ側ブラケットの余剰な厚みを部分的に削減することで軽量化を図ることができる。
【0021】
<本発明の第7の態様>
本発明の第7の態様に係る車両用バッテリパック支持装置においては、上記した本発明の第1乃至6のいずれかの態様において、前記複数のサイドフランジの分岐部は、それぞれのサイドフランジの厚みよりも車両長手方向に対して大きい幅を有してもよい。
【0022】
本発明の第7の態様に係る車両用バッテリパック支持装置は、バッテリ側ブラケットにおける矩形板とそれぞれのサイドフランジとの間に介在する分岐部において、両者の連結強度を補強することができる。また、本発明の第7の態様に係る車両用バッテリパック支持装置は、分岐部とバッテリ側面との接合面の輪郭を比較的大きくすることができ、バッテリ側ブラケットとバッテリパックとの接続性を強化することもできる。
【0023】
<本発明の第8の態様>
本発明の第8の態様に係る車両用バッテリパック支持装置においては、上記した本発明の第1乃至7のいずれかの態様において、前記複数のサイドフランジは、前記矩形板よりも車幅方向の長さが短くてもよい。
【0024】
本発明の第8の態様に係る車両用バッテリパック支持装置は、バッテリ側ブラケットにおける矩形板及び複数のサイドフランジがいずれもバッテリパックのバッテリ側面に接合され、矩形板よりも複数のサイドフランジが車幅方向に対して短く形成されている。このため、本発明の第8の態様に係る車両用バッテリパック支持装置によれば、車両に対する側突事故が発生した場合であっても、個々のサイドフランジだけが損傷する虞を低減することができる。
【0025】
<本発明の第9の態様>
本発明の第9の態様に係る車両用バッテリパック支持装置においては、上記した本発明の第1乃至8のいずれかの態様において、前記複数のサイドフランジは、前記矩形板の前記端部から前記先端部にかけて車幅方向の長さが短くなる形状を有してもよい。
【0026】
本発明の第9の態様に係る車両用バッテリパック支持装置は、バッテリ側ブラケットにおいて、複数のサイドフランジが矩形板から先端部にかけて車幅方向に対する幅が連続的に短くなるように形成されている。このため、本発明の第9の態様に係る車両用バッテリパック支持装置によれば、バッテリ側ブラケットに側突の衝撃を受けた場合であっても、個々のサイドフランジだけが損傷する虞を低減することができる。
【0027】
<本発明の第10の態様>
本発明の第10の態様に係る車両用バッテリパック支持装置においては、上記した本発明の第1乃至9のいずれかの態様において、前記複数のサイドフランジは、前記先端部のうち車高方向の最下方に配置された最下方先端部が、前記バッテリ側面の下端領域に配置されてもよい。
【0028】
本発明の第10の態様に係る車両用バッテリパック支持装置は、バッテリ側ブラケットにおける複数のサイドフランジの先端部のうち、車高方向の最下方に配置された最下方先端部が、バッテリ側面の中でも剛性の高い下端領域において接合されている。このため、本発明の第10の態様に係る車両用バッテリパック支持装置によれば、側突の衝撃に伴う応力をバッテリパックのハウジング底面において吸収することができ、また、当該応力からバッテリパックの収容物を保護することができる。
【0029】
<本発明の第11の態様>
本発明の第11の態様に係る車両用バッテリパック支持装置においては、上記した本発明の第10の態様において、前記バッテリ側ブラケットは、車両長手方向に離間して配置される一対の前記最下方先端部を連結しつつ前記バッテリ側面に接合されるボトムフランジを含んでもよい。
【0030】
本発明の第11の態様に係る車両用バッテリパック支持装置は、側突の衝撃に伴う応力をバッテリ側面の中でも剛性の高い下端領域における広い範囲で当該応力を分散しつつ吸収することができる。従って、本発明の第11の態様に係る車両用バッテリパック支持装置によれば、バッテリパックの側突安全性をより向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
【0033】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る車両用バッテリパック支持装置が搭載された車両1の全体構成を概略的に示す上面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、ラダーフレーム2、キャブ3、荷箱4、車輪機構5、駆動ユニット6、駆動電力供給部7、バッテリパック8、及び「車両用バッテリパック支持装置」としての支持装置9を備える電動トラックである。なお、
図1では、車両1の上面からキャブ3及び荷箱4を透過するように見た場合の上面図として表している。
【0034】
本実施形態において、車両1は、走行用駆動源として電動機(後述するモータ6a)を備える電気自動車として想定されているが、エンジンを更に備えるハイブリッド自動車であってもよい。また、車両1は電動トラックに限定されることなく、電動塵芥車など、車両を駆動するためのバッテリを備える他の商用車であってもよい。
【0035】
ラダーフレーム2は、サイドレール2aと複数のクロスメンバ2bを有する。また、サイドレール2aは、車両1の車両長手方向Xに沿って延在し、互いに車幅方向Yに対して平行に配置される左サイドレール2L及び右サイドレール2Rからなる。複数のクロスメンバ2bは、左サイドレール2Lと右サイドレール2Rとを連結している。すなわち、ラダーフレーム2は、いわゆる梯子型フレームを構成している。そして、ラダーフレーム2は、キャブ3、荷箱4、駆動ユニット6、駆動電力供給部7、バッテリパック8、及び車両1に搭載されるその他の重量物を支持する。
【0036】
キャブ3は、図示しない運転席を含む構造体であり、ラダーフレーム2の前部上方に設けられている。一方、荷箱4は、車両1によって搬送される荷物等が積載される構造体であり、ラダーフレーム2の後部上方に設けられている。
【0037】
車輪機構5は、本実施形態においては、車両前方に位置する左右の前輪5a、2つの前輪5aの車軸としてのフロントアクスル5b、車両後方に位置し且つ左右に各2つ配置された後輪5c、及び後輪5cの車軸としてのリアアクスル5dから構成される。そして、本実施形態に係る車両1においては、後輪5cが駆動輪として機能するように駆動力が伝達され、車両1が走行することになる。尚、車輪機構5は、図示しないサスペンション機構を介してラダーフレーム2に懸架され、車両1の重量を支持する。
【0038】
駆動ユニット6は、モータ6a、減速機構6b、及び差動機構6cを有する。モータ6aは、後述する駆動電力供給部7から交流電力が供給されることにより、車両1の走行に必要な駆動力を発生させる。減速機構6bは、図示しない複数のギアを含み、モータ6aから入力される回転トルクを減速して差動機構6cに出力する。差動機構6cは、減速機構6bから入力される動力を左右の後輪5cに対して振り分ける。すなわち、駆動ユニット6は、減速機構6b及び差動機構6cを介して、モータ6aの駆動トルクを車両の走行に適した回転速度に減速してリアアクスル5dに駆動力を伝達する。これにより駆動ユニット6は、リアアクスル5dを介して後輪5cを回転させて車両1を走行させることができる。
【0039】
駆動電力供給部7は、いわゆるインバータであり、バッテリパック8から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ6aへ供給し、車両1に対するアクセル操作に応じてモータ6aの回転速度を制御する。
【0040】
バッテリパック8は、車両1を走行させるためのエネルギー源としてモータ6aに電力を供給する二次電池である。バッテリパック8は、車両1に必要とされる電力を蓄えるために比較的大型で大容量のバッテリモジュール(図示せず)を内部に複数備える。また、バッテリパック8は、複数の電動補機とそれらに電力を供給する配電ユニットとが車両1に搭載されている場合には(いずれも図示せず)、当該配電ユニットにも電力を供給できるよう構成されていてもよい。
【0041】
支持装置9は、詳細を後述するように、バッテリパック8をラダーフレーム2に懸架するための接続部材である。支持装置9は、本実施形態においては、車幅方向Yに対してラダーフレーム2の両側にそれぞれ3つ(合計6つ)設けられている。ただし、支持装置9は、バッテリパック8の重量及び寸法に応じ、その数量を適宜変更することができる。
【0042】
図2は、車両1に搭載されるバッテリパック8の概形を表す斜視図である。バッテリパック8は、本実施形態においては、車両長手方向Xに対していずれも同じ長さの略直方体形状である第1バッテリ収容部8aと第2バッテリ収容部8bとが一体となるように形成されている。
【0043】
また、第1バッテリ収容部8aは、車幅方向Yに対して、上記した左サイドレール2Lと右サイドレール2Rとの間に収まる幅に設定されている。一方、第2バッテリ収容部8bは、車幅方向Yの長さがラダーフレーム2よりも広い幅に設定され、車高方向Zの下方から第1バッテリ収容部8aに連結されている。
【0044】
すなわち、バッテリパック8は、車両長手方向Xに垂直な平面における断面形状が逆T型となる形状を備えている。そして、バッテリパック8は、第1バッテリ収容部8a及と第2バッテリ収容部8bとの幅の違いにより生じる段差部分をサイドレール2aが通るように配置される。これにより、バッテリパック8は、左サイドレール2Lと右サイドレール2Rとの間、及びサイドレール2aの下方のスペースを有効に利用して、バッテリの収容量を増加させている。
【0045】
また、バッテリパック8は、第2バッテリ収容部8bの車幅方向Yの外側面であるバッテリ側面8Sにおいて、後述するバッテリ側ブラケット10を接続するための複数の支持装置取付領域8cが設けられている。
【0046】
図3は、ラダーフレーム2とバッテリパック8とを接続する支持装置9の構成及び接続形態を示す斜視図である。より詳しくは、
図3は、左サイドレール2Lに接続される1つの支持装置9について、車両1の左斜め後方から見た場合の斜視図である。
【0047】
支持装置9は、フレーム側ブラケット9a、スペーサ9b、弾性連結部9c、及びバッテリ側ブラケット10を備え、バッテリパック8をラダーフレーム2に弾性的に懸架する。
【0048】
フレーム側ブラケット9aは、ラダーフレーム2の車幅方向Yにおける側面、すなわちサイドレール2aの外側面であるフレーム側面2Sに対してボルトで連結される金属部材である。
【0049】
スペーサ9bは、ラダーフレーム2とフレーム側ブラケット9aとの互いの接続面が離間している場合に、両者の間に介在する金属部材である。このため、サイドレール2aとフレーム側ブラケット9aとが離間していない場合には、スペーサ9bが不要となる。
【0050】
弾性連結部9cは、フレーム側ブラケット9aとバッテリ側ブラケット10とを車高方向Zの上下で弾性的に連結する連結部材である。より詳しくは、本実施形態における弾性連結部9cは、フレーム側ブラケット9aとの連結部において所謂ラバーブッシュが介在することで、フレーム側ブラケット9aを介して連結するラダーフレーム2と、バッテリ側ブラケット10を介して連結するバッテリパック8との相対変位に伴う応力を吸収する。
【0051】
バッテリ側ブラケット10は、バッテリパック8の上記した支持装置取付領域8cにおいてバッテリ側面8Sに接合されると共に、弾性連結部9cに連結されることによりバッテリパック8を懸架する金属部材である。
【0052】
このように、本実施形態の車両1においては、バッテリパック8は、バッテリ側ブラケット10、弾性連結部9c、フレーム側ブラケット9a、及びスペーサ9bからなる支持装置9を介してラダーフレーム2のサイドレール2aに懸架される。このため、車両1の走行に伴いサイドレール2aに捩れや撓みに伴う応力が発生した場合であっても、弾性連結部9cは、その緩衝効果により、当該応力がバッテリパック8へ伝達される虞を低減することができる。
【0053】
図4は、本発明の第1実施形態に係るバッテリ側ブラケット10の概形を表す斜視図である。より詳しくは、
図4は、左サイドレール2Lに接続される1つのバッテリ側ブラケット10について、車両1の左斜め後方から見た場合の斜視図である。本実施形態に係るバッテリ側ブラケット10は、矩形板11、分岐部12、及び複数のサイドフランジ13を含み、これらが連続的且つ一体に形成されている。
【0054】
矩形板11は、本実施形態においては、車高方向から見た場合に長方形の座面11Sを有し、座面11SがXY平面に平行、すなわちバッテリパック8のバッテリ側面8Sに対して垂直となるように、バッテリ側面8Sに接合される。また、矩形板11は、車高方向Zに貫通する連結孔14が形成され、連結孔14を挿通する図示しない締結部材によって弾性連結部9cが座面11Sに連結される。
【0055】
分岐部12は、矩形板11の車両長手方向Xにおける端部11Eから複数のサイドフランジ13を車高方向Zに対して分岐させる部分であり、矩形板11と複数のサイドフランジ13との間に介在する。
【0056】
複数のサイドフランジ13は、
図4に示すバッテリ側ブラケット10においては、矩形板11の車両長手方向Xにおける両側にそれぞれ4つずつ(合計8つ)配置されるサイドフランジ13a〜13d及びサイドフランジ13e〜13hからなる。尚、本実施形態においては、バッテリ側ブラケット10が8つのサイドフランジ13を有する形態を例示しているが、矩形板11の車両長手方向Xにおける両側にそれぞれ複数のサイドフランジ13を備えていればよく、その数量はこれに限定されるものではない。
【0057】
図5は、本発明の第1実施形態に係るバッテリ側ブラケット10の側面図である。より詳しくは、
図5は、
図4に示すバッテリ側ブラケット10を車幅方向Yから見た場合の各部の構成を模式的に表す側面図である。
【0058】
図5に示すように、複数のサイドフランジ13は、矩形板11の車両長手方向Xにおける前後の端部11Eから車高方向Zに分岐し、車両長手方向Xの前後にそれぞれ延びる先端部15を有する。すなわち、複数のサイドフランジ13のそれぞれ先端部15は、車両長手方向Xを向くように配置される。
【0059】
また、複数のサイドフランジ13のそれぞれ先端部15は、車高方向Zに対して、いずれも矩形板11と異なる高さにおいて互いに等間隔になるように、矩形板11を境として対称に配置されている。
【0060】
ここで、バッテリ側ブラケット10の分岐部12は、矩形板11の端部11Eからそれぞれの先端部15まで延在する複数のサイドフランジ13の一部と看做すこともできる。そして、本実施形態における分岐部12は、車両長手方向Xの幅W1がそれぞれのサイドフランジ13のXZ平面における厚みよりも大きく設定され、また、車高方向Zの幅W2が複数のサイドフランジ13の分岐に伴い矩形板11の車高方向Zの厚みよりも大きくなる。このため、分岐部12は、矩形板11とそれぞれのサイドフランジ13との連結を補強することができ、矩形板11に車高方向Zの応力が加わった場合には、当該応力を効率的にそれぞれのサイドフランジ13に分散して伝達することができる。
【0061】
また、バッテリ側ブラケット10は、車幅方向Yに貫通する複数の貫通孔16が形成されている。貫通孔16は、本実施形態においては矩形板11及び分岐部12においてそれぞれ複数形成されており、バッテリ側ブラケット10の所望の強度を担保できる限りにおいてバッテリ側ブラケット10の軽量化に寄与する。尚、貫通孔16の配置及び数量は、これに限定されるものではなく、頑健性及び軽量化への要求に応じて適宜変更することができる。
【0062】
図6は、本発明の第1実施形態に係るバッテリ側ブラケット10の上面図である。より詳しくは、
図6は、
図4に示すバッテリ側ブラケット10を車高方向Zの上方から見た場合の上面図である。
【0063】
図6に見られるように、バッテリ側ブラケット10は、バッテリパック8のバッテリ側面8Sに対して車幅方向Yの外側から接合されている。このとき、バッテリ側ブラケット10は、先端部15を含むそれぞれのサイドフランジ13、分岐部12、及び矩形板11が、溶接によりバッテリ側面8Sに連続的に接合されている。
【0064】
また、バッテリ側ブラケット10は、それぞれのサイドフランジ13が矩形板11よりも車幅方向Yの長さが短く設定されている。特に、本実施形態におけるバッテリ側ブラケット10は、矩形板11の端部11Eからサイドフランジ13の先端部15にかけて、車幅方向Yの長さが連続的に短くなる形状を有している。このため、サイドフランジ13は、バッテリ側面8Sからの車幅方向Yにおける長さが矩形板11よりも短いため、車両1に対する側突事故が発生した場合であっても、バッテリ側ブラケット10は、まずは矩形板11において側突の衝撃入力を受けることにより、周囲に延在して配置された複数のサイドフランジ13に当該衝撃を確実に分散させることができる。これにより、側突時の衝撃入力がサイドフランジ13のみに直接入力されることを防ぐことができることから、個々のサイドフランジ13だけが損傷する虞を低減することができる。
【0065】
図7は、本発明の第1実施形態に係るバッテリ側ブラケット10の背面図である。より詳しくは、
図7は、
図4に示すバッテリ側ブラケット10を車両長手方向Xの後方から見た場合の背面図である。尚、
図7においては、左サイドレール2L及びバッテリパック8の一部も合わせて図示しているが、支持装置9の構成要素のうちバッテリ側ブラケット10以外の部分については図示を省略している。
【0066】
バッテリ側ブラケット10は、バッテリ側面8Sに接合された複数のサイドフランジ13の先端部15のうち、車高方向Zの最下方に配置された最下方先端部、すなわち本実施形態におけるサイドフランジ13d及び13hの先端部15がバッテリ側面8Sの下端領域に配置されている。
【0067】
より具体的には、サイドフランジ13d及び13hの先端部15は、車高方向Zにおける高さが、バッテリパック8のハウジング底面8dに相当する高さに配置されている。このため、バッテリ側ブラケット10は、車両1への側突の衝撃により車幅方向Yの外側からラダーフレーム2の下方へ向けて矩形板11に応力が発生した場合であっても、
図7の矢印Fで示すように、サイドフランジ13d及び13hの先端部15を介して、ハウジング底面8dで当該応力を受けることができる。これにより、バッテリ側ブラケット10は、バッテリ側面8Sの中でも剛性の高い部分において衝撃を吸収することができ、また、当該衝撃からバッテリパック8の収容物を保護することができる。
【0068】
ここで、バッテリ側ブラケット10は、上記したように、矩形板11において車高方向Zの上方から弾性連結部9cに連結されと共に、バッテリパック8に対して車幅方向Yからバッテリ側面8Sに接合される。そのため、バッテリ側ブラケット10の矩形板11は、バッテリパック8の重量に伴って、バッテリ側面8Sとの接合部分を支点としつつ座面11Sとバッテリ側面8Sとの角度を小さくするような方向の応力を受けることになる。
【0069】
しかしながら、本発明に係るバッテリ側ブラケット10は、複数のサイドフランジ13がバッテリ側面8Sに接合しつつ矩形板11から分岐するように形成されている。このため、本発明に係るバッテリ側ブラケット10は、バッテリパック8の重量に伴う矩形板11への上記した応力を、車両長手方向X及び車高方向Zに分散しながら吸収することができ、車両1に大型且つ高重量のバッテリパック8を搭載する場合であっても、当該バッテリパック8を安定的に支持することができる。
【0070】
また、本発明に係るバッテリ側ブラケット10は、車幅方向Yにおけるラダーフレーム2の外側に配置され、車両1に対する側突に伴う衝撃を受けた場合であっても、矩形板11から分岐して延びる複数のサイドフランジ13に応力を分散しつつ、バッテリ側面8Sのより広い範囲において当該応力を吸収しやすく構成されている。これにより、バッテリ側ブラケット10は、側突に対して頑健であると共に、側突による応力によりバッテリパック8の収容物が破損する虞を低減することができる。
【0071】
以上のように、本発明に係る支持装置9は、フレーム側ブラケット9a、弾性連結部9c、及びバッテリ側ブラケット10を介してバッテリパック8をラダーフレーム2に懸架すると共に、バッテリ側ブラケット10がバッテリパック8の重量に伴う応力と、車両1に対する側突に伴う応力との両方に対して頑健な構成を有している。従って、本発明に係る支持装置9によれば、バッテリパック8の大型化に対応しながら、バッテリパック8の側突安全性を向上させることができる。
【0072】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の車両用バッテリパック支持装置は、上記した第1実施形態の支持装置9におけるバッテリ側ブラケット10の一部の構成が第1実施形態の構成と異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明することとし、第1実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0073】
図8は、本発明の第2実施形態に係るバッテリ側ブラケット20の概形を表す斜視図である。より詳しくは、
図8は、左サイドレール2Lに接続される1つのバッテリ側ブラケット20について、車両1の左斜め後方から見た場合の斜視図である。
【0074】
第2実施形態のバッテリ側ブラケット20は、一対の最下方先端部としてのサイドフランジ13d及び13hにおける車両長手方向Xに離間したそれぞれの先端部15が、ボトムフランジ21によって連結されている。
【0075】
ボトムフランジ21は、サイドフランジ13d及び13hの先端部15と同様に、バッテリ側面8Sの下端領域においてバッテリパック8に接合されている。これにより、本実施形態に係るバッテリ側ブラケット20は、車両1への側突の衝撃を受けた場合に、バッテリ側面8Sの中でも剛性の高い下端領域における広い範囲で当該衝撃を分散しつつ吸収することができる。従って、本実施形態の車両用バッテリパック支持装置によれば、バッテリパック8の側突安全性をより向上させることができる。
【0076】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の車両用バッテリパック支持装置は、上記した第1実施形態の支持装置9におけるバッテリ側ブラケット10の一部の構成が第1実施形態の構成と異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明することとし、第1実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0077】
図9は、本発明の第3実施形態に係るバッテリ側ブラケット30の側面図である。より詳しくは、
図9は、上記説明した
図5の側面図と同様に、第3実施形態に係るバッテリ側ブラケット30を車幅方向Yから見た場合の各部の構成を模式的に表す側面図である。
【0078】
第3実施形態に係るバッテリ側ブラケット30は、上記した第1実施形態のバッテリ側ブラケット10における分岐部12に相当する部分がなく、矩形板11の端部11Eから複数のサイドフランジ31(31a〜31h)が一定の厚みで分岐するように構成されている。これにより、本実施形態に係るバッテリ側ブラケット30は、バッテリパック8の支持、及び側突安全性に対して要求される剛性を備える限りにおいて、構造を単純化することができ、製造コストの低減及び軽量化を図ることができる。
【0079】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態の車両用バッテリパック支持装置は、上記した第1実施形態の支持装置9におけるバッテリ側ブラケット10の一部の構成が第1実施形態の構成と異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明することとし、第1実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0080】
図10は、本発明の第4実施形態に係るバッテリ側ブラケット40の側面図である。より詳しくは、
図10は、上記説明した
図5の側面図と同様に、第4実施形態に係るバッテリ側ブラケット40を車幅方向Yから見た場合の各部の構成を模式的に表す側面図である。
【0081】
第4実施形態に係るバッテリ側ブラケット40は、上記した第1実施形態のバッテリ側ブラケット10における分岐部12に相当する部分がなく、矩形板11の端部11Eから複数のサイドフランジ41(41a〜41h)が一定の厚みで分岐するように構成されている。このとき、それぞれのサイドフランジ41a〜41hは、直線状に形成されており、矩形板11の端部11Eから放射状に延びるように配置されている。これにより、本実施形態に係るバッテリ側ブラケット40は、側突時の衝撃のうち特に車高方向Zの応力成分に対して補強された構造となり、側突安全性をより向上させることができる。
【0082】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態の車両用バッテリパック支持装置は、上記した第1実施形態の支持装置9におけるバッテリ側ブラケット10の一部の構成が第1実施形態の構成と異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明することとし、第1実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0083】
図11は、本発明の第5実施形態に係るバッテリ側ブラケット50の側面図である。より詳しくは、
図11は、上記説明した
図5の側面図と同様に、第5実施形態に係るバッテリ側ブラケット50を車幅方向Yから見た場合の各部の構成を模式的に表す側面図である。
【0084】
第5実施形態に係るバッテリ側ブラケット50は、矩形板11の端部11Eにおいて車高方向Zに延びる鉛直フランジ51、及び鉛直フランジ51から車両長手方向Xの外側に向けてそれぞれ延びる水平フランジ52(52a〜52h)からなるサイドフランジを備える。これにより、本実施形態に係るバッテリ側ブラケット50は、側突時に加わる衝撃として想定される車両長手方向X及び車高方向Zのそれぞれの応力成分に対して、鉛直フランジ51及び水平フランジ52のそれぞれの長さを独立に設定することができる。これにより、本実施形態に係るバッテリ側ブラケット50は、側突安全性を向上させつつも軽量化を図ることができる。
【0085】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では、バッテリパック8について、YZ平面における断面が逆T型となる形状として例示したが、第2バッテリ収容部8bのみからなる形状であってもよい。また、上記の実施形態では、車両1に対して1つのバッテリパック8が搭載される形態を例示したが、車両1に対して複数のバッテリパック8が搭載されてもよく、この場合には、それぞれのバッテリパック8に対して複数の支持装置9を設けることができる。