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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-217990(P2019-217990A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】車両始動制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/50 20160101AFI20191129BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20191129BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20191129BHJP
   B60W 20/12 20160101ALI20191129BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20191129BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20191129BHJP
【FI】
   B60W20/50ZHV
   B60W10/06 900
   B60W10/08 900
   B60W20/12
   B60L11/14
   B60L3/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-118617(P2018-118617)
(22)【出願日】2018年6月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】守屋 史之
(72)【発明者】
【氏名】家邊 裕文
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB00
3D202BB05
3D202BB11
3D202BB19
3D202BB23
3D202BB24
3D202BB35
3D202CC01
3D202CC15
3D202CC16
3D202CC42
3D202CC53
3D202CC60
3D202DD00
3D202DD44
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BB05
5H125BC28
5H125CC01
5H125CD04
5H125DD01
5H125DD19
5H125EE16
5H125EE26
5H125EE62
5H125EE70
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高電圧バッテリが故障している場合、故障していない昇降圧コンバータやモータ用インバータの使用を確保し、エンジンの始動時のショックを吸収する。
【解決手段】走行用モータ22、バッテリ、コンバータ、インバータの高電圧システムを備えた車両始動制御システム10において、停止中にインバータ、バッテリ及びコンバータの異常を診断する故障診断手段26と、バッテリ異常の診断後にバッテリとインバータ及びコンバータとの接続を解除する解除手段30と、コンバータ及びインバータの故障診断が適宜行われないようにする診断マスク手段28と、エンジン始動時に、バッテリが故障であり且つ少なくともコンバータ及びインバータに故障がないと診断した場合、コンバータ及びインバータの故障診断を行わないようにマスク制御するコンバータ・インバータマスク制御部40cを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行用エンジン及び走行用モータと、前記走行用モータへの駆動用の電力の供給又は前記走行用モータで発生した発電電力の回収を行う高電圧バッテリと、該高電圧バッテリの電力の降圧を行うコンバータと、前記高電圧バッテリと前記走行用モータとの間に接続されたモータ用インバータと、を少なくとも有する車両用高電圧システムを備えた車両始動制御システムにおいて、
前記車両の停止中に、少なくとも前記モータ用インバータ、前記高電圧バッテリ及び前記コンバータの故障診断を含むシステム全体における異常の診断を行う故障診断手段と、
前記高電圧バッテリの異常を診断すると前記高電圧バッテリと前記モータ用インバータ及び前記コンバータとの接続を解除する解除手段と、
前記故障診断手段による前記コンバータ及び前記モータ用インバータの故障診断が適宜行われないようにする診断マスク手段と、
前記走行用エンジンの始動時に、前記故障診断手段が、前記高電圧バッテリが故障であり、且つ少なくとも前記コンバータ及び前記モータ用インバータに故障がないと診断した場合、前記診断マスク手段により前記コンバータ及び前記モータ用インバータの故障診断を行わないようにマスク制御するコンバータ・インバータマスク制御部と、
を有することを特徴とする車両始動制御システム。
【請求項2】
前記車両は、前記高圧バッテリの機能制御を行うバッテリコントロールユニット及び/又は装置内の故障診断の送受信ネットワークを制御するコントローラエリアネットワークを備え、
前記故障診断手段の前記故障診断は、
前記バッテリコントロールユニット及び/又はコントローラエリアネットワークの診断を含み、
前記コンバータ及び前記モータ用インバータのマスク制御は、
前記コンバータ及び前記モータ用インバータに故障がないとの診断に加え、前記バッテリコントロールユニット及び/又はコントローラエリアネットワークに故障がない場合に行われることを特徴とする請求項1に記載の車両始動制御システム。
【請求項3】
前記走行用エンジンの始動に必要な電力を供給する補機バッテリと、
前記車両の停車位置における路面傾斜状況を判定する傾斜判定手段と、
前記故障診断手段による故障診断結果に基づいて、前記解除手段により前記高電圧バッテリと前記走行用モータとの接続を解除する解除制御部と、
該解除制御部による解除に基づいて、前記走行用エンジンを始動する解除契機始動制御部と、を備え、
前記車両が、停車状態であり、前記解除契機始動制御による前記走行用エンジンの始動が行われるときに、
前記傾斜判定手段からの前記路面の傾斜判定データを受け、
進行方向が下り傾斜又は平坦である場合、エンジン始動に伴った前記車両の動きに伴って動作する前記走行用モータでの発生電力を前記コンバータで降圧して前記補機バッテリで回収して前記走行用エンジンによる始動のカウンタ制御を行う始動制御部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両始動制御システム。
【請求項4】
前記コンバータは、前記補機バッテリの電力を昇圧することも可能な昇降圧コンバータであり、
前記始動制御部は、
前記車両が、停車状態であり、前記解除契機始動制御による前記走行用エンジンの始動が行われるときに、
前記傾斜判定手段からの前記路面の傾斜判定データを受け、
進行方向が上り傾斜である場合、前記昇降圧コンバータにより昇圧した前記補機バッテリの電力を前記走行用モータに供給して前記走行用エンジンによる始動のアシスト制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の車両始動制御システム。
【請求項5】
前記傾斜判定手段は、前記路面の傾斜角度を算出する傾斜角度算出手段を有し、
前記始動制御部は、
前記算出した傾斜角度に応じて前記カウンタ制御又は前記アシスト制御での電力量を制御することを特徴とする請求項3又は4に記載の車両始動制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両始動制御システム、特に走行用エンジンと走行用モータとを有するハイブリッド車両のエンジン始動時の制御を行う車両始動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行用エンジンと走行用モータとを駆動源とするHEV(Hybrid Electric Vehicle)やPHEV(Plug−in Hybrid Electric Vehicle)では、走行用エンジンを始動する際に、走行用モータにアシストトルク(プラスの駆動力)やカウンタトルク(マイナスの駆動力)を発生させ、エンジン始動時に発生するショック(後退や飛び出し)を抑制している。
【0003】
しかし、走行用モータに電力を供給する高電圧バッテリに異常が発生し、走行用モータとの接続が切り離されると、走行用モータへの電力供給が停止されてしまうため、走行用モータによるアシストトルクやカウンタトルクが発生できない状態となる。
【0004】
また、高電圧バッテリが故障していると判断されると、コンバータ及び走行用モータを制御するモータ用インバータが全て高電圧システムから切断され使用できない構成になっている。
【0005】
なお、特許文献1には、エンジン始動時に走行用モータと高電圧バッテリの接続が未だ確立していない場合、低電圧バッテリ(補機バッテリ)の電力をコンバータにより昇圧させ、走行用モータにアシストトルクを発生させるように制御する車両制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−54606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高電圧バッテリが故障していると判断されると、コンバータ及びモータ用インバータが故障していない場合でも高電圧システムから切断されてしまい、コンバータ及びモータ用インバータを使用することができなかった。
【0008】
したがって、高電圧バッテリが故障している場合、コンバータやモータ用インバータを利用したカウンタトルクを実施できなかった。また、走行用モータを制御するコンバータ、モータ用インバータも使用できないため、補機バッテリを使用してカウンタトルクを実施することもできなかった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高電圧バッテリが故障している場合、故障していないコンバータ、モータ用インバータの使用を確保し、走行用エンジンを始動時する際に、走行用モータによってアシストトルク又はカウンタトルクを発生させ、エンジン始動により発生するショックを吸収することができる車両始動制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的の達成のため請求項1に係る車両始動制御システムは、
車両の走行用エンジン及び走行用モータと、前記走行用モータへの駆動用の電力の供給又は前記走行用モータで発生した発電電力の回収を行う高電圧バッテリと、該高電圧バッテリの電力の降圧を行うコンバータと、前記高電圧バッテリと前記走行用モータとの間に接続されたモータ用インバータと、を少なくとも有する車両用高電圧システムを備えた車両始動制御システムにおいて、
前記車両の停止中に、少なくとも前記モータ用インバータ、前記高電圧バッテリ及び前記コンバータの故障診断を含むシステム全体における異常の診断を行う故障診断手段と、前記高電圧バッテリの異常を診断すると前記高電圧バッテリと前記モータ用インバータ及び前記コンバータとの接続を解除する解除手段と、前記故障診断手段による前記コンバータ及び前記モータ用インバータの故障診断が適宜行われないようにする診断マスク手段と、前記走行用エンジンの始動時に、前記故障診断手段が、前記高電圧バッテリが故障であり、且つ少なくとも前記コンバータ及び前記モータ用インバータに故障がないと診断した場合、前記診断マスク手段により前記コンバータ及び前記モータ用インバータの故障診断を行わないようにマスク制御するコンバータ・インバータマスク制御部と、を有することを特徴とする。
【0011】
この構成により、走行用エンジンの始動時に故障診断手段が、高電圧バッテリが故障であり、且つ少なくともコンバータ及びモータ用インバータに故障がないと診断した場合、コンバータ・インバータマスク制御部は、診断マスク手段によりコンバータ及びモータ用インバータの故障診断を行わないように制御する。したがって、高電圧バッテリが故障している状況に起因して、実際にはコンバータ及びモータ用インバータが機能し得る状況であるにもかかわらず、これらコンバータ及びモータ用インバータを故障と判断することが回避される。
【0012】
したがって、高電圧バッテリが故障している状況であっても、活用可能なコンバータ及びモータ用インバータを確実に利用することが可能となる。すなわち、コンバータ及びモータ用インバータを利用することで、補機バッテリを用いたアシスト制御やウンタ制御を行うことが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の車両始動制御シシテムは、請求項1に記載の車両始動制御システムにおいて、
前記車両は、前記高圧バッテリの機能制御を行うバッテリコントロールユニット及び/又は装置内の故障診断の送受信ネットワークを制御するコントローラエリアネットワークを備え、前記故障診断手段の前記故障診断は、前記バッテリコントロールユニット及び/又はコントローラエリアネットワークの診断を含み、前記コンバータ及び前記モータ用インバータのマスク制御は、前記バッテリコントロールユニット及び/又はコントローラエリアネットワークに故障がない場合に行われることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、故障診断手段は、バッテリコントロールユニット(BCU)及び/又はコントローラエリアネットワーク(CAN)も診断の対象とする。これらBCUやCANを搭載した車両において、BCUやCANに故障が生じている状況では、前記コンバータ及び前記モータ用インバータに故障がなく、且つマスク制御を行って、前記コンバータ及び前記モータ用インバータの機能を確実に利用することができない。したがって、BCUやCANの故障診断を行い、故障がない場合にのみ上記マスク制御を行う様にしたものである。
【0015】
これにより、BCUやCANを搭載した車両において、請求項1の作用効果を的確に得ることができる。
【0016】
請求項3に記載の始動制御部は、請求項1又は2に記載の始動制御部において、
前記走行用エンジンの始動に必要な電力を供給する補機バッテリと、前記車両の停車位置における路面傾斜状況を判定する傾斜判定手段と、前記故障診断手段による故障診断結果に基づいて、前記解除手段により前記高電圧バッテリと前記走行用モータとの接続を解除する解除制御部と、該解除制御部による解除に基づいて、前記走行用エンジンを始動する解除契機始動制御部と、を備え、前記車両が、停車状態であり、前記解除契機始動制御による前記走行用エンジンの始動が行われるときに、前記傾斜判定手段からの前記路面の傾斜判定データを受け、進行方向が下り傾斜又は平坦である場合、エンジン始動に伴った前記車両の動きに伴って動作する前記走行用モータでの発生電力を前記コンバータで降圧して前記補機バッテリで回収して前記走行用エンジンによる始動のカウンタ制御を行う始動制御部を有することを特徴とする。
【0017】
この構成により、故障診断手段が、高電圧バッテリが故障であり、且つ少なくともコンバータ及びモータ用インバータに故障がないと診断した場合、始動制御部は、解除契機始動制御による走行用エンジンの始動が行われるときに、車両の進行方向が下り傾斜又は平坦である場合、エンジン始動に伴った車両の動きに伴って動作する走行用モータでの発電電力をコンバータで降圧して補機バッテリで回収してエンジン始動のカウンタ制御を行う。したがって、高電圧バッテリが故障した場合に、これに起因したコンバータ及びモータ用インバータの故障診断の誤判断を回避し、これらコンバータ及びモータ用インバータの的確な利用を確保することができる。これにより、補機バッテリなどを用いた走行用モータによるカウンタトルクの発生を確実に得ることができ、エンジン始動時のショック(飛び出し)を吸収することができる。
【0018】
請求項4に記載の車両始動制御システムは、請求項3に記載の車両始動制御システムにおいて、
前記コンバータは、前記補機バッテリの電力を昇圧することも可能な昇降圧コンバータであり、前記始動制御部は、前記車両が、停車状態であり、前記解除契機始動制御による前記走行用エンジンの始動が行われるときに、前記傾斜判定手段からの前記路面の傾斜判定データを受け、進行方向が上り傾斜である場合、前記昇降圧コンバータにより昇圧した前記補機バッテリの電力を前記走行用モータに供給して前記走行用エンジンによる始動のアシスト制御を行うことを特徴とする。
【0019】
この構成により、故障診断手段が、高電圧バッテリが故障であり、且つ少なくともコンバータ及びモータ用インバータに故障がないと診断した場合、始動制御部は、解除契機始動制御による走行用エンジンの始動が行われるときに、車両の進行方向が上り傾斜である場合、昇降圧コンバータが補機バッテリの電力を昇圧して走行用モータに供給して走行用エンジンによる始動のアシスト制御を行う。したがって、高電圧バッテリが故障した場合に、これに起因したコンバータ及びモータ用インバータの故障診断の誤判断を回避し、これらコンバータ及びモータ用インバータの的確な利用を確保することができる。これにより、補機バッテリなどを用いた走行用モータによるアシストトルクの発生を確実に得ることができ、エンジン始動時のショック(後退)を吸収することができる。
【0020】
請求項5に記載の車両始動制御システムは、請求項3又は4に記載の車両始動制御システムにおいて、
前記傾斜判定手段は、前記路面の傾斜角度を算出する傾斜角度算出手段を有し、前記始動制御部は、前記算出した傾斜角度に応じて前記カウンタ制御又は前記アシスト制御での電力量を制御することを特徴とする。
【0021】
この構成により、高電圧バッテリが故障している状況に起因して、実際にはコンバータ及びモータ用インバータが機能し得る状況であるにもかかわらず、これらコンバータ及びモータ用インバータを故障と判断することを回避して、補機バッテリ、コンバータ及びモータ用インバータを用いて請求項3に記載のカウンタ制御又は請求項4に記載のアシスト制御を行う場合に、始動制御部は、傾斜角度算出手段により算出した傾斜角度に応じてカウンタ制御及びアシスト制御での電力量を制御するので、走行用エンジン始動時のショックがより適切に緩和される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の車両始動制御システムによれば、走行用エンジン始動時に故障診断手段が、高電圧バッテリが故障であり、且つ少なくともコンバータ及びモータ用インバータに故障がないと診断した場合、診断マスク手段によりコンバータ及びモータ用インバータの故障診断を行わないようにマスク制御するので、高電圧バッテリが故障している状況に起因して、実際にはコンバータ及びモータ用インバータが機能し得る状況であるにもかかわらず、これらコンバータ及びモータ用インバータを故障と判断することが回避される。これにより、高電圧バッテリが故障した場合でも、コンバータ及びモータ用インバータを利用した制御、すなわち、カウンタ制御及びアシスト制御を行うことが可能となり、ハイブリッド車両の快適な走行機能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の車両始動制御システムとハイブリッド車両の概略構成図である。
図2】本発明の車両始動制御システムに係り、システムの制御フローチャートである。
図3】本発明の車両始動制御システムに係り、システムの制御フローチャートである。
図4】本発明の車両始動制御システムに係り、アシスト制御の説明図である。
図5】本発明の車両始動制御システムに係り、カウンタ制御の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の車両始動制御システムの実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の車両始動御システムとハイブリッド車両の概略構成図である。まず、ハイブリッド車両は、車両を走行させるための走行用エンジン24と走行用モータ22を有する。これらは同一駆動力軸系統に配置されても良いし、別の駆動軸上、例えばフロント側に走行用エンジン、リア側に走行用モータを配置しても良い。走行用モータ22は、走行用モータ22を駆動させるためのモータ用インバータ14を介して高電圧バッテリ12と接続され、高電圧バッテリ12から駆動用の電力が供給される。モータ用インバータ14と高電圧バッテリ12との間には、リレー18(解除手段)があり、高電圧バッテリ12に故障が生じた場合等に、それらの接続を解除するように構成されている。
【0026】
高電圧バッテリ12は、リレー18を介して昇降圧コンバータ16にも接続されている。通常の走行時には、走行用モータ22で発電された電力は、高電圧バッテリ12に回収される(蓄えられる)。更に、高電圧バッテリ12で蓄えられた電力は、昇降圧コンバータ16で降圧され(電圧を下げ)、補機バッテリ36に供給(充電)するようにも構成されている。
【0027】
高電圧バッテリ12、リレー18、昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14を、図1では高電圧システム20として破線で囲っているが、高電圧システム20は、少なくとも 高電圧バッテリ12、昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14を含む。
【0028】
走行用エンジン24には、始動トルクを与えるスタータ34と、スタータ34にエンジン始動トルクの出力に必要な電力を供給する補機バッテリ36とが接続されている。補機バッテリ36の電圧は高電圧バッテリ12の電圧よりも低い。
【0029】
走行用モータ22に接続されているエンジン始動時モータ制御手段32は、スタータ34によりエンジン24が始動される際に、走行用モータ22にトルクを追加供給するアシスト制御又は走行用モータ22にカウンタトルクを発生させるカウンタ制御を行うものであり、アシスト制御に必要な電力は、通常は高電圧バッテリ12から供給され、またカウンタ制御における発生電力の回収も高電圧バッテリ12により行われる。高電圧バッテリ12が故障した場合は、上記の通常行われている制御が不可能となる。
【0030】
スタータ34に接続されているリレー解除時エンジン始動手段38は、高電圧バッテリ12が故障等で走行用モータ22との接続がリレー18により解除された時に、走行用エンジン24を始動させるものである。すなわち、高電圧バッテリ12が使用できない状況では、車両の駆動源は走行用エンジン24のみとなる。
【0031】
制御部40は、解除制御部40a、解除契機始動制御部40b、インバータ・コンバータマスク制御部40c、及び始動制御部40dを有し、高電圧システム20、リレー解除時エンジン始動手段38、エンジン始動時モータ制御手段32を始め、後述する故障診断手段26、診断マスク手段28、リレー解除手段30を制御するものである。車両の全ての動作はこの制御部40により制御される。
【0032】
車両始動制御システム10は、破線で囲んだように、故障診断手段26、診断マスク手段28、リレー解除手段30、制御部40、傾斜判定手段42、及び傾斜角度算出手段43を有する。
【0033】
故障診断手段26は、車両の停止中且つエンジン停止状態中に、少なくともモータ用インバータ14、高電圧バッテリ12及び昇降圧コンバータ16の故障診断を含むシステム全体における異常の診断を行う。更に、に、BCU(バッテリコントロールユニット)及び/又はCAN(コントローラエリアネットワーク)の故障を判断することも行う。診断マスク手段28は、後述するように故障診断手段26による昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14の診断が適宜行われないようにする。リレー解除手段30(解除手段)は、高電圧バッテリ12と走行用モータ22との接続(高電圧バッテリ12とモータ用インバータ14及び昇降圧コンバータ16との接続)を解除する。
【0034】
制御部40の解除制御部40aは、故障診断手段26による故障診断結果に基づいて、リレー解除手段30によりリレー18を開放し高電圧バッテリ12と走行用モータ22との接続(高電圧バッテリ12と昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14との接続)を解除する。解除契機始動制御部40bは、解除制御部40aによる解除に基づいて、走行用エンジン24を始動する。すなわち、解除契機始動制御部40bは、リレー18解除時に、リレー解除時エンジン始動手段38を制御して走行用エンジン24を始動させる。
【0035】
インバータ・コンバータマスク制御部40cは、走行用エンジン24の始動時に、故障診断手段26が、高電圧バッテリ12が故障であり、且つ少なくとも昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14に故障がないと診断した場合、診断マスク手段28により昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14の故障診断を行わないようにマスク制御する。
【0036】
したがって、故障診断手段26が、高電圧バッテリ12が故障であり、且つ少なくとも昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14に故障がないと診断した場合、診断マスク手段28により昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14の故障診断を行わないように制御するので、高電圧バッテリ12が故障している状況に起因して、実際には昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14が機能し得る状況であるにもかかわらず、これら昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14を故障と判断することが回避される。
【0037】
また、BCUやCANを搭載した車両において、BCUやCANに故障が生じている状況では、昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14に故障がなく、且つマスク制御を行って、昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14の機能を確実に利用することができない。したがって、BCUやCANの故障診断を行い、故障がない場合にのみ上記マスク制御を行う様にしている。
【0038】
始動制御部40dは、車両が停車状態であり、解除契機始動制御部40bによる走行用エンジン24の始動が行われるときに、後述する傾斜判定手段42からの路面の傾斜判定データを受け、進行方向が下り傾斜又は平坦である場合、エンジン始動に伴った車両の動きに伴って動作する走行用モータ22での発生電力を昇降圧コンバータ16で降圧して補機バッテリ36で回収して走行用エンジン24による始動のカウンタ制御を行う。また、進行方向が上り傾斜である場合、昇降圧コンバータ16により昇圧した補機バッテリ36の電力を走行用モータ22に供給して走行用エンジン24による始動のアシスト制御を行う。
【0039】
傾斜判定手段42は、車両の停車位置における路面傾斜状況を判定する。すなわち、車両の進行方向が上り傾斜にあるのか、又は車両の進行方向が下り傾斜又は平坦であるのかが判定される。始動制御部40dは、路面の傾斜判定データを受け、車両が走行用エンジン24の始動時にアシストトルクを要するのか又はカウンタトルクを要するのかを判断する。角度算出手段43は、停車している車両の進行方向の傾斜角度を算出する。始動制御部40dは、この算出された傾斜角度に応じて、走行用エンジン24の始動時に走行用モータ22によるアシスト制御又はカウンタ制御を行う場合の電力量を制御する。エンジン始動時のショックをより適切に緩和するためである。
【0040】
図2は、本発明の車両始動制御システムに係り、システムの制御フローチャートである。車両始動制御として示している。まず、車両が停車中かどうか判断する(ステップS1)。車両の異常等を診断する場合は、車両が停車状態であることを想定している。次に、エンジン停止状態であるかどうか判断する(ステップS2)。同様に、車両の異常等を診断する場合は、エンジンを停止状態にすることを想定している。
【0041】
次に、故障診断手段26により高電圧システム20が異常かどうか判断する(ステップS3)。この判断は、故障診断手段26が、高電圧バッテリ12、昇降圧コンバータ16、モータ用インバータ14をそれぞれ個々に調べて行われる。また、故障診断手段26は、BCU(バッテリコントロールユニット)及び/又はCAN(コントローラエリアネットワーク)の故障も診断する。次に、高電圧バッテリ12が故障かどうか判断する(ステップS4)。高電圧バッテリ12が故障でない場合は、本発明の処理は行われない(ステップS5)。
【0042】
高電圧バッテリ12が故障である場合、昇降圧コンバータ12及びモータ用インバータ14の故障が診断される(ステップS6)。なお、図2において、昇降用コンバータは単にコンバータ、モータ用インバータは単にインバータと記載している。
【0043】
昇降圧コンバータ12及びモータ用インバータ14が故障していないと判断された場合、次にBCU(バッテリコントロールユニット)及び/又はCAN(コントローラエリアネットワーク)の故障が診断される(ステップS7)。昇降圧コンバータ12及びモータ用インバータ14が故障していると判断された場合は、図3のステップS14に移行する。BCU及び/又はCANが故障していると判断された場合も、図3のステップS14に移行する。
【0044】
ここで、請求項1に対応する実施の形態では、BCU・CANの診断は行わないので、図2に破線で示した様に、ステップS6からステップS7を飛ばして図3のステップ8へ移行する。
【0045】
高電圧バッテリ12が故障と診断され、且つ昇降圧コンバータ12、モータ用インバータ14、BCU・CANが故障していないと診断された場合、後述する図3のステップS8からステップS13までの制御が行われる。それ以外の場合は、ステップS14からステップS16の制御が行われる。
【0046】
ステップS14からステップS16の流れは、昇降圧コンバータ16、モータ用インバータ14を停止し(ステップS14)、解除制御部40aがリレー解除手段30によりリレー18を切断して高電圧バッテリ12と走行用モータ22との接続を解除し(ステップS15)する。その後、解除契機始動制御部40bがリレー解除時エンジン始動手段38を制御して走行用エンジン24を始動し(ステップS16)、システムの制御フローを終了する。この場合には、走行用モータ22は、アシスト制御、カウンタ制御することはできないので、エンジン始動時のショック(後退、飛び出し)は緩和されない。
【0047】
高電圧バッテリ12が故障であり、且つ、昇降圧コンバータ12、モータ用インバータ14、BCU・CANが故障していないと診断された場合は、以下に説明する処理が行われる。
【0048】
制御部40のインバータ・コンバータマスク制御部40cが、診断マスク手段28により、昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14の故障診断を行わないように制御する(ステップS8)。この制御により、高電圧バッテリ12が故障した場合に、これに起因した昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14の故障診断の誤判断を回避し、これら昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14の的確な利用を確保することができる。
【0049】
次に、解除制御部40aが、リレー解除手段30を制御して、高電圧バッテリ12の接続を解除する。ここで、高電圧バッテリ12の接続解除時には、モータ用インバータ14、昇降圧コンバータ16等の高電圧部品の残電荷を放電させる処置が実施される。具体的には、例えば、5秒以内に60V以下となる様に放電される。この残電荷の放電処置が実施された場合に、以下で述べるアシスト制御、カウンタ制御を実施しようとすると、大電流が流れて部品の破損に繋がる恐れが生じる。
【0050】
本実施の形態では、インバータ・コンバータマスク制御部40cが、診断マスク手段28により、昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14の故障診断を行わないように制御し(ステップS8)、解除制御部40aが、リレー解除手段30を制御して、高電圧バッテリ12の接続を解除する(ステップS9)際に、上述の残電荷の放電処理も行わないように制御している。これにより、昇降圧コンバータ16とモータ用インバータ14を使用することが確実に可能になる。
【0051】
次に、始動制御部40dは、車両が上り勾配の状態にあるか否か判断する(ステップS10)。この判断は、搭載されている傾斜判定手段42からの路面の傾斜判定データを受けて行われる。更に、傾斜判定手段42には、傾斜角度算出手段43が接続されており、路面の傾斜角度が算出される。路面の傾斜角度に応じて、走行用エンジン24の始動時に走行用モータ22によるアシスト制御及びカウンタ制御での電力量が制御され、より適切にエンジン始動時のショックを吸収することができる。
【0052】
車両が上り勾配にある状況では、エンジン始動時にアシスト制御が行われる(ステップS1)。アシスト制御を図4に説明する。車両44は、上り勾配角θの坂道の途中に停車している。車両44は、矢印46で示す方向に進むものとする。
【0053】
解除契機始動制御40bによる走行用エンジン24の始動がなされる際には、車両44がこの上り勾配でも円滑に進むように、車両44の車輪の回転をアシストするアシストトルクを車輪に与える必要がある。そこで、始動制御部40dは、昇降圧コンバータ16により補機バッテリ36の電力を昇圧し(ステップS11−1)、走行用モータ22に供給する(ステップS11−2)。この時、走行用モータ22に必要なアシストトルクが発生するようにモータ用インバータ14も制御される。このようにして、エンジン始動時に、車両の下降を防止することが可能となる。
【0054】
車両が下り勾配又は平坦な道路にある状況では、エンジン始動時にカウンタ制御が行われる(ステップS12)。カウンタ制御を図5に説明する。車両44は、下り勾配角θの坂道の途中に停車している。車両44は、矢印46で示す方向に進むものとする。
【0055】
解除契機始動制御40bによる走行用エンジン24の始動がなされる際には、車両44がこの下り勾配でも飛び出さないように、車両44の車輪の回転にカウンタトルクを発生させる必要がある。そこで、始動制御部40dは、エンジン始動に伴った車両の動きに伴って動作する走行用モータ22で発電される電力(ステップS12−1)を昇降圧コンバータ16で降圧し(ステップS12−2)、補機バッテリ36で回収する(ステップS12−3)。この時、走行用モータ22に必要なカウンタトルクが発生するように、モータ用インバータ14も制御される。このようにして、エンジン始動時に、車両の飛び出しを防止することが可能となる。
【0056】
アシスト制御又はカウンタ制御を行った後、昇降用コンバータ16、モータ用インバータ14を停止(ステップS13)してシステムのフローが終了する。
【0057】
本実施の形態では、前述のように傾斜角度算出手段43が設けられているので、勾配角度θに応じた適切なアシストトルク、カウンタトルクが発生するように、必要な電力量が算出される。そして始動制御部40dは、算出された電力量を基に昇降圧コンバータ16、モータ用インバータ14を制御する。これにより、高電圧バッテリ12が故障した場合においてもエンジン始動時にショック(後退、飛び出し)をより効果的に吸収し、乗り心地の良い車両を提供することが可能である。したがって、高電圧バッテリ12が故障した場合であっても、ハイブリッド車両の走行性能を確保することが可能である。
【0058】
なお、本発明においては、高電圧バッテリ12が故障して使用できなくなった場合を想定し、高電圧バッテリ12がなくてもアシスト制御又はカウンタ制御が可能となる構成について示したが、高電圧バッテリ12が故障していなくてもエンジン始動時に、高電圧バッテリ12と走行用モータ22の接続が確立していない状況や何らかの理由でリレー18の接続が確立できない状況においても本願発明の構成を利用して、アシスト制御又はカウンタ制御を行うことが可能である。
【0059】
ここで、AVH(Auto Vehicle Hold)機能が付属している場合について説明する。AVH機能がONの場合、車両を停車させた状態で運転者がブレーキペダルから足を離しても車両が動ないようにブレーキが掛かり車両は停車した状態を維持する。図3に示したフローチャートにおいて、リレー解除手段30によりリレー18を切断した場合(ステップS9)に、車両が上り勾配に在るか否かが判断され(ステップS10)アシスト制御(ステップS11)又はカウンタ制御(ステップS12)が行われる流れになっており、この流れは基本的にAVH機能がONの状態又はOFFの状態でも同様である。
【0060】
すなわち、エンジン始動時には、AVH機能がON状態であってもアクセルペダルを踏むとAVH機能のON状態が解除されるので、図3に示したステップS8からステップS13までの流れがそのまま適用される。すなわち、AVH機能がON状態においても、車両が上り勾配に在るか否かが判断され、傾斜角度により制御に必要な電力量が算出され、アシスト制御又はカウンタ制御が行われる。
【0061】
本実施の形態の車両始動制御システム10によれば、走行用エンジン始動時に故障診断手段26が、高電圧バッテリ12が故障であり、且つ少なくとも昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14に故障がないと診断した場合、診断マスク手段28により昇降圧コンバータ16及びモータ用インバータ14の故障診断を行わないようにマスク制御するので、コンバータ及びモータ用インバータの使用が可能となり、高電圧バッテリが故障した場合でも、カウンタ制御及びアシスト制御を行うことが可能である。
【0062】
なお、本発明は、上記の実施の形態に示した範囲に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、昇降用コンバータ16は、昇圧と高圧の両方が実行できるものとして示しているが、昇圧用のコンバータと降圧用のコンバータを別々に準備して電子回路とリレー等により昇圧と降圧が別々に行えるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0063】
10 車両始動制御システム
12 高電圧バッテリ
14 モータ用インバータ
16 昇降圧コンバータ
18 リレー
20 高電圧システム
22 走行用モータ
24 エンジン
26 故障診断手段
28 診断マスク手段
30 リレー解除手段
32 エンジン始動時モータ制御手段
34 スタータ
36 補機バッテリ
38 リレー解除時エンジン始動手段
40 制御部
40a 解除制御部
40b 解除契機始動制御部
40c インバータ・コンバータマスク制御部
40d 始動制御部
42 傾斜判定手段
43 傾斜角度算出手段
44 車両
46 進行方向
θ 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5