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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-218036(P2019-218036A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】鉄道車両用電気品
(51)【国際特許分類】
   B61C 17/12 20060101AFI20191129BHJP
【FI】
   B61C17/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-119366(P2018-119366)
(22)【出願日】2018年6月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川下 道宏
(72)【発明者】
【氏名】青山 博
(72)【発明者】
【氏名】堀野 正也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 克美
(72)【発明者】
【氏名】塚本 乾
(57)【要約】
【課題】鉄道車両の床下に懸架された鉄道車両用電気品の筐体を構成する天板と側面板は、別々の部材であるため、鉄道車両の加減速によって鉄道車両用電気品に慣性力が働いた際、天板と側面板の位置ずれによる相対変位が生じる。筐体を懸架するために吊り具は天板および側面板の両方に接合されているため、相対変位が生じると、吊り具に高い応力が発生し得る。吊り具に高い応力が繰返して発生すると、その応力によって吊り具が疲労破壊を起こす可能性がある。
【解決手段】電気機器を収容した筐体の天板と側面板に接合された吊り具を介して鉄道車両の床下の複数本の梁に懸架される鉄道車両用電気品において、吊り具の上記天板に接合する部位と当該吊り具の上記側面板に接合する部位との間が空隙である。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器を収容した筐体の天板と側面板に接合された吊り具を介して鉄道車両の床下の複数本の梁に懸架される鉄道車両用電気品において、
前記吊り具の前記天板に接合する第1の部位と前記吊り具の前記側面板に接合する第2の部位との間が空隙である、
ことを特徴とする鉄道車両用電気品。
【請求項2】
正面視において、前記空隙の形状が、扇形である、
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用電気品。
【請求項3】
正面視において、前記空隙の形状が、前記吊り具側に斜めに延びた形状であり、前記空隙の傾きの前記天板に対する鋭角が、0度より大きく90度より小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用電気品。
【請求項4】
前記正面視において、前記空隙の形状は、略長方形である、
ことを特徴とする請求項3に記載の鉄道車両用電気品。
【請求項5】
前記正面視において、前記空隙の先端に丸みがある、
ことを特徴とする請求項4に記載の鉄道車両用電気品。
【請求項6】
正面視において、前記空隙の形状は、略L字形状であり、前記空隙のL字を形成する2つの直線部のうち、1つの直線部は、前記天板に沿って延びており、もう1つの直線部は、前記側面板に沿って延びている、
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用電気品。
【請求項7】
前記正面視において、前記空隙の前記2つの直線部の各々の先端に丸みがある、
ことを特徴とする請求項6に記載の鉄道車両用電気品。
【請求項8】
前記吊り具は、
前記天板および前記側面板に接続される板状の部分である第1の取付部と、
前記天板および前記側面板に接続される板状の部分であり前記第1の取付部と対向した第2の取付部と、
前記第1の取付部と前記第2の取付部とを結ぶ部分である連結部と
を有し、
前記第1の取付部と前記第2の取付部の各々について、前記第1の部位は、前記天板に連続溶接されており、前記第2の部位は、前記側面板に連続溶接されており、
前記第1の取付部と前記第2の取付部の各々について、前記第1の部位と前記第2の部位との間が前記空隙になっている、
ことを特徴とする請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の鉄道車両用電気品。
【請求項9】
前記天板と前記側面板との接合が、複数のスポット接合である、
ことを特徴とする請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の鉄道車両用電気品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用電気品に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用電気品として、特許文献1(特許第5978098号)に開示の鉄道車両用電気品がある。特許文献1は、「箱体の天井板と側面板に接合された吊り具を介して、鉄道車両の床下の複数本の梁に懸架される鉄道車両用電気品であって、前記箱体の側面板と前記吊り具の間に、前記吊り具と接合された金属板が挿入されており、前記金属板と前記側面板の少なくとも左右と下部が接合されており、車両の略水平方向において、前記吊り具の端部と前記金属板の端部との距離が前記金属板の板厚と概略同等以上であることを特徴とする鉄道車両用電気品。」を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5978098号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筐体の天板と側面板は、一般に、一枚の板(例えば金属板)が折り曲げられて構成されたような一体の部材ではなく、別々の部材である。天板と側面板が互いに接合(例えば溶接)され、結果として、筐体が構成される。
【0005】
鉄道車両の加減速等によって鉄道車両用電気品に慣性力が働いた場合、天板と側面板は別々の部材のため、天板と側面板との位置ずれによる相対変位が生じる。筐体を懸架するために吊り具は天板および側面板の両方に接合されているため、相対変位が生じると、吊り具に高い応力が発生し得る。加減等によって吊り具に高い応力が繰返して発生すると、その応力によって吊り具が疲労破壊を起こす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電気機器を収容した筐体の天板と側面板に接合された吊り具を介して鉄道車両の床下の複数本の梁に懸架される鉄道車両用電気品において、吊り具の上記天板に接合する部位と当該吊り具の上記側面板に接合する部位との間が空隙である。
【発明の効果】
【0007】
吊り具の天板に接合する部位と当該吊り具の側面板に接合する部位との間が空隙であるため、天板と側面板の位置ずれによって相対変位が発生しても、吊り具がその相対変位を許容することができる。結果として、吊り具に高い応力が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】鉄道車両の床下に配置された梁(線路方向に沿って延びた梁)によって懸架された鉄道車両用電気品を示す図。
図2】鉄道車両の床下に配置された梁(枕木方向に沿って延びた梁)によって懸架された鉄道車両用電気品を示す図。
図3】線路方向に沿って延びた2本の梁で懸架された鉄道車両用電気品を示す図。
図4】一比較例に係る鉄道車両用電気品の一例であるインバータ装置の説明図。
図5】一比較例に係るインバータ装置の天板と側面板との接合部分の拡大図。
図6】鉄道車両用電気品に慣性力が加わった際に発生する筐体の変形挙動を示す図。
図7】一比較例に係るインバータ装置の天板と側面板の位置ずれの方向を示す図。
図8】本発明の第1の実施形態に係る鉄道車両用電気品の一例としてのインバータ装置を示す図。
図9】本発明の第1の実施形態に係る鉄道車両用電気品の吊り具と筐体との接合部分の図。
図10】本発明の第1の実施形態に係る鉄道車両用電気品の吊り具と筐体との接合部分の拡大図。
図11】本発明の第1の実施形態の期待される効果を説明する図。
図12】本発明の第2の実施形態に係る鉄道車両用電気品の吊り具と筐体との接合部分の拡大図。
図13】本発明の第3の実施形態に係る鉄道車両用電気品の吊り具と筐体との接合部分の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の幾つかの実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
【0010】
本発明の第1の実施形態に係る鉄道車両用電気品を説明する。
【0011】
まず、図1図3を用いて、鉄道車両用電気品11の懸架構造について説明する。なお、以下の説明では、鉄道車両2の移動方向を「線路方向」と言い、線路方向と水平に直交する方向を「枕木方向」と言い、線路方向と枕木方向から定義される水平面の鉛直方向を「上下方向」と言うことがある。
【0012】
図1は、鉄道車両2の床下に、線路方向に沿って延びた懸架用の梁3が配置された構造の例を示す。例えばカーテンレールのように、溝が形成された梁3が複数配置されており、その梁3に、鉄道車両用電気品11(当該電気品11の筐体)を締結することで、線路方向の任意の位置に鉄道車両用電気品11が懸架される。
【0013】
また、図2は、同じく鉄道車両用電気品11を懸架した構造の例を示す。鉄道車両2の床下に、枕木方向に沿って延びた懸架用の梁3が複数配置されている。溝が形成された梁3を複数使用することで、鉄道車両用電気品11が枕木方向の任意の位置に懸架される。
【0014】
図3は、図1で示した懸架用の梁3が線路方向に配置された構造において、鉄道車両用電気品11が2本の梁3で懸架された場合の詳細を示す。筐体1は、主に、天板31、地板33、4枚の側面板32(32A、32A、32Bおよび32B)から構成されている。板31、32および33の各々は、金属板の一例としての鋼板である。各側面板32が天板31および地板33に接合(例えば溶接)された結果として、筐体1が構成される。筐体1の天板31および側面板32によって形成される複数の筐体角部4の各々には、吊り具5が配置されている。吊り具5と梁3がボルト締結のような方法で互いに固定されることで、鉄道車両用電気品11(筐体1)が懸架される。なお、図3では、天板31の外周のうちの吊り具5が乗る外周部分に接合される側面板32の参照符号に「A」を付し、それ以外の側面板32の参照符号に「B」を付している。これは、図4以降でも同様である。
【0015】
図4を用いて、本発明の第1の実施形態の一比較例に係る鉄道車両用電気品について説明する。図4は、一比較例に係る鉄道車両用電気品の一例として、インバータ装置41を示す。図4に示すように、インバータ装置41の筐体61は、主に、天板71、地板73、4枚の側面板72(72A、72A、72Bおよび72B)で構成され、内部には破線で示す2枚の仕切り板75が配置される。板71〜73及び75は、いずれも鋼板である。これらの鋼板の接合、例えば、天板71および側面板72は、複数のスポット溶接で接合されている。筐体61内の3つの空間(2枚の仕切り板75によって分けられた空間)のうちの中央の空間にはパワーユニットが配置されており、両隣の空間のうちの一方の空間には論理ユニットが配置されており、両隣の空間のうちの他方の空間には断流器ユニットが配置されている。パワーユニットは発熱するため、冷却用のフィンを有しており、網状の保護カバー80によってフィンが保護されている。なお、筐体61に収納されているパワーユニット、論理ユニットおよび断流器ユニットは、電気機器の一例である。すなわち、「鉄道車両用電気品」は、電気機器と、電気機器を収容した筐体と、筐体の吊り具とを備える。
【0016】
図5図7を用いて、一比較例の課題について説明する。
【0017】
図5は、図4のインバータ装置41のうち、天板71と側面板72Aとの接合部分90を拡大した図である。図5において、天板71と側面板72Aの各々には、点線で示す接合領域6が設けられている。接合領域6は、例えば、天板71の辺の全域または側面板72Aの辺の全域から枕木方向に沿って手前側に延びたフランジの一面の領域である。天板71の接合領域6と側面板72Aの接合領域6が、互いに溶接によって接合されている。一方で、吊り具85は、筐体角部4に対して、吊り具85の天板71および側面板72Aとの接触部位の全域が連続溶接されることで、接合されている。なお接合領域6はフランジのように加工されていなくともよい。
【0018】
図6は、鉄道車両2の急停車および急発進で発生する慣性力による筐体61の変形挙動を示す図である。図6に示すように、慣性力によって筐体61は振られ、筐体61を懸架する吊り具85によって保持される。
【0019】
図7は、吊り具85と筐体角部4とを接合した部位において、天板71および側面板72Aの位置ずれの方向を示す模式図である。図7に示すように、慣性力によって天板71および側面板72Aについて慣性力による位置ずれが生じようとする場合、矢印の方向(あるいは反対の方向)に相対変位を生じさせようとする力が発生する。しかし、吊り具85の天板71および側面板72Aとの接触部位の全域が連続溶接によって接合されているため(つまり、吊り具85と筐体角部4は全周溶接によって接合されているため)、天板71および側面板72Aの位置ずれは許容されない。その結果、天板71および側面板72Aの位置ずれを防止するように吊り具85には反力が発生し、吊り具85と筐体角部4との接合部分に応力が発生する。特に、吊り具直角部87(吊り具85のうち、天板71と側面板72との接合部分が構成する角部に接触する部位)は応力集中部となるため、吊り具直角部87を引き裂くようにはたらく応力が発生する。慣性力は走行時に繰り返し発生するため、繰り返し負荷によって吊り具直角部87が、疲労破壊に至る可能性がある。なお吊り具直角部87は、吊り具において、天板71と側面版72Aとの接合部に相対する部分を指しており、当該部分について直角であることを規定するものではない。
【0020】
また、天板71と側面板72A(天板71の接合領域6と側面板72Aの接合領域6)を、連続溶接に代えてスポット溶接する場合は、吊り具直角部87に対する応力集中の度合いは更に高くなる。連続溶接は、スポット溶接が採用された場合に比べて、天板71および側面板72Aを剛に接合する。したがって、天板71と側面板72Aとの間における位置ずれは小さいことが期待できるが、スポット溶接の場合は天板71と側面版72Aとの位置ずれが大きなものとなるため吊り具直角部87に集中する応力も増大する。結果として繰り返し負荷に対する信頼性の観点から、インバータ装置41の筐体61においてスポット溶接を採用することは難しいとされた。
【0021】
そこで、第1の実施形態に係る鉄道車両用電気品は、吊り具5の構造を見直し、高い応力の発生を抑制する。以下、第1の実施形態に係る鉄道車両用電気品について図8図10を用いて説明する。
【0022】
図8は、第1の実施形態に係る鉄道車両用電気品の一例としてのインバータ装置11を示す図である。図4に示すインバータ装置41との違いは、吊り具5の天板31に接合する部位と吊り具5の側面板32Aに接合する部位との間が空隙8である点、すなわち、筐体1を懸架する4つの吊り具5の各々について、吊り具直角部7に、円形の空隙8が形成されている点である。吊り具5に空隙8が形成されていることにより、一比較例に係る吊り具85に比べて吊り具5の剛性が低い。
【0023】
図9は、吊り具5と筐体1との接合部分を示す図である。なお、図9には、1つの吊り具5が示されているが、懸架に関わるすべての吊り具5が図9に示す通りの構造を有する。
【0024】
鉄道車両2の加速および減速によって筐体1には慣性力が働くため、筐体1の鋼板(天板31および側面板32A)を接合する溶接金属が変形して、鋼板が矢印方向に位置ずれを起こし、相対変位が発生する。一比較例に係る吊り具85は、剛性が高く、鋼板の位置ずれを許容しない。そのため、慣性力による鋼板の位置ずれを防止するように、吊り具85のみで慣性力に対する反力が発生し、吊り具85には高い応力が発生する。一方で、第1の実施形態に係る吊り具5は、空隙8を有するため(空隙8によって筐体1に対して連続溶接が施さない部位が吊り具5にあるため)、剛性が低い。そのため、鋼板の位置ずれによる相対変位を許容し、吊り具5に高い応力が発生することを抑制することができる。なお、吊り具5の構成は、任意の構成でよいが、例えば次の通りである。すなわち、吊り具5は、天板31および側面板32Aに接続される板状の部分である第1の取付部801Aと、天板31および側面板32Aに接続される板状の部分であり第1の取付部801Aと対向した第2の取付部801Bと、第1の取付部801Aと第2の取付部801Bとを結ぶ部分である連結部801Cとを有する(例えば、一枚の金属板が逆U字状に折り曲げられることで吊り具5が構成されてよい)。第1の取付部801Aについて、第1の部位(吊り具5の天板31に接触する部位)802Aは、天板31に連続溶接されており、第2の部位(吊り具5の側面板32Aに接触する部位)802Bは、側面板32Aに連続溶接されている。つまり、第1の取付部801Aについて、第1の部位802Aと第2の部位802Bとの間が空隙8になっている。同様に、図示しないが、第2の取付部801Bについても、第1の部位と第2の部位との間が空隙になっている。第1の取付部801Aおよび第2の取付部801Bについて、空隙の形状や大きさは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
また図9に示すような吊り具5の構造を採用することで、天板31および側面板32Aの接合に関してスポット溶接を適用することができる。図10は、概ね180〜200mmピッチで配置された複数のスポット溶接88によって天板31および側面版32Aを接続した例を示す。図9に示すようにスポット溶接によって筐体1を構成する場合、側面版32Aをフランジの様に折り曲げ、この折り曲げ部分と天板部31とを接触させ接合領域6を形成する。この接合領域6において上述するようなピッチで複数のスポット溶接88を実施することで、両部材が接合される。なお吊り具5の空隙8は、線路方向に関する筐体1の揺動と干渉しない程度の大きさに加工されることが望ましい。
【0026】
このようなスポット溶接はポイントで接合されるため、連続溶接のようにある程度の接合面積が確保される場合と比べて、接合面積が小さい。そのため、スポット溶接のための溶接金属が変形しやすく、天板31および側面板32A(鋼板)の位置ずれが大きい。しかし吊り具5を用いることによって、鋼板の位置ずれによる相対変位が許容される。換言すると吊り具5に高い応力が発生することが抑制されるため、インバータ装置11は安全に懸架される。またスポット溶接は、筐体1の製造工程の効率化の面にも利益をもたらす。すなわち連続溶接はスポット溶接に比べて溶接面積が大きいため、溶接部の熱収縮作用により、筐体の広範囲に亘って残留ひずみが発生する。その結果、要求される筐体の製作精度を満たすために、歪み取りを代表とした追加工程を必要とする。一方、スポット溶接は、連続溶接に比べて溶接面積が小さいため、残留歪みが小さく、故に、負担となる別の工程は必要とならない点で有用である。
【0027】
また、正面視において、吊り具直角部7に形成した空隙8の形状が、円形(具体的には、筐体1の角が入り込むため扇形)である。このため、後述の図12および図13の形状に比べて、異方性が弱く、結果として、応力集中を低減し易い。また、吊り具5の天板31に接合する第1の部位と吊り具5の側面板32Aに接合する第2の部位との間隔を、後述の図12および図13の形状に比べて広く取り易いため、第1の部位と第2の部位間(空隙部分)が溶接金属で埋まってしまう可能性が低減され、溶接をし易い。なお、「正面視」とは、正面からの視界であり、「正面」は、吊り具5のうち、空隙8を形成する面(第1の取付部801Aの面または第2の取付部801Bの面)である。
【0028】
さらに、筐体1を懸架するため、吊り具5の板厚は筐体1を構成する鋼板の板厚に比べて厚みがあるのが一般的であるが、本実施形態によれば、空隙8が形成されるため吊り具5の剛性が低減する。これにより、筐体1を構成する鋼板との剛性差が低減し、筐体1の鋼板に発生する応力も低減する。図11は、本発明の第1の実施形態の期待される効果を説明する図である。横軸が、吊り具5に形成される空隙8の直径を示し、縦軸が、吊り具5に発生する応力(最大値100%)を示す。つまり、図11のグラフは、空隙8の円形(扇形)の直径と吊り具5側および筐体1側に発生する応力との関係を示す。2本の折れ線のうち、実線は、吊り具5側に発生する応力を示し、破線は、筐体1側に発生する応力を示す。なお、円形の空隙8を形成することで吊り具5と筐体1との接触領域が2つに分離するため(上述の第1の部位と第2の部位といった2つの接触部位ができるため)、円形の直径が0mmの位置以外は各種折れ線が2つに分かれている。図11より、空隙8の直径が30mm以下の場合においては、空隙8の直径に関わらず、吊り具5側および筐体1側の応力が低減できることが期待される。また、直径を大きくするにつれ応力が低減する傾向が見られる部位と、応力が増加する傾向が見られる部位がある。そのため、適正な直径は20mm程度であると判断できる。なお、図11において、参照符号1001Pは、第1の部位(吊り具5の天板31に接触する部位)に関して吊り具5側に発生する応力と空隙8の直径の関係を示し、参照符号1001Qは、第2の部位(吊り具5の側面板32Aに接触する部位)に関して吊り具5側に発生する応力と空隙8の直径との関係を示す。一方、参照符号1002Pは、第1の部位に関して筐体1側に発生する応力と空隙8の直径との関係を示し、参照符号1002Qは、第2の部位に関して筐体1側に発生すると空隙8の直径の関係を示す。また、図11に示す関係(直径と応力に関する数値)は、一例であり、本発明が奏すると期待される効果を限定するものではない。図11は、直径0mmを超えて或る程度の直径までは、応力低減の高い効果が期待され、当該程度の直径を超えると、応力低減の効果が低いこと(荷重の偏りが生じるために高い応力が発生し得る箇所ができること)を模式的に示すものである。
【0029】
また、正面視において円形(扇形)である空隙8の意義は、上述したように、天板31と側面板32Aの相対変位の許容にあり、応力集中を避けるために角にR付けをする一般技術の意義とは異なる。これは、空隙8の形状が、円形に限らなくても(例えば、後述の図12および図13が示す形状であっても)、相対変位を許容することができる点からも明らかである。
[第2の実施形態]
【0030】
図12を用いて、本発明の第2の実施形態について説明する。その際、第1の実施形態との相違点を主に説明し、第1の実施形態との共通点については説明を省略または簡略する。
【0031】
図12は、本発明の第2の実施形態に係る鉄道車両用電気品の吊り具と筐体との接合部分の拡大図である。
【0032】
第1の実施形態との違いは、正面視において、空隙8の形状が、吊り具5側(筐体1と反対の側)に斜めに延びた形状であり、空隙8の傾きの天板31に対する鋭角(例えば、吊り具直角部7を原点として枕木方向に沿った第1軸と上下方向に沿った第2軸とに従う座標平面において原点からの延びの傾きと第1軸との間の角度)が、0度より大きく90度より小さい。このような形状の空隙8によれば、円形(扇形)の空隙8に比べて、異方性が強いが、鋼板の位置ずれによって生じる相対変位を許容することができる。また、空隙8が斜めに延びていることで、線路方向、枕木方向および上下方向の振動に対応することが期待できる。なお、角度は、45度であることが好ましいことが期待されるが、荷重分布に依存すると考えられる。
【0033】
なお、形成した空隙8の先端部が応力集中部とならないように、先端に丸みがついていることが望ましい。
【0034】
また、正面視において、空隙8の形状が、略長方形である。これにより、空隙8が円形である場合に比べて、吊り具5と筐体1との接触面積を確保することができる。結果として、筐体1側に発生する応力を低減できる。
[第3の実施形態]
【0035】
図13を用いて、本発明の第3の実施形態について説明する。その際、第1および第2の実施形態との相違点を主に説明し、第1および第2の実施形態との共通点については説明を省略または簡略する。
【0036】
図13は、本発明の第3の実施形態に係る鉄道車両用電気品の吊り具と筐体との接合部分の拡大図である。
【0037】
第1の実施形態との違いは、吊り具直角部7において、直角部7を構成する2辺13および14の延長上に略長方形の空隙8が形成されている点である。すなわち、正面視において、空隙8の形状は、略L字形状であり、空隙8のL字を形成する2つの直線部12Aおよび12Bのうち、1つの直線部12Aは、吊り具直角部7の一辺13(言い換えれば、天板31の辺)に沿って延びており、もう1つの直線部12Bは、吊り具直角部7の他辺14(言い換えれば、側面板32Aの辺)に沿って延びている。空隙8は、吊り具直角部7の2辺13および14に沿ってそれぞれ延長した直線部12Aおよび12Bであるものの、そのような2つの直線部12Aおよび12Bがあることで、異方性が強くなることを低減し、鋼板の位置ずれによって生じる相対変位を許容することができる。また、吊り具直角部7の2辺13および14の延長上に略長方形の空隙8を形成するため、吊り具直角部7を作製する際に、一括して空隙8を形成できるメリットがある。
【0038】
なお、形成した空隙8の2つの直線部の各々の先端が応力集中部とならないように、空隙8の2つの直線部の各々の先端には丸みがついている。
【0039】
以上、幾つかの実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実行することが可能である。例えば、空隙8は、予め吊り具5に形成されているが、それに代えて、一比較例に係る吊り具85が天板および側面板に溶接された後に空隙8が形成され、結果として、吊り具85が、空隙8が形成された吊り具5となってもよい。また、例えば、天板31と側面板32Aとの接合や、吊り具5と天板31および側面板32Aとの接合は、溶接に代えて、接着等の他種の接合でもよい。また、例えば、吊り具5の天板31に接合する部位と吊り具5の側面板32Aに接合する部位との間が空隙8であるといった構成は、天板31および側面板32Aが連続溶接された筐体に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1:筐体、2:鉄道車両、3:梁、4:筐体角部、5:吊り具、8:空隙、11:鉄道車両用電気品、31:天板、32A、32B:側面板
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