【実施例】
【0018】
実施例に係る車両用ダクト10は、自動車等の車両に取り付けられ、エアコンユニットから送り出された調温空気を、インストルメントパネルなどの車両内装部材に設けられたベンチレータに案内するのに用いられる。
【0019】
図1に示すように、実施例に係る車両用ダクト10は、内部に空気を流通可能な空気流通路11が画成された筒状体であって、複数(実施例では2つ)の分割体12A,12Bを、その空気流通方向に沿う端縁部を互いに接合することで構成されている。この実施形態の車両用ダクト10は、湾曲形成されており、空気流通路11が水平面に沿うと共に両端の開口10a,10aが横に向く横引き姿勢で、車両に取り付けられる。なお、車両用ダクト10の形状はこれに限られるものではなく、任意の形状にすることができる。
【0020】
図3に示すように、車両用ダクト10は、少なくとも車両への取り付け時に下側となる部位を含む分割体12Aが、空気流通路11を画成する発泡体からなる基材16の外表面側に、ホットメルト接着剤を繊維状に定着させてなる繊維層18を形成して構成されている。この実施形態では、車両への取り付け時に車両用ダクト10の下側半分を構成する第1分割体12Aの基材16の外表面側に繊維層18を形成して構成されている。この車両用ダクト10において、車両への取り付け時に下側となる部位を含まない分割体12Bは、合成樹脂のソリッド体、発泡体などの単層またはこれらを重ね合わせた複層により空気流通路11を画成する基材16を構成することができ、またこの分割体12Bの基材16の外表面側に、ホットメルト接着剤を繊維状に定着させてなる繊維層18を形成するようにすることもできる。この実施形態では、車両への取り付け時に車両用ダクト10の上側半分を構成する第2分割体12Bが、第1分割体12Aと同様に、発泡体からなる基材16の外表面側に繊維層18を形成して構成されている。すなわち、この車両用ダクト10は、空気流通路11を画成する発泡体からなる基材16の外表面の全面に繊維層18を形成してある。ここで、車両用ダクト10における車両への取り付け時に下側となる部位とは、車両用ダクト10の外面に生じる結露が流下する流下方向下流側に該当する部位を指し、車両用ダクト10の横引き部分であれば底面および側面の下端部であり、車両用ダクト10の縦引き部分であれば下端部である。
【0021】
次に、分割体12A,12Bについて具体的に説明する。実施例では全ての分割体12A,12Bの基本的な構成が同じであることから纏めて説明する。
図2に示すように、分割体12A,12Bは、車両用ダクト10の空気流通方向に溝が延びる略軒樋状に基材16が形成されると共に、基材16の空気流通方向に沿う端縁部の夫々に外側方へ延びるフランジ部14が形成されている。車両用ダクト10は、両側のフランジ部14を互いに突き合わせて2つの分割体12A,12Bを筒状になるように組み合わせると共に、突き合わせたフランジ部14を接合して分割体12A,12Bを一体化している(
図1または
図3参照)。2つの分割体12A,12Bの接合は、反応系、溶液系、水分散系、ホットメルトなどの接着剤や、フランジ部17の接合面を構成する材料の融着等を用いることができ、実施例では、フランジ部17の接合面を構成する熱可塑性樹脂発泡体の融着によって接合される。
【0022】
図3に示すように、分割体12A,12Bのダクト基材16は、独立気泡構造の発泡体から構成されている。このダクト基材16を構成する発泡体としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系の熱可塑性樹脂フォームや、ポリウレタンフォームなどを用いることができる。また、ダクト基材16は、独立気泡構造の発泡体で構成することで、車両用ダクト10の内外方向での空気の流通を阻み得るようになっている。ここで、ダクト基材16は、軟質発泡体が用いられており、気密のために車両用ダクトに一般的に用いられる合成樹脂製の板材と異なり弾力性を有している。更に、ダクト基材16は、発泡体の気泡を完全に潰さない範囲で圧縮成形しても、発泡体を圧縮しないままの何れの状態であってもよい。
【0023】
繊維層18は、ダクト基材16の外表面側に繊維状に塗布したホットメルト接着剤を硬化することで形成されている。この繊維層18は、カーテンスプレー法や、スパイラルスプレー法、オメガスプレー法、サミットスプレー法等の従来公知の塗布方法によりホットメルト接着剤をダクト基材16の外表面の全面に繊維状に塗布することにより形成され、硬化した繊維状のホットメルト接着剤により車両用ダクト10の外表面に微細な凹凸を形成している。ここで、繊維層18は、ダクト基材16の外表面で硬化したホットメルト接着剤の繊維状の繊維径が5〜200μmの範囲となるよう形成することが好ましい。このような繊維径となるようホットメルト接着剤を繊維状に定着することで、車両用ダクト10の外表面に微細な凹凸を形成して空隙を設けることができ、外面に発生した結露を空隙で保水して車両用ダクト10から結露が滴下することを効果的に防止できる。また、繊維層18は、ダクト基材16の外表面に対するホットメルト接着剤の単位面積あたりの塗布量を15〜150g/m
2となるよう塗布して硬化することが好ましい。
【0024】
このように、車両用ダクト10は、ダクト基材16によって気密構造とされると共に、このダクト基材16の外表面側にホットメルト接着剤を繊維状に定着させてなる繊維層18を形成することで全体形状が保持されている。そして、車両用ダクト10は、外表面に形成した繊維層18により吸水性および保水性を具有するようになっている。
【0025】
ここで、繊維層18は、オレフィン系、エチレン酢酸ビニル系(EVA系)、熱可塑性ゴム、ポリアミド系、ポリエステル系、湿気硬化型ウレタン系(PUR)等のホットメルト接着剤を用いて形成することができる。この繊維層18を形成するホットメルト接着剤は、ダクト基材16と同種の接着剤を用いることで、ダクト基材16に対して繊維層18を安定して定着させることができ好ましい。この実施形態では、オレフィン系の熱可塑性樹脂フォームにより形成されたダクト基材16の外表面に、オレフィン系ホットメルト接着剤を塗布して硬化することにより繊維層18が形成されている。
【0026】
次に、繊維層18の形成に好適なホットメルト接着剤について説明する。このホットメルト接着剤は、非晶質ポリαオレフィン、スチレン−イソブレン・ブロック・コポリマー(SIS)およびスチレン・エチレン・ブチレンブロック・コポリマー(SEBS)をベースポリマーとして含み、その他の成分を含むものが好適に使用できる。ここで、非晶質ポリαオレフィンとしては、従来公知のものを使用することができ、例えば、特許第6001685号公報、特許第3153648号公報等に記載されたものを使用することができる。より詳細には、非晶質ポリαオレフィンは、例えば、プロピレン、プロピレン、エチレン、および1ーブテンを単独重合またはこれらの組み合わせを共重合させた、非晶質のオレフィン系ポリマー等である。
【0027】
ここで、非晶質ポリαオレフィンの軟化点が100℃超であることが好ましい。非晶質ポリαオレフィンの軟化点をこの範囲とすることで、非極性樹脂との接着性を維持しつつも耐熱強度を高めることが可能となる。更には、非晶質ポリαオレフィンの軟化点は、165℃以下であることがより好ましい。なお、軟化点は、JISK6863(ホットメルト接着剤の軟化点試験方法、環球法)に従って測定されたものである。
【0028】
前記したSISは、JIS K 7210に準拠した200℃、4.9kgfにおけるメルトマスフローレート(Melt mass−Flow Rate:MFR)が、15g/10min以上(好ましくは、17g/10min以上、さらに好ましくは19g/10min以上)である。なお、SISのMFRの上限値は、特に限定されないが、50g/10min以下等とすることが好ましい。なお、SISのMFRを調整するためには、分子量を調整すればよい。また、本発明に係るSISは、スチレン含量が18wt%以下である。また、スチレン含量の下限値は、特に限定されないが、例えば8wt%以上である。このMFRの範囲にあれば、高い流動性が得られ、ダクト基材16に対してスプレー塗布する際の塗布性が高くなる。一方、このスチレン含量の数値範囲にあれば、SEBSや非晶質ポリαオレフィンとの相溶性が高くなり、成形性に優れる。このようなSISとしては、従来公知のものを利用可能であり、例えば、SIS5403P(JSR株式会社製、スチレン含量:15%)やVECTOR4114N(TSRC社製、スチレン含量:15%)等を利用可能である。
【0029】
前記したSEBSは、JIS K 7210に準拠した230℃、2.16kgfにおけるメルトマスフローレート(MFR)が、100g/10min以上(好ましくは、150g/10min以上)である。SEBSのMFRの上限値としては、特に限定されないが、400g/10min以下とすればよい。なお、SEBSのMFRを調整するためには、分子量を調整とすればよい。このSEBSとしては、従来公知のものを利用可能であり、例えば、特許第6001685号公報等を参照して準備すればよい。この高流動性を示すSEBSは、水素化されており、その一端には3本の分岐鎖のある放射状ポリマーが結合されている。また、本発明に係るSESSのスチレン含量は特に限定されず、例えば5wt%〜45wt%(好ましくは、5wt%〜30wt%)等とすればよい。
【0030】
またホットメルト接着剤に含まれるその他の成分として、従来公知の添加剤、例えば、オイル成分(可塑剤)、粘着付与樹脂、酸化防止剤、熱安定剤、充填剤、ワックス等を配合可能である。
【0031】
ホットメルト接着剤には、可塑剤としてオイル成分を配合することが好ましい。このようなオイル成分を混合することで、ダクト基材16に対するスプレー塗布の塗布性を向上し得ると共に、SEBSや非晶質ポリαオレフィンとの相溶性を向上させることが可能となる。オイル成分としては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイルおよび芳香族系オイル等が挙げられ、これらの混合物でも良い。なお、オイル成分として植物性油等を用いてもよい。これらオイル成分は、0.5重量%から10重量%添加できる。好ましくは1.0重量%から5重量%であり、より好ましくは、1.3重量%から2.0重量%である。なお、SEBSや非晶質ポリαオレフィンとの相溶性をより向上させるという点で、オイル成分としては、パラフィンオイルが更に好ましく、中でも粘度30OcSt以上のパラフィンオイルが特に好ましい。
【0032】
粘着付与樹脂としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、水添脂肪族系石油樹脂、水添芳香族系石油謝縮、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、口ジン系樹脂およびこれらの変性樹脂からなる群より選択される11種以上の粘着付与樹脂を例示できる。
【0033】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤(例えば、Irganox1010(BASF社製))、イオウ系酸化防止剤(例えば、SUMILIZER TP−D(住友化学社製))およびリン系酸化防止剤等(例えば、Irgafos168(BASF社製)、JP−650(城北化学社製))を例示できる。
【0034】
ワックスとしては、例えば動物系ろう(みつろう、鯨ろう等)や植物系ろう(木ろう等)、石油系ろう(パラフィンワックス等)等の天然ろうや、合成炭化水素(低分子ポリエチレン等)や脂肪酸エスチル(ポリエチレングリコール等)等の合成ろうが挙げられる。
【0035】
ここで、ホットメルト接着剤の組成物全体に対する非晶質ポリαオレフィンの含有量(MA)は、50〜70質量%であり、好ましくは55〜70質量%である。また、ホットメルト接着剤の組成物全体に対するSISの含有量(MB)は、1〜10質量%であり、好ましくは2〜9質量%である。更に、SEBSの含有量(MC)は、組成物全体に対して、0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。ここで、(MB+MC)/MAは、5/100〜25/100の範囲内であり、6/100〜23/100であることが好ましい。このような配合割合とすることにより、SEBSが非晶質ポリαオレフィンとSISとの相溶性を高め、PP等の非極性材料に対する接着性、濡れ性、耐熱性、均一な塗布性および剥離強度等に優れるホットメルト接着剤とすることが可能となる。また、その他の成分の含有量は特に限定されるものではないが、ホットメルト接着剤の組成物全体に対して、その他の成分の合計として10質量%以上等とすればよい。そして、オイル成分を含有する場合には、例えば0.5〜5質量%等とし、粘着付与樹脂を含有する場合には、10〜40質量%等とすることができる。
【0036】
ここで、ホットメルト接着剤は、レオメーターによる180℃での粘度が50Pa・s以下である。また、粘度の下限値としては特に限定されないが、例えば、2.0Pa・s以上である。粘度は、JIS K 2283 原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法に従ったものである。粘度をこのような範囲とすることで、ダクト基材16に対してスプレー塗布するのに適した粘度のホットメルト接着剤とすることができ、繊維状に塗布したホットメルト接着剤をダクト基材16の外表面側に定着させることができる。
【0037】
そして、非晶質ポリαオレフィン、スチレン−イソブレン・ブロック・コポリマー(SIS)およびスチレン・エチレン・ブチレンブロック・コポリマー(SEBS)をベースポリマーとして含んだホットメルト接着剤において、非晶質ポリαオレフィンの軟化点や、SISおよびSEBSのMFRが前記した範囲のものを採用することにより、ダクト基材16が非極性樹脂および極性樹脂の何れから形成されている場合であっても好適にホットメルト接着剤を繊維状に塗布して定着させて繊維層18を形成することができる。特に、オレフィン系の熱可塑性樹脂フォーム等の非極性樹脂により形成されたダクト基材16に対してホットメルト接着剤を繊維状に塗布して定着する場合に特に好適である。また、ホットメルト接着剤を、例えば、5μm〜200μm程度の細い繊維径で定着させることができ、繊維間の空隙を保った繊維層18を形成することが可能となる。
【0038】
このようなホットメルト接着の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法により製造可能である。すなわち、例えば、一軸又は二軸押出機等の連続混練機、もしくは、ロール、バンバリーミキサ一、ニーダ一、ブラネタリーミキサ一等のパッチ式混練機に、上述した原料を投入し混練することで得ることができる。
【0039】
次に、実施例に係る車両用ダクト10の製造方法について説明する。第1の製造方法は、
図4(a)に示すように、独立気泡構造の発泡体を所定厚みのシート状に形成した2枚のダクト基材16(発泡体シート)の端部を支持具(図示せず)で夫々保持し、両ダクト基材16を平らな姿勢で間隔をあけて対向する状態に支持する。この状態でヒータ等の加熱手段Hにより加熱し、ダクト基材16を軟化させる(加熱工程)。
【0040】
図4(b)に示すように、加熱工程で加熱された2枚のダクト基材16を、一対の支持具でダクト基材16を向かい合わせて支持した状態のまま成形型30にセットし、成形型30の縁部において2枚のダクト基材16の端縁部を挟持する。そして、成形型30により2枚のダクト基材16の外側から空気を吸引すると共に2枚のダクト基材16の間に空気を吹き込むことで、端縁部が成形型30で挟持された状態で2枚のダクト基材16が離間して成形型30の成形面に押し付けられて成形面の形状に追従した形状となるよう各ダクト基材16が成形される(成形工程)。このとき、成形型30に挟持されたダクト基材16の端縁部同士が融着することで、各ダクト基材16から前述した略軒樋形状の分割体12A,12Bが形成されるのと同時に、2つの分割体12A,12Bの端縁部が接合され、その後成形型30から脱型することで発泡体のみからなるダクト状部材20が得られる(脱型工程)。
【0041】
そして、ダクト状部材20の余剰部をトリミングした後に、溶融させたホットメルト接着剤をカーテンスプレー法や、スパイラルスプレー法、オメガスプレー法、サミットスプレー法等により塗布機30を用いてダクト基材16の外表面に繊維状に塗布して硬化させることで、ダクト基材16の外表面側にホットメルト接着剤が繊維状に定着した繊維層18を形成する(繊維層形成工程)。ここで、ホットメルト接着剤は、ダクト基材16の第1分割体12A側の外表面に塗布するようにしてもよく、ホットメルト接着剤を塗布する過程でダクト基材16を上下反転させ、第1分割体12Aの外表面および第2分割体12Bの外表面の夫々に塗布するようにしてもよい。このとき、繊維層18は、硬化したホットメルト接着剤の繊維状体の繊維径が5〜200μmの範囲となるよう形成することが好ましい。また、ホットメルト接着剤は、ダクト基材16の外表面に対する単位面積あたりの塗布量を15〜150g/m
2となるよう塗布することが好ましい。これにより、空気流通路11に臨む発泡体で構成されたダクト基材16の外表面側に繊維層18を備え、ダクト基材16の外表面に吸水および保水可能な空隙を残した筒状の車両用ダクト10を得ることができる。
【0042】
次に、車両用ダクト10の第2の製造方法について説明する。この第2の製造方法は、前述した第1の製造方法に対し、繊維層形成工程を成形工程の前段階で行う点で相違している。すなわち、第2の製造方法は、
図5(a)に示すように、独立気泡構造の発泡体からシート状に形成したダクト基材16(発泡体シート)の一方の面に、溶融させたホットメルト接着剤をカーテンスプレー法や、スパイラルスプレー法、オメガスプレー法、サミットスプレー法等により塗布機30を用いて繊維状に塗布して硬化させることで、ダクト基材16の外表面側にホットメルト接着剤が繊維状に定着した繊維層18を形成する(繊維層形成工程)。ここで、ホットメルト接着剤は、ダクト基材16の第1分割体12Aを形成するダクト基材16にのみ塗布するようにしてもよく、第1分割体12Aおよび第2分割体12Bを形成するダクト基材16の夫々に塗布するようにしてもよい。なお、第2の製造方法においても、硬化したホットメルト接着剤の繊維状体の繊維径や、ダクト基材16の外表面に対するホットメルト接着剤の単位面積あたりの塗布量は、前述した第1の製造方法と同様の範囲とすることが好ましい。
【0043】
そして、
図5(b)に示すように、繊維層18が形成されていない面側が対向する状態となるよう2枚のダクト基材16の端部を支持具(図示せず)で夫々保持し、この状態でヒータ等の加熱手段Hにより加熱し、ダクト基材16を軟化させる(加熱工程)。ここで、第2の製造方法における加熱工程での加熱手段Hによる加熱は、ダクト基材16の外表面で硬化して定着させたホットメルト接着剤が溶融しない温度で行うことが好ましい。これにより、ダクト基材16の外表面にホットメルト接着剤が繊維状に定着した繊維層18を維持できる。その後、
図5(c)に示すように、加熱工程で加熱された2枚のダクト基材16を、一対の支持具でダクト基材16を向かい合わせて支持した状態のまま成形型30にセットし、成形型30の縁部において2枚のダクト基材16の端縁部を挟持する。そして、成形型30により2枚のダクト基材16の外側から空気を吸引すると共に2枚のダクト基材16の間に空気を吹き込むことで、端縁部が成形型30で挟持された状態で2枚のダクト基材16が離間して成形型30の成形面に繊維層18が押し付けられて成形面の形状に追従した形状となるよう各ダクト基材16が成形される(成形工程)。このとき、成形型30に挟持されたダクト基材16の端縁部同士が融着することで、前述した略軒樋形状の分割体12A,12Bが形成されるのと同時に、2つの分割体12A,12Bの端縁部が接合され、その後成形型30から脱型する(脱型工程)。その後、端縁部等の余剰部をトリミングすることで、空気流通路11に臨む発泡体で構成されたダクト基材16の外表面側に繊維層18を備え、ダクト基材16の外表面に吸水および保水可能な空隙を残した筒状の車両用ダクト10を得ることができる。
【0044】
このように、実施例の車両用ダクト10によれば、ダクト基材16が独立気泡構造の発泡体で構成されているので断熱性が高く、車両用ダクト10の外面に生じる結露を抑制することができる。また、ダクト基材16の外表面に繊維層18を設けることで、断熱性が向上し、結露を抑制することができる。そして、ダクト基材16の外表面に繊維層18を設けることで、結露が発生した場合でもホットメルト接着剤からなる繊維状体の空隙に結露を吸い取り保水し得るので、結露が滴下することを防止でき、車両用ダクト10から滴下する結露による周辺機器の不具合を回避できる。
【0045】
車両用ダクト10は、独立気泡構造の発泡体で構成されたダクト基材16によって気密構造になっているので、空気流通路11を流通する調温空気の流量低下や圧力損失を抑えることができる。また、車両用ダクト10は、独立気泡構造の発泡体で構成されたダクト基材16の外表面に繊維層18を設けてあるから、従来のダクトと比べて消音効果が低下することがなく優れた消音効果が期待できる。更に、外表面に設けた繊維層18によりダクト基材16の剛性を補うことができる。
【0046】
車両用ダクト10の第1の製造方法や第2の製造方法によれば、従来のように発泡体シートと不織布とをホットメルト接着剤等で接合した積層シートを予め準備する必要がなく、製造工程を簡略化し得る。また、車両用ダクト10は、ダクト基材16の外表面にホットメルト接着剤を直接塗布して硬化させることで繊維層18を形成することができ、従来のように伸び率が低い不織布を積層していないから、成形工程においてダクト形状への成形性が落ちることがなく、ダクト形状の自由度を高くできる。また、ホットメルト接着剤からなる繊維層18をダクト基材16の外表面に定着させるので、ダクト基材16から繊維層18が剥離することはなく、ダクト基材16の外表面に繊維層18を安定して保持することができる。また、本実施形態の製造方法では、収縮率が異なる複数の素材を積層していないことから、製造後の車両用ダクト10に歪みが生ずることはなく、所定形状のダクトを製造することができる。更に、第1の製造方法によれば、発泡体シートを予め所定のダクト形状に成形することで、ダクト基材16の余剰部分をトリミングした後に外表面にホットメルト接着剤を塗布して繊維層18を形成することができ、ダクト形状に成形する前にホットメルト接着剤を塗布する第2の製造方法に比べて、ダクト基材16に塗布するホットメルト接着剤の塗布量を抑制することができる利点がある。
【0047】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、例えば以下のように変更することができる。
(1)実施例では、2つの分割体で車両用ダクトを構成したが、3つ以上の分割体で車両用ダクトを構成してもよい。
(2)第2の製造方法において、繊維層形成工程と加熱工程との順序を逆転させるようにしてもよい。すなわち、ダクト基材16をヒータ等の加熱手段Hにより加熱した後に、ダクト基材16にホットメルト接着剤を塗布するようにしてもよい。