特開2019-218099(P2019-218099A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2019218099-蓋材、およびそれを用いた容器 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-218099(P2019-218099A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】蓋材、およびそれを用いた容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/20 20060101AFI20191129BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20191129BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   B65D77/20 L
   B65D65/40 A
   B32B27/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-116917(P2018-116917)
(22)【出願日】2018年6月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】玉越 守
(72)【発明者】
【氏名】上村 拓也
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AA04
3E067AB01
3E067AB16
3E067AB21
3E067BA15A
3E067BB01A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067BB26A
3E067BC04A
3E067EA06
3E067EA35
3E067EE07
3E067GD06
3E086AB01
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB51
3E086BB59
3E086CA01
3E086DA02
3E086DA08
4F100AA20D
4F100AH06D
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK41C
4F100AK42A
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA07
4F100CB03B
4F100DD01B
4F100DE01D
4F100GB18
4F100JB12C
4F100JB13C
4F100JB16B
4F100JK06
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】蓋材に熱が加わる工程を経ても、付着防止機能が低下せず、かつ、容器への融着性能が維持可能な蓋材を得る。
【解決手段】少なくとも、基材(2)、接着層(3)、保護層(4)、付着防止層(5)の順に積層されたシートからなる蓋材(1)であって、接着層が表面に凹凸形状を備え、容器本体に融着可能な熱可塑性樹脂からなり、保護層が硬化性樹脂からなり、付着防止層が粒子径1.0μm以下の疎水性微粒子(51)を含有していることを特徴とする蓋材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材、接着層、保護層、付着防止層の順に積層されたシートからなる蓋材であって、
接着層が表面に凹凸形状を備え、容器本体に融着可能な熱可塑性樹脂からなり、
保護層が硬化性樹脂からなり、
付着防止層が粒子径1.0μm以下の疎水性微粒子を含有していることを特徴とする蓋材。
【請求項2】
保護層の厚みが、乾燥時の塗布量で、1.0〜5.0g/mの範囲としたことを特徴とする請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】
保護層が、熱硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項1、又は2に記載の蓋材。
【請求項4】
接着層が、ホットメルト接着剤からなる事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蓋材。
【請求項5】
蓋材を容器本体に融着する時に、蓋材に熱と圧力を掛けることによって、保護層と付着防止層にクラックを生じ、生じたクラックを通して接着層樹脂が容器本体に融着可能としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の蓋材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の蓋材を、開口部に融着したことを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ状などの容器開口部に融着して密封する蓋材で、特に、液体、半固体、ゲル状物質等の内容物が、蓋材内面に接触しても、付着しにくい蓋材と、それを用いた容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーグルト、ゼリー、プリン、シロップなどを入れる容器において、容器開口部に融着して密封する蓋材は、消費者が食す為、蓋を開封した時に、内容物が蓋材内面に付着する問題があった。
付着した内容物は、容量が小さな場合には、その容量に対する比率は大きく、無視できないばかりか、開封して蓋材を持ち上げた時に、周囲を汚したりしやすい問題もあった。
【0003】
このような問題に対し、例えば、特許文献1では、
少なくとも基材層と熱封緘層とを有する蓋材において、
前記熱封緘層の外面に、高さ100μm以下の多数の微小突起が全面に亘って密に設けられると共に、
この突起を有する前記外面に、付着防止層が形成され、
該付着防止層は、疎水性微粒子からなり、その付着量が0.05g/m以上でかつ多くとも前記微小突起の頂端面を僅かに覆う量以下に設定されていることを特徴とする内容物付着防止蓋材を提案している。
【0004】
しかしながら、この蓋材は、熱封緘層の外面に直接付着防止層を設けることになる為、付着防止層を塗工する際の熱乾燥時や、容器に蓋材を熱融着させる時などの、熱を使用する工程によって、熱封緘層の状態が変わり、付着防止層の性能が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5441843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、蓋材に熱が加わる工程を経ても、付着防止機能が低下せず、かつ、容器への融着性能が維持可能な蓋材を得ることが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、
少なくとも、基材、接着層、保護層、付着防止層の順に積層されたシートからなる蓋材であって、
接着層が表面に凹凸形状を備え、容器本体に融着可能な熱可塑性樹脂からなり、
保護層が硬化性樹脂からなり、
付着防止層が粒子径1.0μm以下の疎水性微粒子を含有していることを特徴とする蓋材である。
【0008】
請求項1に係る本発明の蓋材は、保護層を接着層と付着防止層の間に設けることによって、蓋材をシールする時に受ける輻射熱によっても、接着層の凹凸形状が変化することがないので、内容物が接する付着防止層の性能を維持可能とすることが出来る。
【0009】
本発明の請求項2に係る発明は、保護層の厚みが、乾燥時の塗布量で、1.0〜5.0g/mの範囲としたことを特徴とする請求項1に記載の蓋材である。
【0010】
請求項2に係る本発明の蓋材は、保護層の厚みが、乾燥時の塗布量で、1.0〜5.0g/mであることにより、熱接着時には、確実に付着防止層にクラックを起こし、接着層を流出させ、融着可能としている。
【0011】
本発明の請求項3に係る発明は、保護層が、熱硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項1、又は2に記載の蓋材である。
【0012】
請求項3に係る本発明の蓋材は、保護層が熱硬化性樹脂であることから、熱が加わった際に保護層は軟化することなく、接着層により設けられた凹凸形状を維持することができる。
【0013】
本発明の請求項4に係る発明は、接着層が、ホットメルト接着剤からなる事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蓋材である。
【0014】
請求項4に係る本発明の蓋材は、接着層がホットメルト接着剤であることから、加熱と加圧によって、保護層が破壊されると、確実に破断した保護層の隙間から、ホットメルト接着剤が流出し、容器本体に融着させることができる。
【0015】
本発明の請求項5に係る発明は、蓋材を容器本体に融着する時に、蓋材に熱と圧力が掛かることによって、保護層と付着防止層にクラックを生じ、生じたクラックを通して接着層樹脂が容器本体に融着可能としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の蓋材である。
【0016】
請求項5に係る本発明の蓋材は、容器と融着する部分にだけ熱と圧力が掛って、融着可能となり、他の内容物と接する開口部近傍は保護層や付着防止層が破壊されず、内容物が付着したりする恐れがない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の蓋材は、保護層を接着層と付着防止層の間に設けることによって、蓋材をシールする時に受ける輻射熱によっても、接着層の凹凸形状が変化することがないので、内容物が接する付着防止層の性能を維持可能とすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の蓋材の構造を表わす拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の蓋材と、それを有した容器の実施形態例について、図を用いて詳細に説明する。
本発明の蓋材1は、図1に示すように、基材2、接着層3、保護層4、付着防止層5の順に積層されたシートから形成されている。
【0020】
基材2は、紙や、フィルム、金属箔、あるいはそれらを多層化した積層シートなどによって構成される。
紙としては、上質紙、特殊上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、模造紙、又は、クラフト紙などが使用できる。
また、フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体などの酸変性オレフィン系
樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、6−ナイロンなどのポリアミド系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化エチレン樹脂フィルム、セルロースアセテート、セロファンなどの繊維系フィルムなどが使用できる。
【0021】
さらに、上記素材を2種以上貼り合せた積層フィルムも使用できる。その場合、金属箔や、金属蒸着や、酸化金属蒸着などを合わせて組み合わせ、バリア性の高い積層フィルムにすることも出来る。同様に、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物などのようなバリア性の高いフィルムを積層しても良い。
金属箔としては、アルミニウム箔、銅箔、錫箔、ニッケル箔、チタン箔、鉛箔、純鉄箔、等の純金属箔の他、アルミニウム合金箔、黄銅箔、ステンレス箔、洋白箔、などの金属合金系箔も使用できる。金属箔は、光の透過を防止し、光劣化する内容物の保護に有用である。
金属箔の代わりに、酸化珪素などの酸化金属蒸着層を、上記フィルムなどに積層すると、水蒸気透過を阻止することができ、湿気による内容物の食感の低下、劣化や腐敗防止に効果がある。特に、内容物を確認できるように透明性も併せ持って必要な場合には、特に有用である。
金属箔の他に、バリア性の高いフィルムを貼り合せるなどの方法もある。バリア性の高いフィルムとしては、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、セルロースアセテート、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンやポリプロピレンの延伸フィルム、2軸延伸ポリアミドフィルム、セロファンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等から構成されるフィルムが上げられる。
また、上記フィルムに、ポリビニリデンコート、ポリビニルアルコールコート、アクリル酸系樹脂コート等を施しても良い。
【0022】
接着層3は、容器開口部に対して、シール機能を有する層で、容器本体の材料や使用目的に応じた熱可塑性樹脂が使用できる。
すなわち、冷蔵、又は冷凍して保存するチルド仕様の容器、無菌雰囲気下で内容物を充填密封するアセプティック仕様の容器、密封後ボイル処理やレトルト処理を施すレトルト仕様の容器など、それぞれの使用に耐える接着層である必要がある。
それらの使用目的に応じて、エチレン系樹脂、ポリアクリレート樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、変性ポリオレフィン樹脂等を主成分とする熱可塑性樹脂が使用出来る。
通常、上記熱可塑性樹脂は、Tダイ等で溶融塗工して積層することもできるし、相溶性のある有機溶媒に溶かして、ロールコーティング、グラビアコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、バーコーティング、などの塗工方式で基材1上に塗布することが可能である。
【0023】
しかし、接着層3として、溶融時の流動性が高く、固化する速度も速いホットメルト材が、本発明の蓋材に使用される場合、特に良い結果を得られ易い。
ホットメルト材は、軟化点が70℃台の加熱によって軟化するものもあり、また、塗布量を容易に上げることができる。
基本的には、ホットメルト接着剤をタンク内で加熱溶融して、ポンプで圧送し、圧送したホットメルト接着剤はホースを伝い、ガン先にてホットメルトアプリケーターによって、塗布コントロールすることもできる。
塗工は、ガンの種類により点塗布、線塗布、面塗布、スパイラル塗布、スプレー塗布、ロール塗布など、多種多様な塗布方法が可能である。
また、グラビア方式で網点状に凹凸を付けて塗工しても良い。
【0024】
ホットメルト材には、ワックス、熱可塑性樹脂、および、粘着付与剤の少なくとも一種
が含まれる。
【0025】
ワックスとしては、天然ワックスと合成ワックスの両方共使用できる。
天然ワックスとしては、キャンデリラロウ、カルナバロウ、米ぬかロウ、蜜ロウなどがある。また、合成ワックスとしては、パラフィン、マイクロクリスタリン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプスワックスなどが利用できる。
【0026】
熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタアクリレート、メタクリル・スチレン共重合体、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレンや4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、エチレン・4フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂などがあり、用途に応じて使用できる。
【0027】
粘着付与剤としては、ロジン誘導体、ポリペルテン樹脂、石油樹脂などがあり、用途に応じて使用できる。
【0028】
接着層3の表面は、凹凸のある面にすることが好ましい。表面に凹凸を有することによって、内容物が付着しにくく、高さ100μm以下の凸形状とすることが好ましい。凸形状のパターンは、規則的な高さや間隔を有することが好ましいが、必ずしもパターン化していなくてもかまわない。
塗工に際しては、突起状に塗工することが好ましい。例えば、印刷法によって、ドット状に塗工する方法が、生産性は高く、安定した高さと間隔のパターンで塗工可能である。
また、粒子状や繊維状のビーズやフィラーを接着層素材に混練したものを使用しても良い。
【0029】
保護層4は、熱や紫外線などの外部要因によって樹脂の重合が進む硬化型樹脂を使用する。
保護層には、熱可塑性の樹脂を用いると、熱によって軟化し、付着防止の効果がなくなるので、用いることはできない。
保護層に用いることができる樹脂としては、アクリル系硬化性樹脂、ウレタン系硬化樹脂、エポキシ系硬化樹脂、メラミン系硬化樹脂、フェノール系硬化樹脂、シリコーン系硬化樹脂、ポリエステル系硬化樹脂などが使用できる。
一液硬化型であっても、二液硬化型であってもかまわないし、熱硬化性であっても、光硬化性であってもかまわない。
ただ、加熱と同時に加圧した時に、クラックを生じ、破断しやすい素材とする。
【0030】
保護層4の表面に設ける付着防止層5は、粒子径1.0μm以下の疎水性微粒子51と、それを固定可能なバインダー52とから構成される組成物から形成される。付着防止層5は、疎水性微粒子51によって形成可能な微小な凹凸表面を形成し、内容物の付着を防止可能とする。
【0031】
疎水性微粒子51としては、無機酸化物粒子の表面に、疎水性官能基を付与する表面処理した微粒子が使用できる。
無機酸化物粒子としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタンなどが使用可能である。
また、疎水性官能基を付与する表面処理としては、シランカップリング剤による表面処理な使用可能で、湿式法、乾式法のいずれでも良い。特にDVD法、プラズマ法の乾式法が好ましい。
【0032】
シランカップリング剤としては、ジメチルシリル系シランカップリング剤、トリメチルシリル系シランカップリング剤、ジメチルポリシロキサン系シランカップリング剤、アミノアルキルシリル系シランカップリング剤、アルキルシリル系シランカップリング剤、メタクリルシリル系シランカップリング剤、などが使用可能であるが、特にメチル基の多いトリメチルシリルシランカップリング剤が好ましい。
【0033】
また、シランカップリング剤として、フッ素系シランカップリング剤を使用することもできる。フッ素系シランカップリング剤としては、疎水基としてフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤が使用可能である。例えば、トリフルオロプロピルトリアルコキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリアルコキシシラン等が使用できる。
【0034】
さらに、フッ素系樹脂の微粒子を疎水性微粒子として使用しても良い。
フッ素系樹脂の微粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロポロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロポロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、パーフルオロアルコキシ樹脂などの微粒子が使用できる。
【0035】
バインダー52としては、金属アルコキシドの脱アルコール反応や脱水反応などによる硬化物が使用できる。また、金属アルコキシドとシランカップリング剤を混合して硬化させる硬化物も使用できる。
金属アルコキシドは、一般式M(OR)で記載できる。
(ここで、MはSi、Ti、Alなどの金属原子、Rはアルキル基、nは整数)
この内、特にテトラエトキシシラン、アルミニウムイソプロポキシドなどの金属原子MがSi、Ti、Alからなる金属アルコキシドが好ましい。
また、シランカップリング剤としては、官能基として、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクルリ基、アクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、スルファイド基、イソシアネート基を有するものが使用できる。
【0036】
付着防止層5は、前記バインダー52の素材に、疎水性微粒子51を加え、混合して保護層4の表面に塗布後、加熱乾燥すると共に、熱硬化させて、形成することができる。
付着防止層5の厚みが、乾燥・硬化後に、0.5〜3.0g/mになるように塗工することが好ましい。
付着防止層5の厚みが0.5g/m未満の場合、保護層が露出する部分が生じ、充分な付着防止効果が得られない。
また、付着防止層5の厚みが3.0g/m以上の場合、シール時に付着防止層5にクラックを起こしにくくなり、容器開口部周縁との充分なシール強度を得られない問題が生じる。
【0037】
なお、付着防止層5の塗布方法としては、一般的なロールコーティング、ダイレクトグラビアコーティング、リバースグラビアコーティング、バーコーティング、キスリバースコーティング、ダイコーティング、ドクターブレードコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、刷毛による手塗りコーティングなどで塗布することができる。
【0038】
図2は、本発明の蓋材が容器に融着する部分の状態を示す拡大断面図である。
本発明の蓋材1は、容器開口部周縁6に接し、熱と圧が加えられると、付着防止層5の内
側の保護層4にクラックが生じ、その下側の接着層3の熱可塑性樹脂が溶融して容器開口部周縁6に接することができる。このように、保護層4を乗り越えた接着層3の熱可塑性樹脂が容器開口部周縁の端面に接し、場合によっては、周縁に融着溜り31が生じさせると、融着強度が高くなり、確実に融着可能となる。
容器開口部周縁6に接しない蓋材1の内面は、保護層4にクラックなどは生じず、付着防止層5も崩れないので、開口部内側に、内容物が付着することはない。
このようにして、蓋材1を容器に融着することができる。
【実施例】
【0039】
<実施例1>
蓋材として、基材層として、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの内面側に、厚さ7μmのアルミニウム箔を、ウレタン系接着剤を使用し、ドライラミネーション機によって貼り合せた。さらに、アルミニウム箔側の表面に、厚み25μmの低密度ポリエチレン樹脂をTダイで成膜しながら、押し出しラミネーション機で貼り合せ、基材層を製造した。
接着層として、基材層の低密度ポリエチレン樹脂面に、ビカット軟化点75℃のホットメルト接着剤(東洋アドレ株式会社製トヨメルト(登録商標)H−319FA)を、グラビアコーティング機によって塗工した。
グラビアコーティングは、グラビア版として線幅75線/インチ、深さ145μmの格子版を使用し、接着層表面にピッチ340μmで高さ45μmの規則的な凸形状を形成した。
保護層として、接着層の上に、熱硬化型の二液硬化型ポリエステル樹脂(DICグラフィックス株式会社製ディックシール(登録商標)A−970NT、硬化剤KN−75)を塗工し、乾燥炉を通して乾燥させ、乾燥後の塗布量が2.4g/mになるように塗工した。
付着防止層として、疎水性微粒子に平均一次粒子径12nmのジメチルシロキサン系シランカップリング剤で表面処理を施したシリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製RY200S)、バインダーとして、テトラエトキシシランを使用し、固形分比1:1の割合で混合したコート液を、1.2g/mになるように塗布し、蓋材を作成した。
【0040】
<実施例2>
接着層として、基材層の低密度ポリエチレン樹脂面に、ビカット軟化点103℃のホットメルト接着剤(東洋アドレ株式会社製トヨメルト(登録商標)H−232)を、グラビアコーティング機によって塗工した。
その他の点は実施例1に準じて蓋材を作成した。
【0041】
<実施例3>
保護層として、接着層の上に、塗工する二液硬化型ポリエステル樹脂(熱硬化型)を、乾燥後の塗布量が1.2g/mになるように塗工した。
その他の点は実施例1に準じて蓋材を作成した。
【0042】
<実施例4>
保護層として、接着層の上に、塗工する二液硬化型ポリエステル樹脂(熱硬化型)を、乾燥後の塗布量が4.8g/mになるように塗工した。
その他の点は実施例1に準じて蓋材を作成した。
【0043】
<比較例1>
保護層を設けなかった点を除いて、実施例1に準じて蓋材を作成した。
【0044】
<比較例2>
保護層を設けなかった点を除いて、実施例2に準じて蓋材を作成した。
【0045】
<比較例3>
保護層として、接着層の上に、塗工する二液硬化型ポリエステル樹脂(熱硬化型)を、乾燥後の塗布量が0.8g/mになるように塗工した。
その他の点は実施例1に準じて蓋材を作成した。
【0046】
<比較例4>
保護層として、接着層の上に、塗工する二液硬化型ポリエステル樹脂(熱硬化型)を、乾燥後の塗布量が5.2g/mになるように塗工した。
その他の点は実施例1に準じて蓋材を作成した。
【0047】
<比較例5>
保護層として、接着層の上に、熱可塑性の低密度ポリエチレンを用い、押し出しラミネーション機で、5.2g/mになるように積層した。
その他の点は実施例1に準じて蓋材を作成した。
【0048】
<比較例6>
保護層として、接着層の上に、熱可塑性の低密度ポリエチレンを用い、押し出しラミネーション機で、2.4g/mになるように積層した。
その他の点は実施例2に準じて蓋材を作成した。
【0049】
【表1】
【0050】
<はじき性評価方法>
蓋材を100mm角の正方形に切り取って、純水との接触角を測定し、はじき性とした。蓋材に掛かる熱エネルギーによる付着防止性能の変化を確認する為、接触角を測定する前に、予め、80℃と100℃に1分間加熱した蓋材も、未加熱蓋材と合わせて用意し、評価を行った。
融着時に100℃の温度にさらされる可能性があるので、100℃に1分間加熱した蓋材で、純水との接触角が150度以上であれば、はじき性が高く、付着防止性能があると判断した。
【0051】
<シール強度評価方法>
蓋材を幅15mm、長さ100mmの短冊状に5本分を切り取って、ポリスチレンシートに重ね、ヒートシールバーでシールし、引っ張り試験機で剥離強度を測定した。
シール条件は200℃、加圧力0.2MPaで1.0秒間で、20mmの長さ分をシールし、引っ張り試験機で剥離強度を測定した。
剥離試験は、JIS Z 0238に準拠し、300mm/minの速度で90度剥離し、5点の平均をシール強度とし、シール強度が14N/15mm以上を良とした。
【0052】
<はじき性評価結果>
はじき性評価では、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、比較例4は、すべて、100℃で加熱した蓋材であっても、純水の接触角は150度以上で、しっかりと水をはじいた。
しかし、比較例1、比較例2、比較例5、比較例6では、加熱しなかった蓋材でははじき性があったものの、80℃に加熱した蓋材では、150度未満の接触角で、はじき性が劣った。また、比較例3は、80℃に加熱したものでもはじき性があったが、100℃加熱品では150度未満の接触角に低下した。
【0053】
<シール強度評価結果>
シール強度評価では、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、比較例1、比較例2、比較例3は、すべて、14N/15mm以上で、良好であった。
しかし、比較例4、比較例5、比較例6では、14N/15mm未満で、溶着の強度が弱かった。
【0054】
【表2】
【0055】
以上の結果から、100℃の高温加熱後にはじき性を確保できるようにするには、保護層が必要で、保護層も、熱可塑性ではなく熱硬化等の硬化した保護層が必要である。
しかも、保護層の塗布量が1g/m未満の薄い層では、簡単に破断し、100℃の加熱時にはじき性が低下し、効果が得られないが、シール強度は高かった。
また、保護層の塗布量が5g/m以上では、シール時に充分なクラックが生じにくく、接着層が表面に流れ難くなり、完全なシール強度が得られない問題が生じた。
この評価結果から、保護層は、1〜5g/mの範囲に、制御する必要があることが分かる。
【0056】
本発明の蓋材を使用した容器は、以上のようなもので、保護層を接着層と付着防止層の間に設けることによって、蓋材をシールする時に受ける輻射熱によっても、接着層の凹凸形状が変化することがない。これらは、汎用の生産設備で製造可能であり、生産性も高く、安定した製造が可能である。この為、内容物が接する付着防止層の性能を確実に維持可能とし、安価に、かつ、安定した付着防止性能を有する蓋材、およびその蓋材を用いた容器を提供でき、本発明のメリットは大きい。
【符号の説明】
【0057】
1・・・・・・・・・蓋材
2・・・・・・・・・基材
3・・・・・・・・・接着層
4・・・・・・・・・保護層
5・・・・・・・・・付着防止層
51・・・・・・・・疎水性微粒子
52・・・・・・・・バインダー
図1