特開2019-218449(P2019-218449A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2019-218449樹脂フィルム、導電性フィルム及び積層フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-218449(P2019-218449A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】樹脂フィルム、導電性フィルム及び積層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20191129BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20191129BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20191129BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20191129BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20191129BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20191129BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20191129BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20191129BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   C08J5/18CFD
   C08J5/18CER
   C08L101/00
   C08L67/00
   C08L23/00
   H01B5/14 A
   H01B5/14 Z
   H01B13/00 503B
   H01B13/00 503Z
   B32B9/00 A
   B32B27/36
   B32B27/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-115891(P2018-115891)
(22)【出願日】2018年6月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鷹尾 寛行
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
5G307
5G323
【Fターム(参考)】
4F071AA46
4F071AC11
4F071AE05
4F071AF06
4F071AH12
4F071BA01
4F071BB06
4F071BB07
4F071BC02
4F100AB17
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK02A
4F100AK41A
4F100AK42
4F100AR00B
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CA06A
4F100CA06C
4F100EH66B
4F100GB43
4F100JG01B
4F100JK06A
4F100JL06
4F100JL13A
4F100JM02B
4F100YY00A
4F100YY00C
4J002CF061
4J002EJ066
4J002EU076
4J002FD076
4J002GQ00
5G307FA02
5G307FB01
5G307FB02
5G307GA06
5G307GA08
5G307GB02
5G323AA01
5G323BA01
5G323BA02
5G323BB05
5G323BB06
(57)【要約】
【課題】真空プロセスを経由してもフィルムの汚染を抑制可能な樹脂フィルム及びこれを用いて得られる導電性フィルム、並びに積層フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】大気圧下での沸点又は熱分解点が285℃以下の酸化防止剤を含む樹脂フィルム。前記酸化防止剤の1.3Paの真空下での沸点又は熱分解点が50℃以下であることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧下での沸点又は熱分解点が285℃以下の酸化防止剤を含む樹脂フィルム。
【請求項2】
前記酸化防止剤の1.3Paの真空下での沸点又は熱分解点が50℃以下である請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂フィルムを備える基材フィルム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の樹脂フィルムを備える保護フィルム。
【請求項5】
請求項3に記載の基材フィルムと、
前記基材フィルムの一方の面側に配置された導電層と
を備える導電性フィルム。
【請求項6】
前記基材フィルムの厚みが50μm以上250μm以下である請求項5に記載の導電性フィルム。
【請求項7】
前記基材フィルムの形成材料が、ポリエステル系樹脂又はシクロオレフィン系樹脂である請求項5又は6に記載の導電性フィルム。
【請求項8】
基材フィルムと、
前記基材フィルムの一方の面側に配置された導電層と
前記導電層の前記基材フィルム側とは反対側及び前記基材フィルムの他方の面側のうちの少なくとも一方に配置された請求項4に記載の保護フィルムと
を備える導電性フィルム。
【請求項9】
前記基材フィルムが、請求項3に記載の基材フィルムである請求項9に記載の導電性フィルム。
【請求項10】
前記保護フィルムの厚みが5μm以上55μm以下である請求項8又は9に記載の導電性フィルム。
【請求項11】
前記保護フィルムの形成材料が、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂又はシクロオレフィン系樹脂である請求項8〜10のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項12】
前記保護フィルムの隣接層と接する側の面は粘着性を有し、
前記保護フィルムと前記隣接層との間の剥離力が1N/50mm以下である請求項8〜11のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項13】
前記導電層がスパッタ膜である請求項5〜12のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項14】
請求項3に記載の基材フィルム、又は請求項4に記載の保護フィルムが貼り合わされた基材フィルムを準備する工程、及び
前記基材フィルムの少なくとも一方の面側に真空プロセスにて薄膜を形成する工程
を含む積層フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記真空プロセスがスパッタリングである請求項14に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記薄膜が導電層である請求項14又は15に記載の積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム、導電性フィルム及び積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂フィルムの表面に導電層を形成した導電性フィルムが、フレキシブル回路基板、電磁波シールドフィルム、フラットパネルディスプレイ、タッチセンサ、非接触式ICカード、太陽電池等に用いられている。導電性フィルムの主な機能は電気伝導であり、樹脂フィルムの表面に設けられる導電層の組成や厚みは用途目的にあった電気伝導性を得られるように適宜選択される。導電層の形成にはスパッタリングに代表される真空プロセスが広く採用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2009−249688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特に真空プロセスによる成膜後においてフィルムの表面が汚染されている場合があることが判明した。汚染されたフィルムに対して成膜を行っても所望の薄膜が得られない場合がある。また、ロール・トゥ・ロール法にて成膜する際にフィルム巻き取りや搬送用のロールに汚染物質が付着したり、汚染されたフィルムをロール状に巻き取った場合には汚染物質が他の箇所にも付着したりして、真空プロセスを経て薄膜を形成する積層フィルムの製造の歩留まりが低下するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、真空プロセスを経由してもフィルムの汚染を抑制可能な樹脂フィルム及びこれを用いて得られる導電性フィルム、並びに積層フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討したところ、フィルムの汚染はフィルム中に含まれている添加剤が真空下で滲み出てきたことに起因するのではないかとの知見を得た。さらに検討した結果、下記構成を採用することにより上記目的を達成し得ることを見出し本発明を完成するにいたった。
【0007】
本発明は、一実施形態において、大気圧下での沸点又は熱分解点が285℃以下の酸化防止剤を含む樹脂フィルムに関する。
【0008】
大気圧下での沸点又は熱分解点(以下、「沸点等」ともいう。)が比較的低い酸化防止剤を用いることで、真空下での沸点等も低くなっている。当該樹脂フィルムでは、仮に酸化防止剤が真空プロセス中にフィルム表面に滲み出たとしても、沸点等の低い酸化防止剤が蒸発ないし分解して表面から放散し、樹脂フィルム表面の汚染を抑制することができる。その結果、樹脂フィルム上に所望の薄膜を形成可能となるとともに、樹脂フィルムの他の箇所やロールへの汚染物質の付着を防止することができ、薄膜形成の歩留まりを向上させることができる。酸化防止剤の沸点等が上記範囲を超えると、樹脂フィルム表面からの放散が生じにくくなり、樹脂フィルムが汚染されたままとなるおそれがある。
【0009】
一般的には、フィルムの汚染を防止するには、高分子量の酸化防止剤を用いたり、樹脂との親和性の高い酸化防止剤を用いたりして、酸化防止剤のフィルム表面への滲出を可能な限り抑制する方策が採られ得る。これに対し、本発明は酸化防止剤のフィルム表面への滲出は許容しつつ、低沸点等の酸化防止剤の採用により表面から積極的に放散させて汚染防止を図るという新規なコンセプトに基づくものである。
【0010】
前記酸化防止剤の1.3Paの真空下での沸点又は熱分解点は50℃以下であることが好ましい。これにより真空下での酸化防止剤の放散をより促進させることができ、樹脂フィルムの清浄度を高めることができる。
【0011】
本発明は、一実施形態において、当該樹脂フィルムを備える基材フィルムに関する。
【0012】
本発明は、一実施形態において、当該樹脂フィルムを備える保護フィルムに関する。
【0013】
本発明は、一実施形態において、当該基材フィルムと、
前記基材フィルムの一方の面側に配置された導電層と
を備える導電性フィルムに関する。
【0014】
当該導電性フィルムは、真空下での汚染が抑制された基材フィルムを用いているので、所望の導電層が形成された導電性フィルムを歩留まり良く作製することができる。
【0015】
前記基材フィルムの厚みは50μm以上250μm以下であることが好ましい。これによりロール・トゥ・ロール法での取り扱いが容易となる。上記下限値より薄い場合はスパッタ時に掛かる温度によりフィルムの変形が起こったり、上記上限値より厚い場合はオリゴマー等のフィルム添加剤のブリードアウトが多くなったりするといったリスクが生じる。
【0016】
前記基材フィルムの形成材料は、ポリエステル系樹脂又はシクロオレフィン系樹脂であってもよい。基材フィルムの形成材料として多用されるこれらの樹脂であっても酸化防止剤による汚染を効率的に防止することができる。
【0017】
本発明は、一実施形態において、基材フィルムと、
前記基材フィルムの一方の面側に配置された導電層と
前記導電層の前記基材フィルム側とは反対側及び前記基材フィルムの他方の面側のうちの少なくとも一方に配置された当該保護フィルムと
を備える導電性フィルムに関する。
【0018】
これにより酸化防止剤による保護フィルムの汚染を防止することができ、清浄度の高い導電性フィルムを効率良く製造することができる。特に、導電層を基材フィルムの両面に形成する方法として、基材フィルムの一方の面側に導電層を形成し、その上に保護フィルムを配置した後、基材フィルムの他方の面側に導電層を形成するという手順が採用されることがある。この手順では、他方の面側の導電層の形成の際に、保護フィルムは真空プロセスに供されることになるものの、低汚染性の保護フィルムを用いているので両面導電性フィルムを清浄かつ効率良く製造することができる。
【0019】
前記基材フィルムが、本発明の一実施形態に係る基材フィルムであってもよい。これにより基材フィルム及び保護フィルムのいずれにおいても酸化防止剤による汚染を防止することができ、導電性フィルムの生産性及び清浄度の両方を高いレベルとすることができる。
【0020】
前記保護フィルムの厚みが5μm以上55μm以下であることが好ましい。このような範囲の薄い保護フィルムであっても十分に酸化防止剤による汚染を防止することができるとともに、導電性フィルムの薄型化を図ることができる。
【0021】
前記保護フィルムの形成材料は、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂又はシクロオレフィン系樹脂であってもよい。保護フィルムの形成材料として多用されるこれらの樹脂であっても酸化防止剤による汚染を効率的に防止することができる。
【0022】
前記保護フィルムの隣接層と接する側の面は粘着性を有し、前記保護フィルムと前記隣接層との間の剥離力が1N/50mm以下であることが好ましい。保護フィルムと隣接層との間の剥離力を上記範囲とすることで、剥離工程での保護フィルムのスムーズな剥離を達成することができる。
【0023】
前記導電層がスパッタ膜であることが好ましい。低抵抗の導電層を得るにはスパッタリングにより緻密層を形成することが好ましいとされる。より厳しい真空条件が求められるスパッタリングにより導電層を形成しても、基材フィルムや保護フィルムの汚染を防止することができる。
【0024】
本発明は、一実施形態において、当該基材フィルム、又は当該保護フィルムが貼り合わされた基材フィルムを準備する工程、及び
前記基材フィルムの少なくとも一方の面側に真空プロセスにて薄膜を形成する工程
を含む積層フィルムの製造方法に関する。
【0025】
当該製造方法では、真空プロセスに供される基材フィルム又は保護フィルムが低汚染性であるので、薄膜形成の効率化、基材フィルムや保護フィルム、ロールの汚染防止を高いレベルで達成することができ、積層フィルムの製造プロセス全体での歩留まりを向上させることができる。
【0026】
一実施形態において、前記真空プロセスがスパッタリングであってもよい。より厳しい真空条件が求められるスパッタリングにより薄膜を形成しても、樹脂フィルムの汚染を防止することができる。
【0027】
一実施形態において、前記薄膜が導電層であってもよい。スパッタリングによる低抵抗の導電層の形成が求められる場合でも、樹脂フィルムの清浄度を高めて積層フィルムの生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムの模式的断面図である。
図2A】本発明の一実施形態に係る導電性フィルムの模式的断面図である。
図2B】本発明の一実施形態に係る導電性フィルムの模式的断面図である。
図2C】本発明の一実施形態に係る導電性フィルムの模式的断面図である。
図3A】本発明の一実施形態に係る導電性フィルムの模式的断面図である。
図3B】本発明の一実施形態に係る導電性フィルムの模式的断面図である。
図3C】本発明の一実施形態に係る導電性フィルムの模式的断面図である。
図4】真空下での沸点を求めるための沸点換算図表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一実施形態に係る樹脂フィルム及び導電性フィルムについて、図面を参照しながら以下に説明する。図の一部又は全部において、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。上下等の位置関係を示す用語は、単に説明を容易にするために用いられており、本発明の構成を限定する意図は一切ない。
【0030】
<樹脂フィルム>
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムの模式的断面図である。樹脂フィルム10は、大気圧下での沸点又は熱分解点が285℃以下の酸化防止剤を含む。沸点等の低い酸化防止剤を用いることで、仮に真空プロセス中に樹脂フィルムの表面に酸化防止剤が滲み出たとしても、その放散を促進して表面の汚染を防止することができる。
【0031】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、大気圧下での沸点又は熱分解点が285℃以下であれば特に限定されず、合成樹脂に配合される従来公知の酸化防止剤が挙げられる。例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤等の一次酸化防止剤、およびイオウ系酸化剤やリン系酸化剤等の二次酸化防止剤等が使用できる。
【0032】
これらの酸化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤等の一次酸化防止剤と、イオウ系酸化剤やリン系酸化剤等の二次酸化防止剤を組み合わせることで優れた耐候性や耐熱性が発揮される。
【0033】
酸化防止剤の含有量としては特に制限されず、所望の酸化防止効果が得られる範囲で適宜設定することができる。
【0034】
(樹脂)
樹脂フィルム10の主成分である樹脂材料及び樹脂フィルム10に対する処理としては、樹脂フィルム10の用途に応じて適宜変更することができる。以下、樹脂フィルム10を基材フィルムとして用いる場合、及び樹脂フィルム10を保護フィルムとして用いる場合についてそれぞれ説明する。
【0035】
(基材フィルム)
樹脂フィルム10は基材フィルムとして好適に用いることができる。基材フィルムは、各種薄膜や機能層が形成された積層フィルムの強度ベースとなるフィルムである。積層フィルムが表示素子やセンサ素子等に組み込まれる場合は、基材フィルムもそのまま留置されることになる。基材フィルムは、樹脂フィルム10を単独で備えていてもよく、樹脂フィルム10に加えて他の層等を備えていてもよい。
【0036】
基材フィルムの形成材料としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリイミド(PI)等のポリイミド系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、耐久性、柔軟性、生産効率、コスト等の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリイミド(PI)等のポリイミド系樹脂が好ましい。特に、コストパフォーマンスの観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0037】
基材フィルムは、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。
【0038】
基材フィルムには、追加的な薄膜や機能層の配置又は形成に先立って、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、基材フィルム上に形成される薄膜等との密着性を担保させるようにしてもよい。また、薄膜等を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより、基材フィルム表面を除塵、清浄化してもよい。
【0039】
基材フィルムの厚みは、50μm以上250μm以下の範囲内であることが好ましく、80μm以上200μm以下の範囲内であることがより好ましく、100μm以上180μm以下の範囲内であることが更に好ましい。一般的には、基材フィルムの厚みが厚い方が、加熱時の熱収縮等の影響を受けにくくなるため望ましい。しかし、電子部品等のコンパクト化により、基材フィルムの厚みもある程度薄くすることが望ましい。一方、基材フィルムの厚みが薄すぎると、基材フィルムの透湿性や透過性が上昇して、水分やガス等を透過させてしまい、導電層等の薄膜が酸化されやすくなる。従って、本実施形態では、基材フィルムの厚みをある程度の厚みをもたしつつ薄くすることで、積層フィルム(例えば、導電性フィルム等)自体も薄くでき、電磁波シールドシートやセンサ等に用いた場合の厚みを抑えることが可能となる。そのため、電磁波シールドシートやセンサ等の薄型化に対応できる。さらに、基材フィルムの厚みが前記の範囲内であると、基材フィルムの柔軟性を確保できつつ機械的強度が十分であり、フィルムをロール状にして下地層層や導電層を連続的に形成する操作が可能である。
【0040】
(保護フィルム)
樹脂フィルム10は保護フィルムとしても好適に用いることができる。保護フィルムは、薄型の基材フィルムの強度を補強し取り扱い性を高めたり、基材フィルム上に形成された薄膜の酸化や傷付きを防止したりするために設けられる。従って、保護フィルムは、主に積層フィルムの製造過程及び保管過程において一時的に設けられることが多く、積層フィルムを表示素子やセンサ素子等に組み込む際には保護フィルムは剥離して除去されることが多い。もちろん、設計に応じて素子等に保護フィルムをそのまま組み込むことも可能である。保護フィルムは、樹脂フィルム10を単独で備えていてもよく、樹脂フィルム10に加えて他の層等を備えていてもよい。
【0041】
保護フィルムの材質及び構造としては特に限定されるものではないが、ポリオレフィン系樹脂を含有する基材層と、熱可塑性エラストマーを含有する粘着層とを有することが望ましい。保護フィルムは、粘着層が隣接層(基材フィルムや、下地層、導電層等の薄膜)側と対向するように配置される。粘着層を形成する材料として、再剥離可能なアクリル系粘着剤等の公知の粘着剤も用いることができる。
【0042】
前記基材層を形成するポリオレフィン系樹脂は特に制限されず、例えば、ポリプロピレン又はプロピレン成分とエチレン成分からなるブロック系、ランダム系等のプロピレン系ポリマー;低密度、高密度、リニア低密度ポリエチレン等のエチレン系ポリマー;シクロオレフィン系ポリマー;エチレン−αオレフィン共重合体などのオレフィン系ポリマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのエチレン成分と他モノマーとのオレフィン系ポリマー等を例示できる。これらポリオレフィン系樹脂は1種を単独で又は2種以上を用いることができる。これらの材料を含むフィルムを一軸延伸又は二軸延伸させてもよい。
【0043】
前記基材層はオレフィン系樹脂を主成分として含有するが、所定の酸化防止剤以外に、例えば、帯電防止剤、充填剤(酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等)、顔料、目ヤニ防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤等の添加剤を適宜に配合することができる。
【0044】
基材層の厚みは、特に制限されないが、好ましくは18μm以上、さらに好ましく20μm以上である。一方、基材層の厚みは30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましい。また、基材層1は、単層でもよく二層以上の多層からなっていてもよい。
【0045】
なお、基材層の粘着層付設面と反対面には、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理や、パッタエッチング処理、プライマー等の下塗り処理などの、表面処理を必要に応じて施すこともできる。
【0046】
粘着層を形成する熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、オレフィン系エラストマーなどの粘着剤のベースポリマーとして用いられているものを特に制限なく使用できる。より具体的には、スチレン・ブタジエン・スチレン(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレン(SIS)、スチレン・エチレン−ブチレン共重合体・スチレン(SEBS)、スチレン・エチレン−プロピレン共重合体・スチレン(SEPS)等のA−B−A型ブロックポリマー;スチレン・ブタジエン(SB)、スチレン・イソプレン(SI)、スチレン・エチレン−ブチレン共重合体(SEB)、スチレン・エチレン−プロピレン共重合体(SEP)等のA−B型ブロックポリマー;スチレン・ブタジエンラバー(SBR)等のスチレン系ランダム共重合体;スチレン・エチレン−ブチレン共重合体・オレフィン結晶(SEBC)等のA−B−C型のスチレン・オレフィン結晶系ブロックポリマー;オレフィン結晶・エチレン−ブチレン共重合体・オレフィン結晶(CEBC)等のC−B−C型のオレフィン結晶系ブロックポリマー;エチレン−αオレフィン、エチレン−プロピレン−αオレフィン、プロピレン−αオレフィン等のオレフィン系エラストマー、さらにはこれらの水添物等があげられる。これら熱可塑性エラストマーは1種を単独で又は2種以上を用いることができる。
【0047】
粘着層の形成に際しては、前記熱可塑性エラストマーに、粘着特性の制御等を目的に、必要に応じて、例えば、軟化剤、オレフィン系樹脂、シリコーン系ポリマー、液状アクリル系共重合体、リン酸エステル系化合物、粘着付与剤、老化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、その他に、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の充填剤や顔料などの添加剤を適宜に配合することができる。
【0048】
粘着層の厚みは、特に制限定されず、要求される密着力などに応じて適宜に決定すればよいが、通常0.1μm程度であり、好ましくは0.2μm以上であり、さらに好ましく0.3μm以上である。粘着層の厚みは、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。
【0049】
なお、粘着層の表面には、例えば、コロナ放電処理、紫外線照射処理、火炎処理、プラズマ処理やスパッタエッチング処理などの、粘着性の制御や貼付作業性等を目的とした表面処理を必要に応じて施すこともできる。さらに、粘着層には必要に応じて、実用に供されるまでの間、セパレータなどを仮着して保護することもできる。
【0050】
また、基材層の粘着層の付設面と反対の面には必要に応じて、離型性を付与するための離型層を形成することができる。離型層は基材層及び粘着層と共に共押し出しにより形成してもよいし、塗布により形成してもよい。
【0051】
離型層を共押し出しにより形成する際は2種以上のポリオレフィン系樹脂からなる混合物を用いて形成することが好ましい。2種以上のポリオレフィン系樹脂からなる混合物を用いることにより、2種のポリオレフィン系樹脂の相溶性を制御することにより、適度な表面粗さを形成し、適度な離型性が付与されるためである。離型層を共押し出しにより形成する際、その厚みは通常1〜30μm程度であり、好ましくは2〜20μm、さらに好ましく3〜10μmである。
【0052】
離型層を塗布により形成する際の離型剤としては、離型性を付与しうるものを特に制限なく使用できる。例えば、離型剤としては、シリコーン系ポリマーや長鎖アルキル系ポリマーからなるものがあげられる。離型剤は、無溶剤型、有機溶剤に溶解させ溶剤型、水中で乳化した乳化型のいずれであってもよいが、溶剤型、乳化型の離型剤は安定して離型層3を基材層1に付設することができる。その他に、離型剤としては紫外線硬化型のものなどがあげられる。離型剤の具体的としては、ピーロイル(一方社油脂社製)、信越シリコーン(信越化学工業社製)等が入手可能である。
【0053】
離型層の厚みは、特に制限定されないが、前述の通り、薄膜化形成した場合に汚染低減効果が大きいことから、通常1〜1000nm程度、さらには5〜500nm、特に10〜100nmであるのが好ましい。
【0054】
保護フィルムの厚み(粘着層や離型層が配置されている場合はそれらの厚みを含む。)は5μm以上55μm以下であることが好ましい。保護フィルムの厚みの下限値は、8μmがより好ましく、10μmがさらに好ましく、15μmが特に好ましい。保護フィルム3の厚みの上限値は、50μmがより好ましく、45μmがさらに好ましく、40μmが特に好ましい。保護フィルムの厚みを上記範囲とすることで十分な保護機能を発揮しつつ、薄型化を達成することができる。
【0055】
上述のように、保護フィルムの隣接層と接する側の面は粘着性を有することが好ましい。具体的には、保護フィルムと隣接層との間の剥離力が1N/50mm以下であることが好ましく、0.8N/50mm以下であることがより好ましく、0.6N/50mm以下であることがさらに好ましい。一方、上記剥離力は、0.01N/50mm以上であることが好ましく、0.02N/50mm以上であることがより好ましく、0.04N/50mm以上であることがさらに好ましい。保護フィルムと隣接層との間の剥離力を上記範囲とすることで、意図しない保護フィルムの剥離を防止しつつ剥離工程での保護フィルムのスムーズな剥離を達成することができる。
【0056】
(樹脂フィルムの製造方法)
樹脂フィルム10の製造方法は特に限定されず、従来公知の製膜方法を採用することができる。製膜方法としては、例えばカレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が例示できる。上述した樹脂及び酸化防止剤、並びに必要に応じて溶媒や他の添加材を加えた樹脂組成物を用い、上記製膜方法で樹脂フィルムを形成することができる。
【0057】
<導電性フィルム>
樹脂フィルム10を基材フィルムや保護フィルムとして備える導電性フィルムについて以下に説明する。図2A図2C図3A図3Cは、それぞれ本発明の一実施形態に係る導電性フィルムの模式的断面図である。まず、それぞれの導電性フィルムの層構造を説明し、その後、基材フィルム及び保護フィルム以外の構成について説明する。ただし、本発明は以下に説明する層構造に限定されず、本発明の範囲内において種々の変更がなされ得る。
【0058】
(樹脂フィルムを基材フィルムとして備える導電性フィルムの層構造)
図2Aに示す導電性フィルム101は、基材フィルム1と、基材フィルム1の一方の面側に配置された導電層2aとを備える。図2Aに示すように、基材フィルム1と導電層2aとの間には下地層4aが設けられていてもよい。
【0059】
図2Bに示す導電性フィルム102は、基材フィルム1と、基材フィルム1の一方の面側に配置された導電層2aと、基材フィルム1の他方の面側に配置された導電層2bとを備える。図2Bに示すように、基材フィルム1と導電層2aとの間、及び樹脂フィルム1と導電層2bとの間に、それぞれ下地層4a、4bが設けられていてもよい。
【0060】
図2Cに示す導電性フィルム103は、基材フィルム1と、導電層2aと、保護フィルム3aとをこの順で備える。基材フィルム1の反対側には、導電層2bをさらに備える。図2Cに示すように、基材フィルム1と導電層2aとの間、及び樹脂フィルム1と導電層2bとの間に、それぞれ下地層4a、4bが設けられていてもよい。さらに、図示していないが、導電層2bの最表面側に別の保護フィルムを配置してもよい。
【0061】
導電性フィルム101〜103では、基材フィルム1としての樹脂フィルム10を備える。導電性フィルム103における保護フィルムとしては、樹脂フィルム10を備えていても、他のフィルムを備えていてもよい。図2A図2Cにおいて、導電層及び下地層は、それぞれ1層からなる構成を図示しているが、それぞれが2層以上の多層構成であってもよい。
【0062】
(樹脂フィルムを保護フィルムとして備える導電性フィルムの層構造)
図3Aに示す導電性フィルム201は、基材フィルム1と、基材フィルム1の一方の面側に配置された導電層2aと、導電層2aの最表面側に配置された保護フィルム3aとを備える。図3Aに示すように、基材フィルム1と導電層2aとの間には下地層4aが設けられていてもよい。
【0063】
あるいは、図3Bに示す導電性フィルム202のように、保護フィルム3bは、基材フィルム1の導電層2a側と反対側に配置されていてもよい。さらに、基材フィルム1と保護フィルム3bとの間に下地層や導電層(いずれも図示せず)を設けていてもよい。
【0064】
さらに、図3Cに示す導電性フィルム203のように、保護フィルム3a、3bが、基材フィルム1の両面側の最表面側に配置されていてもよい。導電性フィルム203においても、基材フィルム1と保護フィルム3bとの間に下地層や導電層(いずれも図示せず)を設けていてもよい。
【0065】
導電性フィルム201〜203では、保護フィルム3a、3bとしての樹脂フィルム10を備える。導電性フィルム201〜203における基材フィルムとしては、樹脂フィルム10を備えていても、他のフィルムを備えていてもよい。図3A図3Cにおいて、導電層及び下地層は、それぞれ1層からなる構成を図示しているが、それぞれが2層以上の多層構成であってもよい。
【0066】
導電性フィルムの厚みは、上記いずれの形態であっても50μm以上250μm以下であることが好ましく、80μm以上200μm以下であることが好ましく、100μm以上180μm以下であることが好ましい。導電性フィルムの厚みを上記範囲とすることで、ロール・トゥ・ロール法での取り扱いを容易にすることができる。
【0067】
(導電層)
導電層2a、2bは、電磁波シールド効果やセンサ機能等を充分に得るため、電気抵抗率が100μΩcm以下であることが好ましい。導電層2a、2bの形成材料としては、このような電気抵抗率を満足し導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、Cu,Al,Fe,Cr,Ti,Si,Nb,In,Zn,Sn,Au,Ag,Co,Cr,Ni,Pb,Pd,Pt,W,Zr,Ta,Hf、Mo,Mn,Mg,V等の金属が好適に用いられる。また、これらの金属の2種以上を含有するものや、これらの金属を主成分とする合金や酸化物等も用いることができる。透明性が求められる場合、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)も好ましく用いられる。これらの導電性化合物の中でも、電磁波シールド特性やセンサ機能に寄与する導電率が高く、比較的低価格である観点から、Cu,Alを含むことが好ましい。特に、コストパフォーマンスと生産効率の観点から、Cuを含むことが好ましいが、Cu以外の元素が不純物程度含まれていても良い。これにより、電気抵抗率が充分に小さく導電率が高いため、電磁波シールド特性やセンサ機能を向上できる。
【0068】
導電層2a、2bの形成方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、膜厚の均一性や成膜効率の観点から、スパッタリング法、化学気相成長法(CVD)や物理気相成長法(PVD)等の真空成膜法や、イオンプレーティング法、メッキ法(電解メッキ、無電解メッキ)、ホットスタンプ法、コーティング法等により成膜されることが好ましい。また、これらの製膜方法の複数を組み合わせてもよいし、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。中でも、スパッタリング法、真空成膜法が好ましく、スパッタリング法により得られるスパッタ膜であることが特に好ましい。これにより、ロール・トゥ・ロール製法により連続生産でき生産効率を高めるとともに、成膜時の膜厚や表面粗さを制御することができるため、導電性フィルムの表面抵抗値の上昇を抑制できる。また、薄くて膜厚が均一で、緻密な導電層を形成することができる。
【0069】
導電層2a、2bの厚みは特に限定されないものの、それぞれ独立して10nm以上250nm以下であることが好ましい。導電層2a、2bの厚みの下限値は、20nmが好ましく、50nmがより好ましい。一方、導電層2a、2bの厚みの上限値は、200nmが好ましい。導電層2a、2bの厚みが上記上限値を超えると、加熱後の導電性フィルムのカールが発生しやすくなったり、デバイスの薄型化が困難になったりする。また、導電層2a、2bの強度の低下によるパターン配線の剥離が生じたりする。厚みが上記下限値より小さいと、加湿熱条件下で導電性フィルムの表面抵抗値が高抵抗化しやすくなり目標とする加湿熱信頼性が得られないことがある。
【0070】
(保護層)
保護層は、例えば導電層2a、2bが大気中の酸素の影響を受けて自然に酸化することを防止するために、導電層2a、2bの最表面側に形成することができる(図示せず)。保護層は、導電層の錆び防止効果を示すものである限り特に限定されないが、スパッタできる金属が好ましく、Ni,Cu,Ti,Si、Zn,Sn,Cr,Fe、インジウム、ガリウム、アンチモン、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、パラジウム、タングステンからなる中から選ばれるいずれか1種類以上の金属又はこれらの酸化物が用いられる。Ni,Cu,Tiは,不動態層を形成するため腐食されにくく、Siは耐食性が向上するため腐食されにくく、Zn,Crは表面に緻密な酸化被膜を形成するため腐食されにくい金属であるため好ましい。
【0071】
保護層の材料としては、導電層2a、2bとの密着性を担保させて導電層2a、2bの錆びを防止する観点から、2種の金属からなる合金を用いることはできるが、3種以上の金属からなる合金が好ましい。合金3種以上の金属からなる合金としては、Ni−Cu−Ti、Ni−Cu−Fe,Ni−Cu−Cr等が挙げられ、防錆機能と生産効率の観点から、Ni−Cu−Tiが好ましい。なお、導電層2a、2bとの密着性を担保させる観点から、導電層2a、2bの形成材料を含む合金であることが好ましい。これにより、導電層2a、2bの酸化を防ぐことができる。
【0072】
また、保護層の材料としては、例えば、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズ(ATO)、アルミドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)が含まれていても良い。導電性フィルムの初期の表面抵抗値の上昇を抑制するだけでなく、加湿熱条件下の表面抵抗値の上昇を抑制することができ、表面抵抗値の安定化を最適にできるため、好ましい。
【0073】
前記金属の酸化物とは、SiO(x=1.0〜2.0)、酸化銅、酸化銀、酸化チタン等の酸化物が好ましい。なお、前述の金属、合金、酸化物等の代わりに、導電層上にアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂のような樹脂層を形成することで防錆効果をもたらすことも可能である。
【0074】
保護層の膜厚は、1〜50nmが好ましく、2〜30nmがより好ましく、3〜20nmが好ましい。これにより、耐久性が向上し表面層から酸化を防ぐことができるため、加湿熱条件下での表面抵抗値は上昇を抑制できる。
【0075】
(下地層)
下地層は、導電層2a、2bの基材フィルム1への密着性や導電性フィルムへの強度付与、電気的特性の制御等、目的に応じた下地層を設けることで導電性フィルムの高機能化を図ることができる。下地層4a、4bとしては特に限定されず、易密着層、ハードコート層(アンチブロッキング層等として機能するものを含む。)、誘電体層等が挙げられる。
【0076】
(易密着層)
易密着層は、接着性樹脂組成物の硬化膜である。易密着層は、導電層に対して良好な密着性を有する。
【0077】
接着性樹脂組成物としては、易密着層形成後の硬化膜として十分な接着性と強度とを持つものを特に制限なく使用できる。用いる樹脂としては熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂、及びこれらの混合物などがあげられるが、これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく易密着層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。紫外線硬化型樹脂を含むことで、紫外線硬化性を有する接着性樹脂組成物が容易に得られる。
【0078】
接着性樹脂組成物としては、硬化の際に架橋構造を形成する材料が好ましい。易密着層での架橋構造が促進されると、それまで緩やかだった膜内部構造が強固となり、膜強度が向上される。こうした膜強度の向上が密着性の向上に寄与していると推察されるからである。
【0079】
接着性樹脂組成物は、(メタ)アクリレートモノマー及び(メタ)アクリレートオリゴマーのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。これにより、アクリロイル基に含まれるC=C二重結合に起因する架橋構造の形成が容易となり、膜強度の向上を効率的に図ることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0080】
本実施形態で用いる、主成分としての(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマー及び/又はアクリレートオリゴマーは塗膜を形成させる役目を有し、具体的にはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれら2種以上の混合物が挙げられる。
【0081】
前記の(メタ)アクリレートの中でも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、或いはこれらの混合物が、耐摩耗性、硬化性の点からとりわけ好ましい。
【0082】
また、ウレタンアクリレートオリゴマーを用いることもできる。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させた後に、水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させる方法や、ポリイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応させた後に、ポリオールを反応させる方法や、ポリイソシアネート、ポリオール、水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させる方法などが挙げられるが特に限定はない。
【0083】
ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール及びこれらの共重合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,2’−チオジエタノール等が挙げられる。
【0084】
ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0085】
架橋密度が高すぎるとプライマーとしての性能が落ち導電層密着性が低下しやすくなるため、水酸基を有する低官能(メタ)アクリレート(以下、水酸基含有(メタ)アクリレートという)を用いても良い。水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロキル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどがあげられる。上述した(メタ)アクリレートモノマー成分及び/又は(メタ)アクリレートオリゴマー成分は単独で用いても2種以上を用いても良い。
【0086】
本実施形態の紫外線硬化性を有する接着性樹脂組成物は、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤を配合することによりアンチブロッキング性が向上する。(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤としては、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、市販品としては、KR−513、KBM−5103(信越化学株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0087】
シランカップリング剤の配合量は、前記(メタ)アクリレートモノマー及び/又は(メタ)アクリレートオリゴマー100重量部に対して、0.1重量部〜50重量部、より好ましくは1〜20重量部とする。この範囲であると導電層との密着性が向上し、塗膜物性を維持することができる。
【0088】
本実施形態の易密着層は、ナノシリカ微粒子を含んでいてもよい。ナノシリカ微粒子としては、アルキルシランから合成されたオルガノシリカゾルあるいはプラズマアークにより合成されたナノシリカを用いることができる。市販品としては前者であればPL−7−PGME(扶桑化学製、商品名)、後者であればSIRMIBK15WT%−M36(CIKナノテック製、商品名)などが挙げられる。ナノシリカ微粒子の配合割合は前記(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマー及び/又はアクリレートオリゴマーとシランカップリング剤との総重量100重量部に対し、5〜30重量部が好ましく、5〜10重量部がより好ましい。下限以上とすることで表面凹凸が形成されてアンチブロッキング性を付与可能となり、ロール・トゥ・ロールでの生産が可能となる。上限以下とすることで導電層との密着性の低下を防止することができる。
【0089】
ナノシリカ微粒子の平均粒径は100〜500nmが好ましい。平均粒径100nm未満では表面に凹凸を形成するのに必要な添加量が多くなるために導電層との密着性が得られないのに対し、500nmを越えると表面凹凸が大きくなり、ピンホールの問題が発生する。
【0090】
接着性樹脂組成物は紫外線硬化性を付与するために光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、ベンゾインノルマルブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類、2,2−ジメトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン類、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−エチレンフェニル)プロパン−1−オン]、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−イソプロピルフェニル)プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン類、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−1−モルフォリノプロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン等のα−アミノアルキルフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド等のモノアシルホスフィンオキサイド類、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のモノアシルホスフィンオキサイド類などが挙げられる。
【0091】
樹脂の硬化性、光安定性、樹脂との相溶性、低揮発、低臭気という点から、アルキルフェノン系光重合開始剤が好ましく、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンがより好ましい。市販品としてはIrgacure127、184、369、651、500、891、907、2959、Darocure1173、TPO(BASFジャパン株式会社製、商品名)などが挙げられる。光重合開始剤は(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマー及び/又はアクリレートオリゴマー100重量部に対して、固形分3〜10重量部配合する。
【0092】
易密着層の形成の際には、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート及び/あるいは(メタ)アクリレートオリゴマーを主成分とする接着性樹脂組成物を、トルエン、酢酸ブチル、イソブタノール、酢酸エチル、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールなどの溶剤に希釈し、固形分が30〜50%のワニスとして調製する。
【0093】
易密着層は、樹脂フィルム1上に、上記ワニスを塗布することにより形成される。ワニスの塗布方法は、ワニス及び塗装工程の状況に応じて適時選択することができ、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法やエクストルージョンコート法などにより塗布することができる。
【0094】
ワニスを塗布後、塗膜を硬化させることによって、易密着層を形成することができる。紫外線硬化性を有する接着性樹脂組成物の硬化処理としては、ワニスが溶剤を含む場合は乾燥(例えば80℃で1分間)による溶媒除去後、紫外線照射機を用いて500mW/cm〜3000mW/cmの照射強度で、仕事量が50〜400mJ/cmの紫外線処理を行い硬化させるという手順が挙げられる。紫外線発生源としては一般的に紫外線ランプが用いられており、具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが挙げられ、照射する場合は空気中でもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中でもよい。
【0095】
紫外線硬化処理の際に加熱を行うことが好ましい。紫外線照射により接着性樹脂組成物の硬化反応が進行し、同時に架橋構造が形成される。このとき加熱を行うことにより、低紫外線量でも十分に架橋構造の形成を促進させることができる。加熱温度は、架橋度に応じて設定可能であり、好ましくは50℃〜80℃である。加熱手段は特に限定されず、温風乾燥機、輻射熱乾燥機、フィルム搬送ロールの加熱等を適宜採用することができる。
【0096】
易密着層の厚みとしては特に限定されないものの、0.2μm〜2μmであることが好ましく、0.4μm〜1.5μmであることがより好ましく、0.6μm〜1.2μmであることがさらに好ましい。易密着層の厚みを上記範囲とすることで、導電層の密着性とフィルムの柔軟性とを向上させることができる。
【0097】
(ハードコート層)
下地層として、ハードコート層を設けてもよい。さらに、導電層と保護フィルムと間やロール状に巻き取った際の導電層と保護フィルムとの間でのブロッキングを防止してロール・トゥ・ロール法による製造を可能にするために、ハードコート層に粒子を配合してもよい。
【0098】
ハードコート層の形成には、易密着層と同様の接着性組成物を好適に用いることができる。アンチブロッキング性を付与するには、前記接着性組成物に粒子を配合することが好ましい。これによりハードコート層の表面に凹凸を形成することができ、導電性フィルムにアンチブロッキング性を好適に付与することができる。
【0099】
上記粒子としては、各種金属酸化物、ガラス、プラスチックなどの透明性を有するものを特に制限なく使用することができる。例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム等の無機系粒子、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、ポリカーボネート等の各種ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系粒子やシリコーン系粒子などがあげられる。前記粒子は、1種又は2種以上を適宜に選択して用いることができる。
【0100】
上記粒子の平均粒径や配合量は、表面凹凸の程度を考慮しつつ、適宜設定することができる。平均粒径としては、0.5μm〜2.0μmが好ましく、配合量としては、組成物の樹脂固形分100重量部に対して0.2〜5.0重量部が好ましい。
【0101】
(誘電体層)
下地層として、1層以上の誘電体層を備えていてもよい。誘電体層は、無機物、有機物、あるいは無機物と有機物との混合物により形成される。誘電体層を形成する材料としては、NaF、NaAlF、LiF、MgF、CaF、SiO、LaF、CeF、Al、TiO、Ta、ZrO、ZnO、ZnS、SiO(xは1.5以上2未満)などの無機物や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマーなどの有機物が挙げられる。特に、有機物として、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用することが好ましい。誘電体層は、上記の材料を用いて、グラビアコート法やバーコート法などの塗工法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などにより形成できる。
【0102】
誘電体層の厚みは、10nm〜250nmであることが好ましく、20nm〜200nmであることがより好ましく、20nm〜170nmであることがさらに好ましい。誘電体層の厚みが過度に小さいと連続被膜となりにくい。また、誘電体層の厚みが過度に大きいと、誘電体層にクラックが生じ易くなったりする傾向がある。
【0103】
誘電体層は、平均粒径が1nm〜500nmのナノ微粒子を有していてもよい。誘電体層中のナノ微粒子の含有量は0.1重量%〜90重量%であることが好ましい。誘電体層に用いられるナノ微粒子の平均粒径は、上述のように1nm〜500nmの範囲であることが好ましく、5nm〜300nmであることがより好ましい。また、誘電体層中のナノ微粒子の含有量は10重量%〜80重量%であることがより好ましく、20重量%〜70重量%であることがさらに好ましい。
【0104】
ナノ微粒子を形成する無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、中空ナノシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ等の微粒子があげられる。これらの中でも、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化ニオブの微粒子が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
(導電性フィルムの製造方法)
導電性フィルムは、必要に応じて下地層を形成した基材フィルムの一方の面上に導電層を形成した後、ロール状に巻き取り、次いでロールからフィルムを繰り出しながら導電層上に保護フィルムを貼り合わせしていくロール・トゥ・ロール法で製造することができる。あるいは、導電層を形成するラインの下流にて保護フィルムを貼り合わせた後、ロール状に巻き取ってもよい。導電層を両面に形成する場合は、基材フィルムの一方の面上に導電層を形成した後、ロール状に巻き取り、その後フィルムを繰り出しながら形成した導電層上に保護フィルムを貼り合わせて、再度フィルム状に巻き取る。次いで、フィルムを繰り出しながら、保護フィルムを貼り合わせた面とは反対側の面に導電層を形成することで導電性フィルムを製造することができる。
【0106】
例えば、スパッタリング法により、銅からなる導電層2a、2bを成膜する場合には、ターゲットとして銅(無酸素銅が好ましい)を用い、まず、スパッタ装置内の真空度(到達真空度)を好ましくは1×10−3Pa以下となるまで排気して、スパッタ装置内の水分や樹脂フィルム1から発生する有機ガスなどの不純物を取り除いた雰囲気とすることが好ましい。
【0107】
このように排気したスパッタ装置内に、Ar等の不活性ガスを導入して、好ましくは張力付与下で樹脂フィルムを搬送させながら、減圧下でスパッタ成膜を行う。導電層成膜時の樹脂フィルムの温度は、10℃〜100℃であることが好ましく、15℃〜80℃であることがより好ましく、20℃〜60℃であることがさらに好ましい。成膜時の圧力は0.05Pa〜1.0Paであることが好ましく、0.1Pa〜0.7Paであることがより好ましい。成膜圧力が高すぎると成膜速度が低下する傾向があり、逆に圧力が低すぎると放電が不安定となる傾向がある。
【0108】
保護フィルムの貼り合わせの圧力は特に限定されないものの、0.05MPa以上3MPa以下が好ましく、0.1MPa以上2MPa以下がより好ましく、0.15MPa以上1MPa以下がさらに好ましい。
【0109】
(導電性フィルムの特性)
導電層2、2aの表面抵抗値R1は、0.001Ω/□〜20Ω/□であることが好ましく、0.01Ω/□〜10Ω/□であることがより好ましく、0.1Ω/□〜5Ω/□であることが更に好ましい。これにより生産効率に優れた実用的な保護フィルム付き導電性フィルムを提供できる。
【0110】
導電性フィルムは、搬送性や取扱いの観点からロール状に巻回されていてもよい。樹脂フィルムに下地層や導電層をロール・トゥ・ロール法で連続的に形成することで、効率良く導電性フィルムを製造することができる。
【0111】
(導電性フィルムの用途)
保護フィルム付き導電性フィルムは様々な用途に適用可能であり、例えば、電磁波シールドシートや面状センサ、表示ディスプレイ等に応用され得る。これらのデバイスの組み込み前に保護フィルムは剥離される。電磁波シールドシートは、保護フィルムを剥離した導電性フィルムを用いたものであり、タッチパネル等の形態で好適に使用することができる。前記電磁波シールドシートの厚みは、20μm〜300μmであることが好ましい。
【0112】
また電磁波シールドシートの形状は、特には限定されず、設置する対象物の形状などに応じて、積層方向(シートの厚み方向と同じ方向)からみた形状が方形状、円形状、三角形状、多角形状など、適宜の形状に選択できる。
【0113】
面状センサは、導電性フィルムを用いたものであり、モバイル機器のタッチパネルやコントローラ等のユーザーインターフェースに荷重測定用のフォースセンサや、対象物のセンシング領域、例えば自動車の外表面、ロボットや人形の表面に加わる外力を初めとする様々な物理量等をセンシングするセンサを含む。面状センサは、フォースセンサ、シールド等の形態で好適に使用することができる。前記面状センサの厚みは、20μm〜300μmであることが好ましい。
【0114】
<積層フィルムの製造方法>
本実施形態に係る積層フィルムの製造方法は、(i)基材フィルム、又は(ii)保護フィルムが貼り合わされた基材フィルムを準備する工程、及び前記基材フィルムの少なくとも一方の面側に真空プロセスにて薄膜を形成する工程を含む。本実施形態において、少なくとも(i)の基材フィルム及び(ii)の保護フィルムは、それぞれ樹脂フィルム10を備える。さらに(ii)の基材フィルムも樹脂フィルム10を備えていてもよい。
【0115】
積層フィルムは、必要に応じて下地層を形成した基材フィルムの一方の面上に真空プロセスにて薄膜を形成した後、ロール状に巻き取り、次いでロールからフィルムを繰り出しながら導電層上に保護フィルムを貼り合わせしていくロール・トゥ・ロール法で製造することができる。あるいは、薄膜を形成するラインの下流にて保護フィルムを貼り合わせた後、ロール状に巻き取ってもよい。薄膜を両面に形成する場合は、基材フィルムの一方の面上に真空プロセスにて薄膜を形成した後、ロール状に巻き取り、その後フィルムを繰り出しながら形成した薄膜上に保護フィルムを貼り合わせて、再度フィルム状に巻き取る。次いで、フィルムを繰り出しながら、保護フィルムを貼り合わせた面とは反対側の面に薄膜層を形成することで積層フィルムを製造することができる。
【0116】
上記真空プロセスは特に限定されず、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理気相成長法、プラズマCVD等の化学気相成長法等が挙げられる。中でも、膜質の均一性や膜圧制御、緻密性の観点から、スパッタリングが好ましい。
【0117】
上記薄膜としては特に限定されず、導電層、易密着層、誘電体層、ガスバリア層等が挙げられる。用途に応じて形成する薄膜を選択することで種々の積層フィルムを作製することができる。例えば、薄膜として導電層を採用することで、導電性フィルムとしての積層フィルムを効率良く製造することができる。
【実施例】
【0118】
以下、本発明に関して実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0119】
<実施例1:片面保護フィルム付き両面導電性フィルムの作製>
(導電層の形成)
樹脂フィルムとして、厚み150μm、幅1100mmのアニールPETフィルム(東レフィルム加工社製、「150−TT00A」)を用い、その片面にスパッタ成膜を行ない、導電層を形成した。スパッタ条件としては以下のとおりであった。スパッタ装置内を3.0×10−3Torr以下(0.4Pa以下)の高真空にし、その状態で、長尺状樹脂フィルムを送り出しロールから巻き取りロールへ送りながら、スパッタ成膜を行った。Arガス100体積%からなる3.0×10−3Torrの雰囲気中で、Cuターゲット材料を用いて、焼結体DCマグネトロンスパッタ法により、導電層を150nmの厚みで片面にスパッタ成膜をした。成膜後のフィルムを巻取りロールに巻き取ることで、一方の面に導電層を形成した片面導電性フィルムの巻回体を作製した。
【0120】
(保護フィルムの貼り合わせ)
スパッタ成膜により形成した導電層上に、表1に示す酸化防止剤を含む保護フィルム(東レ社製、「MS05」)を貼り合せた。貼り合わせ条件としては以下のとおりであった。作製した片面導電性フィルムを送りだしロールから巻取りロールへ送りながら、その間に、導電層面(スパッタ面)に保護フィルムを0.3MPaの圧力で貼り合せ、巻取りロールにフィルムを巻取りことで、片面導電性フィルムの導電面(スパッタ面)へ最外層としての保護フィルムを貼り合せた積層体の巻回体を作製した。
【0121】
(導電層の形成)
作製した片面導電性フィルムの巻回体の導電層配設面とは反対側に上記導電層の形成と同条件で導電層を140nmの厚みでスパッタ成膜することで、樹脂フィルムの両面に導電層が形成され、片面に保護フィルムが貼り合わされた片面保護フィルム付き両面導電性フィルムの巻回体を作製した。
【0122】
<実施例2>
保護フィルムとして、表1に示す酸化防止剤を含む東レ社製、「MS05」を用いたこと以外は、実施例1と同様の製法にて片面保護フィルム付き両面導電性フィルムの半栽巻回体を作製した。
【0123】
<比較例1>
保護フィルムとして、表1に示す酸化防止剤を含むフタムラ社製、「FSA020M」を用いたこと以外は、実施例1と同様の製法にて片面保護フィルム付き両面導電性フィルムの半栽巻回体を作製した。
【0124】
<比較例2>
保護フィルムとして、表1に示す酸化防止剤を含むフタムラ社製、「FSA020M」を用いたこと以外は、実施例1と同様の製法にて片面保護フィルム付き両面導電性フィルムの半栽巻回体を作製した。
【0125】
<評価>
作製した保護フィルム付き導電性フィルムについて、以下の評価を行った。それぞれの結果を表1に示す。
【0126】
(1)大気圧下での酸化防止剤の沸点又は熱分解点の測定
「OECDテストガイドライン103」に準拠して沸点又は熱分解点を測定した。また、酸化防止剤が既知である場合は、化学品データベースや製品安全データシート等に収載の公称値を用いた。なお大気圧は1013hPaとした。
【0127】
(2)真空下(1.3Pa)での酸化防止剤の沸点又は熱分解点の算出
図4に示す「沸点換算図表」(出典:Science of Petroleum, Vol. II. p.1281 (1938))において、B線上に上記(1)で求めた大気圧での沸点をとり、この沸点とC線上の減圧度(1.3Pa)とを直線で結び、その直線とA線との交点を減圧下(1.3Pa)での沸点として求めた。
【0128】
(3)汚染の発生の有無の観察
スパッタ工程での搬送ロール表面における付着物の有無を目視にて観察した。付着物が確認されなかった場合を「汚染なし」、付着物が確認された場合を「汚染あり」として評価した。
【0129】
【表1】
【0130】
(結果)
表1より、実施例の導電性フィルムでは、ロールの汚染が生じなかった。一方、比較例では汚染が生じていた。以上より、実施例の導電性フィルムの汚染評価の結果は、保護フィルムの表面からの酸化防止剤の放散を促進することでロールへの付着が低減ないし抑制されたことに起因すると推察される。
【符号の説明】
【0131】
1 基材フィルム
2a、2b 導電層
3 保護フィルム
4a、4b 下地層
10 樹脂フィルム
101、102、103、201、202、203 導電性フィルム
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4