【解決手段】方法は、複数のポリマー粒子30が直鎖状又は分岐状に連なる複数のポリマー3と、複数のフィラー粒子20が結合された複数のフィラー2と、複数のカップリング剤粒子4と、を有する混合モデルM3を生成するステップST2と、所定温度T及び所定圧力Pを含む条件に基づいて分子動力学計算を行い、フィラー粒子20とカップリング剤粒子4とを所定確率で結合させる第1反応処理を繰り返し実行するステップST4と、第1反応処理により全てのカップリング剤粒子4がフィラー粒子20に結合した後に、ポリマー粒子30とカップリング剤粒子4とを所定確率で結合させる第2反応処理を繰り返し実行するステップST6と、を含む。
前記第1反応処理の繰り返し実行を開始する前に、前記所定温度及び所定圧力を含む条件に基づいて分子動力学計算を行い、各々の粒子を分散させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
前記第1反応処理により全ての前記カップリング剤粒子が前記フィラー粒子に結合した後であって、前記第2反応処理の繰り返し実行を開始する前に、前記所定温度及び所定圧力を含む条件に基づいて分子動力学計算により平衡化するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
複数のポリマー粒子が直鎖状又は分岐状に連なる複数のポリマーと、複数のフィラー粒子が結合された複数のフィラーと、複数のカップリング剤粒子と、を有する混合モデルを生成する混合モデル生成部と、
所定温度及び所定圧力を含む条件に基づいて分子動力学計算を行い、所定のタイミングで互いに所定距離以内にある前記フィラー粒子と前記カップリング剤粒子とを所定確率で結合させる第1反応処理を繰り返し実行する第1反応処理実行部と、
前記第1反応処理により全ての前記カップリング剤粒子が前記フィラー粒子に結合した後に、所定のタイミングで互いに所定距離以内にある前記ポリマー粒子と前記カップリング剤粒子とを所定確率で結合させる第2反応処理を繰り返し実行する第2反応処理実行部と、
を備える、フィラー充填架橋高分子モデルを生成するシステム。
前記第1反応処理の繰り返し実行を開始する前に、前記所定温度及び所定圧力を含む条件に基づいて分子動力学計算を行い、各々の粒子を分散させる分子動力学計算実行部を備える、請求項4に記載のシステム。
前記第1反応処理により全ての前記カップリング剤粒子が前記フィラー粒子に結合した後であって、前記第2反応処理の繰り返し実行を開始する前に、前記所定温度及び所定圧力を含む条件に基づいて分子動力学計算により平衡化する分子動力学計算実行部を備える、請求項4又は5に記載のシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ゴムを構成するポリマー粒子とフィラー粒子とを直接結合しようと試みたところ、計算破綻が発生しやすいことが判明した。ポリマーモデルは、複数のポリマー粒子が直鎖状又は分岐状に連なる。フィラーモデルは、複数のフィラー粒子が結合している。計算破綻の原因は、時間の経過と共に動くポリマーモデルは運動エネルギーを有しており、動いているポリマーモデルがフィラーモデルに近接して、ポリマーモデルの複数個所がフィラーモデルに対して一度に架橋反応すると、ポリマーが突然拘束され、ポリマーに大きな力が発現してしまい、計算破綻が生じてしまう。よって、ポリマー粒子とフィラー粒子とを結合するためには、緩やかに結合するといった何らかの工夫が必要になることが判明した。計算破綻を回避するための緩やかな結合を実現するために、フィラー粒子とポリマー粒子の結合するタイミングを場所に応じて異ならせることや、両者の架橋確率を小さくすることにより、緩やかな結合が実現できるのはないかと試みたが、これらの手法では、計算破綻を回避できなかった。
【0006】
ポリマー粒子とフィラー粒子の結合は、フィラー表面となる全ての位置で生じるわけではなく、或る割合で分散していると考えられる。よって、結合箇所を分散させる必要がある。
【0007】
結合箇所を分散させることは、ポリマーにおける複数個所がフィラーに対して同時に結合してしまうことによる計算破綻を回避することに繋がる。結合箇所を分散させるために、フィラーの表面となる全てのフィラー粒子を結合可能とせずに、一部のフィラー粒子のみを結合可能に選別して設定することが考えられる。しかし、この方法を実現しようとすると、形状が常に変化するフィラーを構成するフィラー粒子について表面のフィラー粒子であるか否かを判定するロジックが必要であり、また、結合可能な粒子を選別するロジックが必要であり、煩雑である。
【0008】
本発明は、煩雑なロジックを必要とせずに、計算破綻を回避し、フィラー粒子とポリマー粒子を適切に結合させた、フィラー充填架橋高分子モデルを生成する方法、システム及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のフィラー充填架橋高分子モデルを生成する方法は、
1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、
複数のポリマー粒子が直鎖状又は分岐状に連なる複数のポリマーと、複数のフィラー粒子が結合された複数のフィラーと、複数のカップリング剤粒子と、を有する混合モデルを生成するステップと、
所定温度及び所定圧力を含む条件に基づいて分子動力学計算を行い、所定のタイミングで互いに所定距離以内にある前記フィラー粒子と前記カップリング剤粒子とを所定確率で結合させる第1反応処理を繰り返し実行するステップと、
前記第1反応処理により全ての前記カップリング剤粒子が前記フィラー粒子に結合した後に、所定のタイミングで互いに所定距離以内にある前記ポリマー粒子と前記カップリング剤粒子とを所定確率で結合させる第2反応処理を繰り返し実行するステップと、
を含む。
【0010】
第1反応処理と第2反応処理とを同時に実行すれば、フィラー粒子とカップリング剤粒子の結合及びポリマー粒子とカップリング剤粒子の結合といった異種結合が同時に発生し、結合相互作用に由来する各々の粒子間の力が大きくなりすぎて、計算破綻が生じる。
このように、第1反応処理と第2反応処理とを同時に実行しないので、上記計算破綻を回避可能となる。
さらに、自由に移動可能なカップリング剤粒子をフィラー粒子に対して結合させているので、分散した状態のカップリング剤粒子がフィラー粒子に結合する。フィラーにおいて、ポリマーと結合可能な箇所(カップリング剤粒子)が分散するので、現実に近い結合構造を得ることができると考えられる。更に、フィラーにおける結合可能な箇所が分散することになり、ポリマーの複数個所がフィラーに対して一度に結合することを防止し、計算破綻を回避可能となる。
さらに、フィラーにおけるポリマーと結合可能な箇所を分散させるために、複雑なロジックが不要であり、結合箇所の量は、カップリング剤粒子の数を調整するだけでよい。
したがって、煩雑なロジックを必要とせず、計算破綻を回避し、フィラー粒子とポリマー粒子とを適切に結合させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
[フィラー充填架橋高分子モデルを生成するシステム]
本実施形態のシステム1は、フィラーが充填され、フィラーが高分子に架橋したフィラー充填架橋高分子モデルを生成する。
【0014】
図1に示すように、システム1は、初期設定部10と、混合モデル生成部11と、分子動力学計算実行部12と、第1反応処理実行部13と、第2反応処理実行部14と、を有する。これら各部10〜14は、CPU、メモリ、各種インターフェイス等を備えたパソコン等の情報処理装置において予め記憶されている
図2に示す処理ルーチンをプロセッサが実行することによりソフトウェア及びハードウェアが協働して実現される。本実施形態では、1つの装置におけるプロセッサが各部の処理を実行しているが、これに限定されない。例えば、ネットワークを用いて分散させ、複数のプロセッサが各部の処理を実行するように構成してもよい。
【0015】
図1に示す初期設定部10は、キーボードやマウス等の既知の操作部を介してユーザからの操作を受け付け、解析対象となるフィラーモデル、ポリマーモデル、カップリング剤粒子モデルに関するデータの設定、分子動力学計算に必要な解析条件などの各種設定を実行し、これら設定値をメモリに記憶する。
図1に示すように、メモリには、フィラー充填高分子モデルデータM1、カップリング剤粒子モデルデータM2が記憶されている。
【0016】
フィラー充填高分子モデルデータM1は、
図3Aに示すように、フィラーモデル、ポリマーモデル及び各々のモデルの相互作用に関するデータを有し、フィラー2と、ポリマー3とを混合しただけのモデルであり、フィラー2がポリマー3に架橋していない。
図3Aに示すようにフィラー2は、複数のフィラー粒子20が結合相互作用によって結合されている。各々のフィラー粒子20に対して他の粒子との非結合相互作用が設定されている。
図3Aに示す実施形態では、複数のフィラー粒子20が球状に結合されているが、これに限定されず、種々の形状が採用できる。同図に示すように、ポリマー3は、複数のポリマー粒子30が結合相互作用によって直鎖状又は分岐状に連なっている。各々のポリマー粒子30に対して他の粒子との非結合相互作用が設定されている。
【0017】
カップリング剤粒子モデルデータM2は、フィラー粒子20及びポリマー粒子30と結合するためのカップリング剤粒子4に関するデータである。カップリング剤粒子4に対して他の粒子との非結合相互作用が設定されている。
【0018】
図1に示す混合モデル生成部11は、
図3Bに示すように、複数のポリマー粒子30が直鎖状又は分岐状に連なる複数のポリマー3と、複数のフィラー粒子20が結合された複数のフィラー2と、複数のカップリング剤粒子4と、を有する混合モデルM3を生成する。具体的には、
図3Bに示すように、モデルを配置する計算領域Ar1に、複数のポリマー3と、複数のフィラー2と、複数のカップリング剤粒子4と、を配置して、混合モデルM3とする。
図4に示すように、66個のフィラー粒子20を球状に結合させたフィラー2を100個配置し、100個のポリマー粒子30が連結されたポリマー3を200本配置した。
図5に示すように、更に、カップリング剤粒子4を400個添加して、混合モデルM3とした。
図4及び
図5において、フィラー粒子20は黒色球で示し、ポリマー粒子30は灰色球で示し、カップリング剤粒子4は白球で示している。
【0019】
なお、本実施形態において、混合モデル生成部11は、フィラー充填高分子モデルデータM1及びカップリング剤粒子モデルデータM2を用いているが、これに限定されない。例えば、フィラー2を表すデータ、ポリマー3を表すデータ、カップリング剤粒子4を表すデータから混合モデルM3を生成することができる。
【0020】
図1に示す分子動力学計算実行部12は、所定温度T及び所定圧力Pを含む条件に基づき分子動力学計算を実行する。分子動力学計算では、タイムステップ毎(時点毎)に粒子の挙動(位置を含む)が計算される。分子動力学計算実行部12は、分散処理及び平衡化処理が可能である。
【0021】
分散処理では、分子動力学計算を所定量のタイムステップを実行することにより、計算領域Ar1に配置された粒子が分散する。分散処理は、後述する第1反応処理の前に実行される。一般的に、タイムステップを少し経過させるだけで、各粒子が分散する。
【0022】
平衡化処理では、計算領域Ar1すなわちモデルの体積がほぼ一定になる(体積変化が閾値以下になる)まで各分子の挙動を計算する。体積の算出方法としては、混合モデルM3を構成する各粒子の座標に基づき、全ての粒子を含むように粒子を配置するための最小の立法体又は直方体の計算領域(セル)の体積を、混合モデルM3の体積とする。平衡化処理は、第1反応処理と第2反応処理の間と、第2反応処理が完全に終了した後に実行することが好ましい。粒子が結合した直後は系が不安定な状態であるためである。
【0023】
図1に示す第1反応処理実行部13は、
図6に示すように、分子動力学計算実行部12による分子動力学計算の結果に基づき、所定のタイミングで互いに所定距離以内にあるフィラー粒子20とカップリング剤粒子4とを所定確率で結合させる第1反応処理を繰り返し実行する。第1反応処理は全てのカップリング剤粒子4がフィラー粒子20に結合するまで繰り返し実行される。第1反応処理では、フィラー粒子20とカップリング剤粒子4との結合だけを実行し、カップリング剤粒子4とポリマー粒子30の結合は実行しない。第1反応処理は、例えば1000ステップなどのあるタイムステップが経過するタイミング(所定のタイミング)で実行され、実行されるタイミングにおける粒子の位置データを用いる。位置データに基づき予め定めた所定距離以内にあるフィラー粒子20とカップリング剤粒子4との結合判定を行う。結合判定では、予め定めた所定確率を用いて双方の粒子を結合するか否かを判定する。結合すると判定されれば、双方の粒子の間に結合相互作用が設定されて結合される。結合しないと判定されれば、双方の粒子の間には結合相互作用が設定されない。
【0024】
図1に示す第2反応処理実行部14は、
図7に示すように、第1反応処理により全てのカップリング剤粒子4がフィラー粒子20に結合した後に、所定のタイミングで互いに所定距離以内にあるポリマー粒子30とカップリング剤粒子4とを所定確率で結合させる第2反応処理を繰り返し実行する。第2反応処理では、カップリング剤粒子4とポリマー粒子30との結合だけを実行し、フィラー粒子20とカップリング剤粒子4の結合は実行しない。第2反応処理は、全てのカップリング剤粒子4がポリマー粒子30に結合するまで繰り返し実行される。結合対象が異なるが、処理内容が第1反応処理と同じである。
【0025】
本実施形態において、粒子間に作用する結合相互作用には、FENE−LJ(レナードジョーンズ)が設定されている。具体的に、結合相互作用は、フィラー粒子20同士の結合、ポリマー粒子30同士の結合、フィラー粒子20とカップリング剤粒子4の結合、ポリマー粒子30とカップリング剤粒子4の結合に用いられる。相互作用の強さを表すパラメータ及び粒子の径を示すパラメータは同じ値にしている。これらは一例であり、種々変更可能である。
【0026】
本実施形態において、粒子間に作用する非結合相互作用には、WCA(斥力のみのLJポテンシャル)が設定されている。具体的に、非結合相互作用は、フィラー粒子20同士の間、フィラー粒子20とポリマー粒子30との間、フィラー粒子20とカップリング剤粒子4との間、ポリマー粒子30同士の間、ポリマー粒子30とカップリング剤粒子4の間、カップリング剤粒子4同士の間、に設定される。相互作用の強さを表すパラメータ及び粒子の径を示すパラメータは同じ値にしている。これらは一例であり、種々変更可能である。
【0027】
[フィラー充填架橋高分子モデルを生成する方法]
図1に示すシステム1を用いて、フィラー充填架橋高分子モデルを生成する方法について、
図2を用いて説明する。
【0028】
まず、ステップST1において、初期設定部10は、解析対象となるフィラー充填高分子モデルデータM1、カップリング剤粒子モデルデータM2、各種モデルの相互作用、分子動力学計算に必要な解析条件(温度、圧力など)などの各種設定を行い、これらの設定値をメモリに記憶する。
【0029】
次のステップST2において、混合モデル生成部11は、複数のポリマー粒子30が直鎖状又は分岐状に連なる複数のポリマー3と、複数のフィラー粒子20が結合された複数のフィラー2と、複数のカップリング剤粒子4と、を有する混合モデルM3を生成する。
【0030】
次のステップST3において、分子動力学計算実行部12は、分子動力学計算を実行し、各々の粒子を分散させる。
【0031】
次のステップST4において、第1反応処理実行部13は、全てのカップリング剤粒子4がフィラー粒子20に結合するまで第1反応処理を繰り返し実行する。
【0032】
次のステップST5において、分子動力学計算実行部12は、平衡化処理を実行する。
【0033】
次のステップST6において、第2反応処理実行部14は、全てのカップリング剤粒子4がポリマー粒子30に結合するまで第2反応処理を繰り返し実行する。
【0034】
次のステップST7において、分子動力学計算実行部12は、平衡化処理を実行する。なお、このステップは、モデルを使用する前に実行してもよいので、モデル生成方法としては省略可能である。
【0035】
以上のように、本実施形態のフィラー充填架橋高分子モデルを生成する方法は、
1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、
複数のポリマー粒子30が直鎖状又は分岐状に連なる複数のポリマー3と、複数のフィラー粒子20が結合された複数のフィラー2と、複数のカップリング剤粒子4と、を有する混合モデルM3を生成するステップST2と、
所定温度T及び所定圧力Pを含む条件に基づいて分子動力学計算を行い、所定のタイミングで互いに所定距離以内にあるフィラー粒子20とカップリング剤粒子4とを所定確率で結合させる第1反応処理を繰り返し実行するステップST4と、
第1反応処理により全てのカップリング剤粒子4がフィラー粒子20に結合した後に、所定のタイミングで互いに所定距離以内にあるポリマー粒子30とカップリング剤粒子4とを所定確率で結合させる第2反応処理を繰り返し実行するステップST6と、
を含む。
【0036】
本実施形態のフィラー充填架橋高分子モデルを生成するシステムは、
複数のポリマー粒子30が直鎖状又は分岐状に連なる複数のポリマー3と、複数のフィラー粒子20が結合された複数のフィラー2と、複数のカップリング剤粒子4と、を有する混合モデルM3を生成する混合モデル生成部11と、
所定温度T及び所定圧力Pを含む条件に基づいて分子動力学計算を行い、所定のタイミングで互いに所定距離以内にあるフィラー粒子20とカップリング剤粒子4とを所定確率で結合させる第1反応処理を繰り返し実行する第1反応処理実行部13と、
第1反応処理により全てのカップリング剤粒子4がフィラー粒子20に結合した後に、所定のタイミングで互いに所定距離以内にあるポリマー粒子30とカップリング剤粒子4とを所定確率で結合させる第2反応処理を繰り返し実行する第2反応処理実行部14と、
を備える。
【0037】
第1反応処理と第2反応処理とを同時に実行すれば、フィラー粒子20とカップリング剤粒子4の結合及びポリマー粒子30とカップリング剤粒子4の結合といった異種結合が同時に発生し、結合相互作用に由来する各々の粒子間の力が大きくなりすぎて、計算破綻が生じる。
このように、第1反応処理と第2反応処理とを同時に実行しないので、上記計算破綻を回避可能となる。
さらに、自由に移動可能なカップリング剤粒子4をフィラー粒子20に対して結合させているので、分散した状態のカップリング剤粒子4がフィラー粒子20に結合する。フィラー2において、ポリマー3と結合可能な箇所(カップリング剤粒子4)が分散するので、現実に近い結合構造を得ることができると考えられる。更に、フィラーにおける結合可能な箇所が分散することになり、ポリマーの複数個所がフィラーに対して一度に結合することを防止し、計算破綻を回避可能となる。
さらに、フィラー2におけるポリマー3と結合可能な箇所を分散させるために、複雑なロジックが不要であり、結合箇所の量は、カップリング剤粒子4の数を調整するだけでよい。
したがって、煩雑なロジックを必要とせず、計算破綻を回避し、フィラー粒子20とポリマー粒子30とを適切に結合させることが可能となる。
【0038】
本実施形態の方法において、第1反応処理の繰り返し実行を開始する前に、所定温度T及び所定圧力Pを含む条件に基づいて分子動力学計算を行い、各々の粒子を分散させるステップST3を含む。
本実施形態のシステムにおいて、第1反応処理の繰り返し実行を開始する前に、所定温度T及び所定圧力Pを含む条件に基づいて分子動力学計算を行い、各々の粒子を分散させる分子動力学計算実行部12を備える。
【0039】
このようにすれば、各々の粒子、特にカップリング剤粒子4が分散した状態になるので、後の第1反応処理においてカップリング剤粒子4がフィラー2に分散した状態で結合することになり、より適切な結合構造を得ることが可能である。
【0040】
本実施形態の方法において、第1反応処理により全てのカップリング剤粒子4がフィラー粒子20に結合した後であって、第2反応処理の繰り返し実行を開始する前に、所定温度及び所定圧力を含む条件に基づいて分子動力学計算により平衡化するステップST5を含む。
本実施形態のシステムにおいて、第1反応処理により全てのカップリング剤粒子4がフィラー粒子20に結合した後であって、第2反応処理の繰り返し実行を開始する前に、所定温度及び所定圧力を含む条件に基づいて分子動力学計算により平衡化する分子動力学計算実行部12を備える。
【0041】
粒子を結合した後は、エネルギーが不安定であるので、平衡化処理を実行することにより結合直後の悪影響を排除することが可能となる。
【0042】
本実施形態に係るプログラムは、上記方法をコンピュータに実行させるプログラムである。このプログラムを実行することによっても、上記方法の奏する作用効果を得ることが可能となる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0044】
例えば、
図1に示す各部10〜14は、所定プログラムをコンピュータのプロセッサで実行することで実現しているが、各部を専用回路で構成してもよい。また、本実施形態では1つのコンピュータにおけるプロセッサが各部10〜14を実装しているが、少なくとも1又は複数のプロセッサに分散して実装してもよい。
【0045】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。