【解決手段】 熱可塑性樹脂と、上記熱可塑性樹脂中に分散し、蓄熱物質を含む蓄熱材粒子とからなり、上記蓄熱材粒子の平均粒子径が10〜300μmであり、上記蓄熱材粒子の粒度分布のピークを示す粒子径が、上記蓄熱材粒子の最大粒子径と最小粒子径の平均値[(最大粒子径+最小粒子径)/2]の33%以上、70%未満であることを特徴とする蓄熱材粒子含有樹脂ペレット。
前記混合物投入工程の時点で前記熱可塑性樹脂及び前記蓄熱材粒子の温度を前記蓄熱材粒子中の蓄熱物質の相転移温度以上となるようにする請求項4に記載の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの製造方法。
前記混合工程で使用する前記熱可塑性樹脂が粉末であり、前記熱可塑性樹脂の粉末の平均粒子径は、前記蓄熱材粒子の平均粒子径の1/2倍以上、2倍以下である請求項4又は5に記載の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、下記に示す実施例1で作製した本発明の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの断面顕微鏡写真の一例である。
【
図2】
図2は、下記に示す比較例1で作製した本発明に含まれない蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの断面顕微鏡写真の一例である。
【
図3】
図3は、下記に示す実施例1で作製した蓄熱材粒子含有樹脂ペレット及び比較例1で作製した蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの粒度分布を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの製造方法における押出成形の様子の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットを用いて製造される蓄熱構造物の一例を模式的に示す斜視図である。
図5(b)は、
図5(a)のA−A線断面図である。
【0025】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明の蓄熱材粒子含有樹脂ペレット及び蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの製造方法について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0026】
本発明の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットは、
熱可塑性樹脂と、
上記熱可塑性樹脂中に分散し、蓄熱物質を含む蓄熱材粒子とからなり、
上記蓄熱材粒子の平均粒子径が10〜300μmであり、
上記蓄熱材粒子の粒度分布のピークを示す粒子径が、上記蓄熱材粒子の最大粒子径と最小粒子径の平均値[(最大粒子径+最小粒子径)/2]の33%以上、70%未満であることを特徴とする。
【0027】
蓄熱材粒子含有樹脂ペレットは、熱可塑性樹脂と蓄熱材粒子とからなる。
熱可塑性樹脂としては、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエーテルエステルエラストマー等)、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリスルホン樹脂、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン等)、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中では、耐熱性を加味し、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることが好ましい。
【0028】
本発明の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットは、蓄熱材粒子の平均粒子径及び粒度分布に特徴を有する。
図1は、下記に示す実施例1で作製した本発明の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの断面顕微鏡写真の一例である。
図2は、下記に示す比較例1で作製した本発明に含まれない蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの断面顕微鏡写真の一例である。
図3は、下記に示す実施例1で作製した蓄熱材粒子含有樹脂ペレット及び比較例1で作製した蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの粒度分布を示す図である。
図1と
図2のレーザ顕微鏡写真を観察し、さらに
図3を参照して、蓄熱材粒子含有樹脂ペレットに含まれる蓄熱材粒子の平均粒子径及び粒度分布について説明する。
【0029】
図1及び
図2を観察すると、
図1では粒子径の小さい蓄熱材粒子が多くみられ、
図2では粒子径の大きい蓄熱材粒子が多くみられるが、粒子径の小さい蓄熱材粒子が
図1と比べて少ないことが分かる。また、最も大きい蓄熱材粒子の粒子径は
図1と
図2でほぼ同じである。
図3には、2つの樹脂ペレットにおける蓄熱材粒子の粒度分布を示している。
一つは、実施例1で得られた樹脂ペレットにおける蓄熱材粒子の粒度分布(実線が該当)であり、もう一つは、比較例1で得られた樹脂ペレットにおける蓄熱材粒子の粒度分布(点線が該当)である。これら2つの樹脂ペレットにおける蓄熱材粒子の粒度分布では、ともに最大粒子径が300μm、最小粒子径が10μmである。
従って、蓄熱材粒子の最大粒子径と最小粒子径の平均値[(最大粒子径+最小粒子径)/2]はともに155μmである。
一方、蓄熱材粒子の粒度分布のピーク粒子径は、実施例1で85μm、比較例1で115μmである。
すなわち、本発明の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットに含まれる蓄熱材粒子は、粒子径の分布が粒子径で100μmより小さい側に主に位置しており、本発明に含まれない蓄熱材粒子含有樹脂ペレットに含まれる蓄熱材粒子は、粒子径の分布が粒子径で100μmより大きい側に主に位置しているといえる。
【0030】
蓄熱材粒子の粒度分布における上記特徴を、蓄熱材粒子の最大粒子径と最小粒子径の平均値に対するピーク粒子径の位置で示した場合に、本発明の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットでは、ピーク粒子径が上記平均値の33%以上、70%未満であると表現している。
ここで
図3では、蓄熱材粒子の最大粒子径と最小粒子径の平均値が155μmであり、ピーク粒子径の平均値33%となるピーク粒子径は46.5μmであり、ピーク粒子径の平均値70%となるピーク粒子径が108.5μmとなる。
実施例1の蓄熱材粒子のピーク粒子径は85μmであるので、平均値の55%となり、ピーク粒子径が上記平均値の33%以上、70%未満の範囲内となり、比較例1の蓄熱材粒子のピーク粒子径は115μmであるので、平均値の74%となり、ピーク粒子径が上記平均値の33%以上、70%未満の範囲外となる。
【0031】
また、
図3には、実施例1及び比較例1で蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの製造に使用した、原料としての蓄熱材粒子の粒度分布を参考のために示している。
実施例1では原料の蓄熱材粒子とほぼ同様の粒度分布を示している。一方、比較例1では原料の蓄熱材粒子に比べて粒子径が大きい側に粒度分布の全体がシフトしている。
このことから、比較例1では、原料としての蓄熱材粒子の粒度分布に対して、小さい粒子径の蓄熱材粒子が減少していることから、製造時に小さい粒子径の蓄熱材粒子が破損していると推定される。実施例1では原料の蓄熱材粒子が破損せずに残っていることと推定される。
【0032】
また、蓄熱材粒子の平均粒子径は、10〜300μmである。
蓄熱材粒子の平均粒子径が10μm以上であると、蓄熱材粒子に含まれる蓄熱物質の量が充分な量となり、蓄熱材粒子の量に対する、樹脂製品の熱交換効率が充分に高くなる。
蓄熱材粒子の平均粒子径が300μm以下であると、蓄熱材粒子含有樹脂ペレットを成形する時の成形性が良好になる。
また、蓄熱材粒子の平均粒子径は、20〜200μmであることが好ましい。
【0033】
蓄熱材粒子には、蓄熱物質が含まれる。
蓄熱物質は、パラフィン、硫酸ナトリウム水和物、酢酸ナトリウム水和物、塩化カルシウム水和物、エリスリトール及びチオ硫酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの物質は、容易に融点を制御することができるので蓄熱物質として好適に用いることができる。さらに、用途や使用に対しての設計の自由度において、蓄熱物質にパラフィンを用いることが好ましい。
蓄熱物質の相転移温度は、−5〜80℃であることが好ましい。また、相転移温度が5〜75℃であることがより好ましく、30〜70℃であることがさらに好ましい。
【0034】
また、蓄熱物質の種類は限定されるものではないが、上記温度範囲での蓄熱物質の相転移において、液体から固体への変化、又は、固体から液体への変化は体積の変化が少ないので制御しやすく、そのような特性を有する蓄熱物質が好ましく用いられる。
蓄熱物質は、相転移温度が同一の物だけを用いてもよいし、異なる相転移温度を有する複数種類の蓄熱物質を混在させて用いてもよい。相転移温度の異なる2種類以上の蓄熱物質を用いる場合、これらの蓄熱物質は、同一の蓄熱材粒子内に含まれていてもよく、蓄熱物質ごとに別の蓄熱材粒子に含まれていてもよい。
【0035】
蓄熱材粒子が蓄熱物質を含む態様としては、蓄熱材粒子が、蓄熱物質が封入されたカプセルである場合(以下、カプセル型蓄熱材粒子ともいう)、蓄熱材粒子が、無機材料からなる多孔質体内に蓄熱物質が充填された蓄熱材粒子である場合(以下、多孔質型蓄熱材粒子ともいう)、の2つの態様が挙げられる。
【0036】
蓄熱材粒子が、蓄熱物質が封入されたカプセルである、カプセル型蓄熱材粒子の場合、カプセルの構成材料は、有機材料もしくは無機材料である。
また、カプセルの構成材料には蓄熱物質の相転移温度に対して耐久性のある材料を用いることが好ましい。
有機材料として、ジエン系樹脂、 オレフィン熱可塑エラストマー等の熱可塑性エラストマーも用いることができるが、下記する種類の熱硬化性樹脂が好ましい。有機材料が熱硬化性樹脂であると、熱交換の際に、熱によりカプセル壁が破壊されることを防止することができる。
熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド及びポリアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂であることが好ましい。
また、無機材料としては、シリカ、アルミナ及びカーボンからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0037】
蓄熱材粒子が、無機材料からなる多孔質体内に蓄熱物質が充填された蓄熱材粒子である場合、多孔質体としての無機材料は、シリカ、アルミナ及びカーボンからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
これらの材料は、熱に対する寸法変化が小さく、50℃以上の温度領域で使用したとしても蓄熱物質の相転移による蓄熱又は放熱での熱の移動を阻害しないため好ましい。
また、蓄熱材粒子含有樹脂ペレットを成形してなる樹脂製品が耐熱性を要求される環境下で使用される場合にも熱による寸法変化を生じにくいので好ましい。そのため、樹脂製品内の応力の発生が抑制され、製品にクラックや変形などが生じにくく、製品の寿命を長くすることが可能となる。
【0038】
蓄熱材粒子の商品名としては、三菱製紙株式会社製の商品名:サーモメモリー、三木理研株式会社製の蓄熱用マイクロカプセル 商品名:リケンレヂン、及び、JSR株式会社製の商品名:CALGRIP等の市販されているものを用いることができる。
【0039】
また、蓄熱材粒子にはその他の添加剤が含まれていてもよい。
蓄熱材粒子に含まれる添加剤は、蓄熱物質内に含有させてもよい。蓄熱材粒子に含まれる添加剤としては、安定剤、着色剤等などの樹脂ペレット用途に適用することができる添加剤を用いることができる。
蓄熱材粒子に含まれる添加剤の含有量は、特に限定されないが、蓄熱材粒子を得るために必要な量あるいは蓄熱材としての機能を発揮させるために必要な量を用いることができる。
【0040】
蓄熱材粒子の形状は、球状、楕円球状、多面体形状等とすることが好ましい。
蓄熱材粒子の形状が球状又は楕円球状であると頂点がないため、蓄熱材粒子の角部を起因とする応力が発生しないので、成形した樹脂製品への不具合を引き起こしにくいためにとくに好ましい。
【0041】
蓄熱材粒子の含有量は、蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの全重量に対して30〜80重量%であることが好ましい。
蓄熱材粒子の含有量が上記範囲であると、蓄熱材粒子含有樹脂ペレットを成形して成形品を得た際に、成形品における蓄熱材粒子による蓄熱あるいは放熱の効果が好適に得られる。また、成形品が硬くなり過ぎたり脆くなったりすることが防止される。
蓄熱材粒子含有樹脂ペレットにおける蓄熱材粒子の含有量は、蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの全重量に対して、35〜70重量%にすることがさらに望ましい。
なお、蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの全重量とは、熱可塑性樹脂と蓄熱材粒子とその他の添加剤の合計量である。
【0042】
蓄熱材粒子含有樹脂ペレットには分散剤が含まれていることが好ましい。
分散剤は、蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの作製時に蓄熱材粒子を熱可塑性樹脂に分散させるために用いられる。分散剤を使用することによって成形時の流動性を高くすることができ、とくに低温での成形性を改善することができる。
特に、熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂であり、蓄熱材粒子が多孔質型蓄熱材粒子である場合に流動性が低くなることがあるが、分散剤を使用することによって流動性を高めることができるので好ましい。
【0043】
分散剤は、エチレン共重合体及び無水カルボン酸共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
上記の分散剤は、蓄熱材粒子を含む熱可塑性樹脂の成形時の流動性を高めるために特に適している。
また、上記の分散剤が含まれている蓄熱材粒子含有樹脂ペレット又は蓄熱材粒子含有樹脂ペレットから成形した樹脂製品においては、蓄熱材粒子から蓄熱物質が漏れた場合に分散剤によって蓄熱物質を吸収させることができる。そのため、蓄熱材粒子含有樹脂ペレット又は蓄熱材粒子含有樹脂ペレットから成形した樹脂製品としての形状を保持することができる。その結果、蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの強度及び蓄熱材粒子含有樹脂ペレットから成形した樹脂製品の強度を維持することができる。
エチレン共重合体としてはエチレンプロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
無水カルボン酸共重合体としては、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン樹脂、無水マレイン酸ポリエチレン樹脂、無水マレイン酸高密度ポリエチレン樹脂等が挙げられる。
【0044】
蓄熱材粒子含有樹脂ペレットには、その他の添加剤を含んでもよい。ここでいう添加剤は熱可塑性樹脂中に含まれる添加剤である。
熱可塑性樹脂中に含まれる添加剤としては、樹脂ペレット用途に適用することができる添加剤を用いることができ、その一例として、安定剤、酸化還元剤、成形補助剤、分解抑制剤、潤滑剤、離型剤、顔料などの着色剤、可塑剤などが挙げられる。
【0045】
また、蓄熱材粒子含有樹脂ペレットには、熱可塑性樹脂の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するフィラーをさらに含んでいてもよい。蓄熱材粒子含有樹脂ペレットがこのような熱伝導率を有するフィラーを含むと、熱可塑性樹脂と蓄熱材粒子との間の伝熱速度を向上させることができる。また、蓄熱材粒子には蓄熱物質が含まれているので、結果的に、蓄熱物質への伝熱速度又は蓄熱物質からの伝熱速度を向上させることもできる。従って、効率よく熱交換をすることができる。
蓄熱材粒子含有樹脂ペレットがフィラーを含む場合、その含有量は、蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの重量に対して10〜30重量%であることが望ましい。
フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、ガラス、シリカ、ワラストナイト、水酸化アルミニウム、カオリン、酸化チタン、アルミナ、マイカ、タルク、炭素、チタン酸カリウム等から構成される無機フィラー、及び、銅等から構成される金属フィラー等を用いることができる。上記フィラーは、粒子状、繊維状、ウィスカ状であってもよい。
また、金属フィラーは、無機フィラーや樹脂粒子の表面に金属メッキを施したものであってもよい。樹脂製品の熱伝導率を向上させる観点から、ガラス繊維及び炭素繊維が望ましい。
【0046】
蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの形状は特に限定されるものではなく、その大きさも特に限定されるものではない。通常の樹脂の押出成形に用いられる樹脂ペレットの形状、大きさとすることで通常の樹脂の押出成形に使用する押出成形機を使用して樹脂製品を得ることができる。
その中でも、蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの形状は円柱状、球状(卵型形状も含む)、角柱状が好ましく、円柱状であることがより好ましい。
蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの形状が円柱状であると、樹脂の成形に適している。
蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの形状が円柱状である場合、高さ0.1〜20mm、直径0.1〜20mmの円柱状の樹脂ペレットであることが好ましい。
【0047】
本発明の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの製造方法は、熱可塑性樹脂と、蓄熱物質を含む蓄熱材粒子とを混合して上記熱可塑性樹脂及び上記蓄熱材粒子からなる混合物を得る混合工程と、
上記熱可塑性樹脂及び上記蓄熱材粒子からなる混合物を押出成形機に投入する混合物投入工程と、
上記熱可塑性樹脂及び上記蓄熱材粒子からなる混合物を上記熱可塑性樹脂の溶融温度以上に加熱して混練する混練工程と、
上記熱可塑性樹脂及び上記蓄熱材粒子からなる混練物を押出成形機により押出成形して樹脂ペレットを得る成形工程と、を行うことを特徴とする。
【0048】
(乾燥工程)
まず、任意工程ではあるが、本発明の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの製造方法では、混合工程の前に、蓄熱材粒子に含まれる水分量を減少させる乾燥工程を行うことが好ましい。
蓄熱材粒子に含まれる水分量を減少させておくと、蓄熱材粒子の水分を起因とする凝集を抑制し、熱可塑性樹脂と蓄熱材粒子が均一に混合された混合物を得ることができる。
乾燥工程では、50〜80℃で1〜5時間の乾燥を行うことが好ましい。
また、蓄熱材粒子の吸湿率が5%以下となるように乾燥を行うことが好ましい。
【0049】
(混合工程)
混合工程では、押出成形機に投入する前に熱可塑性樹脂と蓄熱材粒子とを混合して、熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子からなる混合物を得る。
【0050】
熱可塑性樹脂と蓄熱材粒子との混合は、人力による混合、攪拌でもよいし、ミキシングタンク、ミキサー、V型混合機、W型混合機等の混合機で行ってもよい。混合時間や混合条件は、特に限定されない。
また、混合工程においては、熱可塑性樹脂と蓄熱材粒子の他に、上述した分散剤及びその他の添加剤を加えてもよい。
【0051】
混合工程においては、熱可塑性樹脂の粉末と、蓄熱材粒子とを混合して熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子からなる混合物を得るようにすることが好ましい。
通常、熱可塑性樹脂は、ペレットの形で入手することが多い。ペレットの形の熱可塑性樹脂は、蓄熱材粒子よりもそのサイズが大きい。
蓄熱材粒子を含まない通常の熱可塑性樹脂の押出成形においては、熱可塑性樹脂のペレットを押出成形機に投入して、押出成形機内での混練においてスクリューのせん断力により熱可塑性樹脂のペレットを小さくする。
熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子からなる混合物に対して、押出成形機内で熱可塑性樹脂のペレットを小さくするようなせん断力を加えると、熱可塑性樹脂のペレットを小さくする際に蓄熱材粒子を破損させてしまう可能性がある。
そのため、予め熱可塑性樹脂の粉末を準備し、これを蓄熱材粒子と混合して熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子からなる混合物を得るようにすると、押出成形機内において熱可塑性樹脂のサイズを小さくするための力を加える必要が無いので、押出成形機内での混練条件を緩和することができる。その結果、押出成形機内での混練により蓄熱材粒子が破損することが防止される。
なお、本明細書において、押出成形機内で熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子からなる混合物をスクリュー等を用いて練り混ぜることを「混練(kneading)」と呼び、別々に存在していた熱可塑性樹脂と蓄熱材粒子とを混ぜる「混合(mixing)」とは異なる概念である。
【0052】
また、熱可塑性樹脂の粉末を使用する場合には、熱可塑性樹脂として、予め決められた粒子径となるように粉砕し、篩にかけたものを使用することが好ましい。
このとき、熱可塑性樹脂の粉末の形状は、球形、円柱形状、多角柱形状等特に限定されないが、球形であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂の粒子径は、特に限定されないが、ふるい径で10〜1000μmであることが好ましい。20〜400μmであることがより好ましい。
なお、本明細書における、「熱可塑性樹脂の粉末」とは、ふるい径で1000μm以下の粒子径(目開きが1000μmのふるいを通過できる粒子径)の熱可塑性樹脂を意味する。
【0053】
また、熱可塑性樹脂の粉末の平均粒子径は、蓄熱材粒子の平均粒子径の1/2倍以上、2倍以下であることが好ましい。
上述の範囲にすることは、熱可塑性樹脂の粉末と蓄熱材粒子を同程度の粒子径に揃えることを意味しており、このようにすると、熱可塑性樹脂粒子と蓄熱材粒子を混合しやすく、押出成形機における混練条件をより緩和しても好適な混練をすることができるので好ましい。
【0054】
また、蓄熱材粒子は、熱可塑性樹脂との混合前に蓄熱物質の相転移温度以上となるようにあらかじめ加温しておいてもよい。
蓄熱物質が相転移温度以上となっていると、熱可塑性樹脂と混合した際に、蓄熱物質の相転移による吸熱が混合状態に影響を及ぼすことが防止される。
【0055】
また、熱可塑性樹脂を予めその溶融温度以上の温度に加温して溶融させた状態としておき、溶融させた熱可塑性樹脂と蓄熱材粒子とを当該溶融温度以上で加熱して混合してもよい。
【0056】
(混合物投入工程)
混合物投入工程では、熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子からなる混合物を押出成形機に投入する。
混合物投入工程において、蓄熱材粒子と熱可塑性樹脂とが混合された状態で一緒に押出成形機に投入される。
このようにすると、押出成形機内で、熱可塑性樹脂と蓄熱材粒子は、熱可塑性樹脂の溶融温度以上の温度で加熱され、同じ熱履歴を受けて混練されて、押出成形される。
すなわち、特許文献1及び2に記載された方法とは異なり、溶融した熱可塑性樹脂に対して温度が低い蓄熱材粒子が後で混合されることがなく、溶融した熱可塑性樹脂が蓄熱材粒子により熱を奪われることがない。そのため、溶融した熱可塑性樹脂の粘度が低く、溶融状態が均一となり、成形工程において均一な成形がなされる。
【0057】
また、混合物投入工程の時点で、蓄熱材粒子の温度が蓄熱物質の相転移温度以上となるようにすることが好ましい。
押出成形機に投入する時点で蓄熱材粒子の温度が蓄熱物質の相転移温度以上であれば、蓄熱材粒子に含まれる蓄熱物質はさらに相転移による吸熱をすることがないので、押出成形機内で相転移により吸熱をすることが抑制され、押出成形機内での加熱、混練がスムーズに行われる。
【0058】
また、押出成形機に投入する前に、熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子からなる混合物を熱可塑性樹脂の溶融温度以上の温度に加温して溶融させた状態としておき、蓄熱材粒子と溶融させた熱可塑性樹脂との混合物を押出成形機に投入するようにしてもよい。
熱可塑性樹脂がこの時点で溶融していると、押出成形機における混練条件をより緩和させることができる。
例えば、熱可塑性樹脂の溶融温度よりも10℃以上高い温度に加熱することによって熱可塑性樹脂を溶融させておくことが好ましい。
【0059】
(混練・成形工程)
押出成形機としては、供給口、スクリュー、ヒーター及びダイを備えるものを使用することができる。熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子からなる混合物は、供給口から押出成形機に投入される。
押出成形機はヒーターを備えており、押出成形機内で熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子からなる混合物を熱可塑性樹脂の溶融温度以上に加熱して熱可塑性樹脂を溶融させることができる。そして、熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子からなる混合物をスクリュー等を用いて混練する。
また、溶融した熱可塑性樹脂が再度固化しないように熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子からなる混合物の温度を熱可塑性樹脂の溶融温度以上に保つようにする。
【0060】
押出成形機に投入される混合物が、熱可塑性樹脂の粉末及び蓄熱材粒子の混合物の場合、すなわち熱可塑性樹脂が溶融していない状態で押出成形機に投入された場合には、押出成形機内で熱可塑性樹脂の粉末と蓄熱材粒子が共に加熱されながら押出成形機をダイに向かって移動する。熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子からなる混合物の温度が熱可塑性樹脂の溶融温度以上になると、蓄熱物質は相転移が完了して温度上昇を始め、かつ熱可塑性樹脂が溶融し、蓄熱材粒子と溶融した熱可塑性樹脂との混合物として押出成形機内を混練されながら移動し、熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子からなる混練物がダイから押し出されて押出成形され、蓄熱材粒子含有熱可塑性樹脂ペレットが製造される。
上記過程において混合物に含まれる熱可塑性樹脂と蓄熱材粒子は同じ熱履歴を受けて押出成形されるので、溶融した熱可塑性樹脂に対して温度が低い蓄熱材粒子が混合されることがなく、溶融した熱可塑性樹脂が蓄熱材粒子の蓄熱物質の相転移や熱容量により熱を奪われることがない。そのため、溶融した熱可塑性樹脂の粘度が低下することがなく、成形工程において均一な成形がなされる。
【0061】
熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子の混合物が、予め熱可塑性樹脂の溶融温度以上に加温されており、溶融した熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子の混合物である場合には、蓄熱材粒子中の蓄熱物質の相転移は完了しており、同じ温度となった蓄熱材粒子と溶融した熱可塑性樹脂との混合物として押出成形機内を混練されながら移動し、熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子からなる混練物がダイから押し出されて押出成形され、蓄熱材粒子含有樹脂ペレットが製造される。
押出成形機のヒーターによる加熱は、溶融した熱可塑性樹脂が再度固化しないように熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子からなる混合物の温度を熱可塑性樹脂の溶融温度以上に保つようにするために行なわれる。
上記過程においても、混合物に含まれる熱可塑性樹脂と蓄熱材粒子は同じ熱履歴を受けて押出成形されるので、溶融した熱可塑性樹脂に対して温度が低い蓄熱材粒子が混合されることがなく、溶融した熱可塑性樹脂が蓄熱材粒子の蓄熱物質の相転移や熱容量により熱を奪われることがない。そのため、成形工程において均一な成形がなされる。
【0062】
この成形工程において熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子からなる混練物は、スクリューのせん断力により混練され、ダイから押し出される。
このとき、押出成形機のスクリューの回転数や熱可塑性樹脂及び蓄熱材粒子からなる混練物の押出速度等は特に限定されないが、従来よりも緩和した混練条件とすることができる。
例えば、スクリューの回転数を50〜400rpmとし、吐出量を5〜30kg/hrにすることができる。
【0063】
以下、本発明の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの製造方法の一実施形態に使用することのできる押出成形機の一例について、図面を用いて説明する。
図4は、本発明の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの製造方法における押出成形の様子の一例を模式的に示す断面図である。
図4に示す押出成形機100は、シリンダー110、スクリュー120、供給口130、ヒーター140及びダイ150を備えている。
混合物200は、粉末の熱可塑性樹脂210と蓄熱材粒子220の混合物であり、熱可塑性樹脂210と蓄熱材粒子220が混合された状態で供給口130に投入される。
押出成形機100に投入された混合物200は、スクリュー120によって混練され、ヒーター140によって加熱されながらダイ150に向かって移動する。
混合物200の温度が熱可塑性樹脂210の溶融温度以上になると熱可塑性樹脂210が溶融し、蓄熱材粒子220と溶融した熱可塑性樹脂210´となり、スクリューによって混錬された混練物として押出成形機100内を移動し、ダイ150からストランド230として押し出されて押出成形され、蓄熱材粒子含有樹脂ペレットが製造される。
【0064】
本発明の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットを用いると、蓄熱材粒子を含む蓄熱構造物を製造することができる。蓄熱構造物の形状は特に限定されるものではなく、押出成形により成形することができる形状であることが好ましい。
例えば、流体が流通する流路を有する蓄熱構造物とすることが好ましく、この流路に流体を流通させることによって、流体と蓄熱構造物の間で熱交換を行うことができる。
流体としては、特に限定されず、液体であっても気体であっても良いが、気体であることが好ましい。また、流体としては、空気であることがより好ましい。
【0065】
蓄熱構造物は、複数の流路を有していることが好ましい。
蓄熱構造物が複数の流路を有すると、流体と、蓄熱構造物との接触度合いを増加させることができる。流体と構造物との熱交換効率はこれらの接触度合いの大きさに依存するので、蓄熱構造物が複数の流路を有すると、効率よく熱交換をすることができる。
【0066】
蓄熱構造物の形状は、複数の流路が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム形状であることが好ましい。
蓄熱構造物の形状がハニカム形状であると、流路の形状の組み合わせにより用途及び使用の自由度が上がる。また、蓄熱構造物の強度を充分に強くすることができる。さらに、流体と蓄熱構造物との接触度合いを増加させることができる。
【0067】
ハニカム形状の蓄熱構造物では、隔壁の厚さは、特に限定されないが、50〜5000μmであることが望ましく、500〜3000μmであることがより望ましい。
隔壁の厚さが、50μm以上であると、隔壁が充分に厚いので、蓄熱構造物の強度が充分に強くなる。また、隔壁に含まれる蓄熱材粒子を充分な量とすることができるので、熱交換効率が向上する。
隔壁の厚さが、5000μm以下であると、流体と蓄熱構造物との接触度合いを充分に大きくすることができる。また、隔壁の内部まで熱が伝わりやすくなる。そのため、熱交換効率が向上する。
【0068】
ハニカム形状の蓄熱構造物では、流路の密度は、特に限定されないが、蓄熱構造物の長手方向に垂直な断面において、10〜1000個/平方インチであることが望ましく、30〜800個/平方インチであることがより望ましい。
流路の密度が、10個/平方インチ以上であると、流体と蓄熱構造物との接触度合いが大きくなる。そのため、熱交換効率が向上する。
流路の密度が、1000個/平方インチ以下であると、隔壁が充分な厚さとなり、蓄熱構造物が充分な強度となる。
【0069】
また、ハニカム形状の蓄熱構造物では、その長手方向に垂直な断面において、流路の形状は、特に限定されず、例えば、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形であってもよい。
【0070】
本発明の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットを用いて製造される蓄熱構造物の一例について図面を参照しながら説明する。
図5(a)は、本発明の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットを用いて製造される蓄熱構造物の一例を模式的に示す斜視図である。
図5(b)は、
図5(a)のA−A線断面図である。
図5(a)及び
図5(b)に示す蓄熱構造物1は、流体Fとの熱交換に用いる構造物である。
蓄熱構造物1を形成する部材10は、蓄熱材粒子と熱可塑性樹脂とからなる。
蓄熱構造物1は、流体Fが流入する複数の流入口21と、流入口21から流入した流体Fが通過する複数の流路22と、流路22を通過した流体Fが流出する複数の流出口23とを有しており、蓄熱構造物1の形状は、複数の流路22が隔壁24を隔てて長手方向に並設されたハニカム形状である。なお、流体Fの流れは、
図5(b)中に矢印で示す。
【0071】
(実施例)
以下、本発明を具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0072】
以下の実施例及び比較例では、熱可塑性樹脂、蓄熱材及び添加剤として下記のものを用いた。
(1)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂A 材料:熱可塑性ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製 ノバテックPP MG05ES:溶融温度150℃)
熱可塑性樹脂B 材料:熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー(東レ・デュポン株式会社製 ハイトレル(登録商標)溶融温度:160℃)
(2)蓄熱材粒子
蓄熱材粒子A カプセル壁:メラミン樹脂 蓄熱物質:パラフィン(三菱製紙株式会社製 品番:サーモメモリーFP−9 相転移温度9℃)
蓄熱材粒子B カプセル壁:メラミン樹脂 蓄熱物質:パラフィン(三菱製紙株式会社製 品番:サーモメモリーFP−27 相転移温度27℃)
蓄熱材粒子C 多孔質体:シリカ 蓄熱物質:パラフィン(三木理研工業株式会社製 品番:リケンレジンLA−66 相転移温度66℃)
(3)添加剤
着色剤:黒色着色剤
【0073】
[実施例1]
(混合工程)
熱可塑性樹脂Aを冷凍粉砕し、平均粒子径100μmにした粉末8kg、及び、蓄熱材粒子A(平均粒子径:100μm)12kgを用意した。熱可塑性樹脂Aと蓄熱材粒子Aを樹脂容器(30リットル)に入れて、20分間攪拌し、熱可塑性樹脂と蓄熱材粒子を含む混合物を得た。
なお、熱可塑性樹脂と蓄熱材粒子を含む混合物を熱風乾燥機で80℃、4時間で加熱した。
【0074】
(混合物投入工程)
熱可塑性樹脂Aと蓄熱材粒子Aを含む混合物を押出成形機の供給口に投入した。
【0075】
(混練・成形工程)
シリンダーを熱可塑性樹脂Aの溶融温度より10〜30℃高い温度にし、熱可塑性樹脂を溶融させながら熱可塑性樹脂と蓄熱材粒子を含む混合物を押出成形機内を移動させて混練し、混錬物をダイから押出成形して、蓄熱材粒子含有樹脂ペレットを製造した。
押出成形における混練条件は、スクリューの回転数を150rpmとし、吐出量を20kg/hrとした。
【0076】
[実施例2〜9]
実施例1の工程において、熱可塑性樹脂の種類及び重量、蓄熱材粒子の種類及び重量を表1に示すとおりに変更して蓄熱材粒子含有樹脂ペレットを製造した。
熱可塑性樹脂Bを使用した実施例7〜9においては、シリンダーを熱可塑性樹脂Bの溶融温度より10〜20℃高い温度にした。
【0077】
[実施例10]
実施例1の混合工程において、着色剤0.3kgを添加し、その分だけ熱可塑性樹脂Aの配合量を減らして7.7kgとして熱可塑性樹脂と蓄熱材粒子を含む混合物を得た。
その他の工程は実施例1と同様にして蓄熱材粒子含有樹脂ペレットを製造した。
【0078】
[比較例1]
熱可塑性樹脂Aの未粉砕のペレット(5mm×4mm×3mmの楕円体)8kg、及び、蓄熱材粒子A(平均粒子径:100μm)12kgを用意した。
蓄熱材粒子Aは蓄熱物質の相転移温度以上の温度で予め加温しておき、蓄熱物質が相転移済みの状態となるようにした。
熱可塑性樹脂Aのペレットを押出成形機の供給口に投入した。
【0079】
シリンダーを熱可塑性樹脂Aの溶融温度より10〜30℃高い温度にし、熱可塑性樹脂を溶融させながら押出成形機内を移動させつつ、サイドフィーダーから蓄熱材粒子Aを投入した。投入時の蓄熱材粒子Aの温度は相転移済の状態であることを確認した。
このようにして混合、混練した混錬物をダイから押出成形して、蓄熱材粒子含有樹脂ペレットを製造した。
押出成形における混練条件は、スクリューの回転数を150rpmとし、吐出量を20kg/hrとした。
表1には各実施例及び比較例の熱可塑性樹脂、蓄熱材粒子及び添加剤の種類及び配合量を示した。また、蓄熱材粒子含有樹脂ペレット中の蓄熱材粒子の含有率を示した。
【0080】
【表1】
【0081】
(評価)
[蓄熱材粒子の平均粒子径及び粒度分布の測定]
各実施例及び比較例で得られた蓄熱材粒子含有樹脂ペレットにつき、レーザ顕微鏡(キーエンス社製 品番;形状測定レーザマイクロスコープ VK−X210)を用いて、対物レンズ10倍(15型モニタ上倍率200倍)にセットし、写真を撮影し、その画像において蓄熱材粒子と判別し得る粒子の直径を画像解析ソフトにより測定した。得られた各蓄熱材粒子の粒子径を統計処理することによって、蓄熱材粒子の平均粒子径及び粒度分布を得た。
各実施例においては蓄熱材粒子の平均粒子径は10〜300μmの範囲に入っていた。
また、ピーク粒子径が蓄熱材粒子の最大粒子径と最小粒子径の平均値[(最大粒子径+最小粒子径)/2]の33%以上、70%未満の範囲に入っていた。
比較例1では、ピーク粒子径が蓄熱材粒子の最大粒子径と最小粒子径の平均値[(最大粒子径+最小粒子径)/2]の33%以上、70%未満の範囲外となっていた。
代表例として、実施例1と比較例1の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの断面顕微鏡写真を
図1、
図2にそれぞれ示す。また、実施例1と比較例1の蓄熱材粒子含有樹脂ペレットの粒度分布を
図3にまとめて示す。
【0082】
[連続成形の評価]
各実施例及び比較例で得られた蓄熱材粒子含有樹脂ペレットにつき、各実施例では、ストランドの切れが生じていないことを確認した。
比較例1では、ストランドに切れが確認された。
【0083】
[蓄熱量測定]
各実施例及び比較例で得られた蓄熱材粒子含有樹脂ペレットに対し、示差走査熱量計による蓄熱量測定を行った。測定方法は以下の通りである。
試験機器 ティー・エイ・インスツルメント(株)社製
品番:示差走査熱量計 PSC2500型
パン T−Zero アルミパンを使用
測定条件 昇温速度 5℃/分
温度範囲 −20℃ → 80℃(昇温)
80℃ → −20℃(降温)
−20℃ → 80℃(昇温)
測定雰囲気 常温
測定サンプル数 3
【0084】
各実施例では、蓄熱量の理論値に対して、90%以上の蓄熱量であったが、比較例1では、蓄熱量の理論値に対して、90%未満の蓄熱量であったサンプルが確認された。
この結果から、各実施例では、蓄熱材粒子が破損していないと推定され、比較例1では蓄熱材粒子の一部が破損していると推定した。