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特開2019-218535水中の溶存有機汚染物質を迅速に吸着する新規シクロデキストリンポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-218535(P2019-218535A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】水中の溶存有機汚染物質を迅速に吸着する新規シクロデキストリンポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/16 20060101AFI20191129BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   C08B37/16
   B01J20/26 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-105779(P2019-105779)
(22)【出願日】2019年6月6日
(31)【優先権主張番号】201810589683.7
(32)【優先日】2018年6月8日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】515190906
【氏名又は名称】南京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】謝 顕伝
(72)【発明者】
【氏名】胡 雪嬌
(72)【発明者】
【氏名】許 貴洲
【テーマコード(参考)】
4C090
4G066
【Fターム(参考)】
4C090AA02
4C090BA10
4C090BB05
4C090BB62
4C090BB65
4C090BB92
4C090BD25
4C090BD34
4C090CA35
4C090DA05
4C090DA21
4G066AC01B
4G066AC33B
4G066AC35B
4G066BA26
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA52
4G066CA56
4G066DA07
4G066FA37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水中の溶存有機汚染物質を超高速で吸着することができる新規多機能シクロデキストリンポリマーを提供する。
【解決手段】シクロデキストリン、剛性架橋剤、非剛性架橋剤及び第四級アンモニウム塩を一定の温度で混合して架橋することによって、3次元網目構造を有し第四級アンモニウム塩官能基を含むシクロデキストリンポリマーを得る。このポリマーは、水中の溶存有機汚染物質を超高速で吸着することができ、吸着後のポリマーは容易に再生され、複数回重複使用されても吸着性能が低下しない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリンポリマーであって、シクロデキストリンと、剛性架橋剤、非剛性架橋剤及び第四級アンモニウム塩とを混合して架橋反応させることによって得るものであり、
前記シクロデキストリンポリマーは、3次元網目構造を有し、第四級アンモニウム塩官能基を含む、ことを特徴とするシクロデキストリンポリマー。
【請求項2】
前記シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、及び/又はγ−シクロデキストリン、ならびにそれらの組み合わせである、ことを特徴とする請求項1に記載のシクロデキストリンポリマー。
【請求項3】
前記剛性架橋剤は、ベンゼン環構造を含む架橋剤である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシクロデキストリンポリマー。
【請求項4】
前記ベンゼン環構造を含む架橋剤は、テトラフルオロテレフタロニトリル、デカフルオロベンゾフェノン、デカフルオロビフェニル、オクタフルオロナフタレンからなる群、及びそれらの組み合わせである、ことを特徴とする請求項3に記載のシクロデキストリンポリマー。
【請求項5】
前記剛性架橋剤の添加量は、物質の量に基づいて、前記シクロデキストリンの量の0.375〜1.5倍である、ことを特徴とする請求項4に記載のシクロデキストリンポリマー。
【請求項6】
前記非剛性架橋剤は、エピクロロヒドリンである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシクロデキストリンポリマー。
【請求項7】
前記非剛性架橋剤の添加量は、物質の量に基づいて、前記シクロデキストリンの量の20〜50倍である、ことを特徴とする請求項6に記載のシクロデキストリンポリマー。
【請求項8】
前記第四級アンモニウム塩は、(2,3−エポキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(2−クロロエチル)トリメチルアンモニウムクロリド、(3−メトキシカルボニルプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、及びそれらの混合物である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシクロデキストリンポリマー。
【請求項9】
前記第四級アンモニウム塩の添加量は、質量に基づいて、前記シクロデキストリンの量の0.25〜2倍である、ことを特徴とする請求項8に記載のシクロデキストリンポリマー。
【請求項10】
前記架橋反応は、アルカリ性水溶液中で行われ、前記アルカリ性水溶液は水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシクロデキストリンポリマー。
【請求項11】
前記アルカリ性水溶液の濃度は2〜8 mol L−1である、ことを特徴とする請求項10に記載のシクロデキストリンポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の溶存有機汚染物質を迅速に吸着することができる新規多機能シクロデキストリンポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、文献に報告されている水中の溶存有機汚染物質の除去方法としては、主に吸着法、光触媒法、生物学的方法、膜濾過法などが挙げられる。光触媒法、生物学的方法、膜濾過法などの方法は、高い技術投資及び高い運転コストを有し、実際の工学において普及することが困難である。吸着法は、低エネルギー消費と簡単なプロセスのために最も一般的に使用される水処理技術となっている。現在一般的に使用されている吸着剤は活性炭と樹脂である。しかしながら、活性炭の製造と再生のコストは比較的高く、再生後の吸着性能は回復するのが困難であり、低濃度の有機微小汚染物質に対する吸着効果は良くない。 樹脂の吸着速度は遅く、その合成は通常有機試剤中で行われ、これは現在提唱されているグリーンケミストリーの概念には合致していない。従って、水中の溶存有機物を迅速に吸収することができ、かつグリーンな合成経路を有する多機能材料を開発する必要がある。
【0003】
シクロデキストリンは、デンプンの加水分解に由来する製品であり、生物に無害な生物学的試薬である。その特別な外部親水性及び内部疎水性の環状空洞構造のために、それは様々なターゲット分子と共にホスト − ゲスト包接化合物を形成することができる。シクロデキストリンは良好な親和性を有し、通常必要に応じて様々なシクロデキストリンポリマーに調製される。シクロデキストリンポリマーの大部分はシクロデキストリンと柔軟性架橋剤又は剛性架橋剤とを反応させることによって得られると報告されているが、得られたシクロデキストリンポリマーは低い吸着速度を有し、通常吸着平衡に達するまで数時間以上かかるか、又は製造工程で大量の有機溶媒を使用する必要がある。現在、水中で合成することができ、水中の溶存有機汚染物質を迅速に除去することができる複合多機能シクロデキストリンポリマーは報告されていない。従って、水相で簡単な方法を用いて多機能シクロデキストリンポリマー材料を製造するとともに、その迅速な吸着性能を維持することができる方法は、新たな課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の問題に基づいて、発明が解決しようとする課題は以下のとおりである。
これまでの研究に基づいて、本発明は、シクロデキストリンポリマーの調製プロセスにおいて非剛性架橋剤及び剛性架橋剤を同時に使用すること、ならびにオリゴマーの形成直後に第四級アンモニウム塩を添加することを提案する。非剛性架橋剤の導入は、シクロデキストリンモノマーを架橋し、そしてポリマー材料に特定の膨潤特性を付与することができる。剛性架橋剤は、構造制御剤として、ポリマー材料に一定の微孔性を与え、骨格として膨潤した後のポリマーの孔の安定性を維持することができる。第四級アンモニウム塩を導入することにより、水中のフミン酸などの天然有機物を吸着することが可能になる。このように調製されたシクロデキストリンポリマー材料は、水中に溶解した様々な有機物質に対して非常に速い吸着性能を示す。このポリマーの調製はグリーン溶剤である水中で行われ、合成プロセスは非常に簡単で工業生産に容易である。
【0005】
本発明の技術案は以下のとおりである。
超高速吸着特性を有する新規シクロデキストリンポリマーが提供される。シクロデキストリンと非剛体架橋剤及び剛性架橋剤とをアルカリ性水溶液中に一定の温度で架橋反応させる。オリゴマーが形成された後、第四級アンモニウム塩溶液を添加する。反応を一定期間継続した後、濾過し、水、希塩酸、エタノール、ジクロロメタンで順次数回洗浄し、乾燥して、超高速吸着性能を有する多官能シクロデキストリンポリマーを得る。
【0006】
従って、本発明は以下を提供する。
1、新規シクロデキストリンポリマーを調製する方法であって、シクロデキストリンと剛性架橋剤及び非剛性架橋剤とを混交して架橋反応させるプロセスにおいて、第四級アンモニウム塩を添加することによってシクロデキストリンポリマーを得る。
【0007】
2、好ましくは、上記シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、又はγ−シクロデキストリン、及びそれらの組み合わせである。
【0008】
3、好ましくは、上記剛性架橋剤はベンゼン環構造を含む架橋剤である。
【0009】
4、好ましくは、上記のベンゼン環構造を含む架橋剤は、テトラフルオロテレフタロニトリル、デカフルオロビフェニル、デカフルオロベンゾフェノン、オクタフルオロナフタレン、及びそれらの組み合わせである。
【0010】
5、好ましくは、上記剛性架橋剤の添加量は、前記シクロデキストリンの物質の量の0.375〜1.5倍である。
【0011】
6、好ましくは、上記非剛体架橋剤はエピクロロヒドリンである。
【0012】
7、好ましくは、上記非剛性架橋剤の添加量は、シクロデキストリンの物質の量の20〜50倍である。
【0013】
8、好ましくは、上記第四級アンモニウム塩は、(2,3−エポキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(2−クロロメチル)トリメチルアンモニウムクロリド、(3−メトキシカルボニルプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、及びそれらの混合物である。
【0014】
9、好ましくは、上記第四級アンモニウム塩の添加量は、シクロデキストリンの質量の0.25〜2倍である。
【0015】
10、好ましくは、上記反応はアルカリ性水溶液中で行われ、前記アルカリ性水溶液は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液である。
【0016】
11、好ましくは、上記アルカリ性水溶液の濃度は2〜8 mol L−1である。
【0017】
12、シクロデキストリンと剛性架橋剤及び非剛性架橋剤とを混合して架橋反応させ、架橋反応プロセスにおいて第四級アンモニウム塩を添加して得られた新規多功能シクロデキストリンポリマーであって、上記シクロデキストリンポリマーは第四級アンモニウム塩官能基を含み3次元網目構造を有する。
【0018】
13、(12)に記載のシクロデキストリンポリマーは、水中の溶存有機物を迅速に除去することができる。
【0019】
本発明は、シクロデキストリンと非剛性架橋剤及び剛性架橋剤とを混合して架橋するプロセスにおいて第四級アンモニウム塩を添加することによって、調製されたシクロデキストリンポリマーは一定の膨潤性、剛性及び電気陽性度を同時に有することが可能になる。このような新規シクロデキストリンポリマーは、水中の溶存有機汚染物質を非常に迅速に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】エピクロロヒドリン、(2,3−エポキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド及びテトラフルオロテレフタロニトリルとシクロデキストリンとを混合して架橋させることによって、新規多機能シクロデキストリンポリマーを調製する合成スキームである。
図2】実施例のZeta電位、第四級アンモニウム塩の含有量、比表面積分析のチャートである。
図3】実施例の赤外スペクトル図である。
図4】実施例のN(a)及びCO(b)吸脱着等温線図である。
図5】実施例、20〜40メッシュの活性炭及びXAD型樹脂によるBPA(a)、BPS(b)、2、4、6−トリクロロフェノール(c)、3−フェニルフェノール(d)、2−ナフトール(e)の除去率の経時的な変化図、ならびに実施例、20〜40メッシュの活性炭、及びD201型樹脂によるフミン酸(f)の除去率の経時的な変化図である。
図6】実施例、20〜40メッシュの活性炭、XAD型樹脂によるBPA(a)、BPS(b)、2、4、6−トリクロロフェノール(c)、3−フェニルフェノール(d)、2−ナフトール(e)の吸着速度論のフィッティング曲線、及び実施例、20〜40メッシュの活性炭、D201型樹脂によるフミン酸(f)の吸着速度論のフィッティング曲線である。
図7】実施例、20〜40メッシュの活性炭、XAD型樹脂によるBPA、BPS、2、4、6−トリクロロフェノール、3−フェニルフェノール、2−ナフトールの吸着速度論の擬二次速度式及びElovich式のフィッティングパラメータ表、並びに実施例、20〜40メッシュの活性炭、D201型樹脂によるフミン酸の吸着速度論の擬二次速度式及びElovich式のフィッティングパラメータ表である。
図8】実施例へのBPA(a)、BPS(b)、2、4、6−トリクロロフェノール(c)、3−フェニルフェノール(d)、2−ナフトール(e)、フミン酸(f)の吸着等温線である。
図9】実施例へのBPA、BPS、2、4、6−トリクロロフェノール、3−フェニルフェノール、2−ナフトール、フミン酸の吸着熱力学のFreundlichモデル及びLangmuirモデルのフィッティングパラメータ表である。
図10】実施例で調製されたシクロデキストリンポリマーの繰り返し使用回数が材料の吸着性能に及ぼす影響を示す。
図11】異なるシクロデキストリンにより調製されたポリマーによるフェノール類(a)及びフミン酸(b)の除去率の経時的な変化図である。
図12】異なる剛性架橋剤により調製されたβシクロデキストリンポリマーによるフェノール類(a)及びフミン酸(b)の除去率の経時的な変化図である。
図13】異なる量の剛性架橋剤により調製されたβシクロデキストリンポリマーによるフェノール類(a)及びフミン酸(b)の除去率の経時的な変化図である。
図14】異なる量のエピクロロヒドリンにより調製されたβシクロデキストリンポリマーによるフェノール類(a)及びフミン酸(b)の除去率の経時的な変化図である。
図15】異なる第四級アンモニウム塩により調製されたβシクロデキストリンポリマーによるフェノール類(a)及びフミン酸(b)の除去率の経時的な変化図である。
図16】異なる量の第四級アンモニウム塩により調製されたβシクロデキストリンポリマーによるフェノール類(a)及びフミン酸(b)の除去率の経時的な変化図である。
図17】異なるアルカリ環境で調製されたβシクロデキストリンポリマーによるフェノール類(a)及びフミン酸(b)の除去率の経時的な変化図である。
図18】異なるアルカリ濃度で調製されたβシクロデキストリンポリマーによるフェノール類(a)及びフミン酸(b)の除去率の経時的な変化図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
シクロデキストリンポリマーの合成
丸底フラスコに一定量の剛性架橋剤及び柔軟性架橋剤を入れ、磁気撹拌機を備えた油浴に丸底フラスコを配置し、油浴の温度及び回転速度を調製した。設定温度に達した後、シクロデキストリンアルカリ性水溶液、第四級アンモニウム塩水溶液を順に添加し、撹拌を続け、反応を12〜16時間行った。反応を停止し、混合液をろ過し、沈殿物を蒸留水、希塩酸、エタノール及びジクロロメタンで順に数回洗浄し、真空オーブン中で12時間乾燥して新規な多機能シクロデキストリンポリマーを得た。
【0022】
図1は、シクロデキストリンポリマーの合成スキームを示す模式図である。このポリマーに使用される原料源は豊富であり、合成方法は簡単であり、得られたポリマーは第四級アンモニウム塩官能基及び3次元網目構造を有する。
【0023】
使用されるシクロデキストリンは、α−、β−及びγ−シクロデキストリン並びにそれらの混合物であってもよし、上記各シクロデキストリンの二量体、三量体などのポリマーであってもよい。
【0024】
使用される架橋剤は、テトラフルオロテレフタロニトリル、テトラクロロテレフタロニトリル、デカフルオロビフェニル、オクタフルオロナフタレンなど、又はそれらの混合物から選択することができる。好ましい剛性架橋剤としては、コスト及び反応活性の観点から、テトラフルオロテレフタロニトリルは最も好ましい剛性架橋剤となる。
【0025】
使用される柔軟性架橋剤としては、コスト及び反応活性の観点から、エピクロロヒドリンを選択することができる。しかしながら、当業者は、シクロデキストリン上の水酸基又は剛性架橋剤上の基と反応することができる任意の鎖架橋剤が理論的に選択され得ることを認識するであろう。実際の必要性に応じて鎖の長さについて特別な要求はないが、それは剛性架橋剤を溶解することができる物質であることが望ましい。
【0026】
使用される第四級アンモニウム塩は、(2,3−エポキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(2−クロロメチル)トリメチルアンモニウムクロリド、(3−メトキシカルボニルプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、及びそれらの混合物から選択され得る。好ましい第四級アンモニウム塩としては、反応活性の観点から、(2,3−エポキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドは最適な第四級アンモニウム塩となる。
【0027】
本発明のシクロデキストリンポリマーは、剛性材料、柔性材料、及び第四級アンモニウム塩の利点を兼ねて備え、一定の多孔性、膨潤性及び電気陽性度を有し、膨潤後の材料は一定の孔構造を維持することができる。そのため、ポリマーは様々な溶存有機物に対して超高速吸着特性を示す。
【0028】
吸着対象物は、主に天然有機汚染物質、内分泌攪乱物質、プラスチック成分、有機フェノール類物質などを含む、環境及び健康に有害な幾つかの溶存有機汚染物質である。例えば、天然有機汚染物質はフミン酸を含むが、それに限定されない。例えば、内分泌攪乱物質はビスフェノールAを含むが、それに限定されない。例えば、プラスチック成分はビスフェノールSを含むが、これらに限定されない。例えば、有機フェノール類物質は、2−ナフトール、3−フェニルフェノール、2、4、6−トリクロロフェノールを含むが、これらに限定されない。
【0029】
有機汚染物質の濃度は、それが溶解することができる限り、特に定義されていない。シクロデキストリンポリマーの添加量は実際の必要に基づく。実施例では、シクロデキストリンポリマーの添加量は1 mg/mlであり、有機汚染物質の濃度は0.1 mmol/Lであった一方、フミン酸類天然有機物の濃度は10mg/Lであった。
【0030】
シクロデキストリンポリマーを様々な有機汚染物質水溶液と一定時間接触させた後、濾過膜を通して濾過する。濾液中の有機汚染物質の含有量を高速液体クロマトグラフィー及び紫外可視分光光度計によって測定して、様々な有機汚染物質の除去効率を確定した。
【0031】
有機汚染物質を吸着したシクロデキストリンポリマーを濾別した後、メタノールで洗浄し、フミン酸を吸着したシクロデキストリンポリマーを濾別した後、水酸化ナトリウムで洗浄することによって、シクロデキストリンポリマーを再生した。再生されたシクロデキストリンポリマーは、本発明の方法において再使用することができる。

実施例
【0032】
本発明をよりよく理解するために、複数のシクロデキストリンポリマーを様々な条件(シクロデキストリン系、剛性架橋剤、柔軟性架橋剤、第四級アンモニウム塩の種類と添加量、アルカリ溶液の種類と濃度など)下で調製し、水溶液中の様々な有機汚染物質に対するそれらの吸着効果を特性評価した。実施例の具体的な条件は表1に示される。
【0033】
表1. 実施例のまとめ表
*注:
TFTPN:テトラフルオロテレフタロニトリル;
DFBP:デカフルオロビフェニル;
DFBPN:デカフルオロベンゾフェノン;
OFN:オクタフルオロナフタレン;
EPI:エピクロロヒドリン;
GTA:(2,3−エポキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド
β+γ (1+1):βシクロデキストリンとγシクロデキストリンとの物質の量の比は1:1であった。
TFTPN+DFBPN (1+1):TFTPNとDFBPNとの物質の量の比は1:1であった。
CHPTAC:3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド
塩化カルプロニウム:(3−メトキシカルボニルプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド
塩化クロルメコート:(2−クロロエチル)トリメチルアンモニウムクロリド
GAT+ CHPTAC(1+1):(2,3−エポキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドと3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドとの質量比は1:1であった。
とても速い:フェノール類吸着平衡は10分以内に達した。フミン酸吸着平衡は2.5分以内に達した。
比較的速い:フェノール類吸着平衡は20分以内に達した。フミン酸吸着平衡は5分以内に達した。
比較的遅い:フェノール類吸着平衡は30分以内に達した。フミン酸吸着平衡は10分以内に達した。
とても遅い:フェノール類吸着平衡は30分以内に達しなかった。フミン酸吸着平衡は10分以内に達しなかった。

材料特性評価機器及び条件:
【0034】
赤外線測定:Bruker Tensor 27 フーリエ赤外線分光計を用いて、材料及びKBrを混合し粉砕した後に打錠して測定した。
【0035】
比表面積分析:Micromeritics ASAP 2020−M+C比表面積分析装置を使用し、100mgの試料をまず90℃で24時間活性化し、次にNを充填した。次いで、N吸脱着等温線を液体窒素(77K)条件下で測定した。装置自体のBET法を用いて材料の比表面積を計算した。CO吸脱着等温線を273Kで測定し、Langmuir法を用いて材料の比表面積を計算した。
【0036】
ゼータ電位測定:Nano ZS電位測定装置を使用し、50mgのシクロデキストリンポリマーβ−CDP−2を50mLの超純水中で1時間超音波処理して、シクロデキストリンポリマーを水中に均一に分散させ、Zeta電位値が30.0Vであると測定した。
【0037】
第四級アンモニウム塩含有量の測定:1.0gのシクロデキストリンポリマーβ−CDP−2を100mLの0.5M NaSO水溶液中に分散させ、恒温振盪培養機(25C、200r)で2時間振盪し、濾過し、濾液を40mL取り、5滴の100g/Lクロム酸カリウム指示薬を滴加し、0.1M AgNO水溶液で滴定した。上記の実験を残渣について2回繰り返した。
【0038】
HPLC検出条件:アジレント高速液体クロマトグラフ、Waters C−18カラム、移動相メタノール/水(70/30)、流速1 ml min−1、カラム温度30 °C、注入量10uL、UV検出器、BPA検出波長276 nm、BPS検出波長258nm、2、4、6−トリクロロフェノール検出波長230nm、3−フェニルフェノール検出波長250nm、2−ナフトール検出波長264nm
【0039】
吸光度試験:アジレント紫外可視分光光度計、吸収波長254nm。
【0040】
新規シクロデキストリンポリマーの合成経路は図1に示される。ポリマーの原料源は豊富であり、使用される溶媒は水であり、そして調製方法は非常に簡単である。
【0041】
図2は、実施例のシクロデキストリンポリマーβ−CDP−2のZeta電位、第四級アンモニウム塩含有量、孔径及び比表面積の分析結果を示す。ポリマーのZeta電位値は+30.0Vであり、これはシクロデキストリンの表面に正に帯電した第四級アンモニウム塩官能基が結合されていることを示す。測定された第四級アンモニウム塩の質量分率は4.5%であった。CO吸着法及びN吸着法により測定されたポリマーの結果は、ポリマーにおける非常に小さなミクロ孔及び超ミクロ孔の存在を示す。
【0042】
図3は、シクロデキストリンポリマーβ−CDP−2の赤外スペクトルである。2930cm−1でのC−H非対称伸縮振動は広がり、これはエピクロロヒドリンとシクロデキストリンとが反応したことを示す。2240cm−1での吸収は、シアノ基の伸縮振動に対応する。1035cm−1及び1473cm−1での吸収は芳香族炭素の伸縮振動に対応する。1267cm−1での吸収はC−F伸縮振動に対応し、そこでの吸収は弱くなり、Fの部分置換を示す。これは、テトラフルオロテレフタロニトリルとシクロデキストリンが反応したことを示す。
【0043】
従った、実施例で調製した新規シクロデキストリンポリマーCDP−2は、エピクロロヒドリン及びテトラフルオロテレフタロニトリルとβ−シクロデキストリンとを混合し架橋することによって得られ、その表面には第四級アンモニウム塩官能基が結合されていることがわかる。
【0044】
図4からわかるように、N吸着法で測定された実施例のシクロデキストリンポリマーβ−CDP−2のBET比表面積は非常に低い(8.8m/g)が、さらにCO吸着法で測定されたポリマーβ−CDP−2のLangmuir比表面積は89 m/gに達することができる。CO吸着法は0℃で行われるため、液体窒素温度(−196℃)で行われるN吸着法と比較して、分子拡散が早く、吸着平衡に達しやすく、材料におけるより小さなミクロ孔及び超ミクロ孔を測定することができる。これは、実施例のシクロデキストリンポリマーがより多くの超ミクロ孔を含むことを示す。
シクロデキストリンポリマーの水中溶存有機物に対する吸着速度論
【0045】
ビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールS(BPS)、2、4、6−トリクロロフェノール、3−フェニルフェノール、2−ナフトール、フミン酸をモデル汚染物質として使用して、調製されたシクロデキストリンポリマー材料β−CDP−2の水中溶存有機物に対する吸着速度論を研究し、市販の吸着剤活性炭DARCO−AC、吸着樹脂XAD−4又はアニオン性樹脂D201と比較して、材料の優れた性能を特徴付ける。具体的なステップは以下の通りである。0.05gの吸着剤を100mlのビーカーに入れ、撹拌磁石を入れ、磁気撹拌機の回転速度を150rpmに調整し、0.1mmol L−1の濃度を有する50mlのBPA、BPS、2、4、6−トリクロロフェノール、3−フェニルフェノール、2−ナフトール、10ppmフミン酸溶液をそれぞれ添加した。少量の水試料を一定の時間間隔ごとに注射器で採取し、フィルター膜をによって液相バイアルに濾過し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で水試料中のBPA、BPS、2、4、6−トリクロロフェノール、3−フェニルフェノール、2−ナフトールの濃度を測定し、紫外可視分光光度計により水試料中のフミン酸の濃度を測定した。溶液中に溶解した各有機物の除去率は以下の式で計算された。
【0046】
材料の溶存有機物に対する吸着量は以下の式で計算された。
【0047】
それぞれ擬二次速度式及びElovich式を用いて溶存有機物の吸着速度論データをシミュレートした。式はそれぞれ以下のとおりである。
【0048】
実施例で調製されたシクロデキストリンポリマーβ−CDP−2を、活性炭(20〜40メッシュ)、XAD−4型樹脂、D201型樹脂と吸着性能について比較した。結果は図5a〜fに示される。有機微小汚染物質BPA、BPS、2,4,6−トリクロロフェノール、2−ナフトール、3−フェニルフェノールの初期濃度が0.1 mmol L−1である条件で、シクロデキストリンポリマーβ−CDP−2は水中の様々な汚染物質を迅速に除去することができる。10秒の除去率は平衡時の除去率の83%以上に達し、吸着平衡は10分以内に達した。活性炭(20〜40メッシュ)及びXAD−4型樹脂の吸着速度は、実施例のものより明らかに遅く、30分で平衡が達しなかった。天然有機物フミン酸の初期濃度が10ppmである条件で、シクロデキストリンポリマーβ−CDP−2はわずか1分で99%のフミン酸を除去した。一方、活性炭(20〜40メッシュ)及びD201型樹脂による60分でのフミン酸の除去率はそれぞれ22%、1.8%であり、吸着平衡に達するには程遠かった。
【0049】
吸着データの速度論的シミュレーションは図6a〜fに示される。擬二次速度式及びElovich式の両方は、実施例β−CDP−2、活性炭(20−40メッシュ)、XAD型樹脂吸着BPA、BPS、2,4,6−トリクロロフェノール、2−ナフトール、3−フェニルフェノール及び実施例β−CDP−2がフミン酸を吸着する速度論的実験データをよくフィッティングすることができることがわかる。これは、BPA、BPS、2,4,6−トリクロロフェノール、2−ナフトール、3−フェニルフェノール、フミン酸の各材料への吸着は、多重作用メカニズムであることが示されている。
【0050】
擬二次速度式及びElovich式という2つのモデルにより実験データをフィッティングする関連パラメータは図7に示される。2つのモデルによるフィッティングの関連係数は比較的高い(>0.97)ことが示されることから、2つのモデルは実験データのフィッティングにうまく適していることがわかる。擬二次速度式によってフィッティングして得られた実施例の吸着速度定数kは、活性炭(20〜40メッシュ)の100〜200倍、XAD−4への吸着の500〜600倍である。フミン酸の実施例β−CDP−2への吸着の擬二次速度定数は、それの活性炭(20〜40メッシュ)へのものよりも顕著であり、300倍に達した。Elovichモデルの結果によれば、各有機汚染物質の実施例β−CDP−2上の初期吸着速度(α)は、活性炭(20〜40メッシュ)及びXAD−4上の値よりはるかに大きく、フミン酸の実施例β−CDP−2上の初期吸着速度(α)も、活性炭(20〜40メッシュ)上の値よりも大きい。これらの結果は、実施例の有機物及びフミン酸に対する親和性が比較吸着剤よりもはるかに大きいことを示す。このような迅速な吸着現象は、実施例β−CDP−2上の吸着部位がアクセスするのが非常に容易であることを示す。それは、他の吸着剤と比較して、最小の比表面積を有するが、より多くの超ミクロ孔及びより大きい膨潤特性を有する。水溶液中でこれらの超ミクロ孔がより大きな孔に膨潤することは、それらの急速な吸着性能の主な理由であり得る。
シクロデキストリンポリマーの水中溶存有機物に対する吸着等温線
【0051】
ビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールS(BPS)、2、4、6−トリクロロフェノール、3−フェニルフェノール、2−ナフトール、フミン酸をモデル汚染物質として、調製されたシクロデキストリンポリマー材料β−CDP−2の水中溶存有機物に対する吸着容量を研究した。具体的なステップは以下のステップである。初期濃度が0.05mM、0.1mM、0.2mM、0.4mM、0.6mM、0.8mM、1.0mM、1.2mMであるフェノール類有機微小汚染物質単一成分水溶液をそれぞれ50mL取って100mLのコニカルフラスコに入れ、初期濃度が10ppm、20ppm、30ppm、40ppm、60ppm、100ppm、150ppmであるフミン酸水溶液をそれぞれ50mL取って100mLのコニカルフラスコに入れ、それぞれ50mgの実施例のβ−CDP−2シクロデキストリンポリマーを添加し、恒温振盪培養機(20℃、200r)で3時間振盪し、濾過し、濾液中の有機微小汚染物質を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定し、濾液中のフミン酸を紫外可視分光光度計によって測定した。材料による溶存有機物の平衡吸着量は以下の式で計算された。
【0052】
それぞれFreundlichモデル及びLangmuirモデルを用いて溶存有機物の吸着等温線データをシミュレートした。式はそれぞれ以下のとおりである。
【0053】
図8a〜fからわかるように、実施例β−CDP−2のBPA、BPS、2、4、6−トリクロロフェノール、3−フェニルフェノール、2−ナフトール、フミン酸に対する吸着は、Freundlichモデルにより一致している。図9は、2つのモデルで実験データをフィッティングするための関連パラメータを示す。Freundlichモデルのフィッティングに関連する係数は比較的高く(>0.94)、これは実施例で調製したシクロデキストリンポリマーによる各有機汚染物質の吸着が不均一な表面の吸着であり、疎水性相互作用やカチオン結合作用などの異なる吸着作用がある可能性を示す。この結果は、速度論過程で反映された実施例β−CDP−2が各有機汚染物質に対して異なる吸着メカニズムを有するという推論と一致することを確認する。
シクロデキストリンポリマーのリサイクル
【0054】
材料の反復使用性能は、モデル汚染物質としてBPA、BPS、2、4、6−トリクロロフェノール、3−フェニルフェノール、2−ナフトール混合物、フミン酸をそれぞれ使用して研究された。異なる反復使用回数で、材料の溶存有機物に対する吸着性能の変化が研究された。具体的なステップは以下の通りである。
【0055】
1、 50 mgの吸着剤を、20℃で20分間、撹拌条件下で50 mlの0.05 mmol L−1のBPA、BPS、2、4、6−トリクロロフェノール、3−フェニルフェノール、2−ナフトールの混合水溶液と十分に接触させ後、懸濁液を濾過し、濾液を取って、溶液中のBPA、BPS、2、4、6−トリクロロフェノール、3−フェニルフェノール、2−ナフトールの濃度をHPLCで測定し、各汚染物質の除去率を計算した。吸着後の材料をメタノールにより室温下で洗浄し、その後、次の吸着実験に使用した。このような吸着/脱着実験を合計5回行った。
材料の反復使用性能は図10aに示すように、メタノール洗浄後に、実施例β−CDP−2のBPA、BPS、2、4、6−トリクロロフェノール、3−フェニルフェノール、2−ナフトールに対する吸着性能はほとんど変化せず、5回の反復実験すべてにおいてBPAの除去率は約99%に達し、BPSの除去率は90%以上に達し、2,4,6−トリクロロフェノールの除去率は92%以上に達し、3−フェニルフェノールの除去率は95%以上に達し、2−ナフトールの除去率は70%以上に達した。これは、材料がメタノールにより室温で洗浄することによって容易に再生されることを示す。
【0056】
2、50mgの吸着剤を20℃で10分間、撹拌条件下で50mlの10ppmフミン酸溶液と十分に接触させた後、懸濁液を濾過し、濾液を取って、フミン酸の濃度を紫外可視分光光度計で測定し、フミン酸の除去率を計算した。吸着後の材料を順に2MのNaOH、1%HCl、水により室温下で洗浄し、その後、次の吸着実験に使用した。このような吸着/脱着実験を合計5回行った。
材料の反復使用性能は図10bに示すように、NaOH/HCl洗浄後に、実施例β−CDP−2シクロデキストリンポリマーのフミン酸に対する吸着性能はほとんど変化せず、5回の反復実験すべてにおいフミン酸の除去率は95%以上に達した。これは、材料がNaOH/HClにより室温で洗浄することによって容易に再生されることを示す。
【0057】
図11は、幾つかの異なる種類のシクロデキストリン及びそれらの組み合わせによって調製されたポリマーのBPA(a)及びフミン酸(b)に対する吸着速度を比較した。α、β及びγの3つの種類のシクロデキストリン及びその混合物により、超高速吸着特性を有するポリマーを調製することができ、10 minでのBPAの除去率は90%以上に達し得、2.5min内にフミン酸の除去率は100%であったことがわかる。これは、異なる種類のシクロデキストリン間の違いは空洞の大きさだけであり、反応基と吸着部位が同じであるので、得られたポリマーが良好な吸着性能を有するためである。
【0058】
図12は、幾つかの異なる剛性架橋剤で調製されたシクロデキストリンポリマーのBPA及びフミン酸(b)に対する吸着速度を示す。デカフルオロビフェニル、テトラフルオロテレフタロニトリル、デカフルオロベンゾフェノン及びオクタフルオロナフタレン、ならびにそれらの組み合わせを剛性架橋剤として使用して、とても速い吸着速度を有するシクロデキストリンポリマーを調製することができることがわかる。テトラフルオロテレフタロニトリル及びデカフルオロベンゾフェノンは最も好ましい。これは、ベンゼン環構造を有する剛性架橋剤が主に剛性サポートの作用を果たし、シクロデキストリンと反応することができるそのような剛性架橋剤である限り、理論的には、ポリマーの吸着に有利であることを示す。
【0059】
図13は、材料のBPA(a)及びフミン酸(b)に対する吸着性能への異なる剛性架橋剤使用量の影響を研究した。実験で使用された剛性架橋剤とシクロデキストリンとのモル比は0.1875〜3であった。結果は、剛性架橋剤の添加量がシクロデキストリンの0.1875倍である場合に調製されたポリマーの吸着速度が最も遅く、30分以内に吸着平衡に達しなかったことを示す。これは、ポリマー中の剛性構造が少なすぎて、十分な孔及びサポートを形成し難いためである可能性がある。また、剛性架橋剤の添加量が多すぎることも適切ではない。例えば、その添加量がシクロデキストリンの3倍である場合、吸着速度も比較的遅く、吸着平衡に達するのに30分かかった。これは、あまりの剛性基の導入により、材料の膨潤性能が低下するためである可能性がある。剛性架橋剤の適切な添加量はシクロデキストリンの0.375〜1.5倍であり、剛性架橋剤の添加量とシクロデキストリンとのモル比が0.75であるときに効果が最も良い。
【0060】
図14は、材料のBPA(a)及びフミン酸(b)に対する吸着性能への柔軟性架橋剤エピクロロヒドリンの使用量の影響を研究した。使用されたエピクロロヒドリンとシクロデキストリンとのモル比は5〜65であった。EPIの使用量が多すぎても少なすぎても、調製されたシクロデキストリンポリマーはより遅い吸着速度を有し、吸着は30分で平衡に達せず、最終的な吸着量も減少したことがわかる。これは、最終的なシクロデキストリンポリマーの吸着速度がポリマー中の剛性構造と柔軟性構造との比に依存し、材料の剛性及び膨潤性が保証されている場合にのみ最良の吸着性能が得られるからである。適切なEPIの使用量は、シクロデキストリンの20〜50倍である。35倍が最良である。
【0061】
図15は、異なる第四級アンモニウム塩により調製されたシクロデキストリンポリマーのBPA(a)及びフミン酸(b)に対する吸着速度を研究した。結果は、(2,3−エポキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(2−クロロエチル)トリメチルアンモニウムクロリド、(3−メトキシカルボニルプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド及びそれらの混合物により、超高速吸着特性を有するポリマーを調製することができることを示す。これは、異なる第四級アンモニウム塩がシクロデキストリンポリマーの空間構造を変化させず、結合された第四級アンモニウム塩官能基が変化しないためである。
【0062】
図16は、材料のBPA(a)及びフミン酸(b)に対する吸着性能への異なる第四級アンモニウム塩使用量の影響を研究した。使用されたエピクロロヒドリンとシクロデキストリンとの質量比は1〜0.15であった。第四級アンモニウム塩の含有量が比較的少ないと、シクロデキストリンポリマーはフミン酸に対する吸着速度が比較的遅いことがわかる。これは、結合された第四級アンモニウム塩官能基が少ないが、BPAに対する吸着部位にほとんど変化がないので、BPAに対する吸着速度に影響がないためである。
【0063】
図17は、幾つかの異なるアルカリ濃度条件下で調製されたシクロデキストリンポリマーがBPA吸着性能に及ぼす影響を比較したものである。使用されたアルカリ溶液の濃度は2〜8 mol L−1であった。図面からわかるように、上述の幾つかのアルカリ濃度で調製されたシクロデキストリンポリマーのBPAに対する吸着速度はとても速く、10分以内にBPA吸着平衡に達することができ、最終的な除去率は90%以上に達することができ、フミン酸の除去率は2.5分以内に100%に達した。
【0064】
図18では、BPA吸着性能に対する2つの異なるアルカリ性水溶液で調製されたシクロデキストリンポリマーの影響を研究した。KOH及びNaOHの2つの強アルカリ水溶液条件で、いずれもとても速い吸着速度を有するシクロデキストリンポリマーを調製することができ、BPAの除去率はいずれも90%以上に達することができ、フミン酸の除去率は約100%であることがわかる。アルカリ性条件は、主にシクロデキストリン上の水酸基から水素を除去してアニオンを形成して、さらに求核置換反応を起こすように機能するので、このような強いアルカリは、ポリマーの調製を容易にするために必要とされる。
【0065】
上記の説明は例示目的のみのためであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【外国語明細書】
2019218535000001.pdf