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特開2019-218596光沢ニッケルめっき方法及び光沢ニッケルめっき皮膜の制御方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-218596(P2019-218596A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】光沢ニッケルめっき方法及び光沢ニッケルめっき皮膜の制御方法。
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/12 20060101AFI20191129BHJP
   C07C 33/044 20060101ALN20191129BHJP
【FI】
   C25D3/12
   C07C33/044
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-116362(P2018-116362)
(22)【出願日】2018年6月19日
(11)【特許番号】特許第6542437号(P6542437)
(45)【特許公報発行日】2019年7月10日
(71)【出願人】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 沙緒里
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 保紀
(72)【発明者】
【氏名】北 晃治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 敏光
(72)【発明者】
【氏名】片山 順一
(72)【発明者】
【氏名】辻本 貴光
【テーマコード(参考)】
4H006
4K023
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB80
4H006FE11
4K023AA01
4K023AA12
4K023BA06
4K023BA07
4K023BA15
4K023CB08
4K023CB14
4K023CB21
4K023CB28
4K023DA02
4K023DA06
4K023DA07
4K023DA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高耐食性及び高硬度性に優れ、且つ、ニッケルの溶出が抑制された光沢ニッケルめっき皮膜を形成することができる光沢ニッケルめっき方法を提供する。
【解決手段】水溶性ニッケル化合物、一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤を含有する光沢ニッケルめっき液に、被めっき物を接触させる光沢ニッケルめっき方法であって、(1)前記光沢ニッケルめっき液中の前記一次系光沢剤の含有量は0.1〜2.0g/Lであり、(2)前記光沢ニッケルめっき液中の前記二次系光沢剤の含有量は0.01〜0.5g/Lであり、(3)前記光沢ニッケルめっき液中の前記電位調整剤の含有量は、0.25〜5.0g/Lである、ことを特徴とする光沢ニッケルめっき方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ニッケル化合物、一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤を含有する光沢ニッケルめっき液に、被めっき物を接触させる光沢ニッケルめっき方法であって、
(1)前記光沢ニッケルめっき液中の前記一次系光沢剤の含有量は0.1〜2.0g/Lであり、
(2)前記光沢ニッケルめっき液中の前記二次系光沢剤の含有量は0.01〜0.5g/Lであり、
(3)前記光沢ニッケルめっき液中の前記電位調整剤の含有量は、0.25〜5.0g/Lである、
ことを特徴とする光沢ニッケルめっき方法。
【請求項2】
前記一次系光沢剤は、ヘテロ原子として硫黄及び窒素を含有する複素環式化合物、及び、含硫黄複素環式化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項3】
前記一次系光沢剤は、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは、S又はSOであり、Rは、H、Cl、Br、I又はCHである。)
で表される複素環式化合物である、請求項1又は2に記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項4】
前記一次系光沢剤は、1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン、サッカリン、N−メチルサッカリン、N−クロロサッカリン、N−ブロモサッカリン、及び、N−ヨードサッカリンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項5】
前記二次系光沢剤は、炭素間二重結合及び/又は炭素間三重結合を有する不飽和化合物である、請求項1〜4のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項6】
前記二次系光沢剤は、プロピンスルホン酸ナトリウム、ブチンジオールジエトキシレート、ヘキシンジオール、
下記一般式(2)
【化2】
(式中、Rは、H、OH又はCHであり、Rは、炭素数1〜7のアルキル基又はプロパギル基である。)
で表される不飽和化合物、及び、
下記一般式(3)
【化3】
(式中、Rは、H、OH又はCHである。)
で表される不飽和化合物
からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項7】
前記二次系光沢剤は、2−プロピオ−1−オール(プロパギルアルコール)、プロピンスルホン酸ナトリウム、1,4−ブチンジオール、2−ブチン−1−オール、2−ペンチン−1−オール、ブチンジオールジエトキシレート、2−ヘキシン−1−オール、ヘキシンジオール、2−ヘプチン−1−オール、2−オクチン−1−オール、2−ノシン−1−オール、2−デシン−1−オール、及び、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項8】
前記電位調整剤は、アルデヒド化合物、及び、ジオール化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項9】
前記電位調整剤は、
下記一般式(4)
【化4】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClであり、Rは、炭素数1〜7のアルキル基又はビニル基である。)
で表されるアルデヒド化合物、
下記一般式(5)
【化5】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClである。)
で表されるアルデヒド化合物、
下記一般式(6)
【化6】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClであり、R10は、炭素数1〜7のアルキル基又はビニル基である。)
で表されるジオール化合物、及び、
下記一般式(7)
【化7】
(式中、R11は、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClである。)
で表されるジオール化合物
からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜8のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項10】
前記電位調整剤は、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、プロパナール、ブタナール、ヘキサナール、3−クロロプロパナール、クロロアセトアルデヒド、抱水クロラール、抱水ブロマール、3−メチルブタナール、2−プロペナール、及び、2−ブテナールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜9のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項11】
光沢ニッケルめっき皮膜の炭素含有量及び硫黄含有量を制御する制御方法であって、
水溶性ニッケル化合物、一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤を含有する光沢ニッケルめっき液に被めっき物を接触させて、光沢ニッケルめっき皮膜を形成する工程を有し、前記工程において、
(1)前記光沢ニッケルめっき液中の前記一次系光沢剤の含有量を0.1〜2.0g/Lとし、
(2)前記光沢ニッケルめっき液中の前記二次系光沢剤の含有量を0.01〜0.5g/Lとし、
(3)前記光沢ニッケルめっき液中の前記電位調整剤の含有量を0.25〜5.0g/Lとする、
ことを特徴とする光沢ニッケルめっき皮膜の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光沢ニッケルめっき方法及び光沢ニッケルめっき皮膜の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、家電製品、水栓金具、雑貨品、装飾品等の分野では、製品に装飾性、耐食性、耐摩耗性等を付与する目的で、下地めっきとしてニッケル(Ni)めっきを施し、さらに仕上げめっきとしてクロム(Cr)めっきが施されている。このようなニッケルめっきには、製品に装飾性を付与するために、光沢ニッケルめっきが施されている。
【0003】
上述のような分野に用いられる光沢ニッケルめっき皮膜には、電位差によって腐食が進むため、高耐食性が要求される。
【0004】
耐食性が改善された光沢ニッケルめっき層を析出させるための電解浴に用いる混合物として、例えば、(c)安息香酸スルフィミド等、(h)抱水クロラール等を含み、任意で(a)ニッケルイオン、(b)酸、(e)特定のアセチレン系不飽和化合物、(f)ベタイン、(g)潤滑剤を含有する混合物が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、電解浴により形成されたニッケルめっき皮膜の硬度、及びニッケルの溶出の抑制について十分に検討されていない。上述の分野において用いられる製品に施される光沢ニッケルめっきには、耐摩耗性等を付与するために、硬度が高いことが要求される。また、上述の分野では、製品の使用環境によって光沢ニッケルめっきからニッケルが溶出することがあり、このようなニッケルの溶出が抑制されていることが要求される。特許文献1では、これらの特性について検討されておらず、特許文献1に記載されている電解浴により形成されたニッケルめっき皮膜は、高硬度性が十分でなく、ニッケルの溶出が十分に抑制されていないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−212417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高耐食性及び高硬度性に優れ、且つ、ニッケルの溶出が抑制された光沢ニッケルめっき皮膜を形成することができる光沢ニッケルめっき方法を提供することを目的とする。また、本発明は、光沢ニッケルめっき皮膜の炭素含有量及び硫黄含有量を制御することにより、光沢ニッケルめっき皮膜に高耐食性及び高硬度性を付与することができ、且つ、光沢ニッケルめっき皮膜のニッケルの溶出を抑制することができる光沢ニッケルめっき皮膜の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、水溶性ニッケル化合物、一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤を含有する光沢ニッケルめっき液に、被めっき物を接触させる光沢ニッケルめっき方法において、一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤の含有量をそれぞれ特定の範囲とすることにより、形成される光沢ニッケルめっき皮膜の硫黄含有量及び炭素含有量を適度な範囲に調整することができ、且つ、光沢ニッケルめっき皮膜の電位を貴にすることができ、光沢ニッケルめっき皮膜に高耐食性及び高硬度性を付与することができ、且つ、光沢ニッケルめっき皮膜のニッケルの溶出を抑制することができることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、下記の光沢ニッケルめっき方法及び光沢ニッケルめっき皮膜の制御方法に関する。
1.水溶性ニッケル化合物、一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤を含有する光沢ニッケルめっき液に、被めっき物を接触させる光沢ニッケルめっき方法であって、
(1)前記光沢ニッケルめっき液中の前記一次系光沢剤の含有量は0.1〜2.0g/Lであり、
(2)前記光沢ニッケルめっき液中の前記二次系光沢剤の含有量は0.01〜0.5g/Lであり、
(3)前記光沢ニッケルめっき液中の前記電位調整剤の含有量は、0.25〜5.0g/Lである、
ことを特徴とする光沢ニッケルめっき方法。
2.前記一次系光沢剤は、ヘテロ原子として硫黄及び窒素を含有する複素環式化合物、及び、含硫黄複素環式化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載の光沢ニッケルめっき方法。
3.前記一次系光沢剤は、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは、S又はSOであり、Rは、H、Cl、Br、I又はCHである。)
で表される複素環式化合物である、項1又は2に記載の光沢ニッケルめっき方法。
4.前記一次系光沢剤は、1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン、サッカリン、N−メチルサッカリン、N−クロロサッカリン、N−ブロモサッカリン、及び、N−ヨードサッカリンからなる群より選択される少なくとも1種である、項1〜3のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
5.前記二次系光沢剤は、炭素間二重結合及び/又は炭素間三重結合を有する不飽和化合物である、項1〜4のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
6.前記二次系光沢剤は、プロピンスルホン酸ナトリウム、ブチンジオールジエトキシレート、ヘキシンジオール、
下記一般式(2)
【化2】
(式中、Rは、H、OH又はCHであり、Rは、炭素数1〜7のアルキル基又はプロパギル基である。)
で表される不飽和化合物、及び、
下記一般式(3)
【化3】
(式中、Rは、H、OH又はCHである。)
で表される不飽和化合物
からなる群より選択される少なくとも1種である、項1〜5のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
7.前記二次系光沢剤は、2−プロピオ−1−オール(プロパギルアルコール)、プロピンスルホン酸ナトリウム、1,4−ブチンジオール、2−ブチン−1−オール、2−ペンチン−1−オール、ブチンジオールジエトキシレート、2−ヘキシン−1−オール、ヘキシンジオール、2−ヘプチン−1−オール、2−オクチン−1−オール、2−ノシン−1−オール、2−デシン−1−オール、及び、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールからなる群より選択される少なくとも1種である、項1〜6のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
8.前記電位調整剤は、アルデヒド化合物、及び、ジオール化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、項1〜7のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
9.前記電位調整剤は、下記一般式(4)
【化4】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClであり、Rは、炭素数1〜7のアルキル基又はビニル基である。)
で表されるアルデヒド化合物、
下記一般式(5)
【化5】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClである。)
で表されるアルデヒド化合物、
下記一般式(6)
【化6】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClであり、R10は、炭素数1〜7のアルキル基又はビニル基である。)
で表されるジオール化合物、及び、
下記一般式(7)
【化7】
(式中、R11は、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClである。)
で表されるジオール化合物
からなる群より選択される少なくとも1種である、項1〜8のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
10.前記電位調整剤は、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、プロパナール、ブタナール、ヘキサナール、3−クロロプロパナール、クロロアセトアルデヒド、抱水クロラール、抱水ブロマール、3−メチルブタナール、2−プロペナール、及び、2−ブテナールからなる群より選択される少なくとも1種である、項1〜9のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
11.光沢ニッケルめっき皮膜の炭素含有量及び硫黄含有量を制御する制御方法であって、
水溶性ニッケル化合物、一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤を含有する光沢ニッケルめっき液に被めっき物を接触させて、光沢ニッケルめっき皮膜を形成する工程を有し、前記工程において、
(1)前記光沢ニッケルめっき液中の前記一次系光沢剤の含有量を0.1〜2.0g/Lとし、
(2)前記光沢ニッケルめっき液中の前記二次系光沢剤の含有量を0.01〜0.5g/Lとし、
(3)前記光沢ニッケルめっき液中の前記電位調整剤の含有量を0.25〜5.0g/Lとする、
ことを特徴とする光沢ニッケルめっき皮膜の制御方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光沢ニッケルめっき方法は、高耐食性及び高硬度性に優れ、且つ、ニッケルの溶出が抑制された光沢ニッケルめっき皮膜を形成することができる。また、本発明の光沢ニッケルめっき皮膜の制御方法は、光沢ニッケルめっき皮膜の炭素含有量及び硫黄含有量を制御することにより、光沢ニッケルめっき皮膜に高耐食性及び高硬度性を付与することができ、且つ、光沢ニッケルめっき皮膜のニッケルの溶出を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の光沢ニッケルめっき方法及び光沢ニッケルめっき皮膜の制御方法について詳細に説明する。
【0012】
1.光沢ニッケルめっき方法
本発明の光沢ニッケルめっき方法は、水溶性ニッケル化合物、一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤を含有する光沢ニッケルめっき液に、被めっき物を接触させる光沢ニッケルめっき方法であって、(1)前記光沢ニッケルめっき液中の前記一次系光沢剤の含有量は0.1〜2.0g/Lであり、(2)前記光沢ニッケルめっき液中の前記二次系光沢剤の含有量は0.01〜0.5g/Lであり、(3)前記光沢ニッケルめっき液中の前記電位調整剤の含有量は、0.25〜5.0g/Lであることを特徴とする。
【0013】
一般的に、光沢ニッケルめっきのめっき方法においては、電位調整剤を添加すると皮膜に割れが発生し易くなるため、一般には電位調整剤を添加して光沢ニッケルめっき皮膜の電位を調整することは行われていない。また、光沢ニッケルめっき液に一次系光沢剤を添加して、形成されるニッケルめっき皮膜に光沢を付与すると、光沢ニッケルめっき皮膜中の硫黄の含有量が増加するため、光沢ニッケルめっき皮膜の耐食性及び硬度が低下し、且つ、光沢ニッケルめっき皮膜の電位が卑になりニッケル溶出量が増加する。
【0014】
また、一般的に、光沢ニッケルめっき液に一次系光沢剤及び二次系光沢剤を添加して、それぞれの含有量を適切な範囲に調整すると、光沢ニッケルめっき皮膜中の硫黄の含有量が低下し、且つ、炭素の含有量が増加して、光沢ニッケルめっき皮膜の耐食性及び硬度が高くなるが、光沢ニッケルめっき皮膜の電位が卑になりニッケル溶出量が増加する。
【0015】
これに対し、本発明の光沢ニッケルめっき方法では、光沢ニッケルめっき液が一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤を含有し、且つ、それぞれの含有量が特定の範囲である構成とすることにより、形成される光沢ニッケルめっき皮膜の硫黄含有量及び炭素含有量を適度な範囲に調整することができ、且つ、光沢ニッケルめっき皮膜の電位を貴にすることができる。
【0016】
特に、本発明の光沢ニッケルめっき方法では、光沢ニッケルめっき液中に、一次系光沢剤に由来する遊離硫黄が相当量含まれる場合であっても、電位調整剤を適切な範囲で含有することにより、光沢ニッケルめっき皮膜中の硫黄の含有量を抑制することができ、炭素含有量を増加させることが可能となる。
【0017】
以上より、本発明の光沢ニッケルめっき方法によれば、光沢ニッケルめっき皮膜に高耐食性及び高硬度性を付与することができ、且つ、ニッケルの溶出が抑制された光沢ニッケルめっき皮膜を形成することができる。
【0018】
本発明の光沢ニッケルめっき方法に用いられる光沢ニッケルめっき液の種類については特に限定されず、従来公知の電気ニッケルめっき液等を使用することができる。このような電気ニッケルめっき液として、具体的には、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、ホウ酸等を含むいわゆるワット浴、スルファミン酸ニッケルを含むスルファミン酸ニッケル浴、塩化ニッケルを含むいわゆるストライク浴(ウッド浴)等が挙げられる。また、一水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、及び酢酸ニッケル等を含む、各種のニッケル浴を使用することも可能である。本発明の光沢ニッケルめっき方法においては、光沢ニッケルめっき液としては、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、及びホウ酸を含むワット浴が特に好ましい。
【0019】
(水溶性ニッケル化合物)
水溶性ニッケル化合物としては水に可溶であれば特に限定されず、光沢ニッケルめっき液に用いられる従来公知の水溶性ニッケル化合物が挙げられる。このような水溶性ニッケル化合物としては、硫酸ニッケル6水和物、塩化ニッケル6水和物、炭酸ニッケル4水和物等が挙げられる。これらの中でも、より一層光沢ニッケルめっきの析出性に優れる点で、硫酸ニッケル6水和物、塩化ニッケル6水和物が好ましく、硫酸ニッケル6水和物及び塩化ニッケル6水和物を混合して用いることがより好ましい。
【0020】
上記水溶性ニッケル合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
水溶性ニッケル化合物として、硫酸ニッケル6水和物及び塩化ニッケル6水和物を混合して用いる場合、光沢ニッケルめっき液中の硫酸ニッケル6水和物の含有量は、200〜500g/Lが好ましく、220〜400g/Lがより好ましく、230〜350g/Lが更に好ましい。硫酸ニッケル6水和物の含有量が上記範囲より多いと、めっき液の比重が高くなり、ピットの発生を引き起こす場合がある。硫酸ニッケル6水和物の含有量が上記範囲より少ないと、めっき皮膜の外観に曇り及び焦げが生じる場合がある。
【0022】
水溶性ニッケル化合物として、硫酸ニッケル6水和物及び塩化ニッケル6水和物を混合して用いる場合、光沢ニッケルめっき液中の塩化ニッケル6水和物の含有量は、40〜70g/Lが好ましく、50〜70g/Lがより好ましく、55〜65g/Lが更に好ましい。塩化ニッケル6水和物の含有量が上記範囲であることにより、光沢ニッケルめっき皮膜のニッケルの溶出がより一層抑制される。塩化ニッケル6水和物の含有量が上記範囲より多いと、めっき皮膜の内部応力が増大する場合がある。塩化ニッケル6水和物の含有量が上記範囲より少ないと、アノード板として用いるニッケルが不動態化し、ニッケルが不溶化するため、めっき反応を阻害する場合がある。
【0023】
光沢ニッケルめっき液中の金属ニッケル総量は、50〜100g/Lが好ましく、60〜90g/Lがより好ましい。金属ニッケル総量が上記範囲より多いと、めっき液の比重が高くなり、ピットの発生を引き起こす場合がある。金属ニッケル総量が上記範囲より少ないと、めっき皮膜の外観に曇り及び焦げが生じる場合がある。
【0024】
(一次系光沢剤)
一次系光沢剤としては、光沢ニッケルめっき液の一次系光沢剤として用いることができれば特に限定されず、従来公知の一次系光沢剤を用いることができる。一次系光沢剤としては、例えば、ヘテロ原子として硫黄及び窒素を含有する複素環式化合物、含硫黄複素環式化合物等が挙げられる。これらの中でも、光沢ニッケルめっき皮膜により一層優れた光沢性を付与することができる点で、ヘテロ原子として硫黄及び窒素を含有する複素環式化合物、含硫黄複素環式化合物が好ましく、ヘテロ原子として硫黄及び窒素を含有する複素環式化合物がより好ましい。
【0025】
上記一次系光沢剤としては、下記一般式(1)
【化8】
で表される複素環式化合物が好ましい。一次系光沢剤として、上記一般式(1)で表される複素環式化合物を用いることにより、光沢ニッケルめっき皮膜により一層優れた光沢性を付与することができる。
【0026】
上記一般式(1)において、Rは、S又はSOである。これらの中でも、光沢ニッケルめっき皮膜により一層優れた光沢性を付与することができる点で、SOが好ましい。
【0027】
上記一般式(1)において、Rは、H、Cl、Br、I又はCHである。これらの中でも、光沢ニッケルめっき皮膜により一層優れた光沢性を付与することができる点で、H又はCHが好ましい。
【0028】
上記一次系光沢剤としては、より具体的には、1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン、サッカリン、N−メチルサッカリン、N−クロロサッカリン、N−ブロモサッカリン、N−ヨードサッカリンが挙げられる。これらの中でも、光沢ニッケルめっき皮膜により一層優れた光沢性を付与することができる点で、1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン、サッカリン、N−メチルサッカリン、N−クロロサッカリンが好ましく、1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン、サッカリン、N−メチルサッカリンがより好ましい。
【0029】
上記一次系光沢剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
光沢ニッケルめっき液中の一次系光沢剤の含有量は0.1〜2.0g/Lである。0.1g/L未満であると、光沢ニッケルめっき皮膜に十分な光沢性を付与できない。また、2.0g/Lを超えると、光沢ニッケルめっき皮膜の硫黄の含有量が大きくなり、耐食性及び硬度性が低下する。光沢ニッケルめっき液中の一次系光沢剤の含有量は0.2〜0.8g/Lが好ましく、0.2〜0.5g/Lがより好ましい。
【0031】
(二次系光沢剤)
二次系光沢剤としては、光沢ニッケルめっき液の二次系光沢剤として用いることができれば特に限定されず、従来公知の二次系光沢剤を用いることができる。二次系光沢剤としては、例えば、炭素間二重結合及び/又は炭素間三重結合を有する不飽和化合物等が挙げられる。これらの中でも、光沢ニッケルめっき皮膜の高耐食性及び高硬度性がより一層向上する点で、炭素間三重結合を有する不飽和化合物が好ましい。
【0032】
上記二次系光沢剤としては、プロピンスルホン酸ナトリウム、ブチンジオールジエトキシレート、ヘキシンジオール、下記一般式(2)
【化9】
で表される不飽和化合物、下記一般式(3)
【化10】
で表される不飽和化合物が好ましい。二次系光沢剤として、これらの不飽和化合物を用いることにより、光沢ニッケルめっき皮膜により一層優れた耐食性及び高硬度性を付与することができる。
【0033】
上記一般式(2)及び(3)において、R及びRは、H、OH又はCHである。上記R及びRは、光沢ニッケルめっき皮膜により一層優れた耐食性及び高硬度性を付与することができる点で、H又はCHが好ましい。
【0034】
上記一般式(2)において、Rは、炭素数1〜7のアルキル基又はプロパギル基である。上記Rは、光沢ニッケルめっき皮膜により一層優れた耐食性及び高硬度性を付与することができる点で、アルキル基が好ましい。また、上記Rの炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。
【0035】
上記二次系光沢剤としては、より具体的には、2−プロピオ−1−オール(プロパギルアルコール)、プロピンスルホン酸ナトリウム、1,4−ブチンジオール、2−ブチン−1−オール、2−ペンチン−1−オール、ブチンジオールジエトキシレート、2−ヘキシン−1−オール、ヘキシンジオール、2−へプチン−1−オール、2−オクチン−1−オール、2−ノシン−1−オール、2−デシン−1−オール、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールが挙げられる。これらの中でも、光沢ニッケルめっき皮膜により一層優れた耐食性及び高硬度性を付与することができる点で、2−プロピオ−1−オール(プロパギルアルコール)、1,4−ブチンジオール、2−ブチン−1−オール、ブチンジオールジエトキシレート、ヘキシンジオールが好ましい。
【0036】
上記二次系光沢剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
光沢ニッケルめっき液中の二次系光沢剤の含有量は0.01〜0.5g/Lである。二次系光沢剤の含有量が0.01g/L未満であると、光沢ニッケルめっき皮膜に十分な光沢性を付与できない。また、0.5g/Lを超えると、光沢ニッケルめっき皮膜の硫黄の含有量が多くなり、ニッケル溶出量が増加する。光沢ニッケルめっき液中の二次系光沢剤の含有量は0.02〜0.15g/Lが好ましく、0.04〜0.08g/Lがより好ましい。
【0038】
(電位調製剤)
電位調製剤としては、光沢ニッケルめっき皮膜の電位を貴な電位に調整できれば特に限定されず、例えば、アルデヒド化合物、ジオール化合物等を用いることができる。これらの中でも、光沢ニッケルめっき皮膜の炭素含有量をより一層向上させ、且つ、硫黄含有量をより一層低減させて、光沢ニッケルめっき皮膜の高耐食性及び高硬度性をより一層向上させることができ、且つ、光沢ニッケルめっき皮膜の電位をより一層貴な電位にすることができ、ニッケルの溶出がより一層抑制される点で、ジオール化合物が好ましい。
【0039】
上記電位調製剤としては、下記一般式(4)
【化11】
で表されるアルデヒド化合物、下記一般式(5)
【化12】
で表されるアルデヒド化合物、下記一般式(6)
【化13】
で表されるジオール化合物、下記一般式(7)
【化14】
で表されるジオール化合物が好ましい。二次系光沢剤として、上記一般式(4)及び(5)で表されるアルデヒド化合物、並びに、上記一般式(6)及び(7)で表されるジオール化合物を用いることにより、光沢ニッケルめっき皮膜の高耐食性及び高硬度性をより一層向上させることができ、且つ、ニッケルの溶出がより一層抑制される。
【0040】
上記一般式(4)〜(7)において、R、R、R、及びR11は、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClである。これらの中でも、光沢ニッケルめっき皮膜の高耐食性及び高硬度性をより一層向上させることができ、且つ、ニッケルの溶出がより一層抑制される点で、H、CH3、Cl、CClが好ましい。
【0041】
上記一般式(4)及び(6)において、R及びR10は、炭素数1〜7のアルキル基又はビニル基である。上記R及びR10は、光沢ニッケルめっき皮膜の高耐食性及び高硬度性をより一層向上させることができ、且つ、ニッケルの溶出がより一層抑制される点で、アルキル基が好ましい。また、上記R及びR10の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。
【0042】
上記電位調整剤としては、より具体的には、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、プロパナール、ブタナール、ヘキサナール、3−クロロプロパナール、クロロアセトアルデヒド、抱水クロラール、抱水ブロマール、3−メチルブタナール、2−プロペナール、及び、2−ブテナールが挙げられる。これらの中でも、光沢ニッケルめっき皮膜の高耐食性及び高硬度性をより一層向上させることができ、且つ、ニッケルの溶出がより一層抑制される点で、クロロアセトアルデヒド、抱水クロラール、2−プロペナール、2−ブテナールが好ましい。
【0043】
上記電位調整剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
光沢ニッケルめっき液中の電位調整剤の含有量は0.25〜5.0g/Lである、0.25g/L未満であると、光沢ニッケルめっき皮膜に十分な電位を調整できず、且つ、光沢ニッケルめっき皮膜の炭素の含有量が少なくなり、耐食性及び硬度性が低下し、ニッケル溶出量が増大する。また、5.0g/Lを超えると、光沢ニッケルめっき皮膜のニッケル溶出量が増大する。光沢ニッケルめっき液中の電位調整剤の含有量は0.5〜2.0g/Lが好ましく、0.75〜1.5g/Lがより好ましい。
【0045】
(他の添加剤)
光沢ニッケルめっき液は、上記水溶性ニッケル化合物、一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤を含有していればよく、これらを含有する水溶液であることが好ましい。また、光沢ニッケルめっき液は、これらの成分の他に、更に、pH緩衝剤として、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、炭酸、それらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等を含有していてもよい。pH緩衝剤の配合量は特に限定的ではないが、例えば0.1〜200g/L程度とすることができる。また、光沢ニッケルめっき液は、上記成分の他に、更に、ピット防止剤として、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等の界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤の配合量は特に限定的ではないが、例えば0.01〜10g/L程度とすることができる。
【0046】
光沢ニッケルめっき液のpHは、通常、3.5〜5.0程度とすればよく、3.8〜4.8程度とすることが好ましい。pH調整には、硫酸、塩酸等の無機酸;炭酸ニッケル等の金属炭酸塩;水酸化ナトリウム;アンモニア水等を使用することができる。
【0047】
上記光沢ニッケルめっき液を用いて光沢ニッケルめっきを行うには、常法に従って、光沢ニッケルめっき液を被めっき物に接触させればよい。通常は、光沢ニッケルめっき液中に被めっき物を浸漬し、電気めっきを行うことによって、効率よく光沢ニッケルめっき皮膜を形成することができる。
【0048】
光沢ニッケルめっき液の液温は、通常、45〜65℃程度とすればよく、50〜60℃程度とすることが好ましい。また必要に応じて、めっき液の撹拌や被めっき物の揺動を行うことができる。
【0049】
電気めっきの際の電流密度は1〜6A/dm程度とすればよく、2〜4A/dm程度とすることが好ましい。
【0050】
被めっき物の材質については、電気めっきが可能であれば特に限定はない。例えば、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム等の金属やこれらの合金、下地めっきを施した樹脂等が挙げられる。
【0051】
本発明の光沢ニッケルめっき方法により形成される光沢ニッケルめっき皮膜の硫黄含有量は0.001〜0.130wt%が好ましく0.005〜0.090wt%がより好ましく、0.007〜0.070wt%が更に好ましい。光沢ニッケルめっき皮膜の硫黄含有量が上記範囲であることにより、光沢ニッケルめっき皮膜がより一層高耐食性及び高硬度性に優れ、且つ、ニッケルの溶出がより一層抑制される。
【0052】
本発明の光沢ニッケルめっき方法により形成される光沢ニッケルめっき皮膜の炭素含有量は0.3〜0.9wt%が好ましく、0.5〜0.7wt%がより好ましく、0.6〜0.7wt%が更に好ましい。光沢ニッケルめっき皮膜の炭素含有量が上記範囲であることにより、光沢ニッケルめっき皮膜がより一層高耐食性及び高硬度性に優れ、且つ、ニッケルの溶出がより一層抑制される。
【0053】
2.光沢ニッケルめっき皮膜の制御方法
本発明の光沢ニッケルめっき皮膜の制御方法は、光沢ニッケルめっき皮膜の炭素含有量及び硫黄含有量を制御する制御方法であって、
水溶性ニッケル化合物、一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤を含有する光沢ニッケルめっき液に被めっき物を接触させて、光沢ニッケルめっき皮膜を形成する工程を有し、前記工程において、
(1)前記光沢ニッケルめっき液中の前記一次系光沢剤の含有量を0.1〜2.0g/Lとし、
(2)前記光沢ニッケルめっき液中の前記二次系光沢剤の含有量を0.01〜0.5g/Lとし、
(3)前記光沢ニッケルめっき液中の前記電位調整剤の含有量を0.25〜5.0g/Lとすることを特徴とする。
本発明の光沢ニッケルめっき皮膜の制御方法では、上記光沢ニッケルめっき液中の一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤の含有量をそれぞれ上記範囲に調整し、当該光沢ニッケルめっき液を用いて被めっき物に電気めっきを施すことにより、形成される光沢ニッケルめっき皮膜中の炭素含有量及び硫黄含有量を適切な範囲に制御することができ、これにより、光沢ニッケルめっき皮膜に高耐食性及び高硬度性を付与することができ、且つ、光沢ニッケルめっき皮膜のニッケルの溶出を抑制することができる。
【0054】
本発明の制御方法に用いられる光沢ニッケルめっき液は、上述の光沢ニッケルめっき方法において説明したものを用いればよい。また、光沢ニッケルめっき液に被めっき物を接触させて、光沢ニッケルめっき皮膜を形成する方法としても、上述の光沢ニッケルめっき方法において説明した方法によればよい。
【実施例】
【0055】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0056】
下記表に示す配合の各成分を水に順次添加して混合することにより、実施例及び比較例の光沢ニッケルめっき液を調製した。硫酸及び炭酸ニッケルを用いて、光沢ニッケルめっき液のpHを4.2に調整した。調製された光沢ニッケルめっき液を用いて下記の方法で光沢ニッケルめっきを形成し、特性を評価した。
【0057】
(光沢ニッケルめっき皮膜中の炭素含有量及び硫黄含有量の測定)
被めっき物として、下記のSUS板を用意し、実施例及び比較例の光沢ニッケルめっき液を用いて、下記の条件で光沢ニッケルめっき処理を行い、SUS板の両面に光沢ニッケルめっきを形成して、試験片を調製した。
被めっき物:SUS板 5cm×10cm 両面に光沢ニッケルめっき処理
液温:55℃
電流密度:3A/cm2
めっき時間:50分
光沢ニッケルめっき厚み:30μm
【0058】
試験片の光沢ニッケルめっき皮膜中の炭素含有量及び硫黄含有量を、炭素硫黄分析装置(LECO社製 型番:CS-844)を用いて測定した。
【0059】
(耐食性)
被めっき物として、下記の真鍮板を用意し、実施例及び比較例の光沢ニッケルめっき液を用いて、下記の条件で半光沢ニッケルめっき処理、光沢ニッケルめっき処理、クロムめっき処理を順次行い、真鍮板の両面に半光沢ニッケルめっき皮膜/光沢ニッケルめっき皮膜/クロムめっき皮膜の積層皮膜を形成して、試験片を調製した。
【0060】
被めっき物:真鍮板 5cm×10cm 両面にめっき処理
半光沢ニッケルめっき処理
液温:55℃
電流密度:3A/cm2
めっき時間:15分
半光沢ニッケルめっき厚み:9μm
光沢ニッケルめっき処理
液温:55℃
電流密度:3A/cm2
めっき時間:10分
光沢ニッケルめっき厚み:6μm
クロムめっき処理
液温:38℃
電流密度:12A/cm2
めっき時間:1分
クロムめっき厚み:0.15μm
【0061】
上述のようにして調製された試験片を用いて、JIS H8617-1999に準拠して、試験時間168時間でCASS試験を行い、耐食性を評価した。
【0062】
(硬度)
被めっき物として、下記の真鍮板を用意し、実施例及び比較例の光沢ニッケルめっき液を用いて、下記の条件で光沢ニッケルめっき処理を行い、真鍮板の両面に光沢ニッケルめっきを形成して、試験片を調製した。
被めっき物:真鍮板 5cm×10cm 両面に光沢ニッケルめっき処理
液温:55℃
電流密度:5A/cm2
めっき時間:50分
光沢ニッケルめっき厚み:50μm
【0063】
試験片の断面硬度を、荷重50gf(980×10-3N)の条件でビッカース硬度計を用いて測定した。
【0064】
(ニッケル溶出量)
被めっき物として、下記の真鍮板を用意し、実施例及び比較例の光沢ニッケルめっき液を用いて、下記の条件で光沢ニッケルめっき処理を行い、真鍮板の両面に光沢ニッケルめっきを形成して、試験片を調製した。
被めっき物:真鍮板 6cm×6cm 両面に光沢ニッケルめっき処理
液温:55℃
電流密度:3A/cm2
めっき時間:8分
光沢ニッケルめっき厚み:5μm
【0065】
試験片を用いて、JIS S 3200-7に準拠した測定方法により光沢ニッケルめっき層のニッケル溶出量を測定した。具体的には、試験片を200mlの溶出液に浸漬し、16時間放置した。次いで、溶出液中のニッケル溶出量を、ICP発光分光分析法により測定した。
【0066】
下記表に、評価結果を示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】
【0074】
【表8】
【0075】
以上の結果から明らかなように、一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤を含有し、一次系光沢剤の含有量が0.1〜2.0g/Lであり、二次系光沢剤の含有量が0.01〜0.5g/Lであり、電位調整剤の含有量が0.25〜5.0g/Lである光沢ニッケルめっき液に、被めっき物を接触させる光沢ニッケルめっき方法により形成された実施例1〜52の光沢ニッケルめっき皮膜は、光沢ニッケルめっき皮膜中の炭素含有量が0.3wt%以上、且つ、硫黄含有量が0.007〜0.130wt%となっており、高耐食性及び高硬度性に優れ、且つ、ニッケルの溶出が抑制されていることが確認できた。
【0076】
また、二次系光沢剤の含有量が0.04〜0.08g/Lである光沢ニッケルめっき液に、被めっき物を接触させる光沢ニッケルめっき方法により形成された実施例1〜28、31〜52の光沢ニッケルめっき皮膜は、硫黄含有量が0.007〜0.070wt%となっており、耐食性の評価がR.N.9であるので、耐食性が特に優れることが確認された。
【0077】
また、電位調整剤の含有量が1.0〜4.0g/Lである光沢ニッケルめっき液に、被めっき物を接触させる光沢ニッケルめっき方法により形成された実施例11〜52の光沢ニッケルめっき皮膜は、炭素含有量が0.6wt%以上となっており、硬度の評価がHv800以上であるので、非常に高い硬度を示すことが確認された。
【0078】
更に、(1)一次系光沢剤の含有量が0.2〜0.4g/Lであり、(2)二次系光沢剤の含有量が0.04〜0.08g/Lであり、且つ、(3)電位調整剤の含有量が1.0g/Lである光沢ニッケルめっき液に、被めっき物を接触させる光沢ニッケルめっき方法により形成された実施例11〜28の光沢ニッケルめっき皮膜は、炭素含有量が0.550〜0.650wt%、且つ、硫黄含有量が0.025〜0.050wt%となっており、硬度の評価がHv800以上であるので、非常に高い硬度を示し、耐食性の評価がR.N.9であるので、耐食性が特に優れ、且つ、ニッケル溶出量が300μg/L以下であるので、ニッケル溶出量が特に少なくなっており、高耐食性及び高硬度性に特に優れ、且つ、ニッケルの溶出が特に抑制されていることが確認された。
【0079】
これに対して、電位調整剤を含有しない光沢ニッケルめっき液に、被めっき物を接触させる光沢ニッケルめっき方法により形成された比較例1〜20、及び、電位調整剤の含有量が0.25g/L未満である光沢ニッケルめっき液に、被めっき物を接触させる光沢ニッケルめっき方法により形成された比較例21〜24の光沢ニッケルめっき皮膜は、炭素含有量が少なく、硫黄含有量が多くなっており、且つ、ニッケル溶出量が多くなっており、耐食性及び硬度性に劣り、且つ、ニッケルの溶出が多くなっていることが確認された。
【手続補正書】
【提出日】2018年9月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ニッケル化合物、一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤を含有する光沢ニッケルめっき液に、被めっき物を接触させる光沢ニッケルめっき方法であって、
(1)前記光沢ニッケルめっき液中の前記一次系光沢剤の含有量は0.1〜2.0g/Lであり、
(2)前記光沢ニッケルめっき液中の前記二次系光沢剤の含有量は0.04〜0.5g/Lであり、
(3)前記光沢ニッケルめっき液中の前記電位調整剤の含有量は、0.25〜5.0g/Lであり、
前記一次系光沢剤は、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは、S又はSOであり、Rは、H、Cl、Br、I又はCHである。)
で表される複素環式化合物であり、
前記二次系光沢剤は、プロピンスルホン酸ナトリウム、ブチンジオールジエトキシレート、ヘキシンジオール、
下記一般式(2)
【化2】
(式中、Rは、H、OH又はCHであり、Rは、炭素数1〜7のアルキル基又はプロパギル基である。)
で表される不飽和化合物、及び、
下記一般式(3)
【化3】
(式中、Rは、H、OH又はCHである。)
で表される不飽和化合物
からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記電位調整剤は、
下記一般式(4)
【化4】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClであり、Rは、炭素数1〜7のアルキル基又はビニル基である。)
で表されるアルデヒド化合物、
下記一般式(5)
【化5】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClである。)
で表されるアルデヒド化合物、
下記一般式(6)
【化6】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClであり、R10は、炭素数1〜7のアルキル基又はビニル基である。)
で表されるジオール化合物、及び、
下記一般式(7)
【化7】
(式中、R11は、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClである。)
で表されるジオール化合物
からなる群より選択される少なくとも1種である、
ことを特徴とする光沢ニッケルめっき方法。
【請求項2】
前記一次系光沢剤は、1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン、サッカリン、N−メチルサッカリン、N−クロロサッカリン、N−ブロモサッカリン、及び、N−ヨードサッカリンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項3】
前記二次系光沢剤は、2−プロピオ−1−オール(プロパギルアルコール)、プロピンスルホン酸ナトリウム、1,4−ブチンジオール、2−ブチン−1−オール、2−ペンチン−1−オール、ブチンジオールジエトキシレート、2−ヘキシン−1−オール、ヘキシンジオール、2−ヘプチン−1−オール、2−オクチン−1−オール、2−ノシン−1−オール、2−デシン−1−オール、及び、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項4】
前記光沢ニッケルめっき液中の前記二次系光沢剤の含有量は0.04〜0.15g/Lである、請求項1〜3のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項5】
前記光沢ニッケルめっき液中の前記二次系光沢剤の含有量は0.04〜0.08g/Lである、請求項1〜3のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項6】
前記電位調整剤は、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、プロパナール、ブタナール、ヘキサナール、3−クロロプロパナール、クロロアセトアルデヒド、抱水クロラール、抱水ブロマール、3−メチルブタナール、2−プロペナール、及び、2−ブテナールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項7】
光沢ニッケルめっき皮膜の炭素含有量及び硫黄含有量を制御する制御方法であって、
水溶性ニッケル化合物、一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤を含有する光沢ニッケルめっき液に被めっき物を接触させて、光沢ニッケルめっき皮膜を形成する工程を有し、前記工程において、
(1)前記光沢ニッケルめっき液中の前記一次系光沢剤の含有量を0.1〜2.0g/Lとし、
(2)前記光沢ニッケルめっき液中の前記二次系光沢剤の含有量を0.04〜0.5g/Lとし、
(3)前記光沢ニッケルめっき液中の前記電位調整剤の含有量を0.25〜5.0g/Lとし、
前記一次系光沢剤は、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは、S又はSOであり、Rは、H、Cl、Br、I又はCHである。)
で表される複素環式化合物であり、
前記二次系光沢剤は、プロピンスルホン酸ナトリウム、ブチンジオールジエトキシレート、ヘキシンジオール、
下記一般式(2)
【化2】
(式中、Rは、H、OH又はCHであり、Rは、炭素数1〜7のアルキル基又はプロパギル基である。)
で表される不飽和化合物、及び、
下記一般式(3)
【化3】
(式中、Rは、H、OH又はCHである。)
で表される不飽和化合物
からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記電位調整剤は、
下記一般式(4)
【化4】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClであり、Rは、炭素数1〜7のアルキル基又はビニル基である。)
で表されるアルデヒド化合物、
下記一般式(5)
【化5】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClである。)
で表されるアルデヒド化合物、
下記一般式(6)
【化6】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClであり、R10は、炭素数1〜7のアルキル基又はビニル基である。)
で表されるジオール化合物、及び、
下記一般式(7)
【化7】
(式中、R11は、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClである。)
で表されるジオール化合物
からなる群より選択される少なくとも1種である、
ことを特徴とする光沢ニッケルめっき皮膜の制御方法。
【手続補正書】
【提出日】2019年2月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ニッケル化合物、一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤を含有する光沢ニッケルめっき液に、被めっき物を接触させる光沢ニッケルめっき方法であって、
(1)前記光沢ニッケルめっき液中の前記一次系光沢剤の含有量は0.1〜2.0g/Lであり、
(2)前記光沢ニッケルめっき液中の前記二次系光沢剤の含有量は0.04〜0.15g/Lであり、
(3)前記光沢ニッケルめっき液中の前記電位調整剤の含有量は、0.25〜5.0g/Lであり、
前記一次系光沢剤は、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは、S又はSOであり、Rは、H、Cl、Br、I又はCHである。)
で表される複素環式化合物であり、
前記二次系光沢剤は、プロピンスルホン酸ナトリウム、ブチンジオールジエトキシレート、ヘキシンジオール、
下記一般式(2)
【化2】
(式中、Rは、H、OH又はCHであり、Rは、炭素数1〜7のアルキル基又はプロパギル基である。)
で表される不飽和化合物、及び、
下記一般式(3)
【化3】
(式中、Rは、H、OH又はCHである。)
で表される不飽和化合物
からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記電位調整剤は、
下記一般式(4)
【化4】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClであり、Rは、炭素数1〜7のアルキル基又はビニル基である。)
で表されるアルデヒド化合物、
下記一般式(5)
【化5】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClである。)
で表されるアルデヒド化合物、
下記一般式(6)
【化6】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClであり、R10は、炭素数1〜7のアルキル基又はビニル基である。)
で表されるジオール化合物、及び、
下記一般式(7)
【化7】
(式中、R11は、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClである。)
で表されるジオール化合物
からなる群より選択される少なくとも1種である、
ことを特徴とする光沢ニッケルめっき方法。
【請求項2】
前記一次系光沢剤は、1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン、サッカリン、N−メチルサッカリン、N−クロロサッカリン、N−ブロモサッカリン、及び、N−ヨードサッカリンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項3】
前記二次系光沢剤は、2−プロピオ−1−オール(プロパギルアルコール)、プロピンスルホン酸ナトリウム、1,4−ブチンジオール、2−ブチン−1−オール、2−ペンチン−1−オール、ブチンジオールジエトキシレート、2−ヘキシン−1−オール、ヘキシンジオール、2−ヘプチン−1−オール、2−オクチン−1−オール、2−ノシン−1−オール、2−デシン−1−オール、及び、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項4】
前記光沢ニッケルめっき液中の前記二次系光沢剤の含有量は0.04〜0.08g/Lである、請求項1〜3のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項5】
前記電位調整剤は、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、プロパナール、ブタナール、ヘキサナール、3−クロロプロパナール、クロロアセトアルデヒド、抱水クロラール、抱水ブロマール、3−メチルブタナール、2−プロペナール、及び、2−ブテナールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項6】
光沢ニッケルめっき皮膜の炭素含有量及び硫黄含有量を制御する制御方法であって、 水溶性ニッケル化合物、一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤を含有する光沢ニッケルめっき液に被めっき物を接触させて、光沢ニッケルめっき皮膜を形成する工程を有し、前記工程において、
(1)前記光沢ニッケルめっき液中の前記一次系光沢剤の含有量を0.1〜2.0g/Lとし、
(2)前記光沢ニッケルめっき液中の前記二次系光沢剤の含有量を0.04〜0.15g/Lとし、
(3)前記光沢ニッケルめっき液中の前記電位調整剤の含有量を0.25〜5.0g/Lとし、
前記一次系光沢剤は、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは、S又はSOであり、Rは、H、Cl、Br、I又はCHである。)
で表される複素環式化合物であり、
前記二次系光沢剤は、プロピンスルホン酸ナトリウム、ブチンジオールジエトキシレート、ヘキシンジオール、
下記一般式(2)
【化2】
(式中、Rは、H、OH又はCHであり、Rは、炭素数1〜7のアルキル基又はプロパギル基である。)
で表される不飽和化合物、及び、
下記一般式(3)
【化3】
(式中、Rは、H、OH又はCHである。)
で表される不飽和化合物
からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記電位調整剤は、
下記一般式(4)
【化4】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClであり、Rは、炭素数1〜7のアルキル基又はビニル基である。)
で表されるアルデヒド化合物、
下記一般式(5)
【化5】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClである。)
で表されるアルデヒド化合物、
下記一般式(6)
【化6】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClであり、R10は、炭素数1〜7のアルキル基又はビニル基である。)
で表されるジオール化合物、及び、
下記一般式(7)
【化7】
(式中、R11は、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClである。)
で表されるジオール化合物
からなる群より選択される少なくとも1種である、
ことを特徴とする光沢ニッケルめっき皮膜の制御方法。
【手続補正書】
【提出日】2019年4月25日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ニッケル化合物、一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤を含有する光沢ニッケルめっき液に、被めっき物を接触させる光沢ニッケルめっき方法であって、
(1)前記光沢ニッケルめっき液中の前記一次系光沢剤の含有量は0.1〜0.8g/Lであり、
(2)前記光沢ニッケルめっき液中の前記二次系光沢剤の含有量は0.04〜0.08g/Lであり、
(3)前記光沢ニッケルめっき液中の前記電位調整剤の含有量は、0.25〜5.0g/Lであり、
前記一次系光沢剤は、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは、S又はSOであり、Rは、H、Cl、Br、I又はCHである。)
で表される複素環式化合物であり、
前記二次系光沢剤は、プロピンスルホン酸ナトリウム、ブチンジオールジエトキシレート、ヘキシンジオール、
下記一般式(2)
【化2】
(式中、Rは、H、OH又はCHであり、Rは、炭素数1〜7のアルキル基又はプロパギル基である。)
で表される不飽和化合物、及び、
下記一般式(3)
【化3】
(式中、Rは、H、OH又はCHである。)
で表される不飽和化合物
からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記電位調整剤は、
下記一般式(4)
【化4】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClであり、Rは、炭素数1〜7のアルキル基又はビニル基である。)
で表されるアルデヒド化合物、
下記一般式(5)
【化5】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClである。)
で表されるアルデヒド化合物、
下記一般式(6)
【化6】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClであり、R10は、炭素数1〜7のアルキル基又はビニル基である。)
で表されるジオール化合物、及び、
下記一般式(7)
【化7】
(式中、R11は、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClである。)
で表されるジオール化合物
からなる群より選択される少なくとも1種である、
ことを特徴とする光沢ニッケルめっき方法。
【請求項2】
前記一次系光沢剤は、1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン、サッカリン、N−メチルサッカリン、N−クロロサッカリン、N−ブロモサッカリン、及び、N−ヨードサッカリンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項3】
前記二次系光沢剤は、2−プロピオ−1−オール(プロパギルアルコール)、プロピンスルホン酸ナトリウム、1,4−ブチンジオール、2−ブチン−1−オール、2−ペンチン−1−オール、ブチンジオールジエトキシレート、2−ヘキシン−1−オール、ヘキシンジオール、2−ヘプチン−1−オール、2−オクチン−1−オール、2−ノシン−1−オール、2−デシン−1−オール、及び、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項4】
前記電位調整剤は、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、プロパナール、ブタナール、ヘキサナール、3−クロロプロパナール、クロロアセトアルデヒド、抱水クロラール、抱水ブロマール、3−メチルブタナール、2−プロペナール、及び、2−ブテナールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜のいずれかに記載の光沢ニッケルめっき方法。
【請求項5】
光沢ニッケルめっき皮膜の炭素含有量及び硫黄含有量を制御する制御方法であって、 水溶性ニッケル化合物、一次系光沢剤、二次系光沢剤及び電位調整剤を含有する光沢ニッケルめっき液に被めっき物を接触させて、光沢ニッケルめっき皮膜を形成する工程を有し、前記工程において、
(1)前記光沢ニッケルめっき液中の前記一次系光沢剤の含有量を0.1〜0.8g/Lとし、
(2)前記光沢ニッケルめっき液中の前記二次系光沢剤の含有量を0.04〜0.08g/Lとし、
(3)前記光沢ニッケルめっき液中の前記電位調整剤の含有量を0.25〜5.0g/Lとし、
前記一次系光沢剤は、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは、S又はSOであり、Rは、H、Cl、Br、I又はCHである。)
で表される複素環式化合物であり、
前記二次系光沢剤は、プロピンスルホン酸ナトリウム、ブチンジオールジエトキシレート、ヘキシンジオール、
下記一般式(2)
【化2】
(式中、Rは、H、OH又はCHであり、Rは、炭素数1〜7のアルキル基又はプロパギル基である。)
で表される不飽和化合物、及び、
下記一般式(3)
【化3】
(式中、Rは、H、OH又はCHである。)
で表される不飽和化合物
からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記電位調整剤は、
下記一般式(4)
【化4】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClであり、Rは、炭素数1〜7のアルキル基又はビニル基である。)
で表されるアルデヒド化合物、
下記一般式(5)
【化5】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClである。)
で表されるアルデヒド化合物、
下記一般式(6)
【化6】
(式中、Rは、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClであり、R10は、炭素数1〜7のアルキル基又はビニル基である。)
で表されるジオール化合物、及び、
下記一般式(7)
【化7】
(式中、R11は、H、Cl、Br、CH、CBr又はCClである。)
で表されるジオール化合物
からなる群より選択される少なくとも1種である、
ことを特徴とする光沢ニッケルめっき皮膜の制御方法。