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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-218862(P2019-218862A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】風車翼保護構造及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/30 20160101AFI20191129BHJP
【FI】
   F03D80/30
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-114335(P2018-114335)
(22)【出願日】2018年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村田 直人
(72)【発明者】
【氏名】木村 保貴
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英司
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB43
3H178CC02
3H178CC04
3H178DD51X
(57)【要約】
【課題】金属レセプタ以外に落雷を受けた場合にも雷電流を円滑に案内する。
【解決手段】風車翼保護構造は、落雷からの風車翼の保護構造であって、少なくとも一部が風車翼の表面に露出するようにして風車翼の翼先端部に配置された金属レセプタと、各々の金属レセプタと電気的に接続され、風車翼の内部において金属レセプタから翼根部に亘り翼長方向に沿って延在するダウンコンダクタと、少なくとも一部が金属レセプタと電気的に接続され、風車翼の表面の少なくとも一部を覆うように配置された金属製薄膜と、を備えている。少なくとも風車翼の圧力面側に配置された金属製薄膜は、風車翼の翼長方向においてダウンコンダクタに沿うように配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
落雷からの風車翼の保護構造であって、
少なくとも一部が前記風車翼の表面に露出するようにして少なくとも前記風車翼の翼先端部に配置された金属レセプタと、
各々の前記金属レセプタと電気的に接続され、前記風車翼の内部において前記金属レセプタから翼根部に亘り翼長方向に沿って延在するダウンコンダクタと、
少なくとも一部が前記金属レセプタと電気的に接続され、前記風車翼の表面の少なくとも一部を覆うように配置された金属製薄膜と、を備え、
少なくとも前記風車翼の圧力面側に配置された前記金属製薄膜は、前記風車翼の翼長方向において前記ダウンコンダクタに沿うように配置されている
ことを特徴とする風車翼保護構造。
【請求項2】
前記金属レセプタは、少なくとも前記風車翼の前記圧力面側の翼先端部と、前記風車翼の吸込面側の翼先端部及び該翼先端部から前記風車翼の後縁に沿って間隔を隔てた複数の位置とに配置され、
前記金属製薄膜は、各々が配置される前記圧力面又は前記吸込面の前記翼先端部に配置された前記金属レセプタから前記翼長方向に沿って前記風車翼の翼長の40%以内の範囲に設けられている
請求項1に記載の風車翼保護構造。
【請求項3】
前記風車翼の吸込面側の前記金属製薄膜は、前記吸込面側の翼先端部から翼長の40%以内の範囲において前記風車翼のコード中心から後縁寄りに配置されている
請求項1又は2に記載の風車翼保護構造。
【請求項4】
前記風車翼の吸込面側の前記金属製薄膜は、前記風車翼の前縁又は前記後縁に沿って間隔を隔てた複数の位置に配置された複数の前記金属レセプタの一部を導通するように設けられている
請求項3に記載の風車翼保護構造。
【請求項5】
前記金属レセプタは、少なくとも前記風車翼の前記圧力面側の翼先端部と、前記風車翼の吸込面側の翼先端部及び該翼先端部から前記風車翼の前縁又は後縁に沿って間隔を隔てた複数の位置とに配置され、
前記圧力面側の前記金属製薄膜は、前記翼先端部に配置された前記金属レセプタを含んで前記風車翼の翼先端から翼長の40%以内の範囲に設けられ、
前記吸込面側の前記金属製薄膜は、前記翼先端部に配置された前記金属レセプタを含んで前記翼先端から前記翼長方向に沿って前記翼長の20%未満の範囲に設けられている
請求項1に記載の風車翼保護構造。
【請求項6】
前記風車翼の吸込面には、前記前縁側と前記後縁側とに配置された2つの前記金属レセプタの間を被雷時に導通可能とするダイバーターストリップが配置されている
請求項1〜5の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項7】
前記風車翼の吸込面には、前記前縁側と前記後縁側とに配置された2つの前記金属レセプタの間を被雷時に導通可能とするダイバーターストリップが配置され、
前記吸込面側の前記金属製薄膜は、前記ダイバーターストリップから1m以上離れた位置に配置されている
請求項5に記載の風車翼保護構造。
【請求項8】
前記金属レセプタは、少なくとも前記圧力面側の翼先端部と、前記風車翼の吸込面側の翼先端部及び該翼先端部から前記風車翼の前縁及び後縁に沿って夫々間隔を隔てた複数の位置とに配置され、
前記圧力面側の前記金属製薄膜は、前記圧力面側の前記翼先端部に配置された前記金属レセプタから前記翼長方向に沿って前記風車翼の翼先端から翼長の20%以内の範囲に設けられ、
前記吸込面側の前記金属製薄膜は、前記翼先端から前記翼長の20%未満の範囲において前記前縁側と前記後縁側とに配置された2つの前記金属レセプタを導通する第1範囲と、前記翼先端部に配置された前記金属レセプタから翼長方向に沿って少なくとも一部が前記第1範囲に重なる第2範囲とに亘って設けられている
請求項1に記載の風車翼保護構造。
【請求項9】
各々が前記風車翼の内部において前記翼長方向に沿って延在するとともに前記風車翼の前記圧力面と前記吸込面とを接続する前縁側シアウェブ及び後縁側シアウェブを備え、
前記後縁側シアウェブは、前記風車翼のコード方向において前記前縁側シアウェブよりも中央に配置されるとともに前記前縁側シアウェブよりも前記翼先端まで延在し、
前記金属レセプタは、前記吸込面の前縁側及び後縁側に沿って夫々間隔を隔てて複数配置され、
前記ダウンコンダクタは、前記前縁側シアウェブに沿って配置された第1ダウンコンダクタと、前記後縁側シアウェブに沿って配置された第2ダウンコンダクタと、を含む
請求項1〜8の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項10】
前記金属レセプタは、前記風車翼の翼表面からの突出高さが3mm以内になるように形成されている
請求項1〜9の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項11】
前記金属製薄膜は、金属テープ、金属メッシュ又は金属層からなる
請求項1〜10の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項12】
前記金属製薄膜は、前記風車翼の翼表面に占める面積が接続対象とされる前記金属レセプタの10倍以上に形成される
請求項1〜11の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項13】
前記金属製薄膜は、50〜300mmの幅を有する
請求項1〜12の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項14】
前記金属製薄膜は、50〜300μmの厚さを有する
請求項1〜13の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項15】
落雷から風車翼を保護する保護構造の形成方法であって、
金属レセプタを少なくとも一部が前記風車翼の表面に露出するようにして少なくとも前記風車翼の翼先端部に配置するステップと、
各々の前記金属レセプタと電気的に接続されたダウンコンダクタを、前記風車翼の内部において前記金属レセプタから翼根部に亘り翼長方向に沿って配置するステップと、
金属製薄膜を、少なくともその一部が前記金属レセプタと電気的に接続されるようにして前記風車翼の表面の少なくとも一部を覆うように配置するステップと、を備え、
前記金属製薄膜を配置するステップでは、少なくとも前記風車翼の圧力面側に配置された前記金属製薄膜を、前記風車翼の翼長方向において前記ダウンコンダクタに沿うように配置する
ことを特徴とする風車翼保護構造の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風車翼保護構造及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風車翼を落雷から保護するための種々の構造が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、翼表面に自由にアクセス可能に配置された落雷レセプタと、導電性材料からなり翼表面内部を落雷レセプタから翼根に延在するダウンコンダクタとを備え、上記落雷レセプタやダウンコンダクタから電気的に分離された導電層を有する落雷保護システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8888454号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、風車翼においては、上記のように金属レセプタを設けた場合であっても該金属レセプタ以外の風車翼表面に落雷を受ける場合がある。このような場合、上記特許文献1に記載の落雷保護システムでも雷電流を円滑に案内できない虞があるという問題があった。
【0006】
上述した問題に鑑み、本開示の少なくとも一実施形態は、金属レセプタ以外に落雷を受けた場合にも雷電流を円滑に案内することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る風車翼保護構造は、
落雷からの風車翼の保護構造であって、
少なくとも一部が前記風車翼の表面に露出するようにして少なくとも前記風車翼の翼先端部に配置された金属レセプタと、
各々の前記金属レセプタと電気的に接続され、前記風車翼の内部において前記金属レセプタから翼根部に亘り翼長方向に沿って延在するダウンコンダクタと、
少なくとも一部が前記金属レセプタと電気的に接続され、前記風車翼の表面の少なくとも一部を覆うように配置された金属製薄膜と、を備え、
少なくとも前記風車翼の圧力面側に配置された前記金属製薄膜は、前記風車翼の翼長方向において前記ダウンコンダクタに沿うように配置されている。
【0008】
上記(1)の構成によれば、金属レセプタは、少なくともその一部が風車翼の表面に露出するように配置され、金属製薄膜は、少なくとも一部が金属レセプタと電気的に接続されるようにして風車翼表面の少なくとも一部を覆うように配置される。このため、仮に金属製薄膜に落雷を受けた場合、雷電流は金属製薄膜から金属レセプタに導かれ、さらに金属レセプタと電気的に接続されたダウンコンダクタを通って翼根部に案内されるから、金属レセプタ以外に落雷を受けた場合にも雷電流を円滑に案内することができる。さらに、少なくとも風車翼の圧力面側では金属製薄膜が、最終的に雷電流を導くダウンコンダクタに沿うように配置されるから、雷捕捉率の向上を図ることができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、
前記金属レセプタは、少なくとも前記風車翼の前記圧力面側の翼先端部と、前記風車翼の吸込面側の翼先端部及び該翼先端部から前記風車翼の後縁に沿って間隔を隔てた複数の位置とに配置され、
前記金属製薄膜は、各々が配置される前記圧力面又は前記吸込面の前記翼先端部に配置された前記金属レセプタから前記翼長方向に沿って前記風車翼の翼長の40%以内の範囲に設けられていてもよい。
【0010】
上記(2)の構成によれば、風車翼の圧力面又は吸込面に配置された金属レセプタから翼長の40%以内の範囲に金属製薄膜が設けられる。つまり、落雷を受け易いとされる翼先端から、翼長の40%以内の範囲に金属製薄膜を配置することにより、当該範囲への落雷を高確率に補足することができる。したがって、風車翼への大部分の落雷の雷電流を翼根部まで円滑に案内することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の構成において、
前記風車翼の吸込面側の前記金属製薄膜は、前記吸込面側の翼先端部から翼長の40%以内の範囲において前記風車翼のコード中心から後縁寄りに配置されていてもよい。
【0012】
上記(3)の構成によれば、風車翼の吸込面側の金属製薄膜は、コード中心に対し、前縁よりも風の影響を受けにくい後縁側に配置されるから、風の影響によって風車翼から金属製薄膜が剥離することを防止しつつ、金属レセプタ以外に落雷を受けた場合にも雷電流を円滑に案内することができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の構成において、
前記風車翼の吸込面側の前記金属製薄膜は、前記風車翼の前縁又は前記後縁に沿って間隔を隔てた複数の位置に配置された複数の前記金属レセプタの一部を導通するように設けられていてもよい。
【0014】
上記(4)の構成によれば、風車翼の吸込面側の金属製薄膜は、前縁に比べて風の影響を受けにくい後縁側に配置されるから、風の影響によって風車翼から金属製薄膜が剥離することを防止しつつ、金属レセプタ以外に落雷を受けた場合にも雷電流を円滑に案内することができる。さらに、金属製薄膜が後縁側に間隔を隔てて配置された複数の金属レセプタの一部を導通するように配置されることにより、仮に金属製薄膜に落雷を受けた場合の電流を複数の経路に分流することができるから、金属製薄膜の溶損を防止することができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、
前記金属レセプタは、少なくとも前記風車翼の前記圧力面側の翼先端部と、前記風車翼の吸込面側の翼先端部及び該翼先端部から前記風車翼の前縁又は後縁に沿って間隔を隔てた複数の位置とに配置され、
前記圧力面側の前記金属製薄膜は、前記翼先端部に配置された前記金属レセプタを含んで前記風車翼の翼先端から翼長の40%以内の範囲に設けられ、
前記吸込面側の前記金属製薄膜は、前記翼先端部に配置された前記金属レセプタを含んで前記翼先端から前記翼長方向に沿って前記翼長の20%未満の範囲に設けられていてもよい。
【0016】
上記(5)の構成によれば、風車翼の圧力面側では雷の受電範囲を翼先端から翼長の40%以内の範囲に設けられた金属製薄膜により拡大し、当該範囲への落雷による雷電流を翼先端部に配置された金属レセプタからダウンコンダクタに導くことができる。一方、風車翼の吸込面側では前縁又は後縁に沿って間隔を隔てて配置された複数の金属レセプタと、翼先端部に配置された金属レセプタを含んで翼先端から翼長の20%の範囲に配置された金属製薄膜とにより、雷を適切に補足することができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の構成において、
前記風車翼の吸込面には、前記前縁側と前記後縁側とに配置された2つの前記金属レセプタの間を被雷時に導通可能とするダイバーターストリップが配置されていてもよい。
【0018】
上記(6)の構成によれば、風車翼の吸込面の前縁側と後縁側とに配置された2つの金属レセプタの間にダイバーターストリップが配置されていることにより、被雷時にはこのダイバーターストリップ周辺の空気がイオン化され、該ダイバーターストリップを経由して雷電流が風車翼の表面に沿って流れ、レセプタに導かれる。つまり、ダイバーターストリップには避雷導線を設ける必要がないため、簡素な構造によって風車翼の耐雷性能を向上させることができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の構成において、
前記風車翼の吸込面には、前記前縁側と前記後縁側とに配置された2つの前記金属レセプタの間を被雷時に導通可能とするダイバーターストリップが配置され、
前記吸込面側の前記金属製薄膜は、前記ダイバーターストリップから1m以上離れた位置に配置されていてもよい。
【0020】
上記(7)の構成によれば、上記(6)で述べたように、ダイバーターストリップにより、簡素な構造によって風車翼の耐雷性能を向上させることができる。さらに、上記(7)の構成では、吸込面側の金属製薄膜はダイバーターストリップから1m以上離れた位置に配置されるから、吸込面側において金属製薄膜から翼先端部以外に配置された金属レセプタに雷電流がジャンプしてスパークが生じること等を防止することができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、
前記金属レセプタは、少なくとも前記圧力面側の翼先端部と、前記風車翼の吸込面側の翼先端部及び該翼先端部から前記風車翼の前縁及び後縁に沿って夫々間隔を隔てた複数の位置とに配置され、
前記圧力面側の前記金属製薄膜は、前記圧力面側の前記翼先端部に配置された前記金属レセプタから前記翼長方向に沿って前記風車翼の翼先端から翼長の20%以内の範囲に設けられ、
前記吸込面側の前記金属製薄膜は、前記翼先端から前記翼長の20%未満の範囲において前記前縁側と前記後縁側とに配置された2つの前記金属レセプタを導通する第1範囲と、前記翼先端部に配置された前記金属レセプタから翼長方向に沿って少なくとも一部が前記第1範囲に重なる第2範囲とに亘って設けられていてもよい。
【0022】
上記(8)の構成によれば、風車翼の圧力面側では翼先端部に配置された金属レセプタから翼長方向に沿って風車翼の翼先端から翼長の20%以内の範囲に設けられた金属製薄膜によって雷を補足し、その雷電流を、上記金属レセプタを介してダウンコンダクタに導くことができる。一方、吸込面側では、前縁側と後縁側とに配置された2つの金属レセプタを導通する第1範囲と、翼先端部に配置された金属レセプタから翼長方向に沿って少なくとも一部が第1範囲に重なる第2範囲とに亘って設けられた金属製薄膜により、雷捕捉率をより一層向上させることができる。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(8)の何れか一つに記載の構成において、
風車翼保護構造は、
各々が前記風車翼の内部において前記翼長方向に沿って延在するとともに前記風車翼の前記圧力面と前記吸込面とを接続する前縁側シアウェブ及び後縁側シアウェブを備え、
前記後縁側シアウェブは、前記風車翼のコード方向において前記前縁側シアウェブよりも中央に配置されるとともに前記前縁側シアウェブよりも前記翼先端まで延在し、
前記金属レセプタは、前記吸込面の前縁側及び後縁側に沿って夫々間隔を隔てて複数配置され、
前記ダウンコンダクタは、前記前縁側シアウェブに沿って配置された第1ダウンコンダクタと、前記後縁側シアウェブに沿って配置された第2ダウンコンダクタと、を含んでもよい。
【0024】
上記(9)の構成によれば、第1ダウンコンダクタ及び第2ダウンコンダクタという二つのダウンコンダクタを含むことにより、風車翼内に翼長方向に沿って雷電流を導くための複数の経路を確保することができる。また、第2ダウンコンダクタは後縁側シアウェブに沿って翼先端まで延在し、該翼先端部に配置された金属レセプタと導通され得る。このような構成により、例えば風車翼の吸込面側において、前縁側に配置された各金属レセプタを第1ダウンコンダクタに接続するとともに、後縁側に配置された各金属レセプタを第2ダウンコンダクタに接続することで、より円滑に雷電流を案内することができる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(9)の何れか一つに記載の構成において、
前記金属レセプタは、前記風車翼の翼表面からの突出高さが3mm以内になるように形成されていてもよい。
【0026】
上記(10)の構成によれば、風車翼の空力性能に対する金属レセプタの影響を抑制することができるから、風車の運転性能への影響を抑制しつつ耐雷性能の向上を図ることができる。
【0027】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(10)の何れか一つに記載の構成において、
前記金属製薄膜は、金属テープ、金属メッシュ又は金属層からなっていてもよい。
【0028】
上記(11)の構成によれば、金属テープ、金属メッシュ又は金属層からなる金属製薄膜により、上記(1)〜(10)の何れか一つで述べた効果を享受することができる。
【0029】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(11)の何れか一つに記載の構成において、
前記金属製薄膜は、前記風車翼の翼表面に占める面積が接続対象とされる前記金属レセプタの10倍以上に形成されてもよい。
【0030】
上記(12)の構成によれば、少なくとも翼先端部における落雷に対する受電範囲を、金属レセプタのみを設けた場合に比べて10倍以上に拡大することができる。よって、被雷し易いとされる翼先端部における雷補足率を大幅に向上させることができる。
【0031】
(13)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(12)の何れか一つに記載の構成において、
前記金属製薄膜は、50〜300mmの幅を有していてもよい。
【0032】
上記(13)の構成によれば、50〜300mmの幅を有する金属製薄膜により、上記(1)〜(12)の何れか一つで述べた効果を享受することができる。
【0033】
(14)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(13)の何れか一つに記載の構成において、
前記金属製薄膜は、50〜300μmの厚さを有していてもよい。
【0034】
上記(14)の構成によれば、50〜300μmの厚さを有する金属製薄膜により、風車翼の空力性能に対する金属製薄膜の影響を極力抑制することができるから、風車の運転性能への影響を抑制しつつ耐雷性能の向上を図ることができる。
【0035】
(15)本開示の少なくとも一実施形態に係る風車翼保護構造の形成方法は、
落雷から風車翼を保護する保護構造の形成方法であって、
金属レセプタを少なくとも一部が前記風車翼の表面に露出するようにして少なくとも前記風車翼の翼先端部に配置するステップと、
各々の前記金属レセプタと電気的に接続されたダウンコンダクタを、前記風車翼の内部において前記金属レセプタから翼根部に亘り翼長方向に沿って配置するステップと、
金属製薄膜を、少なくともその一部が前記金属レセプタと電気的に接続されるようにして前記風車翼の表面の少なくとも一部を覆うように配置するステップと、を備え、
前記金属製薄膜を配置するステップでは、少なくとも前記風車翼の圧力面側に配置された前記金属製薄膜を、前記風車翼の翼長方向において前記ダウンコンダクタに沿うように配置する。
【0036】
上記(15)の方法によれば、上記(1)で述べたように、金属レセプタは、少なくともその一部が風車翼の表面に露出するように配置され、金属製薄膜は、少なくともその一部が金属レセプタと電気的に接続されるようにして風車翼表面の少なくとも一部を覆うように配置される。このため、仮に金属製薄膜に落雷を受けた場合、雷電流は金属製薄膜から金属レセプタに導かれ、さらに金属レセプタと電気的に接続されたダウンコンダクタを通って翼根部に案内されるから、金属レセプタ以外に落雷を受けた場合にも雷電流を円滑に案内することができる。さらに、少なくとも風車翼の圧力面側では金属製薄膜が、最終的に雷電流を導くダウンコンダクタに沿うように配置されるから、雷捕捉率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0037】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、金属レセプタ以外に落雷を受けた場合にも雷電流を円滑に案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】一実施形態に係る風車翼保護構造が適用される風力発電設備を示す概略図である。
図2】一実施形態における風車翼を示す概略斜視図である。
図3】一実施形態に係る風車翼保護構造の構成例を示す概略図であり、(a)は吸込面、(b)は圧力面を示す。
図4】他の実施形態に係る風車翼保護構造の構成例を示す概略図であり、(a)は吸込面、(b)は圧力面を示す。
図5】他の実施形態に係る風車翼保護構造の構成例を示す概略図であり、(a)は吸込面、(b)は圧力面を示す。
図6】他の実施形態に係る風車翼保護構造の構成例を示す概略図であり、(a)は吸込面、(b)は圧力面を示す。
図7】他の実施形態に係る風車翼保護構造の構成例を示す概略図であり、(a)は吸込面、(b)は圧力面を示す。
図8】他の実施形態に係る風車翼保護構造の構成例を示す概略図である。
図9】他の実施形態に係る風車翼保護構造の形成方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面に従って本発明の例示的な実施形態について説明する。ただし、以下に示す幾つかの実施形態に記載された構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0040】
図1は本開示の少なくとも一実施形態に係る風車翼保護構造が適用される風力発電設備(風車)を示す概略図であり、図2は一実施形態における風車翼を示す概略斜視図である。
図1及び図2に示すように、本開示の少なくとも一実施形態における風力発電設備(以下、風車2とする)は、複数(例えば3枚)の風車翼3及び該風車翼3が取り付けられるハブ41で構成されるロータ40と、ロータ40を図示しない主軸及び主軸受を介して回転自在に支持するナセル42と、ナセル42を水平旋回可能に支持するタワー43と、タワー43が設置される基礎44と、備えている。
風車翼3は、風車2のハブ41に取り付けられる翼根部7から翼先端部8に亘って長手方向(翼長方向)に延在している。この風車翼3は、翼根部7から翼先端部8にかけて、前縁9と後縁10とを有するとともに、圧力面4(正圧面又は腹面とも称する)及び該圧力面4に対向する吸込面5(負圧面又は背面とも称する)を含む中空構造を有するように構成されている。
なお、本明細書において、「翼長方向」とは、翼根部7と翼先端部8とを結ぶ方向であり、「コード方向(翼コード方向)」とは、風車翼3の前縁9と後縁10とを結ぶ線(コード)に沿った方向である。また、「翼根部」とは、風車翼3において断面が概ね円形となる円筒状の部分であり、翼根側の端面を基準として例えば5mの翼長方向範囲(典型的には、前記端面から1〜3mの範囲)である。
【0041】
図3は本開示の少なくとも一実施形態に係る風車翼保護構造の構成例を示す概略図であり、(a)は吸込面、(b)は圧力面を示す。
図3に非限定的に例示するように、本開示の少なくとも一実施形態に係る風車翼保護構造1は、落雷からの風車翼3の保護構造であって、少なくとも一部が風車翼3の表面6に露出するようにして少なくとも風車翼3の翼先端部8に配置された金属レセプタ12と、各々の金属レセプタ12と電気的に接続され、風車翼3の内部において金属レセプタ12から翼根部7に亘り翼長方向に沿って延在するダウンコンダクタ13と、少なくとも一部が金属レセプタ12と電気的に接続され、風車翼3の表面6の少なくとも一部を覆うように配置された金属製薄膜20(又は導電性金属箔)と、を備えている。
金属レセプタ12は、導電性を有する金属製の部材(例えばステンレス鋼材等)であり、風車翼3に対する落雷を受けることで風車翼3における当該金属レセプタ12以外の部位への落雷を低減する機能を有している。
ダウンコンダクタ13は、風車翼3の内部において金属レセプタ12と電気的に接続されており、金属レセプタ12に着雷した際の雷電流を、翼根部7、ハブ41、ナセル42及びタワー43を通ってアース端子に導くようになっている(図1参照)。
金属製薄膜20は、導電性を有する金属製の薄膜である。幾つかの実施形態では、この金属製薄膜20が、接着剤(接着層)を介して風車翼3の翼表面6に接着されてもよい。係る金属製薄膜20は、風車翼3の表面6側において金属レセプタ12と電気的に接続されており、金属レセプタ12によって着雷可能な受電範囲を拡大し得るように機能する。
そして、本開示の少なくとも一実施形態に係る風車翼保護構造1では、少なくとも風車翼3の圧力面4側に配置された金属製薄膜20が、風車翼3の翼長方向においてダウンコンダクタ13に沿うように配置されている(図3(b)参照)。
【0042】
上述した一実施形態に係る風車翼保護構造1によれば、金属レセプタ12は、少なくともその一部が風車翼3の表面6に露出するように配置され、金属製薄膜20は、少なくとも一部が金属レセプタ12と電気的に接続されるようにして風車翼表面6の少なくとも一部を覆うように配置される。このため、仮に金属製薄膜20に落雷を受けた場合、雷電流は金属製薄膜20から金属レセプタ12に導かれ、さらに金属レセプタ12と電気的に接続されたダウンコンダクタ13を通って翼根部7に案内されるから、金属レセプタ12以外に落雷を受けた場合にも雷電流を円滑に案内することができる。さらに、少なくとも風車翼の圧力面4側では金属製薄膜20が、最終的に雷電流を導くダウンコンダクタ13に沿うように配置されるから、雷捕捉率の向上を図ることができる。
【0043】
幾つかの実施形態では、金属レセプタ12が、少なくとも風車翼3の圧力面4側の翼先端部8と、風車翼3の吸込面5側の翼先端部8及び該翼先端部8から風車翼3の後縁10に沿って間隔を隔てた複数の位置とに配置されていてもよい(例えば図3(a)及び図3(b)参照)。
そして、金属製薄膜20は、各々が配置される圧力面4又は吸込面5の翼先端部8に配置された金属レセプタ12から翼長方向に沿って風車翼3の翼長Lの40%以内の範囲に設けられていてもよい(例えば図3(a)参照)。
【0044】
このように、風車翼3の圧力面4又は吸込面5に配置された金属レセプタ12から翼長Lの40%以内の範囲に金属製薄膜20が設けられた構成によれば、落雷を受け易いとされる翼先端8Aから、翼長Lの40%以内の範囲に金属製薄膜20を配置することにより、当該範囲への落雷を高確率に補足することができる。したがって、風車翼3への大部分の落雷の雷電流を翼根部7まで円滑に案内することができる。
【0045】
幾つかの実施形態では、風車翼3の吸込面5側の金属製薄膜20が、吸込面5側の翼先端部8から翼長Lの40%以内の範囲において風車翼3のコード中心から後縁10寄りに配置されていてもよい(例えば図3(a)参照)。
このようにすれば、風車翼3の吸込面5側の金属製薄膜20は、コード中心に対し、前縁9よりも風の影響を受けにくい後縁10側に配置されるから、風の影響によって風車翼3から金属製薄膜20が剥離することを防止しつつ、金属レセプタ12以外に落雷を受けた場合にも雷電流を円滑に案内することができる。
【0046】
幾つかの実施形態では、風車翼3の吸込面5側の金属製薄膜20が、風車翼3の前縁9又は後縁10に沿って間隔を隔てた複数の位置に配置された複数の金属レセプタ12の一部を導通するように設けられていてもよい(例えば図3(a)参照)。
このようにすれば、風車翼3の吸込面5側の金属製薄膜20は、前縁9に比べて風の影響を受けにくい後縁10側に配置されるから、風の影響によって風車翼3から金属製薄膜20が剥離することを防止しつつ、金属レセプタ12以外に落雷を受けた場合にも雷電流を円滑に案内することができる。さらに、金属製薄膜20が後縁10側に間隔を隔てて配置された複数の金属レセプタ12の一部を導通するように配置されることにより、仮に金属製薄膜20に落雷を受けた場合の電流を複数の経路に分流することができるから、金属製薄膜20の溶損を防止することができる。
【0047】
図4は、他の実施形態に係る風車翼保護構造の構成例を示す概略図であり、(a)は吸込面、(b)は圧力面を示す。
図4に非限定に例示するように、金属レセプタ12は、少なくとも風車翼3の圧力面4側の翼先端部8と、風車翼3の吸込面5側の翼先端部8及び該翼先端部8から風車翼3の前縁9又は後縁10に沿って間隔を隔てた複数の位置とに配置されていてもよい(例えば図3(a)及び図3(b)参照)。
そして、圧力面4側の金属製薄膜20は、翼先端部8に配置された金属レセプタ12を含んで風車翼3の翼先端8Aから翼長Lの40%以内の範囲に設けられていてもよく(例えば図3(b)参照)、吸込面5側の金属製薄膜20は、翼先端部8に配置された金属レセプタ12を含んで翼先端8Aから翼長L方向に沿って翼長Lの20%未満の範囲に設けられていてもよい(例えば図3(a)参照)。
【0048】
このように構成すれば、風車翼3の圧力面4側では雷の受電範囲を翼先端8Aから翼長Lの40%以内の範囲に設けられた金属製薄膜20により拡大し、当該範囲への落雷による雷電流を翼先端部8に配置された金属レセプタ12からダウンコンダクタ13に導くことができる。一方、風車翼3の吸込面5側では前縁9又は後縁10に沿って間隔を隔てて配置された複数の金属レセプタ12と、翼先端部8に配置された金属レセプタ12を含んで翼先端8Aから翼長Lの20%の範囲に配置された金属製薄膜20とにより、雷を適切に補足することができる。
【0049】
幾つかの実施形態において、風車翼3の吸込面5には、前縁9側と後縁10側とに配置された2つの金属レセプタ12の間を被雷時に導通可能とするダイバーターストリップ30(segmented diverter strip:SDS)が配置されていてもよい(例えば図3(a)及び図4(a)参照)。
このように、風車翼3の吸込面5の前縁9側と後縁10側とに配置された2つの金属レセプタ12の間にダイバーターストリップ30が配置されていることにより、被雷時にはこのダイバーターストリップ30周辺の空気がイオン化され、該ダイバーターストリップ30を経由して雷電流が風車翼3の表面6に沿って流れ、金属レセプタ12に導かれる。つまり、ダイバーターストリップ30には避雷導線を設ける必要がないため、簡素な構造によって風車翼3の耐雷性能を向上させることができる。
【0050】
幾つかの実施形態において、風車翼3の吸込面5には、前縁9側と後縁10側とに配置された2つの金属レセプタ12の間を被雷時に導通可能とするダイバーターストリップ30が配置され、吸込面5側の金属製薄膜20は、ダイバーターストリップ30から1m以上離れた位置に配置されていてもよい(例えば図4(a)及び図5(a)参照)。
このようにすれば、上述したように、ダイバーターストリップ30により、簡素な構造によって風車翼3の耐雷性能を向上させることができるほか、吸込面5側の金属製薄膜20はダイバーターストリップ30から1m以上離れた位置に配置されるから、吸込面5側において金属製薄膜20から翼先端部8以外に配置された金属レセプタ12に雷電流がジャンプしてスパークが生じること等を防止することができる。
【0051】
図6は、他の実施形態に係る風車翼保護構造の構成例を示す概略図であり、(a)は吸込面、(b)は圧力面を示す。
図6に非限定に例示するように、幾つかの実施形態において、金属レセプタ12は、少なくとも圧力面4側の翼先端部8と、風車翼3の吸込面5側の翼先端部8及び該翼先端部8から風車翼3の前縁9及び後縁10に沿って夫々間隔を隔てた複数の位置とに配置されていてもよい。
そして、圧力面4側の金属製薄膜20は、圧力面4側の翼先端部8に配置された金属レセプタ12から翼長方向に沿って風車翼3の翼先端8Aから翼長Lの20%以内の範囲に設けられていてもよく(例えば図6(b)参照)、吸込面5側の金属製薄膜20は、翼先端8Aから翼長Lの20%未満の範囲において前縁9側と後縁10側とに配置された2つの金属レセプタ12を導通する第1範囲22と、翼先端部8に配置された金属レセプタ12から翼長方向に沿って少なくとも一部が第1範囲22に重なる第2範囲24と、に亘って設けられていてもよい(例えば図6(a)参照)。
上記第1範囲22及び第2範囲24は、互いがT字状に交差するように設けられていてもよい。
【0052】
このような構成によれば、風車翼3の圧力面4側では翼先端部8に配置された金属レセプタ12から翼長方向に沿って風車翼3の翼先端8Aから翼長Lの20%以内の範囲に設けられた金属製薄膜20によって雷を補足し、その雷電流を、上記金属レセプタ12を介してダウンコンダクタ13に導くことができる。一方、吸込面5側では、前縁9側と後縁10側とに配置された2つの金属レセプタ12を導通する第1範囲22と、翼先端部8に配置された金属レセプタ12から翼長方向に沿って少なくとも一部が第1範囲22に重なる第2範囲24とに亘って設けられた金属製薄膜20により、雷捕捉率をより一層向上させることができる。
【0053】
幾つかの実施形態において、風車翼保護構造1は、各々が風車翼3の内部において翼長方向に沿って延在するとともに風車翼3の圧力面4と吸込面5とを接続する前縁側シアウェブ11A及び後縁側シアウェブ11Bを備えていてもよい(図3図6参照)。
後縁側シアウェブ11Bは、風車翼3のコード方向において前縁側シアウェブ11Aよりも中央に配置されるとともに前縁側シアウェブ11Aよりも翼先端8Aまで延在していてもよい。つまり、翼型に形成された風車翼3においては、前縁9側の厚さが後縁10側よりも厚いため、後縁側シアウェブ11Bの方が前縁側シアウェブ11Aよりもコード中心に近い位置に配置されるから、前縁側シアウェブ11Aよりも翼先端12に近い位置まで延在することになる。
金属レセプタ12は、吸込面5の前縁9側及び後縁10側に沿って夫々間隔を隔てて複数配置されていてもよい。
そして、ダウンコンダクタ13は、前縁側シアウェブ11Aに沿って配置された第1ダウンコンダクタ13Aと、後縁側シアウェブ11Bに沿って配置された第2ダウンコンダクタ13Bと、を含んでいてもよい(図3図6参照)。
【0054】
このように、第1ダウンコンダクタ13A及び第2ダウンコンダクタ13Bという二つのダウンコンダクタ13を含む構成により、風車翼3内に翼長方向に沿って雷電流を導くための複数の経路を確保することができる。また、第2ダウンコンダクタ13Bは後縁側シアウェブ11Bに沿って翼先端8Aまで延在し、該翼先端部8に配置された金属レセプタ12と導通され得る。このような構成により、例えば風車翼3の吸込面5側において、前縁9側に配置された各金属レセプタ12を第1ダウンコンダクタ13Aに接続するとともに、後縁10側に配置された各金属レセプタ12を第2ダウンコンダクタ13Bに接続することで、より円滑に雷電流を案内することができる。
【0055】
幾つかの実施形態において、金属レセプタ12は、風車翼3の翼表面6からの突出高さが3mm以内になるように形成されていてもよい。このようにすれば、風車翼3の空力性能に対する金属レセプタ12の影響を抑制することができるから、風車2の運転性能への影響を抑制しつつ耐雷性能の向上を図ることができる。
【0056】
幾つかの実施形態において、金属製薄膜20は、金属テープ、金属メッシュ又は金属層から構成されていてもよい。このように金属テープ、金属メッシュ又は金属層からなる金属製薄膜20により、上記何れで述べた効果を享受することができる。
【0057】
幾つかの実施形態において、金属製薄膜20は、風車翼3の翼表面6に占める面積が接続対象とされる金属レセプタ12の10倍以上に形成されてもよい。
このようにすれば、少なくとも翼先端部8における落雷に対する受電範囲を、金属レセプタ12のみを設けた場合に比べて10倍以上に拡大することができるから、被雷し易いとされる翼先端部8における雷補足率を大幅に向上させることができる。
【0058】
幾つかの実施形態において、金属製薄膜20は、50〜300mmの幅を有していてもよい。
このようにすれば、50〜300mmの幅を有する金属製薄膜により、上記何れかで述べた効果を享受することができる。
【0059】
幾つかの実施形態において、金属製薄膜20は、50〜300μmの厚さを有していてもよい。このように、50〜300μmの厚さを有する金属製薄膜20により、風車翼3の空力性能に対する金属製薄膜20の影響を極力抑制することができるから、風車2の運転性能への影響を抑制しつつ耐雷性能の向上を図ることができる。
【0060】
金属製薄膜20は、例えば図7(a)及び図7(b)に示すように、金属レセプタ12よりも翼先端8A側まで延設されていてもよい。このようにすれば、金属レセプタ12による着雷可能範囲を可能な限り翼先端8A側まで拡大することができる。
幾つかの実施形態において、翼先端部8に配置する金属レセプタ12は、例えば図8に非限定的に例示するように、翼表面6に露出するほか、該露出部に風車翼3の内部で接続されつつ翼先端8Aまで延在するロッドレセプタ12Aとしてもよい。ロッドレセプタ12Aの先端は、翼先端8Aから外側に露出するようにしてもよい。このようにすれば、風車翼3において被雷し易い翼先端8Aまで受電範囲を拡大することができる。
【0061】
次に、本開示の少なくとも一実施形態に係る風車翼保護構造の形成方法について図9を参照して詳しく説明する。
図9は他の実施形態に係る風車翼保護構造の形成方法を示すフローチャートである。
図9に非限定的に例示するように、本開示の少なくとも一実施形態に係る風車翼保護構造の形成方法は、落雷から風車翼3を保護する保護構造の形成方法であって、金属レセプタ12を少なくとも一部が風車翼3の表面6に露出するようにして少なくとも風車翼3の翼先端部8に配置するステップ(ステップS1)と、各々の金属レセプタ12と電気的に接続されたダウンコンダクタ13を、風車翼3の内部において金属レセプタ12から翼根部7に亘り翼長方向に沿って配置するステップ(ステップS2)と、金属製薄膜20を、少なくともその一部が金属レセプタ12と電気的に接続されるようにして風車翼3の表面の少なくとも一部を覆うように配置するステップ(ステップS3)と、を備えている。
そして、金属製薄膜20を配置するステップS1では、少なくとも風車翼3の圧力面4側に配置された金属製薄膜20を、風車翼3の翼長方向においてダウンコンダクタ13に沿うように配置する。
【0062】
上述したように、金属レセプタ12は、少なくともその一部が風車翼3の表面6に露出するように配置され、金属製薄膜20は、少なくともその一部が金属レセプタ12と電気的に接続されるようにして風車翼表面6の少なくとも一部を覆うように配置される。このため、仮に金属製薄膜20に落雷を受けた場合、雷電流は金属製薄膜20から金属レセプタ12に導かれ、さらに金属レセプタ12と電気的に接続されたダウンコンダクタ13を通って翼根部7に案内されるから、金属レセプタ12以外に落雷を受けた場合にも雷電流を円滑に案内することができる。さらに、少なくとも風車翼3の圧力面4側では金属製薄膜20が、最終的に雷電流を導くダウンコンダクタ13に沿うように配置されるから、雷捕捉率の向上を図ることができる。
【0063】
上述した本開示の少なくとも一実施形態によれば、金属レセプタ12以外に落雷を受けた場合にも雷電流を円滑に案内することができる。
【0064】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変更を加えた形態や、これらの形態を組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0065】
1 風車翼保護構造
2 風車(風力発電設備)
3 風車翼
4 圧力面
5 吸込面
6 表面(翼表面)
7 翼根部
8 翼先端部
8A 翼先端
9 前縁
10 後縁
11 シアウェブ
11A 前縁側シアウェブ
11B 後縁側シアウェブ
12 金属レセプタ
12A ロッドレセプタ
13 ダウンコンダクタ
13A 第1ダウンコンダクタ
13B 第2ダウンコンダクタ
20 金属製薄膜(導電性金属箔)
22 第1範囲
24 第2範囲
30 ダイバーターストリップ
40 風車ロータ
41 ハブ
42 ナセル
43 タワー
44 基礎
L 翼長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2019年8月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
落雷からの風車翼の保護構造であって、
少なくとも一部が前記風車翼の表面に露出するようにして少なくとも前記風車翼の翼先端部に配置された金属レセプタと、
各々の前記金属レセプタと電気的に接続され、前記風車翼の内部において前記金属レセプタから翼根部に亘り翼長方向に沿って延在するダウンコンダクタと、
少なくとも一部が前記金属レセプタと電気的に接続され、前記風車翼の表面の少なくとも一部を覆うように配置された金属製薄膜と、を備え、
少なくとも前記風車翼の圧力面側に配置された前記金属製薄膜は、前記風車翼の翼長方向において前記ダウンコンダクタに沿うように配置され
前記金属レセプタは、
前記風車翼の前記圧力面側の翼先端部に設けられる第1レセプタと、
前記風車翼の吸込面側の翼先端部及び該翼先端部から前記風車翼の後縁に沿って間隔を隔てた複数の位置にそれぞれ配置される複数の第2レセプタと、
を含み、
前記金属製薄膜は、
前記風車翼の前記圧力面側に配置され、前記第1レセプタから前記翼根部に向かって前記ダウンコンダクタに沿って該ダウンコンダクタを覆うように延在するとともに、前記金属レセプタのうち前記第1レセプタのみと接続された第1薄膜と、
前記風車翼の前記吸込面側に配置され、前記複数の第2レセプタの設置位置を通るように前記ダウンコンダクタよりも前記後縁側において前記後縁に沿って延在するとともに、前記複数の第2レセプタに接続された第2薄膜と、
を含む
ことを特徴とする風車翼保護構造。
【請求項2】
落雷からの風車翼の保護構造であって、
少なくとも一部が前記風車翼の表面に露出するようにして少なくとも前記風車翼の翼先端部に配置された金属レセプタと、
各々の前記金属レセプタと電気的に接続され、前記風車翼の内部において前記金属レセプタから翼根部に亘り翼長方向に沿って延在するダウンコンダクタと、
少なくとも一部が前記金属レセプタと電気的に接続され、前記風車翼の表面の少なくとも一部を覆うように配置された金属製薄膜と、を備え、
少なくとも前記風車翼の圧力面側に配置された前記金属製薄膜は、前記風車翼の翼長方向において前記ダウンコンダクタに沿うように配置され、
前記金属レセプタは
記風車翼の前記圧力面側の翼先端部に設けられる第1レセプタと、
前記風車翼の吸込面側の翼先端部該翼先端部から前記風車翼の後縁及び前縁に沿って間隔を隔てた複数の位置にそれぞれ配置される複数の第2レセプタと、
を含み、
前記金属製薄膜は、
前記風車翼の前記圧力面側に配置され、前記第1レセプタから前記翼根部に向かって前記ダウンコンダクタに沿って該ダウンコンダクタを覆うように延在するとともに、前記金属レセプタのうち前記第1レセプタのみと接続された第1薄膜と、
前記風車翼の前記吸込面側に配置され、前記翼先端部および前記後縁側の前記第2レセプタにより形成される後縁側レセプタ列と、前記翼先端部および前記前縁側の前記第2レセプタにより形成される前縁側レセプタ列との間において、前記翼先端部に位置する前記第2レセプタから前記翼根部に向かって前記ダウンコンダクタに沿って該ダウンコンダクタを覆うように延在するとともに、前記金属レセプタのうち前記翼先端部に位置する前記第2レセプタのみと接続された第2薄膜と、
を含む
風車翼保護構造。
【請求項3】
前記風車翼の吸込面側の前記金属製薄膜は、前記吸込面側の翼先端部から翼長の40%以内の範囲において前記風車翼のコード中心から後縁寄りに配置されている
請求項1又は2に記載の風車翼保護構造。
【請求項4】
記圧力面側の前記金属製薄膜は、前記翼先端部に配置された前記金属レセプタを含んで前記風車翼の翼先端から翼長の40%以内の範囲に設けられ、
前記吸込面側の前記金属製薄膜は、前記翼先端部に配置された前記金属レセプタを含んで前記翼先端から前記翼長方向に沿って前記翼長の20%未満の範囲に設けられている
請求項に記載の風車翼保護構造。
【請求項5】
前記風車翼の吸込面には、前縁側と前記後縁側とに配置された2つの前記金属レセプタの間を被雷時に導通可能とするダイバーターストリップが配置されている
請求項1〜の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項6】
落雷からの風車翼の保護構造であって、
少なくとも一部が前記風車翼の表面に露出するようにして少なくとも前記風車翼の翼先端部に配置された金属レセプタと、
各々の前記金属レセプタと電気的に接続され、前記風車翼の内部において前記金属レセプタから翼根部に亘り翼長方向に沿って延在するダウンコンダクタと、
少なくとも一部が前記金属レセプタと電気的に接続され、前記風車翼の表面の少なくとも一部を覆うように配置された金属製薄膜と、を備え、
少なくとも前記風車翼の圧力面側に配置された前記金属製薄膜は、前記風車翼の翼長方向において前記ダウンコンダクタに沿うように配置され、
前記金属レセプタは、少なくとも前記風車翼の前記圧力面側の翼先端部と、前記風車翼の吸込面側の翼先端部及び該翼先端部から前記風車翼の前縁又は後縁に沿って間隔を隔てた複数の位置とに配置され、
前記圧力面側の前記金属製薄膜は、前記翼先端部に配置された前記金属レセプタを含んで前記風車翼の翼先端から翼長の40%以内の範囲に設けられ、
前記吸込面側の前記金属製薄膜は、前記翼先端部に配置された前記金属レセプタを含んで前記翼先端から前記翼長方向に沿って前記翼長の20%未満の範囲に設けられ、
前記風車翼の吸込面には、前記前縁側と前記後縁側とに配置された2つの前記金属レセプタの間を被雷時に導通可能とするダイバーターストリップが配置され、
前記吸込面側の前記金属製薄膜は、前記ダイバーターストリップから1m以上離れた位置に配置されてい
車翼保護構造。
【請求項7】
前記金属製薄膜は、
前記風車翼の前記吸込面側において、前記第2薄膜に交差して、前記後縁側レセプタ列に属する前記第2レセプタ、および、前記前縁側レセプタ列に属する前記第2レセプタを通過するように設けられる第3薄膜
をさらに含む
請求項2に記載の風車翼保護構造。
【請求項8】
記圧力面側の前記第1薄膜は、前記圧力面側の前記翼先端部に配置された前記金属レセプタから前記翼長方向に沿って前記風車翼の翼先端から翼長の20%以内の範囲に設けられ、
前記吸込面側の前記第2薄膜および前記第3薄膜は、前記翼先端から前記翼長の20%未満の範囲に設けられている
請求項に記載の風車翼保護構造。
【請求項9】
各々が前記風車翼の内部において前記翼長方向に沿って延在するとともに前記風車翼の前記圧力面と前記吸込面とを接続する前縁側シアウェブ及び後縁側シアウェブを備え、
前記後縁側シアウェブは、前記風車翼のコード方向において前記前縁側シアウェブよりも中央に配置されるとともに前記前縁側シアウェブよりも前記翼先端まで延在し、
前記金属レセプタは、前記吸込面の前縁側及び後縁側に沿って夫々間隔を隔てて複数配置され、
前記ダウンコンダクタは、前記前縁側シアウェブに沿って配置された第1ダウンコンダクタと、前記後縁側シアウェブに沿って配置された第2ダウンコンダクタと、を含む
請求項1〜8の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項10】
前記金属レセプタは、前記風車翼の翼表面からの突出高さが3mm以内になるように形成されている
請求項1〜9の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項11】
前記金属製薄膜は、金属テープ、金属メッシュ又は金属層からなる
請求項1〜10の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項12】
前記金属製薄膜は、前記風車翼の翼表面に占める面積が接続対象とされる前記金属レセプタの10倍以上に形成される
請求項1〜11の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項13】
前記金属製薄膜は、50〜300mmの幅を有する
請求項1〜12の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項14】
前記金属製薄膜は、50〜300μmの厚さを有する
請求項1〜13の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか一項に記載の風車翼保護構造を形成する方法であって、
金属レセプタを少なくとも一部が前記風車翼の表面に露出するようにして少なくとも前記風車翼の翼先端部に配置するステップと、
各々の前記金属レセプタと電気的に接続されたダウンコンダクタを、前記風車翼の内部において前記金属レセプタから翼根部に亘り翼長方向に沿って配置するステップと、
前記金属製薄膜を、少なくともその一部が前記金属レセプタと電気的に接続されるようにして前記風車翼の表面の少なくとも一部を覆うように配置するステップと、を備え、
前記金属製薄膜を配置するステップでは、少なくとも前記風車翼の圧力面側に配置された前記金属製薄膜を、前記風車翼の翼長方向において前記ダウンコンダクタに沿うように配置する
ことを特徴とする風車翼保護構造の形成方法。