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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-218863(P2019-218863A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】風車翼保護構造及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/30 20160101AFI20191129BHJP
【FI】
   F03D80/30
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-114342(P2018-114342)
(22)【出願日】2018年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村田 直人
(72)【発明者】
【氏名】木村 保貴
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英司
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB43
3H178CC02
3H178CC04
3H178DD51X
(57)【要約】
【課題】簡易な構成又は方法により風車翼の耐雷性能の向上を図る。
【解決手段】風車翼保護構造は、落雷からの風車翼の保護構造であって、風車翼の表面の一部を覆うように配置された導電性金属箔を含む保護層を備えている。この保護層は、風車翼の翼根から翼先端部に亘り風車翼の後縁に沿って翼長方向に延在する長尺部を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
落雷からの風車翼の保護構造であって、
前記風車翼の表面の一部を覆うように配置された導電性金属箔を含む保護層を備え、
前記保護層は、前記風車翼の翼根から翼先端部に亘り前記風車翼の後縁に沿って翼長方向に延在する長尺部を含む
ことを特徴とする風車翼保護構造。
【請求項2】
前記保護層は、前記風車翼の圧力面に配置されている
請求項1に記載の風車翼保護構造。
【請求項3】
前記保護層は、前記長尺部と導通するように前記風車翼の翼根部の全周に亘って配置された環状部を含む
請求項1又は2に記載の風車翼保護構造。
【請求項4】
前記保護層は、その前記後縁側の端部が前記後縁から所定距離離れて配置されている
請求項1〜3の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項5】
前記保護層は、長手方向と交差する方向に所定幅を有する複数の保護層セグメントが前記長手方向に接続されてなる接続部を含み、
前記接続部は、前記長手方向の一方と他方とに配置された第1及び第2の前記保護層セグメントにおける各々の端部が対向配置されることで互いの前記導電性金属箔が当接される
請求項1〜4の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項6】
前記接続部は、前記風車翼の翼表面に張り付けられた前記導電性金属箔上に、前記第1及び第2の保護層セグメントの各々の接合端部が配置されるように重ねて接着されて構成されている
請求項5に記載の風車翼保護構造。
【請求項7】
前記接続部は、前記長手方向と交差する方向に前記所定幅超の長さを有し、対向配置された前記第1及び第2の保護層セグメントの各々の前記端部を覆うようにして前記第1及び第2の保護層セグメント上に張り付けられた合成樹脂テープを含む
請求項5又は6に記載の風車翼保護構造。
【請求項8】
前記所定幅は、50〜300mmである
請求項5〜7の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項9】
前記導電性金属薄膜は、50〜300μmの厚さを有する
請求項1〜8の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項10】
前記風車翼の翼先端から翼長の35%以内の範囲に、前記保護層のうち前記風車翼の前縁に近い前縁側端部に沿って該前縁側端部を覆う剥離防止コーティングを備える
請求項1〜9の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項11】
前記導電性金属箔は、金属テープ、金属メッシュ又は金属層からなる
請求項1〜10の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項12】
落雷から風車翼を保護する風車翼保護構造の形成方法であって、
前記風車翼の表面の一部を覆うようにして導電性金属箔を含む保護層を配置するステップを備え、
前記保護層を配置するステップでは、前記風車翼の翼根から翼先端部に亘り前記風車翼の後縁に沿って翼長方向に延在する長尺部を形成するようにして前記保護層を配置する
ことを特徴とする風車翼保護構造の形成方法。
【請求項13】
前記保護層を配置するステップでは、前記風車翼の圧力面に前記保護層を配置する
請求項12に記載の風車翼保護構造の形成方法。
【請求項14】
前記保護層を配置するステップでは、前記長尺部と導通するように前記風車翼の翼根部の全周に亘って環状部を形成するようにして前記保護層を配置する
請求項12又は13に記載の風車翼保護構造の形成方法。
【請求項15】
前記保護層を配置するステップでは、長手方向と交差する方向に所定幅を有する複数の保護層セグメントを前記長手方向に接続してなる接続部を含むように前記保護層を配置し、
前記接続部は、前記長手方向の一方と他方とに配置する第1及び第2の前記保護層セグメントにおける各々の端部を対向配置することで互いの前記導電性金属箔を当接させる
請求項12〜14の何れか一項に記載の風車翼保護構造の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風車翼保護構造及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風車翼を落雷から保護するための種々の構造が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、翼表面に自由にアクセス可能に配置された落雷レセプタと、導電性材料からなり翼表面内部を落雷レセプタから翼根に延在するダウンコンダクタとを備え、上記落雷レセプタやダウンコンダクタから電気的に分離された導電層を有する落雷保護システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8888454号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、風車翼には上記のような金属レセプタを備えていない風車翼もあり、そのような風車翼に追加的に金属レセプタを設ける場合は金属レセプタを翼表面に露出させる必要がある一方、翼根まで雷電流を導くダウンコンダクタを風車翼内部に設置する必要があるため改造作業に手間がかかるという問題がある。この点、上記特許文献1には上記の問題を解決するための対策が何ら記載されていない。
【0006】
上述した問題に鑑み、本開示の少なくとも一実施形態は、簡易な構成又は方法により風車翼の耐雷性能の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る風車翼保護構造は、
落雷からの風車翼の保護構造であって、
前記風車翼の表面の一部を覆うように配置された導電性金属箔を含む保護層を備え、
前記保護層は、前記風車翼の翼根から翼先端部に亘り前記風車翼の後縁に沿って翼長方向に延在する長尺部を含む。
【0008】
上記(1)の構成によれば、導電性金属箔を含む保護層が風車翼の翼根から翼先端部に亘って翼長方向に延在することにより、風車翼において被雷し易いとされる翼先端部では保護層自体が落雷に対するレセプタとして機能するとともに、翼先端部から翼根に亘っては上記保護層自体が雷電流を導くダウンコンダクタとして機能する。つまり、風車翼内部での作業を必要とせず、風車翼の表面に保護層を設けるという簡易な構成で既存又は新設の風車翼にレセプタとダウンコンダクタの両方の機能を持たせることができる。よって、簡易な構成により風車翼の耐雷性能の向上を図ることができる。また、風車翼の後縁に沿って保護層を配置することで、例えば前縁側に配置する場合に比べて保護層に対する風の影響を低減することができるから、耐雷性能を安定して発揮し得る風車翼保護構造を提供することができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、
前記保護層は、前記風車翼の圧力面に配置されていてもよい。
【0010】
上記(2)の構成によれば、風車翼の圧力面に作用する風圧により風車運転の際は保護層を風車翼に押し付けることができる。よって、風車翼から保護層が剥離することを防止し、耐雷性能を安定して発揮し得る風車翼保護構造を提供することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の構成において、
前記保護層は、前記長尺部と導通するように前記風車翼の翼根部の全周に亘って配置された環状部を含んでもよい。
【0012】
上記(3)の構成によれば、上記長尺部と導通するようにして翼根部に環状に保護層を配置することにより、風車翼のピッチ角によらず翼根部から該翼根部が取り付けられるハブを介して雷電流を円滑に案内することができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の構成において、
前記保護層は、その前記後縁側の端部が前記後縁から所定距離離れて配置されていてもよい。
【0014】
上記(4)の構成によれば、保護層の後縁側の端部が風車翼の後縁から所定距離離れて配置されるから、保護層の後縁側の端部が風車翼の後縁より後流側にはみ出したり、当該保護層が配置される風車翼の圧力面又は負圧面の一方の面から他方の面にかけて保護層が折り返されて延在したりすることがない。よって、風車翼の表面から保護層が剥離することをより適切に防止することができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(4)の何れか1つに記載の構成において、
前記保護層は、長手方向と交差する方向に所定幅を有する複数の保護層セグメントが前記長手方向に接続されてなる接続部を含み、
前記接続部は、前記長手方向の一方と他方とに配置された第1及び第2の前記保護層セグメントにおける各々の端部が対向配置されることで互いの前記導電性金属箔が当接されていてもよい。
【0016】
上記(5)の構成によれば、複数の保護層セグメントが接続部において長手方向に接続されることで保護層が構成される。つまり、翼根から翼先端部に亘って配置される保護層を、一体ではなく分割されたセグメントとして扱うことができるから、当該保護層を設置する際の作業性の向上を図ることができる。また、長手方向の一方と他方とに配置された第1及び第2の保護層セグメントにおける各々の端部が対向配置されることで互いの導電性金属箔が当接されるから、保護層自体の厚さが増加することを防止して該保護層が風車翼の空力性能に及ぼす影響を低減できるとともに、風によって当該保護層が風車翼の表面から剥離することを防止することができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の構成において、
前記接続部は、前記風車翼の翼表面に張り付けられた前記導電性金属箔上に、前記第1及び第2の保護層セグメントの各々の接合端部が配置されるように重ねて接着されて構成されていてもよい。
【0018】
上記(6)の構成によれば、接続部における第1及び第2の保護層セグメント間の導電性をより確実に確保することができる。よって、翼先端部から翼根に亘る保護層の導電性を確保することができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)又は(6)に記載の構成において、
前記接続部は、前記長手方向と交差する方向に前記所定幅超の長さを有し、対向配置された前記第1及び第2の保護層セグメントの各々の前記端部を覆うようにして前記第1及び第2の保護層セグメント上に張り付けられた合成樹脂テープを含んでいてもよい。
【0020】
上記(7)の構成によれば、第1及び第2の保護層セグメントの各々の接合端部を、各保護セグメントの幅より長い合成樹脂テープで覆うことができる。よって、接合部において各保護層セグメントが風車翼の表面から剥離することを効果的に防止することができるとともに、翼先端部から翼根に至る保護層の導電性を確保することができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(5)〜(7)の何れか一つに記載の構成において、
前記所定幅は、50〜300mmであってもよい。
【0022】
上記(8)の構成によれば、所定幅が50〜300mmの保護層セグメントにより、上記(5)〜(7)の何れか一つで述べた効果を享受することができる。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(8)の何れか一つに記載の構成において、
前記導電性金属薄膜は、50〜300μmの厚さを有していてもよい。
【0024】
上記(9)の構成によれば、50〜300μmの厚さを有する導電性金属薄膜により、上記(1)〜(8)の何れか一つで述べた効果を享受することができる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(9)の何れか一つに記載の構成において、
風車翼保護構造は、
前記風車翼の翼先端から翼長の35%以内の範囲に、前記保護層のうち前記風車翼の前縁に近い前縁側端部に沿って該前縁側端部を覆う剥離防止コーティングを備えていてもよい。
【0026】
上記(10)の構成によれば、翼根側に比べて周速の速い翼先端側では、翼先端から翼長の35%以内の範囲において保護層の前縁側端部が剥離防止コーティングで覆われる。よって、風の影響により保護層の前縁側端部が風車翼の表面から剥離することを適切に防止することができる。
【0027】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(10)の何れか一つに記載の構成において、
前記導電性金属箔は、金属テープ、金属メッシュ又は金属層から構成されていてもよい。
【0028】
上記(11)の構成によれば、金属テープ、金属メッシュ又は金属層から構成された導電性金属箔により、上記(1)〜(10)の何れか一つで述べた効果を享受することができる。
【0029】
(12)本開示の少なくとも一実施形態に係る風車翼保護構造の形成方法は、
落雷から風車翼を保護する風車翼保護構造の形成方法であって、
前記風車翼の表面の一部を覆うようにして導電性金属箔を含む保護層を配置するステップを備え、
前記保護層を配置するステップでは、前記風車翼の翼根から翼先端部に亘り前記風車翼の後縁に沿って翼長方向に延在する長尺部を形成するようにして前記保護層を配置する。
【0030】
上記(12)の方法によれば、上記(1)で述べたように、導電性金属箔を含む保護層が風車翼の翼根から翼先端部に亘って翼長方向に延在することにより、風車翼において被雷し易いとされる翼先端部では保護層自体が落雷に対するレセプタとして機能するとともに、翼先端部から翼根に亘っては上記保護層自体が雷電流を導くダウンコンダクタとして機能する。つまり、風車翼内部での作業を必要とせず、風車翼の表面に保護層を設けるという簡易な方法で既存又は新設の風車翼にレセプタとダウンコンダクタの両方の機能を持たせることができる。よって、簡易な方法により風車翼の耐雷性能の向上を図ることができる。また、風車翼の後縁に沿って保護層を配置することで、例えば前縁側に配置する場合に比べて保護層に対する風の影響を低減することができるから、耐雷性能を安定して発揮し得る風車翼保護構造の形成方法を提供することができる。
【0031】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)に記載の方法において、
前記保護層を配置するステップでは、前記風車翼の圧力面に前記保護層を配置してもよい。
【0032】
上記(13)の方法によれば、上記(2)で述べたように、風車翼の圧力面に作用する風圧により風車運転の際は保護層を風車翼に押し付けることができる。よって、風車翼から保護層が剥離することを防止し、耐雷性能を安定して発揮し得る風車翼保護構造の形成方法を提供することができる。
【0033】
(14)幾つかの実施形態では、上記(12)又は(13)に記載の方法において、
前記保護層を配置するステップでは、前記長尺部と導通するように前記風車翼の翼根部の全周に亘って環状部を形成するようにして前記保護層を配置してもよい。
【0034】
上記(14)の方法によれば、上記(3)で述べたように、上記長尺部と導通するようにして翼根部に環状に保護層を配置することにより、風車翼のピッチ角によらず翼根部から該翼根部が取り付けられるハブを介して雷電流を円滑に案内することができる。
【0035】
(15)幾つかの実施形態では、上記(12)〜(14)の何れか一つに記載の方法において、
前記保護層を配置するステップでは、長手方向と交差する方向に所定幅を有する複数の保護層セグメントを前記長手方向に接続してなる接続部を含むように前記保護層を配置し、
前記接続部は、前記長手方向の一方と他方とに配置する第1及び第2の前記保護層セグメントにおける各々の端部を対向配置することで互いの前記導電性金属箔を当接させてもよい。
【0036】
上記(15)の方法によれば、上記(5)で述べたように、複数の保護層セグメントが接続部において長手方向に接続されることで保護層が構成される。つまり、翼根から翼先端部に亘って配置される保護層を、一体ではなく分割されたセグメントとして扱うことができるから、当該保護層を設置する際の作業性の向上を図ることができる。また、長手方向の一方と他方とに配置された第1及び第2の保護層セグメントにおける各々の端部が対向配置されることで互いの導電性金属箔が当接されるから、保護層自体の厚さが増加することを防止して該保護層が風車翼の空力性能に及ぼす影響を低減できるとともに、風によって当該保護層が風車翼の表面から剥離することを防止することができる。
【発明の効果】
【0037】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、簡易な構成又は方法により風車翼の耐雷性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】一実施形態に係る風車翼保護構造が適用される風力発電設備を示す概略図である。
図2】一実施形態に係る風車翼保護構造を適用した風車翼を示す概略図であり、(a)は後縁側から見た図、(b)は圧力面側から見た図である。
図3】一実施形態に係る風車翼保護構造の構成例を示す概略図である。
図4】一実施形態に係る風車翼保護構造の構成例を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるB−B断面を示す図である。
図5】一実施形態に係る風車翼保護構造の構成例を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図6】一実施形態に係る風車翼保護構造の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面に従って本発明の例示的な実施形態について説明する。ただし、以下に示す幾つかの実施形態に記載された構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0040】
図1は本開示の少なくとも一実施形態に係る風車翼保護構造が適用される風力発電設備を示す概略図である。
図1に非限定的に例示するように、本開示の少なくとも一実施形態における風力発電設備(以下、風車2とする)は、複数(例えば3枚)の風車翼3及び該風車翼3が取り付けられるハブ5で構成される風車ロータ4と、風車ロータ4を図示しない主軸及び主軸受を介して回転自在に支持するナセル6と、ナセル6を水平旋回可能に支持するタワー7と、タワー7が設置される基礎8と、備えている。
風車翼3は、風車2のハブ5に取り付けられる翼根部13から翼先端部14に亘って長手方向(翼長方向)に延在している。この風車翼3は、翼根部13から翼先端部14にかけて、前縁15と後縁16とを有するとともに、圧力面11(正圧面又は腹面とも称する)及び該圧力面11に対向する吸込面12(負圧面又は背面とも称する)を含む中空構造を有するように構成されている。
なお、本明細書において、「翼長方向」とは、翼根部13と翼先端部14とを結ぶ方向であり、「コード方向(翼コード方向)」とは、風車翼3の前縁15と後縁16とを結ぶ線(コード)に沿った方向である。また、「翼根部」とは、風車翼3において断面が概ね円形となる円筒状の部分であり、翼根側の端面を基準として例えば5mの翼長方向範囲(典型的には、前記端面から1〜3mの範囲)である。
【0041】
図2は一実施形態に係る風車翼保護構造を適用した風車翼を示す概略図であり、(a)は後縁側から見た図、(b)は圧力面側から見た図である。
図2に非限定的に例示するように、本開示の少なくとも一実施形態に係る風車翼保護構造1は、落雷からの風車翼3の保護構造であって、風車翼3の表面10の一部を覆うように配置された導電性金属箔37(図4及び図5参照)を含む保護層20を備えている。
上記保護層20は、風車翼3の翼根13Aから翼先端部14に亘り風車翼3の後縁16に沿って翼長方向に延在する長尺部30を含む(図2(a)及び図2(b)参照)。
【0042】
このような構成によれば、導電性金属箔37を含む保護層20が風車翼3の翼根13Aから翼先端部14に亘って翼長方向に延在することにより、風車翼3において被雷し易いとされる翼先端部14では保護層20自体が落雷に対するレセプタとして機能するとともに、翼先端部14から翼根13Aに亘っては上記保護層20自体が雷電流を導くダウンコンダクタとして機能する。つまり、風車翼3内部での作業を必要とせず、風車翼3の表面10に保護層20を設けるという簡易な構成で既存又は新設の風車翼3にレセプタとダウンコンダクタの両方の機能を持たせることができる。よって、簡易な構成により風車翼3の耐雷性能の向上を図ることができる。また、風車翼3の後縁16に沿って保護層20を配置することで、例えば前縁15側に配置する場合に比べて保護層20に対する風の影響を低減することができるから、耐雷性能を安定して発揮し得る風車翼保護構造1を提供することができる。
【0043】
幾つかの実施形態において、保護層20は、風車翼3の圧力面11に配置されていてもよい(図2(a)及び図2(b)参照)。
このように保護層20を圧力面11に配置すれば、風車翼3の圧力面11に作用する風圧により風車運転の際は保護層20を風車翼3に押し付けることができるから、風車翼3から保護層20が剥離することを防止し、耐雷性能を安定して発揮し得る風車翼保護構造1を提供することができる。
【0044】
幾つかの実施形態において、保護層20は、長尺部30と導通するように風車翼3の翼根部13の全周に亘って配置された環状部40を含んでもよい(図2(a)及び図2(b)参照)。
このように、上記長尺部30と導通するようにして翼根部13に環状に保護層20を配置することにより、風車翼3のピッチ角によらず翼根部13から該翼根部13が取り付けられるハブ5を介して雷電流を円滑に案内することができる。
【0045】
幾つかの実施形態において、保護層20は、その後縁16側の端部(後縁側端部32)が後縁16から所定距離(例えばD1)離れて配置されていてもよい(図2(b)及び図6参照)。
このようにすれば、保護層20の後縁側端部32が風車翼3の後縁16から所定距離D1離れて配置されるから、保護層20の後縁側端部32が風車翼3の後縁16より後流側にはみ出したり、当該保護層20が配置される風車翼3の圧力面11又は負圧面12の一方の面から他方の面にかけて保護層20が折り返されて延在したりすることがない。よって、風車翼3の表面10から保護層20が剥離することをより適切に防止することができる。
【0046】
図4は一実施形態に係る風車翼保護構造の構成例を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるB−B断面を示す図である。図5は一実施形態に係る風車翼保護構造の構成例を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図4及び図5に非限定的に例示するように、保護層20は、長手方向と交差する方向に所定幅(例えばD2)を有する複数の保護層セグメント33が上記長手方向に接続されてなる接続部36(図2(b)参照)を含んでいてもよい。
接続部36は、長手方向の一方と他方とに配置された第1及び第2の前記保護層セグメント33における各々の端部が対向配置されることで互いの導電性金属箔37が当接され得る。
【0047】
このようにすれば、複数の保護層セグメント33が接続部36において長手方向に接続されることで保護層20が構成される。つまり、翼根13Aから翼先端部14に亘って配置される保護層20を、一体ではなく分割されたセグメントとして扱うことができるから、当該保護層20を設置する際の作業性の向上を図ることができる。また、長手方向の一方と他方とに配置された第1及び第2の保護層セグメント33における各々の端部が対向配置されることで互いの導電性金属箔37が当接されるから、保護層20自体の厚さが増加することを防止して該保護層20が風車翼3の空力性能に及ぼす影響を低減できるとともに、風によって当該保護層20が風車翼3の表面から剥離することを防止することができる。
【0048】
幾つかの実施形態において、接続部36は、風車翼3の翼表面10に張り付けられた導電性金属箔37上に、第1及び第2の保護層セグメント33の各々の接合端部35が配置されるように重ねて接着されて構成されていてもよい(図4(a)及び図4(b)参照)。
このようにすれば、接続部36における第1及び第2の保護層セグメント33間の導電性をより確実に確保することができる。よって、翼先端部14から翼根13Aに亘る保護層20の導電性を確保することができる。
【0049】
幾つかの実施形態において、接続部36は、長手方向と交差する方向に上記保護層20の幅(所定幅)超の長さを有し、対向配置された第1及び第2の保護層セグメント33の各々の端部35を覆うようにして第1及び第2の保護層セグメント33上に張り付けられた合成樹脂テープ39を含んでいてもよい(図4(a)及び図4(b)参照)。
このように、第1及び第2の保護層セグメント33の各々の接合端部35を、各保護層セグメント33の幅より長い合成樹脂テープ39で覆うことで、接続部36において各保護層セグメント33が風車翼3の表面から剥離することを効果的に防止することができるとともに、翼先端部14から翼根13Aに至る保護層20の導電性を確保することができる。
【0050】
幾つかの実施形態において、上記保護層セグメント33の所定幅D2は50〜300mmのうち任意に設定された幅であってもよい。このようにすれば、所定幅D2が50〜300mmの保護層セグメント33により、本開示で述べる保護層20の効果を享受することができる。
【0051】
幾つかの実施形態において、導電性金属箔37は、50〜300μmの厚さを有していてもよい。このようにすれば、50〜300μmのうち任意に設定された厚さを有する導電性金属箔37により、本開示で述べる保護層20の効果を享受することができる。
【0052】
幾つかの実施形態において、風車翼保護構造1は、風車翼3の翼先端14Aから翼長Lの35%以内の範囲に、保護層20のうち風車翼3の前縁15に近い前縁側端部31に沿って該前縁側端部31を覆う剥離防止コーティング50を備えていてもよい(図2(b)、図3図5(a)及び図5(b)参照)。
このようにすれば、翼根13A側に比べて周速の速い翼先端14A側では、翼先端14Aから翼長Lの35%以内の範囲において保護層20の前縁側端部31が剥離防止コーティング50で覆われる。よって、風の影響により保護層20の前縁側端部31が風車翼3の表面10から剥離することを適切に防止することができる。
【0053】
幾つかの実施形態において、導電性金属箔37は、金属テープ、金属メッシュ又は金属層から構成されていてもよい。このようにすれば、金属テープ、金属メッシュ又は金属層から構成された導電性金属箔37により、本開示で述べる保護層20の効果を享受することができる。
【0054】
続いて、本開示の少なくとも一実施形態に係る風車翼保護構造の形成方法について説明する。本開示の少なくとも一実施形態に係る風車翼保護構造の形成方法は、落雷から風車翼3を保護する風車翼保護構造1の形成方法であって、風車翼3の表面10の一部を覆うようにして導電性金属箔37を含む保護層20を配置するステップを備えている。
上記保護層を配置するステップでは、風車翼3の翼根13Aから翼先端部14に亘り風車翼3の後縁16に沿って翼長方向に延在する長尺部30を形成するようにして保護層20を配置する。
【0055】
このような方法によれば、上述したように、導電性金属箔37を含む保護層20が風車翼3の翼根13Aから翼先端部14に亘って翼長方向に延在することにより、風車翼3において被雷し易いとされる翼先端部14では保護層20自体が落雷に対するレセプタとして機能するとともに、翼先端部14から翼根13Aに亘っては上記保護層20自体が雷電流を導くダウンコンダクタとして機能する。つまり、風車翼3内部での作業を必要とせず、風車翼3の表面10に保護層20を設けるという簡易な方法で既存又は新設の風車翼3にレセプタとダウンコンダクタの両方の機能を持たせることができる。よって、簡易な方法により風車翼3の耐雷性能の向上を図ることができる。また、風車翼3の後縁16に沿って保護層20を配置することで、例えば前縁15側に配置する場合に比べて保護層20に対する風の影響を低減することができるから、耐雷性能を安定して発揮し得る風車翼保護構造1の形成方法を提供することができる。
【0056】
幾つかの実施形態では、保護層20を配置するステップにおいて、風車翼3の圧力面11に保護層20を配置してもよい。このようにすれば、風車翼3の圧力面11に作用する風圧により風車運転の際は保護層20を風車翼3に押し付けることができる。よって、風車翼3から保護層20が剥離することを防止し、耐雷性能を安定して発揮し得る風車翼保護構造の形成方法を提供することができる。
【0057】
幾つかの実施形態では、保護層20を配置するステップにおいて、長尺部30と導通するように風車翼3の翼根部13の全周に亘って環状部40を形成するようにして保護層20を配置してもよい。このようにすれば、上記長尺部30と導通するようにして翼根部13に環状に保護層20を配置することにより、風車翼3のピッチ角によらず翼根部13から該翼根部13が取り付けられるハブ5を介して雷電流を円滑に案内することができる。
【0058】
幾つかの実施形態では、保護層20を配置するステップにおいて、長手方向と交差する方向に所定幅を有する複数の保護層セグメント33を長手方向に接続してなる接続部36を含むように保護層20を配置してもよい。
接続部36は、長手方向の一方と他方とに配置する第1及び第2の前記保護層セグメント33における各々の端部を対向配置することで互いの導電性金属箔を当接させてもよい。
【0059】
このようにすれば、複数の保護層セグメント33が接続部36において長手方向に接続されることで保護層20が構成される。つまり、翼根13Aから翼先端部14に亘って配置される保護層20を、一体ではなく分割されたセグメントとして扱うことができるから、当該保護層20を設置する際の作業性の向上を図ることができる。また、長手方向の一方と他方とに配置された第1及び第2の保護層セグメント33における各々の端部が対向配置されることで互いの導電性金属箔37が当接されるから、保護層20自体の厚さが増加することを防止して該保護層20が風車翼3の空力性能に及ぼす影響を低減できるとともに、風によって当該保護層20が風車翼3の表面10から剥離することを防止することができる。
【0060】
上述した本開示の少なくとも一実施形態によれば、簡易な構成又は方法により既存又は新設の風車翼3の耐雷性能の向上を図ることができる。
【0061】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変更を加えた形態や、これらの形態を組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0062】
1 風車翼保護構造
2 風車
3 風車翼
4 風車ロータ
5 ハブ
6 ナセル
7 タワー
8 基礎
10 表面(翼表面)
11 圧力面(正圧面)
12 吸込面(負圧面)
13 翼根部
13A 翼根
14 翼先端部
14A 翼先端
15 前縁
16 後縁
17 レセプタ
18 ダウンコンダクタ
20 保護層
30 長尺部
31 前縁側端部
32 後縁側端部
33 保護層セグメント
33A 第1保護層セグメント
33B 第2保護層セグメント
35 接合端部
36 接続部
37 導電性金属箔(金属製薄膜)
38 接続部
39 合成樹脂テープ
40 環状部
50 剥離防止コーティング
L 翼長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2019年8月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
落雷からの風車翼の保護構造であって、
前記風車翼の表面の一部を覆うように配置された導電性金属箔を含む保護層を備え、
前記保護層は、前記風車翼の翼根から翼先端部に亘り前記風車翼の後縁に沿って翼長方向に延在する長尺部を含み、
前記風車翼の翼先端から翼長の35%以内の範囲に、前記保護層のうち前記風車翼の前縁に近い前縁側端部に沿って該前縁側端部を覆う剥離防止コーティングを備える
ことを特徴とする風車翼保護構造。
【請求項2】
前記保護層は、前記風車翼の圧力面に配置されている
請求項1に記載の風車翼保護構造。
【請求項3】
前記保護層は、前記長尺部と導通するように前記風車翼の翼根部の全周に亘って配置された環状部を含む
請求項1又は2に記載の風車翼保護構造。
【請求項4】
前記保護層は、その前記後縁側の端部が前記後縁から所定距離離れて配置されている
請求項1〜3の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項5】
前記保護層は、長手方向と交差する方向に所定幅を有する複数の保護層セグメントが前記長手方向に接続されてなる接続部を含み、
前記接続部は、前記長手方向の一方と他方とに配置された第1及び第2の前記保護層セグメントにおける各々の端部が対向配置されることで互いの前記導電性金属箔が当接される
請求項1〜4の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項6】
落雷からの風車翼の保護構造であって、
前記風車翼の表面の一部を覆うように配置された導電性金属箔を含む保護層を備え、
前記保護層は、前記風車翼の翼根から翼先端部に亘り前記風車翼の後縁に沿って翼長方向に延在する長尺部を含み、
前記保護層は、長手方向と交差する方向に所定幅を有する複数の保護層セグメントが前記長手方向に接続されてなる接続部を含み、
前記接続部は、前記長手方向の一方と他方とに配置された第1及び第2の前記保護層セグメントにおける各々の端部が対向配置されることで互いの前記導電性金属箔が当接され、
前記接続部は、前記風車翼の翼表面に張り付けられた前記導電性金属箔上に、前記第1及び第2の保護層セグメントの各々の接合端部が配置されるように重ねて接着されて構成されてい
車翼保護構造。
【請求項7】
落雷からの風車翼の保護構造であって、
前記風車翼の表面の一部を覆うように配置された導電性金属箔を含む保護層を備え、
前記保護層は、前記風車翼の翼根から翼先端部に亘り前記風車翼の後縁に沿って翼長方向に延在する長尺部を含み、
前記保護層は、長手方向と交差する方向に所定幅を有する複数の保護層セグメントが前記長手方向に接続されてなる接続部を含み、
前記接続部は、前記長手方向の一方と他方とに配置された第1及び第2の前記保護層セグメントにおける各々の端部が対向配置されることで互いの前記導電性金属箔が当接され、
前記接続部は、前記長手方向と交差する方向に前記所定幅超の長さを有し、対向配置された前記第1及び第2の保護層セグメントの各々の前記端部を覆うようにして前記第1及び第2の保護層セグメント上に張り付けられた合成樹脂テープを含
車翼保護構造。
【請求項8】
前記所定幅は、50〜300mmである
請求項5〜7の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項9】
前記導電性金属は、50〜300μmの厚さを有する
請求項1〜8の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項10】
前記風車翼の翼先端から翼長の35%以内の範囲に、前記保護層のうち前記風車翼の前縁に近い前縁側端部に沿って該前縁側端部を覆う剥離防止コーティングを備える
請求項6又は7に記載の風車翼保護構造。
【請求項11】
前記導電性金属箔は、金属テープ、金属メッシュ又は金属層からなる
請求項1〜10の何れか一項に記載の風車翼保護構造。
【請求項12】
落雷から風車翼を保護する請求項1乃至11の何れか一項に記載の風車翼保護構造の形成方法であって、
前記風車翼の表面の一部を覆うようにして導電性金属箔を含む保護層を配置するステップを備え、
前記保護層を配置するステップでは、前記風車翼の翼根から翼先端部に亘り前記風車翼の後縁に沿って翼長方向に延在する長尺部を形成するようにして前記保護層を配置する
ことを特徴とする風車翼保護構造の形成方法。
【請求項13】
前記保護層を配置するステップでは、前記風車翼の圧力面に前記保護層を配置する
請求項12に記載の風車翼保護構造の形成方法。
【請求項14】
前記保護層を配置するステップでは、前記長尺部と導通するように前記風車翼の翼根部の全周に亘って環状部を形成するようにして前記保護層を配置する
請求項12又は13に記載の風車翼保護構造の形成方法。
【請求項15】
前記保護層を配置するステップでは、長手方向と交差する方向に所定幅を有する複数の保護層セグメントを前記長手方向に接続してなる接続部を含むように前記保護層を配置し、
前記接続部は、前記長手方向の一方と他方とに配置する第1及び第2の前記保護層セグメントにおける各々の端部を対向配置することで互いの前記導電性金属箔を当接させる
請求項12〜14の何れか一項に記載の風車翼保護構造の形成方法。