【課題】少なくとも1枚は回転の軸方向の重心位置が異なる複数の翼(40a〜40c)を有する羽根車(30)の重心位置をバランサー(50)で回転軸上に合わせて羽根車(30)の回転を安定させる。
【解決手段】複数のバランサー(50)を、羽根車(30)の軸方向と直交する周方向の異なる位置かつ軸方向に異なる位置で、羽根車(30)の偶力振動を軽減する位置に設ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
羽根車には、重心を回転中心に合わせるためにバランサー(バランスウェイト)が設けられるが、回転の軸方向の重心位置が異なる翼を有する羽根車において、羽根車の全体としての重心位置を回転軸上に合わせるのは容易ではない。
【0005】
本開示の目的は、少なくとも1枚は回転の軸方向の重心位置が異なる複数の翼を有する羽根車の重心位置をバランサーで回転軸上に合わせて羽根車の回転を安定させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、
少なくとも1枚は回転の軸方向の重心位置が異なる複数の翼(40a〜40c)を有する羽根車(30)と、
前記羽根車(30)の偶力振動を軽減する複数のバランサー(50)と、を備え、
前記複数のバランサー(50)は、前記羽根車(30)の前記軸方向と直交する周方向の異なる位置かつ前記軸方向に異なる位置に配置されている
ことを特徴とする。
【0007】
第1の態様では、複数のバランサー(50)が、羽根車(30)の前記軸方向と直交する周方向の異なる位置かつ前記軸方向に異なる位置であって、かつ羽根車(30)の偶力振動を軽減する位置に配置される。したがって、羽根車(30)の重心位置のずれが抑制され、回転が安定する。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、
前記羽根車(30)を回転軸の軸方向から見て直交座標系の任意の横軸と縦軸をx軸とy軸に設定し、
前記羽根車(30)の回転時の各翼(40a〜40c)の重心の遠心力の合計をFbとし、各翼(40a〜40c)の重心の軸方向距離をLbとし、各バランサー(50)の遠心力の合計をFwとし、各バランサー(50)の軸方向距離をLwとすると、
FbとLbとの積のx軸成分と、FwとLwとの積のx軸成分とが実質的に等しくなり、且つFbとLbとの積のy軸成分と、FwとLwとの積の合計のy軸成分とが実質的に等しくなって、翼(40a〜40c)とバランサー(50)とがx軸とy軸の両方で偶力バランスするように、前記各バランサー(50)の周方向位置と軸方向位置が定められている
ことを特徴とする。
【0009】
第2の態様では、翼(40a〜40c)の重心の遠心力の合計Fbとその重心の軸方向距離Lbとの積のx軸成分と、バランサー(50)の遠心力の合計Fwとその軸方向距離Lwとの積のx軸成分が実質的に等しくなるため、羽根車(30)のx軸方向の傾きが抑制される。同様に、翼(40a〜40c)の重心の遠心力の合計Fwと重心の軸方向距離Lbとの積のy軸成分と、バランサー(50)の遠心力の合計Fwとその軸方向距離Lwとの積のy軸成分が実質的に等しくなるため、羽根車(30)のy軸方向の傾きも抑制される。よって、羽根車(30)の偶力振動が抑制され、羽根車(30)が安定して回転する。
【0010】
本開示の第3の態様は、第1または第2の態様において、
前記複数の翼(40a〜40c)は、前記軸方向の重心位置が異なり、各翼(40a〜40c)が不等ピッチで配置されている
ことを特徴とする。
【0011】
ここで、複数の翼(40a〜40c)の重心位置が異なり、各翼(40a〜40c)が不等ピッチで配置された羽根車(30)においては、偶力のアンバランスにより振動が生じやすい。これに対して、第3の態様では、効果的に偶力振動が抑えられ、羽根車(30)の回転が安定する。
【0012】
本開示の第4の態様は、第1から第3の態様の何れか1つにおいて、
前記バランサー(50)は、前記羽根車(30)に装着されるバランスウェイト(60,70)、または前記羽根車(30)の一部に形成される切り欠き(80a)により構成されることを特徴とする。
【0013】
第4の態様では、羽根車(30)に装着されるバランスウェイト(60,70)や、羽根車(30)の一部に切り欠き(80a)を形成するだけで、翼(40a〜40c)の重心のずれを抑制し、羽根車(30)の回転を安定させることができる。
【0014】
本開示の第5の態様は、第4の態様において、
前記バランサー(50)は、前記羽根車(30)に装着される複数のバランスウェイト(60,70)であり、
前記羽根車(30)は、前記複数のバランスウェイト(60,70)が前記軸方向へ異なる位置に装着される前記軸方向の高さの異なるバランサー(50)取付部を有している
ことを特徴とする。
【0015】
第5の態様では、羽根車(30)に複数のバランスウェイト(60,70)を装着し、それぞれを軸方向へ異なる位置に配置することにより、翼(40a〜40c)の重心のずれを抑制し、羽根車(30)の回転を安定させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態の送風機(10)について図面を参照しながら説明する。
【0018】
〈全体構成〉
送風機(10)は、例えば空気調和機の室外ユニットに適用され、室外ユニット内の室外熱交換器に送風するのに用いられる。この送風機(10)は、軸流送風機であるプロペラファンで構成されている。
図1に示すように、送風機(10)は、電動機(11)と、電動機(11)によって回転駆動される回転軸(20)と、回転軸(20)に連結された羽根車(30)とを備えている。
【0019】
〈羽根車〉
図1,
図2に示すように、羽根車(30)は、略円筒状の1つのハブ(31)と、ハブ(31)の外周面に支持される複数(この実施形態では3枚)の翼(40a〜40c)とを備えている。1つのハブ(31)と3枚の翼(40a〜40c)とは、一体に形 成されている。羽根車(30)の材質は、例えば合成樹脂である。
【0020】
〈ハブ〉
図3は、ハブ(31)の断面図である。
図3に示すように、ハブ(31)は、外筒(32)、第1端板(33)、及びボス部(35)を有する。外筒(32)は、中空円筒状に形成されている。第1端板(33)は、外筒(32)と一体に形成され、外筒(32)の軸方向の一端側(電動機(11)と反対側)の開口を閉塞する。ボス部(35)は、第1端板(33)の内壁の中央部からハブ(31)の内方へ突出している。ボス部(35)は、ハブ(31)の中心に形成され、送風機(10)の回転中心となる電動機(11)の回転軸(20)に連結される。
【0021】
図2に示すように、ハブ(31)は、放射状にのびる6枚の第1リブ(36)を有している。第1リブ(36)は、後述のバランサー(バランスウェイト)(50)を取り付けるための第1のウェイト取付部(51)として用いられている。
【0022】
この第1リブ(36)は、それぞれ、ハブ(31)の径方向線上に形成された板状の部分である。第1リブ(36)は、ボス部(35)の外周面から外筒(32)の内周面まで形成されていて、かつボス部(35)側の高さ寸法より外筒(32)側の高さ寸法が大きい板状の部分である。第1リブ(36)には、バランサー(50)が、第1リブの外筒(32)寄りの位置に装着されている。
【0023】
ハブ(31)には、各第1リブ(36)の間に、
図2及び
図4に示すように、外筒(32)の内面と第1端板(33)で形成される角部に、高さの低い複数枚の第2リブ(37)が形成されている。第2リブ(37)は、バランサー(50)を取り付けるための第2のウェイト取付部(52)として用いられている。各第2リブ(37)は、第1リブ(36)より長さが短く、ハブ(31)の径方向にのびる平板状の部分である。
【0024】
〈翼〉
図2に示すように、翼(40a〜40c)は、ハブ(31)の外周面から外側へ突出するように配置されている。3枚の翼(40a〜40c)は、ハブ(31)の周方向に所定の間隔をおいて配置されている。各翼(40a〜40c)は、羽根車(30)の径方向の外側に向かって広がる形状となっている。
【0025】
各翼(40a〜40c)は、羽根車(30)の径方向の中心側(即ち、ハブ(31)側)の端部が翼元(41a〜41c)であり、羽根車(30)の径方向の外側の端部が翼端(42a〜42c)である。各翼(40a〜40c)の翼元(41a〜41c)は、ハブ(31)に接合されている。
【0026】
各翼(40a〜40c)は、羽根車(30)の回転方向の前側の縁部が前縁(43a〜43c)であり、羽根車(30)の回転方向の後側の縁部が後縁(44a〜44c)である。各翼(40a〜40c)の前縁(43a〜43c)及び後縁(44a〜44c)は、翼元(41a〜41c)から翼端(42a〜42c)へ向かって羽根車(30)の外周側へ延びている。
【0027】
各翼(40a〜40c)は、羽根車(30)の回転中心である回転軸(20)と直交する平面に対して傾いている。各翼(40a〜40c)は、羽根車(30)の回転方向の前側の面が正圧面になり、羽根車(30)の回転方向の後側の面が負圧面になるよう構成されている。
【0028】
本実施形態の羽根車(30)では、各翼(40a〜40c)の周方向ピッチ(θ1,θ2,θ3)が互いに異なっている。つまり、この羽根車(30)は、不等ピッチで配置された複数の翼(40a〜40c)を有している。一方、各翼(40a〜40c)は、羽根車(30)の重心を羽根車(30)の回転軸(20)に近づけるように、それぞれの形状や厚さ寸法が互いに異なっているため、少なくとも1枚の翼は回転の軸方向の重心位置が他の翼とは異なる。なお、各翼(40a〜40c)の具体的な形状や厚さ寸法は、ハブ(31)と各翼(40a〜40c)の形状や大きさ、各翼(40a〜40c)の周方向ピッチ(θ1,θ2,θ3)、さらには求められる重心位置など、羽根車(30)の各部の具体的な値に応じて設計される。
【0029】
〈バランサー〉
図5〜
図8は、バランサー(50)の構成を示す図である。この実施形態のバランサー(50)は、U字形状をした二股クリップ状のバランスウェイトにより構成されている、このバランサー(50)は、二枚を重ねて使用できる構造であって、内側の部材であるサイズの小さな主バランスウェイト(60)と、外側の部材であるサイズの大きな補助バランスウェイト(70)とから構成されている。なお、
図5〜
図8は、U字状の湾曲部分を上方にして表しており、
図3においてハブ(31)に装着した状態と上下が反転している。
【0030】
〈主バランスウェイト〉
主バランスウェイト(60)は、
図5に示すように補助バランスウェイト(70)と組み合わせて使用することもでき、
図6に示すように単独で使用することもできるバランスウェイトであり、前記羽根車(30)(具体的にはウェイト取付部(51,52))に取り付け可能に構成されている。主バランスウェイト(60)は、弾性を有する金属の板材で形成されている。
【0031】
主バランスウェイト(60)は、第1脚部(61)と、第2脚部(62)と、湾曲部(63)とを有している。第1脚部(61)は第1方向(
図7A参照)に延びている。第2脚部(62)は、第1方向と直交またはほぼ直交する第2方向において前記第1脚部と対向している。湾曲部(63)は、U字形状に湾曲し、前記第1方向の一端において前記第1脚部(61)と前記第2脚部(62)とに連続している。第1脚部(61)と第2脚部(62)の他端側(湾曲部(63)の反対側)は開放端であり、湾曲部(63)側の端部から開放端へ向かってわずかに間隔が狭くなるように第1脚部(61)と第2脚部(62)が傾斜している。主バランスウェイト(60)は、
図5,
図6に示すように、第1脚部(61)と第2脚部(62)でウェイト取付部(51,52)を挟み込むことにより、ウェイト取付部(51,52)に装着されている。
【0032】
主バランスウェイト(60)は、主バランスウェイト(60)とは別の部材である補助バランスウェイト(70)が係合可能な第1係合部(64)を有している。この実施形態では、第1係合部(64)は、第1脚部(61)において第2脚部(62)と対向しない側の面、つまり主バランスウェイト(60)の外側の面から前記第2方向に突出する半球状の凸部により構成されている。この第1係合部(64)は、主バランスウェイト(60)をプレス加工することにより形成されている。
【0033】
なお、補助バランスウェイト(70)には、第1係合部(64)と係合する第2係合部(74)が形成されている。補助バランスウェイト(70)の具体的な構成は後述する。
【0034】
第1脚部(61)及び第2脚部(62)は、第1脚部(61)及び第2脚部(62)の前記第1方向の長さ寸法(L)が、前記第1方向と前記第2方向とに直交する直交方向の長さ寸法、つまり幅寸法(W)よりも長い。そして、前記第1係合部(64)は、前記第1方向における前記第1脚部の中心に配置されている。第1係合部(64)は、前記第1方向における前記第1脚部の中心位置よりも前記第1脚部の前記湾曲部とは反対の端部側(
図7Aにおいて第1脚部の高さ方向の中心から下方の位置)に配置してもよい。
【0035】
主バランスウェイト(61)は、第1脚部(61)に形成された第1係止部(65)と、第2脚部(62)に形成された第2係止部(66)とを有している。
図7A〜
図7Cに示すように、第1係止部(65)は、前記第2方向において第1脚部(61)から第2脚部(62)へ近づく方向へのび、かつ先端部が湾曲部(63)へ向かって傾斜している。第2係止部(66)は、前記第2方向において第2脚部(62)から第1脚部(61)へ近づく方向へのび、かつ先端部が湾曲部(63)へ向かって傾斜している。第1係止部(65)と第2係止部(66)は、第1脚部(61)と第2脚部(62)との間で互いに向かい合うように突出する角形の突起を形成している。
【0036】
第1係止部(65)と第2係止部(66)は、前記第1方向と前記第2方向とに直交する直交方向において、前記第1係止部(65)と前記第2係止部(66)が対向しない位置に配置されている。つまり、第1係止部(65)と第2係止部(66)は、
図7Aにおいて、主バランスウェイト(60)の幅方向へ互いに位置がずれている。
【0037】
具体的には、第1係止部(65)は第1脚部(61)における
図7A及び
図7Bの右側の端部に形成され、第2係止部(66)は第2脚部(62)における
図7A及び
図7Bの左側の端部に形成されている。言い換えると、前記第1係止部(65)は、前記第1方向と前記第2方向とに直交する直交方向における端部に配置されている。また、前記第2係止部(66)は、前記直交方向における端部に配置されている。この実施形態では、第1脚部(61)と第2脚部(62)の幅寸法は同じである。ただし、第1脚部(61)と第2脚部(62)の幅寸法は互いに異なっていてもよい。
【0038】
上記構成では、ウェイト取付部(52)である第2リブ(37)を成形する際にできる抜き勾配に対して、第1係止部(65)と第2係止部(66)が異なる位置で係止する。したがって、主バランスウェイト(61)がウェイト取付部(52)から外れにくくなる。
【0039】
〈補助バランスウェイト〉
図8A及び
図8に示す補助バランスウェイト(70)は、第3脚部(71)と、第4脚部(72)と、第2湾曲部(73)とを有している。第3脚部(71)は、前記第1方向に延びている。第4脚部(72)は、前記第2方向において前記第3脚部と対向している。第2湾曲部(73)は、U字形状に湾曲し、前記第1方向の一端において前記第3脚部(71)と前記第4脚部(72)とに連続している。補助バランスウェイト(70)は、第3脚部(71)と第4脚部(72)における第2湾曲部(73)の反対側が開放端であり、第2湾曲部(73)側から開放端側へ向かってわずかに間隔が狭くなるように、第3脚部(71)と第4脚部(72)が傾斜している。前記第1脚部(61)と前記第2脚部(62)とを前記補助バランスウェイト(70)で挟んだときに、前記第1係合部(64)と係合可能な第2係合部(74)を有している。
【0040】
補助バランスウェイト(70)には、主バランスウェイト(60)の第1係合部(64)と係合する第2係合部(74)が形成されている。第2係合部(74)は、第3脚部(71)と第4脚部(72)の両方に形成されている。主バランスウェイト(60)の第1係合部(64)が、前記第1脚部(61)の前記第2脚部(62)と対向しない側の面から前記第2方向に突出する半球状の凸部であるのに対して、第2係合部(74)は、第1係合部(64)と係合する円形の開口である。
【0041】
補助バランスウェイト(70)の第4脚部(72)の開放側の先端部分には、外側に向かって傾斜したガイド部(75)が形成されている。このガイド部(75)を設けることにより、第3脚部(71)と第4脚部(72)の間隔が主バランスウェイト(60)の湾曲部(63)の外径よりも広くなり、主バランスウェイト(60)に対する補助バランスウェイト(70)の取り付け容易性が高められている。
【0042】
〈バランサーの取り付け位置〉
本実施形態の羽根車では、前記複数のバランサーは、前記羽根車の偶力振動を軽減する位置に取り付けられている。そのため、複数のバランサーは、羽根車の前記軸方向と直交する周方向の異なる位置で、かつ前記軸方向にも異なる位置に配置されている。
【0043】
前記バランサーの具体的な配置は以下のようになっている。
【0044】
まず、
図9において、羽根車(30)を回転軸の軸方向から見た平面図である
図9で、直交座標系の任意の横軸と縦軸をx軸とy軸に設定する。図では、羽根車の各翼の重心(G1,G2,G3)の遠心力をFb1、Fb2,Fb3と表し、各バランサーの遠心力をFw1,Fw2,Fw3と表している。また、羽根車(30)の側面図である
図10で、各翼の軸方向の重心間距離をLb(Lb=|Lb3−Lb2|)とし、各バランサーの軸方向の重心間距離をLw(図示省略)とする。なお、
図10では、各重心(G1,G2,G3)の軸方向の位置のずれを誇張している。
【0045】
本実施形態では、FbとLbとの積のx成分と、FwとLwとの積のx成分とが実質的に等しくなり、且つFbとLbとの積のy成分と、FwとLwとの積の合計のy成分とが実質的に等しくなって、翼とバランサーとがx軸とy軸の両方で偶力バランスするように、前記各バランサーの周方向位置と軸方向位置が定められている。したがって、本実施形態では、翼(40a〜40c)とバランサー(50)により生じるx軸方向の偶力とy軸方向の偶力の両方がバランスする。
【0046】
このように、x軸方向の偶力とy軸方向の偶力の両方をバランスさせるために、上述したように、本実施形態の羽根車(30)のハブ(31)には、複数のバランサー(50)が軸方向の異なる高さに装着されており、そのために、軸方向の高さの異なるウェイト取付部(51,52)が設けられている。
【0047】
−実施形態の作用・効果−
本実施形態では、少なくとも1枚は回転の軸方向の重心位置が異なる複数の翼(40a〜40c)を有する羽根車(30)と、前記羽根車(30)の偶力振動を軽減する複数のバランサー(50)を設け、前記複数のバランサー(50)を、前記羽根車(30)の前記軸方向と直交する周方向の異なる位置かつ前記軸方向に異なる位置に配置している。
【0048】
具体的には、前記羽根車(30)を回転軸の軸方向から見て直交座標系の任意の横軸と縦軸をx軸とy軸に設定し、前記羽根車(30)の回転時の各翼(40a〜40c)の重心の遠心力の合計をFbとし、各翼(40a〜40c)の重心の軸方向距離をLbとし、各バランサー(50)の遠心力の合計をFwとし、各バランサー(50)の軸方向距離をLwとすると、FbとLbとの積のx軸成分と、FwとLwとの積のx軸成分とが実質的に等しくなり、且つFbとLbとの積のy軸成分と、FwとLwとの積の合計のy軸成分とが実質的に等しくなって、翼(40a〜40c)とバランサー(50)とがx軸とy軸の両方で偶力バランスするように、前記各バランサー(50)の周方向位置と軸方向位置を定めている。
【0049】
本実施形態によれば、翼(40a〜40c)の重心の遠心力の合計Fbとその重心の軸方向距離Lbとの積のx軸成分と、バランサー(50)の遠心力の合計Fwとその軸方向距離Lwとの積のx軸成分が実質的に等しくなり、羽根車(30)のx軸方向の傾きが抑制される。同様に、翼(40a〜40c)の重心の遠心力の合計Fwと重心の軸方向距離Lbとの積のy軸成分と、バランサー(50)の遠心力の合計Fwとその軸方向距離Lwとの積のy軸成分が実質的に等しくなるため、羽根車(30)のy軸方向の傾きも抑制される。
【0050】
従来は、少なくとも1枚は回転の軸方向の重心位置が異なる複数の翼を有する羽根車の重心位置をバランサーで回転軸上に合わせて羽根車の回転を安定させることが困難であった。これに対して、本実施形態によれば、上述したように羽根車のx軸方向の傾きとy軸方向の傾きの両方が抑制される。したがって、本実施形態によれば、羽根車(30)の偶力振動が抑制され、羽根車(30)が安定して回転する。
【0051】
ここで複数の翼(40a〜40c)の軸方向の重心位置が異なり、各翼(40a〜40c)が不等ピッチで配置されている羽根車(30)においては、偶力のアンバランスにより振動が生じやすいのに対して、本実施形態によれば、効果的に偶力振動が抑えられ、羽根車(30)の回転が安定する。
【0052】
本実施形態によれば、羽根車(30)に装着されるバランスウェイト(60,70)を用いて、羽根車(30)の回転を安定させることができる。特に、第1バランスウェイト(60)を単独で用いたり、第1バランスウェイト(60)と第2バランスウェイト(70)を組み合わせて用いたりするとともに、バランスウェイト(60,70)を装着する位置を適宜設定することにより、翼(40a〜40c)の重心のずれを抑制し、羽根車(30)の回転を十分に安定させることが可能になる。
【0053】
−実施形態の変形例−
〈変形例1〉
前記実施形態において、第1係合部(64)は、凸部のほかに、凹部、切欠き、開口など、形状を変更してもよい。また、第2係合部(74)も、第1係合部(64)と係合する形状であれば、前記実施形態の開口に限らず、凸部、凹部、切欠きなど、形状を変更してもよい。
【0054】
〈変形例2〉
前記実施形態では、バランサー(50)を、バランスウェイト(60,70)により構成しているが、バランサー(50)は、
図11に示すように、羽根車(30)の一部(例えばハブ(31)の外筒(32)に形成される切り欠き(80a)や、厚肉部(80b)により構成してもよい。この場合、
図3の第1リブ(36)にも適宜切り欠き(80a)や厚肉部(80b)を形成することにより、偶力バランスを調整することができる。
【0055】
このように構成すれば、羽根車(30)に切り欠き(80a)や厚肉部(80b)を形成するだけで、羽根車(30)の回転を安定させることができる。
【0056】
この変形例2では、バランサー(50)が羽根車(30)と一体であるため、羽根車(30)の回転中にバランサー(50)の位置がずれない。したがって、設定した重心位置が回転中にずれてしまうのを抑制できる。
【0057】
その他の作用効果は前記実施形態と同様である。
【0058】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0059】
前記実施形態や変形例では、羽根車(30)に別部材のウェイト(51)をバランサー(50)として設けたり、ハブ(31)の一部の肉厚を変化させた厚肉部(52a)や薄肉部(52b)をバランサー(50)として設けたりする構成を採用しているが、各翼(40a〜40c)の肉厚や形状を部分的に変化させたり、各翼(40a〜40c)に別部材のウェイトを装着したりすることで、バランサー(50)を構成してもよい。
【0060】
前記実施形態では、各翼(40a〜40c)の肉厚や形状が互いに異なる不等ピッチの羽根車(30)について説明したが、羽根車(30)は、少なくとも1枚は形状が異なる複数の翼を有するものであればよく、必ずしも不等ピッチでなくてもよい。翼(40a〜40c)の枚数は3枚に限らず、4枚でもよいし、その他の枚数でもよい。
【0061】
前記実施形態では軸流送風機であるプロペラファンについて説明したが、本開示の技術はターボファンなど、他の形式の送風機にも適用できる。
【0062】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能である。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。