【実施例1】
【0024】
図1は、内燃機関のクランク軸を、ジャーナル部およびクランクピンでそれぞれ截断した模式図であり、ジャーナル部10、クランクピン12およびコンロッド14を示す。これら三部材の紙面奥行き方向での位置関係として、ジャーナル部10が紙面の奥側に、クランクピン12が手前側にあり、このクランクピン12は、他端にピストンを担持するコンロッド14の大端部ハウジング16で包囲されている。
【0025】
ジャーナル部10は、一対の半割軸受17、18から構成される主軸受19を介して、内燃機関のシリンダブロック下部(図示せず)に支持されている。図面で上側に位置する第1の半割軸受17に、周方向の全長に亘って周方向に延びる油溝17Gが内周面に形成されている。ジャーナル部10はその直径方向に貫通孔(潤滑油路)10aを有し、ジャーナル部10が矢印X方向に回転すると、貫通孔10aの両端の入口開口が交互に油溝17Gに連通する。図面で下側に位置する第2の半割軸受18に、部分的に周方向に延びる部分溝18Gが内周面に形成されている。
【0026】
ジャーナル部10、図示されないクランクアーム、およびクランクピン12を貫通して、貫通孔10aに連通する内部潤滑油路20がクランク軸内部に形成されている。
【0027】
クランクピン12は、一対の半割軸受22A、22Bから構成されるコンロッド軸受22を介して、コンロッド14の(コンロッド側大端部ハウジング16Aとキャップ側大端部ハウジング16Bから構成される)大端部ハウジング16に保持されている。
【0028】
図2〜
図9に、主軸受19を構成する一対の半割軸受17、18の詳細を示す。
図2の紙面上側の第1の半割軸受17は、ジャーナル部10の回転方向Xの前方側に配置される前方側周方向端面17A、および後方側に配置される後方側周方向端面17Bを有する。下側の第2の半割軸受18は、ジャーナル部10の回転方向Xの前方側に配置される前方側周方向端面18B、および後方側に配置される後方側周方向端面18Aを有する。第1の半割軸受17の前方側周方向端面17Aは第2の半割軸受18の後方側周方向端面18Aと突き合わされ、また第2の半割軸受18の前方側周方向端面18Bは第1の半割軸受17の後方側周方向端面17Bと突き合わされ、それによって円筒形状の主軸受19を構成している。
ところで、内燃機関のクランク軸は、運転時には一方向に回転する。このため当業者であれば、クランク軸の回転方向を考慮し、第1の半割軸受17の周方向両端面のうち、どちらが「ジャーナル部10の回転方向Xの前方側に配置される前方側周方向端面17A」であり、どちらが「ジャーナル部10の回転方向Xの後方側に配置される後方側周方向端面17B」であるか認定することができよう。同じく、当業者であれば第2の半割軸受18の「ジャーナル部10の回転方向Xの前方側に配置される前方側周方向端面18B」および「ジャーナル部10の回転方向Xの後方側に配置される後方側周方向端面18A」も認定することができよう。また当業者であれば、本発明の開示にしたがって本発明の主軸受19を設計、製造し、これを一方向に回転するクランク軸を支承する軸受装置に適切に組み付けることが可能である。
【0029】
第1の半割軸受17の前方側周方向端面17Aおよび後方側周方向端面17Bは、その内周面側に、軸線方向の全長に亘って面取りの態様で形成された傾斜面17C、17Dをそれぞれ有し、また第2の半割軸受18の前方側周方向端面18Bおよび後方側周方向端面18Aは、その内周面側に、軸線方向の全長に亘って同様に形成された傾斜面18D、18Cをそれぞれ有し、それによって半割軸受17、18の接合部(または突合せ部)には軸線方向溝24A、24Bが形成される。
【0030】
図2および
図3から理解されるように、第1の半割軸受17の内周面17Sに形成された油溝17Gは、第1の半割軸受17の内周面の周方向の全長に亘って延びており、第1の半割軸受17の周方向両端面17A、17Bに開口している。なお、本実施例では、油溝17Gは、周方向の全長に亘って、第1の半割軸受17の内周面17Sからの溝深さが一定になされている。しかし、これに限定されないで、油溝17Gの溝深さは、周方向で変化していてもよい。また油溝17Gの最大溝深さは、例えば乗用車用の小型の内燃機関の場合、一般的に0.5〜2.5mm程度であるが、本発明はこれに限定されない。また本実施例では、油溝17Gは、主軸受の軸線方向断面内において矩形断面形状を有するが、他の断面形状であってもよい。
【0031】
図3から理解されるように、油溝17Gは第1の半割軸受17の軸線方向長さ(軸受幅)の中央に配置される。油溝17Gの底部には第1の半割軸受17を径方向に貫通する貫通口(図示せず)が形成され、潤滑油は、シリンダブロックの壁内のオイルギャラリーから、この貫通口を通して油溝17G内に供給される。潤滑油の一部はその後、ジャーナル部10の矢印X方向の回転にしたがって油溝17G内を回転方向前方へ流れ、潤滑油の他の一部は油溝17G内を回転方向と反対方向に流れる。第1の半割軸受17はまた、油溝17Gの幅W1の中央がジャーナル部10の潤滑油路10aの入口開口26の中心と整合するように配置されているので(
図7は、
図6の回転位置にある入口開口26を破線で示す)、油溝17G内に供給された潤滑油は、入口開口26を通してコンロッド軸受22へとさらに流れることができる。ジャーナル部10の潤滑油路10aの入口開口26の寸法は、内燃機関の仕様により異なるが、例えば乗用車用の小型の内燃機関の場合、入口開口26の径寸法はφ5〜8mm程度である。
【0032】
図4および
図5から理解されるように、第2の半割軸受18の内周面18Sには周方向に延びる部分溝18Gが形成されており、部分溝18Gの周方向両端部18GF、18GRが第2の半割軸受18の内周面18Sに位置している。より詳細には、
図5に示すように、部分溝18Gの、クランク軸の回転方向Xの後方側の周方向端部18GRは、軸線方向溝24Aから第2の半割軸受18の周方向中央部C側へ向かって円周角度θ1で1°以上離間した内周面18S上に位置し、またクランク軸の回転方向Xの前方側の周方向端部18GFは、第2の半割軸受18の後方側周方向端面18Aから第2の半割軸受18の周方向中央部C側へ向かって円周角度θ2で5°〜45°の範囲内の内周面18S上に位置する。したがって
図7に示すように、軸線方向溝24Aと、部分溝18Gの、クランク軸の回転方向Xの後方側の周方向端部18GRとの間には分離内周面18S’が形成される。第2の半割軸受18はまた、部分溝18Gの幅W2の中央がジャーナル部10の潤滑油路10aの入口開口26の中心と整合するように配置されている。
なお、本実施例では、第1の半割軸受17の油溝17Gの軸線方向における幅W1(油溝17Gの、クランク軸の回転方向Xの前方側の周方向端部での幅)と、第2の半割軸受18の部分溝18Gの軸線方向における幅W2(部分溝18Gの、クランク軸の回転方向Xの後方側の周方向端部18GRでの幅)は、同じになされている。
また、
図9に示すように、部分溝18Gの、第2の半割軸受18の内周面18Sからの最大深さD2は、0.01〜0.1mmであることが好ましい。本実施例では、部分溝18Gの、第2の半割軸受18の内周面18Sからの深さは、部分溝18Gの周方向長さの中央部付近で最大であり、周方向両端部側へ向かって小さくなっている。なお、部分溝18Gもまた、矩形断面形状を有している。
【0033】
図6は、
図2に示す主軸受19の紙面右側の接合部を、クランク軸の軸線方向から見た拡大断面図を示す。
第1の半割軸受17の油溝17Gの、クランク軸の回転方向前方側の周方向端部と、第2の半割軸受18の部分溝18Gの、クランク軸の回転方向後方側の周方向端部18GRとは、第1の周方向距離L1だけ離間していることが理解されよう。この第1の周方向距離L1は、ジャーナル部10の潤滑油路20入口開口26の周方向長さL2より小さくなされており、したがって油溝17Gと軸線方向溝24Aと部分溝18Aとは、潤滑油路10aを介して流体連通可能である。
【0034】
入口開口26は、
図6では潤滑油路10aと同じ断面積を有するものとして記載している。しかし入口開口26は、加工の結果として
図10に示すように潤滑油路10aより大きい断面積を有していてもよく、またジャーナル部10の外周面上において円形または楕円形の開口形状を有していてもよい。入口開口26の断面積が潤滑油路10aの断面積より大きい場合、入口開口26と潤滑油路10aの間には断面積が油路方向に徐々に変化する流路遷移部分29が、ジャーナル部10の外周面から深さ1〜2mmまで形成される。いずれの場合も、入口開口26はジャーナル部10の外周面上における周方向長さ(直線距離)L2を有するものと定義される。
【0035】
油溝17Gに供給される潤滑油に異物28が混入していると、異物28は油溝17G内をクランク軸の回転方向Xの前方側に流れる潤滑油に付随して油溝17Gのクランク軸の回転方向Xの前方側の周方向端部へ移動し、油溝17Gと連通する軸線方向溝24Aへ流れて軸受外部へ排出される(
図7参照)。従来のクランク軸用主軸受では、多量の潤滑油が軸受外部へ排出されるため、第2の半割軸受の内周面への潤滑油の供給量が不足し、したがって第2の半割軸受の内周面がクランク軸のジャーナル部10と直接接触し、これは損傷を引き起こす原因となっていた。また、第2の半割軸受の内周面への潤滑油の供給量を増やすために、第2の半割軸受の、クランク軸の回転方向Xの後方側の周方向端面に開口するように部分溝を内周面に形成して、この部分溝と油溝17Gとを直接連通させた場合、油溝17G内の多量の異物が潤滑油とともに部分溝を通して第2の半割軸受の内周面に侵入するようになり、これは第2の半割軸受の内周面に損傷を引き起こす原因となっていた。
しかし本発明の実施例によれば、油溝17Gと部分溝18Gの間に分離内周部18S’が存在するので、油溝17G内の異物28が部分溝18Gに流れ込むことが妨げられる。さらに、油溝17Gと部分溝18Gとが第1の周方向距離L1だけ離間し、且つ第1の周方向距離L1が入口開口26の周方向長さL2よりも小さいので、ジャーナル部10の回転に伴って入口開口26が分離内周面18S’上に位置したとき、
図11に示すように油溝17Gが潤滑油路10aを介して部分溝18Gと連通し、それにより油溝17内の潤滑油が部分溝18Gへ流入することができる。
【0036】
より詳細には、油溝17Gが潤滑油路10aを介して部分溝18Gと連通したとき、(1)ジャーナル部10の回転による遠心力F1、(2)油溝17G内と潤滑油路10a内の潤滑油の圧力勾配による流れ力F2、および(3)潤滑油路10a内と部分溝18G内の潤滑油の圧力勾配による流れ力F3が、入口開口26付近の潤滑油に同時に作用し、油溝17Gから潤滑油路10a内に進入した潤滑油を部分溝18G内へ移動させるのに十分な潤滑油の流れが瞬間的に形成される。
【0037】
本発明によれば、油溝17Gの、クランク軸10の回転方向Xの前方側の周方向端部と、部分溝18Gの、クランク軸10の回転方向Xの後方側の周方向端部18GRとの間の第1の周方向距離L1が入口開口26の周方向長さL2よりも小さいことが要求される。その理由は、L1≧L2の場合、入口開口26が部分溝18Gと連通を開始したときに入口開口26は油溝17Gと既に連通しておらず、それゆえ
図11に示す油溝17Gからの流れ力F2が生じないので、潤滑油路10aに進入した潤滑油を部分溝18Gに押し流すことができなくなるからである。
【0038】
潤滑油路10aに進入した潤滑油を部分溝18Gに押し出すのに十分な潤滑油の流れのために、油溝17Gと部分溝18Gの間の第1の周方向距離L1と、入口開口26の周方向長さL2とが、L2−L1≧0.5mmの関係を満たすことが好ましい。また油溝17Gが部分溝18Gと流体連通している際に過剰に潤滑油が流出することを防止するため、第1の周方向距離L1と入口開口26の周方向長さL2とが、L1≧L2×0.3の関係を満たしていることが好ましく、またL1≧L2×0.6の関係を満たしていることがより好ましい。これは、第1の周方向距離L1が短すぎると、油溝17Gと部分溝18Gとが流体連通する時間が長くなり、油溝17Gの周方向端部から部分溝18Gに流れ込む油量が増加して油溝17G内の潤滑油の圧力が低下し、したがってコンロッド軸受22へ送られる油量が減少するためである。
【0039】
第2の半割軸受18の内周面18Sにおける、部分溝18Gの、クランク軸の回転方向Xの後方側の周方向端部18GRは、軸線方向溝24Aから第2の半割軸受18の周方向中央部C側へ向かって円周角度θ1で1°以上離間した内周面上に位置するので、油溝17Gの前方側の周方向端部から軸線方向溝24Aに流れ込んだ異物が、この軸線方向溝24Aを越えて部分溝18Gへ流入することが防がれる。また部分溝18Gの、クランク軸の回転方向Xの前方側の周方向端部18GFは、第2の半割軸受18の後方側周方向端面18Aから第2の半割軸受18の周方向中央部C側へ向かって円周角度θ2で5°〜45°の範囲内の内周面上に位置する。部分溝18Gの、クランク軸の回転方向Xの前方側の周方向端部18GFの位置が第2の半割軸受18の後方側周方向端面18Aから第2の半割軸受18の周方向中央部C側へ向かって円周角度θ2で5°未満であると、第2の半割軸受18の周方向中央部C付近へ潤滑油が送られ難く、またこの円周角度θ2が45°を超えると、第2の半割軸受18の内周面18Sの面積が少なくなるため好ましくない。また内周面18Sに沿った部分溝18Gの周方向長さは、円周角度で10°〜30°に相当する長さであることが好ましい。
【0040】
主軸受19の内周面上における軸線方向溝24Aの周方向長さ(直線距離)L4は0.2〜2mmとすることができ、また主軸受19の内周面からの軸線方向溝24Aの最大深さD1は0.1〜1mm、好ましくは0.1〜0.5mmとすることができる(
図8参照)。軸線方向溝24Aの周方向長さL4および深さD1は、潤滑油に混入する異物のサイズ(一般には最大0.1mm程度)に鑑みて、異物を排出可能な最小寸法としてもよい。
【0041】
上述したように入口開口26の断面積が潤滑油路10aの断面積より大きく、したがって流路遷移部分29が少なくとも入口開口26の周方向両側に形成されている場合、油溝17Gと部分溝18Gが流体連通したときに油溝17G内の潤滑油が流路遷移部分29の傾斜面によって誘導され潤滑油路10a内へ流れ易くなり、さらに部分溝18Gへ流れ易くなるので、潤滑油を部分溝18Gに向けて押し流す周方向の流れF3(
図11)を強めることができる。
【0042】
本実施例によるクランク軸用主軸受19は、第1および第2の半割軸受17、18の軸受壁厚が周方向に亘って一定に形成されているが、これら半割軸受17、18の軸受壁厚は、半割軸受17、18の周方向中央部Cで最大で、周方向両端部側へ向かって小さくなるように形成することもできる。またこれら半割軸受17、18の内周面17S、18Sは、複数の円弧面により構成されていてもよい。
【0043】
本発明によるクランク軸用主軸受19は、第1および第2の半割軸受17、18の接合部に隣接する軸受内周面にクラッシュリリーフ42、44を有していてもよい。クラッシュリリーフは、
図21に示すように、各半割軸受17、18の周方向端部領域において壁部の厚さを回転中心と同心である本来の内周面40(主要円弧)から半径方向に減じることによって形成される逃し空間42、44のことであり、これは、例えば一対の半割軸受17、18をクランク軸10のジャーナル部19に組み付けた時に生じ得る半割軸受の周方向端面の位置ずれや変形を吸収するために形成される。したがって、例えばクラッシュリリーフ42が形成された領域Rでの軸受内周面17Sの曲率中心位置は、その他の領域における軸受内周面(主要円弧)の曲率中心位置と異なる(SAE J506(項目3.26および項目6.4)、DIN1497、セクション3.2、JIS D3102参照)。なお、この場合であっても、第2の半割軸受18の内周面18S上に分離内周部18S’が形成されることが理解されよう。一般に、乗用車用の小型の内燃機関用軸受の場合、半割軸受の周方向端面におけるクラッシュリリーフの深さ(本来の内周面から実際の内周面までの距離)は0.01〜0.05mm程度である。
【実施例2】
【0044】
図12は、本発明の実施例2によるクランク軸用主軸受19を示す。実施例2によるクランク軸用主軸受19の、実施例1と共通する構成については説明を省略する。
この主軸受19は、一対の半割軸受17、18から構成される。
図13〜
図14に、主軸受19を構成する一対の半割軸受17、18の詳細を示す。
図13から理解されるように、第1の半割軸受17の内周面17Sに形成された油溝17Gは、第1の半割軸受17の周方向に延び、且つ油溝17Gの周方向両端部17GF、17GRは、第1の半割軸受17の内周面17S上に位置する。なお、油溝17Gは、油溝17Gの、クランク軸10の回転方向Xの前方側の周方向端部17GFが第1の半割軸受17の内周面17Sに位置し、且つ油溝17Gの、クランク軸10の回転方向Xの後方側の周方向端部17GRが第1の半割軸受17の後方側周方向端面17Bに開口するように構成されてもよい。
【0045】
図14から理解されるように、第2の半割軸受18の内周面18Sに形成された部分溝18Gは、部分溝18Gの周方向両端部18GF、18GRが第2の半割軸受18の内周面18S上に位置するように形成されている。なお、本実施例では、第2の半割軸受18の部分溝18Gの軸線方向幅W2は、第1の半割軸受17の油溝17Gの軸線方向幅W1よりも大きくなされている。
ここで、第2の半割軸受18の部分溝18Gの軸線方向幅W2と、第2の半割軸受18の軸線方向長さ(軸受幅)L3とが以下の関係式:
W2≧L3×0.5
を満たしていることが好ましい。また、部分溝18Gの軸線方向幅W2は、第2の半割軸受18の軸線方向長さL3よりも2mm小さくし、部分溝18Gの軸線方向の両側に内周面18Sが各1mm残るようにする必要がある。
【0046】
第1の半割軸受17の油溝17Gの、クランク軸の回転方向Xの前方側の周方向端部17GFと、第2の半割軸受18の部分溝18Gの、クランク軸の回転方向Xの後方側の周方向端部18GRとは、第1の周方向距離L1だけ離間しており、またそれらの間には、第2の半割軸受18側の分離内周面18S’に加え、第1の半割軸受17側に分離内周面17S’が形成されている(
図15および
図16参照)。第1の周方向距離L1は、ジャーナル部10の潤滑油路10aの入口開口26の周方向長さL2より小さく、したがって油溝17Gは、潤滑油路10aを介して軸線方向溝24Aおよび部分溝18Gと流体連通可能である。
【0047】
(作用)
油溝17Gに供給される潤滑油に異物28が混入していると、異物28は油溝17G内をクランク軸の回転方向Xの前方側に流れる潤滑油に付随して、油溝17Gの、クランク軸の回転方向Xの前方側の周方向端部17GFへ移動するが、油溝17Gと軸線方向溝24Aとが直接流体連通していないと、異物28が油溝17Gの周方向端部17GF付近に滞留したり、潤滑油路10aに進入しやすい(
図17)。しかし本実施例によれば、油溝17Gと部分溝18Gの間の第1の周方向距離L1が入口開口26の周方向長さL2よりも小さく形成されているので、ジャーナル部10の回転に伴って入口開口26が油溝17Gの周方向端部17GF上を通過した後、入口開口26が第1の半割軸受17側の分離内周面17S’上に位置し、したがって油溝17Gが潤滑油路10aを介して先ず軸線方向溝24Aのみと流体連通したとき、潤滑油路10aに進入した異物28は軸線方向溝24Aへ排出される(
図18)。
【0048】
より詳細には、油溝17Gが潤滑油路10aを介して先ず軸線方向溝24Aのみと流体連通したとき、
図18に示すように、(1)ジャーナル部10の回転による遠心力F1、(2)油溝17G内と潤滑油路10a内の潤滑油の圧力勾配による流れ力F2、および(3)潤滑油路10a内と軸線方向溝24A内の潤滑油の圧力勾配による流れ力F3が、入口開口26付近にある潤滑油路10a内部の異物28および潤滑油に同時に作用し、潤滑油路10a内に進入した異物28を軸線方向溝24Aへ移動させるのに十分な潤滑油の流れが瞬間的に形成される。またこの瞬間、軸線方向溝24A内には主軸受19の軸線方向への流れも形成され、異物28の軸受外への排出を助ける(
図19参照)。
【0049】
その後、ジャーナル部10の回転により、油溝17aが潤滑油路10aを介して部分溝18Gとも連通すると、
図20に示すように、(1)ジャーナル部10の回転による遠心力F1、(2)油溝17a内と潤滑油路10a内の潤滑油の圧力勾配による流れ力F2、および(3)潤滑油路10a内と部分溝18G内の潤滑油の圧力勾配による流れ力F3が、入口開口26付近にある潤滑油路10a内部の異物28を含まない潤滑油に同時に作用し、潤滑油路10a内に進入した潤滑油を部分溝18G内へ移動させるのに十分な潤滑油の流れが瞬間的に形成される。
【0050】
なお、実施例1および2において、下側の第2の半割軸受18は、クランク軸の回転方向Xの後方側の所定の内周面18S上に部分溝18Gを有しているが、回転方向Xの前方側の内周面18S上に周方向中央部Cに関して対称な部分溝をさらに有していてもよい。このような対称形状を採用することにより、シリンダブロック下部の軸受キャップへの第2の半割軸受18の誤った組み付けが防止される。