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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-219026(P2019-219026A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】ダクト
(51)【国際特許分類】
   F16L 9/22 20060101AFI20191129BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20191129BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   F16L9/22
   F02M35/10 101D
   B60H1/00 102L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-117862(P2018-117862)
(22)【出願日】2018年6月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕明
【テーマコード(参考)】
3H111
3L211
【Fターム(参考)】
3H111BA15
3H111CA32
3H111CA35
3H111DA26
3H111EA05
3L211BA14
3L211BA52
3L211DA08
3L211DA95
(57)【要約】
【課題】爪嵌合により第1分体と第2分体とを安定した状態で組み付けたダクトを提供する。
【解決手段】ダクト10は、第1分体14の端縁に第2分体16側へ突出するように設けられた複数の係止爪26を有する係止部24と、第2分体16の端縁に設けられて、受け入れた係止爪26が引っ掛かる係止受部28とによって、第1分体14と第2分体16とが組み付けられている。ダクト10は、第1分体14における係止部24の係止爪26,26の間に、第2分体16に設けられた規制部30が位置して、第1分体14と第2分体16との相対的な移動が規制されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの端縁を突き合わせて組み付けられる第1分体および第2分体によって、空気流通路の少なくとも一部が画成されるダクトであって、
前記第1分体の端縁から前記第2分体側へ突出すると共に該端縁の延在方向に間隔をあけて並べて設けられた複数の係止爪を有する係止部と、
前記第2分体の端縁に前記係止部における複数の係止爪を受け入れ可能に設けられ、端縁を該第2分体の端縁に突き合わせた前記第1分体の係止爪と引っ掛かって該係止爪を抜け止めする係止受部と、
前記第2分体に設けられ、前記係止受部に引っ掛かった前記複数の係止爪における隣り合うものの間に位置して、該係止爪の前記延在方向への移動を規制する規制部と、を備えている
ことを特徴とするダクト。
【請求項2】
前記規制部は、前記係止爪と当たる受面が、該係止爪の根元側から先端側に向かうにつれて、該係止爪と交差する方向へ傾くように形成されている請求項1記載のダクト。
【請求項3】
前記係止部は、前記隣り合う係止爪が相対的に近づくように変形可能に構成され、該隣り合う係止爪において前記延在方向へ向けて互いに反対向きへ突出する係止突起を、前記係止受部に引っ掛ける請求項1または2記載のダクト。
【請求項4】
前記係止爪は、隣り合う係止爪に向けて前記延在方向へ凹む凹部が、前記係止突起よりも該係止爪の根元側に設けられている請求項3記載のダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両において吸気や空調や冷却などに用いられるダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダクトとしては、溝形樋状の上側部材と同じく溝形樋状の下側部材とを、互いの端縁を突き合わせて組み合わせることで、空気流通路を内部に画成した筒形状に構成するものがある(例えば、特許文献1参照)。上側部材は、インジェクション成形による樹脂成形品であり、下側部材に突き合わせる端縁に、該端縁の延在方向に互いに離して複数の係合爪が設けられている。また、下側部材は、インジェクション成形による樹脂成形品であり、上側部材に突き合わせる端縁に、前記複数の係合爪に対応して、係合孔が設けられている。そして、特許文献1のダクトは、上側部材の端縁と下側部材の端縁とを突き合わせて、係合爪を係合孔に差し込むことで、係合爪と係合孔との爪嵌合構造によって、上側部材と下側部材とが組み付くようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5832111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したように、上側部材および下側部材は、樹脂成形品であるので、成形収縮などに起因して不可避の精度のバラツキが生じてしまうことがある。このため、上側部材の係合爪と下側部材の係合孔とが位置ずれしていると、係合爪を係合孔に差し込む際の荷重が大きくなり、係合爪の差し込みが不十分で係合爪と係合孔との爪嵌合不良が起こるおそれがある。そこで、この問題を解消する方策として、係合孔を係合爪に対して余裕をもった大きさとすることで、寸法精度のバラツキや位置ずれを吸収することがなされている。しかしながら、爪嵌合した係合爪と係合孔との隙が大きくなると、上側部材と下側部材とが、がたついたり、ダクトのねじれに対する強度が設計通りにならなかったり、異音が発生する等、様々な問題が発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、爪嵌合により安定した状態で組み付けられた2つの分体からなるダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明のダクトは、
互いの端縁を突き合わせて組み付けられる第1分体および第2分体によって、空気流通路の少なくとも一部が画成されるダクトであって、
前記第1分体の端縁から前記第2分体側へ突出すると共に該端縁の延在方向に間隔をあけて並べて設けられた複数の係止爪を有する係止部と、
前記第2分体の端縁に前記係止部における複数の係止爪を受け入れ可能に設けられ、端縁を該第2分体の端縁に突き合わせた前記第1分体の係止爪と引っ掛かって該係止爪を抜け止めする係止受部と、
前記第2分体に設けられ、前記係止受部に引っ掛かった前記複数の係止爪における隣り合うものの間に位置して、該係止爪の前記延在方向への移動を規制する規制部と、を備えていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るダクトによれば、2つの分体が爪嵌合によってガタツキが防止された安定した状態で精度よく組み付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の好適な実施例に係るダクトを示す斜視図である。
図2】実施例のダクトの要部を示す側面図である。
図3】(a)は図2のA−A線断面図であり、(b)は図4のC−C線断面図である。
図4】実施例のダクトの要部を、分解した状態で示す側面図である。
図5】(a)は図2のB−B線断面図であり、(b)は図4のD−D線断面図である。
図6】実施例の係止部と係止受部との組み付けを示す説明図である。
図7】変更例の係止爪を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係るダクトにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例】
【0010】
図1に示すように、実施例に係るダクト10は、空気が流通する空気流通路12が内側に設けられた筒状であり、空気入口10aから空気出口10bに向かう空気流通路12が三次元的に曲がるように形成されている。なお、実施例のダクト10は、空気入口10aと空気出口10bとが同様の向きになるように湾曲した形状である。ダクト10は、互いの端縁を突き合わせて爪嵌合構造によって組み付けられる第1分体14および第2分体16に囲われて、空気流通路12の少なくとも一部が画成されている。実施例では、ダクト10における空気出口10b側の一部が、第1分体14の筒状部分で構成されている一方で、その他の大部分が、溝形樋状の2つの分体14,16を組み合わせて筒状に構成されている。各分体14,16は、ポリプロピレン(PP)または高密度ポリエチレン(HDPE)などのソリッド樹脂(ソリッドの合成樹脂)を材質とし、インジェクション成形等によって得られる成形品である。ダクト10は、空気流通路12の空気流通方向に沿って分けた2つの分体14,16で構成されているので、各分体14,16の端縁の延在方向が空気流通方向に沿っている。そこで、以下の説明では、分体14,16における端縁の延在方向を、空気流通方向と指称する場合がある。
【0011】
図1に示すように、第1分体14は、空気出口10b側の一部分が筒状に形成され、下方に開放する断面円弧状の溝形樋状に形成されたその他の部分により、第2分体16と組み合わせた際にダクト10の上側半分を構成する。第2分体16は、上方に開放する断面円弧状の溝形樋状に形成され、第1分体14と組み合わせた際にダクト10の下側半分を構成する。第1分体14は、溝形樋状部分の端縁が、空気流通路12をなす流路壁14aから外方へ張り出した後に下方へ延出するように形成され、端縁における延出部18が流路壁14aよりも下方へ延出している(図5(a)および図5(b)参照)。第2分体16の端縁は、空気流通路12をなす内壁16aと、該内壁16aの外側に対向配置された外壁20と、内壁16aおよび外壁20の下端を繋ぐ底部22とにより、上方に開放する溝形状に形成されている(図5(a)および図5(b)参照)。図3(a)および図5(a)に示すように、ダクト10は、第1分体14の端縁の延出部18を、第2分体16の端縁の溝形状に嵌め合わせると共に、第1分体14の流路壁14aの下端と第2分体16の内壁16aの上端とを突き合わせて、第1分体14と第2分体16とが爪嵌合構造によって連結されている。
【0012】
次に、第1分体14と第2分体16とを連結する爪嵌合構造について具体的に説明する。図1に示すように、第1分体14の端縁には、空気流通方向に互いに離して複数の係止部24が、第2分体16側へ突出するように設けられている。図2および図4に示すように、係止部24は、空気流通方向(第1分体14の端縁の延在方向)に並べて設けられた複数の係止爪26(実施例では2つ)を有している。複数の係止爪26は、第1分体14の端縁において、延出部18よりも下方(第2分体16側)へ突出するように形成されている。実施例の係止部24は、2つの係止爪26,26を有する2股形状であり、2つの係止爪26,26が、係止部24の中央を該係止爪26(係止部24)の突出方向に沿うように通る仮想線を挟んで対称な形状になっている。また、係止部24は、隣り合う係止爪26,26が相対的に近づくように弾性変形可能に構成することが好ましく、実施例では、係止部24において2股形状に構成された係止爪26,26が、相対的に近づくように弾性変形し得る。係止爪26は、相手の係止爪26との反対側が該係止爪26の突出方向に対して傾いた先細り形状である。
【0013】
図4および図6に示すように、係止爪26の先端部には、該係止爪26の突出方向と交差するように、空気流通方向へ張り出した係止突起26aが設けられている。係止突起26aは、隣り合う他方の係止爪26から離れる向きに突出している。すなわち、係止部24において隣り合う2つの係止爪26,26には、空気流通方向へ向けて互いに反対向きへ突出する関係で、それぞれの係止突起26aが形成されている。
【0014】
係止爪26は、前述したように根元から全体が空気流通方向へ変形可能であるだけでなく(図6(b)参照)、先端部を根元側に対して空気流通方向へ変形可能に構成することが好ましい(図6(c)参照)。具体的には、図4および図6に示すように、係止爪26には、隣り合う係止爪26に向けて空気流通方向へ凹む凹部26bが、係止突起26aよりも係止爪26の根元側に設けられている。凹部26bは、隣り合う他方の係止爪26と反対側へ向いた空気流通方向へ開口している。そして、係止爪26は、凹部26bの存在によって、凹部26bの底部分よりも先端部側が空気流通方向へ弾性変形可能になっている。
【0015】
第2分体16の端縁には、空気流通方向に互いに離して複数の係止受部28が設けられており、ダクト10において係止受部28と係止部24とが対応している。係止受部28は、係止部24における複数の係止爪26を受け入れ可能に設けられ、第1分体14の端縁と第2分体16の端縁とを突き合わせた際に、自身に引っ掛かる係止爪26を抜け止めするよう構成されている。図3(a)および図3(b)に示すように、実施例の係止受部28は、第2分体16において溝形状に形成された端縁において、外壁20と内壁16aとを繋ぐ底部22を貫通するように形成されている。図6に示すように、係止受部28は、空気流通方向の開口寸法が、係止部24において両係止爪26,26の空気流通方向の寸法と同一または若干小さく設定することが好ましい。すなわち、第1分体14と第2分体16とを組み付けたときに、係止部24において係止受部28に通っている部分が、空気流通方向において係止受部28と同じ寸法または若干大きくなっているとよい。これにより、係止受部28の空気流通方向に対向する開口縁が、受け入れた係止爪26と当たるまたは干渉する構成となる。爪嵌合構造は、係止受部28に挿入した係止爪26の係止突起26aが、係止受部28において空気流通方向と交差するように延在する開口縁下面に引っ掛かることで、第1分体14と第2分体16とが相対的に離れる方向の移動を規制して、第1分体14と第2分体16との組み付け状態を保持する。
【0016】
ダクト10は、爪嵌合構造により組み付けられた第1分体14と第2分体16との空気流通方向の位置関係を規定する位置決め構造を、係止部24に対応して第2分体16に備えている。図2および図4に示すように、第2分体16は、位置決め構造として、係止受部28に引っ掛かった複数の係止爪26,26における隣り合うものの間に位置して、自身と当たった係止爪26の空気流通方向への移動を規制する規制部30を有している。規制部30は、係止受部28よりも下側(受け入れた係止爪26が突出する側)に配置されて、係止受部28の空気流通方向中央部に対応する位置に設けられている。規制部30は、第2分体16の外面から突出する突起状に形成されて(図3参照)、係止爪26が係止受部28に受け入れられるように第1分体14と第2分体16とが組み合わさった際に、2股の係止爪26,26の間に位置するようになっている(図2参照)。
【0017】
図2および図4に示すように、規制部30は、係止爪26と当たる受面30aが、係止爪26の根元側から先端側に向かうにつれて、係止爪26と交差する方向へ傾くように形成されている。実施例の規制部30は、係止受部28の中央を係止爪26の突出方向へ通る仮想線を挟んで対称な傾きの受面30a,30aを有する三角形状である。規制部30は、第1分体14と第2分体16とが組み合わさった際に、受面30aが係止爪26の先端内縁に相対し、受面30aと係止爪26との間にわずかに隙間があいてもよいが、受面30aと係止爪26とが当たるように構成するほうがよい。また、規制部30は、第1分体14と第2分体16とが組み合わさった際に、受面30aが係止爪26と干渉するように設定してもよく、受面30aによって係止爪26を隣り合う他方の係止爪26から離れる空気流通方向に押す構成であってもよい。
【0018】
前述したダクト10における第1分体14と第2分体16との組み付けについて、図6を参照して説明する。第1分体14と第2分体16とを相対的に近づけて、係止部24の両係止爪26,26を係止受部28に挿入する(図6(a)参照)。この際に、係止爪26の係止突起26aが係止受部28の開口縁に当たって、空気流通方向に並ぶ2つの係止爪26が相対的に近づくように弾性変形することで、係止突起26aが係止受部28を通過できるようになる(図6(b)参照)。仮に係止部24と係止受部28とがずれている場合においても、係止爪26が係止受部28の開口縁に当たるが、係止爪26が係止部24において組をなす相手の係止爪26側へ変形可能であるので、係止受部28の開口縁に当たった係止爪26が変形して逃げる。これにより、係止部24と係止受部28とがずれている場合であっても、係止受部28への両係止爪26,26の挿入が、挿入荷重の増加を抑えつつ許容される。また、係止爪26が係止受部28の開口縁に弾力的に当たることで、係止部24と係止受部28との位置ずれが補正される。
【0019】
係止突起26aが係止受部28を通過する前に係止爪26が規制部30の受面30aに当たると、係止爪26の先端部が受面30aに押されて隣り合う他方の係止爪26から離れるように弾性変形して、係止爪26の係止受部28への更なる挿入が許容される(図6(c)参照)。そして、係止突起26aが係止受部28を通過すると、相対的に近づくように弾性変形していた係止爪26,26が弾力的に復元し、係止突起26aが係止受部28の開口縁に引っ掛かる(図6(d)参照)。そして、規制部30が、係止部24において並ぶ2つの係止爪26,26の間に配置される。
【0020】
前述したダクト10は、係止爪26と係止受部28とが掛かった組み付け状態において、第1分体14における係止部24の2股の係止爪26,26の間に、第2分体16の規制部30が嵌まる。換言すると、第1分体14と第2分体16との組み付けに際して、2つの係止爪26,26の間に規制部30が嵌まるように誘導されるので、第1分体14と第2分体16との空気流通方向の位置を精度よく合わせることができる。また、2つの係止爪26,26と規制部30との嵌め合いにより、第1分体14と第2分体16との空気流通方向の位置ずれが規制されるので、第1分体14と第2分体16との空気流通方向のガタツキを防止することができる。
【0021】
ダクト10は、係止爪26と規制部30との位置決め構造によって、第1分体14および第2分体16との位置決めができるので、係止受部28の空気流通方向の開口寸法を、係止部24における2つの係止爪26,26の空気流通方向寸法より大きく設定することも可能になる。これにより、係止部24と係止受部28とのずれ等を吸収し得ると共に、係止部24を係止受部28に対して無理なく嵌め合わせることができる。前述のように係止部24を係止受部28に嵌め易く設定した際に、規制部30が係止爪26に干渉するように構成することで、規制部30に当てて係止爪26を係止突起26aの突出方向へ押すことができる。これにより、係止突起26aを掛止受部28の開口縁にラップさせることができ、係止突起26aを係止受部28の開口縁に確実に引っ掛けることができる。また、規制部30で係止爪26を押すことで、係止爪26と係止受部28との隙間をなくして、第1分体14と第2分体16との空気流通方向のガタツキを防止することができる。
【0022】
ダクト10は、規制部30が係止爪26に設けられた係止突起26aの突出向きと反対側に存在しているので、係止突起26aが係止受部28の開口縁から外れる方向への係止爪26の動きを、規制部30によって阻むことができる。このように、規制部30によって、係止爪26を係止受部28から外れ難くすることができるので、第1分体14と第2分体16との取り付け強度を向上させることができる。
【0023】
このように、ダクト10は、2つの分体14,16が爪嵌合によってガタツキが防止された安定した状態で精度よく組み付けられている。従って、ダクト10は、第1分体14と第2分体16とのガタツキに起因する異音や通気に伴うビビリ音等の発生を防止することができる。また、ダクト10は、第1分体14と第2分体16とが空気流通方向へ相対的にずれ難いように強固に組み付いているので、ねじれ等に対して強くなり、全体として剛性が増すので、補強を減らすことができる。
【0024】
ダクト10は、係止部24における複数の係止爪26が互いに近づくように変形可能にすることで、係止部24と係止受部28とがずれている場合や、係止受部28の空気流通方向の開口寸法が両係止爪26,26の空気流通方向の寸法に対して余裕がない場合であっても、係止爪26の変形によって係止爪26を係止受部28に挿入することができる。これにより、両係止爪26,26の空気流通方向の寸法に対して係止受部28の空気流通方向の開口寸法を大きく設定することに伴う隙を小さくすることができる。また、両係止爪26,26の空気流通方向の寸法に対して係止受部28の空気流通方向の開口寸法を同じまたは若干小さく設定して、係止受部28に挿入した係止爪26と係止受部28との間に隙ができないようにすることも可能となる。このように、前述した爪嵌合構造によれば、係止受部28に挿入した係止爪26と係止受部28との間に隙を小さくまたは無くすことができるので、係止受部28に挿入した係止爪26と係止受部28との間に隙により生じる第1分体14と第2分体16との空気流通方向のガタツキを防止することができる。更に、係止爪26が空気流通方向へ変形することで、係止受部28に対する係止爪26の挿入荷重の増加を抑えることができ、係止爪26の係止突起26aが係止受部28に掛からない爪嵌合不良を回避することができる。第1分体14および第2分体16を治具に位置決めしてセットして、上下にプレスして所定荷重を加えることで、係止部24を係止受部28に機械的に挿入して爪嵌合を行う場合であっても、挿入荷重の増大を抑えることができるので、爪嵌合不良を回避することができる。
【0025】
ダクト10は、規制部30の受面30aが、係止爪26の根元側から先端側に向かうにつれて係止爪26と交差する方向へ傾くように形成されているので、組み付け途中で受面30aに係止爪26の先端が当たっても、係止爪26の挿入を妨げ難くすることができる。また、第1分体14と第2分体16とを組み付ける際に、規制部30の受面30aに係止爪26が当たることで、受面30aの傾斜により係止部24が係止受部28に整合するように案内される。このように、ダクト10は、第1分体14と第2分体16とを組み付ける際に、2つの係止爪26,26と規制部30との嵌め合いにより、第1分体14と第2分体16の空気流通方向の位置関係が揃うように自然に補正することができる。従って、得られるダクト10は、第1分体14と第2分体16との空気流通方向の位置が精度よく合わせられている。
【0026】
係止爪26は、隣り合う他方の係止爪26に向けて空気流通方向へ凹む凹部26bが、係止突起26aよりも係止爪26の根元側に設けられているので、係止爪26が根元から変形するだけでなく、係止部24の先端部が凹部26bの底部分から変形し易くなる。これにより、第1分体14と第2分体16との組み付け途中(係止爪26の係止受部28への挿入途中)で係止爪26が規制部30に当たったとき、係止爪26の先端部を変形させて、係止突起26aを係止受部28に円滑に通すことができる。
【0027】
(変更例)
前述した実施例に限らず、例えば以下のように変更してもよい。
(1)実施例では、係止爪26の係止突起26aを、空気流通方向(第1分体14の端縁の延在方向)に突出して形成したが、図7に示すように、係止突起26aを係止爪26の突出方向と交差する外向きへ張り出して形成してもよい。なお、図7では、実施例と同様の構成には、実施例と同じ符号を付している。
(2)実施例では、第1分体でダクトの上側部分を構成し、第2分体でダクトの下側部分を構成したが、第1分体でダクトの下側部分を構成し、第2分体でダクトの上側部分を構成してもよい。ダクトを、第1分体と第2分体とで上下に分割する構成に限らず、左右に分割するなど、ダクトの分割態様を適宜変更可能である。
(3)実施例では、第1分体と第2分体とが空気流通路の約半分ずつの領域を囲うように構成したが、空気流通路を囲う第1分体と第2分体との割合を適宜変更してもよい。
(4)本発明は、吸気ダクト、ブレーキダクト、空調ダクトなどに適用可能である。
(5)実施例の係止部は、隣り合う係止爪が互いに近づくように弾性変形可能に構成されていたが、これに限らず、隣り合う係止爪が互いに近づくように変形しなくてもよい。係止受部の空気流通方向の開口寸法が、係止部における両係止爪の空気流通方向の寸法より大きく設定されていても、係止爪と規制部とが当たることで、係止部と係止受部との係合後においてダクトにおける第1分体と第2分体との空気流通方向の相対的なズレに起因する異音等の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0028】
12 空気流通路,14 第1分体,16 第2分体,24 係止部,26 係止爪,
28 係止受部,30 規制部,30a 受面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7