特開2019-219068(P2019-219068A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2019-219068歯科用セラミック義歯焼成装置及び匣
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-219068(P2019-219068A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】歯科用セラミック義歯焼成装置及び匣
(51)【国際特許分類】
   F27D 3/12 20060101AFI20191129BHJP
   F27B 17/00 20060101ALI20191129BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20191129BHJP
   A61C 13/083 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   F27D3/12 S
   F27B17/00 C
   A61C13/00 K
   A61C13/083
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-114506(P2018-114506)
(22)【出願日】2018年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】309007357
【氏名又は名称】SKメディカル電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勢造 一志
【テーマコード(参考)】
4C159
4K055
【Fターム(参考)】
4C159GG08
4K055AA08
4K055HA02
4K055HA13
4K055HA14
4K055HA27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】義歯として必要な強度及び色調を実現でき、エネルギー効率に優れ、部材の急冷時の割れが生じ難い、歯科用セラミック義歯焼成装置の提供。
【解決手段】炉体断熱材2を有する焼成炉と、ヒーター3と、焼成炉内に配置される匣4とを備え、匣4がセラミックファイバーからなり、枠状の側壁部4aと該側壁部4aの一端に連ねられた底壁4bを有し、該側壁部4aに切欠き4a1が設けられている、歯科用セラミック義歯焼成装置1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用セラミック義歯を焼成するための焼成装置であって、
焼成炉と、
前記焼成炉内に配置される匣とを備え、
前記匣がセラミックファイバーからなる、歯科用セラミック義歯焼成装置。
【請求項2】
前記セラミック義歯が、ジルコニアからなる、請求項1に記載の歯科用セラミック義歯焼成装置。
【請求項3】
セラミック義歯の焼成に用いられる匣であって、セラミックファイバーからなる、匣。
【請求項4】
前記匣が、枠状の側壁部を有する、請求項3に記載の匣。
【請求項5】
前記枠状の側壁部の一端に連ねられた底壁を有する、請求項4に記載の匣。
【請求項6】
前記側壁部に切欠きが設けられている、請求項4または5に記載の匣。
【請求項7】
前記枠状の側壁部に載置されており、セラミックファイバーからなる蓋材をさらに備える、請求項3〜6のいずれか1項に記載の匣。
【請求項8】
前記蓋材に切欠きが設けられている、請求項7に記載の匣。
【請求項9】
平面視で円形または楕円形の形状を有している、請求項3〜7のいずれか1項に記載の匣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用のセラミック義歯を焼成するのに用いられる焼成装置及び該焼成装置に用いられる匣に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科用の義歯として、セラミック義歯が用いられている。例えば下記の特許文献1には、Ti含有セラミックスからなる義歯の焼成に用いられる装置が開示されている。近年、審美性に優れているため、歯科用の義歯としてジルコニアからなる義歯が広く用いられている。ジルコニア義歯の製造に際しては、焼成前の義歯を、ジルコニア義歯焼成炉において、1500℃〜1600℃の温度で焼成する。それによって、義歯として必要な機械的強度及び色調を得ることが可能とされている。
【0003】
上記焼成に際しては、従来、6時間から12時間程度の時間を要していた。
【0004】
なお、焼成に際しては、未焼成の義歯を直接炉内に配置するのは稀である。通常、セラミック製の匣内に焼成前の義歯を配置し、焼成する。それによって、ヒーターからの輻射熱が、直接義歯に放射されるのを抑制している。
【0005】
他方、近年、90分〜120分の短時間での焼成で、ジルコニア義歯を得る方法が知られている。この場合、30℃/分以上の昇温速度で、一定温度まで炉の温度を上昇させる。そして、1500℃〜1600℃の温度で15分以上維持し、しかる後、急速に温度を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006−515053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記短時間焼成に際しては、未焼成のジルコニア義歯を、直接炉内の炉材上に配置したり、あるいはセラミック製の匣に入れて焼成が行われる。しかしながら、炉材上に未焼成の義歯を直接載置して焼成を行うと、ヒーターからの輻射熱の影響を受ける。従って、義歯として良好な色調を得ることが困難となる。
【0008】
他方、セラミック製の匣に未焼成のジルコニア義歯を入れて焼成した場合には、セラミック製の匣の熱容量が大きいため、ヒーターによる発熱量を大きくしなければならない。従って、エネルギー効率が悪化する。また、セラミック製の匣は熱衝撃に弱い。そのため、焼成プロファイルにおける急冷時にセラミック製の匣が割れることがあった。
【0009】
本発明の目的は、歯科用セラミック義歯を短時間焼成で得る場合であっても、義歯として必要な強度や色調を得ることができ、かつエネルギー効率に優れ、部材の割れ等が生じ難い、歯科用セラミック義歯焼成装置及び該歯科用セラミック義歯焼成装置に用いられる匣を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、歯科用セラミック義歯を焼成するための焼成装置であって、焼成炉と、前記焼成炉内に配置される匣とを備え、前記匣がセラミックファイバーからなる、歯科用セラミック義歯焼成装置である。
【0011】
本発明に係る歯科用セラミック義歯焼成装置では、上記セラミック義歯は、好ましくは、ジルコニアからなる。
【0012】
本発明に係る匣は、セラミック義歯の焼成に用いられる匣であって、セラミックファイバーからなり、枠状の側壁部を有する。
【0013】
本発明に係る匣では、上記枠状の側壁部の一端に連ねられた底壁が設けられていてもよい。
【0014】
また、本発明に係る匣では、好ましくは、側壁部に切欠きが設けられている。切欠きが設けられている場合には、匣の内部と匣の外部との温度差を小さくすることができる。
【0015】
本発明に係る匣では、枠状の側壁部に載置されており、セラミックファイバーからなる蓋材がさらに備えられていてもよい。
【0016】
上記蓋材に、好ましくは、切欠きが設けられる。切欠きが設けられている場合には、匣の内部と匣の外部との温度差を小さくすることができる。
【0017】
本発明に係る匣の他の特定の局面では、匣は、平面視で円形または楕円形の形状を有している。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る歯科用セラミック義歯焼成装置及び匣を用いることにより、短時間焼成を行った場合であっても、義歯としての強度及び色調を得ることができ、かつ匣の熱容量が大きくないため、エネルギー効率に優れ、さらに急冷時に匣が割れ難い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の歯科用セラミック義歯焼成装置を説明するための概略構成図である。
図2】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る匣の斜視図及び(a)中のB−B線に沿う断面図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る歯科用セラミック義歯焼成装置の外観を示す斜視図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る匣の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る歯科用セラミック義歯焼成装置を説明するための概略構成図である。
【0022】
歯科用セラミック義歯焼成装置1は、炉体断熱材2を有する焼成炉と、焼成炉を加熱するヒーター3と、焼成炉内に配置される匣4とを有する。
【0023】
本実施形態では、歯科用セラミック義歯としてのジルコニア義歯が焼成により得られる。焼成に際しては、匣4内に、複数の未焼成のジルコニア義歯5を配置する。匣4は、平面視で枠状の側壁部4aと、側壁部4aに連ねられた底壁4bとを有する。なお、枠状の形状が、本実施形態では、平面視で円形であるが、楕円形であってもよく、矩形枠状であってもよい。すなわち、枠状である限り、その形状は特に限定されない。また、枠状の形状の一部が欠落していてもよい。
【0024】
匣4は、セラミックファイバーからなる。セラミックファイバーからなる匣4は、セラミックファイバーと有機バインダーとの混合物を成形し、焼成することにより得ることができる。焼成により、有機バインダーが分解し、セラミックファイバーからなる匣4を得ることができる。別法として、市販のセラミックファイバーからなるボードなどを、機械加工等により切削し、それによって匣4を得てもよい。
【0025】
セラミックファイバーとしては、アルミナファイバーやシリカファイバーなどを用いることができる。もっとも、ジルコニアからなる義歯を得る場合、焼成温度が1500℃〜1600℃と高いため、好ましくはアルミナファイバーからなる匣4が用いられる。
【0026】
図2に示すように、匣4の側壁部4aには、複数の切欠き4a1が設けられている。切欠き4a1が設けられていると、匣4内と匣4外との温度差を小さくすることができる。もっとも、ヒーター3からの輻射熱がジルコニア義歯5に直接放射されないことが望ましい。従って、切欠き4a1の数及び大きさは、このような輻射熱による悪影響が生じないように、設けられることが望ましい。
【0027】
また、本実施形態の匣4では、側壁部4aの上方が開口されている。もっとも、図2(b)に一点鎖線で示すように、側壁部4aの上方に載置される蓋材4cが備えられていてもよい。蓋材4cは、セラミックファイバーからなる。
【0028】
また、蓋材4cにも、一点鎖線で示す切欠きAが設けられていてもよい。それによって、匣4内と匣4外との温度差を小さくすることができる。
【0029】
本実施形態の歯科用セラミック義歯焼成装置1では、セラミックファイバーからなる匣4が用いられている。従って、未焼成のジルコニア義歯が、直接炉材に配置されず、上記匣4に入れて焼成が行われる。そのため、短時間焼成を行った場合でも、ジルコニア義歯として必要な強度及び色調を得ることができる。
【0030】
加えて、セラミックファイバーは嵩密度が(高耐熱アルミナファイバーで0.1〜0.5g/cm程度)、セラミックスの密度(アルミナの場合約3.95g/cm)に比べて非常に小さい。よって、セラミックファイバーからなる匣4は、熱容量がセラミック製の匣に比べて小さい。従って、焼成装置において必要とする発熱量を小さくすることができ、エネルギー効率を高めることができる。また、熱容量が小さいため、焼成後短時間の放冷で取り出すことが可能となる。さらに、セラミック製の匣は熱衝撃に弱かったのに対し、セラミックファイバーからなる匣4は熱衝撃に強い。そのため、匣4は、急冷時に割れ難い。
【0031】
よって、図1に示す歯科用セラミック義歯焼成装置1において、短時間焼成により、ジルコニア義歯を容易に製造することが可能となる。なお、短時間焼成は、前述したように、30℃/分以上の昇温速度で、炉の温度を高め、1500℃〜1600℃の温度で15分以上維持させ、しかる後、急速に炉の温度を降下させる焼成方法であり、焼成時間全体は90分〜120分程度で完了する。
【0032】
もっとも、本発明の歯科用セラミック義歯焼成装置1では、上記短時間焼成の焼成条件に限らず、様々な焼成プロファイルに従って、焼成を行うことができる。
【0033】
図3は、本発明の他の実施形態に係る歯科用セラミック義歯焼成装置の外観を示す斜視図であり、図4は、本発明の他の実施形態に係る匣の分解斜視図である。なお、図3に示す歯科用セラミック義歯焼成装置11では、外部に配置される匣4が露出されている。焼成時は匣4を載置した台座が上昇し上部炉内に収容される構造である。図3及び図4に示すように、複数の匣4が積層され、最上部の匣4上に蓋材4cが積層される。図2に示した実施形態と異なるところは、複数の匣4が積層されていることと、切欠き4a1の形状が、側面から視た場合に半円形とされていることにある。その他の点は、図2に示した匣4と同様である。このように、複数の匣4が積層されていてもよく、その場合、より多くのジルコニア義歯を一度に得ることができる。また、切欠き4a1は、側面から視た場合に矩形の形状でなく、半円形などの他の形状であってもよい。
【0034】
また、本発明で得られる歯科用セラミック義歯は、ジルコニア義歯に限らず、他のセラミックスからなるものであってもよく、さらにセラミックスにTiなどの金属が含有されている義歯であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1,11…歯科用セラミック義歯焼成装置
2…炉体断熱材
3…ヒーター
4…匣
4a…側壁部
4a1…切欠き
4b…底壁
4c…蓋材
5…ジルコニア義歯
図1
図2
図3
図4