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特開2019-219281情報処理装置、管理システム、制御プログラムおよび予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-219281(P2019-219281A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】情報処理装置、管理システム、制御プログラムおよび予測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20191129BHJP
【FI】
   G01N21/59 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-117069(P2018-117069)
(22)【出願日】2018年6月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】大前 慶祐
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059CC09
2G059CC14
2G059EE01
2G059FF04
2G059HH01
2G059JJ03
2G059KK01
2G059MM05
2G059MM12
2G059MM17
2G059NN02
(57)【要約】
【課題】対象物の劣化が非定常に進んだ場合においても、正確な寿命予測を行う。
【解決手段】環境因子に応じて、経過時間に対する対象物の劣化度合いを表す劣化曲線を決定する劣化関数作成部(481)と、該劣化度合いを反映した物理量を定期的に取得する透過光強度判定部(482)と、該物理量および劣化曲線から、対象物の余寿命を予測する寿命算出部(483)を備える情報処理装置(100)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の環境因子に応じて、経過時間に対する前記対象物の劣化度合いを表す劣化曲線を決定する曲線決定部と、
前記対象物の劣化度合いを反映した物理量の測定値を定期的に取得する取得部と、
前記物理量の前記測定値と前記劣化曲線とに基づいて、前記対象物の劣化度合いが所定の劣化度合いに達するまでの期間を予測する予測部とを備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記予測部は、
前記物理量の前記測定値に対応する劣化度合いと前記劣化曲線とから、経過したと見なせる見なし経過時間を特定し、
前記見なし経過時間より後における前記劣化曲線に従って、前記対象物の劣化度合いが所定の劣化度合いに達するまでの期間を予測することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記予測部は、
ある時点における前記物理量の前記測定値に対応する劣化度合いと、該時点における前記劣化曲線から予想される劣化度合いとの差が、所定値以下の場合、第1曲線を未来の前記劣化曲線として使用し、
該時点における前記物理量の前記測定値に対応する劣化度合いと、該時点における前記劣化曲線から予想される劣化度合いとの差が、所定値より大きい場合、前記第1曲線より劣化の進行が速い第2曲線を未来の前記劣化曲線として使用することを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記対象物に含まれる混入物の検出結果を取得し、前記混入物の検出結果に応じて、未来の前記劣化曲線を修正する劣化曲線修正部を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記劣化曲線修正部は、前記混入物の量が多いほど、より劣化の進行が速くなるよう未来の前記劣化曲線を修正することを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記物理量の前記測定値は、前記対象物の分子構造に応じて変化することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記物理量は、所定波長の光の透過率であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記物理量は、所定波長の赤外線の透過率であることを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記環境因子は、温度であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記対象物は、油であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記対象物は、油であり、前記混入物は水であることを特徴とする請求項4または5に記載の情報処理装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の情報処理装置と、
前記物理量を測定するセンサと、を備えることを特徴とする管理システム。
【請求項13】
請求項1に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記曲線決定部、前記取得部、および前記予測部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【請求項14】
対象物の環境因子に応じて、経過時間に対する前記対象物の劣化度合いを表す劣化曲線を決定する曲線決定工程と、
前記対象物の劣化度合いを反映した物理量の測定値を定期的に取得する取得工程と、
前記物理量の前記測定値と前記劣化曲線とに基づいて、前記対象物の劣化度合いが所定の劣化度合いに達するまでの期間を予測する予測工程とを含むことを特徴とする予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は対象物の劣化度合いを予測する情報処理装置、管理システム、制御プログラム、および予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機器の寿命を予測する方法として、例えば、特許文献1には、絶縁物の劣化状況を診断する方法が開示されている。前記方法では、外部環境要因の影響を考慮した診断項目の補正値を取得し、前記補正値を利用して絶縁物の劣化状況を診断する。
【0003】
また、特許文献2には、機器の寿命を予測する情報処理装置等が開示されている。詳細には、当該情報処理装置は設置環境における物理量を測定し、その測定結果をセンサ情報として出力するセンサと、センサから出力されるセンサ情報に基づいて、設置環境に応じて変化する機器寿命を予測する機器寿命予測部とを備える。さらに、当該情報処理装置はセンサにより測定される物理量ごとに、時間の経過に伴う機器寿命を示す曲線によって予め定義されている複数のパターンを保持するパターン保持部を備える。機器寿命予測部は、パターン保持部に保持されている複数のパターンの中から、センサから出力されるセンサ情報に基づいて所定のパターンを選択することにより機器寿命を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−61901号公報(2005年3月10日公開)
【特許文献2】特開2017−219515号公報(2017年12月14日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は、機器または機器を構成する部材が、短期間で想定外の度合いで劣化が進むような非定常の劣化が生じることを前提とした技術ではない。そのため、上述のような従来技術は、対象機器の劣化が非定常に進むと、正確な寿命予測を行うことが困難となる虞が生じ得た。
【0006】
本発明の一態様は、正確な寿命予測を行うことができる情報処理装置等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、対象物の環境因子に応じて、経過時間に対する前記対象物の劣化度合いを表す劣化曲線を決定する曲線決定部と、前記対象物の劣化度合いを反映した物理量の測定値を定期的に取得する取得部と、前記物理量の前記測定値と前記劣化曲線とに基づいて、前記対象物の劣化度合いが所定の劣化度合いに達するまでの期間を予測する予測部とを備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係る情報処理装置の制御方法は、対象物の環境因子に応じて、経過時間に対する前記対象物の劣化度合いを表す劣化曲線を決定する曲線決定工程と、前記対象物の劣化度合いを反映した物理量の測定値を定期的に取得する取得工程と、前記物理量の前記測定値と前記劣化曲線とに基づいて、前記対象物の劣化度合いが所定の劣化度合いに達するまでの期間を予測する予測工程とを含む。
【0009】
前記の構成によれば、予測を行う時点における対象物の実際の劣化度合いを用いて対象物の寿命を予測する。そのため、予測行う時点までに対象物に非定常な劣化が生じていたとしても、当該非定常な劣化を考慮に入れた寿命予測を行うことができるという効果を奏する。
【0010】
前記予測部は、前記物理量の前記測定値に対応する劣化度合いと前記劣化曲線とから、経過したと見なせる見なし経過時間を特定し、前記見なし経過時間より後における前記劣化曲線に従って、前記対象物の劣化度合いが所定の劣化度合いに達するまでの期間を予測してもよい。
【0011】
前記の構成によれば、劣化度合いの予測値と実測値とに差が生じた場合においても、劣化度合いの実測値に基づいて鉱物油の余寿命を予測することができる。すなわち、正確な寿命予測を行うことができるという効果を奏する。
【0012】
前記予測部は、ある時点における前記物理量の前記測定値に対応する劣化度合いと、該時点における前記劣化曲線から予想される劣化度合いとの差が、所定値以下の場合、第1曲線を未来の前記劣化曲線として使用し、該時点における前記物理量の前記測定値に対応する劣化度合いと、該時点における前記劣化曲線から予想される劣化度合いとの差が、所定値より大きい場合、前記第1曲線より劣化の進行が速い第2曲線を未来の前記劣化曲線として使用してもよい。
【0013】
例えば、対象物が鉱物油である場合において、短期間に極度に劣化が進む原因に、鉱物油の水分の含量の変化を挙げることができる。鉱物油の水分の含量が増加すると、鉱物油の劣化の進行速度は速くなる。
【0014】
前記の構成によれば、鉱物油の水分の含量が増加した可能性がある場合、第1曲線より劣化の進行が速い第2曲線を未来の劣化曲線として使用する。そのため、鉱物油の余寿命を正確に予測することができるという効果を奏する。
【0015】
前記情報処理装置は前記対象物に含まれる混入物の検出結果を取得し、前記混入物の検出結果に応じて、未来の前記劣化曲線を修正する劣化曲線修正部を備えてもよい。前記の構成によれば、混入物の検出結果に応じた適切な余寿命予測を行うことができるという効果を奏する。
【0016】
前記予測部は、前記混入物の量が多いほど、より劣化の進行が速くなるよう未来の前記劣化曲線を修正してもよい。前記構成によれば、予測部は混入物の量に応じて劣化の進行が速くなるように、劣化曲線を変更することができるという効果を奏する。
【0017】
前記物理量の前記測定値は、前記対象物の分子構造に応じて変化してもよい。前記構成によれば、分子構造に応じた劣化に基づき寿命予測を行うことができるという効果を奏する。
【0018】
前記物理量は、所定波長の光の透過率であってもよい。前記の構成によれば、所定波長の光の透過率を用いて寿命予測を行うことができるという効果を奏する。
【0019】
前記物理量は、所定波長の赤外線の透過率であってもよい。前記の構成によれば、所定波長の赤外線の透過率を用いて寿命予測を行うことができるという効果を奏する。
【0020】
前記環境因子は、温度であってもよい。前記の構成によれば、曲線決定部は対象物の温度に応じて、経過時間に対する前記対象物の劣化度合いを表す劣化曲線を決定することができるという効果を奏する。
【0021】
前記対象物は、油であってもよい。前記の構成によれば、油の寿命予測を行うことができるという効果を奏する。
【0022】
前記対象物は、油であり、前記混入物は水であってもよい。前記の構成によれば、水の含有量に応じて油の寿命予測を行うことができるという効果を奏する。
【0023】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る管理システムは、上述の何れかの情報処理装置と、前記物理量を測定するセンサと、を備えていてもよい。
【0024】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御プログラムは、上述の情報処理装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記曲線決定部、前記取得部、および前記予測部としてコンピュータを機能させてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、対象物の劣化度合いが所定の劣化度合いに達するまでの期間を正確に予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態1に係る寿命予測装置の要部構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態1に係るシステムにおける寿命予測装置の適用例の一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態1に係る情報処理装置の寿命予測処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】(a)および(b)は、本発明の実施形態1に係る劣化関数が示す劣化曲線の一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態1に係る湿度を一定とし暗所にて鉱物油の加速試験を行った場合の鉱物油の絶縁性が失われるまでの時間を示したグラフである。
図6】本発明の実施形態1に係る各温度における鉱物油の寿命時間の常用対数(Ln(t))と温度T(K)の逆数との関係を示す図である。
図7】本発明の実施形態1に係る鉱物油における吸光度の常用対数Ln(I)と経過時間tとの関係を示す図である。
図8】本発明の実施形態1に係る、経過時間tまでの変圧器の温度プロファイルを示す図である。
図9】本発明の実施形態1に係る、湿度および温度を一定とし、暗所にて鉱物油の加速試験を行った場合の鉱物油の絶縁性が失われるまでの時間を示したグラフである。
図10】本発明の実施形態1に係る、各水分量を含む鉱物油における寿命時間の常用対数(Ln(t))と鉱物油に含まれる水分量Aの逆数(1/A)との関係を示す図である。
図11】本発明の実施形態1に係る、カルボニル基が吸収する波長のIRにおける鉱物油の吸光度の常用対数Ln(I)と経過時間tとの関係を示す図である。
図12】本発明の実施形態2に係る寿命予測装置4aの要部構成を示すブロック図である。
図13】本発明の実施形態2に係る情報処理装置の寿命予測処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0028】
§1 適用例
図2はシステム1における寿命予測装置(管理システム)4の適用例の一例を示す図である。はじめに、図2を用いて寿命予測装置4の適用例の概要を説明する。
【0029】
システム1は変圧器2が備える鉱物油の電気絶縁性に関する寿命を予測するシステムである。前記の構成によれば、鉱物油が電気絶縁性を失う前に、ユーザは鉱物油の取り換えを行うことができ、変圧器2の故障を予防することができる。
【0030】
図2に示すように、システム1は、変圧器2、予測機器3およびデータセンタ6を含む。また、予測機器3は、寿命予測装置4を備えている。
【0031】
寿命予測装置4は、変圧器2が備える鉱物油の環境に影響する環境因子(温度、湿度等)から、鉱物油の使用時間と劣化度との関係を表す劣化関数または劣化曲線を算出する。
【0032】
また、寿命予測装置4は、定期的に(所定のタイミングで)変圧器2の鉱物油の劣化度の測定結果を取得する。例えば、鉱物油の劣化が進行すると、鉱物油における所定波長の赤外線(infrared radiation:IR)の透過光強度(透過率)は減少する。
【0033】
したがって、寿命予測装置4は鉱物油における所定波長のIRの透過光強度の測定結果を取得することで、鉱物油の劣化度の測定結果を取得してもよい。
【0034】
寿命予測装置4は、鉱物油の劣化度から鉱物油の実質的な使用時間を算出する。ここで、実質的な使用時間とは、鉱物油が実際に使用された時間ではなく、鉱物油の劣化度に対応付いた時間である。寿命予測装置4は、上記劣化関数と鉱物油の実質的な使用時間とから鉱物油が所定の劣化度に達する時間を予測し、鉱物油の寿命を予測する。
【0035】
前記の構成によれば、予測行う時点における対象物の実際の劣化度合いを用いて対象物の寿命を予測する。そのため、予測行う時点までに対象物に非定常な劣化が生じていたとしても、当該非定常な劣化を考慮に入れた寿命予測を行うことができるという効果を奏する。
【0036】
また、上記構成は、IR光源およびIRセンサでシステムを組むことで実現が可能であり、低コストで正確な寿命予測を可能にすることができる。
【0037】
非定常な劣化としては、例えば、保全作業、天災、獣害等によって生じる鉱物油に含まれる水分量の急激の変化等を原因とする予測範囲外の劣化等を挙げることができる。
【0038】
§2 構成例
(変圧器2)
上述のように、変圧器2は電気絶縁性を有する鉱物油を備えている。また、図2に示すように、変圧器2は鉱物油を変圧器2から予測機器3に排出するためのバルブ21を備えている。鉱物油は変圧器2から排出されると、予測機器3の吸引経路33を介して予測機器3に注入される。
【0039】
(予測機器3)
予測機器3は、吸引経路33、回転翼34、回転軸35、磁石36、電動モータ37、および寿命予測装置4を備えている。吸引経路33、回転翼34、回転軸35、磁石36および電動モータ37は、鉱物油を変圧器2から予測機器3に吸引するための構成である。また、吸引経路33、回転翼34、回転軸35、磁石36および電動モータ37から成る構成は、劣化度が測定された鉱物油を変圧器2に戻してもよい。
【0040】
(寿命予測装置4)
図1は、本実施形態に係る寿命予測装置4の要部構成を示すブロック図である。
【0041】
図1および図2に示すように、寿命予測装置4は、IR光源保護筐体41、透過窓42、IR光源43、IRセンサ保護筐体44、波長カットフィルタ45、IRセンサ46、温度センサ47および情報処理装置100を備えている。
【0042】
(IR光源43)
図2に示すように、IR光源43は、IR光源保護筐体41内に配置している。IR光源43は、IR光源保護筐体41に設置されている透過窓42を介して、予測機器3に吸引された鉱物油にIRを照射する。IR光源43は、中赤外線から遠赤外線(例えば、2.5μm〜1000μmの波長のIR)を発生する構成としてもよい。透過窓42の素材としては、フッ化カルシウム(CaF)等を用いてもよい。
【0043】
また、IR光源43が発生する光を近赤外線(例えば、0.7〜2.5μmの波長のIR)または可視光(例えば、0.4〜0.7μmの波長の光)とし、透過窓42の素材をガラスとしてもよい。前記構成によれば、IR光源43に汎用品を用いることができる。また、透過窓42にかかるコストをコストダウンさせることができる。
【0044】
(IRセンサ46)
図2に示すように、IRセンサ46は、IRセンサ保護筐体44内に配置している。IRセンサ46は、IR光源43から照射されて鉱物油を透過したIRを、IRセンサ保護筐体44に設置されている透過窓42および波長カットフィルタ45を介して検知する。波長カットフィルタ45は、所定の波長のIRをカットするフィルタである。例えば、波長カットフィルタ45は、5〜6μm範囲の波長のIRを選択的に透過する構成であってもよい。
【0045】
例えば、IRセンサ46は、鉱物油の劣化に伴って増加する官能基が吸収する波長のIRを検知する構成としてもよい。換言すると、鉱物油の劣化度合いの測定値は、鉱物油の分子構造に応じて変化する。前記構成によれば、鉱物油の劣化の特性を利用して、鉱物油の劣化度合いを測定する寿命予測装置4を実現することができる。
【0046】
この場合、波長カットフィルタ45として当該官能基が吸収する波長以外の波長のIRをカットするフィルタを用いてもよい。前記官能基として、例えば、カルボキシル基、ケトン、アルデヒド等に含まれるカルボニル基(>C=O)を用いてもよい。IRセンサ46は検知したIRの透過光強度を示す信号を制御部48に出力する。
【0047】
また、寿命予測装置4に波長域の狭いIRを照射するIR光源43を適用することによって、寿命予測装置4が波長カットフィルタ45を備えていない構成としてもよい。前記の構成よれば、寿命予測装置4を構成する部材点数を減らし、寿命予測装置4の設計自由度を上げることができる。例えば、寿命予測装置4の小型化に寄与することができる。
【0048】
(温度センサ47)
温度センサ47は、鉱物油の温度を測定し、測定した温度を示す信号を制御部48に出力する。
【0049】
(情報処理装置100)
情報処理装置100は制御部48、通信部49、タイマ50、および記憶部51を備えている。
【0050】
(制御部48)
制御部48は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行う。制御部48は、劣化関数作成部(曲線決定部)481、透過光強度判定部(取得部)482、寿命算出部(予測部)483および変化率変更部(劣化曲線修正部)484を備えている。
【0051】
(劣化関数作成部481)
図4は、劣化関数作成部481が作成する劣化関数が示す劣化曲線の一例を示す図である。図4の実線で示す曲線は劣化曲線を示している。劣化曲線は鉱物油の使用時間(経過時間)と鉱物油の劣化度との関係を示している。
【0052】
劣化関数作成部481は、鉱物油(対象物)の環境因子に応じて、経過時間に対する鉱物油の劣化度合いを表す前記劣化曲線を決定する。
【0053】
詳細には、劣化関数作成部481は、温度センサ47から受信した信号が示す鉱物油の温度から、鉱物油の使用時間と鉱物油の透過光強度(劣化度)との関係を表す劣化関数を算出する。劣化関数作成部481は算出した劣化関数および劣化曲線の少なくとも1つを示す劣化関数データ511を記憶部51に格納する。
【0054】
(透過光強度判定部482)
透過光強度判定部482は、IRセンサ46から鉱物油の透過光強度を、タイマ50を参照して所定の周期にて取得する。タイマ50は透過光強度判定部482が透過光強度を取得してからの経過時間、または。寿命算出部483が鉱物油の寿命を算出してからの経過時間を示す。当該透過光強度は鉱物油(対象物)の劣化度合いを反映している。
【0055】
換言すると、透過光強度判定部482は対象物の劣化度合いを反映した物理量の測定値を定期的に取得する。
【0056】
透過光強度判定部482は、劣化関数データ511から予測される現在の透過光強度の予測値と取得した透過光強度の実測値とを比較する。
【0057】
透過光強度判定部482は、実測値と予測値との差が以下(1)から(3)の何れかであるかを判定する。
【0058】
(1)実測値と予測値との差が第1の閾値未満
(2)実測値と予測値との差が第1の閾値以上、かつ、第2の閾値未満
(3)実測値と予測値との差が第2の閾値以上
(1)の場合、透過光強度判定部482は、透過光強度の予測値を寿命算出部483に出力する。
【0059】
(2)の場合、透過光強度判定部482は、透過光強度の実測値を寿命算出部483に出力する。
【0060】
(3)の場合、透過光強度判定部482は、透過光強度の予測値と実測値とを寿命算出部483に出力する。
【0061】
なお、透過光強度判定部482は吸光度を取得して透過光強度を算出する構成としてもよい。
【0062】
(変化率変更部484)
変化率変更部484は、劣化関数データ511が示す劣化曲線の変化率を変更する。詳細には、変化率変更部484は、取得した透過光強度の実測値と予測値との差を算出する。例えば、変化率変更部484は、記憶部51に格納されている変化率テーブル512を参照し、実測値と予測値との差の大きさに対応した変化率に設定してもよい。例えば、変化率テーブル512には、実測値と予測値との差の大きさに応じた変化率が示されている。
【0063】
変化率変更部484は、劣化曲線の変化率が設定した変化率となるように、劣化関数データ511を変更する。その後、変化率変更部484は、透過光強度の実測値を寿命算出部483に出力する。すなわち、寿命算出部483は劣化曲線の変化率が変更された劣化関数データ511を用いて、後述する寿命時間の算出を行う。
【0064】
(寿命算出部483)
寿命算出部483は、取得した透過光強度と劣化曲線とに基づいて、鉱物油の劣化度合いが所定の劣化度合いに達するまでの期間を予測する。
【0065】
詳細には、寿命算出部483は、劣化関数データ511を参照して、透過光強度判定部482または変化率変更部484から出力された透過光強度の実測値または予測値に対応する経過時間を算出する。寿命算出部483は、算出した経過時間を用いて、鉱物油の余寿命を算出する。寿命算出部483は算出した鉱物油の余寿命を示す信号を通信部49を介して外部機器であるデータセンタ6に出力する。
【0066】
(通信部49)
通信部49は外部機器との通信を行う。通信部49はケーブルなどを利用した有線の通信を行ってもよいし、無線通信を行ってもよい。
【0067】
(データセンタ6)
データセンタ6は、例えば、変圧器2の管理を行うためのものである。データセンタ6は、寿命予測装置4から鉱物油の寿命時間(余寿命)を示す信号を受信する。データセンタ6は表示部などを備えていてもよい。データセンタ6は寿命予測装置4が予測した寿命時間を、当該表示部に表示する等してユーザに変圧器2の鉱物油の寿命時間を報知する。
【0068】
§3 動作例
(情報処理装置100の処理の流れの例)
図3は情報処理装置100の寿命予測処理の流れの一例を示すフローチャートである。図3を用いて、情報処理装置100の寿命予測処理の流れの一例について説明する。
【0069】
劣化関数作成部481は、温度センサ47から鉱物油の温度を示す信号を取得する(S1)と、取得した信号が示す温度を用いて、鉱物油の使用時間と鉱物油の透過光強度(劣化度)との関係を表す劣化関数を算出する(劣化曲線を生成する)。続いて、寿命算出部483は劣化関数データ511から鉱物油の寿命時間を予測する(S2:曲線決定工程)。ここで、寿命算出部483による寿命時間の予測の詳細について図4の(a)を用いて説明する。図4の(a)において実線で示す曲線は、劣化関数作成部481が算出した劣化関数を表すグラフ(劣化曲線)である。当該グラフの横軸は鉱物油の使用時間を示しており、縦軸は鉱物油の透過光強度を示している。また、縦軸には寿命判定値が設定されている。寿命算出部483は、鉱物油の透過光強度が寿命判定値に達する予測時点(Lt1)を鉱物油の寿命の時点を予測し、現在までの使用時間と鉱物油の寿命の時点とから鉱物油の余寿命時間を予測する。
【0070】
例えば、寿命算出部483は、予測される鉱物油の寿命の時点から、鉱物油の使用開始時の寿命時間(初期寿命時間)を算出し、当該初期寿命時間から現在までの使用時間を差し引くことで鉱物油の余寿命時間を算出する。
【0071】
続いて、透過光強度判定部482は、寿命算出部483が寿命を算出してから所定の期間が経過すると(S3)、透過光強度判定部482はIRセンサ46から鉱物油の透過光強度を取得する(S4:取得工程)。続いて、透過光強度判定部482は劣化関数データ511から予測される現在の透過光強度の予測値と取得した透過光強度の実測値との差が第1の閾値以上であるかを判定する(S5)。実測値と予測値との差が第1の閾値未満である場合(S5でNO)、寿命算出部483は予測値に対応する使用時間から寿命時間を予測する(S6:予測工程)。そして、処理はS3に戻る。
【0072】
実測値と予測値との差が第1の閾値以上である場合(S5でYES)、透過光強度判定部482は劣化関数データ511から予測される現在の透過光強度の予測値と取得した透過光強度の実測値との差が第2の閾値以上であるかを判定する(S7)。実測値と予測値との差が第2の閾値未満である場合(S7でNO)、寿命算出部483は劣化曲線から実測値に対応する使用時間を算出する。すなわち、劣化曲線における使用時間を補正する(S8)。続いて、寿命算出部483は補正した使用時間から寿命時間を予測する(S6)。そして、処理はS3に戻る。
【0073】
ここで、図4の(a)を参照して、S5、S7、S8およびS6に続く処理を具体的に説明する。図4の(a)に示すように、劣化曲線における時点t’の透過光強度の予測値は予測値Y1となる。一方で、時点t’において、IRセンサ46が測定した透過光強度IRの実測値が実測値YA’であったとする。予測値Y1と実測値YA’との差Aが第1の閾値以上、かつ、第2の閾値未満である場合、寿命算出部483は劣化曲線における使用時間を以下のように補正する。寿命算出部483は劣化曲線において透過光強度が実測値YA’に対応する時点taを現在とし、現在までの使用時間を時点taまでの時間(見なし経過時間)と補正する。続いて、寿命算出部483は時点taと寿命の時点Lt1とから、時点taから寿命の時点Lt1までの時間を算出することによって現在の鉱物油の寿命時間(余寿命)を予測する。
【0074】
上述の処理は、以下のように換言することができる。寿命算出部483は透過光強度の実測値(測定値)に対応する劣化度合いと劣化曲線とから、経過したと見なせる見なし経過時間を特定する。続いて、寿命算出部483は前記見なし経過時間より後における劣化曲線に従って、鉱物油の劣化度合いが寿命判定値(所定の劣化度合い)に達するまでの期間を予測する。
【0075】
前記の構成によれば、劣化度合いの予測値と実測値とに差が生じた場合においても、鉱物油の余寿命を正確に予測することができる。
【0076】
実測値と予測値との差が第2の閾値以上である場合(S7でYES)、変化率変更部484は劣化曲線の変化率を変更する(S9)。続いて、寿命算出部483は変化率が変更された劣化曲線から寿命時間を予測する(S6)。そして、処理はS3に戻る。
【0077】
ここで、図4の(b)を参照して、S5、S7、S9およびS6に続く処理を具体的に説明する。図4の(b)に示すように、劣化曲線における時点t’’の透過光強度の予測値は予測値Y2となる。一方で、時点t’’において、IRセンサ46から取得した透過光強度IRの実測値が実測値YA’’であったとする。予測値Y2と実測値YA’’との差Bが第2の閾値以上である場合、変化率変更部484は劣化関数データ511が示す劣化曲線の変化率を、劣化の進行が速くなるように変更する。詳細には、変化率変更部484は実測値と予測値との差の大きさに応じて、当該変化率を変更する。図4の(b)には、変化率が変更された劣化曲線は一点鎖線によって示されている。図4の(b)に示すように、変化率が変更された劣化曲線は時点t’’の実測値YA’’から開始する。また、変化率および劣化曲線の開始位置が変更されることによって、鉱物油の透過光強度が寿命判定値に達する予測時点がLt2に変更する。続いて、寿命算出部483は時点t’’と変更された寿命の時点Lt2とから、鉱物油の余寿命を算出する。
【0078】
上述の処理は、以下のように換言することができる。ある時点における鉱物油の透過光強度に対応する劣化度合いと、該時点における劣化曲線から予想される劣化度合いとの差が、所定値以下の場合、寿命算出部483は第1曲線(図4の(b)における実線で示す曲線)を未来の劣化曲線として使用する。また、該時点における鉱物油の透過光強度に対応する劣化度合いと、該時点における劣化曲線から予想される劣化度合いとの差が、所定値より大きい場合、寿命算出部483は第1曲線より劣化の進行が速い第2曲線(図4の(b)における一点鎖線で示す曲線)を未来の劣化曲線として使用する。
【0079】
例えば、鉱物油において短期間に極度に劣化が進む原因として、鉱物油の水分の含量の変化を挙げることができる。鉱物油の水分の含量が増加すると、鉱物油の劣化の進行速度は速くなる。
【0080】
前記の構成によれば、鉱物油の水分の含量が増加した可能性がある場合、第1曲線より劣化の進行が速い第2曲線を未来の劣化曲線として使用する。そのため、鉱物油の余寿命を正確に予測することができる。なお、劣化曲線の候補となる曲線は3つ以上用意されており、予測値Y2と実測値YA’’との差Bの大きさに応じて、劣化曲線となる曲線が選択されてもよい。
【0081】
また、上述の説明では、寿命予測装置4は透過光強度(透過率)を用いて鉱物油の余寿命を予測する構成を示したが、寿命予測装置4は吸光度を用いて鉱物油の余寿命を予測する構成としてしてもよい。
【0082】
(劣化関数の作成例1)
本実施形態に係る劣化関数は以下に示すように作成(算出)されてもよい。本例においては、劣化関数作成部481は、鉱物油の環境因子を温度として、温度によって劣化関数を作成する。
【0083】
図5は、湿度を一定(60%)とし暗所にて鉱物油の加速試験を行った場合の鉱物油の絶縁性が失われるまでの時間を示したグラフである。横軸は経過時間を示し、縦軸は試験を行ったサンプル(例えば、サンプル数が10)のうち絶縁性を失ったサンプルのパーセント(不信頼度)を示している。図5においては、温度Tとして、90℃、105℃および120℃の状態のサンプルにおける絶縁性が失われるまでの時間をワイブル分布にて示している。例えば、各温度において不信頼度が70%となる経過時間を各温度の寿命としてもよい。
【0084】
図6は、各温度における寿命の常用対数(Ln(t))と温度T(K)の逆数との関係を示す図である。寿命Lはアレニウスモデルを適用することにより以下の式で表すことができる。なお、図6に示すaは傾きを示している。
【0085】
Ln(L)=a×(1/T)
L=exp(a/T)・・・式1
次に、例えば、特定の温度(例えば、120℃)、一定の湿度(60%)、暗所において鉱物油の加速劣化試験を行った場合の鉱物油の化学変化による劣化度を示す関数を作成する例について説明する。
【0086】
図7は、鉱物油における吸光度の常用対数Ln(I)と経過時間tとの関係を示す図である。当該吸光度はカルボニル基が吸収する波長のIRの吸光度である。
【0087】
本例においては、鉱物油の劣化度の原因を鉱物油のカルボニル基の増加とし、カルボニル基が吸収する波長(5.7μm〜5.9μmの波長)のIRの吸光度(ピーク面積I)から鉱物油の劣化度を算出する。図7に示すように、縦軸をIRの吸光度の常用対数とし、横軸を経過時間とすると図7に示す関係が得られた。なお、図7に示すbは傾きを示している。前記結果から、鉱物油におけるカルボニル基の増加は酸素の量を一定とした一次反応であると判断することができた。
【0088】
以上の結果から、温度120℃、湿度60%、暗所における、カルボニル基が吸収する波長の鉱物油の吸光度と経過時間との関係は以下の式で表すことができる。
【0089】
Ln(I)=b×t
I=exp(bt)・・・式2
(鉱物油の余寿命の算出例1)
本実施形態に係る鉱物油の余寿命の算出は以下に説明するように行われてもよい。
【0090】
図8は、経過時間tまでの変圧器2における温度プロファイルを示す図である。図8に示すグラフの縦軸は温度Tを示しており、横軸は経過時間を示している。
【0091】
例えば、経過時間tまでの平均温度を平均温度TAVE.tとする。経過時間tにおける余寿命LReは以下の計算式により算出することができる。
【0092】
LRe =L-t=exp(a/TAVE.t) - t・・・式3
また、経過時間tにおいて、IR光源43からIRを鉱物油に照射し、カルボニル基の波長吸収帯以外をカットするバンドパスフィルタである波長カットフィルタ45を透過してIRセンサ46に検知されたIRの吸光度をItとする。
【0093】
この場合、前記式2が示す劣化関数と吸光度Itとから算出される経過時間trealは、前記式2の逆関数から以下の式で表すことができる。
【0094】
I-1=t=Ln(I)/b
treal=Ln(It)/b・・・式4
経過時間tと吸光度Itおよび劣化関数により算出された経過時間trealとの差は、定常の劣化だけではなく、非定常な劣化(検査、保全、停電、非定常使用等)を原因として生じる可能性が高い。そのため、trealを実質的な経過時間とすることによって、適切な余寿命を算出することができる。
【0095】
よって、余寿命LReを算出するための上述の式3におけるtをtrealに変換(補正)した下記の式5によって、適切な余寿命LReを算出することができる。
【0096】
LRe =L - t=exp(a/TAVE.t) - treal・・・式5
(劣化関数の作成例2)
次に、本実施形態に係る劣化関数の他の作成の例について説明する。本例においては、劣化関数作成部481は鉱物油の水分含量に応じて劣化関数を作成する。
【0097】
図9は、湿度および温度を一定(例えば、湿度60%、温度105℃)とし、暗所にて鉱物油の加速試験を行った場合の鉱物油の絶縁性が失われるまでの時間を示したグラフである。横軸は経過時間を示し、縦軸は試験を行ったサンプル(例えば、サンプル数が10)のうち絶縁性を失ったサンプルのパーセント(不信頼度)を示している。図9においては、鉱物油に含まれる水分量が100ppm、300ppmおよび500ppmのサンプルにおける絶縁性が失われるまでの時間をワイブル分布にて示している。例えば、各水分量を含むサンプルにおいて不信頼度が70%となる経過時間を、各水分量を含む鉱物油の寿命としてもよい。
【0098】
図10は、各水分量を含む鉱物油における寿命の常用対数(Ln(t))と鉱物油に含まれる水分量Aの逆数(1/A)との関係を示す図である。寿命Lはアレニウスモデルを適用することにより以下の式で表すことができる。なお、図10に示すa’は傾きを示している。
【0099】
Ln(L)=a'×(1/A)
L=exp(a'/A)・・・式6
次に、例えば、一定の温度(105℃)、一定の湿度(60%)、一定の鉱物油に含まれる特定の水分量(例えば、水分量300ppm)、暗所において鉱物油の加速劣化試験を行った場合の鉱物油の化学変化による劣化度を示す関数を作成する例について説明する。
【0100】
図11は、カルボニル基が吸収する波長の鉱物油における吸光度の常用対数Ln(I)と経過時間tとの関係を示す図である。
【0101】
本例においては、鉱物油の劣化度の原因を鉱物油のカルボニル基(>C=O)の増加とし、カルボニル基が吸収する波長の吸光度(ピーク面積I)から鉱物油の劣化度を算出する。図11に示すように、縦軸をIRの吸光度の常用対数とし、横軸を経過時間とすると図11に示す関係が得られた。なお、図11に示すb’は傾きを示している。前記結果から、鉱物油におけるカルボニル基の増加は酸素の量を一定とした一次反応であると判断することができた。
【0102】
以上の結果から、温度105℃、湿度60%、鉱物油に含まれる水分量が300ppm、暗所における、鉱物油のカルボニル基が吸収する波長のIRの吸光度と経過時間との関係は以下の式で表すことができる。
【0103】
Ln(I)=b'×t
I=exp(b't)・・・式7
なお、劣化関数作成部481は、劣化関数(劣化曲線)に対する複数の環境因子(温度、湿度、鉱物油の水分含量、照度など)の寄与度を算出し、複数の環境因子から劣化関数(劣化曲線)を作成してもよい。
【0104】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0105】
§1 構成例
図12は、本実施形態に係る寿命予測装置4aの要部構成を示すブロック図である。
【0106】
図12に示すように、本実施形態に係る寿命予測装置4aは実施形態1にて説明した寿命予測装置4が備える透過光強度判定部482の代わりに透過光強度判定部482aを備えている。また、寿命予測装置4aは変化率変更部484の代わりに変化率変更部484aを備えている。
【0107】
変化率変更部484aは、鉱物油(対象物)に含まれる水分(混入物)の検出結果を取得し、鉱物油の水分含量に応じて、劣化曲線を修正する。
【0108】
前記の構成によれば、鉱物油の水分含量に応じた適切な鉱物油の余寿命予測を行うことができる。
【0109】
実施形態1にて説明した透過光強度判定部482および変化率変更部484が行う処理と透過光強度判定部482aおよび変化率変更部484aが行う処理との違いについては、下記の「情報処理装置100aの処理の流れの例」にて詳細に説明する。
【0110】
また、寿命予測装置4aはIRセンサ46の代わりにIRセンサ46aを備えている。IRセンサ46aはIRセンサ46の機能に加え、水に吸収される波長の吸光度を変化率変更部484aに出力する。
【0111】
また、寿命予測装置4aは記憶部51の代わりに、吸光度−水分含量対応テーブル513aおよび水分含量−変化率対応テーブル514aを格納している記憶部51aを備えている。
【0112】
吸光度−水分含量対応テーブル513aには、水に吸収される波長の吸光度の値に対応する水分含量が示されている。水分含量−変化率対応テーブル514aには、変化率変更部484が変更する劣化曲線の変化率が鉱物油の水分含量に対応させて示されている。
例えば水分含量−変化率対応テーブル514aには、水分含量が多いほど劣化の進行が速くなるように変化率が対応付いている。すなわち、変化率変更部484aは対象物への混入物の量が多いほど、より劣化の進行が速くなるよう未来の劣化曲線を修正する。
【0113】
前記構成によれば、混入物の量に応じて劣化の進行が速くなるように劣化曲線を変更することができる。
【0114】
§2 動作例
(情報処理装置100aの処理の流れの例)
図13は情報処理装置100aの寿命予測処理の流れの一例を示すフローチャートである。図13を用いて、情報処理装置100aの寿命予測処理の流れの一例について説明する。なお、図13に示す処理のうち、実施形態1の図3に示す処理と同様の処理については同じスッテプ番号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0115】
透過光強度判定部482aは前記予測値と前記実測値との差が第2の閾値以上であるかを判定する(S7)。前記実測値と前記予測値との差が第2の閾値以上である場合(S7でYES)、透過光強度判定部482aは変化率変更部484aに水に吸収される波長の鉱物油における吸光度の取得を指示する。変化率変更部484aは、水に吸収される波長のIRを鉱物油に照射することによって得られる吸光度の値をIRセンサ46aから取得する(S10)。続いて、変化率変更部484aは、吸光度−水分含量対応テーブル513aおよび水分含量−変化率対応テーブル514aを参照し、変更する劣化曲線の変化率を決定する。変化率変更部484aは、劣化曲線の変化率が決定して変化率となるように劣化関数データを変更する(S11)。その後、寿命算出部483は変更された劣化関数データを用いて、鉱物油の余寿命を予測する(S6)。
【0116】
なお、上述の実施形態においては、寿命予測装置4および4aが、変圧器2が備える鉱物油の寿命を予測する構成について説明した。例えば、エンジン動作時の温度がエンジンオイルの劣化に影響を与える。そのため、エンジン動作時に温度センサが検出した温度から、劣化関数を作成してもよい。よって、寿命予測装置4および4aをエンジンが備えるエンジンオイルの余寿命の予測に適用することができる。
【0117】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置100および情報処理装置100aの制御ブロック(特に劣化関数作成部481、透過光強度判定部482、透過光強度判定部482a、寿命算出部483、変化率変更部484および変化率変更部484a)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0118】
後者の場合、情報処理装置100および情報処理装置100aは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0119】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0120】
4、4a 寿命予測装置(管理システム)
481 劣化関数作成部(曲線決定部)
482 透過光強度判定部(取得部)
483 寿命算出部(予測部)
484、484a 変化率変更部(劣化曲線修正部)
100、100a 情報処理装置
S2 曲線決定工程
S4 取得工程
S6 予測工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13