【解決手段】水平方向に回転可能な基準点Pに設けられる測量装置を有する測量装置本体7と、基準点Pが転写される部位に設置されるターゲット装置3と、表示部と誘導端末5とを具備する鉛直測定システム1であって、ターゲット装置3は測量装置本体7に向ってターゲット光を射出するターゲット4を有し、測量装置本体7は、測量装置本体7の回転軸心方向を視準し、ターゲット4の像を取得する視準像受光部と、演算制御部とを具備し、演算制御部は、測量装置本体7を回転して得られるターゲット4像の軌跡から回転軸心の位置を演算し、ターゲット4像の位置情報と回転軸心の位置情報とを誘導端末5に送信する様構成され、誘導端末5はターゲット4像の位置情報と回転軸心の位置情報に基づきターゲット4の位置、天頂の位置を表示する。
整準部と該整準部に水平方向に回転可能に設けられた測量装置本体とを有し、基準点に設けられる測量装置と、基準点が転写される部位に設置されるターゲット装置と、表示部と第1通信部を有し、前記ターゲット装置側で使用される誘導端末とを具備する鉛直測定システムであって、前記ターゲット装置は、前記測量装置本体に向ってターゲット光を射出するターゲットを有し、前記測量装置本体は、該測量装置本体の回転軸心方向を視準し、前記ターゲットの像を取得する視準像受光部と、前記測量装置本体の傾斜を検出する傾斜センサと、前記誘導端末との間でデータの授受を行う第2通信部と、演算制御部とを具備し、該演算制御部は、前記測量装置本体を回転して得られる前記ターゲット像の軌跡から前記回転軸心の位置を演算し、前記ターゲット像の位置情報と前記回転軸心の位置情報とを前記第2通信部を介して前記誘導端末に送信する様構成され、前記誘導端末は前記第1通信部を介して受信した前記ターゲット像の位置情報と前記回転軸心の位置情報に基づき前記表示部に前記ターゲットの位置、天頂の位置を表示する様構成された鉛直測定システム。
前記測量装置本体は、前記傾斜センサを更に有し、前記演算制御部は前記傾斜センサの検出結果に基づき前記回転軸心の位置を補正する請求項1に記載の鉛直測定システム。
前記ターゲットはプリズムであり、前記視準像受光部はターゲット光を光軸上に射出する光源部を有し、前記測量装置本体は手動で回転される請求項1又は請求項2に記載の鉛直測定システム。
前記演算制御部は、所定時間で時分割し、所定時間毎に前記ターゲット像を取得し、所定時間内に取得した前記ターゲット像のデータを平均化し、又前記演算制御部は所定時間の時間長を変更可能とした請求項1又は請求項2に記載の鉛直測定システム。
前記ターゲットはプリズムであり、前記測量装置本体は測距部を更に有し、該測距部は光軸上に測距光を射出し、前記ターゲットは測距光を再帰反射し、反射測距光及びターゲット光として射出し、前記測距部は前記反射測距光を受光し、前記ターゲット迄の距離を測定し、前記測量装置本体は手動で回転され、前記演算制御部は、前記ターゲット像と前記光軸との画像上でのズレと測距結果に基づき前記ターゲットと前記光軸間の実際のズレ量を前記表示部に数値で表示させる様構成した請求項1又は請求項2に記載の鉛直測定システム。
前記測量装置本体は、測距部、視準部、水平角検出器、鉛直角検出器、水平回転駆動部、鉛直回転駆動部を更に具備し、前記測量装置がトータルステーションとして構成された請求項1又は請求項2に記載の鉛直測定システム。
前記演算制御部は、所定時間で時分割し、所定時間毎に前記ターゲット像、測距値を取得し、所定時間内に取得した前記ターゲット像、測距値のデータを平均化し、又前記演算制御部は所定時間の時間長を変更可能とした請求項5に記載の鉛直測定システム。
基準点の上方で構造物の階上の床に貫通孔を形成する工程と、測量装置を基準点に設置する工程と、前記貫通孔にターゲット装置を設置する工程と、前記測量装置の視準光軸を鉛直方向に向け、前記測量装置を回転させる工程と、該測量装置により前記ターゲット装置からのターゲット像を受光素子で受光する工程と、受光素子上で前記ターゲット像の軌跡及び前記測量装置の傾斜センサの検出結果に基づき前記基準点に基づき天頂位置を演算する工程と、前記天頂位置及び前記ターゲット像を誘導端末の表示部に表示する工程と、前記天頂位置と前記ターゲット像とを一致させる工程と、前記天頂位置と前記ターゲット像とが一致した状態で、前記ターゲット装置の位置を前記階上の床に刻点する工程と、前記刻点に基づき前記基準点を前記階上の床にトレースする工程とを含む請求項1〜請求項8のいずれかの鉛直測定システムを用いた基準点のトレース方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0019】
図1は、本実施例に係る鉛直測定システム1を示しており、図中、2は基準点P上に設置される測量装置であり、測距光を射出し、反射光を受光し、測距測角を行う、図示では測量装置の1つであるトータルステーションを示している。又、3はターゲット装置を示し、該ターゲット装置3は入射した測距光をターゲット光として再帰反射(即ち、射出)するターゲット4を有する。5は誘導端末であり、通信機能、表示部を有し、誘導端末5として、例えば、携帯可能或は片手で保持可能な、スマートフォン、タブレット等が用いられる。
【0020】
先ず、トータルステーション2について略述する。尚、該トータルステーション2については、特許文献1又は特許文献2等に示される周知の装置を使用することができる。
【0021】
測量装置本体7は三脚8に整準部9を介して設置され、前記測量装置本体7は前記整準部9によって水平に整準され、水平回転軸(図示せず)を介して水平方向に回転可能となっており、前記測量装置本体7は望遠鏡部11を有し、該望遠鏡部11は鉛直回転軸(図示せず)を介して鉛直方向に回転可能となっている。
【0022】
又前記測量装置本体7は、該測量装置本体7の水平回転角を検出する水平角検出器28(後述)、及び前記望遠鏡部11の鉛直角を検出する鉛直角検出器29(後述)を具備している。又、前記望遠鏡部11には測距光を射出、反射測距光を受光して測距を行う測距部22(後述)が内蔵されている。
【0023】
基準点Pが転写される部位には、例えば、階上の床には、貫通孔13が形成される。該貫通孔13が形成される位置は、設計図により求められ、前記基準点Pの直上となっている。前記貫通孔13に前記ターゲット4が嵌込まれる様に、前記ターゲット装置3が前記貫通孔13に設置される。該貫通孔13の径は、ビルの施工誤差を考慮し、前記ターゲット4の位置調整が可能な様に、該ターゲット4の直径に対して充分な大きさとなっている。
【0024】
図2〜
図4を参照し、前記ターゲット装置3について説明する。
【0025】
前記ターゲット4は保持プレート14に設けられ、該保持プレート14は前記貫通孔13より落下しない様な形状、大きさとなっており、図示では矩形板15a,15bが直交2方向に延出する十字形状となっている。
【0026】
前記ターゲット4は、プリズム或はコーナキューブであり、前記保持プレート14の中心に設けられ、前記ターゲット4の周囲より下方が透視できる様になっている。
【0027】
前記保持プレート14の下面が階上の床面に当接し、前記ターゲット4の光学中心(浮上点)4aは、前記保持プレート14の下面と合致する。又、前記ターゲット4の光軸は前記保持プレート14の下面に対して垂直となっている。
【0028】
前記矩形板15a,15bの先端部上面はテーパ面となっており、該テーパ面には視標線16a,16bが刻印され、該視標線16a,16bの延長は前記光学中心4aで交差する様に設定されている。
【0029】
尚、前記視標線16a,16bに代え、前記矩形板15a,15bの先端にノッチが形成されてもよい。又、前記保持プレート14は、矩形或は円形の透明板であってもよい。
【0030】
図5は、基準点Pを階上に転写する場合の概略を示している。尚、
図5中、17は階上の床を示している。
【0031】
前記望遠鏡部11を回転し、前記望遠鏡部11の光軸10を概略鉛直とする。
【0032】
前記望遠鏡部11より測距光或は視準光(以下、視準光18とする)を射出する。該視準光18の照射点が前記基準点Pを概略上方に転写した位置となる。
【0033】
前記視準光18が前記ターゲット4の前記光学中心4aに入射すれば、前記ターゲット4からの反射光(ターゲット光)は前記光軸10と合致する。
【0034】
合致したかどうかの判断は、前記望遠鏡部11が有する視準像受光部(後述)によって行う。即ち、視準像受光部が取得する反射光の画像が前記光軸10に一致したかどうかで判断される。
【0035】
図6を参照して前記測量装置本体7について更に説明する。
【0036】
該測量装置本体7は、主に演算制御部21、測距部22、視準部23、視準像受光部24、傾斜センサ(チルトセンサ)25、記憶部26、通信部27、前記水平角検出器28、前記鉛直角検出器29、水平回転駆動部31、鉛直回転駆動部32、表示部33、操作部34等から構成される。
【0037】
前記測距部22は、測距光を発する発光素子、例えば、レーザダイオード(LD)と、測定対象からの反射測距光を受光する測距受光素子、例えばフォトダイオード(PD)或はアバランシフォトダイオード(APD)と、測距光を測定対象に向けて射出し、反射測距光を受光し前記測距受光素子に導く測距光学系とを有し、測距光の発光タイミングと、反射測距光の受光タイミングとの時間差と、光速に基づき測定対象迄の距離を測定する。前記測距部22は、光波距離計として機能する。
【0038】
前記視準部23は、視準光を発する発光素子、例えば、レーザダイオード(LD)と、測定対象からの反射視準光を受光する視準像受光素子、例えばイメージCMOSセンサ、或はCCDイメージセンサと、測定対象に向けて視準光を射出し、測定対象からの反射視準光を受光する視準像受光部24と、前記視準像受光素子に導く視準光学系とを具備し、前記視準像受光素子に於ける反射視準光の受光位置に基づき測定対象の視準を行う。ここで、測距光学系、視準光学系は共通の光学系、或は一部が共通の光学系であってもよい。
【0039】
前記視準像受光部24は撮像光軸(図示せず)を有し、該撮像光軸は前記測距部22の測距光軸、前記視準部23の追尾光軸と平行であり、それぞれの光軸間距離は既知となっている。或は、前記測距光軸、前記視準光軸と共通(2光軸が合致)している。図示では、前記測距光軸、前記視準光軸を前記光軸10として示している。
【0040】
前記視準像受光部24は、撮像光学系、イメージセンサ(図示せず)を備え、前記測距光軸、或は前記視準光軸を中心に所定範囲(所定の画角で)の画像を取得する。又、前記イメージセンサには、CCD、CMOSセンサ等の画素の集合体、各画素の画像上の位置が特定できる様になっている。例えば、画像の中心を原点とする座標系で位置が特定される様になっている。従って、前記画素から出力される信号は、画像信号と共にイメージセンサ上での位置情報(座標情報)も含んでいる。
【0041】
前記傾斜センサ25は、高精度に水平を検出可能となっている。又、前記傾斜センサ25に使用される1つとしては、液面に検出光を入射し、液面で反射された反射光を受光素子で受光し、反射光の受光位置の変化で傾斜を検出するチルトセンサがある。
【0042】
前記記憶部26としては、HDD、半導体メモリ、メモリカード等の記憶装置が用いられる。前記記憶部26には、各種プログラムが格納されている。プログラムとしては、前記測量装置本体7が測距、視準を実行する為に必要なシーケンスプログラム、測距を行う為の演算プログラム、測距部22、視準部23を制御する為の制御プログラム、前記測距部22、前記視準部23で取得した画像を処理する画像処理プログラム、例えば、前記視準部23で取得した反射視準光の像の中心位置を求める画像処理プログラム、前記水平角検出器28、前記鉛直角検出器29からの検出結果に基づき水平角、鉛直角を演算する角度検出プログラム、前記誘導端末5との間でデータ、画像データの授受を行う通信プログラム等が含まれている。
【0043】
又、前記記憶部26には、測定データ、画像データ等が格納される。
【0044】
前記通信部27は送受信回路を含み、前記通信プログラムにより前記誘導端末5と無線で通信可能である。
【0045】
前記水平角検出器28は、前記測量装置本体7の前記整準部9に対する水平回転角度を検出し、回転角度に基づき水平角が検出される。検出された水平角は前記演算制御部21に入力される。前記水平角検出器28としては、エンコーダが用いられる。
【0046】
前記鉛直角検出器29は、前記測量装置本体7に対する前記望遠鏡部11の鉛直回転角度を検出し、前記望遠鏡部11の前記光軸10の鉛直角を検出する。検出された鉛直角は前記演算制御部21に入力される。前記鉛直角検出器29としては、エンコーダが用いられる。
【0047】
前記水平回転駆動部31は、水平モータ、モータドライバを有し、前記演算制御部21からの制御信号に基づき、水平モータが駆動され、前記測量装置本体7を水平回転する。
【0048】
前記鉛直回転駆動部32は、鉛直モータ、モータドライバを有し、前記演算制御部21からの制御信号に基づき、鉛直モータが駆動され、前記望遠鏡部11を鉛直回転させる。
【0049】
前記操作部34は、測定に必要な条件、測定の為のコマンド等を入力する。又、前記表示部33は、前記操作部34の入力情報を表示、又測定状態、測定結果等を表示する。尚、前記操作部34をタッチパネルとして、操作部34と表示部33とを兼用させてもよい。
【0050】
前記演算制御部21には、本装置に特化されたCPU、或は汎用CPUが用いられる。前記演算制御部21は、前記記憶部26に格納された各種プログラムを展開し、又実行して前記測距部22を制御して測距を行い、前記視準部23を制御して測定対象の視準を行う。前記水平角検出器28、前記鉛直角検出器29の検出結果に基づき前記水平回転駆動部31、前記鉛直回転駆動部32を制御して前記測量装置本体7、前記望遠鏡部11を所要の状態に回転し、位置決めし、或は視準方向を測定する。
【0051】
図7は、前記誘導端末5の概略構成図を示している。
【0052】
該誘導端末5は通信機能を有し、主に演算制御部35、記憶部36、通信部37、表示部38、操作部39を具備している。
【0053】
前記演算制御部35としては、前記誘導端末5に特化されたCPU、或は汎用CPUが用いられる。
【0054】
前記記憶部36としては、HDD、半導体メモリ、メモリカード等の記憶装置が用いられる。前記記憶部36には、前記測量装置本体7との間でデータ、画像データの通信を行う為の通信プログラム、データ、画像データを前記表示部38に表示する為の表示プログラム等のプログラムが格納されている。
【0055】
前記通信部37は送受信回路を含み、前記通信プログラムにより前記通信部27と無線で通信可能である。
【0056】
前記表示部38は、前記操作部39からの入力情報、前記通信部27から送信される、測定データ、画像データを表示する。
【0057】
前記操作部39は、前記測量装置本体7を遠隔操作する為の指令を入力し、又前記通信部27からの情報を表示させる指令を入力する。尚、前記表示部38をタッチパネルとして前記操作部39と兼用とし、該操作部39を省略してもよい。
【0058】
以下、
図8〜
図10を参照して本実施例の作動を説明する。
【0059】
前記トータルステーション2を基準点Pに設置し、前記整準部9により前記測量装置本体7を水平姿勢に整準する。該測量装置本体7の姿勢(傾き)は前記傾斜センサ25によって検出される。前記ターゲット装置3を階上の貫通孔13に設置する(
図8(A))。
【0060】
次に、前記ターゲット装置3を設置した作業者により、前記誘導端末5により前記望遠鏡部11を遠隔操作する。前記望遠鏡部11を鉛直方向に回転し、該望遠鏡部11の光軸10(測距光軸、視準光軸、撮像光軸を含む)を上向き鉛直にする。該光軸10が鉛直であるかどうかは前記鉛直角検出器29によって検出される。前記視準像受光部24は、測量装置本体7の回転軸心方向を視準し、前記ターゲット装置3の像を取得する。
【0061】
視準光を鉛直上方に射出する。この時の光軸10は、前記測量装置本体7の回転中心と合致する。前記ターゲット4は測距光を再帰反射し、該ターゲット4からは再帰反射光が射出される。再帰反射光は、前記測距部22で受光され、前記ターゲット4迄の距離が測定される。又、前記反射測距光はターゲット光として前記視準像受光部24に入射し、該視準像受光部24で前記ターゲット4の画像が取得される(
図8(B))。
【0062】
視準機能を停止させた状態で、測距光を射出した状態(即ち、前記望遠鏡部11は前記測量装置本体7に対して固定した状態)で、前記測量装置本体7を360゜、少なくとも90゜回転させる。
【0063】
前記ターゲット4が回転軸心と合致している状態では、前記視準像受光部24で取得されるターゲット像4′は、回転軸心の位置(即ち、前記測量装置本体7の回転中心)に合致し、前記測量装置本体7の回転により受光位置が変化することはない。
【0064】
ところが、
図9(A)に示される様に、前記ターゲット4の位置(光学中心)が、前記回転軸心12の位置よりずれている場合は、前記ターゲット像4′は前記回転軸心12を中心に回転する。尚、
図9(A)中、44は前記視準像受光部24で得られる画像のイメージを示している。
【0065】
前記視準像受光部24により前記測量装置本体7の回転中、継続して前記ターゲット像4′の画像を取得する。尚、連続画像を取得してもよく、或は所定時間間隔、或は所定角度間隔で静止画像を取得してもよい。
【0066】
回転中、継続してターゲット像4′を取得することで、前記回転軸心12を中心とする円の軌跡43が得られる。該軌跡43から円の中心42を演算すれば、前記回転軸心12の位置が求められる。前記光軸10、即ち測量装置本体7の回転軸心が完全な鉛直であれば、前記軌跡43の中心42は天頂位置となる。
【0067】
前記視準光は完全な平行光ではなく、広がりを有するので、前記ターゲット像4′は面積を有する像となる。正確な位置を求めるには、前記ターゲット像4′の中心が必要となるが、前記ターゲット像4′の中心は画像処理により求める。例えば、前記ターゲット像4′の光量の重心位置を求め、この重心位置を前記ターゲット像4′の中心とする。本実施例では、画像処理で正しい中心位置を求めるので、高層ビル等での作業の様に、基準点からトレース階迄の距離が大きくレーザ光の光束径が大きくなった場合でも、レーザポインタ光の中心を求めることができる。
【0068】
又、前記トータルステーション2を前記基準点Pに設置する際に、前記傾斜センサ25の検出結果に基づき前記整準部9により前記測量装置本体7の整準を行うが、前記整準部9の整準精度等から、完全な水平に整準されていない状態が発生する。
【0069】
前記画像44中の◎(2重丸)P′は、前記基準点Pを通過する鉛直線の位置(真の天頂位置)を示している。
【0070】
前記傾斜センサ25が傾斜を検出する場合、該傾斜センサ25の検出結果に基づき前記演算制御部21は、前記基準点P′の画像44内の位置(座標)を演算する。即ち、前記軌跡43の中心位置と前記傾斜センサ25の検出結果に基づき真の天頂位置が求められる。更に、前記基準点P′は、真の天頂位置を中心として前記画像44に表示される。
【0071】
従って、前記ターゲット像4′を前記基準点P′に合致させれば、前記ターゲット4を真の天頂位置に合わせることができる(
図9(B))。
【0072】
又、前記演算制御部21は現在の前記ターゲット像4′の座標を、前記視準像受光部24からの受光信号に基づき演算する。
【0073】
前記演算制御部21は、前記通信部27を介して、前記基準点P′の座標及び現在の前記ターゲット像4′の座標を、前記誘導端末5にリアルタイムで送信する。
【0074】
前記誘導端末5側では、前記演算制御部35が前記通信部37を介して受信し、更に前記演算制御部35は前記基準点P′の座標、前記ターゲット像4′の座標に基づき、前記誘導端末5の表示部38に前記基準点P′、前記ターゲット像4′を表示する。
【0075】
又、前記測量装置本体7は、前記ターゲット装置3からの反射測距光に基づき該ターゲット装置3の位置を測定できるので、前記演算制御部21は前記基準点P′と前記ターゲット像4′間の位置の偏差を演算し、前記表示部38に表示させてもよい。尚、位置の偏差については、前記演算制御部35で演算してもよい。位置の偏差が、前記表示部38に表示されることで作業者は、前記ターゲット装置3の調整量を体感的に把握できるので、作業性が向上する。
【0076】
又、前記演算制御部21が前記誘導端末5に送信するデータとしては、前記ターゲット像4′の座標データ、真の天頂位置の座標データでもよく、或は前記ターゲット像4′の座標データ、真の天頂位置の座標データが表記された画像データであってもよい。
【0077】
尚、
図10(A)では、位置の偏差がX=−54mm、Y=+35mmと数値で表示されており、作業者は前記ターゲット装置3を左方向に54mm、上方向に35mm動かせばよいことを認識できる。尚、
図10(A)中、49は誘導端末5の表示部を示す。
【0078】
前記ターゲット4′が前記基準点P′に合致した状態で、前記視標線16a,16bを利用して4点に刻点する。前記貫通孔13を埋め、対向する各2点により交差する墨出し線を罫書きし、墨出し線の交点を求める。この交点は、前記基準点Pを転写した点となる。
【0079】
複数階の床に前記基準点Pを転写する場合は、各階毎に前記ターゲット装置3の設置、前記ターゲット4の位置合せ、刻点を繰返し、都度若しくは全ての階の刻点が終わった最後に各階の前記貫通孔13を穴埋めし、墨出し線を罫書きし、墨出し線の交点、即ち基準点Pを転写した点を求める(
図10(B))。
【0080】
次に、建物は種々の原因で振動している。建設工事中の建物では、建設作業による振動、建物自体の揺れ、或は作業者の移動による振動等が発生する。この為、鉛直に射出するレーザ光線が振動し、前記ターゲット4からの反射レーザ光線も振動し、画像上の前記ターゲット像4′も振動し、正確な位置出しが困難な場合がある。又、測距値、測角値も変動する。
【0081】
本実施例では、所定時間間隔で時分割し、所定時間内に取得したデータを平均化し、振動による影響を低減する(スムージング)。又、平均化する為のデータ取得時間を任意に設定可能とし、作業状況に応じたスムージングを行える様にする。
【0082】
前記記憶部26又は前記記憶部36に、スムージングプログラムが格納される。該スムージングプログラムでは平均化する為のデータ取得時間(スムージング時間)の設定を行うことで、設定した所定時間に取得したデータを平均(スムージング)して出力する。
【0083】
例えば、前記視準像受光部24で0.1秒間隔で画像データを5秒間取得し、5秒間データを取得した後、次の0.1秒で5秒間分の画像データを移動平均化する。移動平均化により、平均化された5秒間分の画像データが0.1秒間隔で出力される。従って、前記画像44に表示されるターゲット像4′が振動することなく、安定して表示され、作業者も前記ターゲット装置3の位置調整作業を確実に行える。
【0084】
本実施例では、上方に照射するレーザ光線が完全に鉛直でない場合でも、容易に基準点を鉛直方向に転写できる。従って厳格な整準を要求されない。更に、軌跡43を取得した後はトータルステーション2を固定して作業が行われるので、レーザ光線が完全に鉛直でない場合、安定した傾斜補正を行うことができる。
【0085】
更に、前記軌跡43から回転の中心を求めているので、完全な鉛直が器械誤差、光学系の歪みの影響に起因して得られない場合も同様に、正確な基準点の鉛直トレースが可能である。
【0086】
作業者は、現場に合わせたスムージングを行うことができ、振動している現場でも確実に作業でき、作業効率が向上する。
【0087】
尚、上記実施例では、下方から上方階に向って基準点を転写したが、上方から下方階に基準点を転写する場合も同様に実施できることは言う迄もない。
【0088】
次に、
図11により第2の実施例について説明する。
【0089】
第2の実施例は、基準点Pの転写に特化した鉛直測定システムに関する。
【0090】
尚、
図11中、
図1、
図6中で示したものと同等のものには同符号を付しその説明を省略する。又、誘導端末5については第1の実施例と同様であるので図示を省略している。
【0091】
第2の実施例では、水平回転を手動とし、水平角検出器28、鉛直角検出器29、水平回転駆動部31、鉛直回転駆動部32を省略し、測距機能を鉛直方向のみに特定し、又追尾機能を省略している。
【0092】
測量装置40は、測量装置本体7、整準部9、水平回転機構41を有し、前記測量装置本体7は前記整準部9に前記水平回転機構41を介して設けられている。該水平回転機構41は、前記測量装置本体7を鉛直軸心を中心に回転可能に支持する。
【0093】
該測量装置本体7は、主に演算制御部21、測距部22、視準部23、視準像受光部24、傾斜センサ(チルトセンサ)25、記憶部26、通信部27、表示部33、操作部34等から構成される。前記視準像受光部24は鉛直方向に延出する光軸10を有し、該光軸10は前記水平回転機構41の回転軸心12と同心である。
【0094】
前記測量装置40を基準点Pに設置し、前記整準部9により前記光軸10が略鉛直になる様に整準する。前記ターゲット装置3を階上の基準点の転写位置に設置する。
【0095】
前記測距部22から測距光を前記光軸10上に射出し、前記測量装置本体7を手動により回転し、1回転分のターゲット像4′の画像を取得する。得られたターゲット像4′の円の軌跡から中心を求める(
図9(A)参照)。この中心は、前記測量装置本体7の回転中心の位置となる。前記傾斜センサ25が傾斜を検出していれば、この検出結果に基づき前記中心位置を補正し、真の天頂位置を演算する。
【0096】
円の軌跡中心の算出、傾斜の補正、真の天頂位置の演算については第1の実施例と同様であるので説明を省略する。
【0097】
図12は、第3の実施例を示している。尚、
図12中、
図11中で示したものと同等のものには同符号を付してある。又、誘導端末5については第1の実施例と同様であるので図示を省略している。
【0098】
第3の実施例は、第2の実施例に対して、更に、測距機能を省略したものである。
【0099】
第3の実施例では、第2の実施例の測量装置本体7の構成で、測距部22が省略されている。
【0100】
又、視準像受光部24は、ターゲット光発光部(レーザダイオード(LD))(図示せず)を更に有し、該ターゲット光発光部は、ターゲット光を発し、ターゲット光は、前記視準像受光部24の光学系を介して鉛直上方に射出される。該視準像受光部24の光軸10は、水平回転機構41の回転軸心12と同心である。
【0101】
測量装置40を基準点Pに設置し、整準部9により前記光軸10が略鉛直になる様に整準し、ターゲット装置3を階上の基準点の転写位置に設置する。
【0102】
前記ターゲット光発光部からターゲット光を前記光軸10上に射出し、前記測量装置本体7を手動により回転し、ターゲット4からのターゲット光により前記視準像受光部24によりターゲット像4′を取得する。
【0103】
円の軌跡中心の算出、傾斜の補正、真の天頂位置の演算については第2の実施例と同様であるので説明を省略する。
【0104】
上記、第1の実施例〜第3の実施例に於いてターゲット4としてプリズムを使用しているので、長距離での転写が可能である。
【0105】
次に、
図13により第4の実施例を説明する。
【0106】
第4の実施例は、基準点Pの転写に、更に特化した鉛直測定システムに関する。
【0107】
尚、
図13中、
図1、
図6中で示したものと同等のものには同符号を付しその説明を省略する。又、誘導端末5については第1の実施例と同様であるので図示を省略している。
【0108】
第4の実施例では、測距機能、追尾機能を省略し、又測量装置本体7は手動で回転し、又ターゲット装置3を簡略化している。
【0109】
前記測量装置本体7は整準部9に水平回転機構41を介して設けられている。該水平回転機構41は、前記測量装置本体7を回転軸心12を中心に回転可能に支持する。
【0110】
該測量装置本体7は、主に演算制御部21、傾斜センサ(チルトセンサ)25、記憶部26、通信部27、表示部33、操作部34、視準像受光部としての機能を有する撮像部45等から構成される。
【0111】
該撮像部45は前記回転軸心12と同心の光軸10を有し、該撮像部45は対物レンズ46、イメージセンサ47を有する。尚、前記対物レンズ46はレンズ群を簡略化して示している。
【0112】
前記イメージセンサ47は、第1の実施例と同様、CCD、CMOSセンサ等の画素の集合体であり、各画素の画像上の位置が特定できる様になっている。
【0113】
前記対物レンズ46はターゲット装置3から射出されるターゲット光を前記イメージセンサ47に結像する。
【0114】
前記ターゲット装置3は、保持プレート14と該保持プレート14の下面中心に設けられた発光素子48及び該発光素子48を発光させる発光駆動部(図示せず)、電源(図示せず)を有する。前記発光素子48の発光点は、前記保持プレート14の下面内に位置する様に設定される。
【0115】
測量装置40を基準点Pに設置し、前記整準部9により前記撮像部45の光軸が略鉛直になる様に整準する。又、前記ターゲット装置3を階上の基準点の転写位置に設置する。
【0116】
前記発光素子48を点灯する。前記発光素子48はターゲット光を射出し、ターゲットとして機能する。又、発光素子としては、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)が用いられる。
【0117】
前記イメージセンサ47により前記発光素子48のターゲット像48′を取得する。前記発光素子48を発光させた状態で前記測量装置本体7を手動により回転し、1回転分の画像を取得する。
【0118】
前記撮像部45の光軸上に前記発光素子48が位置していれば、前記ターゲット像48′の位置が変らず回転する。又、前記発光素子48が前記撮像部45から外れた位置にあれば、前記ターゲット像48′は円の軌跡を描く(
図9(A)参照)。この円の軌跡の中心(前記回転軸心)を画像から演算して求める。又、前記傾斜センサ25が傾斜を検出していれば、この検出結果に基づき前記中心位置を補正し、真の天頂位置を演算する。
【0119】
真の天頂位置は前記通信部27を介して前記誘導端末5に送信される。
【0120】
前記ターゲット像48′の中心位置を画像処理で求めること、前記ターゲット装置3の位置調整、画像データのスムージング等については第1の実施例と同様であるので説明を省略する。
【0121】
本実施例では、測距機能、追尾機能を省略することで、測距部22、視準部23、水平角検出器28、鉛直角検出器29等を省略でき、装置が簡略化され、製作コストの大幅な低減ができる。又、ターゲット48についても、プリズムに代えてLD、LEDとするのでよりコストの低減が可能である。