特開2019-219432(P2019-219432A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャパンディスプレイの特許一覧
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-219432(P2019-219432A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20191129BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20191129BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20191129BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20191129BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20191129BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   G09F9/30 310
   H01L29/78 626C
   H01L27/32
   H05B33/14 A
   H05B33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-114243(P2018-114243)
(22)【出願日】2018年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】川中子 寛
(72)【発明者】
【氏名】渡部 一史
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5F110
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107CC43
3K107CC45
3K107DD16
3K107DD17
3K107DD18
3K107FF15
5C094AA02
5C094AA15
5C094AA43
5C094AA55
5C094BA27
5C094BA43
5C094DA06
5C094DA13
5C094EB01
5C094FB02
5F110BB01
5F110DD01
(57)【要約】
【課題】樹脂基板を有するフレキシブル表示装置において、ガラス基板と樹脂基板を分離するときに黒色変性物が発生することを防止する。
【解決手段】樹脂基板100上に画素が形成された表示装置であって、前記樹脂基板100の前記画素が形成された側とは逆側の面に窒化物からなる第1の層11が形成され、前記第1の層11の前記樹脂基板100に対向する面と反対側の面に接してシリコン層からなる第2の層15が形成されていることを特徴とする表示装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板上に画素が形成された表示装置であって、
前記樹脂基板の前記画素が形成された側とは逆側の面に窒化物からなる第1の層が形成され、
前記第1の層の前記樹脂基板に対向する面と反対側の面に接して剥離層からなる第2の層が形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記窒化物からなる第1の層はSiN、TiN、またはAlNのいずれかで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記窒化物からなる第1の層はSiNで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記剥離層はpoly−Si層であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記剥離層はa−Si層から変換されたpoly−Si層であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1の層の厚さは、前記第2の層の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
樹脂基板上に画素が形成された表示装置であって、
前記樹脂基板の前記画素が形成された側とは逆側の面にAlOからなる第1の層が形成され、
前記第1の層の前記樹脂基板に対向する面と反対側の面に接して窒化物からなる第2の層が形成され、
前記第2の層の前記樹脂基板に対向する面と反対側の面に接してシリコン層による第3の層が形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
前記窒化物からなる第2の層はSiN、TiN、またはAlNのいずれかで形成されていることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記窒化物からなる第2の層はSiNであることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第3の層を構成する前記第3の層はpoly−Si層で形成されていることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項11】
前記第3の層を構成する前記シリコン層はa−Si層から変換されたpoly−Si層であることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項12】
前記第2の層の厚さは、前記第1の層の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項13】
前記第2の層の厚さは、前記第3の層の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項14】
樹脂基板上に画素が形成された表示装置であって、
前記樹脂基板の前記画素が形成された側とは逆側の面にAlOからなる第1の層が形成され、
前記第1の層の前記樹脂基板に対向する面と反対側の面に接して窒化物からなる第2の層が形成され、
前記第2の層の前記樹脂基板に対向する面と反対側の面に接してSiOによる第3の層が形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項15】
前記第2の層をSiN、TiN、またはAlNのいずれかで形成することを特徴とする請求項14に記載の表示装置。
【請求項16】
前記第2の層は前記第1の層よりも厚いことを特徴とする請求項14に記載の表示装置。
【請求項17】
樹脂基板上に画素が形成された表示装置であって、
前記樹脂基板の前記画素が形成された側とは逆側の面にAlOからなる第1の層が形成され、
前記第1の層の前記樹脂基板に対向する面と反対側の面に接して窒化物からなる第2の層が形成され、
前記第2の層の前記樹脂基板に対向する面と反対側の面に接して金属による第3の層が形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項18】
前記第3の層は銅で形成されていることを特徴とする請求項17に記載の表示装置。
【請求項19】
前記第2の層がSiN、TiN、またはAlNのいずれかで形成されていることを特徴とする請求項17に記載の表示装置。
【請求項20】
前記第1の層は前記第2の層よりも薄いことを特徴とする請求項17に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に係り、特に基板を湾曲させることができるフレキシブル表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置や液晶表示装置は表示装置を薄くすることによって、湾曲させて使用することができる。また、基板をポリイミド等の樹脂によって形成することによってフレキシブルな表示装置とすることができる。
【0003】
樹脂で形成された基板には、導電層、絶縁層、保護層、電極層等多くの膜が積層される。このように多数の膜を形成する場合、光の透過率が問題になる。特許文献1には、金属層と誘電体層を交互に重ねあわせた積層体によるNDF(Neutral Density Filter)が記載されている。また、金属膜も薄膜とすると、可視光に対する透過率が上昇する。特許文献2には、アルミニウム(Al)膜を薄膜にした場合の透過率の変化が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−54543号公報
【特許文献2】特開2013−127905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フレキシブル表示装置に用いられる樹脂基板は10μm乃至20μmである。このような薄い基板は、例えば、ガラス基板上に液体状の樹脂を塗布し、焼成して、樹脂基板にする。そして、樹脂基板は、ガラス基板とともに、製造工程を通り、表示パネルとして完成した後、ガラス基板が樹脂基板から剥離され、フレキシブル表示装置が完成する。
【0006】
このようなプロセスでは、次のような課題がある。第1は、製造工程を通過する間は、樹脂基板はガラス基板と確実に接着している必要がある。第2に、表示装置が完成した後は、樹脂基板からガラス基板を確実に剥離することが可能であることである。
【0007】
ガラス基板と樹脂基板との剥離は、一般には、ガラス基板と樹脂基板との界面にレーザを照射することによるレーザアブレーションによって行われる。このレーザアブレーションの時に、ガラスとの界面においてポリイミドが変質して黒色変性物が形成される場合がある。
【0008】
液晶表示装置はバックライトからの光を画素毎に変調することによって画像を形成するが、TFT基板を構成する樹脂基板にこのような黒色変性物が形成されると、バックライトからの光を低減させ、また、黒色変性物の形状によっては、表示むらを引き起こす場合がある。
【0009】
一方、有機EL表示装置もTFT基板の底面に煤状の汚れが存在すると商品価値を損なう。
【0010】
本発明は、ガラス基板と樹脂基板を剥離するときに、黒色変性物が形成されることを防止し、高品質な画像を表示することが出来る表示装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を克服するものであり、代表的な手段は次のとおりである。
【0012】
(1)樹脂基板上に画素が形成された表示装置であって、前記樹脂基板の前記画素が形成された側とは逆側の面に窒化物からなる第1の層が形成され、前記第1の層の前記樹脂基板に対向する面と反対側の面に接して剥離層からなる第2の層が形成されていることを特徴とする表示装置。
【0013】
(2)樹脂基板上に画素が形成された表示装置であって、前記樹脂基板の前記画素が形成された側とは逆側の面にAlOからなる第1の層が形成され、前記第1の層の前記樹脂基板に対向する面と反対側の面に接して窒化物からなる第2の層が形成され、前記第2の層の前記樹脂基板に対向する面と反対側の面に接してシリコンによる第3の層が形成されていることを特徴とする表示装置。
【0014】
(3)樹脂基板上に画素が形成された表示装置であって、前記樹脂基板の前記画素が形成された側とは逆側の面にAlOからなる第1の層が形成され、前記第1の層の前記樹脂基板に対向する面と反対側の面に接して窒化物からなる第2の層が形成され、前記第2の層の前記樹脂基板に対向する面と反対側の面に接してSiOによる第3の層が形成されていることを特徴とする表示装置。
【0015】
(4)樹脂基板上に画素が形成された表示装置であって、前記樹脂基板の前記画素が形成された側とは逆側の面にAlOからなる第1の層が形成され、前記第1の層の前記樹脂基板に対向する面と反対側の面に接して窒化物からなる第2の層が形成され、前記第2の層の前記樹脂基板に対向する面と反対側の面に接して金属による第3の層が形成されていることを特徴とする表示装置。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】液晶表示装置の平面図である。
図2】本発明による図1のA−A断面図である。
図3】本発明による液晶表示パネルの断面図である。
図4】本発明におけるTFT基板とガラス基板の分離前の構成を示す断面図である。
図5】TFT基板とガラス基板の分離のために、レーザを照射している状態を示す断面図である。
図6】本発明を使用しない場合のガラス基板とポリイミド基板の界面にレーザアブレーションのためのレーザを照射したときの問題点を示す断面図である。
図7】本発明を使用しない場合のガラス基板とポリイミド基板の界面にレーザアブレーションのためのレーザを照射したときの問題点が発生する原因を示す詳細断面図である。
図8】本発明によるガラス基板とポリイミド基板の界面を示す断面図である。
図9】本発明において、a−Si層にエキシマレーザを照射している状態を示す断面図である。
図10】本発明において、ガラス基板とポリイミド基板が分離された状態を示す断面図である。
図11】本発明の実施例2によるガラス基板とポリイミド基板の界面を示す断面図である。
図12】ポリイミド層とAlO層が接着するメカニズムを示す図である。
図13】実施例2において、a−Si層にエキシマレーザを照射している状態を示す断面図である。
図14】実施例2において、ガラス基板とポリイミド基板が分離された状態を示す断面図である。
図15】本発明の実施例3によるガラス基板とポリイミド基板の界面を示す断面図である。
図16】実施例3において、a−Si層にエキシマレーザを照射している状態を示す断面図である。
図17】実施例3において、ガラス基板とポリイミド基板が分離された状態を示す断面図である。
図18】本発明の実施例4によるガラス基板とポリイミド基板の界面を示す断面図である。
図19】実施例4において、a−Si層にエキシマレーザを照射している状態を示す断面図である。
図20】実施例4において、ガラス基板とポリイミド基板が分離された状態を示す断面図である。
図21】本発明の実施例5によるガラス基板とポリイミド基板の界面を示す断面図である。
図22】実施例5において、レーザ照射をしている状態を示す断面図である。
図23】実施例5において、レーザによって加熱されている状態を示す断面図である。
図24】実施例5において、熱膨張層が熱膨張した状態を示す断面図である。
図25】実施例5において、ガラス基板とポリイミド基板が分離された状態を示す断面図である。
図26】種々の金属の、波長毎の吸収率を示すグラフである。
図27】種々の金属の、波長毎の反射率を示すグラフである。
図28】実施例6による有機EL表示装置の平面図である。
図29図28のB−B断面図である。
図30】本発明の実施例6によるガラス基板とポリイミド基板の界面を示す断面図である。
図31】実施例6において、a−Si層にエキシマレーザを照射している状態を示す断面図である。
図32】実施例6において、ガラス基板とポリイミド基板が分離された状態を示す断面図である。
図33】本発明の実施例7によるガラス基板とポリイミド基板の界面を示す断面図である。
図34】実施例7において、熱膨張層にレーザ照射をしている状態を示す断面図である。
図35】実施例7において、レーザによって加熱されている状態を示す断面図である。
図36】実施例7において、熱膨張層が熱膨張した状態を示す断面図である。
図37】実施例7において、ガラス基板とポリイミド基板が分離された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に実施例を用いて本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明が適用される液晶表示装置の平面図である。本発明の液晶表示装置は、フレキシブルに湾曲させることが出来る表示装置である。したがって、TFT(Thin Film Transistor)、走査線、映像信号線、画素電極、等が形成されているTFT基板100は樹脂で形成されている。樹脂のうちでも、ポリイミドは、機械的な強度、耐熱性からTFT基板100には最も適している。以下の説明では、樹脂基板100はポリイミド基板であるとして説明するが、本発明は、ポリイミド以外で形成された樹脂基板にも適用可能である。
【0019】
図1は液晶表示装置の平面図である。図1において、TFT基板100と対向基板200がシール材150によって接着し、シール材150の内側で、TFT基板100と対向基板200の間に液晶が挟持されている。
【0020】
TFT基板100と対向基板200が重なった部分に表示領域90が形成されている。表示領域90には、走査線91が横方向(x方向)に延在し、縦方向(y方向)に配列している。また、映像信号線92が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線91と映像信号線92で囲まれた領域に画素95が形成されている。TFT基板100は対向基板200よりも大きく形成され、TFT基板100と対向基板200が重なっていない部分は端子領域となっている。端子領域は、液晶表示装置に電源や信号を供給するためのフレキシブル配線基板400が接続している。
【0021】
図2は、図1のA−A断面図である。図2において、ポリイミドで形成されたTFT基板100には、TFT回路層101が形成され、ポリイミド形成された対向基板200には、カラーフィルタ層201が形成されている。TFT基板100と対向基板200はシール材150によって接着し、シール材150の内側に液晶300が封止されている。
【0022】
図2において、TFT基板100および対向基板200の外側の面には、後で説明する接着層11および剥離層15が形成されている。対向基板200側の接着層11および剥離層15の外側には上偏光板220が貼り付けられ、TFT基板100側の接着層11および剥離層15の外側には下偏光板120が貼り付けられている。
【0023】
図2において、下偏光板120の背面にバックライト600が配置している。バックライト600はフレキシブル性を有したシート状の光源を使用することにより、液晶表示装置全体としてもフレキシビリティを維持することが出来る。
【0024】
図3は、上偏光板220および下偏光板120を取り除いた状態における液晶表示パネルの断面図である。図3において、TFT基板100の外側の面及び対向基板200の外側の面には、接着層11としてのSiN、TiN、または、AlN等の窒化物が厚さ10乃至500nm、より好ましくは厚さ10乃至100nmで形成されている。
【0025】
接着層11の役割は、レーザアブレーションの時にガラス基板から発生するガスがポリイミド基板100に到達しないようにブロックすることと、ポリイミド基板100と多層膜の接着性を維持するためである。接着層11の上には、剥離層15が形成されている。この剥離15は、a−Siにエキシマレーザを照射することによって変換されたpoly−Si層を用いることができる。剥離層15の厚さは例えば10乃至50nmである。a−Siがレーザ照射によって溶融し、poly−Siに変化する。a−Siからpoly−Siに変化する時に体積が収縮して界面にストレスが発生する。このストレスによってTFT基板100とガラス基板500が分離する。このような体積変化が起こる材料であればa−Siに限定されない。
【0026】
図3に示すような液晶表示パネルを形成するには、図4に示すように、ガラス基板500に形成されたTFT基板100の上にTFT回路層101を形成する。TFT回路層101は、走査線、映像信号線、画素電極、コモン電極等を含む層である。ガラス基板500に形成された対向基板200にカラーフィルタ層201等を形成する。カラーフィルタ層201は、カラーフィルタ、ブラックマトリクス、オーバーコート膜等を含む層である。この状態で、液晶300を充填し、シール材150によってTFT基板100と対向基板200を接着して液晶300を封止する。
【0027】
図4の状態においては、TFT基板100とガラス基板500の間、及び、対向基板200とガラス基板500の間には接着層11、a−Si層12、ガスブロック層13、からなる多層膜20が形成されている。このうち、ガスブロック層はSiN、TiN、または、AlN等の窒化物であり、厚さが100nm乃至500nmに形成されている。
【0028】
その後、図5に示すように、エキシマレーザ(LB)をa−Si層12に対して照射し、a−Si層12をpoly−Si層15に変換する。図5の層構成は図4と同じである。エキシマレーザ(LB)がa−Si層12に照射されると、a−Si層12は一旦溶融し、その後poly−Si層15に変換する。この時a−Siの体積が収縮し、この時に発生するストレスによって、樹脂によるTFT基板100とガラス基板500とが剥離する。
【0029】
図6は、本発明を用いなかった場合、すなわち、ポリイミド基板100がガラス基板500の上に直接形成されている場合の問題点を示す断面図である。図6において、レーザアブレーションのためのレーザ(LB)がガラス基板500とポリイミド基板100の界面に照射されており、レーザによって、ガラス基板500とポリイミド基板100の界面が加熱されている。ガラスはシリコン酸化物を始めとする種々の酸化物で形成され、また水や有機物も介在するため、酸素や水素等のガスを発生する。これらのガスによって、ガラス基板500との界面付近のポリイミドが酸化され、煤のような黒色変性物30が形成される。このような黒色変性物30はポリイミド基板100の透過率を低下させるので、画面輝度を低下させる。
【0030】
図7はこのメカニズムを示す断面模式図である。図7において、ガラス基板500とポリイミド基板100の界面にレーザ(LB)が照射されることによって、ガラス基板500とポリイミド基板100の界面が加熱され、ガラスとポリイミドの界面からガスが放出される。ガスは31で示している。一方、ポリイミド基板100もガラス基板500との界面においては加熱されているので、高温になっており、活性化されているので、酸化されやすい状態にある。図7ではポリイミド基板100が高温になっている領域を32で示している。これによって、ガラス基板100とポリイミド基板100の界面には、煤のような黒色変性物30が形成されることになる。
【0031】
このような黒色変性物30の発生を防止するには、ポリイミド基板100が加熱された部分にガラス基板500からのガスが供給されないようにすれば良い。図8は、これを可能にする本発明の実施例1を示す断面図である。図8において、ポリイミド基板100とガラス基板500の間に3層からなる多層膜20が形成されている。多層膜20は、ポリイミド基板100側から順に接着層11、a−Si層12、ブロック層13で構成されている。接着層11はSiN、TiN、または、AlN等の窒化物で形成され、厚さは10乃至500nm、より好ましくは厚さ10乃至100nmである。窒化物によっては、膜厚が大きくなると着色する場合があるが、SiNは着色しないので、SiNは接着層11として特に適している。
【0032】
a−Si層12はレーザアブレーションに使用されるエキシマレーザ(LB)を吸収し、熱エネルギーに変換するための層であり、厚さは、例えば10乃至50nmである。ポリイミド基板100とガラス基板500の剥離にはa−Si層12が主要な役割を担うが、a−Si層12はポリイミド基板100との接着性が悪いので、a−Si層12とポリイミド基板100の間に窒化物からなる接着層11が形成されている。
【0033】
a−Si層12とガラス基板500の間にはガラスで発生するガスがポリイミド基板100側に移動しないようにブロックするためのブロック層13が存在している。ブロック層13はSiN、TiN、または、AlN等の窒化物であり、厚さは100nm乃至500nmである。窒化物によっては、膜厚が大きくなると着色する場合があるが、SiNは着色しないので、SiNはブロック層13として特に適している。
【0034】
図9はレーザアブレーションのためのエキシマレーザ(LB)をポリイミド基板100とガラス基板500の界面、具体的にはa−Si層12に照射している状態を示す断面図である。エキシマレーザ(LB)は波長が308nm及び355nmにピークを有しているが、a−Si層12はこの波長のレーザをほぼ100%吸収する。レーザのエネルギーによってa−Si層12は高温となり、溶融する。
【0035】
a−Si層12で発生した熱は、接着層11を加熱し、さらに界面付近のポリイミド基板100も加熱し、また、ブロック層13を加熱し、さらに界面付近のガラス基板500も加熱する。加熱された界面付近のガラス基板500からは酸素や水素等のガスが放出されるが、これらのガスは、窒化物によって形成されたブロック層13によってブロックされ、ポリイミド基板100側には到達しない。したがって、ガラスにおいて発生する酸素や水素等のガスによって、ポリイミド基板100が酸化され、黒色変性物30が発生することを防止することが出来る。
【0036】
ところで、ブロック層13はa−Si層12よりも厚く形成されている。ブロック層13を厚く形成することによって、ガラス基板500からのガスに対するブロック効果を向上させるとともに、a−Si層12で発生した熱がガラス基板500側に移動しにくくしている。
【0037】
また、接着層11はa−Si層12よりも厚く形成されている。接着層11を厚く形成することによって、a−Si層12で発生した熱がポリイミド基板側100に移動しにくくしている。ポリイミド基板100が高温になると変質し、透過率が変化する場合があるので、接着層11を厚く形成することによってポリイミド基板100の変質を防止している。
【0038】
図10は、レーザアブレーションによって、ポリイミド基板100とガラス基板500が分離された状態を示す断面図である。エキシマレーザ(LB)がa−Si層12に照射されるとa−Siは溶融するが、レーザは短時間照射されるのみなので、レーザ照射後、a−Si層12はpoly−Si層15に変換される。poly−Si層15はa−Si層12よりも体積が小さくなるので、ブロック層13とpoly−Si層15との間にストレスが発生し、このストレスによって、poly−Si層とブロック13層との界面において剥離する。すなわち、a−Si層12がエキシマレーザによって溶融し、結晶化してpoly−Si層15化し、この時に、体積収縮が起こり、この時の界面に発生するストレスによってガラス基板500がポリイミド基板100から剥離する。
【0039】
このように本発明によれば、レーザアブレーションにおいて、ガラスから発生するガスがポリイミド基板100に到達することを防止することができるので、黒色変性物30の発生を防止することが出来る。また、界面付近のポリイミド基板100が過度に加熱されることを防止することが出来るので、ポリイミド基板100が変質することを防止することが出来る。
【実施例2】
【0040】
図11は本発明の実施例2を示す断面図である。図11が実施例1の図8と異なる点は、ポリイミド基板100と接着層11を構成する窒化物との間にアルミニウム酸化層14(以後AlO層と表現する)が形成されていることである。接着層11はa−Si層12とポリイミド基板100との接着のためであるが、ポリイミド基板100との接着力が十分でない場合がある。実施例2では、ポリイミド基板100との接着力が強いAlO層14を接着層11とポリイミド基板100の間に配置することによって、ポリイミド基板100と多層膜20との接着力をより安定化させている。つまり、実施例2では、接着層として接着層11とAlO層14の2層を用いていると言い換えることが出来る。
【0041】
ポリイミド基板100とAlO層14を接触させた場合において、ポリイミド基板100の接着強度が増大するメカニズムとして、図12に示す反応が提唱されている。すなわち、ポリアミック酸からポリイミドにイミド結合する過程において、本来分子内反応で高分子化すべきアミド基とカルボシキル基がそれぞれ、別個にAlOOHのOH基と脱水和反応によって結合した構造である。
【0042】
接着層11は、a−Si層12で発生した熱がポリイミド基板100に影響することを防止する役割も有しているが、AlO層14は多層膜20とポリイミド基板100との接着力を向上させることが目的であるから、5乃至20nm程度と、薄く形成される。つまり、AlO層14は接着層11よりも薄く形成される。ガラス基板500を剥離した後もAlO層14はポリイミド基板100側に存在しているが、AlO層14は透明であるから、透過率に対しては殆ど影響を与えない。また、Alと酸素の結合力は強力であるから、レーザ加熱でa−Si層12が溶融する程度の温度、例えば1000℃程度では酸素は離脱しないため、ポリイミド基板100に黒色変性物30を形成する危険は殆ど無い。
【0043】
図13は、図11の構成に対し、a−Si層12にエキシマレーザ(LB)を照射している状態を示す断面図である。図13が実施例1の図9と異なる点は、ポリイミド基板100と接着層11の間にAlO層14が存在していることであり、剥離メカニズムは実施例1で説明したのと同様である。
【0044】
図14は、a−Si層12がpoly−Si層15に変換された後、ガラス基板500がブロック層13とともにポリイミド基板100側から剥離された状態を示す断面図である。メカニズムは、実施例1の図10と同じである。
【0045】
このように、本実施例によれば、ポリイミド基板100の界面における黒色変性物30の発生を防止することが出来るとともに、ポリイミド基板100と多層膜20との接着をより安定化させることが出来る。
【実施例3】
【0046】
図15は本発明の実施例3を示す断面図である。図15が実施例1の図8と異なる点は、a−Si層12とガラス基板500が直接接着している点である。a−Si層12とガラス基板500との接着力は、SiN、TiN、または、AlN等の窒化物とガラス基板500との接着力よりは小さいが、ガラス基板500およびポリイミド基板100をプロセス内において、安定して通過させる程度の接着力は有している。図15におけるa−Si層12は、実施例1の図8あるいは実施例2の図11等におけるa−Si層12よりもやや厚く、50nm乃至100nm程度に形成する。
【0047】
図16図17の構成に対し、レーザアブレーションのために、a−Si層12にエキシマレーザ(LB)を照射している状態を示す断面図である。図16において、a−Si層12にエキシマレーザ(LB)が照射されるとa−Si層12は発熱して溶融する。この時、a−Si層12の熱はガラス基板500に直接伝わり、ガラス基板500の界面も加熱され、酸素や水素等のガスが発生する。しかし、これらのガスは、a−Si層12においてブロックされる。つまり、実施例3におけるa−Si層12は実施例1あるいは実施例2におけるa−Si層12よりも厚く形成されているので、ガスに対するブロック効果は大きい。
【0048】
さらに、a−Si層12によってブロックしきれなかったガスは、窒化物によって形成された接着層11によってブロックされる。したがって、ガラス基板500から放出された酸素や水素等のガスによるポリイミド基板100の界面における黒色変性物30の発生を防止することが出来る。
【0049】
図17はレーザアブレーション後、ガラス基板500がポリイミド基板100から剥離された状態を示す断面図である。剥離のメカニズムは図10で説明したのと同様であるが、図17では、剥離のためのストレスは、poly−Si層15とガラス基板500との間に発生する。なお、a−Si層12とガラス基板500の接着力は、SiN、TiN、または、AlN等の窒化物とガラス基板500との接着力よりも小さいので剥離は容易である。
【実施例4】
【0050】
図18は本発明の実施例4を示す断面図である。図18が実施例3の図15と異なる点は、接着層11とポリイミド基板100の間にAlO層14が形成されていることである。AlO層14の厚さ、役割等は実施例2で説明したのと同様である。図18のその他の構成は図15と同じである。
【0051】
図19図18の構成において、a−Si層12にエキシマレーザ(LB)を照射している状態である。図19における現象は実施例3における図16で説明したのと同様である。
【0052】
図20はレーザアブレーションによってガラス基板500がポリイミド基板100から剥離した状態を示す断面図である。図20における剥離プロセスは実施例3の図17における剥離プロセスと同じである。
【実施例5】
【0053】
実施例1乃至4の構成は、ガラス基板とTFT基板の剥離を、a−Siが溶融し、結晶化する時に生ずるストレスを利用するものである。実施例5は、a−Siの代わりに、金属で形成される光熱変換・熱膨張層を熱膨張させ、非熱膨張層との間に生ずるストレスを利用して剥離を行うものである。
【0054】
図21はガラス基板500とTFT基板100との界面における多層膜の構成を示す断面図である。図21において、ガラス基板500側から、金属で形成される光熱変換・熱膨張層(以後熱膨張層と称する)17、酸化シリコン(以後SiOと称する)等で形成された非膨張層16、SiN等の窒化物で形成されたブロック層13、ポリイミド基板との接着のためのAlO層14が形成されている。
【0055】
各層の役割は次のとおりである。熱膨張層17は、ガラス基板500側から照射されるレーザ光LBを熱に変換し、自身が熱膨張を起こす。このために、熱膨張層17は金属で形成されるが、銅(Cu)が最も適している。熱膨張層17の厚さは、レーザ光LBを十分に吸収できる膜厚であることが必要である。さらに、レーザ照射によって急速に昇温し、かつ、レーザ照射後は急速に降温する程度の膜厚であることが必要であり、銅の場合は、例えば100nm乃至200nmが適している。ところで、レーザ照射による熱膨張層17の温度は250℃乃至450℃に上昇する。
【0056】
非熱膨張層16は、熱膨張層17が熱膨張をしても、膨張せず、熱膨張層17との間にストレスを発生させる役割を有する。また、熱膨張層17が高温になっても、熱が、非熱膨張層16よりも上層側、すなわちポリイミド基板100側に伝導することを防止する役割も有する。つまり、熱伝導率が小さいことが好ましい。このような材料としてはSiOが最も適している。SiOの厚さは50nm乃至100nm程度が適している。
【0057】
熱膨張層17を銅で構成し、非熱膨張層をSiOで形成した場合の、熱膨張率を比較すると、銅の熱膨張率は16.8×10−6/℃であり、SiOの熱膨張率は0.5×10−6/℃である。したがって、熱膨張層17が熱膨張及び収縮をするとSiOで形成された非熱膨張層16との間に大きなストレスを生じ、熱膨張層17と非熱膨張層16の間で剥離を生ずる。
【0058】
SiOで形成された非熱膨張層16の温度が上昇したような場合、酸素や水素等のガスが離脱し、ポリイミド基板100側に移動する可能性がある。また、金属表面に吸着したガスが離脱して、ポリイミド基板100側に移動する可能性がある。このような場合、実施例1等で説明したように、酸素や水素等のガスがポリイミドと反応して、煤状の黒色変性物を発生させる場合がある。SiN等の窒化物で形成されたブロック層13はこのようなガスがポリイミド基板100側に移動することを防止する役割を有する。この場合のブロック層13の厚さは10nm乃至500nm程度でよいが、好ましくは100nm乃至200nmである。
【0059】
窒化物とポリイミド基板100との接着は安定しているが、本実施例では、さらに、窒化物で形成されたブロック層13とポリイミド基板100の間にAlO層14を形成することによって、ポリイミド基板100と多層膜との接着をさらに向上させている。AlO層14とポリイミド基板100との接着については、実施例2で説明したとおりである。
【0060】
図22乃至図25は、実施例5における剥離メカニズムを示す断面図である。図22は、ガラス基板500側から熱膨張層17にレーザLBを照射している状態を示す断面図である。熱膨張層17を構成する銅の厚さは100nmであり、レーザLBを殆ど吸収して熱に変換する。使用するレーザの波長は、例えば、308nm、355nm、532nmにピークを有するようなレーザ光が使用される。また、レーザのエネルギー密度は120乃至255mJ/cm程度である。
【0061】
図26は、膜厚が100nmのときの種々の金属における吸収率を示すグラフであり、図27は、反射率を示すグラフである。100nm程度の厚さであれば、各金属とも、レーザ光をほぼ吸収または反射するので、図26における吸収率と図27における反射率とは、大略、吸収率+反射率=1の関係になっている。
【0062】
図26において、横軸はレーザの波長(nm)であり、縦軸は、各金属の厚さが100nmのときの吸収率(%)である。図26において、波長355nmは紫外線(UV)、波長532nmは緑波長(グリーンレーザ、SHG(Second Harmonic Generation))、波長1064nmは赤外線(IR)である。鉄、ニッケルは各波長に対して安定した吸収率を示し、銅は300nmから532nm(SHG)までは、安定した吸収率を示している。
【0063】
図27は波長と各金属の反射率を示すグラフである。銅は波長300nmから532nm程度の広い範囲において、低い反射率を示している。つまり、効率良く、レーザエネルギーを吸収する。このように、銅は、308nm、355nm、532nmにピークを有するようなレーザ光を使用する場合は、図26図27を勘案すると、吸収率の点でも、反射率の点でも、レーザエネルギーを効率良く吸収する。さらに、銅は鉄等に比べて熱膨張係数が大きい。したがって、銅は本発明の熱膨張層の材料としては好適である。
【0064】
図23はレーザ照射後熱膨張層17、および非熱膨張層16の熱膨張層側が熱せられた状態を示す断面図である。図23においてドットで示す部分がレーザによって加熱された部分である。熱膨張層17はレーザLBによって瞬間的に加熱され、この熱はSiOで形成された非熱膨張層16に伝導するが、SiOの熱伝導率は小さいので、熱が非熱膨張層16とブロック層13との界面にまで到達しないうちにレーザはオフする。
【0065】
図24は熱膨張層17が加熱されて熱膨張した状態を示す断面図である。熱膨張は、矢印で示すように、厚さ方向にも平面方向にも生ずる。一方、非熱膨張層16の一部は加熱されているが、熱膨張は小さい。したがって、熱膨張層17と非熱膨張層16との間にストレスが生ずる。
【0066】
図25は、レーザ照射後、熱膨張層17が収縮し、非熱膨張層16との間に剥離を生じた状態を示す断面図である。熱膨張層17は急激に収縮するのに対して、非熱膨張層16はほとんど収縮しない。そうすると、熱膨張層17と非熱膨張層16の間に図24の場合とは逆方向のストレスが生ずる。このように、短時間の間に熱膨張層17と非熱膨張層16の間に逆方向のストレスが発生することによって、熱膨張層17と非熱膨張層16の界面において剥離を生じ、ガラス基板500が熱膨張層17とともに、TFT基板100側から剥離する。
【0067】
図25に示すように、金属で形成された熱膨張層17はガラス基板500とともにTFT基板100側から剥離し、TFT基板100側には、透明膜のみが存在することになる。したがって、バックライトを有する液晶表示装置の動作には影響が無い。
【実施例6】
【0068】
本発明は、有機EL表示装置についても適用することが出来る。有機EL表示装置はバックライトが無い分、液晶表示装置よりも、フレキシブル表示装置とすることが容易である。図28は本発明が適用される有機EL表示装置の平面図である。本発明の有機EL表示装置は、フレキシブルに湾曲させることが出来る表示装置である。したがって、TFT(Thin Film Transistor)、走査線、電源線、映像信号線、画素電極、有機EL発光層等が形成されているTFT基板100は樹脂で形成されている。
【0069】
図28において、表示領域90の両側には走査線駆動回路80が形成されている。表示領域90には、横方向(x方向)に走査線91が延在し、縦方向(y方向)に配列している。映像信号線92及び電源線93が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線91と、映像信号線92及び電源線93で囲まれた領域が画素95となっており、画素95内には、TFTで形成された駆動トランジスタ、スイッチングトランジスタ、光を発光する有機EL発光層等が形成されている。
【0070】
図29図28のB−B断面図である。図29において、TFT基板100は樹脂で形成されている。樹脂の中でもポリイミドは、耐熱性、機械的強度等から、表示装置の基板としては優れた特性を有している。但し、ポリイミド以外の樹脂の場合でも本発明を適用することができる。TFT基板100の厚さは例えば10乃至20μmである。
【0071】
TFT基板100の上には、TFT回路層101が形成されている。有機EL表示装置におけるTFT回路層101は、走査線、映像信号線、電源線、光を発光する有機EL層、画素電極としてのアノード、共通電極としてのカソード等を含む層である。TFT回路層101を覆って保護層102が形成されている。有機EL層は、水分等によって特性が変動するので、保護層102は、外部からの水分の侵入を防止し、また、有機EL層を機械的に保護する。
【0072】
保護層102の上には、円偏光板103が貼り付けられている。TFT回路層101には、反射電極が形成されているので、これが外光を反射する。円偏光板103は、外光の反射を防止して、視認性を向上させる。
【0073】
図29において、TFT基板100の下には、SiN、TiN、AlN等の窒化物で形成された接着層11と、その下に、a−Siから変換されたpoly−Si層15が形成されている。
【0074】
図30乃至図32は、図29の構成を形成するプロセスを示す断面図である。図30において、ガラス基板500の上にポリイミドによってTFT基板100を形成するが、本発明は、TFT基板100を形成する前に、ガラス基板500上に多層膜20を形成する。多層膜20は、ガラス基板500側から順に、ブロック層13、a−Si層12、接着層11から構成されている。これらの層の構成は実施例1の図8で説明したのと同様である。
【0075】
図30において、多層膜20の上にポリイミド基板100が形成されている。ポリイミド基板100は、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸をスリットコータ等で塗布し、焼成したものである。ポリイミド基板100の上に、有機EL表示装置の本質部分を構成するTFT回路層101が形成されている。TFT回路層101の構成は図29で説明したとおりである。その後、保護層102を形成し、円偏光板103を貼り付ける。
【0076】
図31図30の構成におけるa−Si層12にエキシマレーザ(LB)を照射している状況を示す断面図である。エキシマレーザ(LB)を照射したときの現象は、実施例1の図9で説明したのと同様である。
【0077】
図32はレーザアブレーションを行った後、ガラス基板500をTFT基板100から分離した状態を示す断面図である。この場合の剥離メカニズムは実施例1の図10で説明したのと同様である。
【0078】
このように、有機EL表示装置の場合も液晶表示装置における場合と同様にTFT基板100とガラス基板500の間に実施例1における多層膜20を形成することによって、煤状の黒色変性物30が発生することを防止することが出来る。また、液晶表示装置について説明した実施例2乃至4における多層膜20の構成は、有機EL表示装置についても同様に適用することが出来る。さらに実施例5で説明したa−Siを用いずに銅等の金属膜による熱膨張層を用いてガラス基板とTFT基板とを剥離する構成も有機EL表示装置に適用することが出来る。
【0079】
有機EL表示装置は、画像をTFT基板100よりも上側、すなわち、有機EL層側に形成するトップエミッション型と、画像をTFT基板100の下側、すなわち、有機EL層と反対側に形成するボトムエミッション型とがある。実施例6の構成は、トップエミッション型の有機EL表示装置に適用できることはもちろんであるが、ボトムエミッション型の有機EL表示装置についても適用可能である。
【実施例7】
【0080】
実施例7は実施例5の変形例であり、特に有機EL表示装置に有効な構成である。実施例7が、実施例5と異なる点は、非熱膨張層16がガラス基板500の上に形成され、その上に熱膨張層17が形成されている点である。つまり、実施例7の構成では、ガラス基板500をTFT基板100から分離した後、金属で形成された熱膨張層17がTFT基板100側に残るため、透過型の液晶表示装置には使用は難しい。一方、トップエミッション型の有機EL表示装置にはきわめて有効である。
【0081】
図33は、実施例7でのガラス基板500とポリイミドで形成されたTFT基板100との界面における多層膜の構成を示す断面図である。図33図21と異なる点は、SiO等で形成された非熱膨張層16がガラス基板500上に形成され、その上に銅等の金属で形成される光熱変換・熱膨張層(以後熱膨張層)17が形成されている点である。図33のその他の構成は図21と同じである。図33における各層の膜厚、作用等も図21と同じである。
【0082】
図34乃至図37は、実施例7における剥離メカニズムを示す断面図である。図34は、ガラス基板500側から熱膨張層17にレーザLBを照射している状態を示す断面図である。レーザLBは熱膨張層17に焦点を合わせて照射される。レーザLBによって熱膨張層17が加熱されると、熱は非熱膨張層16およびブロック層13に伝わる。図35においてドットで示す部分が熱伝導によって加熱された領域である。
【0083】
図36は熱膨張層17が熱膨張をした状態を示す断面図である。SiOで形成された非熱膨張層16の熱膨張係数は、窒化物で形成されたブロック層13の熱膨張係数よりも小さい。したがって、熱膨張層17との界面のストレスは、非熱膨張層16と熱膨張層17の界面におけるほうが、熱膨張層17とブロック層13との界面よりも大きい。
【0084】
図36において、レーザLBの照射が終わると、熱膨張層17は急減に収縮して、非熱膨張層16及びブロック層13との界面に、膨張時とは逆のストレスを発生する。熱膨張時17の収縮時の界面のストレスは、熱膨張層17と非熱膨張層16との界面のほうが、熱膨張層17とブロック層13の界面よりも大きいので、非熱膨張層16と熱膨張層17の界面で剥離を起こし、ガラス基板500とTFT基板100との分離が行われる。
【0085】
この時、TFT基板100側には熱膨張層17を構成する、金属、例えば銅が残留し、ガラス基板500側にはSiOが残留する。金属は100nm程度の厚さでは不透明であるので、バックライトを用いる液晶表示装置への使用は困難である。したがって、実施例7は有機EL表示装置についてとくに効果がある。一方、液晶表示装置であっても、反射型の液晶表示装置には適用することが出来る。
【符号の説明】
【0086】
11…接着層、 12…a−Si層、 13…ブロック層、 14…AlO層、15…poly−Si層、16…非熱膨張層、17…熱変換・熱膨張層、 20…多層膜、 30…黒色変性物、 31…ガス、 32…被加熱領域、 80…走査線駆動回路、 90…表示領域、 91…走査線、 92…映像信号線、 93…電源線、 95…画素、 100…TFT基板、 101…TFT回路層、 102…保護層、 103…円偏光板、 120…下偏光板、 150…シール材、 200…対向基板、 201…カラーフィルタ層、 220…上偏光板、 300…液晶、 400…フレキシブル配線基板、 500…ガラス基板、 600…バックライト、 LB…レーザビーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37