【解決手段】未定着像を保持する用紙を加熱および加圧するニップ部を通過させる定着手段と、定着手段のニップ部から排出された用紙を最初に挟んで搬送する一対の搬送ロールと、一対の搬送ロールよりも定着手段に接近した位置で前記ニップ部から排出される用紙の片面側から接触して用紙の搬送を案内する第1案内手段と、一対の搬送ロールよりも定着手段に接近した位置で前記ニップ部から排出される用紙の反対面側から接触して用紙の搬送を案内する第2案内手段とを備え、第1案内手段は案内部として用紙の搬送経路から離れる方向に窪んだ形状からなる凹部を有し、第2案内手段は案内部として断面が円弧状の形状からなる曲げ部を有し、前記曲げ部の少なくとも一部が前記凹部に入り込んだ状態で配置されている。
前記曲げ部は、前記凹部の用紙の搬送方向の最上流側に位置する凸部と前記搬送方向の最下流側に位置する凸部とに接する仮想の直線が当該曲げ部と交わる2つの交点のうち前記搬送方向の上流側の交点で当該曲げ部に接する接線が当該凹部となす角度をθ1とし、前記搬送方向の下流側の交点で当該曲げ部に接する接線が当該凹部となす角度をθ2とした場合、θ1>θ2という条件を満たすよう配置されている請求項2に記載の画像形成装置。
前記曲げ部は、前記凹部の用紙の搬送方向の最上流側に位置する凸部と前記搬送方向の最下流側に位置する凸部とに接する仮想の直線が当該曲げ部と交わる2つの交点のうち前記搬送方向の上流側の交点から当該曲げ部の当該凹部との間隔が最も短い位置までの当該曲げ部の上流側周長をL1とし、前記搬送方向の下流側の交点から前記間隔が最も短い位置までの当該曲げ部の下流側周長をL2とした場合、L1>L2という条件を満たすよう配置されている請求項2に記載の画像形成装置。
前記第2案内手段は、案内部として、前記曲げ部よりも用紙の搬送方向の上流側に用紙を前記曲げ部に案内する導入部を有している請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
前記第1案内手段は、案内部として、前記凹部のうち前記搬送方向の上流側の端部に用紙の先端を前記第1案内手段の導入部に接触させるよう誘導する誘導部を有している請求項8又は9に記載の画像形成装置。
前記凹部のうち用紙の搬送方向の下流側の端部は、前記曲げ部と前記一対の搬送ロールにおけるニップ部の入口とに接する接線よりも前記搬送経路から離れる側に配置されている請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
前記第1案内手段および第2案内手段は、用紙の搬送方向と交差する幅方向の全域にわたって連続する形態で構成されている請求項1乃至11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
[実施の形態1]
図1と
図2は、実施の形態1に係る画像形成装置1を示すものである。
図1はその画像形成装置1の全体の構成を示し、
図2はその画像形成装置1の一部(主に定着部およびカール矯正部)の構成を示している。
各図面中に符号X,Y,Zで示す矢印は、各図面において想定した3次元空間の幅、高さおよび奥行の各方向を示す。また
図1、
図2等においてX,Yの方向の矢印が交わる部分の丸印は、Zの方向が図面の垂直下方に向いていることを示している。
【0014】
<画像形成装置の全体の構成>
画像形成装置1は、例えば、外部から入力される画像情報に基づく画像を用紙9に形成するプリンタとして構成されている。
この画像形成装置1は、
図1に示されるように、筐体10の内部空間に、画像情報に基づく未定着像を形成して用紙9に転写する像形成部2と、像形成部2に供給する用紙9を収容する給紙部4と、像形成部2で転写された未定着像を用紙9に定着させる定着部5と、定着部5から排出される用紙9に発生するカールを矯正するカール矯正部6等を備えている。
図1等における一点鎖線は、筐体10内で用紙9が搬送されるときの主な搬送経路を示している。
【0015】
ここで、画像情報は、例えば、文字、図形、写真、模様などの画像に関係する情報である。筐体10は、各種の支持部材、外装材等で所要の形状に形成された構造物である。この筐体10は、その上面部の一部に、画像が形成された後に排出される用紙9を重ねた状態で収容する排出収容部12とその排出収容部12にむけて用紙9が排出される排紙口13が形成されている。
【0016】
像形成部2は、例えば、矢印で示す方向に回転する感光体の一例である感光ドラム21の周囲に、電子写真方式に関係する以下の機器を配置して構成される部分である。
その機器は、感光ドラム21の外周面(像形成可能面)を帯電させる帯電装置22と、感光ドラム21の外周面に画像情報に基づく露光をして静電潜像を形成する露光装置23と、感光ドラム21の外周面に形成された静電潜像を現像剤(トナー)により現像して顕像化する現像装置24と、感光ドラム21の外周面に形成された未定着の像(トナー像)を用紙9に転写させる転写装置25と、感光ドラム21の外周面に付着するトナー、紙粉等の不要物を除去して清掃する清掃装置26等の機器である。この像形成部2では、感光ドラム21と転写装置25が接触又は対向する部位が、用紙9を通過させて未定着像であるトナー像の転写を行う転写位置TPになる。
【0017】
給紙部4は、例えば、収容カセット41、供給装置43等の機器を配置して構成される部分である。この給紙部4は、筐体10の内部で像形成部2よりも下方側の位置に設けられている。
このうち収容カセット41は、複数枚の用紙9を所要の向きで積載して収容する積載板42を有し、筐体10の外部に引き出し操作が可能になるよう取り付けられた収容部材である。また、供給装置43は、収容カセット41の積載板42上に積載されている用紙9を、複数のロール等により上方のものから1枚ずつ繰り出す装置である。
【0018】
定着部5は、
図1や
図2に示されるように、用紙9の導入口や排出口が設けられた図示しない筐体の内部空間に加熱用回転体51と加圧用回転体52等の機器を配置して構成される部分(定着手段)である。この定着部5は、筐体10の内部で像形成部2の転写位置TPよりも上方側の位置に設けられている。
このうち加熱用回転体51は、矢印で示す方向に回転するロール形態等からなる定着手段の一部である。加熱用回転体51は、図示しない駆動装置から回転動力を得て矢印で示す方向に回転し、また、例えばその内部に配置された加熱源53にて所要の温度に保たれるよう加熱される。加圧用回転体52は、加熱用回転体51に所要の加圧下で接触して従動回転するロール形態等からなる定着手段の一部である。
【0019】
この定着部5では、加熱用回転体51と加圧用回転体52が接触する部位が、未定着像のトナー像が転写された用紙9を定着処理のために加熱および加圧するニップ部(定着処理部)FNとして構成される。
また、この定着部5は、定着が終了した用紙9をニップ部FNからほぼ上方向(例えば重力の方向と反対側の方向(鉛直方向)であって重力の方向を挟んで±45°の範囲内に含まれる方向)に排出するようになっている。以下では、このような排出を行う形式の定着部5を「上排出式の定着部5A」ということもある。
【0020】
また、画像形成装置1においては、
図1に示されるように、給紙部4と像形成部2の間に、給紙部4にある用紙9を像形成部2の転写位置TPまで供給するよう搬送する給紙搬送路Rt1が設けられている。給紙搬送路Rt1は、用紙9を挟持して搬送する一対の搬送ロール44や、用紙9の搬送空間を確保して用紙9の搬送を案内する図示しない案内部材等を配置して構成されている。
さらに、定着部5と排出収容部12の間には、定着終了後の用紙9を排出収容部12に排出させるよう搬送する排出搬送路Rt2が設けられている。排出搬送路Rt2は、筐体10の排出収容部12の一部を構成する壁面に形成された排紙口13の手前において用紙9を挟持して搬送する一対の排出ロール46や、用紙9の搬送空間を確保して用紙9の搬送を案内する図示しない案内部材等を配置して構成されている。また、排出搬送路Rt2は、定着部5から上方側に一対の排出ロール46が存在する方向に曲がって延びる搬送経路を形成する搬送路になっている。
【0021】
<画像形成動作>
そして、この画像形成装置1では、以下の基本的な画像形成動作が行われる。
【0022】
まず、画像形成装置1は、図示しない制御手段が外部接続機器等から画像形成動作を要求する指令を受けると、像形成部2、給紙部4、定着部5等における所要の部分が所定のタイミングで始動する。
【0023】
像形成部2では、
図1に示されるように、感光ドラム21が矢印で示す方向に回転始動し、帯電装置22がその感光ドラム21の外周面を所要の電位にそれぞれ帯電させた後、露光装置23が画像処理された画像信号に対応した光(破線の矢印)を感光ドラム21の帯電後の外周面に照射して静電潜像を形成する。しかる後、現像装置24が、その静電潜像を所要の色(例えば黒色)からなる現像剤としてのトナーを供給して静電作用により付着させることにより現像する。これにより、感光ドラム21の外周面には、静電潜像に対応した所要の色のトナー像が形成される。
【0024】
一方、給紙部4では、像形成部2における像形成の動作タイミングに合わせて、収容カセット41に収容されている用紙9を供給装置43により像形成部2における転写位置TPにむけて供給する。この際、給紙部4では、供給装置43により収容カセット41から供給される用紙9が、給紙搬送路Rt1における搬送ロール44を経てレジロールである搬送ロール44まで送られた後、その搬送ロール44により所要のタイミングで転写位置TPに送られる。
【0025】
そして、像形成部2では、転写装置25が感光ドラム21に形成されたトナー像を転写位置TPにおいて給紙部4から供給された用紙9に転写させる。また、像形成部2では、清掃装置26が感光ドラム21の転写後等における外周面に付着する不要物を除去して清掃する。
【0026】
続いて、像形成部2でトナー像が転写された用紙9が、その転写位置TPから排出されて定着部5へ送られる。定着部5では、そのトナー像を保持する用紙9がニップ部FNに導入されて通過させられる。これにより、用紙9上のトナー像は、ニップ部FNにおいて加圧下で加熱されて溶融した後、用紙9に定着される。
【0027】
最後に、定着終了後の用紙9は、定着部5から排出された後、排出搬送路Rt2を経由して搬送されて排出収容部12に収容される。この際、定着が終了して定着部5から排出される用紙9は、排出搬送路Rt2を通して排出ロール46まで送られた後、その排出ロール46により排紙口13を通して筐体10の外部に送り出されることで、排出収容部12に落下するようにして収容される。
【0028】
以上の一連の動作が行われることにより、1枚の用紙9の片面に対して所要の色の画像が形成され、基本的な画像形成動作が終了する。
また、この画像形成装置1では、複数枚の用紙9に対する画像形成動作を要求する指令が出された場合には、上記した一連の動作がその枚数分だけ同様に繰り返される。
【0029】
<定着時に発生するカール>
ところで、このような画像形成装置1においては、
図21(A)に例示されるように、定着部(定着手段)5のニップ部FNから排出される用紙9に、未定着像(トナー像)MTが定着処理された直後の画像T1が存在する表面9aとは反対側の裏面9bの側に反るように湾曲して変形するカール(例えば「反イメージカール」とも称される)が発生することがある。
【0030】
このときのカールは、例えば、定着部5として加圧用回転体52が加熱用回転体51の表面に食い込んだニップ部FN1が形成される定着手段を適用する場合であって、用紙9として普通紙を使用する場合に、発生しやすい傾向にある。
【0031】
実施の形態1における定着部5は、
図2や
図21(A)に示されるように、金属等からなるロール基体51aの外周面に少なくとも弾性層51bを設けた構成の加熱用回転体51と、金属等からなるロール基体52aに離型層52cを設けた構成の加圧用回転体52とを用いて、その加熱用回転体51の弾性層51bに加圧用回転体52が食い込んで窪んだ形状からなるニップ部FN1が形成されたもの(例えば1型ニップ部の定着部5)を適用している。
この定着部5は、上排出式の定着部5Aであってかつ1型ニップ部の定着部5であるため、以下では1型ニップ部の上排出式定着部5A1と称することもある。また、ここでいう普通紙は、例えば薄紙や厚紙でない用紙であり、例えば坪量が60〜105g/m
2の範囲の用紙である。
なお、この1型ニップ部の上排出式定着部5A1において用紙9として厚紙(例えば坪量が106g/m
2以上の用紙)を使用して定着を行った場合、その厚紙には上記反イメージカールが発生しない。この場合、その厚紙には、定着された直後の未定着像が存在する側の表面の側に湾曲するように変形するカール(例えば「イメージカール」とも称される)が発生することがある。
【0032】
ちなみに、定着部5として、
図21(B)に例示するように、加熱用回転体51が加圧用回転体52の表面に食い込んだニップ部FN2が形成される定着手段を適用する場合であって、用紙9として普通紙を使用する場合においても、その普通紙の用紙9に上記イメージカールが発生する傾向がある。
このときの定着部5は、
図19や
図21(B)に示されるように、金属等からなるロール基体51aの外周面に離型層51cを設けた構成の加熱用回転体51と、金属等からなるロール基体52aに弾性層52bを設けた構成の加圧用回転体52とを用い、その加熱用回転体51が加圧用回転体52の弾性層52bに食い込んで窪んだ形状のニップ部FN2が形成されたもの(例えば2型ニップ部の定着部5)を適用している。この定着部5は、上排出式の定着部5Aであってかつ2型ニップ部の定着部5であるため、以下では2型ニップ部の上排出式定着部5A2と称することもある。
また、この2型ニップ部の上排出式定着部5A2に用紙9として厚紙を使用して定着を行った場合、その厚紙には、普通紙の場合ほど湾曲する程度が大きくならないものの、上記イメージカールが発生することがある。
【0033】
<画像形成装置(カール矯正部)の詳細な構成>
そこで、この画像形成装置1においては、以下の構成からなるカール矯正部(矯正装置)6を備えている。
【0034】
カール矯正部6は、
図2から
図4等に示されるように、定着部5のニップ部FNから排出された用紙を最初に挟んで搬送する一対の搬送ロールの一例である排出ロール46と、一対の排出ロール46よりも定着部5に接近した位置でニップ部FNから排出される用紙9の片面9aの側から接触して用紙9の搬送を案内する第1案内手段61と、一対の排出ロール46よりも定着部5に接近した位置でニップ部FNから排出される用紙9の裏面9bの側から接触して用紙9の搬送を案内する第2案内手段65とを備えている。
【0035】
上記用紙9の片面9aとは、カールを矯正するために曲げられる側になる表面をさす。また上記用紙9の裏面9bとは、片面9aの反対側の表面であり、矯正すべきカールが曲がる側になる表面をさす。また、第1案内手段61は、定着部5から見た場合、ニップ部FNを境にして加熱用回転体51のある側に存在するよう配置されている。一方の第2案内手段65は、第1案内手段61よりも加圧用回転体52のある側に存在するよう配置されている。
【0036】
また、カール矯正部6は、第1案内手段61について、
図2や
図4に示されるように、用紙9を案内する部位である案内部として、用紙9の搬送経路(一点鎖線で例示する経路)から離れる方向に窪んだ形状からなる凹部62を有する案内手段として構成している。
さらに、カール矯正部6は、第2案内手段65について、
図2や
図4に示されるように、用紙9を案内する部位である案内部として、用紙9の搬送方向Cに沿う断面が円弧状の形状からなる曲げ部66を有する案内手段として構成している。しかも、カール矯正部6は、第2案内手段65の曲げ部66について、その少なくとも一部が第1案内手段61の凹部62に入り込んだ状態になるよう配置しているものである。
【0037】
上記第1案内手段61は、
図2や
図4に示されるように、用紙9の搬送方向Cとほぼ直角に交差する幅方向D1,D2の全域にわたって連続して存在する板状の形態からなる部材611で構成されている。この第1案内手段61は、定着部5のニップ部FNから加熱用回転体51の回転方向の下流側にずれた位置で加熱用回転体51とその軸方向に沿って対向した状態で配置されている。
【0038】
上記第1案内手段61における案内部としての凹部62は、上記部材611のうち用紙9の搬送方向Cにおける中ほどの位置に、用紙9の搬送方向Cに沿って湾曲して用紙9の幅方向D1,D2に沿って長く延びる溝状の凹部として形成されている。
この凹部62は、例えば、用紙9のカールを矯正するために用紙9を曲げる量等に応じて、その深さや用紙9の搬送方向Cにおける長さや形状等が設定されている。
【0039】
上記凹部62は、
図4や
図6に例示されるように、第1案内手段61における案内部において用紙9の搬送経路に向かって突出している凸部のうち用紙9の搬送方向Cの最上流側に位置する凸部(凹部62の最上流側に位置する上流側端部62a)の頂点Psとその突出している凸部のうち用紙9の搬送方向Cの最下流側に位置する凸部(凹部62の最下流側に位置する下流側端部62b)の頂点Peを結んだ直線(又は平面)VLと、用紙9を案内する窪んだ案内面62cとで囲まれる領域である。
なお、凹部62の案内面62cとして、
図6(B)で例示するように凹部62の上流側端部62aと下流側端部62bの間に中間的な凸部がある場合、その中間的な凸部の頂点P
1〜P
4はいずれも上記直線VLで結ぶ頂点に該当しない。また、
図6(C)で例示するように凹部62の上流側端部62aよりも用紙9の搬送方向Cの上流側に存在する凸部(角部)の頂点P
5や、
図6(D)で例示するように凹部62の下流側端部62bよりも用紙9の搬送方向Cの下流側に存在する凸部(角部)の頂点P
6についても、上記直線VLで結ぶ頂点に該当しない。
【0040】
また、第1案内手段61は、
図2や
図4に示されるように、案内部として、上記板状の部材611における凹部62のうち上流側端部62aに、用紙9の先端9cを第2案内手段65の後述する導入部68に接触させるよう誘導する誘導部63を有する案内手段としても構成されている。
この誘導部63は、例えば、凹部62の端部62aから加熱用回転体51の法線方向にほぼ沿って延びる面を有する部位であって、その面の仮想の延長線が上記導入部68のうち曲げ部66に近い側の部分に交差する状態になる部位として構成されている。
【0041】
さらに、第1案内手段61の凹部62のうち下流側端部62bは、
図5に示されるように、第2案内手段65の曲げ部66と一対の排出ロール46におけるニップ部TNの入口TNsとに接する接線TLよりも用紙9の搬送経路から離れる側に配置されている。
上記接線TLは、例えば、一対の排出ロール46のうち用紙9の搬送経路を挟んで曲げ部66(ロール67)と反対側に位置する排出ロール46bと曲げ部66とに接する接線としてもよい。
【0042】
ちなみに、第1案内手段61は、定着後の用紙9(定着像を含む)との接触による汚染を抑制する等の観点から、少なくとも凹部62の案内面62cと誘導部63の表面には、フッ素系樹脂等からなる離型層を設けている。
また、第1案内手段61は、
図4に示されるように、誘導部63の加熱用回転体51と向き合う端部から加熱用回転体51の回転方向に延びる第1延長部分612と、凹部62の下流側端部62bから凹部62の窪む方向とほぼ同じ方向に延びる第2延長部分613とを有している。この第1延長部分612と第2延長部分613は、凹部62や誘導部63を形成するための付属部分と取付け部分になるが、場合によっては省略することも可能である。
【0043】
一方、第2案内手段65は、曲げ部66の少なくとも一部が第1案内手段61の凹部62に入り込んだ状態になるよう配置されており、具体的には、
図4に示すように、曲げ部66の一部が凹部62の上流側端部62aの頂点Psと下流側端部62bの頂点Peを結んだ直線VLを越えて凹部62の領域内に存在するよう配置されている。
【0044】
この曲げ部66は、第1案内手段61の凹部62に対して用紙9を通過させるための所要の間隔Sをあけて向き合う状態になるよう配置される。間隔Sは、例えば、曲げ部66の凹部62に入り込む量、凹部62の形状又は深さ等の条件を変更することで調整することができる。
また、この曲げ部66は、
図2から
図4に示されるように、第1案内手段61の凹部62のうち用紙9の搬送方向Cの上流側に片寄った状態で配置されている。つまり、このときの曲げ部66は、凹部62の上流側端部62aとの間の離間距離(隙間)が、凹部62の下流側端部62bとの間の離間距離よりも短くなる関係になっている。
【0045】
実施の形態1における曲げ部66は、例えば回転可能に配置される断面円形状の回転体の一例であるロール67で構成されている。
曲げ部66のロール67は、
図3に示されるように、円柱状又は円筒状の本体部67aの両端部における軸部67b,67cが図示しない支持部材に回転可能に取り付けて支持されている。このロール67は、弾性変形しない剛体として構成されている。また、曲げ部66のロール67は、
図4に示されるように、その回転の中心O1が第1案内手段61の凹部62に入り込まないよう配置されている。つまり、このときのロール67は、半円筒部分の一部が凹部62に入り込んだ状態になっている。
【0046】
また、第2案内手段65は、
図2から
図4等に示されるように、案内部として、曲げ部66よりも用紙9の搬送方向Cの上流側に用紙9を曲げ部66に案内する導入部68を有する案内手段としても構成されている。
この導入部68は、
図4に示されるように、例えば、第1案内手段61における誘導部63よりも加熱用回転体51の回転方向下流側になる位置から曲げ部66に接近するように延びる面を有する部位であって、その面が第1案内手段61における誘導部63と凹部62の上流側端部62aと用紙9を通過させるための所要の間隔S2をあけて向き合う状態の部位として構成されている。
また、この導入部68は、第1案内手段61の誘導部63と協働して、定着部5のニップ部FNと向き合う状態で存在し、そのニップ部FNから排出される用紙9をカール矯正部6に受け入れる受け口を形成するように配置されている。この受け口は、実際のところ、向かい合う導入部68と誘導部63との間で用紙9の搬送方向Cの下流側にむかうにつれて間隔が次第に狭くなる隙間空間を形成する開口部として構成される。
さらに、この導入部68は、
図4に示されるように、第1案内手段61の凹部62に入り込まないよう配置されている。つまり、この導入部68は、凹部62における上流側端部62aの頂点Psと下流側端部62bの頂点Peを結ぶ上記直線VLを越えて凹部62に入り込んだ部位がない状態になっている。
【0047】
さらに、第2案内手段65は、
図4に示されるように、導入部68の曲げ部66とは反対側の端部から第1案内手段61の凹部62と向き合いかつ曲げ部66(ロール67)を覆う状態で延びる延長部分651,652を有している。この延長部分651,652は、導入部68を形成するための付属部分と取付け部分になるが、場合によっては省略することも可能である。
【0048】
この他、カール矯正部6は、定着部5とは別体のものとして扱っているが、定着部5の一部として組み込んだ装置や機構として構成してもよい。
また、カール矯正部6における第1案内手段61、第2案内手段65および曲げ部66は、
図2等に示されるように、第1案内手段61および第2案内手段65と一対の排出ロール46の間に配置される用紙9の排出案内手段47,48とを併せることにより、上記排出搬送路Rt2の搬送通路(空間)を構成している。
【0049】
上記排出案内手段47,48は、専用の案内部材や、他の支持部材の一部を案内部として形成して兼用するものにより構成される。
このうち排出案内手段47は、カール矯正部6における第1案内手段61と一対の排出ロール46の一方(例えば従動ロール46b)との間に下方側案内部47aを存在させた状態で配置される。また、排出案内手段48は、カール矯正部6における第2案内手段65と一対の排出ロール46の他方(例えば駆動ロール46a)との間に上方側案内部48aを存在させた状態で配置される。
【0050】
<カール矯正部の動作>
以下、このカール矯正部6の動作について説明する。
【0051】
ここでは、用紙9として普通紙9Aを使用した場合におけるカール矯正部6の動作について説明する。
この場合、普通紙9Aは、定着に際して、
図7に例示されるような状態で定着部5のニップ部FNから排出されてカール矯正部6に進む。
このとき定着部5は、上記したように
図21(A)に例示した1型ニップ部の上排出式定着部5A1である。このため、未定着像が転写された普通紙9Aは、その上排出式定着部5A1において矢印で示す方向に回転する加熱用回転体51とその加熱用回転体51の表面(弾性層51b)に食い込んで圧接する加圧用回転体52との間におけるニップ部FN(FN1)を通過し、しかる後、加熱用回転体51から自然に剥離されてほぼ上方向に排出される。
【0052】
この上排出式定着部5A1のニップ部FN1から排出された普通紙9Aは、
図7に例示するように、未定着像が転写された表面9aの反対面である裏面9bの側に反るように湾曲して変形する反イメージカール91が発生した状態で搬出されることがある。
続いて、反イメージカールが発生した普通紙9Aは、上排出式定着部5A1のニップ部FN1における搬送力を受けて搬送され続け、その普通紙9Aの先端9cが、例えばカール矯正部6における第1案内手段61の誘導部63に接触した後、
図7に二点鎖線で例示するようにカール矯正部6における第2案内手段65の導入部68に達するよう誘導されて接触させられる。
このときの普通紙9Aの先端9cは、第1案内手段61の誘導部63に接触する前に、第2案内手段65の導入部68に先に接触して移動することもある。
【0053】
そして、カール矯正部6では、
図8に例示されるように、反イメージカールが発生した普通紙9Aの先端部が、第2案内手段65の導入部68に案内されて第1案内手段61の凹部62と第2案内手段65の曲げ部66であるロール67との間の隙間に導入されるよう移動する。
この際、反イメージカールが発生した普通紙9Aは、
図8に実線で例示するように、その先端部が未定着像が転写された表面9aの側に反る方向に曲げられた状態にされて搬送される。またこの際、普通紙9Aの先端9cは、
図8に二点鎖線で例示するように、第2案内手段65の曲げ部66であるロール67を通過すると、第1案内手段61の凹部62の案内面62cに接触して案内されるよう移動する。
【0054】
続いて、このカール矯正部6における第1案内手段61の凹部62を通過した普通紙9Aの先端9cは、
図9に実線で例示されるように、排出案内手段47,48で形成される搬送通路に送られるよう移動する。しかる後、その普通紙9Aの先端9cは、
図9に矢付き二点鎖線で例示するように、その排出案内手段47,48との間の搬送通路を単に通過するか又は案内されながら通過した後、矢印で示す方向に回転する一対の排出ロール46(動力を受けて回転する排出ロール46aと排出ロール46aの回転に従動するよう回転する排出ロール46bが圧接するニップ部TN)に達するよう搬送される。
【0055】
この際、普通紙9Aは、その先端側の部分が一対の排出ロール46に挟持されて搬送される段階になっても、カール矯正部6を通過している後方部分が第1案内手段61の凹部62と第2案内手段65の曲げ部66であるロール67の間を通過する際に表面9aの側に反るよう確実に曲げられた状態で移動させられる。このとき第2案内手段65の曲げ部66であるロール67は、
図9に例示されるように、普通紙9Aの裏面9bが接触して移動することにより矢印で示す方向に追従して回転する。
また、普通紙9Aは、
図10に例示されるように、その搬送時の後端9dが定着部5のニップ部FNを通過した段階でも、その後端部分は、カール矯正部6における第1案内手段61の凹部62と第2案内手段65の曲げ部66であるロール67との間の隙間を通過するときに、その表面9aの側に反るようにある程度曲げられた状態にされて移動する。
【0056】
以上のように、カール矯正部6は、定着部5(5A1)のニップ部FNから排出されて反イメージカールが発生する普通紙9Aの先端部をはじめとしてその後方部分に対しても、第1案内手段61の凹部62と第2案内手段65の曲げ部66であるロール67との間の隙間を通過させる際に、その普通紙9Aをその表面9aの側に反るよう一時的に湾曲させた状態にして通過させる。これにより、普通紙9Aに発生する反イメージカールは、その先端部を筆頭に後方部分にかけてもほぼ消失されるように矯正される。
このときのカール矯正部6による反イメージカールの矯正は、第1案内手段61の凹部62と第2案内手段65の曲げ部66であるロール67とによって主に行われて、駆動源により第1案内手段61の位置を調整することや駆動源によりロール67を回転させること等を必要とせずに行われるので、駆動源を有することがなく比較的簡素な構成で行われることになる。
また、画像形成装置1においては、普通紙9Aは、定着部5のニップ部FNから排出された際に反イメージカールが発生した場合でも、カール矯正部6を通過することにより反イメージカールが矯正されてほぼ平らな状態にされた後、最終的に排出収容部12にほぼ正常な状態で収容される。
【0057】
特にこのカール矯正部6では、
図9や
図11等に示されるように、定着部5のニップ部FNと一対の排出ロール46のニップ部TNとの間における搬送路(排出搬送路Rt2)の中間位置よりも用紙9の搬送方向Cの上流側の位置で、凹部62と曲げ部66であるロール67の対向部(
図11に両矢印で示す範囲)で普通紙9Aをその表面9aの側に反らせるよう曲げて一時的に変形させることができ、普通紙9Aに発生する反イメージカールを矯正しやすい。
図11における矢付きの二点鎖線は、普通紙9Aの搬送状態(軌跡)を例示したものである。
また、このカール矯正部6では、
図11に示されるように、曲げ部66であるロール67の用紙9の搬送方向Cの下流側の部分(一方向の矢印で示す以降の範囲)で用紙9を表面9aの側に反らせるよう曲げて変形させることがなく、普通紙9Aに反イメージカールを再度付与してしまうことが防止される。
【0058】
また、このカール矯正部6は、用紙9として普通紙9A以外の例えば厚紙を使用した場合でも、普通紙9Aを使用した場合とほぼ同様に作動する。
つまり、用紙9としての厚紙は、1型ニップ部の上排出式定着部5A1のニップ部FN1を通過して排出されたとき、普通紙9Aにおける反イメージカール(91)が発生しない状態で排出される。
また、このときの厚紙は、カール矯正部6における第1案内手段61の凹部62と第2案内手段65の曲げ部66であるロール67との間の隙間を通過する際に、その表面の側に反るように曲げられて通過するが、厚紙で腰(剛性)が普通紙よりも強いため、その曲げられた状態が保持されることはない。
そして、このときの厚紙は、カール矯正部6を通過した後、排出案内手段47,48で形成される搬送通路に送られ、最後に回転する一対の排出ロール46に達するよう搬送されて排出収容部12に収容される。
したがって、カール矯正部6は、用紙9として厚紙が通過するときにも、その表面の側に反るよう曲げて通過させるよう作動するが、その厚紙に例えばイメージカールを付与してしまうようなおそれはない。
【0059】
そして、このカール矯正部6においては、第2案内手段65の曲げ部66が第1案内手段61の凹部62に対して用紙9を通過させる間隔Sをあけて向き合う状態になるよう配置されるので、その間隔Sを開けない状態で配置する場合に比べて、用紙9が良好に通過して搬送される。
また、カール矯正部6においては、曲げ部66が凹部62のうち用紙9の搬送方向Cの上流側に片寄らせた状態で配置されているので、その曲げ部66を凹部62のうち用紙9の搬送方向Cの下流側に片寄らせた状態で配置する場合に比べて、用紙9(普通紙9A)の少なくとも先端部に生じるカール(反イメージカール)が的確に矯正される。
さらに、カール矯正部6においては、曲げ部66が断面円形状の回転体であるロール67で構成されているので、その曲げ部66を回転体で構成しない場合に比べて、用紙9が良好に通過して搬送されるとともにロール67と接触したときに用紙9に与える負荷が低減される。
また、曲げ部66であるロール67は、その回転の中心O1が凹部62に入り込まないよう配置されているので、そのロール67を回転の中心O1が凹部62に入り込むよう配置した場合に比べて、用紙9を凹部62に相対的に多く押し込んだ状態で通過させることがなく、用紙9がロール67と凹部62の間を通過しにくくなって搬送不良を誘発することが抑制される。
【0060】
[実施の形態1の変形例]
実施の形態1におけるカール矯正部6は、その第2案内手段65として、
図12に示されるように、案内部の曲げ部66が回転せず固定された形態の固定曲げ部69を有した第2案内手段65Bを適用して構成してもよい。
【0061】
この第2案内手段65Bにおける固定曲げ部69は、円柱又は円筒の半周部分が第1案内手段61の凹部62と向き合う形状で構成されている。この固定曲げ部69は、回転しないことを除けば、実施の形態1における曲げ部66としてのロール67とほぼ同じ構成になっている。
また、この固定曲げ部69を有する第2案内手段65Bでは、導入部68を固定曲げ部69と連続した状態で設けることができる。
なお、第1案内手段61は、実施の形態1における第1案内手段61と同じ構成のものである。
このような固定曲げ部69を有する第2案内手段65Bを備えたカール矯正部6の場合にも、実施の形態1におけるカール矯正部6とほぼ同様の作用効果が得られる。
【0062】
[実施の形態2]
図13と
図14は、実施の形態2に係る画像形成装置1Bを示すものである。
図13はその画像形成装置1Bの全体の構成を示し、
図14はその画像形成装置1Bの一部(主に定着部およびカール矯正部)の構成を示している。
【0063】
この画像形成装置1Bは、
図13に示されるように、筐体10の内部空間に、実施の形態1に係る画像形成装置1の場合とほぼ同様に、像形成部2Bと、給紙部4と、定着部5Bと、定着部5Bから排出される用紙9に発生するカールを矯正するカール矯正部6B等を備えている。
【0064】
このうち像形成部2Bは、転写位置TPから転写後の用紙9をほぼ横方向に排出する点で異なる以外は、実施の形態1における像形成部2と同じ構成からなるものである。
また、定着部5Bは、定着が終了した用紙9をニップ部FNからほぼ横方向(例えば画像形成装置が設置される床面等における水平の方向を挟んで±45°の範囲内に含まれる方向)に排出する点で異なる以外は、実施の形態1における定着部5と同じ構成からなるものである。以下では、このような排出を行う形式の定着部5Bを「横排出式の定着部5B」ということもある。
さらに、横排出式の定着部5Bは、実施の形態1における定着部5と同様に、
図21(A)に例示した1型ニップ部の定着部でもある。このため、以下では、この横排出式の定着部5Bについて、1型ニップ部の横排出式の定着部5B1ということもある。
この他、画像形成装置1Bにおける排出搬送路Rt2は、
図13に示されるように、定着部5Bと排出ロール46の間に一対の搬送ロール45を追加して構成されている。この搬送ロール45は、定着部5Bのニップ部FNから排出された用紙9を最初に挟んで搬送する一対の搬送ロールとして機能する。
【0065】
次に、実施の形態2に係る画像形成装置1Bは、カール矯正部6Bとして、以下の構成からなるカール矯正部を適用している。
【0066】
まず、カール矯正部6Bは、実施の形態1(その変形例を含む)におけるカール矯正部6とほぼ同様に、第1案内手段61と第2案内手段65を備えて構成されており、特にその第1案内手段61および第2案内手段65の配置が上下方向で逆転している点で少し異なる程度である。
【0067】
このカール矯正部6Bにおける第1案内手段61は、
図14に示されるように、横排出式の定着部5Bのニップ部FN1から排出される用紙9の片面である表面9aの側から接触して用紙9の搬送を案内するものであって、実施の形態1におけるカール矯正部6の第1案内手段61とほぼ同様に案内部として凹部62と誘導部63を有している。
【0068】
一方、カール矯正部6Bにおける第2案内手段65は、
図14に示されるように、横排出式の定着部5Bのニップ部FN1から排出される用紙9の反対面である裏面9bの側から接触して用紙9の搬送を案内するものであって、実施の形態1におけるカール矯正部6の第2案内手段65とほぼ同様に、案内部として曲げ部66のロール67と導入部68を有している。
【0069】
このようなカール矯正部6Bにおいては、1型ニップ部の横排出式の定着部5B1におけるニップ部FN1から排出される用紙9に対して、実施の形態1におけるカール矯正部6とほぼ同様の作用効果が得られる。特にニップ部FN1から排出される普通紙9Aに反イメージカールが発生した場合でも、その普通紙9Aがカール矯正部6Bを通過することにより、その反イメージカールが矯正される。
【0070】
[実施の形態3]
図15は、実施の形態3に係る画像形成装置における定着部のカール矯正部6Cを示すものである。
【0071】
実施の形態3に係る画像形成装置および定着部は、
図1、
図2等に示された実施の形態1に係る画像形成装置1Aおよび上排出式定着部5A1と同じ構成からなるものである。
また、カール矯正部6Cは、実施の形態1(その変形例を含む)におけるカール矯正部6とほぼ同様に第1案内手段61Cと第2案内手段65Cを備えて構成されており、特にその第1案内手段61Cおよび第2案内手段65Cの形状等の一部が変更されている点で少し異なる程度である。
【0072】
第1案内手段61Cは、実施の形態1における第1案内手段61(
図4)と比べた場合、
図15に示されるように、板状の部材611Cとして用紙9の搬送方向Cの途上となる一箇所で湾曲した湾曲部62dを有する窪み形状からなる凹部62Cが形成されたものを適用している点で異なるが、それ以外の点についてはほぼ同じ構成になっている。
【0073】
第1案内手段61Cにおける凹部62Cは、湾曲部62dで緩やかに湾曲した面からなる湾曲案内面と、凹部62Cの上流側端部62aから湾曲部62d(湾曲案内面の上流端)までほぼ平面状に延びる上流側案内面62c1と、湾曲部62d(湾曲案内面の下流端)から凹部62Cの下流側端部62bまでほぼ平面状に延びる下流側案内面62c2とを有している。実施の形態3における上流側案内面62c1および下流側案内面62c2は、上流側案内面62c1の用紙9の搬送方向Cに沿う長さよりも、下流側案内面62c2の前記搬送方向Cに沿う長さの方が長くなる関係(例えば2倍以上の寸法)になるよう構成している。
【0074】
第2案内手段65Cは、実施の形態1における第2案内手段65(
図4)と比べた場合、
図15に示されるように、曲げ部66を以下に説明する条件を満たすように配置している点と、導入部68から最初に延びて次の延長部652に至るまでの延長部分651Cをほぼ平板状の形状に変更している点で異なるが、それ以外の点についてはほぼ同じ構成になっている。
【0075】
第2案内手段65Cにおけるロール67からなる曲げ部66は、
図16に示されるように、第1案内手段61Cにおける凹部62Cの上流側端部62aと下流側端部62bとに接する直線VLが曲げ部66と交わる2つの交点K1,K2のうち用紙9の搬送方向Cの上流側の交点K1で曲げ部66に接する接線TL1が凹部62Cとなす角度をθ1とし、前記搬送方向Cの下流側の交点K2で曲げ部66に接する接線TL2が凹部62Cとなす角度をθ2とした場合、θ1>θ2という条件を満たすよう配置されている。
【0076】
このときの凹部62Cとなす角度θ1,θ2は、その凹部62Cの窪んだ形状が途中で屈曲するように曲がった形状であるため、定着後の用紙9がカール矯正部6Cに導入されて曲げ部66を通過した後に最初に接触する凹部62Cの案内面を角度の一方を担う基準面としたうえで、その基準面になる案内面(本例では下流側案内面62c2)に対して各接線TL1,TL2が接触するときの接触点m1,m2を頂点とした角度とする。
また、本例のように一方の接線TL1が上記基準とする案内面(62c2)でない場合や不明である場合には、上記角度θ1については、その基準とする案内面(62c2)に沿って延長した仮想の延長線ELとなす角度とすればよい。さらに、角度θ1は接触m1において用紙9の搬送方向Cの上流側の位置に存在する角度を採用し、角度θ2は接触点m2において用紙9の搬送方向Cの下流側の位置に存在する角度を採用する。なお本例における角度θ1,θ2はいずれも劣角になる。
【0077】
ちなみに、実施の形態3では、上記θ1>θ2という条件を満たすために、ロール67からなる曲げ部66を、第1案内手段61Cの凹部62Cにおける湾曲部62dに近い位置でかつ上流側案内面62c1よりも下流側案内面62c2に接近させた状態になるよう配置している。
【0078】
このようなカール矯正部6Cを適用した画像形成装置によれば、そのカール矯正部6Cにおいても上記した実施の形態1におけるカール矯正部6の場合とほぼ同様のカール矯正に関する作用効果が得られる。
【0079】
特にカール矯正部6Cでは、第2案内手段65Cにおける曲げ部66が上記θ1>θ2という条件を満たすように配置されているので、
図15等に示されるように、曲げ部66の出口側部分(用紙9の搬送方向Cの下流側になる周面部分)と凹部62Cとの隙間よりも、曲げ部66の入口側部分(用紙9の搬送方向Cの上流側になる周面部分)と凹部62Cとの隙間の方が広い状態になっている。参考までに、実施の形態1におけるカール矯正部6では、
図4等から見てとれるように、その隙間の広狭の関係が逆になっている。つまり、カール矯正部6では、
図4に示されるように曲げ部66の入口側部分と凹部62との隙間よりも、曲げ部66の出口側部分と凹部62との隙間の方が広い状態になっている。
【0080】
このため、カール矯正部6Cでは、
図17に二点鎖線TL6で例示されるように、定着後の用紙9がカール矯正部6Cに導入された後に凹部62Cの上流側端部62aと曲げ部66とに接触して直進すると仮定した場合、曲げ部66を上記θ1>θ2という条件を満たさないように配置した場合に比べて、その用紙9が凹部62Cの案内面(下流側案内面62c2)に接触したときの接触点m6において凹部62Cの案内面となす角度(接触角)α1が小さくなる。
このことにより、用紙9は、凹部62Cと曲げ部66との間の空間を通過する際に受ける搬送負荷が低減し、その隙間空間で詰まりにくい状態で通過しやすくなり、用紙9の先端部にカールが存在してもそのカールがカール矯正部6Cの通過により矯正される。
【0081】
また、第2案内手段65Cにおけるロール67からなる曲げ部66については、以下のように配置されていると表現することもできる。
すなわち、曲げ部66は、
図18に示されるように、第1案内手段61Cにおける凹部62Cの上流側端部62aと下流側端部62bとに接する直線VLが曲げ部66と交わる2つの交点K1,K2のうち用紙9の搬送方向Cの上流側の交点K1から曲げ部66との間隔が最も短いSmという寸法になる位置spまでの曲げ部66の上流側周長をL1とし、前記搬送方向Cの下流側の交点K2から上記位置spまでの曲げ部66の下流側周長をL2とした場合、L1>L2という条件を満たすよう配置されている。
【0082】
図18に破線の両矢印で範囲を示す上流側周長L1および下流側周長L2は、便宜上、曲げ部66から離した位置で示したものである。このため、
図18中における上流側周長L1および下流側周長L2の寸法は、曲げ部66の本来の周長でなく相似関係にある寸法になっているが、実際は曲げ部66の外周面における周長になる。また、実施の形態3における曲げ部66の上記位置spは、凹部62Cにおける湾曲部62dを通過した後の下流側案内面62c2と向き合う位置になっている。
【0083】
ちなみに、実施の形態3では、上記L1>L2という条件を満たすために、上述した上記θ1>θ2という条件を満たすための場合と同様に、ロール67からなる曲げ部66を、第1案内手段61Cの凹部62Cにおける湾曲部62dに近い位置でかつ上流側案内面62c1よりも下流側案内面62c2に接近させた状態になるよう配置している。
また、上記L1>L2という条件については、曲げ部66が例えば断面円形のロール67である場合、上流側の交点K1から上記位置spまでの中心角をα1とし、下流側の交点K2から上記位置spまでの中心角をα2としたとき、α1>α2という条件と言い替えることも可能である。
【0084】
このように表現した曲げ部66の配置がなされたカール矯正部6Cを適用した画像形成装置においても、上述した場合と同様に、定着部を通過した後の用紙9の先端部にカールが存在していても、その用紙9におけるカールが用紙詰まりの発生が防止されつつ矯正される。
【0085】
なお、実施の形態3では、第2案内手段65Cにおける曲げ部66の配置が、上記θ1>θ2という条件と上記L1>L2という条件との双方を満たす場合を例示した。しかし、この発明にあっては、曲げ部66について上記2つの条件の少なくとも一方を満たすように配置すればよい。
【0086】
[他の変形例]
この発明は、上記実施の形態1から3で例示した内容に何ら限定されるものではなく、例えば、以下に挙げるような変形例も含むものである。
【0087】
実施の形態1、3に係る画像形成装置1は、その定着部5に代えて、
図19に示されるように、
図21(B)に例示した2型ニップ部の上排出式定着部5A2を適用して構成してもよい。
【0088】
この2型ニップ部の上排出式定着部5A2を適用した場合におけるカール矯正部6Dは、
図19に示されるように、実施の形態1(その変形例を含む)におけるカール矯正部6とほぼ同様に、第1案内手段61と第2案内手段65とを備えたものである。カール矯正部6Dについては、実施の形態3におけるカール矯正部6C(
図15)と同じ構成を採用しもよい。
ただし、このカール矯正部6Dは、その第1案内手段61が主に上排出式定着部5A2におけるニップ部FN2より加圧用回転体52側に存在するよう配置され、その第2案内手段65と曲げ部66が上排出式定着部5A2における加熱用回転体51側に存在するよう配置されている点で、実施の形態1、3におけるカール矯正部6、6Cと相違している。また、この上排出式定着部5A2においては、そのニップ部FN2とカール矯正部6Cの第2案内手段65との間に、定着後の用紙9の先端9cを加熱用回転体51から剥離した後に第2案内手段65の導入部68に案内する図示しない剥離案内手段を設けることが望ましい。
【0089】
この2型ニップ部の上排出式定着部5A2を適用した画像形成装置1においては、用紙9として普通紙9Aを使用したときには、上排出式定着部5A2におけるニップ部FN2から排出されたときの普通紙9Aには
図20に太い実線で例示するように表面9aの側に反るように曲がるイメージカール93が発生することがある。
しかし、このときのカール矯正部6Dは、上排出式定着部5A2のニップ部FN2から排出されてイメージカールが発生する普通紙9Aの先端部をはじめその後方部分に対して、第1案内手段61の凹部62と第2案内手段65の曲げ部66であるロール67との間の隙間を通過させる際に、その普通紙9Aをその裏面9bの側に反るよう一時的に湾曲させた状態にして通過させる。これにより、普通紙9Aに発生するイメージカールは、ほぼ消失されるように矯正される。
また、このカール矯正部6Dは、用紙9として厚紙9Bを使用したときには、実施の形態1におけるカール矯正部6の場合とほぼ同様に作動する。
【0090】
また、実施の形態2における画像形成装置1Bは、1型ニップ部の横排出式の定着部5B1に代えて、2型ニップ部FN2を採用する横排出式の定着部(5B2)を適用して構成してもよい。
さらに、カール矯正部6(6B,6D)は、必要な場合には、第2案内手段65の曲げ部66を第1案内手段61の凹部62と接近又は接触させた状態になるよう配置してもよい。この場合、その凹部62と曲げ部66の間を通過する用紙9の搬送性を確保する観点から、例えば曲げ部66を回転可能なロール67等の回転体として構成したり、あるいは、凹部62の案内面62cや曲げ部66の表面を弾性変形しやすい表面層を備えた構成にするとよい。
また、カール矯正部6(6B,6D)は、第1案内手段61に誘導部63を設ける代わりに、第1案内手段61と加熱用回転体51(又は加圧用回転体52)との間に用紙9を剥離して第2案内手段65の導入部68や曲げ部66に案内する剥離案内手段を設けるようにしてもよい。
【0091】
この他、実施の形態1から3では、画像形成装置として現像剤から構成される単色画像を形成する像形成部2,2Bを備えた画像形成装置1,1Bを例示したが、この発明は多色(カラー)画像を形成する像形成部2,2Bを備えた画像形成装置にも適用することができる。この多色画像を形成する像形成部2,2Bとしては、例えば、各色の未定着像をそれぞれ形成する本体部分とその未定着像を一次転写して一時的に保持した後に用紙に二次転写する中間転写部分を有するものを適用することができる。
また、実施の形態1から3では、定着部5(5A,5B)として加熱用回転体51と加圧用回転体52がロール形態で構成されている場合を例示したが、定着部5(5A,5B)としては、この他にも例えば、加熱用回転体51と加圧用回転体52の一方又は双方がベルト−支持ロール形態で構成されている定着部やベルト−ニップ形態で構成されている定着部を適用しても構わない。