【解決手段】電子ペン1において、集積回路6は、コイルLとともに共振回路を構成する可変容量コンデンサVCの一端に接続された端子C1Pと、可変容量コンデンサVCの他端に接続された端子C1Mと、端子C1P,C1Mの間に並列に接続された複数のコンデンサC
前記複数の第1のスイッチはそれぞれ、対応する前記第2のコンデンサの前記ゲート電極に接続された共通端子と、前記第1の端子に接続された第1の選択端子と、相対的に高電位が供給される第2の選択端子とを有し、
前記複数の第2のスイッチはそれぞれ、対応する前記第2のコンデンサの前記基板に接続された共通端子と、前記第2の端子に接続された第1の選択端子と、相対的に低電位が供給される第2の選択端子とを有し、
前記制御回路は、対応する前記第1のスイッチを前記第2の選択端子側に切り替えるとともに、対応する前記第2のスイッチを前記第2の選択端子側に切り替えることにより、前記複数の第2のコンデンサそれぞれの容量を変更するように構成される、
請求項3又は4に記載の集積回路。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施の形態による電子ペン1の外観を示す図である。同図に示すように、電子ペン1は、筒状の筐体2と、筐体2の長手方向の一端に配置されたペン先部材3と、筐体2の表面に設けられた操作スイッチ4とを有して構成される。このうち操作スイッチ4は、筐体2の側面に設けられる場合にはサイドスイッチなどと呼ばれ、筐体2の端部に設けられる場合にはテイルスイッチなどと呼ばれる。
【0017】
電子ペン1を利用するユーザは、片方の手で筐体2を保持し、図示しない位置検出装置のタッチ面にペン先部材3を当接させた状態で電子ペン1を移動させることにより、位置検出装置への入力を行う。入力の際、電子ペン1と位置検出装置とは、上述した電磁共鳴(EMR)方式による通信を行うよう構成される。電子ペン1は、この通信により、ペン先部材3に加わる圧力(筆圧)を示す筆圧情報と、操作スイッチ4のオンオフ状態を示すスイッチ情報とを含むペン情報を送信可能に構成される。詳しくは後述するが、電子ペン1は、ペン情報の内容に応じて共振回路の共振周波数を変化させることにより、共振周波数の変位としてペン情報を送信するように構成される。
【0018】
図2は、
図1に示した筐体2の中に配置される基板5の上面写真である。同写真に示すように、基板5の表面には、
図1にも示した操作スイッチ4と、集積回路6と、これらを接続する配線などが配置される。また、
図3は、電子ペン1及び集積回路6の回路構成を示す図である。同図に示すように、電子ペン1はさらに、可変容量コンデンサVC(第1のコンデンサ)と、固定容量コンデンサC
B1,C
B2と、コイルLとを有して構成される。詳しくは後述するが、可変容量コンデンサVC及び固定容量コンデンサC
B1,C
B2は、コイルLとともに電子ペン1の共振回路を構成する。
【0019】
可変容量コンデンサVCは、ペン先部材3に加わる筆圧に応じて容量が変化するよう構成されたコンデンサである。また、固定容量コンデンサC
B1,C
B2はそれぞれ可変容量コンデンサVCと並列に接続され、電子ペン1の共振回路の基準共振周波数を設計の段階で調整する役割を果たす。
【0020】
ここで、本発明の課題について、
図8を参照しながら詳しく説明する。
【0021】
図8は、本発明の背景技術による電子ペンの筐体の中に配置される基板100の上面写真である。同図に示すように、基板100の表面には、複数のコンデンサ101と、複数のコンデンサ101のそれぞれと直列に設けられた複数の切断部102とが配置される。複数のコンデンサはそれぞれ図示しない可変容量コンデンサと並列に配置されており、図示しないコイルとともに、本発明の背景技術による電子ペンの共振回路を構成している。
【0022】
切断部102は直線状の配線によって構成されており、その両側には、孤立した配線であるランドパターン102a,102bが設けられている。切断部102をレーザーによって切断する際には、ランドパターン102a,102bの一方から他方にかけて、レーザーの照射ポイントを移動させる。ランドパターン102a,102bを設けているのは、基板100に生ずる凹みを軽減するためである(詳しくは特許文献1を参照)。切断部102が切断されると、対応するコンデンサ101が回路から切り離され、共振回路の合成容量が小さくなるので、基準共振周波数が大きくなる。したがって、必要な数だけ切断部102を切断することにより、任意の基準共振周波数を実現することが可能になる。
【0023】
しかしながら、
図8の電子ペンによれば、複数のコンデンサ101及び複数の切断部102を配置するために大きな面積が必要となることから、基板100のサイズを縮小することが困難である。上述したように、近年では電子ペン内に設ける基板サイズの縮小が求められるようになっているため、より小さい面積で基準共振周波数の合わせ込みを実現する方法が求められている。本実施の形態による電子ペン1は、複数のコンデンサ101及び複数の切断部102に代え、共振回路の基準共振周波数を調整するための回路を含む集積回路6を用いることにより、
図2に示すように、
図8に示した電子ペンよりも小さい面積で基準共振周波数の合わせ込みを実現するものである。以下、集積回路6の具体的な構成について、
図3を参照しながら詳しく説明する。
【0024】
図3に示すように、集積回路6は、メモリ11を含む制御回路10と、スイッチ12と、2つのコンデンサアレイC
1ARRAY,C
2ARRAYと、共振回路に接続される端子C1P,C1M,C2P,C2Mと、電位VPPが供給される電源端子VPP、電位VDD(<VPP)が供給される電源端子VDDと、接地電位GND(<VDD)が供給される接地端子GNDと、任意のデータSDATが供給されるデータ端子SDATと、制御回路10の動作クロックSCLKが供給されるクロック端子SCLKと、予備端子PIOとを有して構成される。なお、集積回路6に設けられるこれらの端子は、シリアルバスの規格であるI
2Cに準拠したものとすることが好ましい。
【0025】
初めに集積回路6の外側に着目すると、端子C1Pには、可変容量コンデンサVCの一端、固定容量コンデンサC
B1,C
B2それぞれの一端、及びコイルLの一端が共通に接続される。端子C2Pは、集積回路6の外側で端子C1Pと短絡されている。端子C1Mには、可変容量コンデンサVCの他端、固定容量コンデンサC
B1の他端、コイルLの他端、及び操作スイッチ4の一端が共通に接続される。端子C2Mには、固定容量コンデンサC
B2の他端及び操作スイッチ4の他端が共通に接続される。
【0026】
説明のため、集積回路6内において端子C1P,C1Mの間、端子C2P,C2Mの間がそれぞれオープンであると仮定すると、操作スイッチ4がオフである場合、可変容量コンデンサVC及び固定容量コンデンサC
B1がコイルLに対して並列に接続された状態となり、これらの合成容量とコイルLとで共振回路が構成される。以下、この共振回路を「第1の共振回路」という場合がある。可変容量コンデンサVCを含むことから、第1の共振回路の共振周波数は筆圧に応じて変化する。したがって、第1の共振回路を用いることにより、共振周波数の変位として筆圧を送信することが実現される。
【0027】
一方、操作スイッチ4がオンである場合、可変容量コンデンサVC、固定容量コンデンサC
B1、及び固定容量コンデンサC
B2がコイルLに対して並列に接続された状態となり、これらの合成容量とコイルLとで共振回路が構成される。以下、この共振回路を「第2の共振回路」という場合がある。可変容量コンデンサVCを含むことから、第2の共振回路の共振周波数も筆圧に応じて変化する。したがって、第2の共振回路を用いることによっても、共振周波数の変位として筆圧を送信することが実現される。
【0028】
加えて、第2の共振回路は第1の共振回路に固定容量コンデンサC
B2を追加した構成となっていることから、第2の共振回路と第1の共振回路とでは、筆圧に応じた共振周波数の変位範囲が異なる。したがって、操作スイッチ4のオンオフ状態に応じて第1及び第2の共振回路を切り替えることにより、共振周波数の変位としてスイッチ情報を送信することも実現される。
【0029】
次に集積回路6の内側に着目すると、コンデンサアレイC
1ARRAYは、端子C1P,C1Mの間に並列に接続された複数のコンデンサC
a(第2のコンデンサ)と、複数のコンデンサC
aのそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチS
a(第1のスイッチ)と、複数のコンデンサC
aのそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチS
b(第2のスイッチ)とを有して構成される。各コンデンサC
aが端子C1P,C1Mの間に並列に接続されていることから、コンデンサアレイC
1ARRAYは、第1及び第2の共振回路それぞれの一部を構成している。
【0030】
また、コンデンサアレイC
2ARRAYは、端子C2P,C2Mの間に並列に接続された複数のコンデンサC
a(第2のコンデンサ)と、複数のコンデンサC
aのそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチS
a(第1のスイッチ)と、複数のコンデンサC
aのそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチS
b(第2のスイッチ)とを有して構成される。各コンデンサC
aが端子C2P,C2Mの間に並列に接続されていることから、コンデンサアレイC
2ARRAYは、第2の共振回路の一部を構成している。
【0031】
図4は、コンデンサC
aの模式的な断面図である。同図に示すように、コンデンサC
aは、基板20上に、絶縁膜21と、フローティングゲート22と、ゲート電極23とがこの順で積層された構造を有している。この構造はフローティングゲートタイプのフラッシュメモリに類似するものであるが、ソース及びドレインを有してもよいし有しなくてもよい点で、フラッシュメモリとは異なっている。図示していないが、基板20上には同様の構造が所定間隔で配置され、それぞれによりコンデンサC
aが構成される。
【0032】
基板20は、例えばn型の不純物がドープされたシリコン基板などのn型半導体によって構成される。絶縁膜21は、例えば酸化シリコン又は窒化シリコンなどの絶縁材料によって構成される。ゲート電極23は、例えば導電性の金属などの導電材料によって構成される。
【0033】
フローティングゲート22は、例えば、n型の不純物がドープされたポリシリコンなどのn型半導体によって構成される。ただし、共振周波数を調整する前の段階では、空乏化によりフローティングゲート22は電荷が注入されていない状態とする。したがって、基準共振周波数を調整する前の段階におけるコンデンサC
aの静電容量をC
0とすると、C
0は次の式(1)で表される。ただし、C
OXは、絶縁層21の静電容量である。
【0035】
また、スイッチS
aは、対応するコンデンサC
aのゲート電極23に接続された共通端子と、端子C1P又は端子C2Pに接続された第1の選択端子と、電位Vcが供給される第2の選択端子とを有して構成される。同様に、スイッチS
bは、対応するコンデンサC
aの基板20(いわゆるバックゲート)に接続された共通端子と、端子C1M又は端子C2Mに接続された第1の選択端子と、接地電位GNDが供給される第2の選択端子とを有して構成される。本実施の形態においては、電位Vcは接地電位GNDより高い電位となっている。各スイッチS
a,S
bはいずれも、初期状態では共通端子と第1の選択端子とが接続された状態とされている。
【0036】
図3に戻る。制御回路10は、図示しない外部装置からの指示に従い、制御信号BC1によりコンデンサアレイC
1ARRAY内の各コンデンサC
aの容量を変更することによって、第1及び第2の共振回路の基準共振周波数を変更する機能と、図示しない外部装置からの指示に従い、制御信号BC2によりコンデンサアレイC
2ARRAY内の各コンデンサC
aの容量を変更することによって、第2の共振回路の基準共振周波数を変更する機能とを有して構成される。
【0037】
具体的に説明すると、制御回路10のメモリ11内には、コンデンサC
aごとに、容量を初期値(上記式(1)により表される値)から変更するか否かを示す値を記憶するコンデンサビット領域が設けられる。この値は、上述したデータSDATを用いて、図示しない外部装置によりコンデンサビット領域内に書き込まれる。制御回路10は、コンデンサビット領域に記憶される値に基づいて制御信号BC1,BC2を生成し、コンデンサアレイC
1ARRAY,C
2ARRAYに供給するよう構成される。
【0038】
また、制御回路10は、図示しない外部装置から供給される電位VPP又は電位VDDに基づいて電位Vcを生成する機能を有して構成される。制御回路10は、基準共振周波数の変更を開始するにあたり、こうして生成した電位Vcの各スイッチS
aの第2の選択端子への供給を開始するとともに、各スイッチS
bの第2の選択端子に対し、図示しない外部装置から供給される接地電位GNDの供給を開始する。
【0039】
基準共振周波数の変更においては、制御回路10は、コンデンサアレイC
1ARRAYに含まれる複数のコンデンサC
aのうち、容量を初期値から変更することを示す値がコンデンサビット領域内に記憶されているものについて、対応するスイッチS
a,S
bのそれぞれを第2の選択端子側に切り替えるための制御信号BC1を生成し、対応するスイッチS
a,S
bに供給する。そして、所定時間後に、対応するスイッチS
a,S
bのそれぞれを第1の選択端子側に切り替えるための制御信号BC1を生成し、対応するスイッチS
a,S
bに供給する。
【0040】
また、制御回路10は、コンデンサアレイC
2ARRAYに含まれる複数のコンデンサC
aのうち、容量を初期値から変更することを示す値がコンデンサビット領域内に記憶されているものについて、対応するスイッチS
a,S
bのそれぞれを第2の選択端子側に切り替えるための制御信号BC2を生成し、対応するスイッチS
a,S
bに供給する。そして、所定時間後に、対応するスイッチS
a,S
bのそれぞれを第1の選択端子側に切り替えるための制御信号BC2を生成し、対応するスイッチS
a,S
bに供給する。
【0041】
制御回路10が以上のような制御信号BC1,BC2の生成及び供給を行うことにより、容量を初期値から変更することを示す値がコンデンサビット領域内に記憶されているコンデンサC
aに対し、所定時間にわたって電位Vcが印加されることになる。
【0042】
ここで再度
図4を参照すると、電位Vcが印加されているとき、基板20内に存在する電子が絶縁膜21との境界近傍に引き寄せられ、そのうちの一部がトンネル効果によってフローティングゲート22内に移動する。こうしてフローティングゲート22内に蓄積した電子は、電位Vcの印加が終了した後もフローティングゲート22内に残存する。すなわち、フローティングゲート22は電荷が注入された状態となる。その結果、フローティングゲート22内に空乏層が形成されるので、この空乏層の静電容量をC
Dとすると、コンデンサC
aの容量は次の式(2)で表される値C
1に変化する。値C
1は、式(2)から理解されるように、絶縁層21の静電容量C
OXと空乏層の静電容量C
Dの直列接続に対応する値である。こうして、制御信号BC1,BC2によるコンデンサC
aの容量の変更が実現される。なお、空乏層の静電容量C
Dは空乏層幅の変化に応じて変化するが、十分に電荷を注入することによってフローティングゲート22を完全空乏化させることによって、最終的に一定値に安定させることができる。したがって、電位Vcの印加は、フローティングゲート22が完全空乏化する程度まで継続することが好ましい。
【0044】
コンデンサアレイC
1ARRAYは、上述したように、第1及び第2の共振回路それぞれの一部を構成している。したがって、上記のようにしてコンデンサアレイC
1ARRAY内の各コンデンサC
aのフローティングゲート22に個別に電子を注入し、それによって各コンデンサC
aの容量を個別に変更することにより、第1及び第2の共振回路の基準共振周波数が変更されることになる。
【0045】
また、コンデンサアレイC
2ARRAYは、上述したように、第2の共振回路の一部を構成している。したがって、第2の共振回路の基準共振周波数は、上記のようにしてコンデンサアレイC
2ARRAY内の各コンデンサC
aのフローティングゲート22に個別に電子を注入し、それによって各コンデンサC
aの容量を個別に変更することによっても、変更されることになる。
【0046】
図示しない外部装置は、操作スイッチ4がオフの場合とオンの場合のそれぞれについて電子ペン1の基準共振周波数を測定する機能と、測定した基準共振周波数と規格値との差に基づき、コンデンサアレイC
1ARRAY,C
2ARRAYに含まれるコンデンサC
aごとに、容量を初期値から変更するか否かを決定する機能と、決定の結果を示す値をメモリ11のコンデンサビット領域内に書き込む機能とを有する。したがって、制御回路10が上記制御を行うことにより、第1及び第2の共振回路のそれぞれについて、基準共振周波数の規格値への合わせ込みが実現される。
【0047】
制御回路10が行うその他の処理について、説明する。制御回路10は、上述したデータSDATを用いて供給される外部装置からの指示に応じて、操作スイッチ4の有効/無効を制御する機能も有する。具体的に説明すると、まずスイッチ12は、端子C1Mと端子C2Mとの間に接続されている。制御回路10は、操作スイッチ4の無効化を指示された場合に、スイッチ12をオンにするイネーブル信号SSWENを生成し、スイッチ12に供給する。これにより、集積回路6の内部で端子C1Mと端子C2Mとが短絡されるので、操作スイッチ4が無効になる。また、制御回路10は、操作スイッチ4の有効化が指示された場合に、スイッチ12をオフにするイネーブル信号SSWENを生成し、スイッチ12に供給する。これにより、集積回路6の内部で端子C1Mと端子C2Mとが切り離されるので、操作スイッチ4が有効になる。
【0048】
また、メモリ11内のフリー領域は、電子ペン1を他の電子ペンから区別するためのペンIDその他の情報を記憶する領域である。フリー領域内に記憶される情報も、上述したデータSDATを用いて、図示しない外部装置により書き込まれる。なお、電子ペン1は、メモリ11内のフリー領域に記憶されるペンIDを、ペン情報の一部として位置検出装置に向けて送信することとしてもよい。こうすることで、位置検出装置は、電子ペン1ごとに異なる処理(例えば、電子ペン1ごとに描画色を変える処理)を実行することが可能になる。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態による集積回路6及び電子ペン1によれば、集積回路6内で複数のコンデンサC
aそれぞれの容量を変更することによって、第1及び第2の共振回路それぞれの基準共振周波数を変えることができる。したがって、
図2と
図8とを比較すると明らかなように、レーザーによる配線カットを利用する場合よりも小さい面積で、基準共振周波数の合わせ込みを実現することが可能となる。
【0050】
なお、本実施の形態においては、フローティングゲート22をn型半導体によって構成する例を説明したが、p型の不純物がドープされたポリシリコンなどのp型半導体によってフローティングゲート22を構成することも可能である。以下、
図5を参照して説明する。
【0051】
図5は、本発明の第1の実施の形態の変形例によるコンデンサC
aの模式的な断面図である。同図に示す例は、基板20がp型の不純物がドープされたシリコン基板(p型半導体)によって構成される点、フローティングゲート22がp型の不純物がドープされたポリシリコン(p型半導体)によって構成される点、及び、電位Vcが接地電位GNDより低い電位となっている点で、
図4に示した例と異なっている。
【0052】
図5の例によるコンデンサC
aにおいては、上述したようにして所定時間にわたり電位Vcが印加された場合、基板20内に存在するホール(正孔)が絶縁膜21との境界近傍に引き寄せられ、そのうちの一部がトンネル効果によってフローティングゲート22内に移動する。そして、フローティングゲート22内に蓄積したホールは、電位Vcの印加が終了した後もフローティングゲート22内に残存する。したがって、フローティングゲート22が空乏化するので、
図4の例によるコンデンサC
aと同様、制御回路10によりコンデンサC
aの容量を変更することができる。なお、
図5の例においても、電位Vcの印加はフローティングゲート22が完全空乏化する程度まで電位Vcの印加を継続し、空乏層の静電容量を安定させることが好ましい。
【0053】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、複数のコンデンサそれぞれの容量の変更ではなく、複数のコンデンサのそれぞれと直列に設けられた複数のスイッチのオンオフ状態の制御によって共振回路の基準共振周波数を変更する点で第1の実施の形態と相違し、その他の点では第1の実施の形態と同様であるので、同一の構成には同一の符号を付し、以下では第1の実施の形態との相違点に着目して説明する。
【0054】
図6は、本実施の形態による電子ペン1及び集積回路6の回路構成を示す図である。同図に示すように、本実施の形態によるコンデンサアレイC
1ARRAYは、端子C1P,C1Mの間に並列に接続された複数のコンデンサC
b(第2のコンデンサ)と、複数のコンデンサC
aのそれぞれと直列に接続された複数のヒューズ素子H(スイッチ)とを有して構成される。また、本実施の形態によるコンデンサアレイC
2ARRAYは、端子C2P,C2Mの間に並列に接続された複数のコンデンサC
b(第2のコンデンサ)と、複数のコンデンサC
aのそれぞれと直列に接続された複数のヒューズ素子H(スイッチ)とを有して構成される。各ヒューズ素子Hはいずれも、共振周波数を調整する前の段階では、接続状態とされている。
【0055】
本実施の形態によるメモリ11に設定されるコンデンサビット領域内には、ヒューズ素子Hごとに、オンオフいずれの状態とするかを示す値が記憶される。この値は、上述したデータSDATを用いて、図示しない外部装置によりコンデンサビット領域内に書き込まれる。
【0056】
本実施の形態による制御回路10は、コンデンサビット領域に記憶される値に基づいて複数のヒューズ素子Hそれぞれのオンオフ状態を制御することにより、第1及び第2の共振回路の共振周波数を変更するよう構成される。
【0057】
具体的に説明すると、制御回路10は、コンデンサアレイC
1ARRAYに含まれる複数のヒューズ素子Hのうち、オフの状態とすることを示す値がコンデンサビット領域内に記憶されているものについて、切断するための制御信号BC1を生成し供給する。これにより、オフの状態とすることがコンデンサビット領域内に記憶されているヒューズ素子Hが切断され、対応するコンデンサC
aが回路から切り離されるので、第1及び第2の共振回路それぞれの基準共振周波数が変更される。
【0058】
また、制御回路10は、コンデンサアレイC
2ARRAYに含まれる複数のヒューズ素子Hのうち、オフの状態とすることを示す値がコンデンサビット領域内に記憶されているものについて、切断するための制御信号BC2を生成し供給する。これにより、オフの状態とすることがコンデンサビット領域内に記憶されているヒューズ素子Hが切断され、対応するコンデンサC
aが回路から切り離されるので、第2の共振回路の基準共振周波数が変更される。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態による集積回路6及び電子ペン1によれば、集積回路6内で複数のヒューズ素子Hのオンオフ状態を制御することによって、第1及び第2の共振回路それぞれの基準共振周波数を変えることができる。したがって、レーザーによる配線カットを利用する場合よりも小さい面積で、基準共振周波数の合わせ込みを実現することが可能となる。
【0060】
なお、本実施の形態では、各コンデンサC
aと直列に設けられたスイッチとしてヒューズ素子Hを使用する例を説明したが、他の種類のスイッチを使用することも可能である。一例では、このスイッチとしてアンチヒューズ素子を使用することができる。また、ヒューズ素子やアンチヒューズ素子のように1回しかオンオフ状態を制御できないスイッチではなく、何度も切り替え可能なスイッチを用いることとしてもよい。例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)カンチレバーなどのMEMSスイッチを用いてもよい。MEMSカンチレバーは、電圧をかけることでオンオフを切り替えることが可能である。
【0061】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、電子ペン1内の共振回路の共振周波数そのものではなく、その差分によりペン情報が送信される点、及び、可変容量コンデンサの容量が変更可能である点で第1の実施の形態と相違し、その他の点では第1の実施の形態と同様であるので、同一の構成には同一の符号を付し、以下では第1の実施の形態との相違点に着目して説明する。
【0062】
図7は、本実施の形態による電子ペン1及び集積回路6の回路構成を示す図である。同図に示すように、本実施の形態による電子ペン1は、可変容量コンデンサVC
DPHをさらに有して構成される。可変容量コンデンサVC
DPHは、可変容量コンデンサVCと同様に、ペン先部材3(
図1を参照)に加わる筆圧に応じて容量が変化するよう構成されたコンデンサである。また、集積回路6は、スイッチ13,14と、固定容量コンデンサC
MDと、共振回路に接続される端子DPHC,DPHIとをさらに有して構成される。
【0063】
初めに集積回路6の外側に着目すると、本実施の形態による可変容量コンデンサVCの他端は、端子C1Mではなく、端子DPHCに接続される。また、可変容量コンデンサVC
DPHは、端子DPHC,DPHIの間に接続される。
【0064】
次に集積回路6の内側に着目すると、スイッチ13は、端子C1Mとスイッチ14の共通端子との間に設けられる。また、スイッチ14は、スイッチ13の一端に接続された共通端子と、端子DPHCに接続された第1の選択端子と、固定容量コンデンサC
MDを介して端子DPHIに接続された第2の選択端子とを有して構成される。
【0065】
制御回路10は、位置検出装置からの指示に従い、制御信号DPHEN1によりスイッチ13のオンオフ状態を制御する機能と、位置検出装置からの指示に従い、制御信号DPHEN2によりスイッチ14の選択状態を制御する機能とを有して構成される。
【0066】
本実施の形態による電子ペン1に対応する位置検出装置は、可変容量コンデンサVCを含む共振回路(上述した第1及び第2の共振回路)の共振周波数(以下、「第1の共振周波数」と称する)と、可変容量コンデンサVCを含まない共振回路(第1及び第2の共振回路から可変容量コンデンサVCを取り除いたもの)の共振周波数(以下、「第2の共振周波数」と称する)との差分により、電子ペン1が送信したペン情報を受信するよう構成される。
【0067】
具体的に説明すると、位置検出装置は、まずスイッチ13をオン、スイッチ14の接続を第1の選択端子側とするように、電子ペン1に対して指示を行う。この指示は、例えば図示しないセンサコイルから送信する磁界の送信継続時間を変更することによって行ってもよいし(詳しくは特許文献2を参照)、電子ペン1及び位置検出装置が他の通信手段(例えば、ブルートゥース(登録商標)などの近距離無線通信)に対応している場合には、その通信手段を用いて行ってもよい。この点は、後述する他の指示についても同様である。この指示を行った後で位置検出装置が検出する共振周波数は、筆圧及び操作スイッチ4の状態が反映された第1の共振周波数となる。
【0068】
次に位置検出装置は、スイッチ13をオフとするように、電子ペン1に対して指示を行う。この指示を行った後で位置検出装置が検出する共振周波数は、筆圧が反映されない第2の共振周波数となる。
【0069】
位置検出装置は、こうして検出した第1及び第2の共振周波数の差分を取得し、取得した差分に基づいて、ペン情報を取得する。このようにしてペン情報を取得することにより、出荷時点では規格値に等しい値となっていた第1及び第2の共振回路の基準共振周波数が金属の接近、温度変化、経年変化などによって変動した場合であっても、差分の取得によって変動分が相殺されるので、位置検出装置は正しくペン情報を検出することが可能になる。
【0070】
また、本実施の形態による電子ペン1に対応する位置検出装置は、ユーザ操作に基づいて、電子ペン1の筆圧カーブ(ペン先部材3に加わる筆圧と共振周波数の変化量との関係を示す曲線)を変更するよう構成される。
【0071】
具体的に説明すると、本実施の形態による電子ペン1は、第1及び第2の共振回路から可変容量コンデンサVC
DPH及び固定容量コンデンサC
MDが切り離されている状態に対応する第1の筆圧カーブと、可変容量コンデンサVCに可変容量コンデンサVC
DPH及び固定容量コンデンサC
MDが直列に接続されている状態に対応する第2の筆圧カーブとの二種類の筆圧カーブに対応している。位置検出装置は、これら第1及び第2の筆圧カーブのいずれか一方をユーザ操作に基づいて選択し、第1の筆圧カーブを選択した場合には、スイッチ13をオン、スイッチ14の接続を第1の選択端子側とするよう電子ペン1に指示する一方、第2の筆圧カーブを選択した場合には、スイッチ13をオン、スイッチ14の接続を第2の選択端子側とするよう電子ペン1に指示するよう構成される。電子ペン1は、この指示に従い、スイッチ13,14の各状態を制御する。これにより、ユーザ操作に応じて電子ペン1の筆圧カーブを変更することが可能になり、その結果として、電子ペン1の書き味(描き味)を2段階で変更することが可能になる。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態による集積回路6及び電子ペン1によれば、レーザーによる配線カットを利用する場合よりも小さい面積で基準共振周波数の合わせ込みを実現できる電子ペン1において、合わせ込みの実行後に金属の接近、温度変化、経年変化などによる基準共振周波数の変動があっても、位置検出装置側で正しくペン情報を検出することが可能になる。また、その結果として筆圧の精度が向上するので、位置検出装置は、電子ペン1がタッチ面に接触しているか否かを判定するための筆圧のしきい値(ON荷重)を、より小さな値に設定することが可能になる。
【0073】
また、本実施の形態による集積回路6及び電子ペン1によれば、ユーザ操作に応じて、電子ペン1の書き味(描き味)を2段階で変更することが可能になる。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0075】
例えば、上記各実施の形態では、共振周波数の変位によりペン情報を送信する場合を取り上げたが、本発明は、ペン情報の内容に応じて共振回路への信号の供給をオンオフすることによりデジタル情報としてペン情報を送信する場合にも適用できる。すなわち、この場合においても、共振回路を構成するコンデンサと並列に接続された複数のコンデンサを集積回路内に用意しておき、各コンデンサの容量を個別に変更するか、或いは、各コンデンサそれぞれと直列に設けられた複数のスイッチを集積回路内にさらに用意しておき、複数のスイッチそれぞれのオンオフ状態を個別に制御することによって、共振回路の基準共振周波数を変えることが可能である。