【課題】押出成形を行う際に用いる金型のメンテナンスの必要性を、確実に判定することができる製造設備管理支援装置、製造設備管理支援方法および製造設備管理支援プログラムを提供する。
【解決手段】本実施形態では、制御部が備える製造指示受付部(受付手段)が、押出成形機(製造設備)に製造させる製品の種類と数量とを含む製造指示情報を受け付けて、製造実績受付部(受付手段)が、押出成形機に製造させた製品の種類と数量とを含む製造実績情報を受け付ける。そして、在庫数更新部(在庫数更新手段)が、押出成形機に対して予め設定された、当該押出成形機の使用可能回数又は使用可能時間を示す在庫数から、製造指示情報又は製造実績情報に応じた値を減じることにより、在庫数を更新することによって、押出成形機に設置された金型の管理を実現する。
使用によって製品の製造状態が変動し、かつメンテナンスによって製品の製造状態が改善する一又は複数の製造設備の管理を支援するための、制御部を備えた製造設備管理支援装置であって、
前記制御部は、
選択された製造設備に製造させる製品の種類と数量とを含む製造指示情報、又は選択された製造設備に製造させた製品の種類と数量とを含む製造実績情報を受け付ける受付手段と、
前記製造設備に対して予め設定された、当該製造設備の使用可能回数又は使用可能時間を示す在庫数から、前記製造指示情報又は前記製造実績情報に応じた値を減じることにより、前記在庫数を更新する在庫数更新手段と、
を備える、
ことを特徴とする製造設備管理支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る製造設備管理支援装置、製造設備管理支援方法および製造設備管理支援プログラムの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
[1.概要]
以下に説明する実施形態は、本発明を、押出成形機に使用する金型の状態を管理する製造設備管理支援装置に適用した例である。実施形態について説明する前に、まず、押出成形について、
図1を用いて説明する。
図1(a)は、押出成形機の概略構成を示す断面図である。
図1(b)は、押出成形機をX軸正側から見た正面図である。
【0021】
図1(a)に示す押出成形機10aは、例えばアルミ二ウムなどの金属材料を加圧・圧縮して、金型12aから押し出すことにより、所定の断面形状を有する製品を製造する。
【0022】
被加工物である金属材料は、略円柱状のビレット20に形成された後、数百℃まで加熱される。そして、加熱されたビレット20は、
図1(a)に示すように、周囲を壁状に囲まれたコンテナ14に挿入されて、ラム16によって金型12aの方向(
図1のX軸正方向)に向けて加圧される。このとき、ラム16とビレット20の間には、再利用可能なダミーブロック18が設けられる。なお、金型12aには、加工によって形成する部材の断面形状に対応する穴部13が形成されている。そして、加圧されたビレット20は、穴部13から押し出されて、
図1(a)に示す棒状の製品20aとして成形される。
【0023】
加圧されたビレット20は、金型12aに形成された、
図1(b)に示す穴部13を通過して、押出成形機10aから押し出される。これによって、
図1(b)に示す例では、断面がH型の形状をなす、棒状の製品が製造される。
【0024】
以下、押出成形によってアルミニウムを加工して所定の加工品を製造する押出成形機に用いる金型12aの状態を管理する製造設備管理支援装置30の具体的な構成および動作について説明する。
【0025】
[2.ハードウェア構成の説明]
まず、本実施形態に係る製造設備管理支援装置30のハードウェア構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、製造設備管理支援装置30のハードウェア構成の一例を示すハードウェアブロック図である。
【0026】
製造設備管理支援装置30は、例えば、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータである。なお、製造設備管理支援装置30は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置に限らず、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置であってもよい。
【0027】
製造設備管理支援装置30は、
図2に示すように、制御部32と記憶部36と入出力インターフェース37と通信インターフェース38と、を備えている。これらの各部は、内部バス31を介して、互いに接続されている。
【0028】
制御部32は、CPU(Central Processing Unit)33と、RAM(Random Access Memory)34と、ROM(Read Only Memory)35と、を備えた一般的なコンピュータの構成を有する。CPU33は、ROM35や後述する記憶部36に記憶されたプログラムやデータ、ファイルなどを読み出して、RAM34に展開する。CPU33は、RAM34に展開されたプログラムやデータ、ファイルなどに従って動作して、製造設備管理支援装置30の全体の制御を司る。
【0029】
制御部32は、内部バス31を介して、記憶部36と、入出力インターフェース37と、通信インターフェース38と、それぞれ接続されている。
【0030】
記憶部36は、制御部32が製造設備管理支援装置30の制御を行うために必要なプログラム、データ、テーブル、およびファイルなどを記憶する。記憶部36には、電源を切っても記憶情報を保持可能な、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられる。また、HDDの代わりに、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリを備えてもよい。記憶部36は、制御プログラムPを含む各種プログラムを記憶する。制御プログラムPは、製造設備管理支援装置30の全体の動作を司る。また、記憶部36は、製造指示データ、使用品目予定データ、製造実績データ、使用品目データ、設備マスタ、品目マスタを含む、データDを記憶する。さらに、記憶部36は、各種テーブルや各種ファイルを記憶する。なお、記憶部36が記憶するデータDの詳細については、以下の[4.データ構成の説明]にて説明する。
【0031】
入出力インターフェース37には、出力装置37aおよび入力装置37bが接続されている。出力装置37aには、例えば、モニタやプリンタなどを用いることができる。入力装置37bには、キーボード、マウス、又はタッチパネルなどを用いることができる。
【0032】
通信インターフェース38は、ルータなどの通信装置および専用線などの有線又は無線の通信回線を介して、製造設備管理支援装置30と複数の押出成形機10a、10b、10c、…とを、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)などで構成されたネットワーク39を介して、通信可能に接続する。ここで、複数の押出成形機10a、10b、10c、…は、それぞれ同じ製品を成形する同じ種類の異なる金型12a、12b、12c、…を備えた成形機であることを示す。なお、一般には、異なる製品を成形する異なる種類の金型を備えた複数の成形機が、通信インターフェース38を介して、製造設備管理支援装置30に接続される。
【0033】
なお、以下の説明において、個別の押出成形機10a、10b、10c、…を区別する必要がない場合は、単に押出成形機10と表記する。また、同じ種類の異なる金型12a、12b、12c、…を区別する必要がない場合は、単に金型12と表記する。
【0034】
[3.機能構成の説明]
製造設備管理支援装置30の制御部32は、記憶部36から読み出した制御プログラムPをRAM34に展開して実行することにより、制御部32の内部に、
図3に示す製造指示受付部32aと、製造実績受付部32bと、製造指示書作成部32cと、在庫数更新部32dと、管理データ更新部32eと、異常値表示部32fとを機能部として実現する。
【0035】
制御部32の内部に構成される各機能部の概要を説明する。製造指示受付部32aは、受付手段として作用して、選択された押出成形機10(製造設備)に製造させる製品の種類と数量とを含む製造指示情報の入力を受け付ける。製造実績受付部32bは、受付手段として作用して、選択された押出成形機10(製造設備)に製造させた製品の種類と数量とを含む製造実績情報の入力を受け付ける。製造指示書作成部32cは、作成手段として作用して、押出成形機10に与える指示内容を示す製造指示書を作成する。在庫数更新部32dは、在庫数更新手段として作用して、押出成形機10に対して予め設定された、当該押出成形機10の使用可能回数又は使用可能時間を示す在庫数から、製造指示情報又は製造実績情報に応じた値を減じることにより、在庫数を更新する。管理データ更新部32eは、管理データ更新手段として作用して、製造指示情報又は製造実績情報に基づいて、設備管理データを更新する。異常値表示部32fは、報知手段として作用して、在庫数更新部32dによって更新された在庫数がゼロである場合に、その旨を報知する。なお、各部が実行する処理の詳細については、以下の[7.処理の流れの説明]にて説明する。
【0036】
[4.データ構成の説明]
以下、製造設備管理支援装置30が利用するデータDについて、
図4を用いて説明する、
図4は、製造設備管理支援装置30の動作を司る制御プログラムPと、当該制御プログラムPによって生成・管理されるデータDの相互関係を示す図である。
【0037】
記憶部36は、複数のデータベースから構成されるデータDを記憶している。代表的なデータベースは、
図4に示す製造指示データD1と、使用品目予定データD2と、製造実績データD3と、使用品目データD4と、設備管理データD5である。なお、データDは、
図4に記載しないデータベース、例えば、品目マスタD6(
図5参照)や設備マスタD7(
図6参照)なども含む。品目マスタD6と設備マスタD7については、以下の[5.データ内容の説明]にて説明する。
【0038】
製造指示データD1は、製造する製品の種類と数量とを含む製造指示情報を格納したデータである。製造指示データD1に格納される具体的な情報については、以下の[5.データ内容の説明]にて説明する。
【0039】
使用品目予定データD2は、製品を製造する際に使用予定の金型12(品目)を特定する情報を格納したデータである。使用品目予定データD2に格納される具体的な情報については、以下の[5.データ内容の説明]にて説明する。
【0040】
製造実績データD3は、製品の製造が終了した後で生成されるデータであり、製品の製造実績を特定する情報を格納したデータである。製造実績データD3に格納される具体的な情報については、以下の[5.データ内容の説明]にて説明する。
【0041】
使用品目データD4は、製品の製造が終了した後で生成されるデータであり、製品の製造を行った際に使用した金型を特定する情報を格納したデータである。使用品目データD4に格納される具体的な情報については、以下の[5.データ内容の説明]にて説明する。
【0042】
設備管理データD5は、押出成形機10の使用履歴を蓄積記憶したデータである。設備管理データD5に格納される具体的な情報については、以下の[5.データ内容の説明]にて説明する。
【0043】
制御プログラムPは、製造指示入力プログラムP1と、製造指示書作成プログラムP2と、製造実績入力プログラムP3とを備える。製造指示入力プログラムP1は、押出成形機10aに対する作業指示を受け付ける。製造指示書作成プログラムP2は、押出成形機10aに行わせる作業の具体的な内容を示す製造指示書40(
図7参照)を作成する。製造指示書40の詳細については、以下の[6.製造指示書の説明]にて説明する。製造実績入力プログラムP3は、オペレータによる製造実績入力を受け付ける。なお、製造指示入力プログラムP1と、製造指示書作成プログラムP2と、製造実績入力プログラムP3とは、制御プログラムPの一部であって、制御プログラムPは、その他にも、製造設備管理支援装置30の動作を司る各種プログラムを備える。すなわち、製造指示入力プログラムP1と、製造指示書作成プログラムP2と、製造実績入力プログラムP3とは、制御プログラムPの一部である。また、これらのプログラムは、説明の便宜上、区別して記載したが、必ずしも独立したプログラムである必要はない。
【0044】
以下、各プログラムの概要を説明する。製造設備管理支援装置30は、まず、製造指示入力プログラムP1を実行して、オペレータによる押出成形機10aに対する作業指示を受け付ける。具体的には、オペレータは、製造指示入力プログラムP1の実行によって動作する製造指示受付部32aの作用によって、製品の製造に使用する押出成形機10a(製造設備)を選択するとともに、押出成形機10aに製造させる製品の種類と数量とを含む製造指示情報を入力(以下、手配入力と呼ぶ)する。そして、製造指示入力プログラムP1の実行によって、製造指示データD1と使用品目予定データD2とが生成される。製造指示情報の具体的な入力例については、以下の[7.処理の流れの説明]にて説明する。
【0045】
また、製造設備管理支援装置30は、製造指示入力プログラムP1の実行によって動作する在庫数更新部32dの作用によって、製造設備である押出成形機10に取り付けられた金型12に対して予め設定された、金型12の使用可能回数を示す在庫数から、金型12の稼働予測量を示す、製造指示情報に応じた値を減じることにより、在庫数を更新する。
【0046】
製造設備管理支援装置30は、さらに、製造指示書作成プログラムP2を実行して、製造指示書40を作成する。具体的には、製造指示書作成プログラムP2の実行によって動作する製造指示書作成部32cの作用によって、製造指示データD1と使用品目予定データD2とに基づいて、製造指示書40が作成される。なお、製造指示書40は、製造指示データの一例である。
【0047】
そして、押出成形機10が製品の製造を行った後で、製造設備管理支援装置30は、製造実績入力プログラムP3を実行して、オペレータによる製造実績情報の入力を受け付ける。具体的には、オペレータは、製造実績入力プログラムP3の実行によって動作する管理データ更新部32eの作用によって、押出成形機10の製造実績情報を入力(以下、受入入力と呼ぶ)する。なお、押出成形機10の製造実績情報とは、製造した製品の品目、製造数量、使用した金型12を特定する品目、使用工順などである。そして、製造実績入力プログラムP3の実行によって、製造実績データD3と使用品目データD4とが生成される。製造実績情報の具体的な入力例については、以下の[7.処理の流れの説明]にて説明する。
【0048】
また、製造設備管理支援装置30は、製造実績入力プログラムP3の実行によって動作する在庫数更新部32dの作用によって、製造設備である押出成形機10に取り付けられた金型12に対して予め設定された、金型12の使用可能回数を示す在庫数から、金型12の稼働量を示す製造実績情報に応じた値を減じることにより、在庫数を更新する。
【0049】
[5.データ内容の説明]
次に、
図5、
図6を用いて、データDの具体的な内容について説明する。
図5は、製造設備管理支援装置30が利用するデータDの一例を示す図である。
図6は、設備マスタD7の一例を示す図である。
【0050】
製造指示データD1は、押出成形機10(製造設備)に製造させる製品の種類と数量とを含む製造指示情報を格納したデータである。製造指示情報は、具体的には、製造指示番号と、製造品目と、製造数と、製造使用予定ロット番号と、製造ロット番号とを含む。
【0051】
使用品目予定データD2は、製品を製造する際に使用予定の金型12(品目)を特定する情報を格納したデータである。使用品目予定データD2は、具体的には、製造指示番号と、使用予定ロット番号と、使用予定数と、使用予定品目とを含む。
【0052】
製造実績データD3は、押出成形機10(製造設備)が製造した製品の種類と数量とを含む製造実績情報を格納したデータである。製造実績情報は、具体的には、受入NOと、製造品目と、製造数と、製造指示番号と、製造ロット番号とを含む。
【0053】
使用品目データD4は、製品の製造を行った際に使用した金型を特定する情報を格納したデータである。使用品目データD4は、具体的には、受入NOと、使用ロット番号と、使用数と、使用品目とを含む。
【0054】
設備管理データD5は、金型12の使用履歴を格納したデータである。すなわち、設備管理データD5は、金型12毎に生成されて、押出成形機10の使用履歴を累積記憶する。例えば、
図5の例では、押出成形機10が2回稼働したことを示している。具体的には、設備管理データD5に格納された押出速度〜押断数の範囲の情報は、押出成形機10が製品を製造する毎に累積記憶する使用履歴を示す。すなわち、
図5の設備管理データD5は、使用履歴Z1および使用履歴Z2が記憶された状態を示している。
【0055】
また、設備管理データD5は、金型12の固有情報を含むマスタ情報を格納する。金型12のマスタ情報は、後述する設備マスタD7(
図6参照)に格納された情報と対応している。すなわち、設備管理データD5は、金型12の固有情報である設備コード(使用品目データD4から生成されて、使用ロット番号と使用品目とを含む情報)と、設備名と、設備名カナと、1回当り出来高と、償却金額と、償却単価と、厚と、穴数と、内容積と、金型図番と、金型形式と、押出成形機10で金型12を使用する際に用いるバッカーと、ボルスターと、バッフルと、ダイリングとを特定する情報を含む。
【0056】
さらに、設備管理データD5は、金型12の寿命に関する情報を格納する。具体的には、使用可能回数50と、保守基準稼働量と、限界稼働量と、保守所要時間と、取得価格とを含む。なお、取得価格と、前記した償却金額と、償却単価とは、固定資産である金型12を管理する上で、税法上必要な情報である。
【0057】
特に、使用可能回数50は、設備管理データD5に係る金型12を使用できる残り回数を示す情報である。使用可能回数50は、在庫数更新部32dの作用によって算出されて、金型12の使用状態に応じて更新される。なお、使用可能回数の更新方法については、以下の[7.処理の流れの説明]にて説明する。そして、金型12がメンテナンスされると、当該金型12の使用可能回数50はリセットされるとともに、前述した使用履歴Z1、Z2はクリア(消去)される。
【0058】
品目マスタD6は、金型12毎に生成されて、各金型12の品目コードと、品目名と、製品長とを格納したマスタファイルである。
【0059】
設備マスタD7は、金型12毎に生成されて、
図6に示すように、金型12の固有情報を格納したマスタファイルである。
【0060】
[6.製造指示書の説明]
次に、
図7、
図8を用いて、製造指示書40について説明する。
図7は、製造指示書40の一例を示す図である。
図8は、製造指示書40を作成する際に算出する、製品の製造に必要な諸量の計算例を示す図である。この製造指示書40は、出力装置37a(
図2参照)であるモニタに表示される。また、製造指示書40は、プリンタで印字して出力してもよい。
【0061】
図7に示すように、製造指示書40には、製品の品目名40aと、製品の断面
図40bと、押出成形機10に行わせる作業内容40cとが記載される。作業内容40cの欄には、製品の製造に必要な諸量の計算結果が表示される。これらの諸量は、例えば、
図8に示す手順で、製造指示書作成部32c(
図3参照)が算出する。なお、これらの諸量は、製品を製造するために必要な所定の製造情報の一例である。
【0062】
すなわち、製造指示書作成部32cは、
図8に一例を示す所定の算出式に基づいて、押出比Q1と、押出回数Q2と、押継数Q3と、切断取数Q4と、押出長Q5と、ビレット切断長Q6と、押出本数Q7とを算出する。なお、
図8の各式中に記載した定数は、使用する押出成形機10、金型12、ビレット20等に応じて決定する定数である。
【0063】
押出比Q1は、ビレット20の断面積と穴部13の面積(金型12とビレット20とが当接する側の穴部13の面積)との比率を示す。
【0064】
押出回数Q2は、押出成形された製品のうち、押し出し開始直後に成形された頭部と、押し出し終了直前に成形された尾部とを廃却することと、押し出し操作の繰り返しとともに、コンテナ14と金型12との接触位置の近傍に押糟(デッドメタル)が堆積することと、を考慮した、所要量の製品を成形するために必要な押し出し操作の回数である。
【0065】
押継数Q3は、必要な量の製品を成形するために、コンテナ14にセットするビレット20の総数を示す。すなわち、多量の製品を成形する際には、ビレット20の残量が少なくなった際に、新たなビレット20を挿入して押し出し操作を続ける。
【0066】
切断取数Q4は、1本のビレット20から製造される製品の取数を示す。なお、1回押しの場合は、
図8の(1)式を適用する。また、複数回押しの場合は、
図8の(2)式を適用して、1回押し当たりの製品の取数として算出する。
【0067】
押出長Q5(単位m)は、押出回数を考慮して、穴部13から押し出される製品の長さを示す。
【0068】
ビレット切断長Q6(単位mm)は、押出成形された製品を切断する長さを示す。
【0069】
押出本数Q7は、押出成形によって製造される製品の本数を示す。
【0070】
なお、
図8に示す算出式は一例であって、諸量の算出方法は、これらの算出式に限定されるものではない。また、製造情報として算出する諸量は、前記したものに限定されるものではなく、製造される製品に応じた製造情報が算出される。
【0071】
[7.処理の流れの説明]
次に、
図9〜
図13を用いて、製造設備管理支援装置30が行う一連の処理の流れについて説明する。
図9は、製造設備管理支援装置30が行う一連の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10〜
図13は、製造設備管理支援装置30が処理を行う途中において、出力装置37a(
図2参照)に表示される画面の一例を示す図である。なお、フローチャートの説明を行うに当たって、処理の主体を説明する際に、前述した
図3を参照する。
【0072】
まず、製造設備管理支援装置30のオペレータは、製造指示受付部32aの作用によって、押出成形機10に製造させる製品に係る情報を登録する手配入力を行う(ステップS10)。
【0073】
具体的には、製造設備管理支援装置30のオペレータは、製造指示受付部32aが出力装置37aに表示する、
図10に示す手配入力画面41において、必要な情報を入力する。
図10の例では、製造する製品の品目CD41a(品目コード)と、工順41bと、手配数41c(製造数量)と、手配納期41dなどが入力される。
【0074】
続いて、製造設備管理支援装置30のオペレータは、手配入力画面41の画面最下部に表示される複数のファンクションキーのうち、使用品目を指示する使用品目キー41eを選択する。そして、製造指示受付部32aの作用によって、製品を製造する際に使用する金型12を選択する使用予定品目入力を行う(ステップS12)。
【0075】
具体的には、製造設備管理支援装置30のオペレータは、製造指示受付部32aが出力装置37aに表示する、
図11に示す使用予定品目入力画面42において、必要な情報を入力する。
図11の例では、使用する金型12の使用品目CD42a(使用品目コード)と、使用する金型12を示すロット番号42bと、金型12の使用数42cなどが入力される。
【0076】
より具体的には、使用予定品目入力画面42において、使用する金型12の使用品目CD42aを入力すると、使用予定品目入力画面42の下部に、使用可能な金型12を示す選択ウインドウWaが表示される。オペレータは、選択ウインドウWaに表示された、ロット番号が異なる複数の金型12の中から、当該金型12の在庫数を考慮して、使用する金型12を選択する。金型12を選択すると、選択された金型12を示すロット番号42b(
図11の例では、ロット番号ABC−1)が、所定の欄に入力される。その後、オペレータは、使用予定品目入力画面42の画面最下部に表示される複数のファンクションキーのうち、入力した情報の登録を指示する登録キー42dを選択することによって、使用予定品目入力を完了させる。
【0077】
次に、製造指示書作成部32cは、製品の製造に必要な諸量を算出する(ステップS14)。算出される諸量は、前述した
図8に示した通りである。
【0078】
続いて、在庫数更新部32dは、ステップS14で算出された諸量に基づいて、金型12の在庫数(設備管理データD5の使用可能回数50)を更新する(ステップS16)。
【0079】
具体的には、在庫数更新部32dは、押出成形機10(製造設備)に設置した金型12に製造させる製品の種類と数量とを含む製造指示情報に基づいて、金型12の使用可能回数を示す在庫数(使用可能回数50)を更新する。また、在庫数更新部32dは、押出成形機10(製造設備)に設置した金型12に製造させた製品の種類と数量とを含む製造実績情報に基づいて、金型12の使用可能回数を示す在庫数(使用可能回数50)を更新する。より具体的には、製造設備管理支援装置30は、金型12毎に、当該金型12を用いて製造する製品の量または製造に係る押出成形機10の稼働時間と、金型12の疲労度との関係を、予めテーブル(非図示)として用意しておく。そして、在庫数更新部32dは、当該テーブルを参照することによって、金型12の使用量に対応する疲労度を算出する。さらに、前記テーブルには、金型12の疲労度と減算すべき在庫数との関係も予め登録しておくものとする。在庫数更新部32dは、金型12の疲労度に対応する、減算すべき在庫数をテーブルから読み出す。そして、在庫数更新部32dは、現在の金型12の在庫数(使用可能回数50)から、読み出した在庫数を減じることによって、金型12の在庫数を更新する。
【0080】
なお、金型12の在庫数の更新方法は、金型12の使用可能回数に基づく方法に限定されるものではない。例えば、金型12の使用時間に基づいて、在庫数を更新するようにしてもよい。具体的には、手配入力で入力された情報に基づいて、金型12の使用時間を推定する。そして、金型12の推定使用時間に基づいて、金型12の疲労度を予測して、疲労度に応じた、減じるべき在庫数を算出してもよい。また、受入入力で入力された情報に基づいて、金型12の使用時間を算出する。そして、金型12の使用時間に基づいて、金型12の疲労度を予測して、疲労度に応じた、減じるべき在庫数を算出してもよい。
【0081】
次に、異常値表示部32fは、報知が必要であるかを判定する(ステップS18)。報知が必要であると判定される(ステップS18:Yes)とステップS20に移行する。一方、報知が必要であると判定されない(ステップS18:No)と、ステップS24に移行する。
【0082】
ステップS18においてYesと判定されると、ステップS20において、異常値表示部32fは、出力装置37aにて報知を実行する(ステップS20)。具体的には、例えば、「金型12の使用可能回数を示す在庫数がゼロである旨」を表示する。また、併せて、異常値表示部32fは、処理(製品の製造)を継続するか中止するかの確認を求める情報を、出力装置37aに出力する。
【0083】
続いて、製造指示受付部32aは、処理を中止する旨の指示があるかを判定する(ステップS22)。処理を中止する旨の指示があると判定される(ステップS22:Yes)と、製造設備管理支援装置30は、
図9の一連の処理を終了する。一方、処理を中止する旨の指示があると判定されない(ステップS22:No)と、ステップS24に移行する。
【0084】
ステップS18でNoと判定された場合、又はステップS22でNoと判定された場合、製造指示書作成部32cは、製造指示書40を作成する(ステップS24)。
【0085】
続いて、押出成形機10は、製造指示書40の内容に沿って、製品の製造を行う(ステップS26)。
【0086】
製品の製造が終了すると、製造設備管理支援装置30のオペレータは、製造実績受付部32bの作用によって、押出成形機10に製造させた製品に係る情報を入力する受入入力を行う(ステップS28)。
【0087】
具体的には、製造設備管理支援装置30のオペレータは、製造実績受付部32bが出力装置37aに表示する、
図12に示す受入入力画面43において、必要な情報を入力する。
図12の例では、製造した製品の品目CD43a(品目コード)と、工順43bなどが入力される。
【0088】
続いて、製造設備管理支援装置30のオペレータは、受入入力画面43の画面最下部に表示される複数のファンクションキーのうち、使用品目を指示する使用品目キー43cを選択する。そして、製造実績受付部32bの作用によって、製品を製造する際に使用した金型12を選択する使用品目入力を行う(ステップS30)。
【0089】
具体的には、製造設備管理支援装置30のオペレータは、製造実績受付部32bが出力装置37aに表示する、
図13に示す使用品目入力画面44において、必要な情報を入力する。
図13の例では、使用した金型12の使用品目CD44a(使用品目コード)と、使用した金型12のロット番号44bと、金型12の使用数44cなどが入力される。
【0090】
より具体的には、使用品目入力画面44において、使用した金型12の使用品目CD44aを入力すると、使用品目入力画面44の下部に、選択可能な金型12を示す選択ウインドウWbが表示される。オペレータは、選択ウインドウWbに表示された、ロット番号が異なる複数の金型12の中から、製品の製造に使用した金型12を選択する。ここでは、ロット番号ABC−1の金型12が使用されたものとする。選択ウインドウWbの中から、ロット番号ABC−1の金型12が選択されると、ロット番号44bを示す欄に、ロット番号ABC−1が入力される。そして、オペレータは、製品の製造に使用した金型12の数を、使用数44cを示す欄に入力する。その後、オペレータは、使用品目入力画面44の画面最下部に表示される複数のファンクションキーのうち、入力した情報の登録を指示する登録キー44dを選択することによって、使用品目入力を完了させる。
【0091】
続いて、管理データ更新部32eは、押出成形機10に製造させた製品の種類と数量とを含む製造実績情報に基づいて、設備管理データD5を更新する(ステップS32)。なお、このとき、製造指示情報に基づいてステップS16で更新した金型12の使用可能回数50が、製造実績情報に基づいて再度更新される。その後、製造設備管理支援装置30は、
図9の一連の処理を終了する。
【0092】
なお、
図9のフローチャートにおいて、異常値表示部32fは、製造指示情報に基づいて更新した在庫数に応じて報知を実行するものとしたが、報知を行うタイミングは、これに限定されない。
【0093】
すなわち、異常値表示部32fは、製造実績情報に基づいて更新した在庫数に応じて報知を実行してもよい。具体的には、
図9において、ステップS32の後で報知を行ってもよい。さらに、製造指示情報に基づく報知と、製造実績情報に基づく報知とを併用してもよい。
【0094】
このように、製造指示情報に基づいて在庫数を報知することによって、製品の製造を行う前に、金型12が使用限界に達することを予め予測することができる。したがって、製品の製造を行う前に、予め金型12のメンテナンスを行うことができる。また、製造実績情報に基づいて在庫数を報知することによって、次の製品の製造時に、金型12が使用限界に達することを予め予測することができる。したがって、次の製品の製造を行う前に、予め金型12のメンテナンスを行うことができる。
【0095】
また、異常値表示部32fは、ステップS14において、製造指示書作成部32cが、製品の製造に必要な諸量を算出した際に、算出された諸量がマイナスの値または所定値を超える値である場合、すなわち異常値が算出された場合に、報知を実行してもよい。これによって、異常値の発生を即時にモニタすることができる。
【0096】
本実施形態によれば、製造設備管理支援装置30は、制御部32が備える製造指示受付部32a(受付手段)が、押出成形機10(製造設備)に製造させる製品の種類と数量とを含む製造指示情報を受け付けて、製造実績受付部32b(受付手段)が、押出成形機10に製造させた製品の種類と数量とを含む製造実績情報を受け付ける。そして、在庫数更新部32d(在庫数更新手段)が、押出成形機10に対して予め設定された、当該押出成形機10の使用可能回数又は使用可能時間を示す在庫数から、製造指示情報又は製造実績情報に応じた値を減じることにより、在庫数を更新する。したがって、押出成形を行う際に用いる、押出成形機10に設置した金型12のメンテナンスの必要性を、確実かつ容易に判定することができる。
【0097】
また、本実施形態によれば、在庫数更新部32d(在庫数更新手段)は、製造指示情報又は前記製造実績情報と、製品を製造するために必要な所定の製造情報とに基づいて、製造指示情報又は前記製造実績情報に応じた値を算出する。したがって、製造指示情報又は前記製造実績情報に基づいて、金型12の稼働量に応じた値を確実かつ容易に算出することができる。
【0098】
また、本実施形態によれば、在庫数更新部32d(在庫数更新手段)によって更新された在庫数がゼロである場合に、異常値表示部32f(報知手段)が、その旨を報知する。したがって、金型12の使用を再検討することができるとともに、金型12をメンテナンスするタイミングを確実かつ容易に把握することができる。
【0099】
また、本実施形態によれば、異常値表示部32f(報知手段)は、製造指示情報又は前記製造実績情報に応じた値がマイナスの値又は所定値を超える値である場合に、その旨を報知する。したがって、異常値の発生を即時にモニタすることができ、これによって、製品の製造に影響が出る前に、金型12の使用を再検討することができる。
【0100】
また、本実施形態によれば、製造指示書作成部32c(作成手段)は、製造指示情報と、製造設備の現在の状態を示す設備管理データD5と、に基づいて、押出成形機10(製造設備)に与える指示内容を示す製造指示書40(製造指示データ)を作成する。したがって、押出成形機10に対して、的確な製造指示を与えることができる。
【0101】
また、本実施形態によれば、管理データ更新部32e(管理データ更新手段)は、製造実績情報に基づいて、設備管理データD5を更新する。したがって、製造実績を確実に反映することができる。
【0102】
また、本実施形態によれば、在庫数更新部32d(在庫数更新手段)は、製造設備のメンテナンス後に、前記在庫数を更新する。したがって、製品を製造するための手配入力を行う際には、常に最新の在庫数を把握することができる。
【0103】
[8.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0104】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を、公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0105】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0106】
また、製造設備管理支援装置30に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0107】
例えば、製造設備管理支援装置30が備える処理機能、特に制御部32にて行われる各処理機能については、CPU33にて解釈実行される制御プログラムPにて実現する他に、各処理機能の全部又は任意の一部を、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。
【0108】
また、制御プログラムPは、製造設備管理支援装置30に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部又は一部をダウンロードすることも可能である。
【0109】
また、本実施形態で説明した処理を実行するための制御プログラムPを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム商品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magneto−Optical disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、および、Blu−ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。したがって、本明細書で説明したような処理又は処理方法を実行するためのプログラムを格納した記録媒体もまた本発明を構成することとなる。
【0110】
また、制御プログラムPは、任意の言語又は記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコード又はバイナリコード等の形式を問わない。なお、制御プログラムPは必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0111】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部又は一部を、各種の付加等に応じて又は機能負荷に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。