特開2019-219876(P2019-219876A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱日立パワーシステムズ株式会社の特許一覧
特開2019-219876信号処理装置および信号処理モジュール
<>
  • 特開2019219876-信号処理装置および信号処理モジュール 図000003
  • 特開2019219876-信号処理装置および信号処理モジュール 図000004
  • 特開2019219876-信号処理装置および信号処理モジュール 図000005
  • 特開2019219876-信号処理装置および信号処理モジュール 図000006
  • 特開2019219876-信号処理装置および信号処理モジュール 図000007
  • 特開2019219876-信号処理装置および信号処理モジュール 図000008
  • 特開2019219876-信号処理装置および信号処理モジュール 図000009
  • 特開2019219876-信号処理装置および信号処理モジュール 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-219876(P2019-219876A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】信号処理装置および信号処理モジュール
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/05 20060101AFI20191129BHJP
   G08C 15/00 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   G05B19/05 L
   G08C15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-116385(P2018-116385)
(22)【出願日】2018年6月19日
(71)【出願人】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】白江 光行
【テーマコード(参考)】
2F073
5H220
【Fターム(参考)】
2F073AA02
2F073AA03
2F073AA04
2F073AA12
2F073AA25
2F073AA40
2F073AB01
2F073AB04
2F073BB04
2F073BC01
2F073CC01
2F073CC07
2F073CC12
2F073CD01
2F073CD28
2F073DD02
2F073DE07
2F073DE13
2F073EE12
2F073EF08
2F073FF12
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG07
5H220AA01
5H220BB01
5H220BB09
5H220CC03
5H220CC07
5H220CX05
5H220FF09
5H220JJ12
5H220JJ17
(57)【要約】
【課題】信頼性の向上およびコストの低減がなされたハイブリッド通信用の信号処理装置を提供する。
【解決手段】信号処理装置は、アナログ信号にデジタル信号が重畳されたハイブリッド信号を、通信相手機器が接続された信号線に出力する信号処理装置であって、アナログ信号のアナログ信号値の所定期間における時間推移に対応する直流信号推移データを生成する直流信号推移データ生成部と、デジタル信号のデジタル信号値の所定期間における時間推移に対応する交流信号波形データを生成する交流波形データ生成部と、直流信号推移データと交流信号波形データとを合成したハイブリッド波形データを生成するハイブリッド波形データ生成部と、ハイブリッド波形データに基づいて、信号線の電流を制御する信号制御部と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号にデジタル信号が重畳されたハイブリッド信号を、通信相手機器が接続された信号線に出力する信号処理装置であって、
前記アナログ信号のアナログ信号値の所定期間における時間推移に対応する直流信号推移データを生成する直流信号推移データ生成部と、
前記デジタル信号のデジタル信号値の前記所定期間における時間推移に対応する交流信号波形データを生成する交流波形データ生成部と、
前記直流信号推移データと前記交流信号波形データとを合成したハイブリッド波形データを生成するハイブリッド波形データ生成部と、
前記ハイブリッド波形データに基づいて、前記信号線の電流を制御する信号制御部と、を備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記交流波形データ生成部は、前記デジタル信号値の時間推移を形作るビット列の各々のビット値を、前記ビット値の種類に応じて定められた周波数の波形データに置き換えることにより、前記交流信号波形データを生成することを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記ハイブリッド波形データは電圧値の時間推移を示し、
前記信号制御部は、
トランスを介して前記信号線に接続されており、
前記ハイブリッド波形データに基づいて、前記トランスの入力側の入力電圧を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記信号制御部は、
前記トランスの前記入力電圧および前記入力側の入力電流の各々の計測値に基づいて、前記トランスの出力側に接続された前記信号線の出力電流推定値を算出する出力電流推定部と、
前記出力電流推定値に基づいて、前記ハイブリッド波形データを補正する補正電圧データを算出する補正電圧データ算出部と、をさらに有し、
前記ハイブリッド波形データおよび前記補正電圧データに基づいて、前記トランスの前記入力電圧を制御することを特徴とする請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記信号制御部は、
前記トランスの前記入力側の入力電流の計測値に基づいて、前記通信相手機器に対して一定の電圧を供給するように前記ハイブリッド波形データを補正するための定電圧補正データを算出する定電圧補正データ算出部を、さらに有し、
前記ハイブリッド波形データおよび前記定電圧補正データに基づいて、前記トランスの前記入力電圧を制御することを特徴とする請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記ハイブリッド信号は、HART信号であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項7】
アナログ信号にデジタル信号が重畳されたハイブリッド信号を、通信相手機器が接続された信号線に出力する信号処理モジュールであって、
集積回路上に形成された、請求項1〜6のいずれか1項に記載の信号処理装置を備えることを特徴とする信号処理モジュール。
【請求項8】
前記信号処理モジュールはAOモジュールであることを特徴とする請求項7に記載の信号処理モジュール。
【請求項9】
前記信号処理モジュールはAIモジュールであることを特徴とする請求項7に記載の信号処理モジュール。
【請求項10】
前記信号処理モジュールは、プラントを制御する制御装置に組み込まれていることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の信号処理モジュール。
【請求項11】
前記集積回路は、PLDであることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の信号処理モジュール。
【請求項12】
アナログ信号にデジタル信号が重畳されたハイブリッド信号を、通信相手機器が接続された信号線に出力する信号処理装置であって、
前記アナログ信号のアナログ信号値の所定期間における時間推移に対応する直流信号推移データを生成する直流信号推移データ生成部と、
前記デジタル信号のデジタル信号値の前記所定期間における時間推移に対応する交流信号波形データを生成する交流波形データ生成部と、
前記直流信号推移データと前記交流信号波形データとを合成したハイブリッド波形データを生成するハイブリッド波形データ生成部と、
前記ハイブリッド波形データに基づいて、前記信号線の電圧を制御する信号制御部と、を備えることを特徴とする信号処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、HART通信などのハイブリッド通信(スマート通信)に対応した機器の実現方式に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、HART(Highway Addressable Remote Transducer)通信方式など、4mA〜20mAのアナログ信号にデジタル信号を重畳して、複数の信号を同時に伝送するハイブリッド通信(スマート通信)方式が知られている(例えば特許文献1〜4)。ハイブリッド通信では、例えば送信機器から受信機器に伝送される直流のアナログ信号を、0、1に対応する周波数でそれぞれ変調することによってデジタル信号を重畳する(特許文献4参照)。このため、ハイブリッド通信に機器を対応させるためには、その為の機能を機器に追加する必要がある。従来は、図8に示すように、アナログ信号(電流)を電気的に生成する既存の入出力モジュール(図8のアナログ電流出力生成モジュール)とは別に、重畳するデジタル信号を電気的に生成するモジュール(図8のデジタル信号波形生成モジュール)を設け、さらにマルチプレクサ(図8の入力信号重畳ハードウェア)を設けてアナログ信号とデジタル信号を電気的に重畳し、その合成波を出力する(図8参照)。若しくは、デジタル信号をアナログ信号に変換するDAコンバータの出力に従ってアナログ信号をモデムで変調して、4mA〜20mAのアナログ信号に変調波形を合成する。
【0003】
このようなハイブリッド通信は、例えばプラントのプロセス計装において、ハイブリッド通信対応機器間で行われる。プラントには、差圧変換器や温度変換器などの発信器(計測器)や、調節弁といった操作端などとなるフィールド機器が多数設置されている。また、各フィールド機器と制御装置とが個別の信号線でそれぞれ接続されることにより、各計測器によって計測された温度、流量、圧力などの計測値や、操作端への弁開度などの指令値を通信するためのアナログ信号が各信号線を伝送される。そして、フィールド装置と制御装置との通信にハイブリッド通信を適用することにより、信号線に伝送するアナログ信号(測定信号、制御信号)に、例えば保守情報などの機器情報となるデジタル信号を重畳させることで、計測値等と機器情報等とを同時に通信することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−149256号公報
【特許文献2】特開2011−50102号公報
【特許文献3】特開2014−178754号公報
【特許文献4】特開2012−199779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のような、デジタル信号の生成及びアナログ信号への重畳を行うためのハードウェアを、アナログ信号を生成するためのハードウェアとは別に設ける場合には、その為の部品(ハードウェア)の増加による機器の信頼性の低下及び、コスト増が問題となる。例えば、これらのハードウェアを共通のデバイスに実装するとしても、アナログ電流の入出力を行う部分と、デジタル信号を生成、出力する部分と、これらの信号を重畳する部分とは、それぞれ電気的に接続された個別のハードウェアであるため、上記の課題の解決策とはならない。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、信頼性の向上およびコストの低減がなされたハイブリッド通信用の信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る信号処理装置は、
アナログ信号にデジタル信号が重畳されたハイブリッド信号を、通信相手機器が接続された信号線に出力する信号処理装置であって、
前記アナログ信号のアナログ信号値の所定期間における時間推移に対応する直流信号推移データを生成する直流信号推移データ生成部と、
前記デジタル信号のデジタル信号値の前記所定期間における時間推移に対応する交流信号波形データを生成する交流波形データ生成部と、
前記直流信号推移データと前記交流信号波形データとを合成したハイブリッド波形データを生成するハイブリッド波形データ生成部と、
前記ハイブリッド波形データに基づいて、前記信号線の電流を制御する信号制御部と、を備える。
【0008】
上記(1)の構成によれば、所望のハイブリッド信号を信号線に伝送させるにあたって、信号線に伝送すべきハイブリッド信号の信号値の時間推移を示すハイブリッド波形データを生成し、ハイブリッド波形データに基づいて信号線の電流を制御する。ハイブリッド波形データは、アナログ信号値の時間推移を示すデータ(直流信号推移データ)と、デジタル信号値の時間推移を示すデータ(交流信号波形データ)とを、データ処理によってソフトウェア的に合成(演算)して生成したデータであり、ハイブリッド信号の実際の伝送時に信号線を流れるであろうハイブリッド信号の電流値などの信号値の時間推移を示すものである。
【0009】
このように、物理的な信号同士の重畳によりハイブリッド信号を生成するのではなく、情報処理によってハイブリッド波形データの数値データを生成し、ハイブリッド波形データに従って信号線の電流を制御することにより、所望のハイブリッド信号を適切に信号線に出力することができる。よって、これまでHART通信などのハイブリッド通信において従来必須とされてきた信号重畳用のハードウェアを不要とすることができるなど、ハイブリッド通信対応の機器を単一のデバイスで安価に実現可能とすることができると共に、比較的故障が多いとされるハードウェア回路を用いないため、信号処理装置を備える制御装置などの機器の信頼性を飛躍的に向上させることができる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記交流波形データ生成部は、前記デジタル信号値の時間推移を形作るビット列の各々のビット値を、前記ビット値の種類に応じて定められた周波数の波形データに置き換えることにより、前記交流信号波形データを生成する。
上記(2)の構成によれば、ビット列を構成する各ビットのビット値を、ビット値の種類(0または1)に対応する波形データで置換することにより、交流信号波形データを生成する。これによって、交流信号波形データを生成することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(2)の構成において、
前記ハイブリッド波形データは電圧値の時間推移を示し、
前記信号制御部は、
トランスを介して前記信号線に接続されており、
前記ハイブリッド波形データに基づいて、前記トランスの入力側の入力電圧を制御する。
【0012】
上記(3)の構成によれば、ハイブリッド波形データに従って、トランスに入力する入力電圧を例えばPWM制御により制御する。信号線を流れる電流は、接続されている負荷(抵抗)の抵抗値の影響を受けるが、電圧を制御することによって、所望の電流を信号線に流すことができる。よって、ハイブリッド信号を信号線に適切に出力することができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記信号制御部は、
前記トランスの前記入力電圧および前記入力側の入力電流の各々の計測値に基づいて、前記トランスの出力側に接続された前記信号線の出力電流推定値を算出する出力電流推定部と、
前記出力電流推定値に基づいて、前記ハイブリッド波形データを補正する補正電圧データを算出する補正電圧データ算出部と、をさらに有し、
前記ハイブリッド波形データおよび前記補正電圧データに基づいて、前記トランスの前記入力電圧を制御する。
【0014】
上記(4)の構成によれば、トランスの入力側(1次側)の入力電流および入力電圧の計測値に基づいて、トランスで絶縁された信号線を流れる電流値を推定する。また、この推定値である出力電流推定値をフィードバックすることにより、フィードバック前(補正前)のハイブリッド波形データに応じた電流値が信号線を流れるように、トランスの入力電圧を制御する。これによって、ハイブリッド波形データに応じた電流を信号線に流すことができ、ハイブリッド信号を信号線に適切に出力することができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記信号制御部は、
前記トランスの前記入力側の入力電流の計測値に基づいて、前記通信相手機器に対して一定の電圧を供給するように前記ハイブリッド波形データを補正するための定電圧補正データを算出する定電圧補正データ算出部を、さらに有し、
前記ハイブリッド波形データおよび前記定電圧補正データに基づいて、前記トランスの前記入力電圧を制御する。
【0016】
上記(5)の構成によれば、信号処理装置はディストリビュータ(電源供給装置)の機能を有しており、トランスの入力側(1次側)の入力電流をフィードバックすることにより、通信相手機器に対して信号線を介して電源を供給する。これによって、通信相手機器に対して定電圧供給を行うことができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(5)の構成において、
前記ハイブリッド信号は、HART信号である。
上記(6)の構成によれば、単一のデバイスでハードウェアによる重畳なしにHART通信を行うことができる。
【0018】
(7)本発明の少なくとも一実施形態に係る信号処理モジュールは、
アナログ信号にデジタル信号が重畳されたハイブリッド信号を、通信相手機器が接続された信号線に出力する信号処理モジュールであって、
集積回路上に形成された、上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の信号処理装置を備える。
上記(7)の構成によれば、上記(1)〜(6)と同様の効果を奏する。また、信号処理装置がモジュール化されることによって、プラントの制御装置などに容易に組み込むことができる。
【0019】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、
前記信号処理モジュールはAOモジュールである。
上記(8)の構成によれば、上記(7)と同様の効果を奏する。
【0020】
(9)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、
前記信号処理モジュールはAIモジュールである。
上記(9)の構成によれば、上記(7)と同様の効果を奏する。
【0021】
(10)幾つかの実施形態では、上記(7)〜(9)の構成において、
前記信号処理モジュールは、プラントを制御する制御装置に組み込まれている。
上記(10)の構成によれば、上記(7)と同様の効果を奏する。
【0022】
(11)幾つかの実施形態では、上記(7)〜(10)の構成において、
前記集積回路は、PLDである。
上記(11)の構成によれば、上記(7)と同様の効果を奏する。
【0023】
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係る信号処理装置は、
アナログ信号にデジタル信号が重畳されたハイブリッド信号を、通信相手機器が接続された信号線に出力する信号処理装置であって、
前記アナログ信号のアナログ信号値の所定期間における時間推移に対応する直流信号推移データを生成する直流信号推移データ生成部と、
前記デジタル信号のデジタル信号値の前記所定期間における時間推移に対応する交流信号波形データを生成する交流波形データ生成部と、
前記直流信号推移データと前記交流信号波形データとを合成したハイブリッド波形データを生成するハイブリッド波形データ生成部と、
前記ハイブリッド波形データに基づいて、前記信号線の電圧を制御する信号制御部と、を備える。
【0024】
上記(12)の構成によれば、ハイブリッド波形データに基づいて、前記信号線の電圧を制御する。これによって、上記(1)と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、信頼性の向上およびコストの低減がなされたハイブリッド通信用の信号処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る信号処理装置の構成を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る信号処理装置を備えるAOモジュールの構成を概略的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る信号処理装置を備えるAIモジュールの構成を概略的に示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る信号処理装置を備える制御装置(DCS)の構成を概略的に示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る直流信号推移データを説明するための図である。
図6】本発明の一実施形態に係る交流信号波形データを説明するための図である。
図7】本発明の一実施形態に係るハイブリッド波形データを説明するための図である。
図8】従来のハイブリッド通信対応の機器構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る信号処理装置1の構成を概略的に示す図である。図2は、本発明の一実施形態に係る信号処理装置1を備えるAOモジュールの構成を概略的に示す図である。図3は、本発明の一実施形態に係る信号処理装置1を備えるAIモジュールの構成を概略的に示す図である。図4は、本発明の一実施形態に係る信号処理装置1を備える制御装置8(DCS)の構成を概略的に示す図である。図5は、本発明の一実施形態に係る直流信号推移データDaを説明するための図である。図6は、本発明の一実施形態に係る交流信号波形データDdを説明するための図である。また、図7は、本発明の一実施形態に係るハイブリッド波形データDを説明するための図である。
【0029】
図1図4に示すように、信号処理装置1は、アナログ信号(図5参照)にデジタル信号(図6参照)が重畳されたハイブリッド信号H(図7参照)を、通信相手機器9が接続された信号線91に出力する装置である。ハイブリッド信号Hは、直流(DC)を用いて伝送されるアナログ信号を、デジタル値の0値および1値に対してそれぞれ定められた特定の周波数で周波数変調した信号であり、信号線91を伝送される。よって、通信相手機器9は、信号線91を伝送されたハイブリッド信号Hを受信し、ハイブリッド信号Hの周波数成分を除去することにより信号線91を伝送されたアナログ信号を受信し、他方、ハイブリッド信号Hの周波数成分から信号線91を伝送されたデジタル信号を受信する。
【0030】
例えば、プラントには、温度、流量、圧力などを計測する各種の計測器(センサ)や、調節弁(バルブ)といった操作端などであるフィールド機器が多数設置される。また、各フィールド機器は、分散制御システム(DCS:Distributed Control System)などのプラントを制御する制御装置8に対して、個別の信号線91で接続される。そして、上述したアナログ信号は、計測器から制御装置8に送信される計測値や、制御装置8から操作端に送信される指令値(バルブに対して送信される弁開度指令値など)の情報(以下、アナログ主情報Ta)の通信に用いられる。より具体的には、例えば4mAの電流が0%、20mAの電流が100%というように、アナログ信号の4mA〜20mAの電流値にアナログ主情報Taを対応付け(マッピングし)、アナログ主情報Taをアナログ信号に載せて通信する。
【0031】
他方、デジタル信号は、計測値を計測した計測器を識別するための番号など、デジタル信号の送信元機器に関する機器情報やプロセス値などの情報(以下、デジタル付加情報Td)の通信に用いられる。具体的には、デジタル付加情報Tdを示すビット列Bを構成する各ビットのビット値を、ビット値の種類(0または1)に応じて予め定められた周波数に対応付けることで、デジタル付加情報Tdをデジタル信号に載せて通信する。
【0032】
図1図4に示す実施形態では、信号処理装置1は、ハイブリッド通信の一種であるHART通信を行うように構成されている。HART通信では、デジタル値の0を2200Hz、1値を1200Hzとして、4mA〜20mAの直流(DC)のアナログ信号を変調したHART信号が信号線91に伝送される。
【0033】
以下、信号処理装置1と通信相手機器9とがHART通信を行う場合を例に本発明を説明する。
図1図4に示すように、信号処理装置1は、直流信号推移データ生成部2と、交流波形データ生成部3と、ハイブリッド波形データ生成部4と、信号制御部5と、備える。これらの信号処理装置1が備える機能部について、それぞれ説明する。
【0034】
なお、上記の信号処理装置1は、制御装置8またはフィールド機器(通信相手機器9)の少なくとも一方が備える。また、信号処理装置1は、例えばFPGA(Field−Programmable Gate Array)といったPLD(Programmable Logic Device)など、設計者が任意の論理回路を構成可能な集積回路を用いて実現しても良い。例えば、FPGA上に図示しないCPU(プロセッサ)や、ROMやRAMといったメモリを形成し、メモリにロードされたプログラムの命令に従ってCPUが動作(データの演算など)することで、信号処理装置1が備える上記の各機能部を実現しても良い。
【0035】
直流信号推移データ生成部2は、上述したアナログ信号の信号値(以下、アナログ信号値Na)の所定期間における時間推移に対応する直流信号推移データDaを生成する。上記の所定期間は任意の期間であり、アナログ主情報Ta(計測値や指令値など)あるいはデジタル付加情報Td(機器情報など)の全体を通信するのに必要な期間であっても良いし、アナログ主情報Taあるいはデジタル付加情報Tdの一部を通信するのに必要な時間であっても良い。所定期間が後者の場合には、情報の全体の通信が完了するまで、直流信号推移データDaを生成および後述する処理を繰り返すことになる。
【0036】
また、直流信号推移データDaは、アナログ主情報Taが変換されたアナログ信号値Naの時間軸に沿った変化(時間推移)を示すデータである。より具体的には、アナログ信号の電流値の時間軸に沿った変化(時間推移)、あるいは、そのアナログ信号の電流値の時間推移を信号線91に伝送するために必要となる電圧値の時間推移を示すデータである。直流信号推移データDaが電圧値の時間推移を示すデータである場合には、例えば、アナログ信号の電流値の時間推移を、信号線91の負荷を考慮するなどしながら、電圧値の時間推移に変換するなどする。
【0037】
換言すれば、直流信号推移データDaは、時刻情報と、アナログ信号の電流値あるいはアナログ信号の電流値に対応する電圧値であるアナログ信号値Naとが対応付けられた時間別データの所定期間分の集合である。よって、直流信号推移データDaを、横軸を時間軸、縦軸をアナログ信号値Naとしたグラフにプロットすると、図5に示すような、アナログ信号値Naの時間推移を示すグラフが得られる。
【0038】
つまり、直流信号推移データ生成部2は、通信相手機器9に対して上記の所定期間にアナログ主情報Taを通信した際に、信号線91を伝送されると想定されるアナログ信号値Naの時間推移(直流信号推移データDa)を数値データとして生成する。
【0039】
図1図4に示す実施形態では、直流信号推移データ生成部2には、アナログ主情報Taが入力されるように構成されている。ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、4mA〜20mAのアナログ信号そのものが入力されるように構成されても良い。この場合には、直流信号推移データ生成部2は、複数の時刻において、入力されたアナログ信号の電流値およびその時刻を複数の時刻で記憶することにより、直流信号推移データDaを生成する。
【0040】
交流波形データ生成部3は、上述したデジタル信号の信号値(以下、デジタル信号値Nd)の所定期間(同上)における時間推移に対応する交流信号波形データDdを生成する。交流信号波形データDdは、デジタル付加情報Tdを構成する少なくとも一部のビット列の各ビット値を、そのビット値に対応した所定の振幅および周期を有する周波数で変換した際のデジタル信号値Ndの時間推移を示すデータである。より具体的には、デジタル信号の電流値の時間推移、あるいは、そのデジタル信号の電流値の時間推移を信号線91に伝送するために必要となる電圧値の時間推移を示すデータである。交流信号波形データDdが電圧値の時間推移を示すデータである場合には、例えば、デジタル信号の電流値の時間推移を、信号線91の負荷を考慮するなどしながら、電圧値の時間推移に変換するなどする。
【0041】
換言すれば、交流信号波形データDdは、時刻情報と、デジタル信号の電流値あるいはアデジタル信号の電流値に対応する電圧値であるデジタル信号値Ndとが対応付けられた時間別データの所定期間分の集合である。よって、交流信号波形データDdを、横軸を時間軸、縦軸をデジタル信号値Ndとしたグラフにプロットすると、図6に示すような、デジタル信号値Ndの時間推移を示すグラフが得られる。
【0042】
より詳細には、デジタル信号は、ビット値(デジタル値)に応じた周波数波形の信号であるため、デジタル信号値Ndの時間推移は波状に変動する。交流波形データ生成部3は、このような波状に変動するデジタル信号値Ndの時間推移を形作るビット列Bの各々のビット値を、ビット値の種類に応じて定められた周波数の波形データDwに置き換えることで、交流信号波形データDdを生成する。HART通信では、ビット値の0に対応する周波数は2200Hzであり、ビット値の1に対応する周波数は1200Hzである。よって、上記の波形データDwは、これらの各周波数を形作る時間別データの集合であり、デジタル付加情報Tdの少なくとも一部を構成するビット列の各ビットを、対応する波形データDwで置き換えることで、交流信号波形データDdが生成できる(図6参照)。
【0043】
つまり、交流波形データ生成部3は、通信相手機器9に対して上記の所定期間に送信するビット列Bについて、そのビット列Bをデジタル信号に変換した場合に信号線91を伝送されると想定されるデジタル信号値Ndの時間推移(交流信号波形データDd)を数値データとして生成する。
【0044】
図1図4に示す実施形態では、交流波形データ生成部3には、上述したビット列Bが入力されるように構成されている。また、交流波形データ生成部3は、ビット値の種類毎の波形データDwをROMなどの不揮発性メモリに記憶しておき、入力されたビット列Bを各ビットのビット値に応じた波形データDwに置換することにより、交流信号波形データDdを生成するようになっている。
【0045】
ハイブリッド波形データ生成部4は、直流信号推移データDaと交流信号波形データDdとを演算(四則演算)により合成したハイブリッド波形データDを生成する。具体的には、ハイブリッド波形データDは、直流信号推移データDaを構成する各データと、交流信号波形データDdを構成する各データとを時間軸を合わせて演算(加算など)することにより得られる波形データとなる。換言すれば、ハイブリッド波形データDも、時刻情報と、アナログ信号値Naおよびデジタル信号値Ndの演算結果(ハイブリッド信号値N)とが対応付けられた時間別データの所定期間分の集合となる。よって、ハイブリッド信号値Nを、横軸を時間軸、縦軸をハイブリッド信号値Nとしたグラフにプロットすると、例えば図7に示すような、ハイブリッド信号値Nの時間推移を示すグラフが得られる。
【0046】
つまり、ハイブリッド波形データDは、所望のアナログ主情報Taおよびデジタル付加情報Tdを通信するためのハイブリッド信号Hが信号線91を伝送された場合に信号線91を実際に流れることになる信号値(電流値)の時間推移が、信号線91にハイブリッド信号Hが流れる前に、情報処理により作成したデータに相当する。
【0047】
信号制御部5は、ハイブリッド波形データDに基づいて、信号線91の電流を制御する。後述するように、ハイブリッド波形データDに基づいて電圧を決定し、電圧を制御することにより、信号線91の電流を制御しても良い。信号制御部5は、信号線91の電流値の時間推移がハイブリッド波形データDで示される信号値の時間推移に対応するように、信号線91に加える電圧の制御を通して、信号線91に流す電流を制御する。より具体的には、ハイブリッド波形データDが電流値の時間推移を示す場合には、その電流値が信号線91を流れるように電流または電圧を制御し、ハイブリッド波形データDが電圧値の時間推移を示す場合には、ハイブリッド波形データDで示される電圧値に従って、電圧を制御する。これによって、ハイブリッド波形データDに対応した電流を信号線91に流すことができる。
【0048】
上記の構成によれば、所望のハイブリッド信号Hを信号線91に伝送させるにあたって、信号線91に伝送すべきハイブリッド信号Hの信号値の時間推移を示すハイブリッド波形データDを生成し、ハイブリッド波形データDに基づいて信号線91の電流を制御する。ハイブリッド波形データDは、アナログ信号値Naの時間推移を示すデータ(直流信号推移データDa)と、デジタル信号値Ndの時間推移を示すデータ(交流信号波形データDd)とを、データ処理によってソフトウェア的に合成(演算)して生成したデータであり、ハイブリッド信号Hの実際の伝送時に信号線を流れるであろうハイブリッド信号の電流値などの信号値の時間推移を示すものである。
【0049】
このように、物理的な信号同士の重畳によりハイブリッド信号を生成するのではなく、情報処理によってハイブリッド波形データの数値データを生成し、ハイブリッド波形データに従って信号線の電流を制御することにより、所望のハイブリッド信号を適切に信号線に出力することができる。よって、これまでHART通信において従来必須とされてきた信号重畳用のハードウェアを不要とすることができるなど、ハイブリッド通信対応の機器を単一のデバイスで安価に実現可能とすることができると共に、比較的故障が多いとされるハードウェア回路を用いないため、信号処理装置を備える制御装置8などの機器の信頼性を飛躍的に向上させることができる。
【0050】
次に、図2図4を用いて、信号処理装置1をさらに詳細に説明する。
図2図4に示す実施形態では、信号処理装置1は、制御装置8などを構成するためのモジュール(信号処理モジュール)としてモジュール化されている。より具体的には、図2に示す実施形態が信号処理装置1をAO(Analog Output)モジュールとしてモジュール化されている。図3に示す実施形態が信号処理装置1をAI(Analog Input)モジュールとしてモジュール化されている。また、信号処理装置1がディストリビュータ(電源供給装置)の役割を担っており、通信相手機器9に対して信号線91により定電圧を供給するようになっている。また、図4に示す実施形態が信号処理装置1を備える入出力モジュール(IOM)が、制御装置8に組み込まれている。
【0051】
幾つかの実施形態では、ハイブリッド波形データDは電圧値の時間推移を示すデータである。また、図2図4に示すように、信号制御部5は、トランス6(変圧器)を介して信号線91に接続されている。そして、信号制御部5は、ハイブリッド波形データDに基づいて、トランス6の入力側の入力電圧Va(1次側電圧)を制御するように構成される。図2図4に示すように、信号処理装置1と通信相手機器9とがトランス6によって分離されることにより絶縁されている。そして、信号制御部5は、トランス6の入力側(1次側)の入力電圧Vaをハイブリッド波形データDで示される電圧値に設定することにより、トランス6と通信相手機器9とを接続する信号線91に、伝送すべきハイブリッド信号Hを伝送するように構成される。
【0052】
図2図4に示す実施形態では、直流信号推移データ生成部2は、アナログ主情報Taを生成する他のモジュールなどから入力されるアナログ主情報Taに基づいて、信号線91に流れる電流の直流成分を、アナログ主情報Taに対応(変換)した電流値とするのに必要な、トランス6の入力側の入力電圧Vaの時間推移を示す直流信号推移データDaを生成するようになっている。また、交流波形データ生成部3は、デジタル付加情報Tdを生成する他のモジュールなどから入力されるデジタル付加情報Tdに基づいて、信号線91に流れる電流の交流成分(周波数成分)を、デジタル付加情報Tdを構成する少なくとも一部のビット列Bに対応(変換)した電流値とするのに必要な、トランス6の入力側の入力電圧Vaの時間推移を示す交流信号波形データDdを生成するようになっている。そして、ハイブリッド波形データ生成部4において、これらの直流信号推移データDaおよび交流信号波形データDdを加算し、トランス6の入力側に入力する入力電圧Vaの時間推移を示すハイブリッド波形データDを生成するようになっている。
【0053】
また、図2図4に示す実施形態では、信号制御部5は、PWM(Pulse Width Modulation)制御により、トランス6の入力電圧をするようなっている。具体的には、信号制御部5は、ハイブリッド波形データDを構成する複数の時間別データの各々の時間毎の電圧値に従って、デューティー比を制御するためのコンデンサへの通電のオン、オフを行うスイッチ(トランス1次側電圧制御スイッチ)のオン時間を決定し、所定の周期毎にオン時間だけスイッチをオンにする。これによって、所定の周期毎の入力電圧Vaの制御を、デューティー比の制御により行うことが可能となる。なお、スイッチのオン時間が長いほどデューティー比が大きくなり、電圧が高くなる。また、所定の周期毎の始めにスイッチをオフにすることで、所定の周期毎の入力電圧Vaを所望の電圧にすることが可能となる。
【0054】
上記の構成によれば、ハイブリッド波形データDに従って、トランス6に入力する入力電圧を例えばPWM制御により制御する。信号線91を流れる電流は、接続されている負荷(抵抗)の抵抗値の影響を受けるが、電圧を制御することによって、所望の電流を信号線91に流すことができる。よって、ハイブリッド信号Hを信号線91に適切に出力することができる。
【0055】
また、上述した実施形態において、幾つかの実施形態では、図2図4に示すように、信号制御部5は、トランス6の入力側の入力電圧Vaおよび入力側の入力電流Iaの各々の計測値に基づいて、トランス6の出力側に接続された信号線91の出力電流Ibの推定値(出力電流推定値Ie)を算出する出力電流推定部61を、さらに有しても良い。この際、図2図4に示すように、信号制御部5は、出力電流推定値Ieに基づいて、ハイブリッド波形データDを補正する補正電圧データCを算出する補正電圧データ算出部62と、をさらに有しても良い。この場合、信号制御部5は、ハイブリッド波形データDおよび補正電圧データCに基づいて、トランス6の入力電圧を制御する。
【0056】
上述したように、トランス6の入力電圧Va(1次側電圧)を制御することにより、トランス6と通信相手機器9との間の信号線91に所望の電流を流す場合、入力側の入力電圧Vaに対して、この信号線91を流れる電流値(2次側電流)の電流値は、信号線91に接続される負荷(合成抵抗)に応じたものとなる。そして、この負荷自体も変動する場合もあるが、信号処理装置1は、トランス6により通信相手機器9側から絶縁されているため、トランス6の入力側に接続された信号処理装置1から信号線91の電流値を直接得ることはできない。よって、トランス6の入力側の入力電圧Vaおよび入力電流Iaに基づいてトランス6の出力側の出力電流Ibを推定し、その推定値をトランス6の入力電圧Vaにフィードバックすることにより、信号線91の電流値がハイブリッド波形データDに対応した電流値になるように制御する。
【0057】
図2図4に示す実施形態では、ローパスフィルタなどとなる、第1の交流信号除去フィルタ74aを通過させることによって、トランス6の入力側の入力電流Iaから交流成分を除去した直流成分の電流をADC71(Analog Digital Converter)に入力するように構成している。ADC71は、アナログ信号をデジタル信号に変換する機能部であり、ADC71からは、アナログ信号がデジタル信号に変換されて、出力される。同様に、第2の交流信号除去フィルタ74bを通過させることによって、トランス6の入力側の入力電圧Vaから交流成分を除去した電圧、および、第2の交流信号除去フィルタ74bを通過させない入力電圧Vaを通過させないことによって交流成分を含む電圧の両方をMCU72(Microcontroller Unit)に入力するように構成している。MCU72は、アナログ信号をデジタル信号に変換すると共に、交流信号除去フィルタを電圧値の周波数(デジタル信号値Nd)から、デジタル付加情報Tdを判別する。なお、図2図4に示す実施形態では、ADC71は、トランス6の入力側の入力電流Iaの数値データを出力し、MCU72は、トランス6の入力側の入力電圧Vaの数値データを出力する。
【0058】
また、図2図4に示す実施形態では、ADC71から出力される入力電流Iaの電流値、および、MCU72から出力される入力電圧Vaの電圧値が、上記の出力電流推定部61に入力するようになっている。出力電流推定部61は、ADC71およびMCU72の各々から入力されるトランス6の入力側の入力電流Iaおよび入力電圧Vaの各々に基づいて、トランス6の出力側となる信号線91を流れる出力電流推定値Ieを算出する。
【0059】
そして、図2図4に示す実施形態では、出力電流推定部61は、補正電圧データ算出部62に入力することにより、トランス6の出力側の電流値としての出力電流推定値Ieをフィードバックするようになっている。補正電圧データ算出部62は、入力された出力電流推定値Ieが、直流信号推移データDaで示す値にするために必要な電圧値を有する補正電圧データCを算出し、直流信号推移データDaを補正電圧データCで補正した補正後の直流信号推移データDaを、交流波形データ生成部3に入力するようになっている。
【0060】
なお、図2図4に示す実施形態では、ハイブリッド波形データ生成部4に入力される直流信号推移データDaを補正電圧データCで補正(調整)し、補正後の直流信号推移データDaをハイブリッド波形データ生成部4に入力するように構成しているが、他の幾つかの実施形態では、ハイブリッド波形データ生成部4に補正電圧データCを入力しても良い。この場合、ハイブリッド波形データ生成部4は、直流信号推移データDaと、交流信号波形データDdと、補正電圧データCとを合成したハイブリッド波形データDを生成する。また、図2図3に示す実施形態では、異常検知のために、出力電流推定値Ieをアナログ主情報Taの入力先(例えば、DCSのCPUモジュール82などの上位装置)にリードバックするようにしている。
【0061】
上記の構成によれば、トランス6の入力側(1次側)の入力電流Iaおよび入力電圧Vaの計測値に基づいて、トランス6で絶縁された信号線91を流れる電流値を推定する。また、この推定値である出力電流推定値Ieをフィードバックすることにより、フィードバック前(補正前)のハイブリッド波形データDに応じた電流値が信号線91を流れるように、トランス6の入力電圧Vaを制御する。これによって、ハイブリッド波形データDに応じた電流を信号線91に流すことができ、ハイブリッド信号Hを信号線91に適切に出力することができる。
【0062】
また、幾つかの実施形態では、図3に示すように、上述した信号制御部5は、トランス6の入力側(1次側)の入力電流Iaの計測値に基づいて、通信相手機器9に対して一定の電圧を供給するようにハイブリッド波形データDを補正するための定電圧補正データCvを算出する定電圧補正データ算出部63を、さらに有しても良い。この場合、信号制御部5は、ハイブリッド波形データDおよび定電圧補正データCvに基づいて、トランス6の入力電圧Vaを制御する。上述したようなトランス6による絶縁によって、トランス6の入力側(1次側)から、その出力側(2次側)の電圧値を直接得ることはできない。よって、トランス6の入力電流Iaの計測値に基づいて出力電圧Vbを推定し、フィードバック制御に用いる。
【0063】
具体的には、トランス6の1次側の巻線の巻き数をMa、2次側の巻線の巻き数をMbとすると、入力電圧Vaと出力電圧Vbとは、Va/Vb=Ma/Mbとなる。よって、トランス6の1次側の負荷(合成抵抗)をRaとすると、Vb=Mb/Ma×Ia×Raで算出可能となるとなる。図3に示す実施形態では、出力電圧Vbの計測値と推定値との差が0なるように定電圧補正データCvを算出し、直流信号推移データDaを補正する。
【0064】
ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、ハイブリッド波形データ生成部4に定電圧補正データCvを入力しても良い。この場合、ハイブリッド波形データ生成部4は、直流信号推移データDaと、交流信号波形データDdと、補定電圧補正データCvとを合成したハイブリッド波形データDを生成する。
【0065】
上記の構成によれば、信号処理装置1はディストリビュータ(電源供給装置)の機能を有しており、トランス6の入力側(1次側)の入力電流Iaをフィードバックすることにより、通信相手機器9に対して信号線91を介して電源を供給する。これによって、通信相手機器に対して定電圧供給を行うことができる。
【0066】
次に、図4について説明する。
図4に示す実施形態では、信号処理装置1を備える入出力モジュール81(IOM)が制御装置8(DCS)に組み込まれている。1つのCPUモジュール82(図4のCPU)には、制御ネットワーク83を介して、1以上(通常は複数)の入出力モジュール81(図4のIOM)が接続されている。CPUモジュール82は、制御装置8の全体の演算機能を担っており、演算部82aにおいて各入出力モジュール81からの1以上の入力に基づいて出力を演算し、その演算結果を対象となる入出力モジュール81などに出力する。図4に示す実施形態では、信号処理装置1と同一または異なるFPGA上に構築された入出力インターフェース部84を介して制御ネットワークからのデータの送受信が行われるようになっている。
【0067】
また、入出力モジュール81は、コマンド(図4のHARTコマンド)を通信するためのデジタル信号を含むハイブリッド信号Hを出力し、そのコマンドに対する応答を受信するようになっている。より詳細には、入出力モジュール81は、上記のコマンドをデジタル付加情報TdとしてCPUモジュール82などから受信すると、フィールド機器(通信相手機器9と)に対して出力指示値を通信するアナログ信号にコマンドを通信するデジタル信号が重畳されたがハイブリッド信号Hを通信相手機器9が接続される信号線91に伝送する。
【0068】
一方、通信相手機器9では、信号線91を介してコマンドを通信するハイブリッド信号Hを受信すると、コマンドの内容に応じて応答データ(デジタル付加情報Td)を含むハイブリッド信号Hを信号線91に出力する。この際、通信相手機器9も、上述した信号処理装置1(モジュール)を備えていても良く、通信相手機器9は、既に説明したのと同様にハイブリッド信号Hを出力する。こうして伝送される通信相手機器9からのハイブリッド信号Hは、制御装置8の入出力モジュール81に入力される。入出力モジュール81は、トランス6の出力側(この場合はMCU72が存在する側)の電圧に基づいてデジタル信号を読み取る。また、デジタル信号で通信された応答データを、CPUモジュール82に送信する。
【0069】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0070】
1 信号処理装置
2 直流信号推移データ生成部
3 交流波形データ生成部
4 ハイブリッド波形データ生成部
5 信号制御部
6 トランス
61 出力電流推定部
62 補正電圧データ算出部
63 定電圧補正データ算出部
71 ADC
72 MCU
74a 第1の交流信号除去フィルタ
74b 第2の交流信号除去フィルタ
8 制御装置
81 入出力モジュール
82 CPUモジュール
82a 演算部
83 制御ネットワーク
84 入出力インターフェース部
9 通信相手機器
91 信号線

D ハイブリッド波形データ
Da 直流信号推移データ
Dd 交流信号波形データ
Dw 波形データ
H ハイブリッド信号
Na アナログ信号値
Nd デジタル信号値
N ハイブリッド信号値
Ta アナログ主情報
Td デジタル付加情報
B ビット列
C 補正電圧データ
Cv 定電圧補正データ
Ia 入力電流
Va 入力電圧
Vb 出力電圧
Ib 出力電流
Ie 出力電流推定値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8