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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-220340(P2019-220340A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/90 20060101AFI20191129BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20191129BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20191129BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20191129BHJP
   B01J 23/80 20060101ALI20191129BHJP
   B01J 23/889 20060101ALI20191129BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20191129BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20191129BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20191129BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20191129BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20191129BHJP
【FI】
   H01M4/90 M
   B01J37/04 101
   B01J37/08
   B01J35/04 B
   B01J23/80 M
   B01J23/889 M
   B01J23/755 M
   B01J23/89 M
   H01M4/86 M
   H01M4/88 K
   H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2018-116700(P2018-116700)
(22)【出願日】2018年6月20日
(71)【出願人】
【識別番号】518218896
【氏名又は名称】株式会社グラヴィトン
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(72)【発明者】
【氏名】奥山 正己
【テーマコード(参考)】
4G169
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA08
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC29A
4G169BC29C
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC32B
4G169BC35B
4G169BC50B
4G169BC59B
4G169BC62B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169CC32
4G169DA05
4G169EA14
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169EB17Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169FA01
4G169FB07
4G169FB30
4G169FB32
4G169FB70
4G169FC05
4G169FC08
5H018AA06
5H018BB01
5H018BB03
5H018BB12
5H018EE02
5H018EE04
5H018HH01
5H018HH03
5H018HH04
5H018HH05
5H018HH08
5H018HH09
5H126BB06
(57)【要約】
【課題】白金族元素を利用することなく、廉価に作ることができ、触媒活性(触媒作用)を有して陽極または陰極として使用することが可能な電極を提供する。
【解決手段】電極10は、各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属から形成され、選択された少なくとも3種類のそれら遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を0.03mm〜0.3mmの厚み寸法の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極である。電極10では、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードまたはカソードとして使用する電極において、
前記電極が、各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属から形成され、選択された少なくとも3種類のそれら遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極であり、前記ポーラス構造のアロイ薄板電極の厚み寸法が、0.03mm〜0.3mmの範囲にあり、前記ポーラス構造のアロイ薄板電極では、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されていることを特徴とする電極。
【請求項2】
前記ポーラス構造のアロイ薄板電極が、Niの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、前記ポーラス構造のアロイ薄板電極では、前記Niの仕事関数と該Niを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が前記白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記Niの粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜50%の範囲、前記Niの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、前記Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある請求項2に記載の電極。
【請求項4】
前記ポーラス構造のアロイ薄板電極が、Feの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、前記ポーラス構造のアロイ薄板電極では、前記Feの仕事関数と該Feを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が前記白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている請求項1に記載の電極。
【請求項5】
前記Feの粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜50%の範囲、前記Feの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、前記Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある請求項4に記載の電極。
【請求項6】
前記ポーラス構造のアロイ薄板電極が、Cuの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、前記ポーラス構造のアロイ薄板電極では、前記Cuの仕事関数と該Cuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が前記白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている請求項1に記載の電極。
【請求項7】
前記Cuの粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜50%の範囲、前記Cuの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、前記Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある請求項6に記載の電極。
【請求項8】
前記ポーラス構造のアロイ薄板電極の空隙率が、15%〜30%の範囲にある請求項1ないし請求項7いずれかに記載の電極。
【請求項9】
前記ポーラス構造のアロイ薄板電極の密度が、5.0g/cm〜7.0g/cmの範囲にある請求項1ないし請求項8いずれかに記載の電極。
【請求項10】
前記遷移金属の粉体の粒径が、10μm〜200μmの範囲にある請求項1ないし請求項9いずれかに記載の電極。
【請求項11】
前記ポーラス構造のアロイ薄板電極では、所定面積の薄板状に圧縮した前記金属粉体混合物の焼成時に最も融点の低い遷移金属の粉体が溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとして他の遷移金属の粉体が接合されている請求項1ないし請求項10いずれかに記載の電極。
【請求項12】
前記バインダーとなる遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある請求項11に記載の電極。
【請求項13】
前記電極が、各種の遷移金属から選択する少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属を選択する遷移金属選択工程と、前記遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を作る金属粉体混合物作成工程と、前記金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を所定圧力で加圧して金属薄板を作る金属薄板作成工程と、前記金属薄板作成工程によって作られた金属薄板を所定温度で焼成して多数の微細な流路を形成した前記ポーラス構造のアロイ薄板電極を作るポーラス構造アロイ薄板電極作成工程とによって製造されている請求項1ないし請求項12いずれかに記載の電極。
【請求項14】
前記金属粉体混合物作成工程が、前記遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属を10μm〜200μmの粒径に微粉砕する請求項13に記載の電極。
【請求項15】
前記金属薄板作成工程が、前記金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を500Mpa〜800Mpaの圧力で加圧し、前記0.03mm〜0.3mmの厚み寸法を有して多数の微細な流路を形成した金属薄板を作る請求項13または請求項14に記載の電極。
【請求項16】
前記ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程が、前記遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属のうちの融点が最も低い遷移金属の粉体を溶融させる温度で前記金属薄板を焼成する請求項13ないし請求項15いずれかに記載の電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極または陰極として使用する電極に関する。
【背景技術】
【0002】
低沸点金属である亜鉛を含む多孔性金属錯体(PCP/MOF)を焼成した窒素ドープカーボンに白金を担持させた白金触媒を含む燃料電池電極が開示されている(特許文献1参照)。この燃料電池電極は、低沸点金属である亜鉛を含む多孔性金属錯体(PCP/MOF)を製造原料として用いるため、原料由来の金属をほとんど含まず、大きな比表面積を有するNDCである触媒担持体を得ることができ、少量の白金担持により高活性な白金触媒を得ることができる。さらに、製造原料である多孔性金属錯体(PCP/MOF)由来の金属が含まれていないため、焼成条件を自由に設定できる。すなわち、原料として用いる多孔性金属錯体(PCP/MOF)の有機化合物リンカーの変更や焼成温度の調節により、得られるNDC中の含窒素量や結晶化度をコントロールすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−23929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体高分子形燃料電池の電極触媒として各種の白金担持カーボンが広く利用されている。しかし、白金族元素は、貴金属であり、その生産量に限りがある希少な資源であることから、その使用量を抑えることが求められている。さらに、今後の固体高分子形燃料電池の普及に向けて高価な白金以外の金属を利用した非白金触媒を有する廉価な電極の開発が求められている。
【0005】
本発明の目的は、白金族元素を利用することなく、廉価に作ることができ、触媒活性(触媒作用)を有して陽極または陰極として使用することが可能な電極を提供することにある。本発明の他の目的は、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、水素ガス発生装置において電気分解を効率よく行うことができ、十分な水素ガスを発生させることができる電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の前提は、アノードまたはカソードとして使用する電極である。
【0007】
前記前提における本発明の特徴は、電極が、各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属から形成され、選択された少なくとも3種類のそれら遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極であり、ポーラス構造のアロイ薄板電極の厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあり、ポーラス構造のアロイ薄板電極では、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されていることにある。
【0008】
本発明の一例としては、ポーラス構造のアロイ薄板電極が、Niの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、ポーラス構造のアロイ薄板電極では、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。
【0009】
本発明の他の一例としては、Niの粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜50%の範囲、Niの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある。
【0010】
本発明の他の一例としては、ポーラス構造のアロイ薄板電極が、Feの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、ポーラス構造のアロイ薄板電極では、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。
【0011】
本発明の他の一例としては、Feの粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜50%の範囲、Feの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある。
【0012】
本発明の他の一例としては、ポーラス構造のアロイ薄板電極が、Cuの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、ポーラス構造のアロイ薄板電極では、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。
【0013】
本発明の他の一例としては、Cuの粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜50%の範囲、Cuの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある。
【0014】
本発明の他の一例としては、ポーラス構造のアロイ薄板電極の空隙率が、15%〜30%の範囲にある。
【0015】
本発明の他の一例としては、ポーラス構造のアロイ薄板電極の密度が、5.0g/cm〜7.0g/cmの範囲にある。
【0016】
本発明の他の一例としては、遷移金属の粉体の粒径が、10μm〜200μmの範囲にある。
【0017】
本発明の他の一例として、ポーラス構造のアロイ薄板電極では、所定面積の薄板状に圧縮した金属粉体混合物の焼成時に最も融点の低い遷移金属の粉体が溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとして他の遷移金属の粉体が接合されている。
【0018】
本発明の他の一例としては、バインダーとなる遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある。
【0019】
本発明の他の一例としては、電極が、各種の遷移金属から選択する少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属を選択する遷移金属選択工程と、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を作る金属粉体混合物作成工程と、金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を所定圧力で加圧して金属薄板を作る金属薄板作成工程と、金属薄板作成工程によって作られた金属薄板を所定温度で焼成して多数の微細な流路を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極を作るポーラス構造アロイ薄板電極作成工程とによって製造されている。
【0020】
本発明の他の一例としては、金属粉体混合物作成工程が、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属を10μm〜200μmの粒径に微粉砕する。
【0021】
本発明の他の一例としては、金属薄板作成工程が、金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を500Mpa〜800Mpaの圧力で加圧し、0.03mm〜0.3mmの厚み寸法を有して多数の微細な流路を形成した金属薄板を作る。
【0022】
本発明の他の一例としては、ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程が、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属のうちの融点が最も低い遷移金属の粉体を溶融させる温度で金属薄板を焼成する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る電極によれば、それが各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属から形成され、選択された少なくとも3種類のそれら遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極であり、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されているから、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池や水素ガス発生装置等の陽極または陰極として好適に使用することができる。電極は、それが各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属から形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の陽極または陰極を廉価に作ることができる。電極は、ポーラス構造のアロイ薄板電極の厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極の電気抵抗が低く、電極をプロトンがスムースに移動することができ、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、十分な水素ガスを発生させることができる。
【0024】
ポーラス構造のアロイ薄板電極がNiの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている電極は、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池や水素ガス発生装置等の陽極または陰極として好適に使用することができる。電極は、それがNiの粉体と各種の遷移金属から選択されたNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の陽極または陰極を廉価に作ることができる。電極は、Niを主成分としたポーラス構造のアロイ薄板電極の厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極の電気抵抗が低く、電極をプロトンがスムースに移動することができ、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、十分な水素ガスを発生させることができる。
【0025】
Niの粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が30%〜50%の範囲、Niの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある電極は、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているとともに、Niの粉体の重量比やNiの粉体を除く少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比、Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比を前記範囲にすることで、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、電気分解装置や燃料電池等の陽極または陰極として好適に使用することができる。電極は、前記重量比のNiの粉体と各種の遷移金属から選択されたNiを除く前記重量比の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の陽極または陰極を廉価に作ることができる。
【0026】
ポーラス構造のアロイ薄板電極がFeの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている電極は、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池や水素ガス発生装置等の陽極または陰極として好適に使用することができる。電極は、それがFeの粉体と各種の遷移金属から選択されたFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の陽極または陰極を廉価に作ることができる。電極は、Feを主成分としたポーラス構造のアロイ薄板電極の厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極の電気抵抗が低く、電極をプロトンがスムースに移動することができ、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、十分な水素ガスを発生させることができる。
【0027】
Feの粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が30%〜50%の範囲、Feの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある電極は、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているとともに、Feの粉体の重量比やFeの粉体を除く少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比、Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比を前記範囲にすることで、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池や水素ガス発生装置等の陽極または陰極として好適に使用することができる。電極は、前記重量比のFeの粉体と各種の遷移金属から選択されたFeを除く前記重量比の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の陽極または陰極を廉価に作ることができる。
【0028】
ポーラス構造のアロイ薄板電極がCuの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている電極は、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池や水素ガス発生装置等の陽極または陰極として好適に使用することができる。電極は、それがCuの粉体と各種の遷移金属から選択されたCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の陽極または陰極を廉価に作ることができる。電極は、Cuを主成分としたポーラス構造のアロイ薄板電極の厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極の電気抵抗が低く、電極をプロトンがスムースに移動することができ、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、十分な水素ガスを発生させることができる。
【0029】
Cuの粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が30%〜50%の範囲、Cuの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある電極は、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているとともに、Cuの粉体の重量比やCuの粉体を除く少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比、Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比を前記範囲にすることで、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池や水素ガス発生装置等の陽極または陰極として好適に使用することができる。電極は、前記重量比のCuの粉体と各種の遷移金属から選択されたCuを除く前記重量比の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の陽極または陰極を廉価に作ることができる。
【0030】
ポーラス構造のアロイ薄板電極の空隙率が15%〜30%の範囲にある電極は、アロイ薄板電極の空隙率を前記範囲にすることで、ポーラス構造のアロイ薄板電極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成型され、アロイ薄板電極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を気体や液体が通流しつつ気体や液体をアロイ薄板電極の接触面に広く接触させることが可能となり、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮することができる。電極は、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極または陰極として好適に使用することができる。
【0031】
ポーラス構造のアロイ薄板電極の密度が5.0g/cm〜7.0g/cmの範囲にある電極は、アロイ薄板電極の密度を前記範囲にすることで、ポーラス構造のアロイ薄板電極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成型され、アロイ薄板電極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を気体や液体が通流しつつ気体や液体をアロイ薄板電極の接触面に広く接触させることが可能となり、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮することができる。電極は、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極または陰極として好適に使用することができる。
【0032】
遷移金属の粉体の粒径が10μm〜200μmの範囲にある電極は、遷移金属の粒径を前記範囲にすることで、ポーラス構造のアロイ薄板電極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成型され、アロイ薄板電極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を気体や液体が通流しつつ気体や液体をアロイ薄板電極の接触面に広く接触させることが可能となり、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮することができる。電極は、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極または陰極として好適に使用することができる。
【0033】
所定面積の薄板状に圧縮した金属粉体混合物の焼成時に最も融点の低い遷移金属の粉体が溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとして他の遷移金属の粉体が接合されている電極は、最も融点の低い粉状の金属をバインダーとして他の粉状の金属を接合することで、電極が高い強度を有してその形状を維持することができ、電極に衝撃が加えられたときの電極の破損や損壊を防ぐことができる。電極は、その形状を維持することができるから、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極または陰極として好適に使用することができる。
【0034】
バインダーとなる遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある電極は、バインダーとなる遷移金属の粉体の重量比を前記範囲にすることで、バインダーとなる遷移金属が溶融したとしても、ポーラス構造のアロイ薄板電極の微細な流路(通路孔)が塞がれることはなく、アロイ薄板電極の多孔質構造を維持することができ、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極または陰極として好適に使用することができる。
【0035】
各種の遷移金属から選択する少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属を選択する遷移金属選択工程と、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を作る金属粉体混合物作成工程と、金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を所定圧力で加圧して金属薄板を作る金属薄板作成工程と、金属薄板作成工程によって作られた金属薄板を所定温度で焼成して多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極を作るポーラス構造アロイ薄板電極作成工程とによって製造されている電極は、遷移金属選択工程や金属粉体混合物作成工程、金属薄板作成工程、ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程によって白金族元素を利用しない非白金の電極を廉価に作ることができ、触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有して陽極または陰極として使用することが可能な非白金の電極を作ることができる。
【0036】
金属粉体混合物作成工程が遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属を10μm〜200μmの粒径に微粉砕する電極は、遷移金属を前記範囲の粒径に微粉砕することで、多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成型されて比表面積が大きいポーラス構造のアロイ薄板電極を作ることができ、それら流路を気体や液体が通流しつつ気体や液体をアロイ薄板電極の接触面に広く接触させることが可能となり、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮することが可能な電極を作ることができる。電極は、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有して陽極または陰極として使用することが可能な非白金のポーラス構造のアロイ薄板電極を作ることができる。
【0037】
金属薄板作成工程が金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を500Mpa〜800Mpaの圧力で加圧し、0.03mm〜0.3mmの厚み寸法を有して多数の微細な流路を形成した金属薄板を作る電極は、金属粉体混合物を前記範囲の圧力で加圧(圧縮)することで、厚み寸法が0.03mm〜0.3mmであって多数の微細な流路(通路孔)を有する金属薄板を作ることができ、白金族元素を利用しない非白金のポーラス構造のアロイ薄板電極を廉価に作ることができる。電極は、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有して陽極または陰極として使用することが可能な非白金のポーラス構造のアロイ薄板電極を作ることができる。電極は、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲であって多数の微細な流路(通路孔)を形成することで、電極の電気抵抗を低くすることができるとともに、電極をプロトンがスムースに移動することができ、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することが可能な電極を作ることができる。電極は、それを水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、十分な水素ガスを発生させることが可能な電極を作ることができる。
【0038】
ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程が遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属のうちの融点が最も低い遷移金属の粉体を溶融させる温度で金属薄板を焼成する電極は、最も融点の低い遷移金属の粉体をバインダーとして他の遷移金属の粉体を接合することで、電極が高い強度を有してその形状を維持することができ、不用意な破損や損壊を防ぐことが可能な電極を作ることができる。電極は、その形状を維持することができるから、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極または陰極として好適に使用することが可能な電極を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】一例として示す電極の斜視図。
図2】電極の一例として示す部分拡大正面図。
図3】電極の他の一例として示す部分拡大正面図。
図4】電極を使用したセルの一例を示す分解斜視図。
図5】電極を使用したセルの側面図。
図6】電極を使用した燃料電池(固体高分子形燃料電池)の発電を説明する図。
図7】電極の起電圧試験の結果を示す図。
図8】電極のI−V特性試験の結果を示す図。
図9】電極を使用した水素ガス発生装置の電気分解を説明する図。
図10】電極10の製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
一例として示す電極10の斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る電極の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、電極10の一例として示す部分拡大正面図であり、図3は、電極10の他の一例として示す部分拡大正面図である。図1では、厚み方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示す。
【0041】
電極10は、陽極(アノード)または陰極(カソード)として使用され、燃料電池20の電極(触媒)(図6参照)や水素ガス発生装置29の電極(触媒)(図9参照)として利用される。電極10は、前面12および後面13を有するとともに、所定の面積および所定の厚み寸法L1を有し、その平面形状が円形に成型されている。電極10は、多数の微細な流路14(通路孔)を有するポーラス構造のアロイ薄板電極15である。流路14には、気体または液体が通流する。なお、電極10の平面形状に特に制限はなく、円形の他に、他のあらゆる平面形状に成型することができる。
【0042】
電極10は、粉状に加工された遷移金属の中から選択された少なくとも3種類の遷移金属から形成されている。遷移金属としては、3d遷移金属や4d遷移金属が使用される。3d遷移金属には、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)が使用される。4d遷移金属には、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ag(銀)が使用される。
【0043】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)では、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数(物質から電子を取り出すのに必要なエネルギー)の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されている。Tiの仕事関数は、4.14(eV)、Crの仕事関数は、4.5(eV)、Mnの仕事関数は、4.1(eV)、Feの仕事関数は、4.67(eV)、Coの仕事関数は、5.0(eV)、Niの仕事関数は、5.22(eV)、Cuの仕事関数は、5.10(eV)、Znの仕事関数は、3.63(eV)、Nbの仕事関数は、4.01(eV)、Moの仕事関数は、4.45(eV)、Agの仕事関数は、4.31(eV)である。なお、白金の仕事関数は、5.65(eV)である。
【0044】
電極10は、各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類のそれら遷移金属の粉体(粉状に加工されたTi(チタン)、粉状に加工されたCr(クロム)、粉状に加工されたMn(マンガン)、粉状に加工されたFe(鉄)、粉状に加工されたCo(コバルト)、粉状に加工されたNi(ニッケル)、粉状に加工されたCu(銅)、粉状に加工されたZn(亜鉛)、粉状に加工されたNb(ニオブ)、粉状に加工されたMo(モリブデン)、粉状に加工されたAg(銀))を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮して金属薄板11とし、その金属薄板11を焼成することから作られている(図10参照)。電極10には、径が異なる多数の微細な流路14(通路孔)が形成されている。電極10は、多数の微細な流路14(通路孔)が形成されているから、その比表面積が大きい。
【0045】
それら流路14(通路孔)は、前面12に開口する複数の通流口17と後面13に開口する複数の通流口17とを有し、電極10の前面12から後面13に向かって電極10を貫通している。それら流路14は、電極10の前面12と後面13との間において電極10の厚み方向へ不規則に曲折しながら延びているとともに、電極10の外周縁18から中心に向かって電極10の径方向へ不規則に曲折しながら延びている。径方向へ隣接して厚み方向へ曲折して延びるそれら流路14は、径方向において部分的につながり、一方の流路14と他方の流路14とが互いに連通している。厚み方向へ隣接して径方向へ曲折して延びるそれら流路14は、厚み方向において部分的につながり、一方の流路14と他方の流路14とが互いに連通している。
【0046】
それら流路14(通路孔)の開口面積(開口径)は、厚み方向に向かって一様ではなく、厚み方向に向かって不規則に変化しているとともに、径方向に向かって一様ではなく、径方向に向かって不規則に変化している。それら流路14は、その開口面積(開口径)が大きくなったり、小さくなったりしながら厚み方向と径方向とへ不規則に開口している。また、前面12に開口する通流口17と後面13に開口する通流口17とは、その開口面積(開口径)が一様ではなく、その面積が相違している。それら流路14(通路孔)の開口径や前後面12,13の通流口17の開口径は、1μm〜100μmの範囲にある。
【0047】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲にある。電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の厚み寸法L1が0.03mm未満では、その強度が低下し、衝撃が加えられたときに電極10が容易に破損または損壊し、その形状を維持することができない場合がある。電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の厚み寸法L1が0.3mmを超過すると、電極10の電気抵抗が大きくなり、電極10をプロトンがスムースに移動することができず、電極10が燃料電池20に使用されたときに燃料電池20において十分な電気を発電することができず、燃料電池20に接続された負荷28に十分な電気エネルギーを供給することができない。また、電極10が水素ガス発生装置29に使用されたときに電気分解を効率よく行うことができず、水素ガス発生装置29において十分な水素ガスを発生させることができない。
【0048】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極)は、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極10が高い強度を有してその形状を維持することができ、電極10に衝撃が加えられたときの電極10の破損や損壊を防ぐことができる。さらに、電極10の電気抵抗が低く、電極10をプロトンがスムースに移動することができ、電極10を燃料電池20に使用することで、燃料電池20において十分な電気を発電することができ、燃料電池20に接続された負荷28に十分な電気エネルギーを供給することができる。また、電極10を水素ガス発生装置29に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置29において十分な水素ガスを発生させることができる。
【0049】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その空隙率が15%〜30%の範囲、好ましくは、20%〜25%の範囲にあり、その相対密度が70%〜85%の範囲、好ましくは、75%〜80%の範囲にある。電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の空隙率が15%未満であって相対密度が85%を超過すると、電極10に多数の微細な流路14(通路孔)が形成されず、電極10の比表面積を大きくすることができない。電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の空隙率が30%を超過し、相対密度が70%未満では、流路14(通路孔)の開口面積(開口径)や前後面12,13の通流口17の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、電極10の強度が低下し、衝撃が加えられたときに電極10が容易に破損または損壊し、その形状を維持することができない場合がある。
【0050】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その空隙率および相対密度が前記範囲にあるから、電極10が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路14(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面12,13の通流口17を有する多孔質に成型され、電極10の比表面積を大きくすることができ、それら流路14(通路孔)を気体や液体が通流しつつ気体や液体を電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の接触面に広く接触させることができる。
【0051】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その密度が5.0g/cm〜7.0g/cmの範囲、好ましくは、5.5g/cm〜6.5g/cmの範囲にある。電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の密度が5.0g/cm未満では、電極10の強度が低下し、衝撃が加えられたときに電極10が容易に破損または損壊し、その形状を維持することができない場合がある。電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の密度が7.0g/cmを超過すると、電極10に多数の微細な流路14(通路孔)が形成されず、電極10の比表面積を大きくすることができない。
【0052】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その密度が前記範囲にあるから、電極10が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路14(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面12,13の通流口17を有する多孔質に成型され、電極10の比表面積を大きくすることができ、それら流路14(通路孔)を気体や液体が通流しつつ気体や液体を電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の接触面に広く接触させることができる。
【0053】
Tiの粉体(粉状に加工されたTi)やCrの粉体(粉状に加工されたCr)、Mnの粉体(粉状に加工されたMn)、Feの粉体(粉状に加工されたFe)、Coの粉体(粉状に加工されたCo)、Niの粉体(粉状に加工されたNi)、Cuの粉体(粉状に加工されたCu)、Znの粉体(粉状に加工されたZn)、Nbの粉体(粉状に加工されたNb)、Moの粉体(粉状に加工されたMo)、Agの粉体(粉状に加工されたAg)の粒径は、10μm〜200μmの範囲にある。
【0054】
それら遷移金属の粉体の粒径が10μm未満では、遷移金属によって流路14(通路孔)が塞がれ、電極10に多数の微細な流路14を形成することができず、電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の比表面積を大きくすることができない。それら遷移金属の粉体の粒径が200μmを超過すると、流路14(通路孔)の開口面積(開口径)や前後面12,13の通流口17の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)に多数の微細な流路14を形成することができず、電極10の比表面積を大きくすることができない。
【0055】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、それら遷移金属の粉体の粒径が前記範囲にあるから、電極10が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路14(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面12,13の通流口17を有する多孔質に成型され、電極10の比表面積を大きくすることができ、それら流路14を気体や液体が通流しつつ気体や液体を電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の接触面に広く接触させることができる。
【0056】
図4は、電極10を使用したセル19の一例を示す分解斜視図であり、図5は、電極10を使用したセル19の側面図である。図6は、電極10を使用した燃料電池20(固体高分子形燃料電池)の発電を説明する図であり、図7は、電極10の起電圧試験の結果を示す図である。図8は、電極10のI−V特性試験の結果を示す図である。
【0057】
電極10を使用したセル19の一例としては、図4に示すように、電極10を使用した燃料極21(アノード)と、電極10を使用した空気極22(カソード)と、燃料極21および空気極22の間に介在する固体高分子電解質膜23(フッ素系イオン交換膜)と、燃料極21の厚み方向外側に位置するセパレータ24a(バイポーラプレート)と、空気極22の厚み方向外側に位置するセパレータ24b(バイポーラプレート)とから形成されている。それらセパレータ24a,24bには、反応ガス(水素や酸素等)の供給流路が刻設されている(彫り込まれている)。
【0058】
セル19では、図5に示すように、燃料極21や空気極22、固体高分子電解質膜23が厚み方向へ重なり合って一体化し、膜/電極接合体 (Membrane Electrode Assembly, MEA)を構成し、膜/電極接合体をそれらセパレータ24a,24bが挟み込んでいる。燃料電池20(固体高分子形燃料電池)では、複数のセル19(単セル)が一方向へ重なり合って直列につながれてセルスタック(燃料電池スタック)を形成する。固体高分子電解質膜23は、プロトン導電性があり、電子導電性がない。
【0059】
燃料極21とセパレータ24aとの間には、ガス拡散層25aが形成され、空気極22とセパレータ24bとの間には、ガス拡散層25bが形成されている。燃料極21とセパレータ24aとの間であってガス拡散層25の上部および下部には、ガスシール26aが設置されている。空気極22とセパレータ24bとの間であってガス拡散層25bの上部および下部には、ガスシール26bが設置されている。
【0060】
燃料電池20(固体高分子形燃料電池)では、図6に示すように、燃料極21(電極10)に水素(燃料)が供給され、空気極22(電極10)に空気(酸素)が供給される。燃料極21(電極10)では、水素がH→2H+2eの反応(触媒作用)によってプロトン(水素イオン、H)と電子とに分解される。その後、プロトンが固体高分子電解質膜23内を通って空気極22(電極10)へ移動し、電子が導線27内を通って空気極22へ移動する。固体高分子電解質膜23には、燃料極21で生成されたプロトンが通流する。空気極22(電極10)では、固体高分子電解質膜23から移動したプロトンと導線27を移動した電子とが空気中の酸素と反応し、4H+O+4e→2HOの反応によって水が生成される。少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属の中から選択された少なくとも3種類の遷移金属から燃料極21(電極10)や空気極22(電極10)が形成されているから、燃料極21や空気極22が優れた触媒活性(触媒作用)を示し、水素がプロトンと電子とに効率よく分解される。
【0061】
起電圧試験では、水素ガスを注入してから15分の間、燃料極21(電極10)や空気極22(電極10)との間の電圧(V)を測定した。図7の起電圧試験の結果を示す図では、横軸に測定時間(min)を表し、縦軸に燃料極21(電極10)や空気極22(電極10)との間の電圧(V)を表す。白金を利用した(担持させた)電極(白金電極)を使用した燃料電池では、図7の起電圧試験の結果を示す図に示すように、電極間の電圧が1.079(V)前後であったのに対し、電極10(非白金電極)を使用した燃料電池20では、燃料極21(電極10)や空気極22(電極10)との間の電圧(起電力)が1.01(V)〜1.02(V)であった。
【0062】
I−V特性試験では、燃料極21(電極10)や空気極22(電極10)との間に負荷を接続し、電圧と電流との関係を測定した。図8のI−V特性試験の結果を示す図では、横軸に電流(A)を表し、縦軸に電圧(V)を表す。電極10(非白金電極)を使用した燃料電池では、図8のI−V特性試験の結果を示す図に示すように、白金を担持させた電極(白金電極)を使用した燃料電池の電圧降下率と大差のない結果が得られた。図7の起電圧試験の結果や図8のI−V特性試験の結果に示すように、白金族元素を利用していない非白金の電極10が、電子を放出させて水素イオンとなる反応を促進させる触媒作用を有するとともに、白金を利用した電極と略同様の酸素還元機能(触媒作用)を有することが確認された。
【0063】
電極10は、それが各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属から形成され、選択された少なくとも3種類のそれら遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路14(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極15であり、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されているから、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池20の燃料極21(アノード)や空気極22(カソード)として好適に使用することができる。
【0064】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、それが各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属から形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の燃料極21(アノード)や空気極22(カソード)を廉価に作ることができる。電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極10の電気抵抗が低く、電極10をプロトンがスムースに移動することができ、電極10を燃料電池20に使用することで、燃料電池20において十分な電気を発電することができ、燃料電池20に接続された負荷28に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0065】
図9は、電極10を使用した水素ガス発生装置29の電気分解を説明する図である。電極10を使用した水素ガス発生装置29の一例としては、図9に示すように、電極10を使用した陽極30(アノード)と、電極10を使用した陰極31(カソード)と、陽極30および陰極31の間に介在する固体高分子電解質膜32(フッ素系イオン交換膜)と、陽極給電部材33aおよび陰極給電部材33bと、陽極用貯水槽34aおよび陰極用貯水槽34bと、陽極主電極35aおよび陰極主電極35bとから形成されている。
【0066】
水素ガス発生装置29では、陽極30や陰極31、固体高分子電解質膜32が厚み方向へ重なり合って一体化し、膜/電極接合体 (Membrane Electrode Assembly, MEA)を構成し、膜/電極接合体を陽極給電部材33aと陰極給電部材33bとが挟み込んでいる。固体高分子電解質膜32は、プロトン導電性があり、電子導電性がない。陽極給電部材33aは、陽極30の外側に位置して陽極30に密着し、陽極30に+の電流を給電する。陽極用貯水槽34aは、陽極給電部材33aの外側に位置して陽極給電部材33aに密着している。陽極主電極35aは、陽極用貯水槽34aの外側に位置して陽極給電部材33aに+の電流を給電する。陰極給電部材33bは、陰極31の外側に位置して陰極31に密着し、陰極31に−の電流を給電する。陰極用貯水槽34bは、陰極給電部材33bの外側に位置して陰極給電部材33bに密着している。陰極主電極35bは、陰極用貯水槽34bの外側に位置して陰極給電部材33bに−の電流を給電する。
【0067】
水素ガス発生装置20では、図9に矢印で示すように、陽極用貯水槽34aおよび陰極用貯水槽34bに水(HO)が給水され、陽極主電極35aに電源から+の電流が給電されるとともに、陰極主電極35bに電源から−の電流が給電される。陽極主電極35aに給電された+の電流が陽極給電部材33aから陽極30(アノード)に給電され、陰極主電極35bに給電された−の電流が陰極給電部材33bから陰極31(カソード)に給電される。陽極30(電極10)では、2HO→4H+4e+Oの陽極反応(触媒作用)によって酸素が生成され、陰極31(電極10)では、4H+4e→2Hの陰極反応(触媒作用)によって酸素が生成される。プロトン(水素イオン:H)は、固体高分子電解質膜32内を通って陰極31(電極10)へ移動する。固体高分子電解質膜32には、陽極30で生成されたプロトンが通流する。少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属の中から選択された少なくとも3種類の遷移金属から陽極30(電極10)や陰極31(電極10)が形成されているから、陽極30や陰極31が優れた触媒活性(触媒作用)を示す。
【0068】
遷移金属から形成された電極10の一例としては、粉状に加工されたNi(ニッケル)の粉体を主成分とし、Niの粉体とNiを除く粉状に加工されたその他の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のFe(鉄)、粉状のCo(コバルト)、粉状のCu(銅)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも2種類)の粉体とを均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造金属薄板15である。
【0069】
Ni(ニッケル)の粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、多数の微細な流路14(通路孔)を有する多孔質の薄板状に成型され、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲にある。Niの粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。Niの粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)では、所定面積の薄板状に圧縮した金属粉体混合物16の焼成時に最も融点の低い遷移金属の粉体が溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとして他の遷移金属の粉体が接合されている。
【0070】
Ni(ニッケル)の粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)では、粉状に加工されたNiの金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が30%〜50%の範囲、Niを除く粉状に加工された少なくとも1種類の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のFe(鉄)、粉状のCo(コバルト)、粉状のCu(銅)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも1種類)の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Niを除く粉状に加工された少なくとも他の1種類の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のFe(鉄)、粉状のCo(コバルト)、粉状のCu(銅)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも他の1種類)の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある。なお、バインダーとなる遷移金属の粉体の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある。
【0071】
Ni(ニッケル)の粉体を主成分とした電極10の具体例としては、Niの粉体、Cu(銅)の粉体、ZN(亜鉛)の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造のアロイ薄板電極15である。この電極10は、金属粉体混合物16の全重量に対するNiの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物16の全重量に対するCuの粉体重量比が42%、金属粉体混合物16の全重量に対するZnの粉体重量比が10%である。Niの融点が1455℃、Cuの融点が1084.5℃、Znの融点が419.85℃であるから、Znの粉体が溶融し、溶融したZnがバインダーとなってNiの粉体とCuの粉体とを接合している。
【0072】
Ni(ニッケル)の粉体を主成分とした電極10の他の具体例としては、Niの粉体、Mn(マンガン)の粉体、Mo(モリブデン)の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造のアロイ薄板電極15である。この電極10は、金属粉体混合物16の全重量に対するNiの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物16の全重量に対するMnの粉体重量比が7%、金属粉体混合物16の全重量に対するMoの粉体重量比が45%である。Niの融点が1455℃、Mnの融点が1246℃、Moの融点が2623℃であるから、Mnの粉体が溶融し、溶融したMnがバインダーとなってNiの粉体とMoの粉体とを接合している。
【0073】
Ni(ニッケル)の粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型された電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池20や水素ガス発生装置29等の燃料極20、陽極30(アノード)または空気極21、陰極31(カソード)として好適に使用することができる。
【0074】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、それがNiの粉体と各種の遷移金属から選択されたNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の燃料極20、陽極30や空気極21、陰極31を廉価に作ることができる。Niを主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極10の電気抵抗が低く、電極10をプロトンがスムースに移動することができ、電極10を燃料電池20に使用することで、燃料電池20において十分な電気を発電することができ、燃料電池20に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極10を水素ガス発生装置29に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置29において十分な水素ガスを発生させることができる。
【0075】
遷移金属から形成された電極10の他の一例としては、粉状に加工されたFe(鉄)の粉体を主成分とし、Feの粉体とFeを除く粉状に加工されたその他の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のCo(コバルト)、粉状のNi(ニッケル)、粉状のCu(銅)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも2種類)の粉体とを均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造のアロイ薄板電極15である。
【0076】
Fe(鉄)の粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、多数の微細な流路14(通路孔)を有する多孔質の薄板状に成型され、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲にある。Feの粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。Feの粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)では、所定面積の薄板状に圧縮した金属粉体混合物16の焼成時に最も融点の低い遷移金属の粉体が溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとして他の遷移金属の粉体が接合されている。
【0077】
Fe(鉄)の粉体を主成分とした電極10では、粉状に加工されたFeの金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が30%〜50%の範囲、Feを除く粉状に加工された少なくとも1種類の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のCo(コバルト)、粉状のNi(ニッケル)、粉状のCu(銅)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも1種類)の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Feを除く粉状に加工された少なくとも他の1種類の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のCo(コバルト)、粉状のNi(ニッケル)、粉状のCu(銅)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも他の1種類)の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある。なお、バインダーとなる遷移金属の粉体の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある。
【0078】
Fe(鉄)の粉体を主成分とした電極10の具体例としては、Feの粉体、Ni(ニッケル)の粉体、Cu(銅)の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造のアロイ薄板電極15である。この電極10は、金属粉体混合物16の全重量に対するFeの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物16の全重量に対するNiの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物16の全重量に対するCuの粉体の重量比が4%である。Feの融点が1536℃、Niの融点が1455℃、Cuの融点が1084.5℃であるから、Cuの粉体が溶融し、溶融したCuがバインダーとなってFeの粉体とNiの粉体とを接合している。
【0079】
Fe(鉄)の粉体を主成分とした電極10の他の具体例としては、Feの粉体、Ti(チタン)の粉体、Ag(銀)の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造のアロイ薄板電極15である。この電極10は、金属粉体混合物16の全重量に対するFeの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物16の全重量に対するTiの粉体重量比が46%、金属粉体混合物16の全重量に対するAgの粉体重量比が6%である。Feの融点が1536℃、Tiの融点が1666℃、Agの融点が961.93℃であるから、Agの粉体が溶融し、溶融したAgがバインダーとなってFeの粉体とTiの粉体とを接合している。
【0080】
Feの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型された電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池20や水素ガス発生装置29等の燃料極20、陽極30(アノード)または空気極21、陰極31(カソード)として好適に使用することができる。
【0081】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、それがFeの粉体と各種の遷移金属から選択されたFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の燃料極20、陽極30や空気極21、陰極31を廉価に作ることができる。Feを主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極10の電気抵抗が低く、電極10をプロトンがスムースに移動することができ、電極10を燃料電池20に使用することで、燃料電池20において十分な電気を発電することができ、燃料電池20に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極10を水素ガス発生装置29に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置29において十分な水素ガスを発生させることができる。
【0082】
遷移金属から形成された電極10の他の一例としては、粉状に加工されたCu(銅)の粉体を主成分とし、Cuの粉体とCuを除く粉状に加工されたその他の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のFe(鉄)、粉状のCo(コバルト)、粉状のNi(ニッケル)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも2種類)の粉体とを均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造のアロイ薄板電極15である。
【0083】
Cu(銅)の粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、多数の微細な流路14(通路孔)を有する多孔質の薄板状に成型され、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲にある。Cuの粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。Cuの粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)では、所定面積の薄板状に圧縮した金属粉体混合物16の焼成時に最も融点の低い遷移金属の粉体が溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとして他の遷移金属の粉体が接合されている。
【0084】
Cu(銅)の粉体を主成分とした電極10では、粉状に加工されたCuの金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が30%〜50%の範囲、Cuを除く粉状に加工された少なくとも1種類の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のFe(鉄)、粉状のCo(コバルト)、粉状のNi(ニッケル)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも1種類)の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Cuを除く粉状に加工された少なくとも他の1種類の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のFe(鉄)、粉状のCo(コバルト)、粉状のNi(ニッケル)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも他の1種類)の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある。なお、バインダーとなる遷移金属の粉体の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある。
【0085】
Cu(銅)の粉体を主成分とした電極10の具体例としては、Cuの粉体、Fe(鉄)の粉体、Zn(亜鉛)の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造のアロイ薄板電極15である。この電極10は、金属粉体混合物16の全重量に対するCuの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物16の全重量に対するFeの粉体重量比が48%、金属粉体混合物16の全重量に対するZnの粉体重量比が4%である。Cuの融点が1084.5℃、Feの融点が1536℃、Znの融点が419.58℃であるから、Znの粉体が溶融し、溶融したZnがバインダーとなってCuの粉体とFeの粉体とを接合している。
【0086】
Cu(銅)の粉体を主成分とした電極10の具体例としては、Cuの粉体、Fe(鉄)の粉体、Ag(銀)の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造のアロイ薄板電極15である。この電極10は、金属粉体混合物16の全重量に対するCuの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物16の全重量に対するFeの粉体重量比が46%、金属粉体混合物 8の全重量に対するAgの粉体重量比が6%である。Cuの融点が1084.5℃、Feの融点が1536℃、Agの融点が961.93℃であるから、Agの粉体が溶融し、溶融したAgがバインダーとなってCuの粉体とFeの粉体とを接合している。
【0087】
Cuの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型された電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池20や水素ガス発生装置29等の燃料極20、陽極30(アノード)または空気極21、陰極31(カソード)として好適に使用することができる。
【0088】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、それがCuの粉体と各種の遷移金属から選択されたCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の燃料極20、陽極30や空気極21、陰極31を廉価に作ることができる。Cuを主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極の電気抵抗が低く、電極をプロトンがスムースに移動することができ、電極10を燃料電池20に使用することで、燃料電池20において十分な電気を発電することができ、燃料電池20に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極10を水素ガス発生装置29に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置29において十分な水素ガスを発生させることができる。
【0089】
図10は、電極10の製造方法を説明する図である。電極10は、図10に示すように、遷移金属選択工程S1、金属粉体混合物作成工程S2、金属薄板作成工程S3、ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程S4を有する電極製造方法によって製造される。遷移金属選択工程S1では、各種の遷移金属36から選択する少なくとも3種類の遷移金属36の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属36の中から少なくとも3種類の遷移金属36(Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ag(銀))を選択する。
【0090】
遷移金属選択工程S1において、既述のように、Ni(ニッケル)を主成分とした電極10では、Cu(銅)およびZN(亜鉛)を選択し、または、Mn(マンガン)およびMo(モリブデン)を選択する。Fe(鉄)を主成分とした電極10では、Ni(ニッケル)およびCu(銅)を選択し、または、Ti(チタン)およびAg(銀)を選択する。Cu(銅)を主成分とした電極10では、Fe(鉄)およびZn(亜鉛)を選択し、または、Fe(鉄)およびAg(銀)を選択する。
【0091】
金属粉体混合物作成工程S2では、遷移金属選択工程S1によって選択された少なくとも3種類の遷移金属36の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を作る。金属粉体混合物作成工程S2において、Ni(ニッケル)を主成分とした電極10では、遷移金属選択工程S1によって選択されたNi、Cu(銅)、ZN(亜鉛)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してNiの粉体、Cuの粉体、Znの粉体を作成する。次に、Niの粉体やCuの粉体、Znの粉体を混合機に投入して混合機によってNiの粉体、Cuの粉体、Znの粉体を攪拌・混合し、Niの粉体、Cuの粉体、Znの粉体が均一に混合・分散した金属粉体混合物16を作る。または、遷移金属選択工程S1によって選択されたNi(ニッケル)、Mn(マンガン)、Mo(モリブデン)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してNiの粉体、Mnの粉体、Moの粉体を作成する。次に、Niの粉体やMnの粉体、Moの粉体を混合機に投入して混合機によってNiの粉体、Mnの粉体、Moの粉体を攪拌・混合し、Niの粉体、Mnの粉体、Moの粉体が均一に混合・分散した金属粉体混合物16を作る。
【0092】
金属粉体混合物作成工程S2において、Fe(鉄)を主成分とした電極10では、遷移金属選択工程S1によって選択されたFe、Ni(ニッケル)、Cu(銅)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してFeの粉体、Niの粉体、Cuの粉体を作成する。次に、Feの粉体やNiの粉体、Cuの粉体を混合機に投入して混合機によってFeの粉体、Niの粉体、Cuの粉体を攪拌・混合し、Feの粉体、Niの粉体、Cuの粉体が均一に混合・分散した金属粉体混合物16を作る。または、遷移金属選択工程S1によって選択されたFe(鉄)、Ti(チタン)、Ag(銀)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してFeの粉体、Tiの粉体、Agの粉体を作成する。次に、Feの粉体やTiの粉体、Agの粉体を混合機に投入して混合機によってFeの粉体、Tiの粉体、Agの粉体を攪拌・混合し、Feの粉体、Tiの粉体、Agの粉体が均一に混合・分散した金属粉体混合物16を作る。
【0093】
金属粉体混合物作成工程S2において、Cu(銅)を主成分とした電極10では、遷移金属選択工程S1によって選択されたCu、Fe(鉄)、Zn(亜鉛)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してCuの粉体、Feの粉体、Znの粉体を作成する。次に、Cuの粉体やFeの粉体、Znの粉体を混合機に投入して混合機によってCuの粉体、Feの粉体、Znの粉体を攪拌・混合し、Cuの粉体、Feの粉体、Znの粉体が均一に混合・分散した金属粉体混合物16を作る。または、遷移金属選択工程S1によって選択されたCu(銅)、Fe(鉄)、Ag(銀)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してCuの粉体、Feの粉体、Agの粉体を作成する。次に、Cuの粉体やFeの粉体、Agの粉体を混合機に投入して混合機によってCuの粉体、Feの粉体、Agの粉体を攪拌・混合し、Cuの粉体、Feの粉体、Agの粉体が均一に混合・分散した金属粉体混合物16を作る。
【0094】
金属薄板作成工程S3では、金属粉体混合物作成工程S2によって作られた金属粉体混合物16を所定圧力で加圧し、金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮した金属薄板11を作る。金属薄板作成工程S3では、金属粉体混合物16を金型に入れ、金型をプレス機によって加圧(プレス)するプレス加工によって金属薄板11を作る。プレス加工時におけるプレス圧(圧力)は、500Mpa〜800Mpaの範囲にある。プレス圧(圧力)が500Mpa未満では、金属薄板11に形成される流路14(通路孔)の開口面積(開口径)が大きくなり、金属薄板11の厚み寸法を0.03mm〜0.3mmにしつつ開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を金属薄板11に形成することができない。プレス圧(圧力)が800Mpaを超過すると、金属薄板11に形成される流路14(通路孔)の開口面積(開口径)が必要以上に小さくなり、金属薄板11の厚み寸法を0.03mm〜0.3mmにしつつ開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を金属薄板11に形成することができない。電極製造方法は、金属粉体混合物16を前記範囲の圧力で加圧(圧縮)することで、金属薄板11の厚み寸法を0.03mm〜0.3mmにしつつ開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成した金属薄板11を作ることができる。
【0095】
金属薄板作成工程S3において、Ni(ニッケル)を主成分とした電極10では、Niの粉体、Cu(銅)の粉体、ZN(亜鉛)粉体を混合した金属粉体混合物16の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物16をプレス加工によって加圧(圧縮)して金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、厚み寸法が0.03mm〜0.3mmであって開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成した金属薄板11を作る。または、Niの粉体、Mn(マンガン)の粉体、Mo(モリブデン)の粉体を混合した金属粉体混合物16の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物16をプレス加工によって加圧(圧縮)して金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、厚み寸法が0.03mm〜0.3mmであって開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成した金属薄板11を作る。
【0096】
金属薄板作成工程S3において、Fe(鉄)を主成分とした電極10では、Feの粉体、Ni(ニッケル)の粉体、Cu(銅)の粉体を混合した金属粉体混合物16の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物16をプレス加工によって加圧(圧縮)して金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、厚み寸法が0.03mm〜0.3mmであって開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成した金属薄板11を作る。または、Feの粉体、Ti(チタン)の粉体、Ag(銀)の粉体を混合した金属粉体混合物16の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物16をプレス加工によって加圧(圧縮)して金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、厚み寸法が0.03mm〜0.3mmであって開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成した金属薄板11を作る。
【0097】
金属薄板作成工程S3において、Cu(銅)を主成分とした電極10では、Cuの粉体、Fe(鉄)の粉体、Zn(亜鉛)の粉体を混合した金属粉体混合物16の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物16をプレス加工によって加圧(圧縮)して金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、厚み寸法が0.03mm〜0.3mmであって開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成した金属薄板11を作る。または、Cuの粉体、Fe(鉄)の粉体、Ag(銀)の粉体を混合した金属粉体混合物16の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物16をプレス加工によって加圧(圧縮)して金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、厚み寸法が0.03mm〜0.3mmであって開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成した金属薄板11を作る。
【0098】
ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程S4では、金属薄板作成工程S3によって作られた金属薄板11を炉(電気炉)に投入し、金属薄板11を炉において所定温度で焼成(焼結)して多数の微細な流路14(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極15(電極10)を作る。ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程S4では、遷移金属選択工程S3によって選択された少なくとも3種類の遷移金属36のうちの融点が最も低い遷移金属36の粉体を溶融させる温度で金属薄板11を長時間焼成する。焼成(焼結)時間は、3時間〜6時間である。ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程S4では、所定面積の薄板状に圧縮した金属薄板11(金属粉体混合物16)の焼成時において、最も融点の低い遷移金属36の粉体が溶融し、溶融した遷移金属36をバインダーとして他の遷移金属36の粉体を接合(固着)する。
【0099】
ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程S4において、Ni(ニッケル)を主成分とした電極10では、Niの粉体、Cu(銅)の粉体、ZN(亜鉛)粉体を混合した金属粉体混合物16を圧縮した金属薄板11を炉(電気炉)において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極15(電極10)を作る。Niの粉体、Cuの粉体、Znの粉体から形成された金属薄板11では、Znの粉体を溶融させる温度(例えば、500℃〜800℃)で金属薄板11を焼成し、溶融したZnの粉体によってNiの粉体とCuの粉体とが接合(固着)される。
【0100】
また、Ni(ニッケル)を主成分とした電極10では、Niの粉体、Mn(マンガン)の粉体、Mo(モリブデン)の粉体を混合した金属粉体混合物16を圧縮した金属薄板11を炉(電気炉)において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極15(電極10)を作る。Niの粉体、Mnの粉体、Moの粉体から形成された金属薄板11では、Mnの粉体を溶融させる温度(例えば、1200℃〜1400℃)で金属薄板11を焼成し、溶融したMnの粉体によってMnの粉体とMoの粉体とが接合(固着)される。
【0101】
ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程S4において、Fe(鉄)を主成分とした電極10では、Feの粉体、Ni(ニッケル)の粉体、Cu(銅)の粉体を混合した金属粉体混合物16を圧縮した金属薄板11を炉(電気炉)において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極15(電極10)を作る。Feの粉体、Niの粉体、Cuの粉体から形成された金属薄板11では、Cuの粉体を溶融させる温度(例えば、1100℃〜1300℃)で金属薄板11を焼成し、溶融したCuの粉体によってFeの粉体とNiの粉体とが接合(固着)される。
【0102】
また、Fe(鉄)を主成分とした電極10では、Feの粉体、Ti(チタン)の粉体、Ag(銀)の粉体を混合した金属粉体混合物16を圧縮した金属薄板11を炉(電気炉)において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極15(電極10)を作る。Feの粉体、Tiの粉体、Agの粉体から形成された金属薄板11では、Agの粉体を溶融させる温度(例えば、1000℃〜1200℃)で金属薄板11を焼成し、溶融したAgの粉体によってFeの粉体とTiの粉体とが接合(固着)される。
【0103】
ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程S4において、Cu(銅)を主成分とした電極10では、Cuの粉体、Fe(鉄)の粉体、Zn(亜鉛)の粉体を混合した金属粉体混合物16を圧縮した金属薄板11を炉(電気炉)において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極15(電極10)を作る。Cuの粉体、Feの粉体、Znの粉体から形成された金属薄板11では、Znの粉体を溶融させる温度(例えば、500℃〜800℃)で金属薄板11を焼成し、溶融したZnの粉体によってCuの粉体とFeの粉体とが接合(固着)される。
【0104】
また、Cu(銅)を主成分とした電極10では、Cuの粉体、Fe(鉄)の粉体、Ag(銀)の粉体を混合した金属粉体混合物16を圧縮した金属薄板11を炉(電気炉)において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極15(電極10)を作る。Cuの粉体、Feの粉体、Agの粉体から形成された金属薄板11では、Agの粉体を溶融させる温度(例えば、1000℃〜1100℃)で金属薄板11を焼成し、溶融したAgの粉体によってCuの粉体とFeの粉体とが接合(固着)される。
【0105】
電極製造方法は、遷移金属選択工程S1や金属粉体混合物作成工程S2、金属薄板作成工程S3、ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程S4によって厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲であって多数の微細な流路14(通路孔)を形成した電極10を作ることができ、白金族元素を利用しない非白金の燃料極20、陽極30や空気極21、陰極31を廉価に作ることができるとともに、触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有して燃料極20、陽極30や空気極21、陰極31として使用することが可能な非白金の電極10を作ることができる。
【0106】
電極製造方法は、厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲であって多数の微細な流路14(通路孔)を形成した電極10を作ることができるから、電極10の電気抵抗を低くすることができるとともに、電極10をプロトンがスムースに移動することができ、燃料電池20において十分な電気を発電することが可能であって燃料電池20に接続された負荷28に十分な電気エネルギーを供給することが可能な電極10を作ることができる。電極製造方法は、水素ガス発生装置29において電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置29において十分な水素ガスを発生させることが可能な電極10を作ることができる。
【符号の説明】
【0107】
10 電極
11 金属薄板
12 前面
13 後面
14 流路(通路孔)
15 ポーラス構造のアロイ薄板電極
16 金属粉体混合物
17 通流口
18 外周縁
19 セル
20 燃料電池
21 燃料極
22 空気極
23 固体高分子電解質膜
24a,b セパレータ(バイポーラプレート)
25a,b ガス拡散層
26a,b ガスシール
27 導線
28 負荷
29 水素ガス発生装置
30 陽極
31 陰極
32 固体高分子電解質膜
33a 陽極給電部材
33b 陰極給電部材
34a 陽極用貯水槽
34b 陰極用貯水槽
35a 陽極主電極
35b 陰極主電極
36 遷移金属
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2019年6月18日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極または陰極として使用する電極に関する。
【背景技術】
【0002】
低沸点金属である亜鉛を含む多孔性金属錯体(PCP/MOF)を焼成した窒素ドープカーボンに白金を担持させた白金触媒を含む燃料電池電極が開示されている(特許文献1参照)。この燃料電池電極は、低沸点金属である亜鉛を含む多孔性金属錯体(PCP/MOF)を製造原料として用いるため、原料由来の金属をほとんど含まず、大きな比表面積を有するNDCである触媒担持体を得ることができ、少量の白金担持により高活性な白金触媒を得ることができる。さらに、製造原料である多孔性金属錯体(PCP/MOF)由来の金属が含まれていないため、焼成条件を自由に設定できる。すなわち、原料として用いる多孔性金属錯体(PCP/MOF)の有機化合物リンカーの変更や焼成温度の調節により、得られるNDC中の含窒素量や結晶化度をコントロールすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−23929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体高分子形燃料電池の電極触媒として各種の白金担持カーボンが広く利用されている。しかし、白金族元素は、貴金属であり、その生産量に限りがある希少な資源であることから、その使用量を抑えることが求められている。さらに、今後の固体高分子形燃料電池の普及に向けて高価な白金以外の金属を利用した非白金触媒を有する廉価な電極の開発が求められている。
【0005】
本発明の目的は、白金族元素を利用することなく、廉価に作ることができ、触媒活性(触媒作用)を有して陽極または陰極として使用することが可能な電極を提供することにある。本発明の他の目的は、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、水素ガス発生装置において電気分解を効率よく行うことができ、十分な水素ガスを発生させることができる電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の前提は、アノードまたはカソードとして使用する電極である。
【0007】
前記前提における本発明の特徴は、電極が、各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属から形成され、選択された少なくとも3種類のそれら遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極であり、ポーラス構造のアロイ薄板電極の厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあり、ポーラス構造のアロイ薄板電極では、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されていることにある。
【0008】
本発明の一例としては、ポーラス構造のアロイ薄板電極が、Niの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、ポーラス構造のアロイ薄板電極では、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。
【0009】
本発明の他の一例としては、Niの粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜50%の範囲、Niの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある。
【0010】
本発明の他の一例としては、ポーラス構造のアロイ薄板電極が、Feの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、ポーラス構造のアロイ薄板電極では、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。
【0011】
本発明の他の一例としては、Feの粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜50%の範囲、Feの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある。
【0012】
本発明の他の一例としては、ポーラス構造のアロイ薄板電極が、Cuの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、ポーラス構造のアロイ薄板電極では、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。
【0013】
本発明の他の一例としては、Cuの粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜50%の範囲、Cuの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある。
【0014】
本発明の他の一例としては、ポーラス構造のアロイ薄板電極の空隙率が、15%〜30%の範囲にある。
【0015】
本発明の他の一例としては、ポーラス構造のアロイ薄板電極の密度が、5.0g/cm〜7.0g/cmの範囲にある。
【0016】
本発明の他の一例としては、遷移金属の粉体の粒径が、10μm〜200μmの範囲にある。
【0017】
本発明の他の一例として、ポーラス構造のアロイ薄板電極では、所定面積の薄板状に圧縮した金属粉体混合物の焼成時に最も融点の低い遷移金属の粉体が溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとして他の遷移金属の粉体が接合されている。
【0018】
本発明の他の一例としては、バインダーとなる遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある。
【0019】
本発明の他の一例としては、電極が、各種の遷移金属から選択する少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属を選択する遷移金属選択工程と、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を作る金属粉体混合物作成工程と、金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を所定圧力で加圧して金属薄板を作る金属薄板作成工程と、金属薄板作成工程によって作られた金属薄板を所定温度で焼成して多数の微細な流路を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極を作るポーラス構造アロイ薄板電極作成工程とによって製造されている。
【0020】
本発明の他の一例としては、金属粉体混合物作成工程が、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属を10μm〜200μmの粒径に微粉砕する。
【0021】
本発明の他の一例としては、金属薄板作成工程が、金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を500Mpa〜800Mpaの圧力で加圧し、0.03mm〜0.3mmの厚み寸法を有して多数の微細な流路を形成した金属薄板を作る。
【0022】
本発明の他の一例としては、ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程が、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属のうちの融点が最も低い遷移金属の粉体を溶融させる温度で金属薄板を焼成する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る電極によれば、それが各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属から形成され、選択された少なくとも3種類のそれら遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極であり、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されているから、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池や水素ガス発生装置等の陽極または陰極として好適に使用することができる。電極は、それが各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属から形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の陽極または陰極を廉価に作ることができる。電極は、ポーラス構造のアロイ薄板電極の厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極の電気抵抗が低く、電極をプロトンがスムースに移動することができ、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、十分な水素ガスを発生させることができる。
【0024】
ポーラス構造のアロイ薄板電極がNiの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている電極は、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池や水素ガス発生装置等の陽極または陰極として好適に使用することができる。電極は、それがNiの粉体と各種の遷移金属から選択されたNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の陽極または陰極を廉価に作ることができる。電極は、Niを主成分としたポーラス構造のアロイ薄板電極の厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極の電気抵抗が低く、電極をプロトンがスムースに移動することができ、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、十分な水素ガスを発生させることができる。
【0025】
Niの粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が30%〜50%の範囲、Niの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある電極は、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているとともに、Niの粉体の重量比やNiの粉体を除く少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比、Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比を前記範囲にすることで、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、電気分解装置や燃料電池等の陽極または陰極として好適に使用することができる。電極は、前記重量比のNiの粉体と各種の遷移金属から選択されたNiを除く前記重量比の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の陽極または陰極を廉価に作ることができる。
【0026】
ポーラス構造のアロイ薄板電極がFeの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている電極は、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池や水素ガス発生装置等の陽極または陰極として好適に使用することができる。電極は、それがFeの粉体と各種の遷移金属から選択されたFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の陽極または陰極を廉価に作ることができる。電極は、Feを主成分としたポーラス構造のアロイ薄板電極の厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極の電気抵抗が低く、電極をプロトンがスムースに移動することができ、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、十分な水素ガスを発生させることができる。
【0027】
Feの粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が30%〜50%の範囲、Feの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある電極は、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているとともに、Feの粉体の重量比やFeの粉体を除く少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比、Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比を前記範囲にすることで、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池や水素ガス発生装置等の陽極または陰極として好適に使用することができる。電極は、前記重量比のFeの粉体と各種の遷移金属から選択されたFeを除く前記重量比の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の陽極または陰極を廉価に作ることができる。
【0028】
ポーラス構造のアロイ薄板電極がCuの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている電極は、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池や水素ガス発生装置等の陽極または陰極として好適に使用することができる。電極は、それがCuの粉体と各種の遷移金属から選択されたCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の陽極または陰極を廉価に作ることができる。電極は、Cuを主成分としたポーラス構造のアロイ薄板電極の厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極の電気抵抗が低く、電極をプロトンがスムースに移動することができ、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、十分な水素ガスを発生させることができる。
【0029】
Cuの粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が30%〜50%の範囲、Cuの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある電極は、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているとともに、Cuの粉体の重量比やCuの粉体を除く少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比、Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比を前記範囲にすることで、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池や水素ガス発生装置等の陽極または陰極として好適に使用することができる。電極は、前記重量比のCuの粉体と各種の遷移金属から選択されたCuを除く前記重量比の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の陽極または陰極を廉価に作ることができる。
【0030】
ポーラス構造のアロイ薄板電極の空隙率が15%〜30%の範囲にある電極は、アロイ薄板電極の空隙率を前記範囲にすることで、ポーラス構造のアロイ薄板電極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成型され、アロイ薄板電極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を気体や液体が通流しつつ気体や液体をアロイ薄板電極の接触面に広く接触させることが可能となり、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮することができる。電極は、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極または陰極として好適に使用することができる。
【0031】
ポーラス構造のアロイ薄板電極の密度が5.0g/cm〜7.0g/cmの範囲にある電極は、アロイ薄板電極の密度を前記範囲にすることで、ポーラス構造のアロイ薄板電極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成型され、アロイ薄板電極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を気体や液体が通流しつつ気体や液体をアロイ薄板電極の接触面に広く接触させることが可能となり、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮することができる。電極は、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極または陰極として好適に使用することができる。
【0032】
遷移金属の粉体の粒径が10μm〜200μmの範囲にある電極は、遷移金属の粒径を前記範囲にすることで、ポーラス構造のアロイ薄板電極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成型され、アロイ薄板電極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を気体や液体が通流しつつ気体や液体をアロイ薄板電極の接触面に広く接触させることが可能となり、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮することができる。電極は、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極または陰極として好適に使用することができる。
【0033】
所定面積の薄板状に圧縮した金属粉体混合物の焼成時に最も融点の低い遷移金属の粉体が溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとして他の遷移金属の粉体が接合されている電極は、最も融点の低い粉状の金属をバインダーとして他の粉状の金属を接合することで、電極が高い強度を有してその形状を維持することができ、電極に衝撃が加えられたときの電極の破損や損壊を防ぐことができる。電極は、その形状を維持することができるから、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極または陰極として好適に使用することができる。
【0034】
バインダーとなる遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある電極は、バインダーとなる遷移金属の粉体の重量比を前記範囲にすることで、バインダーとなる遷移金属が溶融したとしても、ポーラス構造のアロイ薄板電極の微細な流路(通路孔)が塞がれることはなく、アロイ薄板電極の多孔質構造を維持することができ、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極または陰極として好適に使用することができる。
【0035】
各種の遷移金属から選択する少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属を選択する遷移金属選択工程と、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を作る金属粉体混合物作成工程と、金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を所定圧力で加圧して金属薄板を作る金属薄板作成工程と、金属薄板作成工程によって作られた金属薄板を所定温度で焼成して多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極を作るポーラス構造アロイ薄板電極作成工程とによって製造されている電極は、遷移金属選択工程や金属粉体混合物作成工程、金属薄板作成工程、ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程によって白金族元素を利用しない非白金の電極を廉価に作ることができ、触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有して陽極または陰極として使用することが可能な非白金の電極を作ることができる。
【0036】
金属粉体混合物作成工程が遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属を10μm〜200μmの粒径に微粉砕する電極は、遷移金属を前記範囲の粒径に微粉砕することで、多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成型されて比表面積が大きいポーラス構造のアロイ薄板電極を作ることができ、それら流路を気体や液体が通流しつつ気体や液体をアロイ薄板電極の接触面に広く接触させることが可能となり、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮することが可能な電極を作ることができる。電極は、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有して陽極または陰極として使用することが可能な非白金のポーラス構造のアロイ薄板電極を作ることができる。
【0037】
金属薄板作成工程が金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を500Mpa〜800Mpaの圧力で加圧し、0.03mm〜0.3mmの厚み寸法を有して多数の微細な流路を形成した金属薄板を作る電極は、金属粉体混合物を前記範囲の圧力で加圧(圧縮)することで、厚み寸法が0.03mm〜0.3mmであって多数の微細な流路(通路孔)を有する金属薄板を作ることができ、白金族元素を利用しない非白金のポーラス構造のアロイ薄板電極を廉価に作ることができる。電極は、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有して陽極または陰極として使用することが可能な非白金のポーラス構造のアロイ薄板電極を作ることができる。電極は、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲であって多数の微細な流路(通路孔)を形成することで、電極の電気抵抗を低くすることができるとともに、電極をプロトンがスムースに移動することができ、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することが可能な電極を作ることができる。電極は、それを水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、十分な水素ガスを発生させることが可能な電極を作ることができる。
【0038】
ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程が遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属のうちの融点が最も低い遷移金属の粉体を溶融させる温度で金属薄板を焼成する電極は、最も融点の低い遷移金属の粉体をバインダーとして他の遷移金属の粉体を接合することで、電極が高い強度を有してその形状を維持することができ、不用意な破損や損壊を防ぐことが可能な電極を作ることができる。電極は、その形状を維持することができるから、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極または陰極として好適に使用することが可能な電極を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】一例として示す電極の斜視図。
図2】電極の一例として示す部分拡大正面図。
図3】電極の他の一例として示す部分拡大正面図。
図4】電極を使用したセルの一例を示す分解斜視図。
図5】電極を使用したセルの側面図。
図6】電極を使用した燃料電池(固体高分子形燃料電池)の発電を説明する図。
図7】電極の起電圧試験の結果を示す図。
図8】電極のI−V特性試験の結果を示す図。
図9】電極を使用した水素ガス発生装置の電気分解を説明する図。
図10】電極10の製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
一例として示す電極10の斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る電極の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、電極10の一例として示す部分拡大正面図であり、図3は、電極10の他の一例として示す部分拡大正面図である。図1では、厚み方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示す。
【0041】
電極10は、陽極(アノード)または陰極(カソード)として使用され、燃料電池20の電極(触媒)(図6参照)や水素ガス発生装置29の電極(触媒)(図9参照)として利用される。電極10は、前面12および後面13を有するとともに、所定の面積および所定の厚み寸法L1を有し、その平面形状が円形に成型されている。電極10は、多数の微細な流路14(通路孔)を有するポーラス構造のアロイ薄板電極15である。流路14には、気体または液体が通流する。なお、電極10の平面形状に特に制限はなく、円形の他に、他のあらゆる平面形状に成型することができる。
【0042】
電極10は、粉状に加工された遷移金属の中から選択された少なくとも3種類の遷移金属から形成されている。遷移金属としては、3d遷移金属や4d遷移金属が使用される。3d遷移金属には、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)が使用される。4d遷移金属には、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ag(銀)が使用される。
【0043】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)では、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数(物質から電子を取り出すのに必要なエネルギー)の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されている。Tiの仕事関数は、4.14(eV)、Crの仕事関数は、4.5(eV)、Mnの仕事関数は、4.1(eV)、Feの仕事関数は、4.67(eV)、Coの仕事関数は、5.0(eV)、Niの仕事関数は、5.22(eV)、Cuの仕事関数は、5.10(eV)、Znの仕事関数は、3.63(eV)、Nbの仕事関数は、4.01(eV)、Moの仕事関数は、4.45(eV)、Agの仕事関数は、4.31(eV)である。なお、白金の仕事関数は、5.65(eV)である。
【0044】
電極10は、各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類のそれら遷移金属の粉体(粉状に加工されたTi(チタン)、粉状に加工されたCr(クロム)、粉状に加工されたMn(マンガン)、粉状に加工されたFe(鉄)、粉状に加工されたCo(コバルト)、粉状に加工されたNi(ニッケル)、粉状に加工されたCu(銅)、粉状に加工されたZn(亜鉛)、粉状に加工されたNb(ニオブ)、粉状に加工されたMo(モリブデン)、粉状に加工されたAg(銀))を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮して金属薄板11とし、その金属薄板11を焼成することから作られている(図10参照)。電極10には、径が異なる多数の微細な流路14(通路孔)が形成されている。電極10は、多数の微細な流路14(通路孔)が形成されているから、その比表面積が大きい。
【0045】
それら流路14(通路孔)は、前面12に開口する複数の通流口17と後面13に開口する複数の通流口17とを有し、電極10の前面12から後面13に向かって電極10を貫通している。それら流路14は、電極10の前面12と後面13との間において電極10の厚み方向へ不規則に曲折しながら延びているとともに、電極10の外周縁18から中心に向かって電極10の径方向へ不規則に曲折しながら延びている。径方向へ隣接して厚み方向へ曲折して延びるそれら流路14は、径方向において部分的につながり、一方の流路14と他方の流路14とが互いに連通している。厚み方向へ隣接して径方向へ曲折して延びるそれら流路14は、厚み方向において部分的につながり、一方の流路14と他方の流路14とが互いに連通している。
【0046】
それら流路14(通路孔)の開口面積(開口径)は、厚み方向に向かって一様ではなく、厚み方向に向かって不規則に変化しているとともに、径方向に向かって一様ではなく、径方向に向かって不規則に変化している。それら流路14は、その開口面積(開口径)が大きくなったり、小さくなったりしながら厚み方向と径方向とへ不規則に開口している。また、前面12に開口する通流口17と後面13に開口する通流口17とは、その開口面積(開口径)が一様ではなく、その面積が相違している。それら流路14(通路孔)の開口径や前後面12,13の通流口17の開口径は、1μm〜100μmの範囲にある。
【0047】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲にある。電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の厚み寸法L1が0.03mm未満では、その強度が低下し、衝撃が加えられたときに電極10が容易に破損または損壊し、その形状を維持することができない場合がある。電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の厚み寸法L1が0.3mmを超過すると、電極10の電気抵抗が大きくなり、電極10をプロトンがスムースに移動することができず、電極10が燃料電池20に使用されたときに燃料電池20において十分な電気を発電することができず、燃料電池20に接続された負荷28に十分な電気エネルギーを供給することができない。また、電極10が水素ガス発生装置29に使用されたときに電気分解を効率よく行うことができず、水素ガス発生装置29において十分な水素ガスを発生させることができない。
【0048】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極)は、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極10が高い強度を有してその形状を維持することができ、電極10に衝撃が加えられたときの電極10の破損や損壊を防ぐことができる。さらに、電極10の電気抵抗が低く、電極10をプロトンがスムースに移動することができ、電極10を燃料電池20に使用することで、燃料電池20において十分な電気を発電することができ、燃料電池20に接続された負荷28に十分な電気エネルギーを供給することができる。また、電極10を水素ガス発生装置29に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置29において十分な水素ガスを発生させることができる。
【0049】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その空隙率が15%〜30%の範囲、好ましくは、20%〜25%の範囲にあり、その相対密度が70%〜85%の範囲、好ましくは、75%〜80%の範囲にある。電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の空隙率が15%未満であって相対密度が85%を超過すると、電極10に多数の微細な流路14(通路孔)が形成されず、電極10の比表面積を大きくすることができない。電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の空隙率が30%を超過し、相対密度が70%未満では、流路14(通路孔)の開口面積(開口径)や前後面12,13の通流口17の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、電極10の強度が低下し、衝撃が加えられたときに電極10が容易に破損または損壊し、その形状を維持することができない場合がある。
【0050】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その空隙率および相対密度が前記範囲にあるから、電極10が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路14(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面12,13の通流口17を有する多孔質に成型され、電極10の比表面積を大きくすることができ、それら流路14(通路孔)を気体や液体が通流しつつ気体や液体を電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の接触面に広く接触させることができる。
【0051】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その密度が5.0g/cm〜7.0g/cmの範囲、好ましくは、5.5g/cm〜6.5g/cmの範囲にある。電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の密度が5.0g/cm未満では、電極10の強度が低下し、衝撃が加えられたときに電極10が容易に破損または損壊し、その形状を維持することができない場合がある。電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の密度が7.0g/cmを超過すると、電極10に多数の微細な流路14(通路孔)が形成されず、電極10の比表面積を大きくすることができない。
【0052】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その密度が前記範囲にあるから、電極10が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路14(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面12,13の通流口17を有する多孔質に成型され、電極10の比表面積を大きくすることができ、それら流路14(通路孔)を気体や液体が通流しつつ気体や液体を電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の接触面に広く接触させることができる。
【0053】
Tiの粉体(粉状に加工されたTi)やCrの粉体(粉状に加工されたCr)、Mnの粉体(粉状に加工されたMn)、Feの粉体(粉状に加工されたFe)、Coの粉体(粉状に加工されたCo)、Niの粉体(粉状に加工されたNi)、Cuの粉体(粉状に加工されたCu)、Znの粉体(粉状に加工されたZn)、Nbの粉体(粉状に加工されたNb)、Moの粉体(粉状に加工されたMo)、Agの粉体(粉状に加工されたAg)の粒径は、10μm〜200μmの範囲にある。
【0054】
それら遷移金属の粉体の粒径が10μm未満では、遷移金属によって流路14(通路孔)が塞がれ、電極10に多数の微細な流路14を形成することができず、電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の比表面積を大きくすることができない。それら遷移金属の粉体の粒径が200μmを超過すると、流路14(通路孔)の開口面積(開口径)や前後面12,13の通流口17の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)に多数の微細な流路14を形成することができず、電極10の比表面積を大きくすることができない。
【0055】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、それら遷移金属の粉体の粒径が前記範囲にあるから、電極10が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路14(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面12,13の通流口17を有する多孔質に成型され、電極10の比表面積を大きくすることができ、それら流路14を気体や液体が通流しつつ気体や液体を電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)の接触面に広く接触させることができる。
【0056】
図4は、電極10を使用したセル19の一例を示す分解斜視図であり、図5は、電極10を使用したセル19の側面図である。図6は、電極10を使用した燃料電池20(固体高分子形燃料電池)の発電を説明する図であり、図7は、電極10の起電圧試験の結果を示す図である。図8は、電極10のI−V特性試験の結果を示す図である。
【0057】
電極10を使用したセル19の一例としては、図4に示すように、電極10を使用した燃料極21(アノード)と、電極10を使用した空気極22(カソード)と、燃料極21および空気極22の間に介在する固体高分子電解質膜23(フッ素系イオン交換膜)と、燃料極21の厚み方向外側に位置するセパレータ24a(バイポーラプレート)と、空気極22の厚み方向外側に位置するセパレータ24b(バイポーラプレート)とから形成されている。それらセパレータ24a,24bには、反応ガス(水素や酸素等)の供給流路が刻設されている(彫り込まれている)。
【0058】
セル19では、図5に示すように、燃料極21や空気極22、固体高分子電解質膜23が厚み方向へ重なり合って一体化し、膜/電極接合体 (Membrane Electrode Assembly, MEA)を構成し、膜/電極接合体をそれらセパレータ24a,24bが挟み込んでいる。燃料電池20(固体高分子形燃料電池)では、複数のセル19(単セル)が一方向へ重なり合って直列につながれてセルスタック(燃料電池スタック)を形成する。固体高分子電解質膜23は、プロトン導電性があり、電子導電性がない。
【0059】
燃料極21とセパレータ24aとの間には、ガス拡散層25aが形成され、空気極22とセパレータ24bとの間には、ガス拡散層25bが形成されている。燃料極21とセパレータ24aとの間であってガス拡散層25の上部および下部には、ガスシール26aが設置されている。空気極22とセパレータ24bとの間であってガス拡散層25bの上部および下部には、ガスシール26bが設置されている。
【0060】
燃料電池20(固体高分子形燃料電池)では、図6に示すように、燃料極21(電極10)に水素(燃料)が供給され、空気極22(電極10)に空気(酸素)が供給される。燃料極21(電極10)では、水素がH→2H+2eの反応(触媒作用)によってプロトン(水素イオン、H)と電子とに分解される。その後、プロトンが固体高分子電解質膜23内を通って空気極22(電極10)へ移動し、電子が導線27内を通って空気極22へ移動する。固体高分子電解質膜23には、燃料極21で生成されたプロトンが通流する。空気極22(電極10)では、固体高分子電解質膜23から移動したプロトンと導線27を移動した電子とが空気中の酸素と反応し、4H+O+4e→2HOの反応によって水が生成される。少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属の中から選択された少なくとも3種類の遷移金属から燃料極21(電極10)や空気極22(電極10)が形成されているから、燃料極21や空気極22が優れた触媒活性(触媒作用)を示し、水素がプロトンと電子とに効率よく分解される。
【0061】
起電圧試験では、水素ガスを注入してから15分の間、燃料極21(電極10)や空気極22(電極10)との間の電圧(V)を測定した。図7の起電圧試験の結果を示す図では、横軸に測定時間(min)を表し、縦軸に燃料極21(電極10)や空気極22(電極10)との間の電圧(V)を表す。白金を利用した(担持させた)電極(白金電極)を使用した燃料電池では、図7の起電圧試験の結果を示す図に示すように、電極間の電圧が1.079(V)前後であったのに対し、電極10(非白金電極)を使用した燃料電池20では、燃料極21(電極10)や空気極22(電極10)との間の電圧(起電力)が1.01(V)〜1.02(V)であった。
【0062】
I−V特性試験では、燃料極21(電極10)や空気極22(電極10)との間に負荷を接続し、電圧と電流との関係を測定した。図8のI−V特性試験の結果を示す図では、横軸に電流(A)を表し、縦軸に電圧(V)を表す。電極10(非白金電極)を使用した燃料電池では、図8のI−V特性試験の結果を示す図に示すように、白金を担持させた電極(白金電極)を使用した燃料電池の電圧降下率と大差のない結果が得られた。図7の起電圧試験の結果や図8のI−V特性試験の結果に示すように、白金族元素を利用していない非白金の電極10が、電子を放出させて水素イオンとなる反応を促進させる触媒作用を有するとともに、白金を利用した電極と略同様の酸素還元機能(触媒作用)を有することが確認された。
【0063】
電極10は、それが各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属から形成され、選択された少なくとも3種類のそれら遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路14(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極15であり、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されているから、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池20の燃料極21(アノード)や空気極22(カソード)として好適に使用することができる。
【0064】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、それが各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属から形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の燃料極21(アノード)や空気極22(カソード)を廉価に作ることができる。電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極10の電気抵抗が低く、電極10をプロトンがスムースに移動することができ、電極10を燃料電池20に使用することで、燃料電池20において十分な電気を発電することができ、燃料電池20に接続された負荷28に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0065】
図9は、電極10を使用した水素ガス発生装置29の電気分解を説明する図である。電極10を使用した水素ガス発生装置29の一例としては、図9に示すように、電極10を使用した陽極31(アノード)と、電極10を使用した陰極30(カソード)と、陽極31および陰極30の間に介在する固体高分子電解質膜32(フッ素系イオン交換膜)と、陽極給電部材33bおよび陰極給電部材33aと、陽極用貯水槽34bおよび陰極用貯水槽34aと、陽極主電極35bおよび陰極主電極35aとから形成されている。
【0066】
水素ガス発生装置29では、陽極31や陰極30、固体高分子電解質膜32が厚み方向へ重なり合って一体化し、膜/電極接合体 (Membrane Electrode Assembly, MEA)を構成し、膜/電極接合体を陽極給電部材33bと陰極給電部材33aとが挟み込んでいる。固体高分子電解質膜32は、プロトン導電性があり、電子導電性がない。陽極給電部材33bは、陽極31の外側に位置して陽極31に密着し、陽極31に+の電流を給電する。陽極用貯水槽34bは、陽極給電部材33bの外側に位置して陽極給電部材33bに密着している。陽極主電極35bは、陽極用貯水槽34bの外側に位置して陽極給電部材33bに+の電流を給電する。陰極給電部材33aは、陰極30の外側に位置して陰極30に密着し、陰極30に−の電流を給電する。陰極用貯水槽34aは、陰極給電部材33aの外側に位置して陰極給電部材33aに密着している。陰極主電極35aは、陰極用貯水槽34aの外側に位置して陰極給電部材33aに−の電流を給電する。
【0067】
水素ガス発生装置20では、図9に矢印で示すように、陽極用貯水槽34bおよび陰極用貯水槽34aに水(HO)が給水され、陽極主電極35bに電源から+の電流が給電されるとともに、陰極主電極35aに電源から−の電流が給電される。陽極主電極35bに給電された+の電流が陽極給電部材33bから陽極31(アノード)に給電され、陰極主電極35aに給電された−の電流が陰極給電部材33aから陰極30(カソード)に給電される。陽極31(電極10)では、2HO→4H+4e+Oの陽極反応(触媒作用)によって酸素が生成され、陰極30(電極10)では、4H+4e→2Hの陰極反応(触媒作用)によって酸素が生成される。プロトン(水素イオン:H)は、固体高分子電解質膜32内を通って陰極30(電極10)へ移動する。固体高分子電解質膜32には、陽極31で生成されたプロトンが通流する。少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属の中から選択された少なくとも3種類の遷移金属から陽極31(電極10)や陰極30(電極10)が形成されているから、陽極31や陰極30が優れた触媒活性(触媒作用)を示す。
【0068】
遷移金属から形成された電極10の一例としては、粉状に加工されたNi(ニッケル)の粉体を主成分とし、Niの粉体とNiを除く粉状に加工されたその他の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のFe(鉄)、粉状のCo(コバルト)、粉状のCu(銅)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも2種類)の粉体とを均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造金属薄板15である。
【0069】
Ni(ニッケル)の粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、多数の微細な流路14(通路孔)を有する多孔質の薄板状に成型され、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲にある。Niの粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。Niの粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)では、所定面積の薄板状に圧縮した金属粉体混合物16の焼成時に最も融点の低い遷移金属の粉体が溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとして他の遷移金属の粉体が接合されている。
【0070】
Ni(ニッケル)の粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)では、粉状に加工されたNiの金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が30%〜50%の範囲、Niを除く粉状に加工された少なくとも1種類の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のFe(鉄)、粉状のCo(コバルト)、粉状のCu(銅)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも1種類)の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Niを除く粉状に加工された少なくとも他の1種類の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のFe(鉄)、粉状のCo(コバルト)、粉状のCu(銅)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも他の1種類)の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある。なお、バインダーとなる遷移金属の粉体の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある。
【0071】
Ni(ニッケル)の粉体を主成分とした電極10の具体例としては、Niの粉体、Cu(銅)の粉体、ZN(亜鉛)の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造のアロイ薄板電極15である。この電極10は、金属粉体混合物16の全重量に対するNiの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物16の全重量に対するCuの粉体重量比が42%、金属粉体混合物16の全重量に対するZnの粉体重量比が10%である。Niの融点が1455℃、Cuの融点が1084.5℃、Znの融点が419.85℃であるから、Znの粉体が溶融し、溶融したZnがバインダーとなってNiの粉体とCuの粉体とを接合している。
【0072】
Ni(ニッケル)の粉体を主成分とした電極10の他の具体例としては、Niの粉体、Mn(マンガン)の粉体、Mo(モリブデン)の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造のアロイ薄板電極15である。この電極10は、金属粉体混合物16の全重量に対するNiの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物16の全重量に対するMnの粉体重量比が7%、金属粉体混合物16の全重量に対するMoの粉体重量比が45%である。Niの融点が1455℃、Mnの融点が1246℃、Moの融点が2623℃であるから、Mnの粉体が溶融し、溶融したMnがバインダーとなってNiの粉体とMoの粉体とを接合している。
【0073】
Ni(ニッケル)の粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型された電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池20や水素ガス発生装置29等の燃料極20、陽極31(アノード)または空気極21、陰極30(カソード)として好適に使用することができる。
【0074】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、それがNiの粉体と各種の遷移金属から選択されたNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の燃料極20、陽極31や空気極21、陰極30を廉価に作ることができる。Niを主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極10の電気抵抗が低く、電極10をプロトンがスムースに移動することができ、電極10を燃料電池20に使用することで、燃料電池20において十分な電気を発電することができ、燃料電池20に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極10を水素ガス発生装置29に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置29において十分な水素ガスを発生させることができる。
【0075】
遷移金属から形成された電極10の他の一例としては、粉状に加工されたFe(鉄)の粉体を主成分とし、Feの粉体とFeを除く粉状に加工されたその他の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のCo(コバルト)、粉状のNi(ニッケル)、粉状のCu(銅)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも2種類)の粉体とを均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造のアロイ薄板電極15である。
【0076】
Fe(鉄)の粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、多数の微細な流路14(通路孔)を有する多孔質の薄板状に成型され、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲にある。Feの粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。Feの粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)では、所定面積の薄板状に圧縮した金属粉体混合物16の焼成時に最も融点の低い遷移金属の粉体が溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとして他の遷移金属の粉体が接合されている。
【0077】
Fe(鉄)の粉体を主成分とした電極10では、粉状に加工されたFeの金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が30%〜50%の範囲、Feを除く粉状に加工された少なくとも1種類の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のCo(コバルト)、粉状のNi(ニッケル)、粉状のCu(銅)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも1種類)の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Feを除く粉状に加工された少なくとも他の1種類の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のCo(コバルト)、粉状のNi(ニッケル)、粉状のCu(銅)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも他の1種類)の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある。なお、バインダーとなる遷移金属の粉体の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある。
【0078】
Fe(鉄)の粉体を主成分とした電極10の具体例としては、Feの粉体、Ni(ニッケル)の粉体、Cu(銅)の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造のアロイ薄板電極15である。この電極10は、金属粉体混合物16の全重量に対するFeの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物16の全重量に対するNiの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物16の全重量に対するCuの粉体の重量比が4%である。Feの融点が1536℃、Niの融点が1455℃、Cuの融点が1084.5℃であるから、Cuの粉体が溶融し、溶融したCuがバインダーとなってFeの粉体とNiの粉体とを接合している。
【0079】
Fe(鉄)の粉体を主成分とした電極10の他の具体例としては、Feの粉体、Ti(チタン)の粉体、Ag(銀)の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造のアロイ薄板電極15である。この電極10は、金属粉体混合物16の全重量に対するFeの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物16の全重量に対するTiの粉体重量比が46%、金属粉体混合物16の全重量に対するAgの粉体重量比が6%である。Feの融点が1536℃、Tiの融点が1666℃、Agの融点が961.93℃であるから、Agの粉体が溶融し、溶融したAgがバインダーとなってFeの粉体とTiの粉体とを接合している。
【0080】
Feの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型された電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池20や水素ガス発生装置29等の燃料極20、陽極31(アノード)または空気極21、陰極30(カソード)として好適に使用することができる。
【0081】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、それがFeの粉体と各種の遷移金属から選択されたFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の燃料極20、陽極31や空気極21、陰極30を廉価に作ることができる。Feを主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極10の電気抵抗が低く、電極10をプロトンがスムースに移動することができ、電極10を燃料電池20に使用することで、燃料電池20において十分な電気を発電することができ、燃料電池20に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極10を水素ガス発生装置29に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置29において十分な水素ガスを発生させることができる。
【0082】
遷移金属から形成された電極10の他の一例としては、粉状に加工されたCu(銅)の粉体を主成分とし、Cuの粉体とCuを除く粉状に加工されたその他の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のFe(鉄)、粉状のCo(コバルト)、粉状のNi(ニッケル)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも2種類)の粉体とを均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造のアロイ薄板電極15である。
【0083】
Cu(銅)の粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、多数の微細な流路14(通路孔)を有する多孔質の薄板状に成型され、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲にある。Cuの粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。Cuの粉体を主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)では、所定面積の薄板状に圧縮した金属粉体混合物16の焼成時に最も融点の低い遷移金属の粉体が溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとして他の遷移金属の粉体が接合されている。
【0084】
Cu(銅)の粉体を主成分とした電極10では、粉状に加工されたCuの金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が30%〜50%の範囲、Cuを除く粉状に加工された少なくとも1種類の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のFe(鉄)、粉状のCo(コバルト)、粉状のNi(ニッケル)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも1種類)の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が20%〜50%の範囲にあり、Cuを除く粉状に加工された少なくとも他の1種類の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のFe(鉄)、粉状のCo(コバルト)、粉状のNi(ニッケル)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも他の1種類)の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が3%〜20%の範囲にある。なお、バインダーとなる遷移金属の粉体の金属粉体混合物16の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある。
【0085】
Cu(銅)の粉体を主成分とした電極10の具体例としては、Cuの粉体、Fe(鉄)の粉体、Zn(亜鉛)の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造のアロイ薄板電極15である。この電極10は、金属粉体混合物16の全重量に対するCuの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物16の全重量に対するFeの粉体重量比が48%、金属粉体混合物16の全重量に対するZnの粉体重量比が4%である。Cuの融点が1084.5℃、Feの融点が1536℃、Znの融点が419.58℃であるから、Znの粉体が溶融し、溶融したZnがバインダーとなってCuの粉体とFeの粉体とを接合している。
【0086】
Cu(銅)の粉体を主成分とした電極10の具体例としては、Cuの粉体、Fe(鉄)の粉体、Ag(銀)の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、その金属粉体混合物16を焼成することで多数の微細な流路14(通路孔)が形成されたポーラス構造のアロイ薄板電極15である。この電極10は、金属粉体混合物16の全重量に対するCuの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物16の全重量に対するFeの粉体重量比が46%、金属粉体混合物 8の全重量に対するAgの粉体重量比が6%である。Cuの融点が1084.5℃、Feの融点が1536℃、Agの融点が961.93℃であるから、Agの粉体が溶融し、溶融したAgがバインダーとなってCuの粉体とFeの粉体とを接合している。
【0087】
Cuの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型された電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、白金族元素と略同一の仕事関数を備え、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池20や水素ガス発生装置29等の燃料極20、陽極31(アノード)または空気極21、陰極30(カソード)として好適に使用することができる。
【0088】
電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、それがCuの粉体と各種の遷移金属から選択されたCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されておらず、非白金の燃料極20、陽極31や空気極21、陰極30を廉価に作ることができる。Cuを主成分とした電極10(ポーラス構造のアロイ薄板電極15)は、その厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にあるから、電極の電気抵抗が低く、電極をプロトンがスムースに移動することができ、電極10を燃料電池20に使用することで、燃料電池20において十分な電気を発電することができ、燃料電池20に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極10を水素ガス発生装置29に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置29において十分な水素ガスを発生させることができる。
【0089】
図10は、電極10の製造方法を説明する図である。電極10は、図10に示すように、遷移金属選択工程S1、金属粉体混合物作成工程S2、金属薄板作成工程S3、ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程S4を有する電極製造方法によって製造される。遷移金属選択工程S1では、各種の遷移金属36から選択する少なくとも3種類の遷移金属36の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属36の中から少なくとも3種類の遷移金属36(Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ag(銀))を選択する。
【0090】
遷移金属選択工程S1において、既述のように、Ni(ニッケル)を主成分とした電極10では、Cu(銅)およびZN(亜鉛)を選択し、または、Mn(マンガン)およびMo(モリブデン)を選択する。Fe(鉄)を主成分とした電極10では、Ni(ニッケル)およびCu(銅)を選択し、または、Ti(チタン)およびAg(銀)を選択する。Cu(銅)を主成分とした電極10では、Fe(鉄)およびZn(亜鉛)を選択し、または、Fe(鉄)およびAg(銀)を選択する。
【0091】
金属粉体混合物作成工程S2では、遷移金属選択工程S1によって選択された少なくとも3種類の遷移金属36の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物16を作る。金属粉体混合物作成工程S2において、Ni(ニッケル)を主成分とした電極10では、遷移金属選択工程S1によって選択されたNi、Cu(銅)、ZN(亜鉛)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してNiの粉体、Cuの粉体、Znの粉体を作成する。次に、Niの粉体やCuの粉体、Znの粉体を混合機に投入して混合機によってNiの粉体、Cuの粉体、Znの粉体を攪拌・混合し、Niの粉体、Cuの粉体、Znの粉体が均一に混合・分散した金属粉体混合物16を作る。または、遷移金属選択工程S1によって選択されたNi(ニッケル)、Mn(マンガン)、Mo(モリブデン)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してNiの粉体、Mnの粉体、Moの粉体を作成する。次に、Niの粉体やMnの粉体、Moの粉体を混合機に投入して混合機によってNiの粉体、Mnの粉体、Moの粉体を攪拌・混合し、Niの粉体、Mnの粉体、Moの粉体が均一に混合・分散した金属粉体混合物16を作る。
【0092】
金属粉体混合物作成工程S2において、Fe(鉄)を主成分とした電極10では、遷移金属選択工程S1によって選択されたFe、Ni(ニッケル)、Cu(銅)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してFeの粉体、Niの粉体、Cuの粉体を作成する。次に、Feの粉体やNiの粉体、Cuの粉体を混合機に投入して混合機によってFeの粉体、Niの粉体、Cuの粉体を攪拌・混合し、Feの粉体、Niの粉体、Cuの粉体が均一に混合・分散した金属粉体混合物16を作る。または、遷移金属選択工程S1によって選択されたFe(鉄)、Ti(チタン)、Ag(銀)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してFeの粉体、Tiの粉体、Agの粉体を作成する。次に、Feの粉体やTiの粉体、Agの粉体を混合機に投入して混合機によってFeの粉体、Tiの粉体、Agの粉体を攪拌・混合し、Feの粉体、Tiの粉体、Agの粉体が均一に混合・分散した金属粉体混合物16を作る。
【0093】
金属粉体混合物作成工程S2において、Cu(銅)を主成分とした電極10では、遷移金属選択工程S1によって選択されたCu、Fe(鉄)、Zn(亜鉛)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してCuの粉体、Feの粉体、Znの粉体を作成する。次に、Cuの粉体やFeの粉体、Znの粉体を混合機に投入して混合機によってCuの粉体、Feの粉体、Znの粉体を攪拌・混合し、Cuの粉体、Feの粉体、Znの粉体が均一に混合・分散した金属粉体混合物16を作る。または、遷移金属選択工程S1によって選択されたCu(銅)、Fe(鉄)、Ag(銀)のそれぞれを微粉砕機によって10μm〜200μmの粒径に微粉砕してCuの粉体、Feの粉体、Agの粉体を作成する。次に、Cuの粉体やFeの粉体、Agの粉体を混合機に投入して混合機によってCuの粉体、Feの粉体、Agの粉体を攪拌・混合し、Cuの粉体、Feの粉体、Agの粉体が均一に混合・分散した金属粉体混合物16を作る。
【0094】
金属薄板作成工程S3では、金属粉体混合物作成工程S2によって作られた金属粉体混合物16を所定圧力で加圧し、金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮した金属薄板11を作る。金属薄板作成工程S3では、金属粉体混合物16を金型に入れ、金型をプレス機によって加圧(プレス)するプレス加工によって金属薄板11を作る。プレス加工時におけるプレス圧(圧力)は、500Mpa〜800Mpaの範囲にある。プレス圧(圧力)が500Mpa未満では、金属薄板11に形成される流路14(通路孔)の開口面積(開口径)が大きくなり、金属薄板11の厚み寸法を0.03mm〜0.3mmにしつつ開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を金属薄板11に形成することができない。プレス圧(圧力)が800Mpaを超過すると、金属薄板11に形成される流路14(通路孔)の開口面積(開口径)が必要以上に小さくなり、金属薄板11の厚み寸法を0.03mm〜0.3mmにしつつ開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を金属薄板11に形成することができない。電極製造方法は、金属粉体混合物16を前記範囲の圧力で加圧(圧縮)することで、金属薄板11の厚み寸法を0.03mm〜0.3mmにしつつ開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成した金属薄板11を作ることができる。
【0095】
金属薄板作成工程S3において、Ni(ニッケル)を主成分とした電極10では、Niの粉体、Cu(銅)の粉体、ZN(亜鉛)粉体を混合した金属粉体混合物16の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物16をプレス加工によって加圧(圧縮)して金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、厚み寸法が0.03mm〜0.3mmであって開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成した金属薄板11を作る。または、Niの粉体、Mn(マンガン)の粉体、Mo(モリブデン)の粉体を混合した金属粉体混合物16の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物16をプレス加工によって加圧(圧縮)して金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、厚み寸法が0.03mm〜0.3mmであって開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成した金属薄板11を作る。
【0096】
金属薄板作成工程S3において、Fe(鉄)を主成分とした電極10では、Feの粉体、Ni(ニッケル)の粉体、Cu(銅)の粉体を混合した金属粉体混合物16の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物16をプレス加工によって加圧(圧縮)して金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、厚み寸法が0.03mm〜0.3mmであって開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成した金属薄板11を作る。または、Feの粉体、Ti(チタン)の粉体、Ag(銀)の粉体を混合した金属粉体混合物16の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物16をプレス加工によって加圧(圧縮)して金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、厚み寸法が0.03mm〜0.3mmであって開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成した金属薄板11を作る。
【0097】
金属薄板作成工程S3において、Cu(銅)を主成分とした電極10では、Cuの粉体、Fe(鉄)の粉体、Zn(亜鉛)の粉体を混合した金属粉体混合物16の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物16をプレス加工によって加圧(圧縮)して金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、厚み寸法が0.03mm〜0.3mmであって開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成した金属薄板11を作る。または、Cuの粉体、Fe(鉄)の粉体、Ag(銀)の粉体を混合した金属粉体混合物16の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物16をプレス加工によって加圧(圧縮)して金属粉体混合物16を所定面積の薄板状に圧縮し、厚み寸法が0.03mm〜0.3mmであって開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成した金属薄板11を作る。
【0098】
ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程S4では、金属薄板作成工程S3によって作られた金属薄板11を炉(電気炉)に投入し、金属薄板11を炉において所定温度で焼成(焼結)して多数の微細な流路14(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極15(電極10)を作る。ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程S4では、遷移金属選択工程S3によって選択された少なくとも3種類の遷移金属36のうちの融点が最も低い遷移金属36の粉体を溶融させる温度で金属薄板11を長時間焼成する。焼成(焼結)時間は、3時間〜6時間である。ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程S4では、所定面積の薄板状に圧縮した金属薄板11(金属粉体混合物16)の焼成時において、最も融点の低い遷移金属36の粉体が溶融し、溶融した遷移金属36をバインダーとして他の遷移金属36の粉体を接合(固着)する。
【0099】
ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程S4において、Ni(ニッケル)を主成分とした電極10では、Niの粉体、Cu(銅)の粉体、ZN(亜鉛)粉体を混合した金属粉体混合物16を圧縮した金属薄板11を炉(電気炉)において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極15(電極10)を作る。Niの粉体、Cuの粉体、Znの粉体から形成された金属薄板11では、Znの粉体を溶融させる温度(例えば、500℃〜800℃)で金属薄板11を焼成し、溶融したZnの粉体によってNiの粉体とCuの粉体とが接合(固着)される。
【0100】
また、Ni(ニッケル)を主成分とした電極10では、Niの粉体、Mn(マンガン)の粉体、Mo(モリブデン)の粉体を混合した金属粉体混合物16を圧縮した金属薄板11を炉(電気炉)において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極15(電極10)を作る。Niの粉体、Mnの粉体、Moの粉体から形成された金属薄板11では、Mnの粉体を溶融させる温度(例えば、1200℃〜1400℃)で金属薄板11を焼成し、溶融したMnの粉体によってMnの粉体とMoの粉体とが接合(固着)される。
【0101】
ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程S4において、Fe(鉄)を主成分とした電極10では、Feの粉体、Ni(ニッケル)の粉体、Cu(銅)の粉体を混合した金属粉体混合物16を圧縮した金属薄板11を炉(電気炉)において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極15(電極10)を作る。Feの粉体、Niの粉体、Cuの粉体から形成された金属薄板11では、Cuの粉体を溶融させる温度(例えば、1100℃〜1300℃)で金属薄板11を焼成し、溶融したCuの粉体によってFeの粉体とNiの粉体とが接合(固着)される。
【0102】
また、Fe(鉄)を主成分とした電極10では、Feの粉体、Ti(チタン)の粉体、Ag(銀)の粉体を混合した金属粉体混合物16を圧縮した金属薄板11を炉(電気炉)において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極15(電極10)を作る。Feの粉体、Tiの粉体、Agの粉体から形成された金属薄板11では、Agの粉体を溶融させる温度(例えば、1000℃〜1200℃)で金属薄板11を焼成し、溶融したAgの粉体によってFeの粉体とTiの粉体とが接合(固着)される。
【0103】
ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程S4において、Cu(銅)を主成分とした電極10では、Cuの粉体、Fe(鉄)の粉体、Zn(亜鉛)の粉体を混合した金属粉体混合物16を圧縮した金属薄板11を炉(電気炉)において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極15(電極10)を作る。Cuの粉体、Feの粉体、Znの粉体から形成された金属薄板11では、Znの粉体を溶融させる温度(例えば、500℃〜800℃)で金属薄板11を焼成し、溶融したZnの粉体によってCuの粉体とFeの粉体とが接合(固着)される。
【0104】
また、Cu(銅)を主成分とした電極10では、Cuの粉体、Fe(鉄)の粉体、Ag(銀)の粉体を混合した金属粉体混合物16を圧縮した金属薄板11を炉(電気炉)において長時間焼成し、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路14(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極15(電極10)を作る。Cuの粉体、Feの粉体、Agの粉体から形成された金属薄板11では、Agの粉体を溶融させる温度(例えば、1000℃〜1100℃)で金属薄板11を焼成し、溶融したAgの粉体によってCuの粉体とFeの粉体とが接合(固着)される。
【0105】
電極製造方法は、遷移金属選択工程S1や金属粉体混合物作成工程S2、金属薄板作成工程S3、ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程S4によって厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲であって多数の微細な流路14(通路孔)を形成した電極10を作ることができ、白金族元素を利用しない非白金の燃料極20、陽極31や空気極21、陰極30を廉価に作ることができるとともに、触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって触媒活性(触媒作用)を有して燃料極20、陽極31や空気極21、陰極30として使用することが可能な非白金の電極10を作ることができる。
【0106】
電極製造方法は、厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲であって多数の微細な流路14(通路孔)を形成した電極10を作ることができるから、電極10の電気抵抗を低くすることができるとともに、電極10をプロトンがスムースに移動することができ、燃料電池20において十分な電気を発電することが可能であって燃料電池20に接続された負荷28に十分な電気エネルギーを供給することが可能な電極10を作ることができる。電極製造方法は、水素ガス発生装置29において電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置29において十分な水素ガスを発生させることが可能な電極10を作ることができる。
【符号の説明】
【0107】
10 電極
11 金属薄板
12 前面
13 後面
14 流路(通路孔)
15 ポーラス構造のアロイ薄板電極
16 金属粉体混合物
17 通流口
18 外周縁
19 セル
20 燃料電池
21 燃料極
22 空気極
23 固体高分子電解質膜
24a,b セパレータ(バイポーラプレート)
25a,b ガス拡散層
26a,b ガスシール
27 導線
28 負荷
29 水素ガス発生装置
30 陰極
31 陽極
32 固体高分子電解質膜
33a 陰極給電部材
33b 陽極給電部材
34a 陰極用貯水槽
34b 陽極用貯水槽
35a 陰極主電極
35b 陽極主電極
36 遷移金属
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードまたはカソードとして使用する電極において、
前記電極が、各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属から形成され、選択された少なくとも3種類のそれら遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路を形成したポーラス構造のアロイ薄板電極であり、前記ポーラス構造のアロイ薄板電極の厚み寸法が、0.03mm〜0.3mmの範囲にあり、前記ポーラス構造のアロイ薄板電極では、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されていることを特徴とする電極。
【請求項2】
前記ポーラス構造のアロイ薄板電極が、Niの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、前記ポーラス構造のアロイ薄板電極では、前記Niの仕事関数と該Niを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が前記白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記Niの粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜50%の範囲、前記Niの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、前記Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある請求項2に記載の電極。
【請求項4】
前記ポーラス構造のアロイ薄板電極が、Feの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、前記ポーラス構造のアロイ薄板電極では、前記Feの仕事関数と該Feを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が前記白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている請求項1に記載の電極。
【請求項5】
前記Feの粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜50%の範囲、前記Feの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、前記Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある請求項4に記載の電極。
【請求項6】
前記ポーラス構造のアロイ薄板電極が、Cuの粉体を主成分として0.03mm〜0.3mmの範囲の厚み寸法に成型され、前記ポーラス構造のアロイ薄板電極では、前記Cuの仕事関数と該Cuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が前記白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている請求項1に記載の電極。
【請求項7】
前記Cuの粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜50%の範囲、前記Cuの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%〜50%の範囲にあり、前記Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある請求項6に記載の電極。
【請求項8】
前記ポーラス構造のアロイ薄板電極の空隙率が、15%〜30%の範囲にある請求項1ないし請求項7いずれかに記載の電極。
【請求項9】
前記ポーラス構造のアロイ薄板電極の密度が、5.0g/cm〜7.0g/cmの範囲にある請求項1ないし請求項8いずれかに記載の電極。
【請求項10】
前記遷移金属の粉体の粒径が、10μm〜200μmの範囲にある請求項1ないし請求項9いずれかに記載の電極。
【請求項11】
前記ポーラス構造のアロイ薄板電極では、所定面積の薄板状に圧縮した前記金属粉体混合物の焼成時に最も融点の低い遷移金属の粉体が溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとして他の遷移金属の粉体が接合されている請求項1ないし請求項10いずれかに記載の電極。
【請求項12】
前記バインダーとなる遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜20%の範囲にある請求項11に記載の電極。
【請求項13】
前記電極が、各種の遷移金属から選択する少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属を選択する遷移金属選択工程と、前記遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を作る金属粉体混合物作成工程と、前記金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を所定圧力で加圧して金属薄板を作る金属薄板作成工程と、前記金属薄板作成工程によって作られた金属薄板を所定温度で焼成して多数の微細な流路を形成した前記ポーラス構造のアロイ薄板電極を作るポーラス構造アロイ薄板電極作成工程とによって製造されている請求項1ないし請求項12いずれかに記載の電極。
【請求項14】
前記金属粉体混合物作成工程が、前記遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属を10μm〜200μmの粒径に微粉砕する請求項13に記載の電極。
【請求項15】
前記金属薄板作成工程が、前記金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を500Mpa〜800Mpaの圧力で加圧し、前記0.03mm〜0.3mmの厚み寸法を有して多数の微細な流路を形成した金属薄板を作る請求項13または請求項14に記載の電極。
【請求項16】
前記ポーラス構造アロイ薄板電極作成工程が、前記遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属のうちの融点が最も低い遷移金属の粉体を溶融させる温度で前記金属薄板を焼成する請求項13ないし請求項15いずれかに記載の電極。