【解決手段】近隣セル情報設計システムは、近隣セル情報の設計対象である第1セルの設置標高と、第1セルの近隣に形成されている第2セルの設置標高とを結ぶ直線が、所定の地形情報から得られる地形表面と交差する交点の数を算出する。近隣セル情報設計システムは、算出した交点の数に基づいて、第2セルを近隣セル情報に含めるか否かを決定する。
前記近隣セル設定部は、前記交点の数が偶数である場合、隣接する前記交点間の距離と、隣接する前記交点間に位置する地形物の高さとの関係に基づいて、前記前記第2セルを前記近隣セル情報への登録対象に含めるか否かを判定する請求項3に記載の近隣セル情報設計システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0014】
(1)移動通信ネットワークの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る移動通信ネットワーク10の全体概略構成図である。移動通信ネットワーク10は、Long Term Evolution(LTE)に従った無線通信システムであり、複数のセル及びユーザ装置20(以下、UE20)を含む。なお、移動通信ネットワーク10は、5G New Radio(NR)に従った無線通信システムでもよい。
【0015】
具体的には、移動通信ネットワーク10は、セル11、セル12、セル13、セル14及びセル15(セル11〜セル15)を含む。セル11〜セル15は、無線基地局(eNB)によって形成された通信カバレッジを意味するが、本実施形態では、無線基地局とほぼ同義である。
【0016】
セル11、セル14及びセル15は、建物の屋上など、地表に設置される無線基地局である。セル12は、山間部に設置される。つまり、セル11、セル12、セル14及びセル15は、地上に設けられる。具体的には、セル11、セル12、セル14及びセル15は、地形表面GLよりも上方、換言すれば、地形表面GLよりも高い高度位置に設置される。
【0017】
一方、セル13は、地上ではなく、地下BSに設けられる。地下BSとは、典型的には、建物の地下階、地下通路、及び地下街などである。つまり、地下BSは、当該地点の標高よりも低い場所と定義できる。
【0018】
セル13から送信される無線信号(電波)は、基本的には、地形表面GLよりも上方の地上には到達しない。同様に、セル11、セル12、セル14及びセル15から送信される無線信号(電波)も、基本的には、地下BSに到達しない(特別な見通し(パス)が確保できる場合などを除く)。
【0019】
また、本実施形態では、セル11とセル14との間には、比較的高層のビルディング40が位置している。さらに、セル11とセル15との間には、比較的高層、かつ幅が狭く細いビルディング45が位置している。
【0020】
本実施形態では、ビルディング40内には、近隣セル情報を設計する近隣セル情報設計システム100が設置されている。近隣セル情報設計システム100は、セル11〜セル15が用いる近隣セル情報、具体的には、Neighbor Relation Table(NRT)を設計する。近隣セル情報設計システム100は、生成した各セル用のNRTを当該セルに提供する。このようなNRTが準備されることによって、UE20のセル間における適切な遷移(ハンドオーバ)が実現される。
【0021】
なお、本実施形態では、近隣セル情報設計システム100がビルディング40内に設置されているが、このような設置例は、飽くまで一例であり、他のビルディング、或いは通信ネットワーク(ネットワーククラウド)上の各種サービスを利用して仮想的に実現されても構わない。
【0022】
(2)近隣セル情報設計システムの機能ブロック構成
次に、近隣セル情報設計システム100の機能ブロック構成について説明する。
図2は、近隣セル情報設計システム100の機能ブロック構成図である。
【0023】
図2に示すように、近隣セル情報設計システム100は、交点数算出部110、近隣セル設定部120、NRT管理部130、セル情報データベース140及び地形情報データベース150を備える。
【0024】
交点数算出部110は、セル間の存在する地形表面GLとの交点を算出する。具体的には、交点数算出部110は、NRTの設計対象であるセル(第1セル)が設置されている場所の標高(設置標高)と、第1セルの近隣に形成されているセル(第2セル)が設置されている場所の標高(設置標高)とを結ぶ直線が、地形表面GLと交差する交点Pの数を算出する。
【0025】
交点数算出部110は、地形表面GLの情報を所定の地形情報、例えば、国土地理院の標高情報を用いて取得する。また、地形表面GLとは、基本的には、標高に基づく地表面であるが、
図1に示したように、ビルディング40及びビルディング45などの建造物が存在する場合には、当該建造物を地形物として扱うことができる。本実施形態では、当該建造物も地形表面GLを構成する。
【0026】
なお、このような建造物の高さ及び幅などを含む形状の情報についても、所定の地形情報に含まれ、市場に提供されている情報を用い得る。また、建造物には、ビルディングなどに限らず、あらゆる建物、及び橋梁、水門などの土木構造物も含まれる。
【0027】
交点数算出部110は、第1セルの設置標高と、第2セルの設置標高とを結ぶ直線が、このような所定の地形情報から得られる地形表面GLと交差する交点Pの数を算出する。
【0028】
なお、実際の処理としては、交点数算出部110は、標高方向を含む二次元平面において、交点Pの数を算出することができる。交点Pの数の算出例については、さらに後述する。
【0029】
セルの設置標高は、当該セル(無線基地局)を構成する装置が設置されている位置であれば特に限定されないが、当該セルのアンテナ位置(アンテナ高さ)を基準とすることが好ましい。また、アンテナ高さは、設置位置の標高を基準として、地上よりも上方に位置する場合を正の値、地上よりも下方(つまり、地下)に位置する場合を負の値として表現してもよい。
【0030】
近隣セル設定部120は、各セルにおいて用いられる近隣セル情報(NRT)を設定する。特に、本実施形態では、近隣セル設定部120は、交点数算出部110によって算出された交点Pの数に基づいて、第1セルの近隣に形成されている第2セルをNRTに含めるか否かを決定する。
【0031】
具体的には、近隣セル設定部120は、交点Pの数が奇数である場合、第2セルをNRTへの登録対象から除外する。つまり、近隣セル設定部120は、第2セルが地理的には近隣に位置する場合でも、第1セル用のNRTに第2セルを含めない。
【0032】
交点Pの数が奇数の場合、第2セルは、地下BSに設置されていると想定されるためである。このような近隣セル設定部120の処理によって、実際には、UE20が遷移できないセルがNRTに登録される可能性を大幅に低減できる。
【0033】
勿論、交点Pの数が奇数の場合でも、必ずしも第2セルが地下BSに設置されていない場合(例えば、ビルディングの上層階内部にセルが設置されている場合)もあり得るが、このような場合には、生成されたNRTの内容を技術者が手動で確認して修正すればよい。
【0034】
一方、近隣セル設定部120は、交点Pの数が偶数である場合、第2セルをNRTへの登録対象の候補に含める。交点Pの数が偶数である場合、第2セルは、地形表面GL上に設置されていると想定されるためである。
【0035】
なお、近隣セル設定部120は、交点Pの数が偶数である場合、隣接する交点P間の距離αと、隣接する交点P間に位置する地形物(地表または建造物)の高さβ(
図5参照)との関係に基づいて、第2セルをNRTへの登録対象に含めるか否かを判定してもよい。なお、このような判定動作の詳細については、さらに後述する。
【0036】
近隣セル設定部120は、上述したような処理を各セルについて繰り返し、各セル用のNRTを生成する。
【0037】
NRT管理部130は、各セル用の近隣セル情報(NRT)を管理する。具体的には、NRT管理部130は、近隣セル設定部120によって生成されたNRTを保持する。また、NRT管理部130は、生成されたNRTを該当するセルに提供する。
【0038】
セル情報データベース140は、セル11〜セル15に関する情報によって構成される。具体的には、セル情報データベース140は、当該セルの設置位置(経度、緯度、標高)、無線設備の構成、設置場所(ビルディング内部、ビルディング屋上など)、過去に設計されたPhysical Cell ID、NRTなどの情報を含む。
【0039】
地形情報データベース150は、セル11〜セル15が設置されている地域の地形を示す情報によって構成される。具体的には、地形情報データベース150は、交点数算出部110によって用いられる地形表面GLの情報(所定の地形情報)を含む。地形表面GLの情報としては、上述したように、例えば、国土地理院の地形情報(経度、緯度及び標高を含む)、及び建造物の高さ及び幅などを含む形状の情報が含まれる。
【0040】
(3)近隣セル情報設計システムの動作
次に、近隣セル情報設計システム100の動作について説明する。具体的には、近隣セル情報設計システム100による近隣セル情報(NRT)の設計動作、及び近隣セル情報(NRT)の設計例について説明する。
【0041】
(3.1)NRT設計動作フロー
(3.1.1)基本動作フロー
図3Aは、近隣セル情報設計システム100によるNRTの設計動作フローを示す。具体的には、
図3Aは、NRTの設計対象セル(ここでは、セル11とする)の近隣セル(セル12〜セル15)を当該NRTへの登録対象とするか否かを判定する動作フローを示す。
【0042】
図3Aに示すように、近隣セル情報設計システム100は、NRT設計対象セル(セル11)及び近隣セルの経度緯度情報を取得する(S10)。また、近隣セル情報設計システム100は、NRT設計対象セル及び近隣セルの標高を取得する(S20)。
【0043】
さらに、近隣セル情報設計システム100は、NRT設計対象セル及び近隣セルの近傍の地形を取得する(S25)。地形とは、標高を含む地形表面GLの形状であり、上述したように、ビルディング40及びビルディング45などの建造物が存在する場合には、当該建造物を地形物として扱われる。したがって、当該建造物も地形表面GLを構成する
次いで、近隣セル情報設計システム100は、S10, S20, S25において取得した情報に基づいて、NRTの設計対象であるセル11の設置標高と、近隣セル(第2セル)の設置標高とを結ぶ直線が地形表面GLと交差する交点P(
図4〜
図7参照)の有無を判定する(S30)。
【0044】
交点Pがある場合、近隣セル情報設計システム100は、交点Pの数が奇数か否かを判定する(S40)。
【0045】
交点Pの数が奇数である合、近隣セル情報設計システム100は、当該近隣セルをNRTへの登録対象から除外する(S50)。上述したように、交点Pの数が奇数である場合、当該近隣セルは、地下BSに設置されていると想定されるためである。
【0046】
一方、交点Pの数が偶数である場合、近隣セル情報設計システム100は、当該近隣セルをNRTへの登録対象の候補に含める(S60)。なお、当該近隣セルがNRTへの登録対象の候補となった場合でも、最終的には、NRTの設計対象である(セル11)と、近隣セル(第2セル)との距離に基づいて、当該近隣セルをNRTへの登録対象とするかを決定してもよい。
【0047】
上述したように、交点Pの数が偶数である場合、当該近隣セルは、地形表面GL上に設置されていると想定され、見通しが不可能な場合でも、電波の回折(回り込み)によって、UE20は、当該近隣セルとの無線通信が可能と判断されるためである。
【0048】
(3.1.2)変更例
上述したS60の処理は、次のように拡張されてもよい。
図3Bは、変更例に係るNRTの設計動作フローを示す図である。具体的には、
図3Bに示すフローは、
図3AのS40以降のステップを置き換えるものである。
【0049】
図3Bに示すように、
図3Aに示したS60の処理は、S61〜S67に置き換えられる。近隣セル情報設計システム100は、交点Pの数が偶数である場合、隣接する交点P間の距離α(
図5参照)を算出する(S61)。
【0050】
また、近隣セル情報設計システム100は、隣接する当該交点P間に位置する地形物(地表または建造物)の高さβ(
図5参照)を算出する(S63)。
【0051】
近隣セル情報設計システム100は、距離αと高さβとの関係、例えば、α×βが所定範囲内か否かを判定する(S65)。ここでは、近隣セル情報設計システム100は、α×βが所定の閾値以下か否かを判定する。なお、α×βが、下限値及び上限値によって規定される所定範囲内に含まれるか否かを判定してもよい。
【0052】
α×βが所定範囲内(所定の閾値以下)の場合、近隣セル情報設計システム100は、当該近隣セルをNRTへの登録対象の候補に含める(S67)。一方、α×βが所定範囲内でない場合、当該近隣セルをNRTへの登録対象から除外する(S50)。
【0053】
なお、近隣セル情報設計システム100は、α×β以外に、α/β、或いはα/βの式を変形し、β/α(高さ/距離)によって、当該近隣セルをNRTへの登録対象の候補に含めるか否かを判定してもよい。
【0054】
α/βは、近隣セルを形成する無線基地局との見通しの良悪の判定に用い得る。また、αとβの数値が大きくかつβ/αが大きければ、当該近隣セルとの間において、大きな凸部(高層ビルディングなど)が存在すると想定できる。使用する周波数帯にもよるが、当該凸部が大きい(つまり、高さが高い地形物が存在する)場合、電波が回り込み難く、NRTへの登録対象から除外することが好ましい。
【0055】
具体例を挙げると、α=300m、β=300m(高さ300mの高層ビルを想定)であれば、β/α=1となり、直線距離的にはそれほど遠くない場合でも、300mの高さの遮蔽物(壁)が存在するため、NRTへの登録対象の候補としては好ましくない。
【0056】
一方、α、βが小さいと、β/αの影響は限定的である。例えば、α=50m、β=50mであれば、β/α=1であるが、NRTへの登録対象の候補としては、α=300m、β=300mの例よりも適していると判定できる。
【0057】
なお、このような具体例は、NRT設計対象セルと近隣セルとを結ぶ直線に沿って一定の奥行きを有するビルディング(地形物)が存在することを前提としているが、奥行きが極端に小さい場合には、水平方向からの電波の回り込みが支配的となるため、高さβの影響は小さくなる。そこで、水平方向における地形物の幅γを補助的に用い、幅γが十分に小さい場合には、距離αのみに基づいてNRTへの登録対象の候補に含めるか否かを判定してもよい。
【0058】
また、近隣セル情報設計システム100は、α+βを用いてもよいし、α/2を底辺、βを高さとして、その斜辺を√((α/2)
2+β
2)によって求め、当該斜辺の長さに基づいてNRTへの登録対象の候補に含めるか否かを判定してもよい。さらに、電波の直進性を考慮し、底辺α/2、高さβとする三角形の仰角が大きければ、NRTへの登録対象の候補から除外してもよい。
【0059】
さらに、幅γについては、最大値、最小値、中間値を定めてもよい。また、幅γが所定値以下の場合、当該地形物を無視してもよいし、βとγとの大小関係に応じて、α/β(またはα×β,α+β,√((α/2)
2+β
2))のβをγに置き換えてもよい。
【0060】
例えば、α=300m、β=10m(小さな丘や、一般的な家屋を想定)であれば、β/α=0.0333となり、距離α(300m)が支配的であり、β/αが小さい場合には、β(及びγ)を無視してもよいし、αのみに基づいてNRTへの登録対象の候補に含めるか否かを判定してもよい。
【0061】
(3.2)近隣セル情報の設計例
次に、
図4〜
図7を参照して、近隣セル情報(NRT)の設計例について説明する。
【0062】
(3.2.1)設計例1
図4は、NRTの設計例1に係るセルの位置関係を模式的に示す図である。具体的には、
図4は、セル13が、セル11用のNRTに登録されるか否かを示す。
【0063】
図4に示すように、セル11は、地形表面GLよりも上方に設置される地上セルである。一方、セル13は、地形表面GLよりも下方に設置される地下セルである(
図1も参照)。セル11の設置標高と、セル13の設置標高とを結ぶ直線は、地形表面GLと交差する1つの交点Pを有する。
【0064】
このため、上述したNRT設計動作フローに基づいて、セル13は、セル11用のNRTに登録されない。
【0065】
(3.2.2)設計例2
図5は、NRTの設計例2に係るセルの位置関係を模式的に示す図である。具体的には、
図5は、山間部に設置されるセル12(
図1参照)が、セル11用のNRTに登録されるか否かを示す。
【0066】
セル11の設置標高と、セル12の設置標高とを結ぶ直線は、地形表面GLと交差する2つの交点Pを有する。
【0067】
このため、上述したNRT設計動作フローに基づいて、セル12は、セル11用のNRTに登録される。
【0068】
また、上述したように、隣接する交点P間の距離αと、当該交点P間に位置する地形物(山間部)の高さβとの関係に基づいて、セル12をセル11用のNRTへの登録対象とするか否かが判定されてもよい。
【0069】
上述したように、交点Pの数が偶数である場合、当該近隣セルは、地形表面GL上に設置されていると想定され、見通しが不可能な場合でも、電波の回折(回り込み)によって、UE20は、当該近隣セルとの無線通信が可能と判断されるためである。
【0070】
(3.2.3)設計例3
図6は、NRTの設計例3に係るセルの位置関係を模式的に示す図である。具体的には、
図6は、ビルディング40が遮蔽物となるセル14(
図1参照)が、セル11用のNRTに登録されるか否かを示す。
【0071】
セル11の設置標高と、セル14の設置標高とを結ぶ直線は、地形表面GL、具体的には、ビルディング40の外壁面と交差する2つの交点Pを有する。上述したように、ビルディング40も地形物として扱われるため、ビルディング40も地形表面GLを構成する。
【0072】
セル11の設置標高と、セル14の設置標高とを結ぶ直線は、地形表面GLと交差する2つの交点Pを有する。
【0073】
このため、上述したNRT設計動作フローに基づいて、セル12は、セル11用のNRTに登録される。
【0074】
なお、上述したように、仮にセル14がビルディング40の上層階内部に設置されているような場合、交点Pの数が奇数(1つ)となり、セル14は、セル11用のNRTに登録されないことになる。このような場合、必要に応じて、生成されたNRTの内容を技術者が手動で確認して修正する。
【0075】
(3.2.4)設計例4
図7は、NRTの設計例4に係るセルの位置関係を模式的に示す図である。具体的には、
図7は、ビルディング45が遮蔽物となるセル15(
図1参照)が、セル11用のNRTに登録されるか否かを示す。
【0076】
設計例3と同様に、セル11の設置標高と、セル15の設置標高とを結ぶ直線は、地形表面GL、具体的には、ビルディング45の外壁面と交差する2つの交点Pを有する。ビルディング45は、ビルディング40よりも幅が狭く細いが、ビルディング45も地形物として扱われ、地形表面GLを構成する。なお、鉄塔などのように、極めて細く、見通しに殆ど影響を与えないような建造物の場合には、両セルを結ぶ直線が交差する対象として含めなくてもよい。
【0077】
(3.2.5)NRTの構成例
図8は、近隣セル情報設計システム100によって生成された近隣セル情報(NRT)の構成例を示す。具体的には、
図8は、上述したNRT200の設計例1〜4に係る動作が実行された後におけるNRTの構成例を示す。
【0078】
図8に示すように、セル11用のNRTは、セル12(セルID=#12、以下同)、セル14及びセル15によって構成される。一方、セル13(地下セル)は、セル11の近隣セルであるものの、セル11用のNRTには含まれていない。
【0079】
つまり、セル11に接続したUE20は、当該NRTに基づいて、セル12、セル14またはセル15に遷移(ハンドオーバ)できる。
【0080】
(4)作用・効果
上述した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。具体的には、近隣セル情報設計システム100によれば、NRTの設計対象であるセル(第1セル)の設置標高と、第1セルの近隣に形成されているセル(第2セル)の設置標高とを結ぶ直線が、地形表面GLと交差する交点Pの数を算出される。さらに、算出された交点Pの数に基づいて、第1セルの近隣に形成されている第2セルをNRTに含めるか否かが決定される。
【0081】
具体的には、交点Pの数が奇数である場合、第2セルをNRTへの登録対象から除外される。交点Pの数が奇数の場合、第2セルは、地下BSに設置されていると想定されるためである。
【0082】
一方、交点Pの数が偶数である場合、第2セルをNRTへの登録対象の候補に含める。交点Pの数が偶数である場合、第2セルは、地形表面GL上に設置されていると想定されるためである。
【0083】
これにより、近接する地上セルと地下セルとを区別しつつ、より適切なNRTを設計し得る。すなわち、セル13のような地下セルがセル11用のNRTに登録されてしまうことを排除できるため、近隣セル情報設計システム100によるNRTの自動生成後における技術者によるNRTの確認、修正作業を大幅に低減できる。
【0084】
本実施形態では、近隣セル情報設計システム100は、交点Pの数が偶数である場合、隣接する交点P間の距離αと、隣接する交点P間に位置する地形物の高さβとの関係に基づいて、第2セルをNRTへの登録対象に含めるか否かを判定することができる。
【0085】
交点Pの数が偶数である場合、当該近隣セルは、地形表面GL上に設置されていると想定され、見通しが不可能な場合でも、電波の回折(回り込み)によって、UE20は、当該近隣セルとの無線通信が可能となる場合があり、このような判定をすることによって、NRTに含め得るセルの数を増大し得る。
【0086】
本実施形態では、近隣セル情報設計システム100は、実際の処理としては、標高方向を含む二次元平面において、交点Pの数を算出することができる。このため、三次元のデータを用いる場合と比較して処理負荷を低減しつつ、より適切な近隣セル情報を設計し得る。
【0087】
(5)その他の実施形態
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0088】
上述した実施形態では、近隣セル情報として、Neighbor Relation Table(NRT)を例に説明したが、近隣セル情報は、近隣セルリスト、隣接セルリストなどと呼ばれてもよい。
【0089】
また、上述した実施形態の説明に用いたブロック構成図(
図2)は、機能ブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェア及び/またはソフトウェアの任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックの実現手段は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的及び/または論理的に結合した1つの装置により実現されてもよいし、物理的及び/または論理的に分離した2つ以上の装置を直接的及び/または間接的に(例えば、有線及び/または無線)で接続し、これら複数の装置により実現されてもよい。
【0090】
さらに、上述した近隣セル情報設計システム100は、本発明の処理を行うコンピュータとして機能してもよい。
図9は、近隣セル情報設計システム100のハードウェア構成の一例を示す図である。
図9に示すように、当該装置は、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006及びバス1007などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。
【0091】
近隣セル情報設計システム100の機能ブロック(
図2参照)は、当該コンピュータ装置の何れかのハードウェア要素、または当該ハードウェア要素の組み合わせによって実現される。
【0092】
プロセッサ1001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1001は、周辺装置とのインタフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU)で構成されてもよい。
【0093】
メモリ1002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つで構成されてもよい。メモリ1002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1002は、上述した実施形態に係る方法を実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0094】
ストレージ1003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つで構成されてもよい。ストレージ1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記録媒体は、例えば、メモリ1002及び/またはストレージ1003を含むデータベース、サーバその他の適切な媒体であってもよい。
【0095】
通信装置1004は、有線及び/または無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。
【0096】
入力装置1005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサなど)である。出力装置1006は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。なお、入力装置1005及び出力装置1006は、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
【0097】
また、プロセッサ1001及びメモリ1002などの各装置は、情報を通信するためのバス1007で接続される。バス1007は、単一のバスで構成されてもよいし、装置間で異なるバスで構成されてもよい。
【0098】
また、情報の通知は、上述した実施形態に限られず、他の方法で行われてもよい。例えば、情報の通知は、物理レイヤシグナリング(例えば、DCI(Downlink Control Information)、UCI(Uplink Control Information))、上位レイヤシグナリング(例えば、RRCシグナリング、MAC(Medium Access Control)シグナリング、報知情報(MIB(Master Information Block)、SIB(System Information Block))、その他の信号またはこれらの組み合わせによって実施されてもよい。また、RRCシグナリングは、RRCメッセージと呼ばれてもよく、例えば、RRC Connection Setupメッセージ、RRC Connection Reconfigurationメッセージなどであってもよい。
【0099】
さらに、入出力された情報は、特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルで管理してもよい。入出力される情報は、上書き、更新、または追記され得る。出力された情報は削除されてもよい。入力された情報は他の装置へ送信されてもよい。
【0100】
上述した実施形態におけるシーケンス及びフローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。
【0101】
また、上述した実施形態において、近隣セル情報設計システム100によって行われるとした特定動作は、他のネットワークノード(装置)によって行われることもある。また、複数の他のネットワークノードの組み合わせによって近隣セル情報設計システム100の機能が提供されても構わない。
【0102】
なお、本明細書で説明した用語及び/または本明細書の理解に必要な用語については、同一のまたは類似する意味を有する用語と置き換えてもよい。例えば、該当する記載がある場合、チャネル及び/またはシンボルは信号(シグナル)であってもよい。また、信号はメッセージであってもよい。また、「システム」及び「ネットワーク」という用語は、互換的に使用されてもよい。
【0103】
さらに、パラメータなどは、絶対値で表されてもよいし、所定の値からの相対値で表されてもよいし、対応する別の情報で表されてもよい。例えば、無線リソースはインデックスで指示されるものであってもよい。
【0104】
セル11〜セル15(基地局)は、1つまたは複数(例えば、3つ)のセル(セクタとも呼ばれる)を収容することができる。基地局が複数のセルを収容する場合、基地局のカバレッジエリア全体は複数のより小さいエリアに区分でき、各々のより小さいエリアは、基地局サブシステム(例えば、屋内用の小型基地局RRH:Remote Radio Head)によって通信サービスを提供することもできる。
【0105】
「セル」または「セクタ」という用語は、このカバレッジにおいて通信サービスを行う基地局、及び/または基地局サブシステムのカバレッジエリアの一部または全体を指す。さらに、「基地局」「eNB」、「セル」、及び「セクタ」という用語は、本明細書では互換的に使用され得る。基地局は、固定局(fixed station)、NodeB、eNodeB(eNB)、gNodeB(gNB)、アクセスポイント(access point)、フェムトセル、スモールセルなどの用語で呼ばれる場合もある。
【0106】
UE20は、当業者によって、加入者局、モバイルユニット、加入者ユニット、ワイヤレスユニット、リモートユニット、モバイルデバイス、ワイヤレスデバイス、ワイヤレス通信デバイス、リモートデバイス、モバイル加入者局、アクセス端末、モバイル端末、ワイヤレス端末、リモート端末、ハンドセット、ユーザエージェント、モバイルクライアント、クライアント、またはいくつかの他の適切な用語で呼ばれる場合もある。
【0107】
本明細書で使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0108】
また、「含む(including)」、「含んでいる(comprising)」、及びそれらの変形の用語は、「備える」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本明細書或いは特許請求の範囲において使用されている用語「または(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0109】
本明細書で使用した「第1」、「第2」などの呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量または順序を全般的に限定するものではない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本明細書で使用され得る。したがって、第1及び第2の要素への参照は、2つの要素のみがそこで採用され得ること、または何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。
【0110】
本明細書の全体において、例えば、英語でのa, an, 及びtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、これらの冠詞は、文脈から明らかにそうではないことが示されていなければ、複数のものを含むものとする。
【0111】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。