【課題】目視による確認や撮影による確認によらなくとも、印刷データの再現性を評価することが可能な画像処理システム、印刷指示装置、画像処理装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】印刷の対象となる印刷対象データから第1の画像を生成する第1の画像生成手段と、印刷対象データの印刷を指示する印刷指示情報を生成する印刷指示生成手段と、印刷指示情報に応じて、第1の画像と異なる属性を有する第2の画像を生成する第2の画像生成手段と、第1の画像に含まれる情報に対する第2の画像に含まれる情報の再現性を評価する評価手段とを備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、目視による確認や撮影による確認によらなくとも、印刷データの再現性を評価することが可能な画像処理システム、印刷指示装置、画像処理装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]印刷の対象となる印刷対象データから第1の画像を生成する第1の画像生成手段と、
前記印刷対象データの印刷を指示する印刷指示情報を生成する印刷指示生成手段と、
前記印刷指示情報に応じて、前記第1の画像と異なる属性を有する第2の画像を生成する第2の画像生成手段と、
前記第1の画像に含まれる情報に対する前記第2の画像に含まれる情報の再現性を評価する評価手段と、
を備える画像処理システム。
[2]前記第1の画像生成手段は、予め定められた解像度よりも低い解像度で前記第1の画像を生成する、
前記[1]に記載の画像処理システム。
[3]前記評価手段は、前記再現性として、前記第2の画像が前記第1の画像に一致する度合いに応じた評価値を出力する、
前記[1]又は[2]に記載の画像処理システム。
[4]前記評価値が予め定められた値未満の場合に、前記第2の画像を表示する表示制御手段をさらに備える、
前記[3]に記載の画像処理システム。
[5]前記度合いが予め定められた値未満の場合に、前記第2の画像を出力する方法を選択する選択手段をさらに備える、
前記[3]又は[4]に記載の画像処理システム。
[6]前記印刷対象データが複数のページを含む場合に、
前記評価手段は、ページごとに前記第1の画像に対する前記第2の画像の再現性を評価する、
前記[1]から[5]のいずれか1つに記載の画像処理システム。
[7]前記第1の画像生成手段は、予め定められたページの数ごとに前記ページから前記第1の画像を生成する、
前記[6]に記載の画像処理システム。
[8]前記評価手段は、前記ページの数ごとに前記第2の画像の再現性を評価する、
請求項[7]に記載の画像処理システム。
[9]前記第1の画像生成手段は、前記印刷対象データに文字を示す文字情報が含まれている場合、前記文字情報を抽出して第1の画像を生成する、
前記[1]から[8]のいずれか1つに記載の画像処理システム。
[10]前記評価手段は、前記文字情報を抽出して生成された前記第1の画像に対する前記第2の画像内の文字情報の再現性を評価する、
前記[9]に記載の画像処理システム。
[11]印刷の対象となる印刷対象データから第1の画像を生成する第1の画像生成手段と、
前記印刷対象データの印刷を指示する印刷指示情報を生成する印刷指示生成手段と、
前記第1の画像と前記印刷指示情報とを画像処理装置に送信する送信手段と、
を備える、印刷指示装置。
[12]印刷指示装置から第1の画像と印刷を指示する印刷指示情報とを受け付ける受付手段と、
前記印刷指示情報に応じて、前記第1の画像と異なる属性を有する第2の画像を生成する第2の画像生成手段と、
前記第1の画像に含まれる情報に対する前記第2の画像に含まれる情報の再現性を評価する評価手段と、
を備える、画像処理装置。
[13]コンピュータを、
印刷の対象となる印刷対象データから第1の画像を生成する第1の画像生成手段と、
前記印刷対象データの印刷を指示する印刷指示情報を生成する印刷指示生成手段と、
前記印刷指示情報に応じて、前記第1の画像と異なる属性を有する第2の画像を生成する第2の画像生成手段と、
前記第1の画像に含まれる情報に対する前記第2の画像に含まれる情報の再現性を評価する評価手段として
機能させるためのプログラム。
[14]コンピュータを、
印刷の対象となる印刷対象データから第1の画像を生成する第1の画像生成手段と、
前記印刷対象データの印刷を指示する印刷指示情報を生成する印刷指示生成手段と、
前記第1の画像と前記印刷指示情報とを画像処理装置に送信する送信手段として、
機能させるためのプログラム。
[15]コンピュータを、
印刷指示装置から第1の画像と印刷を指示する印刷指示情報とを受け付ける受付手段と、
前記印刷指示情報に応じて、前記第1の画像と異なる属性を有する第2の画像を生成する第2の画像生成手段と、
前記第1の画像に含まれる情報に対する前記第2の画像に含まれる情報の再現性を評価する評価手段として、
機能させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0007】
請求項1、11、12、13、14、15に係る発明によれば、目視による確認や撮影による確認によらなくとも、印刷データの再現性を評価することができる。
請求項2に係る発明によれば、データの容量を抑制することができる。
請求項3に係る発明によれば、予め印刷装置が生成した画像を用いて印刷データの再現性を評価することができる。
請求項4に係る発明によれば、評価の結果に応じて印刷データを視覚的に表示することができる。
請求項5に係る発明によれば、評価の結果に応じて印刷データの出力する方法を選択することができる。
請求項6に係る発明によれば、ページごとに印刷データの再現性を評価することができる。
請求項7、8に係る発明によれば、評価の効率を向上させることができる。
請求項9、10に係る発明によれば、評価に係る時間を短縮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0010】
[実施の形態の要約]
本実施の形態に係る画像処理システムは、印刷の対象となる印刷対象データから第1の画像を生成する第1の画像生成手段と、印刷対象データの印刷を指示する印刷指示情報を生成する印刷指示生成手段と、印刷指示情報に応じて、第1の画像と異なる属性を有する第2の画像を生成する第2の画像生成手段と、第1の画像に含まれる情報に対する第2の画像に含まれる情報の再現性を評価する評価手段とを備える。
【0011】
「印刷の対象となるデータ」には、例えば、アプリケーションにより作成される文書データや画像データが含まれる。「再現性」とは、画像に含まれる情報が再現されている度合いをいう。「属性」は、出力の形式、画素数、画素値、解像度、画質等の情報を広く含む。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像処理システムの構成を示す図である。この画像処理システム1は、印刷指示装置2と、画像処理装置3と、これら印刷指示装置2及び画像処理装置3にネットワーク5を介して接続されたプリンタ4とを有して構成されている。
【0013】
印刷指示装置2には、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット型端末、多機能携帯電話機(スマートフォン)等の携帯情報端末が含まれる。画像処理装置3には、プリントサーバ等の機能を有するサーバ装置が該当する。画像処理装置3は、例えば、DFE(Digital Front End)装置である。
【0014】
プリンタ4は、印刷装置の一例である。プリンタ4は、単数でもよく、複数でもよい。ネットワーク5は、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット、イントラネット等であり、有線でも無線でもよい。
【0015】
(印刷指示装置2の構成)
図2は、
図1に示す印刷指示装置2の制御系を示すブロック図である。この印刷指示装置2は、各部を制御する制御部20と、各種のデータを記憶する記憶部21と、キーボードやマウス等で実現される入力部23と、液晶ディスプレイ等で実現される表示部24と、画像処理装置3及びプリンタ4との間でネットワーク5を介して通信するネットワーク通信部28とを備える。
【0016】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)、インターフェース等から構成されている。制御部20は、記憶部21に記憶されたプリンタドライバ210に従って動作することにより、変換手段202、ジョブ生成手段203、描画手段204、送信手段205、表示制御手段206等として機能する。ジョブ生成手段203は、印刷指示生成手段の一例である。描画手段204は、第1の画像生成手段の一例である。各手段202〜206の詳細については、後述する。
【0017】
記憶部21は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク等から構成される。記憶部21は、プリンタドライバ210、アプリケーション211、GDI(Graphic Device Interface)212等のプログラムや、印刷ジョブ情報213、文書データ215、画像データ216等の各種データを記憶する。印刷ジョブ情報213は、印刷を指示する印刷指示情報の一例である。文書データ215及び画像データ216は、印刷の対象となる印刷対象データの一例である。
【0018】
プリンタドライバ210は、GDI212からの指示に従って各種処理を実行する。プリンタドライバ210は、印刷指示装置2に接続しているプリンタ4に応じて設けられる。
【0019】
アプリケーション211は、印刷の対象となる文書データ215や画像データ216を作成するプログラムである。アプリケーション211には、例えば、文書作成プログラム、図形作成プログラム、表計算プログラム等が含まれる。また、アプリケーション211には、例えば、帳票等の対象物を作成するフォーマットの情報が記録された帳票設計データ211Aが含まれる。
【0020】
なお、本明細書において、特定のデータに情報を書き込む場合に「記録」を用い、記憶部21に情報を書き込む場合に「記憶」を用いる。
【0021】
アプリケーション211は、文書データ215や画像データ216に対する印刷が指示されると、GDI212に描画を指令する描画指令を発行する。
【0022】
GDI212は、直線や曲線等を用いた描画や、フォントの制御等の処理を行う規格の一つである。GDI212は、アプリケーション211から受け付ける描画指令や、アプリケーション211に対して行われる操作者(以下、「ユーザ」ともいう。)の各種操作(例えば、印刷の条件を設定する操作)に応じてプリンタドライバ210に動作を指示する。
【0023】
印刷ジョブ情報213は、印刷ジョブと、この印刷ジョブを識別する識別情報(「ジョブID」ともいう。)とを関連付けた情報である。印刷ジョブは、画像処理装置3やプリンタ4が解釈できるページ記述言語(PDL:Page Description Language)で記述されたデータ(以下、単に「印刷データ」又は「PDL213A」ともいう。)と、両面/片面や部数等の各種の印刷の条件(「印刷オプション」ともいう。)等の印刷の属性を示す属性情報(以下、「ジョブチケット213B」ともいう。)とを含んで構成された印刷指示である。
【0024】
PDLには、例えば、PDF(Portable Document Format)や、PostScript(登録商標)、PCL(Printer Command Language)等の異なる形式で出力される複数の種類が含まれる。
【0025】
入力部23と表示部24とは、別体として設けてもよく、入力部と表示部とを一体化した操作表示部として設けてもよい。一体化して設ける場合、操作表示部には、例えば、液晶ディスプレイ等のディスプレイにタッチパネルを重合配置した構成を有するタッチパネルディスプレイを用いてもよい。
【0026】
ネットワーク通信部28は、ネットワーク5を介して、プリンタ4やその他の外部装置との間で信号を送受信する。ネットワーク通信部28は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。
【0027】
次に、制御部20の各手段202〜206について説明する。変換手段202は、印刷の対象となる文書データ215や画像データ216をPDLで記述された印刷データ(すなわち、PDL213A)に変換する。また、変換手段202は、印刷オプションをジョブチケット213Bに変換する。
【0028】
ジョブ生成手段203は、変換手段202により変換された、PDL213A及びジョブチケット213Bを含む印刷ジョブを生成する。また、ジョブ生成手段203は、生成した印刷ジョブを記憶部21に記憶する。
【0029】
描画手段204は、文書データ215や画像データ216から、検査用の画像(以下、「検査用イメージ217」ともいう。)を生成する。検査用イメージ217は、第1の画像の一例である。なお、別の表現として、検査用イメージ217は、評価用の画像、参照用の画像、あるいは、画像処理装置3からの出力が期待される期待値画像等と呼んでもよい。
【0030】
検査用イメージ217は、例えば、ビットマップ形式の画像である。検査用イメージは、好ましくは、モノクロで生成されるが、グレースケールやカラーで生成してもよい。また、検査用イメージ217は、文書データ215や画像データ216の内容や表紙を縮小して示した画像(以下、「サムネイル画像」ともいう。)でもよい。サムネイル画像は、第1の画像の一例である。
【0031】
好ましくは、検査用イメージ217は、低解像度で生成される。例えば、検査用イメージの解像度は、ジョブチケット213Bに印刷オプションの1つとして記録された解像度(例えば、読み取りや印刷等の条件として設定された解像度)よりも低くてもよい。ジョブチケット213Bに記録された解像度は、予め定められた解像度の一例である。
【0032】
なお、印刷の対象となるデータが複数のページを含んで構成されている場合、描画手段204は、各ページからそれぞれ検査用イメージ217を出力してもよく、全ページから一つの検査用イメージ217を出力してもよい。
【0033】
送信手段205は、印刷ジョブとともに、検査用イメージ217をネットワーク通信部28によりネットワーク5を介して画像処理装置3に送信する。
【0034】
表示制御手段206は、表示部24に各種情報を表示するよう制御する。例えば、表示制御手段206は、アプリケーション211を操作する画面を表示部24に表示するよう制御する。また、例えば、表示制御手段206は、画像処理装置3の指令に基づいて、エラーページ画像(後述する)や、エラーメッセージ(後述する)を表示部24に表示するよう制御する。なお、表示制御手段206は、再現性を示す評価値に応じてステータス(例えば、「Verify OK」や「Verify NG」等)を表示するよう制御してもよい。
【0035】
(画像処理装置3の構成)
図3は、
図1に示す画像処理装置3の制御系を示すブロック図である。この画像処理装置3は、各部を制御する制御部30と、各種のデータを記憶する記憶部31と、印刷指示装置2及びプリンタ4との間でネットワーク5を介して通信するネットワーク通信部28とを備える。
【0036】
画像処理装置3の制御部30は、CPU(Central Processing Unit)、インターフェース等から構成されている。画像処理装置3の制御部30は、記憶部31に記憶されたプログラム310に従って動作することにより、受付手段300、RIP制御手段302、検査手段304、記録手段305、印刷指示手段307、送信手段308等として機能する。検査手段304は、評価手段の一例である。各手段の詳細については、後述する。
【0037】
画像処理装置3の記憶部31は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク等から構成される。記憶部31は、プログラム310やRIP(Raster Image Processor)ソフトウェア314等のプログラムや、PDL213A及びジョブチケット213Bから構成される印刷ジョブ情報213、検査用イメージ217、設定情報318(
図5参照)、エラーページ情報319等の各種データを記憶する。
【0038】
RIPソフトウェア314は、印刷指示情報に応じて、1ドット(画素、pixel)単位の点の集まりで構成されたビットマップ形式の印刷用の画像(以下、「印刷画像」又は「ラスターイメージ314A」ともいう。)を生成するソフトウェアである。具体的には、RIPソフトウェア314は、印刷指示情報に含まれるPDL213Aをラスターイメージ314Aに変換する。RIPソフトウェア314は、PDL213Aの種類に対応するものが用いられる。RIPソフトウェア314は、第2の画像生成手段の一例である。
【0039】
ラスターイメージ314Aは、上述した検査用イメージ217と異なる属性を有する。なお、「属性」には、下記に例示的に列挙する出力の形式(記録のフォーマットのこと。以下、単に「出力形式」ともいう。)、画素数、画素値、解像度、画質等が含まれる。
【0040】
ラスターイメージ314Aは、例えば、JPEG(Joint Photographic Experts Group)、TIFF(Tag Image File Format)、GIF(Graphics Interchange Format)、PNG(Portable Network Graphics)等の出力形式で生成される。ラスターイメージ314Aは、第2の画像の一例である。
【0041】
印刷ジョブ情報213及び検査用イメージ217は、印刷指示装置2から送信された情報である。エラーページ情報319は、後述する検査においてエラー(後述する)が含まれると判定されたページの画像(以下、単に「ページ画像」ともいう。)を識別する情報である。ページ画像を識別する情報は、例えば、当該ページ画像の全印刷データ(PDL213A)における位置(当該ページが何ページ目に位置しているか)を示す位置情報が該当する。
【0042】
(設定情報318)
図5は、設定情報318の一例を示す図である。
図5に示すように、設定情報318は、エラーの検出の判定に用いる一致率(後述する)に係る閾値や、エラーが検出されたページ画像の扱いに関する情報を含んで構成される。
【0043】
設定情報318は、例えば、アプリケーション211上で起動する設定を行うための設定画面(不図示)の操作により設定できる。設定画面は、選択手段の一例である。
【0044】
図5に示すように、「エラーを検出した際のページ画像の扱い」には、例えば、「ジョブアボート」(すなわち、当該ジョブのキャンセル又は停止)、「停止してユーザに確認」、「ページ画像をオフセットして出力」、「ページ画像を特定のスタッカーに出力」等の複数(本実施の形態では4種類)の選択肢が含まれる。これら選択肢は、ラスターイメージ314A(特に、エラーページ画像)を出力する方法の一例である。
【0045】
なお、「オフセットして出力」するとは、エラーが検出されたページ画像が印刷出力されないように、当該ページ画像の位置をずらして印刷出力することをいう。スタッカーは、印刷出力された印刷物(すなわち、印刷対象が印刷された印刷媒体)の排出先の一例であり、例えば、トレイが該当する。
【0046】
次に、制御部30の各手段について説明する。受付手段300は、印刷指示装置2から送信された各種データや各種情報に係る信号を受け付ける。また、受付手段300は、印刷指示装置2から受け付けた印刷ジョブ情報213及び検査用イメージ217を記憶部31に記憶する。
【0047】
RIP制御手段302は、記憶部31のRIPソフトウェア314を制御して、ラスターイメージ314Aを生成させる。具体的には、RIPソフトウェア314を制御して、PDL213Aをジョブチケット213Bに応じたラスターイメージ314Aに変換させることによりラスターイメージ314Aを生成させる。また、RIP制御手段302は、生成されたラスターイメージ314Aを記憶部31に記憶する。
【0048】
RIPソフトウェア314は、RIP制御手段302の制御に基づいて、PDL213Aからジョブチケット213Bに応じたラスターイメージ314Aを生成する。
【0049】
検査手段304は、RIPソフトウェア314により生成されたラスターイメージ314Aが期待通りに生成されたものであるか否かを検査する。ここで、「期待通りに生成されたものである」とは、ラスターイメージ314Aに文字化け等の不具合(「エラー」ともいう。)が含まれていないことをいう。「期待通りに生成されたものでない」とは、例えば、RIPソフトウェア内の何らかの原因(例えば、フォットキャッシュのヒットミス)よってラスターイメージ314Aに文字化け等のエラーが含まれていることをいう。
【0050】
具体的には、検査手段304は、印刷指示装置2から送信された検査用イメージ217に含まれる情報に対するラスターイメージ314Aに含まれる情報の再現性を評価することにより、当該ラスターイメージ314Aが期待通りに生成されたものであるか否かを検査する。以下の説明では、単に、「評価する」又は「検査する」ともいう。
【0051】
ここで、「検査用イメージ217に含まれる情報に対するラスターイメージ314Aに含まれる情報の再現性」とは、ラスターイメージ314Aに含まれる情報が検査用イメージ217に含まれる情報がどの程度に再現されているかを示す度合いをいう。「イメージに含まれる情報」には、イメージ(検査用イメージ217又はラスターイメージ314A)から読み取れる像の輪郭、形状、模様のパターン等が含まれる。
【0052】
より具体的には、検査手段304は、ラスターイメージ314Aを、検査用イメージ217と比較することにより、検査用イメージ217に対するラスターイメージ314Aの再現性を評価する。
【0053】
ラスターイメージ314Aと検査用イメージ217との比較は、公知の技術を用いてよい。例えば、面順次や、点順次で比較してもよい。また、印刷の対象となるデータが複数のページを含んで構成されている場合、検査手段304は、ページごとに、ラスターイメージ314Aの再現性を評価する。
【0054】
一例として、検査手段304は、当該ラスターイメージ314Aが対応する検査用イメージ217に一致する度合いに応じた標評値(以下、「一致率」ともいう。)を出力する。
【0055】
一致率の算出には、公知の技術を用いてよい。例えば、印刷対象をエッジリスト化する方法を用いてよい。具体的には、ラスターイメージ314A及び検査用イメージ217に対して、それぞれ、予め定められた一定の方向から走査を行う。次に、白色から有色に変化する画素(すなわち、オブジェクトのエッジ)を検出して、画像全体において、走査したラインごとに白色の長さ(白色の画素数)と、有色の長さ(有色の画素数)とからなる数値列データ(すなわち、長さ情報の配列集合)を生成する。すなわち、対象画像をエッジリスト化する。次に、長さ情報の配列集合を比較する画像ごとに作成し、白色の長さと有色の長さとの比率に応じて、画像の類似性を計算し一致率として出力する。なお、白色から有色に変化する点に代えて、色調が一定以上の度合いで変化する点をエッジとしてもよい。なお、このエッジリスト化は、一致率の算出方法の一例であり、この方法に限定されるものではない。
【0056】
また、検査手段304は、この一致率が記憶部31の設定情報318に記録された閾値以上のときに、ラスターイメージ314Aが期待通りに生成されたものであると判定する。設定情報318に記録された閾値は、予め定められた値の一例である。
【0057】
また、検査手段304は、求めた一致率が設定情報318に記録された閾値未満ときに、ラスターイメージ314Aが期待通りに生成されたものでないと判定する。
【0058】
記録手段305は、検査手段304により、ラスターイメージ314Aが期待通り生成されたものでないと判定されたとき、当該ページ(以下、「エラーページ」ともいう。)を識別する情報を記憶部31のエラーページ情報319に記録する。
【0059】
印刷指示手段307は、指定されたプリンタ4に対して印刷の実行を指示する。具体的には、印刷指示手段307は、ラスターイメージ314Aをネットワーク通信部28によりネットワーク5を介して指定されたプリンタ4に送信することにより、印刷の実行を指示する。
【0060】
送信手段308は、エラーページのページ画像(「エラーページ画像」ともいう。)や、エラーが発生したことを示す警告(エラーメッセージ)を表示するよう指令する表示指令情報をネットワーク通信部28によりネットワーク5を介して印刷指示装置2に送信する。
【0061】
(プリンタ4の構成)
図4は、
図1に示すプリンタ4の制御系を示すブロック図である。
図4に示すように、プリンタ4は、各部を制御する制御部40と、各種データを記憶する記憶部41と、印刷画像を印刷出力する画像出力部47と、印刷指示装置2及び画像処理装置3との間で通信を行うネットワーク通信部28とを備える。
【0062】
プリンタ4の制御部40は、CPU(Central Processing Unit)、インターフェース等から構成されている。プリンタ4の制御部40は、記憶部41に記憶されたプログラム410に従って動作することにより、受付手段400、印刷実行手段402等として機能する。
【0063】
受付手段400は、プリンタ4に送信される各種情報(例えば、ラスターイメージ314A)を受け付ける。印刷実行手段402は、後述する画像出力部47を制御して印刷を実行する。
【0064】
プリンタ4の記憶部41は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成され、プログラム410や、画像処理装置3から送信されたラスターイメージ314A等の各種データを記憶する。
【0065】
(第1の実施の形態の動作)
次に、第1の実施の形態に係る画像処理システム1の動作の一例について
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は、第1の実施の形態に係る画像処理システム1の動作の一例を示すフローチャートである。
図7は、
図6のフローチャートに示す動作を模式的に説明する図である。
【0066】
<印刷指示装置2の動作1>
ユーザが印刷指示装置2の表示制御手段206により表示部24に表示されたアプリケーション211を操作して印刷オプションの設定及び印刷を指示すると、アプリケーション211は、GDI212に対して描画指令を発行する(
図7の矢印「R1」参照)。GDI212は、描画指令を受け付け、プリンタドライバ210に動作を指示する。印刷指示装置2の制御部20は、プリンタドライバ210の指示に従って以下のように動作する。
【0067】
まず、変換手段202は、印刷の対象となるデータ(文書データ215や画像データ216)をPDL213Aに変換する(S1)。また、変換手段202は、設定された印刷オプションをジョブチケット213Bに変換する(S2)。
【0068】
次に、ジョブ生成手段203は、PDL213Aと、ジョブチケット213Bとを含む印刷ジョブを生成する(S3)。
【0069】
次に、描画手段204は、印刷の対象となるデータから検査用イメージ217を生成する(S4)。
【0070】
送信手段205は、印刷ジョブとともに、検査用イメージ217を画像処理装置3に送信する(S5)(
図7の矢印「R2」及び「R3」参照)。
【0071】
<画像処理装置3の動作>
画像処理装置3の制御部30は、プログラム310の指示に従って以下のように動作する。受付手段300は、印刷指示装置2から送信された印刷ジョブ及び検査用イメージ217を受け付ける(S6)。このとき、受付手段300は、受け付けたデータを画像処理装置3の記憶部31に記憶する。
【0072】
RIPソフトウェア314は、RIP制御手段302の制御に基づいて、PDL213Aをジョブチケット213Bに応じたラスターイメージ314Aに変換する(S7)。すなわち、RIPソフトウェア314は、PDL213Aからジョブチケット213Bに応じたラスターイメージ314Aを生成する。また、RIP制御手段302は、生成されたラスターイメージ314Aを記憶部31に記憶する(
図7の矢印「R4」参照)。
【0073】
検査手段304は、ラスターイメージ314Aと検査用イメージ217との一致率を求める(S8)。一致率が設定情報318に記録された閾値以上の場合(S9:Yes)、印刷指示手段307は、プリンタ4に対して印刷の実行を指示する(S10)。すなわち、印刷指示手段307は、当該ラスターイメージ314Aを指定されたプリンタ4に送信する(
図7の矢印「R5」参照)。
【0074】
一致率が設定情報318に記録された閾値未満場合(S9:No)、記録手段305は、エラーページを識別する情報をエラーページ情報319に記録する(S11)。
【0075】
設定情報318の「エラー検出されたページ画像の扱い」欄において、「停止してユーザ確認」が選択されている場合(S12:Yes)、送信手段308は、印刷指示装置2に、エラーページ画像及びエラーメッセージを表示するよう指令する表示指令情報を送信する(S13)。
【0076】
<プリンタ4の動作>
プリンタ4の制御部40は、プログラム410に従って以下のように動作する。プリンタ4の受付手段400が画像処理装置3から印刷の実行の指示(すなわち、ラスターイメージ314A)を受け付けると、印刷実行手段402は、ラスターイメージ314Aの印刷を実行する(S14)。
【0077】
<印刷指示装置2の動作2>
画像処理装置3から表示指令情報を受け付けると、表示制御手段206は、エラーページ画像や、エラーメッセージを表示部24に表示するよう制御する(S16)。
【0078】
この場合、ユーザは、表示部24に表示されたエラーページ画像等を確認し、必要に応じて、印刷指示装置2のアプリケーション211に対して操作を行い、画像処理装置3やプリンタ4に対して、例えば、アプリケーション211から次の処理の実行を指示する。
【0079】
以上のようにすれば、例えば、RIPソフトウェア314の内部に設けられたリソース(自体フォントやカラープロファイル等)やRIPソフトウェア314が実装される画像処理装置3に依存することによって、出力されるラスターイメージ314Aに情報が正確に再現されないような場合に、当該ラスターイメージ314Aをそのまま印刷出力してしまうことを抑制するこができる。
【0080】
また、本発明は、例えば、請求書や領収書等異なる内容のものをそれぞれの配布者に向けて印刷する場合(以下、「バリアブル印刷」ともいう)に、特に有効である。すなわち、本発明によると、バリアブル印刷で目視による検査を行う場合に発生する虞のある、検査者間の検査の精度のバラツキや検査に多人数を要することによる検査のコストの上昇を抑制することができる。また、本発明によると、バリアブル印刷には馴染みにくい、カメラ等が搭載された検査装置や、バーコード装置を導入しなくとも検査を行うことができる。
【0081】
以下、第1の実施の形態の変形例について説明する。
<変形例1−1>
文書データ215又は画像データ216が複数のページを含んで構成されている場合、描画手段204は、全てのページではなく、特定のページを選択して検査用イメージ217を生成してもよい。例えば、描画手段204は、特定のページの数ごとに(以下、「周期」ともいう。)、検査用イメージ217を生成してもよい。
【0082】
<変形例1−2>
また、検査手段304は、PDL213Aを構成する全てのページに対して検査を行わず、特定のページを選択して検査を行ってもよい。例えば、画像処理装置3の検査手段304は、特定のページの数ごとにラスターイメージ314Aの検査を行ってもよい。
【0083】
一例として、印刷指示装置2のジョブ生成手段203が何ページごとに検査を行うかの周期を示す周期情報をジョブチケット213Bに含めて印刷ジョブを生成する。周期情報は、ページの数を示す情報の一例である。印刷指示装置2の送信手段205は、この周期情報をジョブチケット213Bに添付して画像処理装置3に送信する。
【0084】
画像処理装置3の受付手段300が受け付けたジョブチケット213Bに周期情報が添付されている場合、検査手段304は、当該印刷ジョブに応じて特定のページの数ごとにラスターイメージ314Aの検査を行うようにしてもよい。
【0085】
<変形例2>
描画手段204は、文書データ215や画像データ216の全体を描画して検査用イメージを生成せずに、文書データ215や画像データ216に含まれる文字を示す文字情報(「文字オブジェクト」ともいう。)のみを描画して検査用イメージを生成してもよい。
【0086】
一例として、描画手段204は、文字オブジェクトのみを描画した低解像度のイメージ(以下、「検査用文字イメージ」ともいう。)を生成する。検査用文字イメージは、第1の画像の一例である。
【0087】
また、ジョブ生成手段203は、検査用イメージが検査用文字イメージであることを示す情報(以下、「ヒント情報」ともいう。)をジョブチケット213Bに含めて印刷ジョブを生成する。また、送信手段205は、このヒント情報を印刷チケット213Bに添付して検査用文字イメージとともに画像処理装置3に送信する。
【0088】
画像処理装置3の受付手段300が受け付けたジョブチケット213Bにヒント情報が添付されている場合、画像処理装置3の検査手段304は、ラスターイメージ314Aから文字が含まれる特徴点を抽出し、抽出した特徴点を検査用文字イメージと比較することによりラスターイメージ314Aの検査を行ってもよい。例えば、上述したエッジリスト化により検査用イメージから抽出されたオブジェクトのエッジが、予め文字のみを抽出され文字情報のみが含まれる検査用画から抽出したエッジを含んでいるか否かを検査してもよい。このようにすれば、文字以外の情報(例えば、図形情報)を検査の対象から除外することができる。
【0089】
なお、文字オブジェクトのみを描画するか否かは、例えば、上述した設定委画面に対するユーザの操作に応じて設定してもよい。一例として、ユーザが設定した情報は、印刷指示装置2の記憶部21に記憶してもよい。例えば、文字オブジェクトのみを描画して検査用文字イメージを生成する機能を有効とする場合「オン」と記憶し、当該機能を無効として文書データ215や画像データ216の全体を描画して検査用イメージを生成する場合「オフ」と記憶してもよい。
【0090】
<変形例3>
画像処理装置3は、エラーページ画像のみを別のプリンタで印刷してもよい。一例として、画像処理装置3は、エラーページ情報319を参照して、エラーページ情報319にエラーページとして記録されたページ画像のみを別のプリンタで印刷してもよい。具体的には、印刷指示手段307は、エラーページ画像に係るラスターイメージ314Aを別のプリンタに送信して、別のプリンタ4に対して当該エラーページ画像の印刷の実行を指示してもよい。
【0091】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について、
図8及び
図9を参照して説明する。
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る画像処理システム1の構成例を示す図である。
図8に示すように、第2の実施の形態における画像処理装置3は、第1の実施の形態で説明した画像処理装置3の機能に加えて印刷装置としての機能を有する点で、第1の実施の形態における画像処理システム1と相違する。
【0092】
すなわち、第2の実施の形態における画像処理装置3は、第1の実施の形態で説明した画像処理装置3とプリンタ4とを一体化したものである。換言すれば、第2の実施の形態における画像処理装置3は、プリントサーバ機能を備えた印刷装置でもある。以下、第1の実施の形態と同様の構成及び機能を有する要素については同一の符号を付してその詳細な説明を省略するとともに、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0093】
(画像処理装置3の構成)
図9は、第2の実施の形態に係る画像処理装置3の制御系の一例を示すブロック図である。この画像処理装置3は、例えば、スキャン機能、プリンタ機能、コピー機能、ファクシミリ機能、電子メール機能等の複数の機能を有する複合機である。なお、画像処理装置3は、複合機に限定されるものではない。
【0094】
図9に示すように、画像処理装置3は、第1の実施の形態で説明した構成に加えて、情報の入力及び表示を行う操作表示部35と、原稿から原稿画像を読み取る画像読取部36と、上述した画像出力部47と、外部ファクシミリ装置7に対して公衆回線網8を介してファクシミリ送受信を行うファクシミリ通信部39とをさらに備える。画像出力部47は、印刷装置の一例である。
【0095】
画像処理装置3の制御部30のCPUは、記憶部31に記憶されたプログラム310に従って動作することにより、第1の実施の形態で説明した機能に加えて、実行手段306、表示制御手段309等としてさらに機能する。なお、印刷指示手段307は、必ずしも設けなくともよい。
【0096】
実行手段306は、画像読取部36、画像出力部47、ファクシミリ通信部39等を制御して各処理を実行する。例えば、実行手段306は、記憶部31に記憶された印刷ジョブ情報213に応じて、画像出力部47を制御して印刷を実行する。
【0097】
表示制御手段309は、操作表示部35の表示面にエラーエージ画像や、エラーメッセージを表示するよう制御する。
【0098】
操作表示部35は、例えば、タッチパネルディスプレイであり、液晶ディスプレイ等のディスプレイにタッチパネルを重合配置した構成を有する。
【0099】
画像読取部36は、原稿から原稿画像を読み取るものであり、原稿台上に設けられた自動原稿送り装置(例えば、自動原稿搬送装置(ADF:Auto Document Feeder)や、両面自動原稿搬送装置(DADF:Dual Auto Document Feeder))と、スキャナとを備え、原稿台に配置された原稿、又は自動原稿送り装置により送られた原稿から原稿画像を光学的に読み取る。
【0100】
ファクシミリ通信部39は、G3、G4等のファクシミリプロトコルに従ってデータの変復調を行い、公衆回線網8を介してファクシミリ通信を行う。
【0101】
(第2の実施の形態の動作)
第2の実施の形態に係る画像処理システム1の動作は、実質的に第1の実施の形態に係る画像処理システム1の動作と同様のため、詳細な説明は省略する。なお、例えば、画像処理装置3の表示制御手段309が、操作表示部35の表示面にエラーページ画像やエラーメッセージを表示するよう制御する動作をさらに加えてもよい。この場合、操作表示部35の表示面へのエラーページ画像やエラーメッセージの表示は、例えば、画像処理装置3の送信手段308が表示指令情報を印刷指示装置2に送信する動作(ステップS13参照)に加えて行ってもよく、当該動作に代えて行ってもよい。
【0102】
<変形例4>
なお、印刷指示装置2の制御部20に設けられている手段の一部を画像処理装置3の制御部30に移動してもよい。また、画像処理装置3の制御部30に設けられている手段の一部を印刷指示装置2の制御部20に移動してもよい。
【0103】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施の形態は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の変形、実施が可能である。
【0104】
制御部20,30,40の各手段は、それぞれ一部又は全部を再構成可能回路(FPGA:Field Programmable Gate Array)、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)等のハードウエア回路によって構成してもよい。
【0105】
また、本発明の要旨を変更しない範囲内で、上記実施の形態の構成要素の一部を省くことや変更することが可能である。また、本発明の要旨を変更しない範囲内で、上記実施の形態のフローにおいて、ステップの追加、削除、変更、入替え等が可能である。また、上記実施の形態で用いたプログラムをCD−ROM等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供することができ、クラウドサーバ等の外部サーバに格納しておき、ネットワークを介して利用することもできる。