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特開2019-221059整流子、電動機および整流子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-221059(P2019-221059A)
(43)【公開日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】整流子、電動機および整流子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20191129BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20191129BHJP
   B29C 33/14 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   H02K13/00 E
   B29C45/14
   B29C33/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-116447(P2018-116447)
(22)【出願日】2018年6月19日
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】嶋崎 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】藤田 克敏
(72)【発明者】
【氏名】従野 知子
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
5H613
【Fターム(参考)】
4F202AB25
4F202AD03
4F202AD07
4F202AD19
4F202AD23
4F202AH81
4F202CA11
4F202CB12
4F202CK06
4F202CQ01
4F206AB25
4F206AD03
4F206AD07
4F206AD19
4F206AD23
4F206AG13
4F206AH81
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF05
5H613AA01
5H613BB04
5H613BB08
5H613BB09
5H613BB15
5H613GA06
5H613GB02
5H613GB06
5H613GB08
5H613GB09
5H613GB17
5H613KK03
5H613KK04
5H613KK18
5H613PP08
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れた整流子およびこの整流子の製造方法等を提供する。
【解決手段】電動機2が備える回転軸13が挿入される貫通孔101が形成された整流子本体100と、電動機2が備えるブラシ15が摺接する面として整流子本体100から露出する露出面を有する露出部210および整流子本体100に埋設される埋設部220を有する複数の整流子片200とを備える整流子14であって、埋設部220における回転軸13の軸方向の一方端220aと他方端220bとの間の中間部位に第1切り欠き231が設けられた整流子14の製造方法において、第1切り欠き231が設けられた位置の高さにゲート520を有する射出成形用金型500に複数の整流子片200を環状に並べてセットし、ゲート520から整流子片200に向けて樹脂600を注入して埋設部220を樹脂600で埋設することによって整流子本体100を成形する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機が備える回転軸が挿入される貫通孔が形成された整流子本体と、
前記整流子本体に一部が埋め込まれた複数の整流子片と、を備える整流子の製造方法であって、
前記複数の整流子片の各々は、
前記電動機が備えるブラシが摺接する面として、前記整流子本体から露出する露出面を有する露出部と、
前記整流子本体に埋設された埋設部と、
前記埋設部における前記回転軸の軸方向の一方端と他方端との間に位置する中間部位に第1切り欠きと、
を有し、
前記第1切り欠きが位置する高さにゲートを有する射出成形用金型に、前記複数の整流子片を環状に並べてセットし、前記ゲートから前記複数の整流子片に向けて樹脂を注入して前記埋設部を前記樹脂で埋設することによって前記整流子本体を成形する、
整流子の製造方法。
【請求項2】
前記第1切り欠きは、前記回転軸の回転方向<明細書:回転軸が回転する方向>に貫通する貫通孔である、
請求項1に記載の整流子の製造方法。
【請求項3】
前記第1切り欠きは、前記埋設部における内側の端面から前記回転軸と交差する径方向の外側に向けて切り欠かれた形状である、
請求項1に記載の整流子の製造方法。
【請求項4】
前記第1切り欠きの前記軸方向の長さである切り欠き幅は、前記埋設部における内側の端面から外側に向けて漸次大きくなっている、
請求項3に記載の整流子の製造方法。
【請求項5】
前記埋設部は、前記回転軸の回転方向の少なくとも一方側がくびれたくびれ部を有し、
前記第1切り欠きは、前記くびれ部に設けられている、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の整流子の製造方法。
【請求項6】
前記整流子片には、前記埋設部における前記他方端から前記一方端に向けて切り欠かれた形状の第2切り欠きが設けられている、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の整流子の製造方法。
【請求項7】
前記整流子片には、前記埋設部における前記一方端から前記他方端に向けて切り欠かれた形状の第3切り欠きが設けられている、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の整流子の製造方法。
【請求項8】
電動機が備える回転軸が挿入される貫通孔が形成された整流子本体と、
前記整流子本体に一部が埋め込まれた複数の整流子片と、を備え、
前記複数の整流子片の各々は、
前記電動機が備えるブラシが摺接する面として、前記整流子本体から露出する露出面を有する露出部と、
前記整流子本体に埋設された埋設部と、
前記埋設部における前記回転軸の軸方向の一方端と他方端との間に位置する中間部位に第1切り欠きと、
を有し、
前記整流子本体は、複数の補強繊維が分散された樹脂によって構成されており、
前記複数の補強繊維は、前記整流子本体における前記中間部位に対応する位置の内側面から前記一方端側および前記他方端側の各々に分かれるように分布している、
整流子。
【請求項9】
請求項8に記載の整流子と、
前記整流子が固定された回転軸を有する回転子と、を備える、
電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、整流子、整流子を備える電動機および整流子の製造方法に関し、特に、電動送風機等に用いられる整流子電動機が有する整流子および整流子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機等に搭載される電動送風機には、整流子電動機(整流子モータ、ユニバーサルモータともいう。)が用いられる。整流子電動機は、固定子と、固定子の内側に回転自在に配置された回転子と、回転子が有する回転軸に固定された整流子と、を備える。
【0003】
整流子は、例えば、回転軸が挿入される貫通孔を有する筒状の整流子本体と、整流子本体の周方向に亘って、整流子本体の外面に等間隔に配列された複数の整流子片と、を有する。このような構成の整流子としては、複数の整流子片が熱硬化性樹脂によってモールドされたモールド整流子が知られている(例えば特許文献1)。モールド整流子では、整流子本体は、射出成形用金型に注入された熱硬化性樹脂を硬化することで、所定の形状に成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3645426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の整流子の製造方法では、整流子本体の成形時において、樹脂にウェルドが発生し、整流子の耐久性が低下するという課題がある。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、耐久性に優れた整流子およびこの整流子の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示に係る整流子の製造方法の一態様は、電動機が備える回転軸が挿入される貫通孔が形成された整流子本体と、前記整流子本体に一部が埋め込まれた複数の整流子片と、を備える整流子の製造方法であって、前記複数の整流子片の各々は、前記電動機が備えるブラシが摺接する面として、前記整流子本体から露出する露出面を有する露出部と、前記整流子本体に埋設された埋設部と、前記埋設部における前記回転軸の軸方向の一方端と他方端との間に位置する中間部位に第1切り欠きと、を有し、前記第1切り欠きが位置する高さにゲートを有する射出成形用金型に、前記複数の整流子片を環状に並べてセットし、前記ゲートから前記複数の整流子片に向けて樹脂を注入して前記埋設部を前記樹脂で埋設することによって前記整流子本体を成形する。
【0008】
また、本開示に係る整流子の一態様は、電動機が備える回転軸が挿入される貫通孔が形成された整流子本体と、前記整流子本体に一部が埋め込まれた複数の整流子片と、を備え、前記複数の整流子片の各々は、前記電動機が備えるブラシが摺接する面として、前記整流子本体から露出する露出面を有する露出部と、前記整流子本体に埋設された埋設部と、前記埋設部における前記回転軸の軸方向の一方端と他方端との間に位置する中間部位に第1切り欠きと、を有し、前記整流子本体は、複数の補強繊維が分散された樹脂によって構成されており、前記複数の補強繊維は、前記整流子本体における前記中間部位に対応する位置の内側面から前記一方端側および前記他方端側の各々に分かれるように分布している。
【0009】
また、本開示に係る電動機の一態様は、上記整流子と、前記整流子が固定された回転軸を有する回転子と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
耐久性に優れた整流子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る電動送風機の外観斜視図である。
図2】実施の形態に係る電動送風機の半断面図である。
図3】実施の形態に係る整流子の斜視図である。
図4】軸心Cを含む平面で切断したときの実施の形態に係る整流子の断面図である。
図5図4のV−V線における実施の形態に係る整流子の断面図である。
図6】整流子本体を除いた状態の実施の形態に係る整流子の一部分解斜視図である。
図7】実施の形態に係る整流子を製造する際に用いられる射出成形用金型の斜視図である。
図8図7のVIII−VIII線における実施の形態に係る射出成形用金型の断面図である。
図9】実施の形態に係る整流子の製造方法における射出成形工程を説明するための図である。
図10】実施の形態に係る整流子の製造方法により製造された成形品の拡大断面図である。
図11】実施の形態に係る整流子の製造方法により製造された成形品の整流子片にフック部を形成する工程を説明するための図である。
図12】従来の整流子の製造方法を説明するための図である。
図13】変形例1に係る整流子の構成を示す断面図である。
図14】変形例2に係る整流子の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0013】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0014】
(実施の形態)
[電動送風機の構成]
図1および図2を用いて、実施の形態に係る電動送風機1の構成について説明する。図1は、実施の形態に係る電動送風機1の外観斜視図である。図2は、同電動送風機1の半断面図であり、回転軸13の軸心Cを通る平面で切断したときの断面を示している。なお、図2に示される矢印は、電動送風機1内に吸引した空気の流れを示している。
【0015】
図1および図2に示すように、電動送風機1は、回転子11および固定子12を有する電動機2と、電動機2が有する回転軸13に取り付けられた回転ファン3と、回転ファン3から排出された空気が流れ込むエアガイド4と、回転ファン3およびエアガイド4を覆うファンケース5と、回転子11および固定子12を収納するフレーム6と、フレーム6の開口部を跨るように配置されたブラケット7とを備える。
【0016】
電動機2は、回転ファン3を回転させるファンモータである。本実施の形態における電動機2は、ブラシ付き整流子電動機であり、回転子11と、固定子12と、回転軸13と、整流子14と、ブラシ15と、第1軸受け部16と、第2軸受け部17とを備える。
【0017】
回転子11(ロータ)は、固定子12が発生する磁力によって、回転軸13を回転中心として回転する。回転子11は、回転軸13の軸心Cを回転中心として回転する。回転子11は、例えば、40,000rpmで高速回転する。
【0018】
本実施の形態における回転子11は、インナーロータであり、図2に示すように、固定子12の内側に配置されている。具体的には、回転子11は、固定子12との間に微小なエアギャップを介して固定子12に囲まれている。
【0019】
回転子11は、回転子鉄心(ロータコア)11aと、インシュレータを介して回転子鉄心11aに巻回された巻線コイル11b(ロータコイル)と、を有する。回転子鉄心11aは、複数の電磁鋼板が回転軸13の軸心Cが延伸する方向(回転軸方向)に積層された積層体である。回転子鉄心11aに巻回された巻線コイル11bに電流が流れると、回転子11は、固定子12に作用させる磁力を発生する。回転子11は、整流子14が固定された回転軸13を有する。
【0020】
固定子12(ステータ)は、回転子11に作用する磁力を発生させる。本実施の形態において、固定子12は、回転子11を囲むように配置されている。固定子12は、S極およびN極を有する永久磁石によって構成されていてもよいし、固定子鉄心(ステータコア)と巻線コイル(ステータコイル)とによって構成されていてもよい。固定子12は、例えば、フレーム6に固定されている。
【0021】
回転軸13は、回転子11が回転する際の中心となるシャフトである。回転軸13は、軸心C方向である長手方向に延伸している。回転軸13は、例えば金属棒である。回転軸13は、回転子11の中心に固定されている。具体的には、回転軸13は、例えば、回転子11の両側に延在するように、回転子11が有する回転子鉄心11aの中心を貫いた状態で回転子鉄心11aに固定されている。回転軸13は、回転子鉄心11aの中心孔に圧入したり、焼き嵌めしたりすることで回転子鉄心11aに固定されている。
【0022】
回転子11から一方側(回転ファン3側)に突出する回転軸13の第1部位13aは、第1軸受け部16に支持されている。第1部位13aは、出力軸ともいう。一方、回転子11から他方側に突出する回転軸13の第2部位13bは、第2軸受け部17に支持されている。第2部位13bは、反出力軸ともいう。一例として、第1軸受け部16および第2軸受け部17は、回転軸13を支持するベアリングである。このように、回転軸13は、回転自在な状態で第1軸受け部16と第2軸受け部17とに保持されている。なお、第1軸受け部16は、ブラケット7に固定されており、第2軸受け部17は、フレーム6の底部に固定されている。
【0023】
本実施の形態において、回転軸13の第1部位13aは、第1軸受け部16から突出している。第1軸受け部16から突出した回転軸13の先端部には、回転ファン3が取り付けられている。
【0024】
また、回転軸13の第2部位13bには、整流子14が取り付けられている。具体的には、整流子14は、回転軸13における回転子鉄心11aと第2軸受け部17との間の部位に取り付けられている。整流子14は、回転子鉄心11aに巻き回された巻線コイル11bと電気的に接続されている。なお、整流子14の詳細な構成については後述する。
【0025】
整流子14には、ブラシ15が接触している。ブラシ15は、整流子14に接触することで回転子11に電力を供給する給電ブラシである。一例として、ブラシ15は、カーボンブラシである。また、ブラシ15は、長尺状の略直方体である。
【0026】
ブラシ15は、整流子14に摺接可能に一対設けられている。一対のブラシ15は、整流子14を挟持するように、整流子14を挟んで対向して配置される。具体的には、一対のブラシ15の内側の先端部は、整流子14に当接している。より具体的には、各ブラシ15は、トーションバネ等によって整流子14に向けて押圧が付与されており、整流子14に弾接している。本実施の形態において、ブラシ15の長手方向の内側(回転軸13側)の端面が整流子14との接触面となっている。
【0027】
以上のように構成される電動機2では、ブラシ15に供給される電流が整流子14を介して回転子鉄心11aに巻き回された巻線コイル11bに流れる。これにより、回転子11に磁束が発生し、この回転子11に生じた磁束と固定子12から生じる磁束との相互作用によって生じた磁気力が回転子11を回転させるトルクとなり、回転子11が回転する。
【0028】
回転子11が回転することによって、回転子11が固定された回転軸13は、軸心Cを中心として回転する。これにより、電動機2が有する回転軸13に取り付けられた回転ファン3が回転する。
【0029】
回転ファン3は、ファンケース5とフレーム6とにより構成される外郭筐体(ハウジング)内に空気を吸引する。一例として、回転ファン3は、高い吸引圧力が得られる遠心ファンである。回転ファン3が回転することにより風圧が発生し、ファンケース5に形成された吸気口5aから空気が吸い込まれ、回転ファン3から空気が排出される。回転ファン3から排出された空気はエアガイド4に流れ込む。
【0030】
エアガイド4は、気体の流れを整流するためのガイド板として回転ファン3の外周に配置された複数のディフューザ翼を有する。例えば、エアガイド4は、回転ファン3の回転によってファンケース5に形成された吸気口5aから吸引された空気の流れを整流して旋回流を生成し、吸引した気体をフレーム6へと滑らかに流し込む。
【0031】
ファンケース5は、回転ファン3を覆うカバーである。ファンケース5は、フレーム6に固定されている。また、ファンケース5は、外気を吸引するための吸気口5aを有している。回転ファン3が回転することで、ファンケース5に形成された吸気口5aからファンケース5内に空気が流れ込む。
【0032】
フレーム6は、電動機2を収納する筐体(ケース)である。具体的には、フレーム6は、開口部を有する有底筒状体である。フレーム6は、例えばアルミニウム等の金属材料によって構成されているが、樹脂材料によって構成されていてもよい。また、フレーム6の底部の側壁には、回転ファン3の回転によって吸引した空気を外部に排出するために複数の複数の排気口6aが設けられている。
【0033】
ブラケット7は、エアガイド4とともにフレーム6の開口部を覆う板部材である。本実施の形態において、ブラケット7は、フレーム6の開口部を完全に塞ぐことなく、フレーム6の開口部を部分的に覆っている。具体的には、ブラケット7は、フレーム6の開口部を跨るように配置されている。これにより、フレーム6にブラケット7が取り付けられた状態において、フレーム6にはエアガイド4で整流された空気の通風路として開口が存在しており、エアガイド4で整流された空気は、この開口を通過してフレーム6内に流入する。なお、ブラケット7にも、エアガイド4で整流された空気が通過する開口孔が形成されている。
【0034】
このように構成される電動送風機1では、電動機2が備える回転子11が回転すると、回転ファン3が回転し、ファンケース5が有する吸気口5aからファンケース5の内部に空気が吸引される。これにより、回転ファン3の内部に、空気が流れ込む。回転ファン3に吸引された空気は、回転ファン3が含むファン翼により高圧に圧縮されて、回転ファン3の外周側部から径方向に排出される。回転ファン3の外周側部から排出された空気は、回転ファン3を囲むエアガイド4のデュフューザ翼によってファンケース5の外周部へと導かれる。ファンケース5の外周部へと導かれた空気は、エアガイド4とファンケース5との間の空間部で旋回流となり、フレーム6内に流入する。フレーム6内に流入した空気は、フレーム6の排気口6aから電動送風機1の外に排出される。
【0035】
[整流子の構成]
次に、本実施の形態に係る電動送風機1が有する電動機2に用いられる整流子14の詳細な構成について、図3図6を用いて説明する。図3図6は、実施の形態に係る電動送風機1が有する電動機2に用いられる整流子14の構成を示す図であり、図3は、同整流子14の斜視図、図4は、回転軸13の軸心Cを含む平面で切断したときの同整流子14の断面図、図5は、図4のV−V線における同整流子14の断面図、図6は、整流子本体100を除いた状態の同整流子14の一部分解斜視図である。
【0036】
図3図5に示すように、整流子14は、整流子本体100と、各々が整流子本体100に一部が埋め込まれた複数の整流子片200とを備える。本実施の形態における整流子14は、モールド整流子であり、複数の整流子片200が樹脂によってモールドされた構成となっている。整流子14の樹脂部分が整流子本体100となる。
【0037】
図3及び図4に示すように、整流子本体100は、電動機2が備える回転軸13が挿入される貫通孔101が形成された筒状部材である。図4に示すように、整流子本体100の筒軸方向は、回転軸13の軸方向と一致する。つまり、整流子本体100の軸心は、回転軸13の軸心Cと一致し、整流子本体100の周方向は、回転軸13の回転方向と一致する。
【0038】
整流子本体100は、例えば、熱硬化性樹脂等の樹脂材料によって構成されている。整流子本体100を構成する熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂を用いることができる。整流子本体100は、射出成形用金型を用いた射出成形によって所定の形状に成形される。
【0039】
本実施の形態において、整流子本体100は、ガラス繊維等の補強繊維が分散された樹脂材料によって構成されている。これにより、整流子本体100の耐久性を向上させることができる。
【0040】
図3図6に示すように、複数の整流子片200は、整流子本体100の周方向に沿って環状に並べられている。具体的には、複数の整流子片200は、各整流子片200の長手方向が整流子本体100の筒軸方向となる姿勢で、整流子本体100の周方向に沿って整流子本体100の外面に等間隔に配列されている。複数の整流子片200は、銅等の金属材料によって構成されており、互いに絶縁分離された状態で配列されている。図6に示すように、本実施の形態では、隣接する2つの整流子片200の間には板状のスペーサ300が挿入されている。
【0041】
図4及ぶ図5に示すように、各整流子片200は、電動機2が備えるブラシ15が摺接する面として整流子本体100から露出する露出面を有する露出部210と、整流子本体100に埋設された埋設部220とを有する。各整流子片200において、露出部210は、電動機2が備えるブラシ15が摺接する摺接部として機能する。
【0042】
図5に示すように、埋設部220は、回転軸13の回転方向の少なくとも一方側がくびれたくびれ部221を有する。本実施の形態において、くびれ部221は、埋設部220における回転軸13の回転方向(整流子本体100の周方向)の両側の各々に形成されている。これにより、埋設部220には、回転軸13の回転方向の両側に膨出する頭部222が形成される。
【0043】
このように、埋設部220にくびれ部221および頭部222を形成することによって、整流子本体100を構成する樹脂がくびれ部221の凹部に入り込み、くびれ部221が樹脂で埋め込まれる。これにより、くびれ部221および頭部222によって整流子片200が整流子本体100を構成する樹脂から浮き上がることを抑制できるとともに、アンカー効果によって埋設部220と整流子本体100との結合強度を向上させることができる。このように、埋設部220は、アンカー部としてくびれ部221を有しており、整流子片200を整流子本体100に係止させる係止部として機能する。
【0044】
また、図4に示すように、各整流子片200は、埋設部220における回転軸13の軸方向(整流子本体100の筒軸方向)の一方端220aと他方端220bとの間の中間部位に第1切り欠き231を有する。つまり、第1切り欠き231は、埋設部220における整流子片200の長手方向の中間部位に設けられている。具体的には、第1切り欠き231は、くびれ部221における整流子片200の長手方向の中央に設けられている。このように、第1切り欠き231が形成された埋設部220の部位は、くびれ部221が存在しない部分となっている。
【0045】
図5及び図6に示すように、本実施の形態において、第1切り欠き231は、回転軸13の回転方向(整流子本体100の周方向)に貫通する貫通孔である。つまり、第1切り欠き231は、くびれ部221および頭部222のうちくびれ部221のみに形成されており、頭部222は、切り欠かれていない。一例として、第1切り欠き231は、くびれ部221を整流子本体100の周方向に貫通する略矩形状の貫通孔である。
【0046】
このように、埋設部220に第1切り欠き231を形成することによって、整流子本体100を構成する樹脂材料が第1切り欠き231に入り込むので、アンカー効果によって埋設部220と整流子本体100との結合強度を一層向上させることができる。
【0047】
なお、第1切り欠き231は、上述した貫通孔ではなく、くびれ部221の表面から窪んだ凹部形状でもよい。
【0048】
図4及び図6に示すように、各整流子片200には、さらに、埋設部220における他方端220bから一方端220aに向けて切り欠かれた形状の第2切り欠き232と、埋設部220における一方端220aから他方端220bに向けて切り欠かれた形状の第3切り欠き233とが設けられている。
【0049】
本実施の形態において、第2切り欠き232および第3切り欠き233は、くびれ部221に形成されている。具体的には、第2切り欠き232は、くびれ部221の他方端220bを整流子本体100の筒軸方向に窪ませた凹形状である。また、第3切り欠き233は、くびれ部221の一方端220aを整流子本体100の筒軸方向に窪ませた凹形状である。
【0050】
このように、埋設部220に第2切り欠き232および第3切り欠き233を形成することによって、整流子本体100を構成する樹脂材料が第2切り欠き232および第3切り欠き233に入り込むので、アンカー効果によって埋設部220と整流子本体100との結合強度を一層向上させることができる。
【0051】
また、本実施の形態では、図6に示すように、第2切り欠き232には第1リング部材410が配置され、第3切り欠き233には第2リング部材420が配置される。具体的には、環状に並べられた複数の整流子片200の各々の第2切り欠き232にわたって、第1リング部材410が配置されている。第1リング部材410は、複数の整流子片200の各々の第2切り欠き232の根元に配置されている。同様に、環状に並べられた複数の整流子片200の各々の第3切り欠き233にわたって、第2リング部材420が配置されている。第2リング部材420は、複数の整流子片200の各々の第3切り欠き233の根元に配置されている。
【0052】
なお、整流子片200の端部には、フック部240が形成されている。具体的には、フック部240は、露出部210の端部に設けられている。
【0053】
[整流子の製造方法]
次に、実施の形態に係る整流子14の製造方法について説明する。まず、実施の形態に係る整流子14を製造する際に用いられる射出成形用金型500について、図7および図8を用いて説明する。図7は、実施の形態に係る整流子14を製造する際に用いられる射出成形用金型500の斜視図である。図8は、図7のVIII−VIII線における同射出成形用金型500の断面図である。なお、図8では、整流子片200が射出成形用金型500にセットされた状態を示している。
【0054】
本実施の形態における整流子14は、射出成形用金型500を用いた射出成形により、複数の整流子片200を樹脂によってモールドすることで作製できる。
【0055】
図7および図8に示すように、射出成形用金型500は、複数の金型ブロック501によって構成されている。したがって、射出成形用金型500には、隣接する金型ブロック501間のそれぞれにおいて、合わせ面が存在する。複数の金型ブロック501は、例えば金属材料によって構成された金属ブロックである。
【0056】
図8に示すように、射出成形用金型500は、1つの整流子14に対応する複数の整流子片200と、複数の整流子片200を支持する円筒状の当て板502と、がセットされたときに、整流子本体100に対応する形状の空洞部(成形空間)510を有する。本実施の形態では、複数の整流子14を同時に製造できるように、射出成形用金型500には、複数の空洞部510が形成されている。後述するように、ゲート520を通じて空洞部510に樹脂を注入して硬化させることで、空洞部510と同形状の整流子本体100を成形することができる。
【0057】
本実施の形態において、ゲート520は、整流子14が備える整流子片200が有する第1切り欠き231が設けられた位置の高さに形成されている。つまり、ゲート520は、ゲート520の高さ方向の位置と、整流子片200が有する第1切り欠き231の高さ方向の位置とが実質的に同じになっている。ゲート520は、空洞部510における整流子片200の中間部位に対応する位置に繋がっている。なお、ゲート520は、例えばディスクゲートであるが、これに限定されるものではない。
【0058】
次に、本実施の形態における整流子14の製造方法について、図8を参照しながら、図9を用いて説明する。図9は、実施の形態に係る整流子14の製造方法における射出成形工程を説明するための図である。なお、図9の(a)〜(c)において、下図は、射出成形時における射出成形用金型500の部分拡大図であり、上図は、下図のA−A線における整流子片200およびスペーサ300の断面図である。
【0059】
整流子14を製造する場合、まず、図8に示すように、射出成形用金型500の所定の位置に複数の整流子片200を環状に並べてセットする。このとき、第1リング部材410および第2リング部材420を整流子片200に配置するとともに、図9の(a)に示すように、隣接する2つの整流子片200の間にスペーサ300を配置する。
【0060】
次に、図9の(a)〜(c)に示すように、ゲート520から整流子片200に向けて樹脂600が注入される。注入された樹脂600は、整流子片200が有する埋設部220に充填される。埋設部220に樹脂600が充填されることにより、整流子本体100が成形される。
【0061】
具体的には、図9の(a)に示すように、液状の樹脂600が射出成形機(不図示)のノズルからスプルー530内に射出されると、液状の樹脂600は、スプルー530を介してゲート520に送り込まれる。樹脂600の材料としては、複数の補強繊維が分散された熱硬化性樹脂(具体的にはフェノール樹脂)を用いることができる。補強繊維はフィラーとも呼ばれ、ガラス繊維などが利用できる。
【0062】
本実施の形態において、ゲート520はディスクゲートである。よって、ゲート520に供給された樹脂600は、ゲート520によって水平方向の全方向に広がるようにして、射出成形用金型500の空洞部510に注入される。
【0063】
このとき、整流子片200には、第1切り欠き231、第2切り欠き232および第3切り欠き233が設けられているが、ゲート520は、整流子片200の第1切り欠き231が設けられた位置(整流子片200の中間部位)に存在している。よって、図9の(a)に示すように、空洞部510に注入された樹脂600は、第1切り欠き231、第2切り欠き232および第3切り欠き233のうち、まず、整流子片200の真ん中に位置する、第1切り欠き231に流入する。
【0064】
本実施の形態では、第1切り欠き231が貫通孔であるので、ゲート520から空洞部510に注入された樹脂600は、整流子片200が有する頭部222の横を回り込んで、第1切り欠き231内に流れ込む。
【0065】
そして、第1切り欠き231に樹脂600が充填すると、図9の(b)に示すように、整流子片200の中間部位に対応する空洞部510の位置から上方および下方に向けて、樹脂600が流れる。このとき、第2切り欠き232および第3切り欠き233のうち、下端部に位置する第2切り欠き232の方に、先に樹脂600が流入し始める。つまり、樹脂600は、第3切り欠き233よりも先に第2切り欠き232を充填する。
【0066】
そして、第2切り欠き232に樹脂600が充填した後は、図9の(c)に示すように、樹脂600が、上端部に位置する第3切り欠き233に流入して充填する。このように、本実施の形態では、第1切り欠き231(中間部位)、第2切り欠き232(下端部位)および第3切り欠き233(上端部位)の順で、樹脂600が充填される。これにより、整流子片200が有する埋設部220は、樹脂600によって埋設される。
【0067】
次に、第1切り欠き231、第2切り欠き232および第3切り欠き233を含めて空洞部510全体に樹脂600が充填した後は、樹脂600を加熱する。樹脂600を加熱すれば、樹脂600は硬化する。これにより、硬化した樹脂600が整流子本体100となる。よって、この整流子本体100と、埋設部220が硬化した樹脂600(整流子本体100)で埋設された整流子片200と、を有する成形品14Aを得ることができる。
【0068】
図10は、このようにして作製された成形品14Aの拡大断面図である。図11は、同成形品14Aの整流子片200にフック部240を形成する工程を説明するための図である。
【0069】
図9等を用いて説明したように、本実施の形態では、樹脂600を空洞部510に注入するためのゲート520が整流子片200の第1切り欠き231が設けられた位置(整流子片200の中間部位)と向い合うように存在している。よって、整流子片200の中間部位に対応する空洞部510の位置から上方および下方に向けて、樹脂600が流れる。
【0070】
この痕跡として、樹脂600に含まれる複数の補強繊維610が配向する。具体的には、図10に示すように、樹脂600に含まれる複数の補強繊維610が、整流子本体100における中間部位に対応する位置の内側面から上側(埋設部220の一方端220a側)および下側(埋設部220の他方端220b側)の各々に向けて分かれるように分布することになる。つまり、複数の補強繊維610は、各補強繊維610の長手方向が樹脂600の流れ方向に向くように配向され、整流子本体100における中間部位に対応する位置の内側面を起点として下側および上側の各々に向けて湾曲するように分布する。
【0071】
なお、その後は、射出成形用金型500から成形品14Aを取り出し、図11の(a)および(b)に示すように、成形品14Aにおける整流子片200の端部にフック部240を形成する。これにより、整流子14が完成する。
【0072】
[作用効果等]
次に、本開示の技術の作用効果について、図12を用いて本開示の一態様を得るに至った経緯を含めて説明する。図12は、従来の整流子の製造方法を説明するための図である。
【0073】
図12に示すように、従来の整流子が有する整流子片200Xは、本実施の形態に係る整流子14が有する整流子片200と同様に、第1切り欠き231X、第2切り欠き232Xおよび第3切り欠き233Xの3つの切り欠きを有している。なお、従来の整流子片200Xでは、第1切り欠き231Xが、貫通孔ではなく、埋設部220Xにおける内側の端面から外側に向けて切り欠かれた形状になっている。
【0074】
また、従来の射出成形用金型500Xでは、ゲート520Xが、整流子片200Xの第3切り欠き233Xが設けられた位置の高さに形成されている。つまり、ゲート520Xは、整流子片200Xの上端部位に対応する位置に形成されている。
【0075】
本構成において、図12の(a)に示すように、射出成形用金型500Xに複数の整流子片200Xを環状に並べてセットして、ゲート520Xから整流子片200Xに向けて、樹脂600が注入される。空洞部510Xに注入された樹脂600は、まず、整流子片200Xの上端部位に位置する第3切り欠き233Xに流入する。次に、図12の(b)に示すように、整流子片200Xの下端部位に位置する第2切り欠き232Xに、樹脂600が流入する。次に、図12の(c)に示すように、整流子片200Xの中間部位に位置する第1切り欠き231Xに、樹脂600が流入する。このように、従来の方法では、第3切り欠き233X(上端部位)、第2切り欠き232X(下端部位)および第1切り欠き231X(中間部位)の順で、樹脂600が充填していく。
【0076】
このとき、樹脂600を注入する前から射出成形用金型500Xの空洞部510X内に存在していた空気は、樹脂600が注入されることによって、圧縮されながら金型ブロック501Xの合わせ面から外部に排出されていく。つまり、従来の方法では、第1切り欠き231Xに存在していた空気が最後に排出される。よって、第1切り欠き231Xに存在していた空気は、圧縮空気となって、第2切り欠き232Xおよび第3切り欠き233Xに充填された樹脂600を割りながら金型ブロック501Xの合わせ面から外部に排出される。例えば、第1切り欠き231Xに存在していた空気は、図12の(c)の矢印で示される経路で進行する。つまり、第1切り欠き231Xに存在していた空気は、上端部位の第3切り欠き233に充填された樹脂600を割りながら金型ブロック501Xの合わせ面から外部に排出される。
【0077】
このように、第1切り欠き231Xの空気が、第2切り欠き232Xおよび第3切り欠き233Xに充填された樹脂600を割って進むと、つぎの不具合を引き起こすことがある。すなわち、第1切り欠き231Xよりも先に充填された、第2切り欠き232Xおよび第3切り欠き233Xの樹脂600は、既に硬化反応が進んでいる。よって、第2切り欠き232Xおよび第3切り欠き233Xに充填された樹脂600は、第1切り欠き231Xから放出された、圧縮された空気が通過することで、樹脂600の合わせ面にウェルドが発生する。
【0078】
特に、第2切り欠き232Xおよび第3切り欠き233Xのうちゲート520Xに近い第3切り欠き233Xの方が先に充填されているため、第2切り欠き232Xよりも第3切り欠き233Xの方が、硬化反応が進んでいる。このため、特に、ゲート520Xに近く、上端に位置する第3切り欠き233Xの周辺では、ウェルドが発生しやすい。
【0079】
整流子本体100Xを構成する樹脂600にウェルドが発生すると、整流子本体100Xの耐久性が低下する。つまり、整流子の耐久性が低下する。このように、図12に示される従来の整流子の製造方法では、整流子の耐久性が低下するという課題がある。
【0080】
この点、特許文献1の第2実施形態(図3)に開示された整流子の成形方法では、金型のゲートが整流子片の中間部位に位置しているが、特許文献1に開示された整流子については、整流子片の中間部位には第1切り欠きに対応する構造が形成されていない。また、特許文献1に開示された整流子は、隣接する2つの整流子片のくびれ部(係止部)間の距離がくびれ部と整流子本体の内径との間の距離と比べて狭いために、注入される樹脂の射出圧力が低くなる。このため、樹脂を注入する初期の段階において、くびれ部の間からは充分な樹脂が注入されにくい。また、注入された樹脂は、整流子片のくびれ部と整流子本体の内径との間の空洞部を軸方向に流れることになる。これにより、金型内の空洞部(成形空間)の空気は、樹脂の注入によって圧縮されることになる。したがって、空洞部に注入された樹脂は、整流子本体の内径に沿って軸方向に注入された後、整流子片の両端面側から露出部(摺接部)とくびれ部との間の空間に存在する空気を圧縮しつつ、注入されることになる。この結果、圧縮された空気は、一旦充填された箇所の樹脂を割って金型の外へ排出されることになり、樹脂にウェルドが発生する要因となる。
【0081】
特に、近年、家電機器の小型化および軽量化のために電動機の小型化が求められている。このため、電動機に用いられる整流子の小型化が必要になる。この整流子の小型化に伴って、隣接する2つの整流子片が有するくびれ部の間の寸法も狭くなり、注入される樹脂の射出圧力が低くなる。この結果、上記のように、圧縮された空気によって樹脂にウェルドが発生する。つまり、整流子の小型化に伴って、整流子本体を構成する樹脂にウェルドが発生しやすくなっている。
【0082】
このような課題に対して本願発明者らが鋭意検討した結果、整流子片の埋設部に形成された切り欠きの位置と、整流子片の埋設部を埋設する樹脂を注入する射出成形用金型のゲートの位置とを工夫することによって、整流子本体を構成する樹脂にウェルドが発生することを抑制できる方策を見出した。
【0083】
具体的には、本実施の形態では、整流子片200が有する埋設部220を樹脂で埋設して整流子本体100を成形するための射出成形用金型500が有するゲート520の位置を、整流子片200が有する埋設部220における中間部位に設けられた第1切り欠き231の位置に合わせている。
【0084】
この構成により、図9に示すように、射出成形用金型500が有するゲート520から空洞部510に樹脂600を注入することによって、整流子片200が有する埋設部220を樹脂600で埋設して整流子本体100を成形する際、樹脂600の射出圧力が低い、注入の初期から、整流子片200が有する埋設部220に樹脂600を注入することができる。これにより、整流子片200の中間部位に対応する位置に設けられた第1切り欠き231の空気を整流子片200の一方端220aおよび他方端220bの両側端に向けて押し出しつつ、樹脂600を空洞部510の全体にわたって注入することができる。これにより、樹脂600の注入の後半に、空洞部510の内部において、圧縮された空気が生じることを抑制することができる。よって、本実施の形態を用いれば、樹脂600にウェルドが発生することを抑制することができる。したがって、耐久性に優れた整流子14を得ることができる。
【0085】
また、図4に示すように、本実施の形態では、整流子片200が有する埋設部220には、埋設部220の一方端220aと他方端220bとの間に位置する中間部位に設けられた第1切り欠き231に加えて、埋設部220の他方端220bに第2切り欠き232が設けられているとともに、埋設部220の一方端220aに第3切り欠き233が設けられている。
【0086】
この構成により、アンカー効果を大きくするために、第1切り欠き231、第2切り欠き232および第3切り欠き233を設けたとしても、ゲート520は、整流子片200の中間部位である第1切り欠き231が設けられた位置の高さに形成される。よって、ゲート520から整流子片200に向けて樹脂600を注入したときに、第1切り欠き231、第2切り欠き232および第3切り欠き233の順で、各切り欠きに樹脂600が充填されることになる。
【0087】
言い換えれば、射出成形用金型500は、第1切り欠き231が位置する高さにゲート520を有する。この射出成形用金型500に対して、複数の整流子片200を環状に並べてセットし、ゲート520から複数の整流子片200に向けて樹脂600が注入される。注入された樹脂600によって、埋設部220は樹脂600で埋設される。こうして、整流子本体100が成形される。
【0088】
これにより、樹脂600の注入の後半に、空洞部510に残った圧縮された空気が金型ブロック501の合わせ面から排出される際、圧縮された空気は、先に、第1切り欠き231に充填された樹脂600を通過しない。したがって、空洞部510に充填された樹脂600に、ウェルドが発生することを抑制できる。よって、第1切り欠き231、第2切り欠き232および第3切り欠き233を設けたことによるアンカー効果によって、さらに耐久性に優れた整流子14を得ることができる。
【0089】
(変形例)
以上、本開示に係る整流子および整流子を備える電動機等について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0090】
ここで、図13は、変形例1に係る整流子の構成を示す断面図である。図14は、変形例2に係る整流子の構成を示す断面図である。
【0091】
例えば、上記実施の形態では、複数の整流子片200を射出成形用金型500に環状に並べてセットする際、整流子片200に第1リング部材410および第2リング部材420を用いる構成とした。その他、図13に示すように、第1リング部材410および第2リング部材420を用いずに、複数の整流子片200を射出成形用金型500にセットする構成としてもよい。本構成とすれば、第2切り欠き232および第3切り欠き233に入り込む樹脂(600)の量が多くなるので、アンカー効果をより大きくすることができる。したがって、整流子片200と整流子本体(100)との結合強度を向上させることができるので、より耐久性に優れた整流子を得ることができる。
【0092】
また、上記実施の形態では、整流子片200に設けられた第1切り欠き231は貫通孔であったが、これに限らない。例えば、図14に示すように、整流子片200Aに設けられた第1切り欠き231Aは、埋設部220における内側の端面から整流子本体の径方向(回転軸13の径方向)の外側に向けて切り欠かれた形状であってもよい。この場合、第1切り欠き231Aにおける回転軸13の軸方向の長さである切り欠き幅は、埋設部220における内側の端面から外側(露出部210側)に向けて漸次大きくなっているとよい。つまり、第1切り欠き231Aは、根元側ほど幅が広い楔状(テーパ状)に構成されているとよい。この構成により、第1切り欠き231Aにおけるアンカー効果をより大きくすることができるので、より耐久性に優れた整流子を得ることができる。なお、第2切り欠き232Aおよび第3切り欠き233Aについても楔状に形成してもよい。
【0093】
また、上記実施の形態では、複数の整流子片200を射出成形用金型500に環状に並べてセットする際、隣接する整流子片200の間にスペーサ300を配置したが、スペーサ300を配置することなく、複数の整流子片200を射出成形用金型500にセットしてもよい。この場合、隣接する2つの整流子片200が有する露出部210間に分離溝が形成されているとよい。
【0094】
また、上記実施の形態では、射出成形用金型500に注入する樹脂600として液状の熱硬化性樹脂を用いたが、これに限らない。例えば、樹脂600は、タブレット状の熱硬化性樹脂(フェノール樹脂等)であってもよい。この場合、タブレット状の樹脂600をピストンまたはプランジャーで押し込むことで、樹脂600をゲート520で溶融させて、溶融した樹脂600を射出成形用金型500が有する空洞部510に注入することができる。
【0095】
また、上記実施の形態における電動送風機1は、例えば、電気掃除機またはエアタオル等に用いることができる。また、電動送風機1は、電気掃除機またはエアタオルに限らず、自動車用機器に適用してもよいし、その他の家庭用機器または産業用機器に適用してもよい。
【0096】
その他、上記実施の形態に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本開示の技術は、整流子電動機の整流子として利用することができる。また、本開示の技術は、整流子だけではなく、整流子を備える電動機、この電動機を備える電動送風機およびこの電動送風機を備える電気掃除機等の種々の電気機器等に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 電動送風機
2 電動機
3 回転ファン
4 エアガイド
5 ファンケース
5a 吸気口
6 フレーム
6a 排気口
7 ブラケット
11 回転子
11a 回転子鉄心
11b 巻線コイル
12 固定子
13 回転軸
13a 第1部位(出力軸)
13b 第2部位(反出力軸)
14 整流子
14A 成形品
15 ブラシ
16 第1軸受け部
17 第2軸受け部
100、100X 整流子本体
101 貫通孔
200、200A、200X 整流子片
210 露出部
220、220X 埋設部
220a 一方端
220b 他方端
221 くびれ部
222 頭部
231、231A、231X 第1切り欠き
232、232A、232X 第2切り欠き
233、233A、233X 第3切り欠き
240 フック部
300 スペーサ
410 第1リング部材
420 第2リング部材
500、500X 射出成形用金型
501、501X 金型ブロック
502 当て板
510、510X 空洞部
520、520X ゲート
530 スプルー
600 樹脂
610 補強繊維
図1
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